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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023133703
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】粘着テープ及びテープロール
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/29 20180101AFI20230920BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20230920BHJP
【FI】
C09J7/29
C09J7/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038825
(22)【出願日】2022-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000134257
【氏名又は名称】株式会社トーキン
(74)【代理人】
【識別番号】100117341
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 拓哉
(74)【代理人】
【識別番号】100148840
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 健志
(74)【代理人】
【識別番号】100191673
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 久典
(72)【発明者】
【氏名】大宮 忠志
(72)【発明者】
【氏名】阿部 正和
【テーマコード(参考)】
4J004
【Fターム(参考)】
4J004AB01
4J004CA03
4J004CA06
4J004CB03
4J004CC03
4J004EA01
(57)【要約】
【課題】ノイズ抑制機能を有する粘着テープであって現場での作業性を向上可能な粘着テープを提供すること。また、この粘着テープを用いたテープロールを提供すること。
【解決手段】粘着テープ14は、ノイズ抑制機能を有している。粘着テープ14は、表面22及び裏面24を有する主部材20と、主部材20の裏面24上に設けられた粘着層30とを備えている。主部材20は、磁性シート50と、磁性シート50に積層された一軸延伸フィルム60とを備えている。磁性シート50は、バインダ52と、バインダ52内に分散配置された磁性体粉末54とを含んでおり、単体のときの破断強度が2.5N/5mm以上かつ40N/5mm以下であり、破断時の伸び率が25%以下である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノイズ抑制機能を有する粘着テープであって、
前記粘着テープは、表面及び裏面を有する主部材と、前記主部材の前記裏面上に設けられた粘着層とを備えており、
前記主部材は、磁性シートと、前記磁性シートに積層された一軸延伸フィルムとを備えており、
前記磁性シートは、バインダと、前記バインダ内に分散配置された磁性体粉末とを含んでおり、単体のときの破断強度が2.5N/5mm以上かつ40N/5mm以下であり、破断時の伸び率が25%以下である
粘着テープ。
【請求項2】
請求項1記載の粘着テープであって、
前記磁性シートにおける前記磁性体粉末の占有率は、30%以上かつ50%以下である
粘着テープ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の粘着テープであって、
前記バインダは、アクリルゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、及び、ポリウレタン樹脂のうちの少なくとも1つを含んでいる
粘着テープ。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれかに記載の粘着テープであって、
前記バインダは、アクリルゴムからなる第1樹脂と、アクリロニトリルブタジエンゴムからなる第2樹脂とを含んでおり、前記第1樹脂の前記第2樹脂に対する比率は、0.5以上かつ2.0以下である
粘着テープ。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれかに記載の粘着テープであって、
前記一軸延伸フィルムは、第1厚さを有しており、
前記磁性シートは、第2厚さを有しており、
前記第1厚さの前記第2厚さに対する比率は、0.06以上かつ0.72以下である
