(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023133726
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】積層体の製造方法及び積層体
(51)【国際特許分類】
B32B 37/18 20060101AFI20230920BHJP
B65H 39/043 20060101ALI20230920BHJP
B65H 39/06 20060101ALI20230920BHJP
B65H 39/16 20060101ALI20230920BHJP
B65H 29/58 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
B32B37/18
B65H39/043
B65H39/06
B65H39/16
B65H29/58 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038868
(22)【出願日】2022-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 勇介
【テーマコード(参考)】
3F050
3F053
4F100
【Fターム(参考)】
3F050AA02
3F050AA09
3F050BE17
3F050BE18
3F050CB03
3F050CC04
3F050LB07
3F053CA09
3F053LB07
4F100AJ01A
4F100AK01A
4F100BA11
4F100BA44A
4F100DG00A
4F100EA032
4F100EC09
4F100GB31
4F100GB33
4F100JL10A
(57)【要約】
【課題】植物性繊維の繊維感を呈することができる積層体の製造方法及び積層体の提供。
【解決手段】第1方向に移動する第1コンベア76に、植物性繊維50と第1樹脂51とを含む第1ウェブ13と、第2樹脂52を含む第2ウェブ14と、を当該第1コンベア76の幅方向に横並びにした状態で載せ、第1方向に移動させる第1工程と、第1コンベア76から順次供給される第1ウェブ13及び第2ウェブ14を、第1方向に交わる第2方向に移動する第2コンベア78に載せ変える第2工程と、を含み、第2工程では、順次供給される第1ウェブ13及び第2ウェブ14について、第2方向に移動する第2コンベア78に載せる位置を、第2コンベア78の幅方向において往復するように変更することで、第1ウェブ13及び第2ウェブ14がズレながら積層した積層体100Aを形成する、積層体100Aの製造方法。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に移動する第1コンベアに、植物性繊維と第1樹脂とを含む第1ウェブと、第2樹脂を含む第2ウェブと、を当該第1コンベアの幅方向に横並びにした状態で載せ、前記第1方向に移動させる第1工程と、
前記第1コンベアから順次供給される前記第1ウェブ及び前記第2ウェブを、前記第1方向に交わる第2方向に移動する第2コンベアに載せ変える第2工程と、を含み、
前記第2工程では、順次供給される前記第1ウェブ及び第2ウェブについて、前記第2方向に移動する前記第2コンベアに載せる位置を、前記第2コンベアの幅方向において往復するように変更することで、前記第1ウェブ及び第2ウェブがズレながら積層した積層体を形成する、積層体の製造方法。
【請求項2】
前記第2工程では、前記第1ウェブ及び前記第2ウェブにより第1層及び第2層を形成し、前記第1層の前記第2ウェブの表面の一部に前記第2層の前記第2ウェブを積層させて、前記積層体を形成する、請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項3】
前記第1工程では、前記第1コンベアに、前記第2ウェブを、その幅が前記第1ウェブの幅よりも小さくなるように載せる、請求項1または請求項2に記載の積層体の製造方法。
【請求項4】
前記第1工程では、前記第1コンベアに、前記第2ウェブを、前記第1ウェブに対し前記第2方向における下流側となる位置に載せる、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【請求項5】
