(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023133735
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】計算機システム及び対策の立案方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/26 20120101AFI20230920BHJP
G06Q 10/06 20230101ALI20230920BHJP
【FI】
G06Q50/26
G06Q10/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038888
(22)【出願日】2022-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】弓部 良樹
(72)【発明者】
【氏名】池本 悠
(72)【発明者】
【氏名】高橋 麻美
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA06
5L049CC35
(57)【要約】
【課題】災害復旧の対策に要するコスト及びリソースの提供状況を考慮して対策を決定する。
【解決手段】施設における災害復旧に関する対策を立案する計算機システムは、対策の実施対象である施設毎の、災害発生による機会損失の額である第1コスト及び自己投資による対策に要する第2コストを管理するためのコスト情報と、外部から提供されるリソースを管理するための提供リソース情報と、を保持する。計算機システムは、提供リソース情報を参照して、指定された施設においてリソースを用いる対策を実施するために必要なリソースを確保できるか否かを判定し、第1コスト、第2コスト、及び判定の結果に基づいて、指定された施設に対して実施する対策を選択する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
施設における災害復旧に関する対策を立案する計算機システムであって、
プロセッサ、前記プロセッサに接続される記憶装置、及び前記プロセッサに接続されるネットワークインタフェースを有する計算機を少なくとも一つ含み、
前記記憶装置は、
対策の実施対象である施設毎の、災害発生による機会損失の額である第1コスト及び自己投資による対策に要する第2コストを管理するためのコスト情報と、
外部から提供されるリソースを管理するための提供リソース情報と、
を保持し、
前記プロセッサは、
前記提供リソース情報を参照して、指定された前記施設において前記リソースを用いる対策を実施するために必要な前記リソースを確保できるか否かを判定し、
前記第1コスト、前記第2コスト、及び前記判定の結果に基づいて、指定された前記施設に対して実施する対策を選択することを特徴とする計算機システム。
【請求項2】
請求項1に記載の計算機システムであって、
前記プロセッサは、
前記リソースを用いる対策を実施するために必要な前記リソースを確保できると判定された場合、前記提供リソース情報に基づいて前記リソースを用いる対策を生成し、指定された前記施設に対して実施する対策として、前記リソースを用いる対策を選択し、
前記リソースを用いる対策を実施するために必要な前記リソースを確保できず、かつ、前記第1コストが前記第2コスト以上である場合、指定された前記施設に対して実施する対策として、前記自己投資による対策を選択することを特徴とする計算機システム。
【請求項3】
請求項2に記載の計算機システムであって、
前記プロセッサは、
前記第1コスト及び前記第2コストに基づいて、前記リソースを用いる対策のコストの上限値を算出し、
前記上限値に基づいて、提供可能な前記リソースを選択する第1マッチング処理を実行することによって、前記リソースを用いる対策を生成することを特徴とする計算機システム。
【請求項4】
請求項3に記載の計算機システムであって、
前記プロセッサは、前記第1コスト及び前記第2コストのいずれか小さい方のコストに、前記施設の運用者の利益から求められる係数を乗算することによって前記上限値を算出することを特徴とする計算機システム。
【請求項5】
請求項2に記載の計算機システムであって、
前記対策は、指定された前記施設の電力供給に関する対策であって、
前記プロセッサは、
指定された前記施設において災害復旧に必要な電力を算出し、
算出された前記電力に基づいて、前記自己投資による対策を生成することを特徴とする計算機システム。
【請求項6】
請求項2に記載の計算機システムであって、
前記プロセッサは、