粘着テープ。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれかに記載の粘着テープであって、
前記磁性シートの厚さは、300μm以下である
粘着テープ。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれかに記載の粘着テープであって、
前記粘着テープは、前記主部材の前記表面上に設けられた離型層を備えている
粘着テープ。
【請求項8】
請求項7記載の粘着テープであって、
前記一軸延伸フィルムは、前記主部材の前記表面を構成する面を有しており、
前記磁性シートは、前記主部材の前記裏面を構成する面を有している
粘着テープ。
【請求項9】
請求項7又は請求項8記載の粘着テープをロール状に巻回したテープロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノイズ抑制機能を有する粘着テープ及びテープロールに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、ノイズ抑制機能を有する磁性シートが開示されている。
【0003】
特許文献1に開示された磁性シートは、支持体と磁性層と粘着層とを積層して形成されている。支持体は、磁性層よりも脆性が低く磁性シートに適度な張りを与えることができるフィルム材からなる。この支持体により、磁性シートを対象物に貼り付ける際に磁性シートの破れやちぎれが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-031578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、ノイズ抑制機能を有する磁性シートから粘着テープを形成してケーブルに巻き付けたいという要望や、必要に応じて現場で対象物に磁性シートを貼り付けて簡単にノイズの抑制を確認したいという要望がある。
【0006】
そこで、本発明は、ノイズ抑制機能を有する粘着テープであって現場での作業性を向上可能な粘着テープを提供することを目的とする。また、本発明は、この粘着テープを用いたテープロールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
粘着テープを使用する現場では、ハサミ等の刃物を使用できない場合がある。また、作業性を向上するためには、現場で刃物を使用せずに手で容易に且つ直線状に粘着テープをカットできることが望ましい。そこで、本願発明者は、一軸延伸フィルムと磁性シートとを積層した粘着テープを着想して試作した。しかしながら、磁性シートが一軸延伸フィルムの横方向のカット(TDカット)に追従しないという問題が生じた。
【0008】
磁性シートは、磁性体粉末をバインダで結合したものであり、シート形状を維持するためにある程度の強度を必要とする。また、磁性シートにおいて、磁気特性の向上と物理的な強度の低下とはトレードオフの関係にある。このため、磁性シートの物理的な強度を下げることは、通常は好ましくないと考えられている。一方、本発明においては、磁性シートを一軸延伸フィルムで支持するため、シート形状を維持する強度を磁性シート自体が有する必要はない。また、磁性シートの物理的な強度をある程度下げても、磁気特性の劣化は実用上許容できる範囲に収まることが分かった。
【0009】
本発明は、以上の知見に基づきなされた。より具体的には、本発明は、以下の粘着テープを提供する。
【0010】
本発明は、第1の粘着テープとして、
ノイズ抑制機能を有する粘着テープであって、
前記粘着テープは、表面及び裏面を有する主部材と、前記主部材の前記裏面上に設けられた粘着層とを備えており、
前記主部材は、磁性シートと、前記磁性シートに積層された一軸延伸フィルムとを備えており、
前記磁性シートは、バインダと、前記バインダ内に分散配置された磁性体粉末とを含んでおり、単体のときの破断強度が2.5N/5mm以上かつ40N/5mm以下であり、破断時の伸び率が25%以下である
粘着テープを提供する。
【0011】
本発明は、第2の粘着テープとして、第1の粘着テープであって、
前記磁性シートにおける前記磁性体粉末の占有率は、30%以上かつ50%以下である
粘着テープを提供する。
【0012】
本発明は、第3の粘着テープとして、第1又は第2の粘着テープであって、
前記バインダは、アクリルゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、及び、ポリウレタン樹脂のうちの少なくとも1つを含んでいる
粘着テープを提供する。
【0013】