前記第1工程では、前記第2樹脂として、着色された樹脂を用いる、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【請求項6】
植物性繊維と第1樹脂とを含む第1ウェブと、
前記第1ウェブの表面に交絡し、第2樹脂を含む第2ウェブと、を備える積層体。
【請求項7】
前記第1ウェブと前記第2ウェブとにより構成される第1層及び第2層を備え、
前記第1層の前記第2ウェブの表面の一部に、前記第2層の前記第2ウェブが交絡している、請求項6に記載の積層体。
【請求項8】
前記第2樹脂は、着色された樹脂である、請求項6または請求項7に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層体の製造方法及び積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、植物性繊維(天然繊維)を含んだ構造体として、特許文献1に記載の技術が知られている。具体的に、特許文献1には、植物繊維に樹脂繊維が一部溶融して結着してなる繊維マットが開示されている。この繊維マットは、植物繊維と樹脂繊維とを混合した混合繊維を、開繊・積層した後に、加熱プレスすることで、樹脂繊維の一部を溶融させ、繊維ウェブに含まれる繊維同士を結着させることにより、製造されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の方法によって製造された繊維マットの表面又は裏面に対し、塗装等の処理を行うことで、着色したり撥水性や耐光性等の機能を付与させたりすることが考えられる。しかしながら、繊維マットの表面又は裏面に対しこのような処理を行うと、植物性繊維の繊維感が低下したり、植物性繊維に水分等が染み込んでしまったりすることで、意匠性が低下する虞がある。
【0005】
本開示は上記のような事情に基づいて完成された技術であって、植物性繊維の繊維感を呈することができる積層体の製造方法及び積層体を提供することを目的の一つとする。また、意匠性を向上することができる積層体の製造方法及び積層体を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、第1方向に移動する第1コンベアに、植物性繊維と第1樹脂とを含む第1ウェブと、第2樹脂を含む第2ウェブと、を当該第1コンベアの幅方向に横並びにした状態で載せ、前記第1方向に移動させる第1工程と、前記第1コンベアから順次供給される前記第1ウェブ及び前記第2ウェブを、前記第1方向に交わる第2方向に移動する第2コンベアに載せ変える第2工程と、を含み、前記第2工程では、順次供給される前記第1ウェブ及び第2ウェブについて、前記第2方向に移動する前記第2コンベアに載せる位置を、前記第2コンベアの幅方向において往復するように変更することで、前記第1ウェブ及び第2ウェブがズレながら積層した積層体を形成する、積層体の製造方法である。
【0007】
このような積層体の製造方法によると、第1ウェブと第2ウェブとからなる第1層の表面に、第1ウェブと第2ウェブとからなる第2層がズレて積層した積層体を形成させることができる。これにより、第2ウェブが表面又は裏面において連続して露出した積層体を製造することができる。また、接着剤等を用いることなく、第1ウェブと第2ウェブとが殆ど境界の無い状態で構成された積層体を製造することができる。さらに、第1ウェブによって植物性繊維の繊維感を呈することができる。また、第2ウェブに含まれる第2樹脂として機能性樹脂を用いることで、表面又は裏面においてその機能を発現可能な積層体を製造することができる。
【0008】
上記の製造方法において、前記第2工程では、前記第1ウェブ及び前記第2ウェブにより第1層及び第2層を形成し、前記第1層の前記第2ウェブの表面の一部に前記第2層の前記第2ウェブを積層させて、前記積層体を形成してもよい。
【0009】
このような積層体の製造方法によると、第2ウェブが積層体の表面において連続して露出した積層体を形成することができる。また、第1層の第2ウェブと第2層の第2ウェブとの間から第1ウェブが露出することを抑制することができる。