前記リソースを用いる対策が選択された前記施設から災害発生によるリソース提供の要求を受け付け、
前記リソースを用いる対策が選択された前記施設に提供可能な前記リソースを提供する提供者からの前記リソースの提供可否を受け付け、
前記提供者から提供が可能な旨の応答があった前記リソースの中から、前記リソースを用いる対策が選択された前記施設に実際に提供する前記リソースを選択する第2マッチング処理を実行し、
前記第2マッチング処理によって選択された前記リソースの提供計画を生成することを特徴とする計算機システム。
【請求項7】
請求項2に記載の計算機システムであって、
前記プロセッサは、前記第1コスト、前記第2コスト、及び選択された前記対策を表示する画面を表示することを特徴とする計算機システム。
【請求項8】
計算機システムが実行する施設における災害復旧に関する対策の立案方法であって、
前記計算機システムは、
プロセッサ、前記プロセッサに接続される記憶装置、及び前記プロセッサに接続されるネットワークインタフェースを有する計算機を少なくとも一つ含み、
対策の実施対象である施設毎の、災害発生による機会損失の額である第1コスト及び自己投資による対策に要する第2コストを管理するためのコスト情報と、外部から提供されるリソースを管理するための提供リソース情報と、を管理し、
前記対策の立案方法は、
前記少なくとも一つの計算機が、前記提供リソース情報を参照して、指定された前記施設において前記リソースを用いる対策を実施するために必要な前記リソースを確保できるか否かを判定する第1のステップと、
前記少なくとも一つの計算機が、前記第1コスト、前記第2コスト、及び前記判定の結果に基づいて、指定された前記施設に対して実施する対策を選択する第2のステップと、を含むことを特徴とする対策の立案方法。
【請求項9】
請求項8に記載の対策の立案方法であって、
前記第2のステップは、
前記少なくとも一つの計算機が、前記リソースを用いる対策を実施するために必要な前記リソースを確保できると判定された場合、前記提供リソース情報に基づいて前記リソースを用いる対策を生成し、指定された前記施設に対して実施する対策として、前記リソースを用いる対策を選択するステップと、
前記少なくとも一つの計算機が、前記リソースを用いる対策を実施するために必要な前記リソースを確保できず、かつ、前記第1コストが前記第2コスト以上である場合、指定された前記施設に対して実施する対策として、前記自己投資による対策を選択するステップと、を含むことを特徴とする対策の立案方法。
【請求項10】
請求項9に記載の対策の立案方法であって、
前記対策の立案方法は、
前記少なくとも一つの計算機が、前記第1コスト及び前記第2コストに基づいて、前記リソースを用いる対策のコストの上限値を算出する第3のステップと、
前記少なくとも一つの計算機が、前記上限値に基づいて、提供可能な前記リソースを選択する第1マッチング処理を実行することによって、前記リソースを用いる対策を生成する第4のステップと、を含むことを特徴とする対策の立案方法。
【請求項11】
請求項10に記載の対策の立案方法であって、
前記第3のステップは、前記少なくとも一つの計算機が、前記第1コスト及び前記第2コストのいずれか小さい方のコストに、前記施設の運用者の利益から求められる係数を乗算することによって前記上限値を算出するステップを含むことを特徴とする対策の立案方法。
【請求項12】
請求項9に記載の対策の立案方法であって、
前記対策は、指定された前記施設の電力供給に関する対策であって、
前記対策の立案方法は、
前記少なくとも一つの計算機が、指定された前記施設において災害復旧に必要な電力を算出するステップと、
前記少なくとも一つの計算機が、算出された前記電力に基づいて、前記自己投資による対策を生成するステップと、を含むことを特徴とする対策の立案方法。
【請求項13】
請求項9に記載の対策の立案方法であって、
前記少なくとも一つの計算機が、前記リソースを用いる対策が選択された前記施設から災害発生によるリソース提供の要求を受け付けるステップと、
前記少なくとも一つの計算機が、前記リソースを用いる対策が選択された前記施設に提供可能な前記リソースを提供する提供者からの前記リソースの提供可否を受け付けるステップと、
前記少なくとも一つの計算機が、前記提供者から提供が可能な旨の応答があった前記リソースの中から、前記リソースを用いる対策が選択された前記施設に実際に提供する前記リソースを選択する第2マッチング処理を実行するステップと、
前記少なくとも一つの計算機が、前記第2マッチング処理によって選択された前記リソースの提供計画を生成するステップと、を含むことを特徴とする対策の立案方法。