本発明は、第4の粘着テープとして、第1から第3までのいずれかの粘着テープであって、
前記バインダは、アクリルゴムからなる第1樹脂と、アクリロニトリルブタジエンゴムからなる第2樹脂とを含んでおり、前記第1樹脂の前記第2樹脂に対する比率は、0.5以上かつ2.0以下である
粘着テープを提供する。
【0014】
本発明は、第5の粘着テープとして、第1から第4までのいずれかの粘着テープであって、
前記一軸延伸フィルムは、第1厚さを有しており、
前記磁性シートは、第2厚さを有しており、
前記第1厚さの前記第2厚さに対する比率は、0.06以上かつ0.72以下である
粘着テープを提供する。
【0015】
本発明は、第6の粘着テープとして、第1から第5までのいずれかの粘着テープであって、
前記磁性シートの厚さは、300μm以下である
粘着テープを提供する。
【0016】
本発明は、第7の粘着テープとして、第1から第6までのいずれかの粘着テープであって、
前記粘着テープは、前記主部材の前記表面上に設けられた離型層を備えている
粘着テープを提供する。
【0017】
本発明は、第8の粘着テープとして、第7の粘着テープであって、
前記一軸延伸フィルムは、前記主部材の前記表面を構成する面を有しており、
前記磁性シートは、前記主部材の前記裏面を構成する面を有している
粘着テープを提供する。
【0018】
本発明は、第1のテープロールとして、
第7又は第8の粘着テープをロール状に巻回したテープロールを提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の粘着テープにおいては、磁性シートの破断強度を適切な範囲に設定した。この結果、実用上問題になるような磁気特性の劣化を生じさせることなく、一軸延伸フィルムの特性を利用して粘着テープを直線的に容易にTDカットできる。即ち、本発明によれば、ノイズ抑制機能を有する粘着テープであって現場での作業性を向上可能な粘着テープを提供できる。また、本発明によれば、この粘着テープを用いたテープロールを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施の形態によるテープロールを示す斜視図である。テープロールの巻芯に巻き付けられた粘着テープに加えて、テープロールから切り取った粘着テープを描画している。
図2図1の粘着テープを示す上面図である。粘着テープを縦方向(MD方向)に引っ張った際の粘着テープの状態を右下に描画している。引っ張られた粘着テープが破断した際の状態を左下に描画している。
図3図2の粘着テープの層構造を模式的に示す側面図である。磁性シートの一部(破線で囲んだ部分)を拡大して内部構造を模式的に描画している。
図4】磁性シートの実施例の破断強度を示す図である。
図5】磁性シートの実施例の破断時の伸び率を示す図である。
図6】粘着テープの実施例の破断強度を示す図である。
図7】粘着テープの実施例の破断時の伸び率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1を参照すると、本発明の実施の形態によるテープロール10は、巻芯12と、ノイズ抑制機能を有する粘着テープ14とを備えている。粘着テープ14は、巻芯12の周りに巻き付けられている。即ち、テープロール10は、粘着テープ14をロール状に巻回したテープロールである。本実施の形態の粘着テープ14は比較的小さい。例えば、図示した粘着テープ14の横方向(TD方向)のサイズは、19mm程度であり、図示した粘着テープ14の厚さは、150μm程度である。テープロール10は、掌に収まる程度のサイズを有しており持ち運び易い。本実施の形態のテープロール10は、上述の構造を有している。但し、テープロール10が粘着テープ14を備えている限り、テープロール10の構造は、特に限定されない。例えば、巻芯12は、必要に応じて設ければよい。
【0022】
粘着テープ14は、テープロール10を持ち運ぶ際にロール形状を維持可能な程度の粘着性を有している。一方、粘着テープ14は、横方向(TD方向)と直交する縦方向(MD方向)に沿って、テープロール10から引き出すことができる。縦方向に沿って引き出した粘着テープ14の一部(破断点BP)に力を加えると、ハサミ等の刃物を使用することなく、粘着テープ14を容易に横方向において引きちぎるように切断できる。以下の説明において、このような切断を「TDカット」という。TDカットにより、粘着テープ14を、横方向に延びる破断線CLに沿って一直線状に切断できる。上述のように、本実施の形態の粘着テープ14は、必要に応じて、必要な長さに容易にTDカットできる。TDカットした粘着テープ14は、例えば、ハーネス(図示せず)のケーブル(図示せず)に巻き付けることができ、これにより電磁ノイズを抑制できる。