【0010】
上記の製造方法において、前記第1工程では、前記第1コンベアに、前記第2ウェブを、その幅が前記第1ウェブの幅よりも小さくなるように載せてもよい。
【0011】
このような積層体の製造方法によると、第1ウェブよりも厚みが薄い第2ウェブが、積層体の表面又は裏面において連続して露出した積層体を製造することができる。これにより、第1ウェブによる植物性繊維の繊維感をより呈した積層体を提供することができる。また、仮に第2ウェブの第2樹脂として比較的高価な材料を用いた場合に、第2樹脂の使用量を抑えることができるので、コストダウンを実現することができる。
【0012】
上記の製造方法において、前記第1工程では、前記第1コンベアに、前記第2ウェブを、前記第1ウェブに対し前記第2方向における下流側となる位置に載せてもよい。このような積層体の製造方法によると、第2ウェブが表面において連続して露出した積層体を形成することができる。
【0013】
上記の製造方法において、前記第1工程では、前記第2樹脂として、着色された樹脂を用いてもよい。仮に製造後の積層体や積層体を所定の形に成形した板状体(乗物用内装材等)に対し、塗装や蒸着等によって着色した場合、その表面の着色が剥がれて内部が露出してしまったり、塗装の場合は植物性繊維に着色剤が染み込んでしまったりする可能性がある。しかしながら、上記のような積層体の製造方法によると、このような事態が生ずることを防ぎ、意匠性を向上させることができる。
【0014】
また、本開示は、植物性繊維と第1樹脂とを含む第1ウェブと、前記第1ウェブの表面に交絡し、第2樹脂を含む第2ウェブと、を備える積層体である。
【0015】
このような積層体によると、接着剤等が用いられることなく、第1ウェブと第2ウェブとが殆ど境界の無い状態で構成された積層体を提供することができる。また、第1ウェブによって植物性繊維の繊維感を呈した積層体を提供することができる。さらに、第2ウェブに含まれる第2樹脂として機能性樹脂を用いることで、表面においてその機能を発現可能な積層体を提供することができる。
【0016】
上記構成において、当該積層体は、前記第1ウェブと前記第2ウェブとにより構成される第1層及び第2層を備え、前記第1層の前記第2ウェブの表面の一部に、前記第2層の前記第2ウェブが交絡していてもよい。
【0017】
このような積層体によると、接着剤等が用いられることなく、第1層と第2層とが殆ど境界の無い状態で構成された積層体を提供することができる。
【0018】
上記構成において、前記第2樹脂は、着色された樹脂であってもよい。このような積層体によると、塗装や蒸着等による着色に比して意匠性を向上可能な積層体を提供することができる。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、植物性繊維の繊維感を呈することができる積層体の製造方法及び積層体の提供が可能となる。また、意匠性を向上することができる積層体の製造方法及び積層体の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図3】第1コンベア、積層装置、及び第2コンベアを前上方から視た斜視図
【
図4】トラバーサーを左方に引っ込ませた態様を示す説明図
【
図5】トラバーサーを右方に突き出した態様を示す説明図
【
図6】トラバーサーを左右方向に往復させた態様を示す説明図
【
図7】裁断前の積層体の断面図(
図6のVII-VII線断面)
【発明を実施するための形態】
【0021】
<実施形態>
本開示の実施形態を
図1から
図7によって説明する。本実施形態では、乗物としての自動車(車両)のドアに取り付けられるドアトリム(乗物用内装材)を製造する際に用いられる積層体100を説明する。尚、矢印方向Fを前方、矢印方向Bを後方、矢印方向Uを上方、矢印方向Dを下方、矢印方向Lを左方、矢印方向Rを右方として各図を説明する。
【0022】