【請求項14】
請求項9に記載の対策の立案方法であって、
前記少なくとも一つの計算機が、前記第1コスト、前記第2コスト、及び選択された前記対策を表示する画面を表示するステップを含むことを特徴とする対策の立案方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、災害の復旧に関する対策を立案するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として特許文献1がある。特許文献1には、リソースごとの提供形態の違いを考慮して最適なリソース配分を実現するリソース融通支援装置及びリソース融通支援方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている方法では、災害発生時に、複数の事業者間で、災害復旧に用いるリソースを融通し合うことで効果的に災害復旧を行うことができる。しかし、リソースの融通では対応できないケースがある。例えば、災害発生による停電リスクが高く、電力供給に用いるリソースの提供が期待できない場合、災害発生時にリソースが不足し、機会損失が発生する可能性が大きくなる。そのため、事業者は、リソースの融通以外の対策を検討する必要がある。
【0005】
以上のように、対策にかかるコスト及びリソースの提供状況を考慮して対策を決定することが難しいという課題がある。
【0006】
本発明は、前述の課題を鑑みてなされたものであり、対策にかかるコスト及びリソースの提供状況を考慮して対策を立案するシステム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願において開示される発明の代表的な一例を示せば以下の通りである。すなわち、施設における災害復旧に関する対策を立案する計算機システムであって、プロセッサ、前記プロセッサに接続される記憶装置、及び前記プロセッサに接続されるネットワークインタフェースを有する計算機を少なくとも一つ含み、前記記憶装置は、対策の実施対象である施設毎の、災害発生による機会損失の額である第1コスト及び自己投資による対策に要する第2コストを管理するためのコスト情報と、外部から提供されるリソースを管理するための提供リソース情報と、を保持し、前記プロセッサは、前記提供リソース情報を参照して、指定された前記施設において前記リソースを用いる対策を実施するために必要な前記リソースを確保できるか否かを判定し、前記第1コスト、前記第2コスト、及び前記判定の結果に基づいて、指定された前記施設に対して実施する対策を選択する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の代表的な一形態によれば、対策にかかるコスト及びリソースの提供状況を考慮した対策を立案できる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例1の災害対策立案システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図2A】実施例1の事業者DBのデータ構造の一例を示す図である。
【
図2B】実施例1の事業者DBのデータ構造の一例を示す図である。
【
図3】実施例1の災害リスクDBのデータ構造の一例を示す図である。
【
図4】実施例1の電力DBのデータ構造の一例を示す図である。
【
図5A】実施例1の設備DBのデータ構造の一例を示す図である。
【
図5B】実施例1の設備DBのデータ構造の一例を示す図である。
【
図6】実施例1の提供リソースDBのデータ構造の一例を示す図である。
【
図7】実施例1のマッチング結果DBのデータ構造の一例を示す図である。
【
図8】実施例1の派遣計画DBのデータ構造の一例を示す図である。
【
図9A】実施例1の対策履歴DBのデータ構造の一例を示す図である。
【
図9B】実施例1の対策履歴DBのデータ構造の一例を示す図である。
【
図10】実施例1の精算DBのデータ構造の一例を示す図である。
【
図11A】実施例1の対策立案システムの利用フローの一例を示す図である。
【
図11B】実施例1の対策立案システムの利用フローの一例を示す図である。
【
図12】実施例1の端末に表示される画面の一例を示す図である。
【
図13】実施例1の端末に表示される画面の一例を示す図である。
【
図14】実施例1の端末に表示される画面の一例を示す図である。
【
図15】実施例1の端末に表示される画面の一例を示す図である。
【
図16】実施例1の対策立案装置が実行する対策立案処理の一例を説明するフローチャートである。