【0023】
以下、本実施の形態の粘着テープ14について説明する。以下の説明における「水平面」、「上」、「下」等の位置関係を示す用語は、地面に対する絶対的な位置関係を示すものではなく、図面における相対的な位置関係を示すものに過ぎない。
【0024】
図3を参照すると、本実施の形態の粘着テープ14は、表面22及び裏面24を有する主部材20と、主部材20の裏面24上に設けられた粘着層30と、主部材20の表面22上に設けられた離型層40とを備えている。主部材20は、粘着テープ14のノイズ抑制機能を担う部材である。粘着層30は、粘着テープ14の粘着性を担う部材であり、アクリル系粘着剤やエステル系粘着剤等の一般的な粘着剤からなる。粘着層30は、粘着テープ14のロール形状を維持するだけでなく、電磁ノイズを生ずる部位に粘着テープ14を貼り付けるために使用される。離型層40は、テープロール10(図1参照)から粘着テープ14を引き出し易くするための部材であり、シリコーン系離型剤等の一般的な離型剤からなる。
【0025】
以上の説明から理解されるように、離型層40を設けることなくテープロール10(図1参照)から粘着テープ14を引き出せる場合、離型層40を設ける必要はない。また、テープロール10を作製せず、シート形状の粘着テープ14を使用する場合も、離型層40を設ける必要はない。即ち、離型層40は、必要に応じて設ければよい。換言すれば、粘着テープ14は、主部材20及び粘着層30のみを備えていてもよい。一方、粘着テープ14は、上述した層に加えて、別の層を更に備えていてもよい。
【0026】
本実施の形態の主部材20は、軟磁性を有する磁性シート50と、一軸延伸フィルム60と、接着層70とを備えている。磁性シート50、一軸延伸フィルム60及び接着層70は、縦方向(MD方向)及び横方向(TD方向)の双方と直交する上下方向に積層されている。本実施の形態の接着層70は、ドライラミネート用接着剤、アンカーコート剤等の一般的な接着剤からなる。また、接着層70は、例えば、4μm以下の厚さのPET基材を含み容易に破断可能な両面テープであってもよい。
【0027】
本実施の形態の磁性シート50及び一軸延伸フィルム60は、接着層70によって互いに接着されている。但し、本発明は、これに限られない。例えば、磁性シート50に液状の接着剤を染み込ませて一軸延伸フィルム60と接着してもよい。この場合、視認可能な接着層70を設ける必要がない。換言すれば、接着層70は、必要に応じて設ければよく、主部材20は、磁性シート50及び一軸延伸フィルム60のみを備えていてもよい。一方、主部材20は、上述した層に加えて、別の層を更に備えていてもよい。
【0028】
本実施の形態の一軸延伸フィルム60は、離型層40と接触している。即ち、一軸延伸フィルム60は、主部材20の表面22を構成する面を有している。より具体的には、主部材20の表面22は、一軸延伸フィルム60の上面である。また、本実施の形態の磁性シート50は、粘着層30と接触している。即ち、磁性シート50は、主部材20の裏面24を構成する面を有している。より具体的には、主部材20の裏面24は、磁性シート50の下面である。
【0029】
上述のように、本実施の形態の一軸延伸フィルム60は、磁性シート50の上に配置されている。但し、本発明は、これに限られず、一軸延伸フィルム60は、磁性シート50の下に配置されていてもよい。換言すれば、一軸延伸フィルム60は、主部材20の裏面24を構成する面を有していてもよく、磁性シート50は、主部材20の表面22を構成する面を有していてもよい。即ち、主部材20は、磁性シート50と、磁性シート50に直接的又は間接的に積層された一軸延伸フィルム60とを備えていればよい。
【0030】
本実施の形態の磁性シート50は、バインダ52と、バインダ52内に分散配置された磁性体粉末54とを含んでいる。
【0031】
本実施の形態の磁性体粉末54は、扁平形状の軟磁性金属粉末である。平板状の磁性シート50は、例えば、以下のようにして作製できる。まず、磁性体粉末54に溶媒、増粘剤及びバインダ52を混合してスラリーを作製する。次に、スラリーを基板に塗布する。次に、塗布したスラリーを加熱して溶媒を揮発させ、これによりシート状の予備成形体を作製する。次に、予備成形体を必要な形状に打ち抜く。打ち抜いたシートを必要な枚数だけ上下に積層して加圧し、これにより磁性シート50を作製する。一方、テープロール10(図1参照)に使用する磁性シート50は、例えば、シート状の長い予備成形体を作製し、その後、予備成形体を積層せずに加圧しつつロール形状に巻くことで作製できる。いずれの磁性シート50においても、磁性体粉末54は、横方向(TD方向)及び縦方向(MD方向)によって規定される水平面と概ね平行に延びている。