図1に示すように、積層体100は、植物性繊維と繊維状の第1樹脂とを含む第1ウェブ11,21,31と、第1ウェブ11,21,31の表面(上面)に交絡し、繊維状の第2樹脂を含む第2ウェブ12,22,32と、を備える。積層体100は、前方に向かうほど上方に傾く形で配された1つの層が複数積層して構成されている。この複数の層は、例えば、第1層10、第1層10の表面に積層した第2層20、及び第2層20の表面に積層した第3層30を含んでいる。各層10,20,30は、それぞれ、左右方向(紙面奥手前方向)を長辺とする帯状をなしている。尚、
図1では、便宜上、上下に重なる層同士の間隔を実際よりも広げて示している。実際には、上下に重なる層同士が当接して交絡している。
【0023】
第1層10は、第1ウェブ11と、第1ウェブ11の前端部に交絡した第2ウェブ12と、により構成される。第2層20は、第1ウェブ21と、第1ウェブ21の前端部に交絡した第2ウェブ22と、により構成される。第3層30は、第1ウェブ31と、第1ウェブ31の前端部に交絡した第2ウェブ32と、により構成される。第1層10の第2ウェブ12の後端部12Aの表面に、第2層20の第2ウェブ22が交絡している。第1層10の第2ウェブ12の後端部12Aの上方であって第2層20の表面には、第3層30の第2ウェブ32の前端部32Aが位置している。各層の第1ウェブ11,21,31の前端部は、その表裏面側や前側に位置するウェブと交絡している。例えば、第2層20の前端部21Aは、第1層10の第1ウェブ11と、第2層20の第2ウェブ22の後端部と、第3層30の第2ウェブ32と、に交絡している。
【0024】
上記植物性繊維としては、植物における、幹、茎、枝、葉、根等に由来する繊維がそのまま用いられていてもよく、これらが、熱処理、乾燥処理、粉砕処理、化学処理等により加工されてなる繊維が用いられていてもよい。具体的には、このような植物性繊維としては、ケナフ、ジュート麻、マニラ麻、サイザル麻、亜麻、苧麻、ヘンプ、雁皮、三椏、椿、バナナ、パイナップル、ココヤシ、トウモロコシ、サトウキビ、バガス、ヤシ(アブラヤシ等)、パピルス、葦、エスパルト、サバイグラス、トッサ、麦、稲、竹、針葉樹(杉、檜等)、広葉樹、カポック、綿花等に由来する線状繊維体を採用することができる。これらの中でも、木質茎を有し、成長が極めて早い一年草であり、優れた二酸化炭素吸収性を有し、大気中の二酸化炭素量の削減、森林資源の有効利用等に貢献するアオイ科植物であるケナフに由来する線状繊維体(ケナフ繊維)であることが特に好ましい。
【0025】
上記繊維状の第1樹脂及び繊維状の第2樹脂の材料としては、熱可塑性樹脂を採用することができ、具体的には、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリ乳酸、ポリカプロラクトン等の脂肪族ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂等を採用することができる。その中でも、ポリプロピレンを用いることが好ましい。また、このような樹脂を主剤とし、この主剤にその他の副剤(添加剤)を添加したもの(練り込んだもの)を、第2樹脂の材料として採用してもよい。第2樹脂を構成する副剤としては、着色された樹脂又は着色剤、撥水剤、耐光剤、難燃剤、帯電防止剤等からなる群のうち1種又は2種以上を採用することができる。本実施形態では、第2樹脂の材料として、ポリプロピレンに対し着色剤、撥水剤、及び耐光剤が添加されたものが採用されている。そして、これらの材料をそれぞれ繊維状に加工したものを、本実施形態における第1樹脂及び第2樹脂とする。
【0026】
続いて、積層体100の製造方法について説明する。
図2には、左方から順に、貯綿室60、コンベア72、カード機70、コンベア(第1コンベア)76、クロスラッパー(積層装置)80、及びコンベア(第2コンベア)78が示されている。これらは、積層体100を製造する製造装置の一部を構成している。貯綿室60は、第1繊維供給部61と、第1繊維供給部61に対し前方(紙面手前側)に配された第2繊維供給部62と、を備える。コンベア72,76は、上面に載せた物体を第1方向としての右方に移動させる。コンベア78は、上面に載せた物体を、第1方向に直交する第2方向としての前方に移動させる(
図4参照)。