【
図17】実施例1における対策の選択方法のイメージを示す図である。
【
図18】実施例1の対策立案装置が実行する外部リソース充足判定処理の一例を説明するフローチャートである。
【
図19】実施例1のリソースマッチングのイメージを示す図である。
【
図20A】実施例1の端末に表示される画面の一例を示す図である。
【
図20B】実施例1の端末に表示される画面の一例を示す図である。
【
図21】実施例1の端末に表示される画面の一例を示す図である。
【
図22】実施例1の対策立案装置が実行する派遣計画生成処理の一例を説明するフローチャートである。
【
図23A】実施例1の派遣計画生成処理のイメージを示す図である。
【
図23B】実施例1の派遣計画生成処理のイメージを示す図である。
【
図24】実施例1の端末に表示される画面の一例を示す図である。
【
図25】実施例1の端末に表示される画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例を、図面を用いて説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。本発明の思想ないし趣旨から逸脱しない範囲で、その具体的構成を変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。
【0011】
以下に説明する発明の構成において、同一又は類似する構成又は機能には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0012】
本明細書等における「第1」、「第2」、「第3」等の表記は、構成要素を識別するために付するものであり、必ずしも、数又は順序を限定するものではない。
【0013】
図面等において示す各構成の位置、大きさ、形状、及び範囲等は、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、及び範囲等を表していない場合がある。したがって、本発明では、図面等に開示された位置、大きさ、形状、及び範囲等に限定されない。
【実施例0014】
実施例1では、外部から提供されるリソースを考慮して災害復旧のための対策を立案する災害対策立案システムについて、災害発生時の電力の供給に関する対策を例に説明する。以下の説明では、災害復旧のための対策を単に対策と記載する。
【0015】
実施例1では、災害発生時に地域住民の安全を確保するために避難所を開設し、運用する地方自治体、災害時の電力供給がクリティカルな障碍者/高齢者施設の運営者、冷凍庫に在庫を保有していて災害時の停電が機会損失を伴う小売業/飲食業の事業者等が対策の立案を行う事業者(対策立案者)となる。
【0016】
災害対策立案システムは、(1)事業者自身で非常用発電機等のリソースを自己投資で導入する対策、(2)外部リソースであるEV(Electric Vehicle)を保有している提供者(個人、レンタカー業及び配送業の事業者、並びに一般企業等)から、災害発生時にEVを派遣してもらい停電復旧まで電力供給を行う対策について、災害による機会損失の額及び対策に要するコストを考慮して、コストを抑えつつ、履行確率が高い対策を選択する。
【0017】
以下の説明では、(1)の対策を自己投資対策と記載し、(2)の対策を外部リソース活用対策と記載する。
【0018】
災害対策立案システムは、外部リソース活用対策が選択された場合、災害発生後に、施設の停電状況に基づいてEVの派遣が必要な否かを判断し、登録されているEVの提供者に派遣を要請する。提供者は要請に対して派遣の可否を回答する。システムは、回答結果に基づいて、EVの派遣計画(リソースの提供計画)を生成し、実際にEVの派遣を依頼する。
【0019】
ここで、EVを用いる場合、インセンティブは提供者の要望に沿って支払われてるため、インセンティブを適切に設定しないと、自己投資を行う場合よりコストが大きくなってしまう可能性がある。そこで、システムは、対策の立案に伴ってインセンティブの設定を行う。
【0020】
図1は、実施例1の災害対策立案システムの構成の一例を示すブロック図である。
【0021】
災害対策立案システムは、対策立案装置100及び複数の端末102、103から構成される。対策立案装置100は、ネットワーク104を介して、対策立案者である事業者が利用する端末102と接続し、ネットワーク105を介して、EVの提供者が利用する端末103と接続する。ネットワーク104、105は、LAN(Local Area Network)及びWAN(Wide Area Network)であり、接続方式は有線及び無線のいずれでもよい。なお、ネットワーク104、105は同一のネットワークでもよい。