【0032】
本実施の形態の磁性シート50は、上述の扁平形状の軟磁性金属粉末とバインダ52とからなる。但し、本発明は、これに限られず、磁性シート50の材料や製造方法は、特に限定されない。例えば、磁性体粉末54は、球状の軟磁性金属粉末であってもよい。
【0033】
本実施の形態の一軸延伸フィルム60は、ポリエチレン等の高分子からなる。一軸延伸フィルム60は、糸状の高分子の鎖を横方向(TD方向)に引き伸ばして形成されておりTDカットし易い。一方、本実施の形態の磁性シート50は、水平面において実質的に均一な構造を有している。例えば、磁性シート50の縦方向(MD方向)における破断強度(磁性シート50が破断する時の引張強度)は、磁性シート50の横方向における破断強度と実質的に同じである。即ち、磁性シート50は、どの方向においても同様な力によって同様に破断する。また、粘着層30、離型層40及び接着層70の夫々は、基材を全く含んでいないか又は極めて薄い基材のみを含んでおり、どの方向の力によっても容易に破断する。
【0034】
図2図3と併せて参照すると、粘着テープ14は、上述の各層からなり、磁性シート50の破断強度及び破断時の伸び率を調整することで、縦方向(MD方向)の引張力によって破断できる。詳しくは、粘着テープ14を縦方向に引っ張ると、粘着テープ14は縦方向にある程度伸びた後に横方向(TD方向)に沿って破断する(図2の左下に描画した粘着テープ14参照)。破断時の伸び率を、引張前の粘着テープ14の引張方向(縦方向又は横方向)における長さ(例えば、縦方向の長さL0)に対する破断時の粘着テープ14の引張方向における長さ(例えば、縦方向の長さLB)と規定すると、粘着テープ14は、破断時の伸び率に応じて以下のように伸びて破断する。
【0035】
破断時の伸び率(例えば、LB/L0-1)が大きい場合、粘着テープ14を縦方向(MD方向)に引っ張ると、粘着テープ14は縦方向に大きく伸びる(図2の右下に描画した粘着テープ14参照)。この場合、粘着テープ14の引張力を大きくし続けても、粘着テープ14は、引張力が破断強度になるまで縦方向に伸び続けて、容易に破断しない。また、粘着テープ14が破断すると、破断点BPを含む切断部が大きく変形する。即ち、直線的なTDカットが困難になる。一方、破断時の伸び率が小さい場合、粘着テープ14を縦方向に引っ張ると、粘着テープ14は縦方向にある程度伸びた後に横方向(TD方向)に沿って破断する。この場合、伸び率が小さいため、切断部が殆ど変形せず、容易にTDカットできる。
【0036】
上述した特性を有する粘着テープ14は、以下に説明する知見に基づく発明品である。
【0037】
粘着テープ14を使用する現場では、ハサミ等の刃物を使用できない場合がある。また、作業性を向上するためには、現場で刃物を使用せずに手で容易に且つ直線状に粘着テープ14を切断(TDカット)できることが望ましい。一方、磁性シート50の破断強度が高い場合、磁性シート50が一軸延伸フィルム60のTDカットに追従せず、これにより、粘着テープ14をTDカットし難くなる。例えば、切断したときにバリが生じ易くなり、綺麗に切断できない。
【0038】
前述のように、本実施の形態の磁性シート50は、磁性体粉末54をバインダ52で結合したものであり、シート形状を維持するためにある程度の強度を必要とする。また、磁性シート50においては、磁気特性の向上と物理的な強度の低下とはトレードオフの関係にある。このため、磁性シート50の強度を下げることは、通常は好ましくないと考えられている。一方、本実施の形態においては、磁性シート50を一軸延伸フィルム60で支持するため、シート形状を維持できる程度の強度を磁性シート50自体が有する必要はない。また、磁性シート50における磁性体粉末54の占有率(磁性シート50全体に対する磁性体粉末54の体積比率)を30%以上に維持すれば、磁性シート50の破断強度をある程度下げても、磁気特性の劣化は実用上許容できる範囲に収まる。
【0039】
本実施の形態の粘着テープ14は、上述の知見に基づく発明品である。詳しくは、一軸延伸フィルム60単体では縦方向(MD方向)及び横方向(TD方向)の夫々において伸び率が大きく、引っ張っただけでは切れ難い。また、一軸延伸フィルム60は、縦方向及び横方向の夫々において大きく伸びるため、破断した際に破断点BPを含む切断部が大きく変形する。一方、破断時の伸び率の小さい磁性シート50を一軸延伸フィルム60に貼り付けることで、粘着テープ14の破断時の伸び率を小さくできるとともに、破断強度を比較的小さな値に維持できる。特に、粘着テープ14の縦方向の破断時の伸び率を極めて小さくできる。この結果、磁性シート50が一軸延伸フィルム60のTDカットに追従し、これにより、粘着テープ14をTDカットし易くなる。