【0027】
まず、貯綿室60の第1繊維供給部61及び第2繊維供給部62のうち、第1繊維供給部61の内部に、上記植物性繊維50及び繊維状の第1樹脂51を投入し、第2繊維供給部62の内部に、上記繊維状の第2樹脂52を投入する。第1繊維供給部61の内部では、植物性繊維50及び第1樹脂51が混合される。そして、第1繊維供給部61から混合された植物性繊維50及び第1樹脂51をコンベア72に順次(連続的に)排出し、第2繊維供給部62から第2樹脂52をコンベア72に順次排出する。
【0028】
このとき、各繊維供給部61,62から、混合した植物性繊維50及び第1樹脂51と、第2樹脂52と、をコンベア72の幅方向(
図2において紙面奥手前方向)に横並びにした状態(以下、横並び状態と呼ぶことがある)で載せるようにして排出する。
図2では、横並び状態にされた植物性繊維50及び第1樹脂51と、第2樹脂52と、を繊維群53として示してある。各繊維供給部61,62のそれぞれについて、植物性繊維50、第1樹脂51、及び第2樹脂52を内部に投入する投入量、コンベア72に排出する排出口の大きさ、単位時間当たりの排出量等を調整することで、コンベア72の上面に対し植物性繊維50及び第1樹脂51と、第2樹脂52と、の幅(コンベア72の幅方向における長さ)を調整して載せることができる。
【0029】
次に、繊維群53をコンベア72によってカード機70に移動させる。カード機70は、開繊シリンダ(メインシリンダ)73と、開繊シリンダ73の外周に沿って設けられたウォーカーローラ74及びストリッパーローラ75と、を備える。開繊シリンダ73は、円筒状をなすシリンダ本体73Aと、シリンダ本体73Aの表面(外周面)に形成された複数の刃73Bと、を備える。複数の刃73Bは、例えば、シリンダ本体73Aの表面にメタリックワイヤが巻き付けられることで形成されている。ウォーカーローラ74およびストリッパーローラ75の各表面にも、開繊シリンダ73と同様にメタリックワイヤ等によって構成された刃が形成されている。
【0030】
カード機70は、開繊シリンダ73と他のローラとの間で繊維群53を掻き込むことで、繊維群53を開繊する。開繊シリンダ73は、
図2において右回りに回転し、繊維群53を、表面(刃73B)に引っ掛けて、自身の回転方向に搬送する。ウォーカーローラ74は、開繊シリンダ73との間に繊維群53を掻き込んで、繊維群53に対して開繊処理を行う。ストリッパーローラ75は、ウォーカーローラ74の表面に付着した繊維群53を剥離する。
【0031】
カード機70は、繊維群53を開繊した後、開繊シリンダ73の回転による遠心力によって、繊維群53を空中に放出させる。そして、カード機70は、繊維群53を、上面76Aが第1方向である前方に移動するコンベア76に堆積させて載せる(第1工程)。このとき、繊維群53がある程度交絡する。
図3及び
図4に示すように、コンベア76に堆積した繊維群53は、植物性繊維50と第1樹脂51とにより構成される第1ウェブ13と、第2樹脂52により構成される第2ウェブ14(第1ウェブ13よりも濃い部分として示してある)と、として当該コンベア76の上面76Aの幅方向(前後方向)に横並びにした状態で載せられる。コンベア76の上面76Aは右方に移動しているので、当該上面76Aに繊維群53が順次堆積してなる第1ウェブ13及び第2ウェブ14は、コンベア76によって順次右方に移動させられることにより、全体として左右方向に延びた帯状体(シート状体)であるウェブ群15を形成する。
【0032】
繊維群53は、混合した植物性繊維50及び第1樹脂51と、第2樹脂52とが、上記のように各繊維供給部61,62からコンベア72に横並び状態で載せられて構成されている。従って、繊維群53は、この横並び状態が維持されたまま、カード機70による開繊を経てコンベア76の上面76Aに堆積することで、互いに横並びした状態で上面76Aに載せられた第1ウェブ13及び第2ウェブ14を形成する。尚、第1コンベア76の上面76Aに、第2ウェブ14を、第1ウェブ13の前方となる位置(コンベア78がその上面78Aに載せた物体を移動させる第2方向における下流側)に載せる。また、第1コンベア76の上面76Aに、第2ウェブ14を、その幅(前後方向における長さ)が第1ウェブ13の幅(前後方向における長さ)よりも小さくなるように載せる。第2ウェブ14の幅は、第1ウェブ13の幅の半分程度としてもよい。このような各ウェブ13,14の位置や幅は、上記各繊維供給部61,62への各繊維50,51,52の投入量、各繊維供給部61,62がコンベア72に繊維群53を排出する位置、排出口の大きさ、単位時間当たりの排出量等を調整することで適宜変更することができる。ウェブ群15の幅は、例えば、500mm以上2000mm以下としてもよい。