【0022】
対策立案装置100は、プロセッサ110、記憶装置111、及び図示しないネットワークインタフェースを有する。なお、対策立案装置100は、キーボード及びマウス等の入力装置、並びに、ディスプレイ等の出力装置を有してもよい。
【0023】
プロセッサ110は、記憶装置111に格納されるプログラムを実行することによって、ユーザ管理部121、リソース募集/管理部122、対策立案部123、リソースマッチング部124、派遣計画立案部125、実績/精算管理部126、及び情報提示/取得部127として稼働する。以下の説明では、機能部を主語に処理を説明する場合、プロセッサ110がプログラムにしたがって処理を実行していることを示す。
【0024】
記憶装置111は、処理に使用するデータベースとして、事業者DB131、災害リスクDB132、電力DB133、設備DB134、提供リソースDB135、マッチング結果DB136、派遣計画DB137、対策履歴DB138、及び精算DB139を格納する。
【0025】
端末102、103は、一般的なPC(Personal Computer)、タブレット端末、及びスマートフォン等であり、図示しないプロセッサ、メモリ、ネットワークインタフェース、入力装置、及び出力装置を有する。
【0026】
なお、対策立案装置100は、複数の計算機から構成される計算機システムとして実現してもよいし、仮想的な計算機として実現してもよい。
【0027】
災害対策立案システムの利用形態は以下の通りである。
【0028】
(手順1)対策立案者が端末102を用いて対策立案装置100にアクセスし、対策の実施対象の避難所及び店舗の施設に関する情報を登録し、施設へのEVの提供を募集する。EV提供者は、端末103を用いて対策立案装置100にアクセスし、EVを提供可能な施設に対してリソース登録を行う。
【0029】
(手順2)対策立案装置100は、EVの登録状況、災害発生時の機会損失の額、自己投資のコスト等を考慮して一つ以上の対策を立案し、また、選択する。
【0030】
(手順3)対策立案者は、災害が発生した場合、外部リソース活用対策が選択された施設の停電状況に基づいてEV派遣が必要か否かを判断し、登録されているEV提供者にEVの派遣を要請する。EV提供者は要請に対して提供可否を回答する。対策立案装置100は、回答結果に基づいて、EVの派遣計画を生成し、EV提供者にEVの派遣を依頼する。
【0031】
次に、対策立案装置100が管理するDBのデータ構造について説明する。
【0032】
図2A及び
図2Bは、実施例1の事業者DB131のデータ構造の一例を示す図である。図面のスペースの関係で二つの図面に分けている。
【0033】
事業者DB131は、対策の実施対象である施設に関する情報を管理するためのデータベースである。
【0034】
事業者DB131には、例えば、ユーザID201、施設ID202、施設名称203、位置204、業種/施設タイプ205、給電タイプ206、契約電力207、平均使用電力量208、施設面積209、平均売上210、及び在庫規模211を含むエントリを格納する。一つの施設に対して一つのエントリが存在する。なお、エントリに含まれるフィールドは前述したものに限定されない。前述したフィールドのいずれかを含まなくてもよいし、また、他のフィールドを含んでもよい。
【0035】
給電タイプ206は、施設においてEVから電力を供給する場合の供給タイプを格納するフィールドである。「なし」は、施設に給電設備が存在していないことを示す。「V2H」はVehicle To Homeに対応していることを示す。
【0036】
平均使用電力量208は、一日の平均使用電力量を格納するフィールドである。平均売上210は、一日の平均売上を格納するフィールドである。在庫規模211は、店舗にて保管されている在庫の規模を格納するフィールドである。施設が店舗の場合に、平均売上210及び在庫規模211の値が設定される。施設が避難所及び障害者施設等の場合には平均売上210及び在庫規模211は空欄となる。
【0037】
図3は、実施例1の災害リスクDB132のデータ構造の一例を示す図である。
【0038】
災害リスクDB132は、エリアの災害発生リスクを管理するためのデータベースである。
【0039】
災害リスクDB132は、例えば、エリアID301、位置302、及び災害リスク303を含むエントリを格納する。一つのエリアに対して一つのエントリが存在する。なお、エントリに含まれるフィールドは前述したものに限定されない。前述したフィールドのいずれかを含まなくてもよいし、また、他のフィールドを含んでもよい。