【0040】
本実施の形態の粘着テープ14においては、磁性シート50の破断強度を適切な範囲に設定することで、粘着テープ14の伸び率を低減している。より具体的には、本実施の形態の磁性シート50は、単体のときの破断強度が2.5N/5mm以上かつ40N/5mm以下であり、破断時の伸び率が25%以下である。この特性によれば、実用上問題になるような磁気特性の劣化を生じさせることなく、一軸延伸フィルム60の特性を利用して粘着テープ14を容易にTDカットできる。即ち、本実施の形態によれば、ノイズ抑制機能を有する粘着テープ14であって現場での作業性を向上可能な粘着テープ14を提供できる。また、本実施の形態によれば、粘着テープ14を用いたテープロール10(図1参照)を提供できる。
【0041】
磁性体粉末54の占有率が50%を超えると、磁性シート50におけるバインダ52の体積比率が相対的に低くなる。この結果、磁性シート50が脆くなり実用に耐えなくなる。一方、磁性体粉末54の占有率が30%を下回ると、バインダ52の体積比率が相対的に高くなる。この結果、破断時の伸び率が大きくなりTDカットし難くなる。加えて、ノイズ抑制機能が劣化する。従って、本実施の形態の磁性シート50における磁性体粉末54の占有率は、30%以上かつ50%以下であることが好ましい。
【0042】
本実施の形態の磁性シート50におけるバインダ52は、アクリルゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、及び、ポリウレタン樹脂のうちの少なくとも1つを含んでいる。
【0043】
特に、本実施の形態の磁性シート50におけるバインダ52は、アクリルゴムからなる第1樹脂と、アクリロニトリルブタジエンゴムからなる第2樹脂とを含んでいる。第1樹脂は、磁性シート50の磁気特性を向上するためには適しているが硬く破断し難い。第2樹脂は、柔らかく破断し易いが、磁性シート50の磁気特性を向上するためには適していない。第1樹脂に第2樹脂を加えることで、磁性シート50を、より小さな圧力、より短い時間、且つ、より低い温度で作製できる。加えて、粘着テープ14を、小さな力でより容易にTDカットできる。
【0044】
本実施の形態において、第1樹脂の第2樹脂に対する体積比率(第1樹脂の体積/第2樹脂の体積)は、0.5以上かつ2.0以下である。この条件を満たす第1樹脂及び第2樹脂によれば、磁性シート50における磁性体粉末54の占有率を30%以上にし易い。
【0045】
本実施の形態の粘着層30、離型層40、磁性シート50、一軸延伸フィルム60及び接着層70の夫々は、水平面における位置に拘らず実質的に同じ厚さを有している。特に、一軸延伸フィルム60は、第1厚さTFを有しており、磁性シート50は、第2厚さTSを有している。第1厚さTFが第2厚さTSに対して所定の上限比率よりも大きくなると、粘着テープ14をTDカットし難くなる。一方、第1厚さTFが第2厚さTSに対して所定の下限比率よりも小さくなると、磁性シート50のシート形状を維持し難くなる。本実施の形態によれば、上述した上限比率は、0.72であり、上述した下限比率は、0.06である。即ち、本実施の形態において、第1厚さTFの第2厚さTSに対する比率は、0.06以上かつ0.72以下であることが好ましく、0.09以上かつ0.36以下であることが更に好ましい。
【0046】
磁性シート50の第2厚さTSが25μmよりも小さい場合、一軸延伸フィルム60の影響が大きくなり、縦方向(MD方向)における破断時の伸び率が大きくなる。この結果、刃物を使用せず手を使用して粘着テープ14を切断すると、切断部が大きく変形する。一方、第2厚さTSが300μmよりも大きい場合、横方向(TD方向)における破断時の伸び率が小さくなり、横方向にのみ切断し易いという特性が失われる。加えて、横方向の破断強度が大きくなるため、磁性シート50が一軸延伸フィルム60の横方向(TD)のTDカットに追従し難くなる。従って、本実施の形態において、第2厚さTSは、25μm以上300μm以下であることが好ましい。また、第2厚さTSが大きくなると、テープロール10(図1参照)に巻回する際に、巻き巣やシワが生じ易くなる。従って、磁性シート50の厚さ(第2厚さTS)は、200μm以下であることが更に好ましい。
【実施例0047】
一軸延伸フィルム及び磁性シートからなるテープを作成して破断試験を行った。以下、本発明について、破断試験の結果を参照しつつ更に詳細に説明する。