【0033】
コンベア76によって右方に移動させられるウェブ群15は、積層装置80の外形を構成する箱体81内に順次供給される。コンベア76がウェブ群15を右方に移動させる速度は、例えば2m/min以上5m/min以下としてもよい。
【0034】
積層装置80は、コンベア76から順次供給されるウェブ群15を、その上面78Aが前方に連続的に移動しているコンベア78に載せ変える(第2工程)。積層装置80の箱体81内には、コンベア76の前端部分を構成するトラバーサー77が配されている。
図4から
図6に示すように、トラバーサー77は、その上面77Aに載せられ右方に搬送されるウェブ群15を、第2コンベアとしてのコンベア78の上面78Aに落とすように(降り積もらせるように)して載せ変えつつ、自身が左右方向(コンベア78における幅方向)に引っ込んだり(
図4及び
図6参照)突き出したりする(
図5参照)ことで往復可能(進退可能)な構成とされる。
【0035】
図4に示すように、トラバーサー77が、左方に引っ込みつつ、第1ウェブ13及び第2ウェブ14が横並び状態で上面77Aに載せられたウェブ群15を、コンベア78の上面78Aに連続的に落とすことで、上面78Aにウェブ群15を載せる位置が、左方に向かうほどやや後方(コンベア78の上面78Aの移動方向における上流)に傾く矢印P1に沿って変更される。これにより、第1ウェブ11Cと第2ウェブ12Cとが横並び状態となって、コンベア78の上面78Aの幅方向(左右方向)に延びた帯状体(シート状体)をなす第1層10Cが、上面78Aに形成される。第1層10Cは、左方に向かうほどやや後方に傾いた形で配される。トラバーサー77は、第1層10Cがコンベア78の上面78Aの左側部分78Lまで形成されるよう、左方に引っ込む。
【0036】
次に、
図5に示すように、トラバーサー77が、右方に突き出しつつ、第1ウェブ13及び第2ウェブ14が横並び状態で上面77Aに載せられたウェブ群15を、コンベア78の上面78Aに連続的に落とすことで、上面78Aにウェブ群15を載せる位置が、右方に向かうほどやや後方に傾く矢印P2に沿って変更される。これにより、第1ウェブ21Cと第2ウェブ22Cとが横並び状態となって、コンベア78の上面78Aの幅方向に延びた帯状体をなす第2層20Cが、上面78Aに形成される。第2層20Cは、右方に向かうほどやや後方に傾いた形で配される。
【0037】
第2層20Cは、コンベア78によって前方に順次移動させられている第1層10Cの第1ウェブ11Cと第2ウェブ12Cの表面(上面)に対し、やや後方にズレながら積層する。このとき、第1層10Cの第2ウェブ12Cの表面の一部(少なくとも後端部)に、第2層20Cの第2ウェブ22Cが重なるように、第2層20Cを第1層10Cに積層させる。また、第1層10Cの第1ウェブ11Cの表面全体を第2層20Cで覆うようにして第1層10Cに積層させる。トラバーサー77は、第2層20Cがコンベア78の上面78Aの右側部分78Rまで形成されるよう、右方に突き出す。
【0038】
そして、
図6に示すように、トラバーサー77を左右方向に複数回往復させて、ウェブ群15をコンベア78の上面78Aに載せる位置を、矢印P1及び矢印P2に沿ってコンベア78の幅方向において複数回往復するように変更することで、上層の各ウェブ(第2層20Cにおける第1ウェブ21C及び第2ウェブ22C)がその下層の各ウェブ(第1層10Cにおける第1ウェブ11C及び第2ウェブ12C)に対し後方にズレながら積層した積層体100Aを形成する(