【0040】
災害リスク303は、災害が発生する確率を格納するフィールドである。なお、災害の種別毎に確率が設定されてもよい。
【0041】
図4は、実施例1の電力DB133のデータ構造の一例を示す図である。
【0042】
電力DB133は、施設に設置される機器の消費電力に関する情報を管理するためのデータベースである。電力DB133は、施設の必要電力量を見積もるために用いられる。
【0043】
電力DB133は、例えば、機器名称401、コンセント402、V2H403、避難所404、小売/飲食405、消費電力406、必要台数407、及び利用時間408を含むエントリを格納する。一つの機器に対して一つのエントリが存在する。なお、エントリに含まれるフィールドは前述したものに限定されない。前述したフィールドのいずれかを含まなくてもよいし、また、他のフィールドを含んでもよい。
【0044】
コンセント402は、機器の給電タイプがコンセントに対応しているか否かを示すフラグを格納するフィールドである。機器の給電タイプがコンセントに対応している場合、コンセント402には「1」が格納される。V2H403は、機器の給電タイプがV2Hに対応しているか否かを示すフラグを格納するフィールドである。機器の給電タイプがV2Hに対応している場合、V2H403には「1」が格納される。
【0045】
避難所404は、避難所で標準的に利用されることを想定した機器であるか否かを示すフラグを格納するフィールドである。避難所で標準的に利用されることを想定した機器である場合、避難所404には「1」が格納される。小売/飲食405は、小売業/飲食業の店舗で標準的に利用されることを想定した機器であるか否かを示すフラグを格納するフィールドである。小売業/飲食業の店舗で標準的に利用されることを想定した機器である場合、小売/飲食405には「1」が格納される。
【0046】
消費電力406は、一つの機器が消費する電力を格納するフィールドである。必要台数407は、単位面積あたりに必要な機器の台数を格納するフィールドである。ここでは、単位面積は100m2としている。利用時間408は、一日の機器の標準的な利用時間を格納するフィールドである。
【0047】
なお、時節によって消費する電力等が異なるため、夏季、冬季、及び端境等の時節毎に消費電力、必要台数、及び利用時間を管理するようにしてもよい。
【0048】
対策立案装置100は、事業者DB131及び電力DB133を用いて、災害発生時に施設において必要な電力を見積もる。
【0049】
図5A及び
図5Bは、実施例1の設備DB134のデータ構造の一例を示す図である。
【0050】
設備DB134には、非常用電源情報500及び給電情報510が格納される。
【0051】
非常用電源情報500は、非常用発電機の諸元及びコストに関する情報を格納する。非常用電源情報500は、例えば、製品ID501、出力502、導入コスト503、維持管理コスト504、及び耐用年数505を含むエントリを格納する。一つの非常用発電機に対して一つのエントリが存在する。なお、エントリに含まれるフィールドは前述したものに限定されない。前述したフィールドのいずれかを含まなくてもよいし、また、他のフィールドを含んでもよい。
【0052】
対策立案装置100は、災害発生時に施設に必要な電力を見積もった後、当該電力に基づいて出力502を参照して、導入する非常用発電機を選択し、自己投資のコストを見積もる。
【0053】
給電情報510は、EVの給電タイプ(V2H、コンセント給電の給電機)のそれぞれの最大出力に関する情報を格納する。給電情報510は、例えば、給電タイプ511及び出力512を含むエントリを格納する。一つの給電タイプに対して一つのエントリが存在する。なお、エントリに含まれるフィールドは前述したものに限定されない。前述したフィールドのいずれかを含まなくてもよいし、また、他のフィールドを含んでもよい。
【0054】
災害発生に施設に必要な電力がEVの給電タイプの最大出力より大きい場合、EVを用いた給電では対応できないことになる。
【0055】
図6は、実施例1の提供リソースDB135のデータ構造の一例を示す図である。
【0056】
提供リソースDB135は、提供者によって登録されたEVに関する情報を管理するためのデータベースである。提供リソースDB135は、例えば、提供者ID601、リソースID602、車種603、容量604、給電機持参605、及び提供可能エリア606を含むエントリを格納する。一つのEVに対して一つのエントリが存在する。なお、エントリに含まれるフィールドは前述したものに限定されない。前述したフィールドのいずれかを含まなくてもよいし、また、他のフィールドを含んでもよい。