【0048】
(磁性シートの破断試験)
様々な厚さの磁性シートを作製して破断試験を行った。詳しくは、バインダとしてアクリルゴムとアクリロニトリルブタジエンゴムとを含む様々な厚さの第1磁性シートと、バインダとしてアクリルゴムのみを含む様々な厚さの第2磁性シートとを作製した。磁性シートの夫々を、縦方向(MD方向)及び横方向(TD方向)に引っ張り、破断時の力(破断強度)及び破断時の伸び率を測定した。厚さ25μm、50μm、75μm、100μm、200μm及び300μmの実施例の第1磁性シートについての測定結果を図4及び図5に示す(図4及び図5における円形のプロット参照)。また、100μm及び200μmの実施例の第2磁性シートについての測定結果を図4及び図5に示す(図4及び図5における矩形のプロット参照)。
【0049】
図4及び図5に示されるように、磁性シートの厚さが25μm以上300μm以下の場合、磁性シートの破断強度は、2.5N/5mm以上かつ40N/5mm以下であり、磁性シートの破断時の伸び率は、25%以下である。
【0050】
(一軸延伸フィルムの破断試験)
高密度ポリエチレンからなる市販のカラリヤンY(カラリヤンは登録商標)を使用して一軸延伸フィルムを準備した。準備した一軸延伸フィルムの厚さは18μmだった。一軸延伸フィルムに対して、縦方向(MD方向)に均等な力を加えると、一軸延伸フィルムは、縦方向に大きく延びた(図7において磁性シートの厚さが0μmの場合参照)。縦方向(MD方向)の力を大きくすると、一軸延伸フィルムは、70%延びた後に破断した。破断した際の切り口は、大きく変形していた。一軸延伸フィルムは、縦方向の伸び率が70%と大きいが、縦方向に均等な力を加えた場合の破断強度は小さい(図6において磁性シートの厚さが0μmの場合参照)。このため、一軸延伸フィルムは、刃物を使用することなく手でちぎるように力を加えることで、横方向(TD方向)に容易に切断できたものの、切り口の変形により綺麗に切断できなかった。。
【0051】
(テープの破断試験)
上述した一軸延伸フィルムに様々な厚さの磁性シート(第1磁性シート又は第2磁性シート)を重ねて接着し、様々な厚さのテープを作製した。作製したテープに対して破断試験を行った。より具体的には、テープの夫々を、縦方向(MD方向)及び横方向(TD方向)に引っ張り、破断強度及び破断時の伸び率を測定した。厚さ25μm、50μm、75μm、100μm、200μm及び300μmの実施例の第1磁性シートを含むテープについての測定結果を図6及び図7に示す(図6及び図7における円形のプロット参照)。また、厚さ100μm及び200μmの実施例の第2磁性シートを含むテープについての測定結果を図6及び図7に示す(図6及び図7における矩形のプロット参照)。
【0052】
磁性シートの厚さが25μm以上300μm以下の場合、一軸延伸フィルムの厚さの磁性シートの厚さに対する比率は0.06以上かつ0.72以下である。図6及び図7に示されるように、この場合のテープの破断強度は、60N/5mm以下であり、テープの破断時の伸び率は、42%以下である。特に、縦方向(MD方向)に引っ張った際の破断強度は、42N/5mm以下であり、破断時の伸び率は、30%以下である。上述の条件を満たす実施例のテープは、刃物を使用することなく手でちぎるように力を加えることで、横方向(TD方向)に容易に直線状に切断(TDカット)できた。
【0053】
一方、磁性シートの厚さが25μm未満のテープは、破断した際の切り口が大きく変形し、綺麗に切断できなかった。また、磁性シートの厚さが300μmを超えたテープは、容易に切断できたものの、磁性シートが一軸延伸フィルムのTDカットに追従せず、切断したときにバリが生じるなど綺麗に切断できなかった。
【0054】
以上の実験結果から、一軸延伸フィルムの厚さの磁性シートの厚さに対する比率を0.06以上かつ0.72以下にすることでTDカットしやすいテープが得られることが分かる。
【0055】
以上、本発明について、実施の形態等を掲げて具体的に説明してきたが、本発明はこれらに限定されるものではなく、当業者には明らかなように、本発明の精神を逸脱しない範囲で実施の形態を変形することが可能であり、そのような実施の形態は本発明の範囲に属する。
【符号の説明】
【0056】
10 テープロール
12 巻芯
14 粘着テープ
20 主部材
22 表面
24 裏面
30 粘着層
40 離型層
50 磁性シート
52 バインダ
54 磁性体粉末
60 一軸延伸フィルム
70 接着層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7