図7参照)。積層体100Aでは、第2層20Cの上面に、第1ウェブ31C及び第2ウェブ32Cによって形成された第3層30Cが後方にズレながら積層している。
図7では、便宜上、上下に重なる層同士の間隔を実際よりも広げて示している。実際には、上下に重なる層同士が当接して交絡している。尚、積層体100Aの幅(左右方向の長さ)は、例えば、500mm以上2000mm以下としてもよい。また、コンベア78が積層体100Aを前方に移動させる速度は、例えば2m/min以上5m/min以下としてもよい。
【0039】
図7に示すように、図示しない裁断装置によって積層体100Aを所定長さごとに裁断することにより、複数の積層体100を得る。積層体100は、例えば加熱後に所望の形でプレス成形することで、ドアトリム等の乗物用内装材や、その前駆体の板状体(プレボード)として加工することができる。
【0040】
続いて、本実施形態の効果について説明する。本実施形態では、第1方向としての右方に移動する第1コンベア76に、植物性繊維50と第1樹脂51とを含む第1ウェブ13と、第2樹脂52を含む第2ウェブ14と、を当該第1コンベア76の幅方向に横並びにした状態で載せ、第1方向に移動させる第1工程と、第1コンベア76から順次供給される第1ウェブ13及び第2ウェブ14を、第1方向に交わる第2方向としての前方に移動する第2コンベア78に載せ変える第2工程と、を含み、第2工程では、順次供給される第1ウェブ13及び第2ウェブ14について、第2方向に移動する第2コンベア78に載せる位置を、第2コンベア78の幅方向において往復するように変更することで、第1ウェブ13(第1ウェブ21C,31C)及び第2ウェブ14(第2ウェブ22C,32C)がズレながら積層した積層体100Aを形成する、積層体100Aの製造方法を示した。
【0041】
このような積層体100Aの製造方法によると、第1ウェブ11Cと第2ウェブ12Cとからなる第1層10Cの表面に、第1ウェブ21Cと第2ウェブ22Cとからなる第2層20Cがズレて積層した積層体100Aを形成させることができる。これにより、第2ウェブ12C,22C,32Cが表面又は裏面において連続して露出した積層体100Aを製造することができる。また、接着剤等を用いることなく、第1ウェブ11C,21C,31Cと第2ウェブ12C,22C,32Cとが殆ど境界の無い状態で構成された積層体100Aを製造することができる。さらに、第1ウェブ11C,21C,31Cによって植物性繊維50の繊維感を呈することができる。また、第2ウェブ12C,22C,32Cに含まれる第2樹脂52として機能性樹脂を用いることで、表面又は裏面においてその機能を発現可能な積層体100Aを製造することができる。
【0042】
第2工程では、第1ウェブ11C,21C及び第2ウェブ12C,22Cにより第1層10C及び第2層20Cを形成し、第1層10Cの第2ウェブ12Cの表面の一部に第2層20Cの第2ウェブ22Cを積層させて、積層体100Aを形成する。
【0043】
このような積層体100Aの製造方法によると、第2ウェブ12C,22Cが積層体100Aの表面において連続して露出した積層体100Aを形成することができる。また、第1層10Cの第2ウェブ12Cと第2層20Cの第2ウェブ22Cとの間から第1ウェブ11Cが露出することを抑制することができる。
【0044】
第1工程では、第1コンベア76に、第2ウェブ14を、その幅が第1ウェブ13の幅よりも小さくなるように載せる。
【0045】
このような積層体100Aの製造方法によると、第1ウェブ11C,21C,31Cよりも厚みが薄い第2ウェブ12C,22C,32Cが、当該積層体100Aの表面又は裏面において連続して露出した積層体100Aを製造することができる。これにより、第1ウェブ11C,21C,31Cによる植物性繊維50の繊維感をより呈した積層体100Aを提供することができる。また、仮に第2ウェブ12C,22C,32Cの第2樹脂52として比較的高価な材料を用いた場合に、第2樹脂52の使用量を抑えることができるので、コストダウンを実現することができる。
【0046】
第1工程では、第1コンベア76に、第2ウェブ14を、第1ウェブ13に対し第2方向における下流側となる位置に載せる。このような積層体100Aの製造方法によると、第2ウェブ12C,22C,32Cが表面において連続して露出した積層体100Aを形成することができる。
【0047】
第1工程では、第2樹脂52として、着色された樹脂を用いる。仮に製造後の積層体や積層体を所定の形に成形した板状体(乗物用内装材等)に対し、塗装や蒸着等によって着色した場合、その表面の着色が剥がれて内部が露出してしまったり、塗装の場合は植物性繊維に着色剤が染み込んでしまったりする可能性がある。しかしながら、上記のような積層体100Aの製造方法によると、このような事態が生ずることを防ぎ、意匠性を向上させることができる。
【0048】
また、本実施形態では、植物性繊維50と第1樹脂51とを含む第1ウェブ11,21,31と、第1ウェブ11,21,31の表面に交絡し、第2樹脂52を含む第2ウェブ12,22,32と、を備える積層体100を示した。
【0049】
このような積層体100によると、接着剤等が用いられることなく、第1ウェブ11,21,31,と第2ウェブ12,22,32とが殆ど境界の無い状態で構成された積層体100を提供することができる。また、第1ウェブ11,21,31によって植物性繊維50の繊維感を呈した積層体100を提供することができる。さらに、第2ウェブ12,22,32に含まれる第2樹脂52として機能性樹脂を用いることで、表面においてその機能を発現可能な積層体100を提供することができる。
【0050】
積層体100は、第1ウェブ11,21と第2ウェブ12,22とにより構成される第1層10及び第2層20を備え、第1層10の第2ウェブ22の表面の一部に、第2層20の第2ウェブ22が交絡している。
【0051】
このような積層体100によると、接着剤等が用いられることなく、第1層10と第2層20とが殆ど境界の無い状態で構成された積層体100を提供することができる。
【0052】
第2樹脂52は、着色された樹脂である。このような積層体100によると、塗装や蒸着等による着色に比して意匠性を向上可能な積層体100を提供することができる。
【0053】
<他の実施形態>
本開示は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されず、例えば次のような実施形態も本開示の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0054】
(1)上記実施形態では、第1コンベアに載せられた第1ウェブ及び第2ウェブを第2コンベアに落とすように(降り積もらせるように)載せ変えることとしたが、これに限定されない。例えば、第1コンベアに載せられた第1ウェブ及び第2ウェブがトラバーサーから落とされる間も帯状体(シート状体)を維持可能な程度に交絡している場合は、この帯状の第1ウェブ及び第2ウェブ(ウェブ群)を第2コンベアの幅方向において折り畳むようにして第2コンベアに載せ変えることとしてもよい。
【0055】
(2)上記実施形態以外にも、積層装置の構成は適宜変更可能である。例えば、積層装置は、トラバーサーに対向するように配され、トラバーサーから載せ変えられるウェブ群をトラバーサーと共に挟み込むように右方から支持する支持部を備えていてもよい。この支持部は、トラバーサーと共に往復し、トラバーサーとの間にウェブ群を流し込んで第2コンベア上にウェブ群を載せる構成とされていてもよい。
【0056】
(3)上記実施形態で例示した積層体の製造方法及び積層体は、車両用に限定されず、種々の乗物において提供されてもよい。例えば、地上の乗物としての列車や遊戯用車両、飛行用乗物としての飛行機やヘリコプター、海上や海中用乗物としての船舶や潜水艇などの乗物についても上記積層体の製造方法及び積層体を適用することができる。
【符号の説明】
【0057】
10,10C…第1層、11,11C,13,21,21C,31,31C…第1ウェブ、12,12C,14,22,22C,32,32C…第2ウェブ、20,20C…第2層、50…植物性繊維、51…第1樹脂、52…第2樹脂、76…コンベア(第1コンベア)、78…コンベア(第2コンベア)、100,100A…積層体