【0057】
容量604は、EVの電力容量を格納するフィールドである。給電機持参605は、提供者がコンセント式の給電機とともにEVの提供が可能であるか否かを示すフラグを格納するフィールドである。コンセント式の給電機とともにEVの提供が可能である場合、給電機持参605には「有」が格納される。
【0058】
提供可能エリア606は、EVの提供が可能なエリアを格納するフィールドである。提供可能エリア606には、施設ID202に設定された施設の識別情報のリストが格納される。
【0059】
EVの提供者は端末103を用いて対策立案装置100にアクセスし、EVを提供可能な施設に対してリソース登録を行う。当該登録の結果が提供リソースDB135に格納される。
【0060】
図7は、実施例1のマッチング結果DB136のデータ構造の一例を示す図である。
【0061】
マッチング結果DB136は、外部リソース活用対策におけるEVのマッチング結果及び提供実績を管理するためのデータベースである。マッチング結果DB136には、例えば、マッチングID701、施設ID702、リソースID703、マッチング日時704、確認日時705、提供可否706、SoC707、提供開始日時708、及び提供終了日時709を含むエントリを格納する。施設及びEVの組合せに対して一つのエントリが存在する。なお、エントリに含まれるフィールドは前述したものに限定されない。前述したフィールドのいずれかを含まなくてもよいし、また、他のフィールドを含んでもよい。
【0062】
マッチング日時704は、マッチングが行われた日時を格納するフィールドである。確認日時705は、災害発生後にEVの提供が可能な否かを確認した日時を格納するフィールドである。提供可否706は、EVの提供可否の問合せに対する回答を格納するフィールドである。SoC707は、EVの充電率(State Of Charge)を格納するフィールドである。提供開始日時708及び提供終了日時709は、実際にEVを提供した日時及びEVが返却された日時を格納するフィールドである。
【0063】
図8は、実施例1の派遣計画DB137のデータ構造の一例を示す図である。
【0064】
派遣計画DB137は、施設へのEVの派遣に関する計画を管理するためのデータベースである。派遣計画DB137は、例えば、リソースID801、マッチングID802、出発地点803、出発日時804、到着地点805、到着日時806、及びステータス807を含むエントリを格納する。EVのステータス、出発地点、及び到着地点の組合せに対して一つのエントリが存在する。なお、エントリに含まれるフィールドは前述したものに限定されない。前述したフィールドのいずれかを含まなくてもよいし、また、他のフィールドを含んでもよい。
【0065】
図8に示す派遣計画DB137には、リソースIDが「R004」であるEVが提供場所から施設に移動し、施設にて給電を行い、給電後、任意の地点に移動して待機する派遣計画を表すエントリ群が格納されている。
【0066】
図9A及び
図9Bは、実施例1の対策履歴DB138のデータ構造の一例を示す図である。図面のスペースの関係で二つの図面に分けている。
【0067】
対策履歴DB138は、立案された対策の履歴を管理するためのデータベースである。対策履歴DB138は、例えば、ユーザID901、施設ID902、対策立案日時903、必要電力904、必要電力量905、期待値906、自己投資コスト907、リソース期待数908、コスト上限909、充足可否910、リソース数911、及び対策912を含むエントリを格納する。なお、エントリに含まれるフィールドは前述したものに限定されない。前述したフィールドのいずれかを含まなくてもよいし、また、他のフィールドを含んでもよい。
【0068】
必要電力904は、災害発生時に施設において必要な電力を格納するフィールドである。必要電力量905は、災害発生時に施設において必要な電力量を格納するフィールドである。
【0069】
期待値906は、機会損失の期待値(額)を格納するフィールドである。自己投資コスト907は、自己投資対策に要するコストを格納するフィールドである。リソース期待数908は、提供されるEVの期待数を格納するフィールドである。コスト上限909は、外部リソース活用対策のコストの上限金額を格納するフィールドである。
【0070】
充足可否910は、電力及び電力量をまかなうためのEVを確保できるか否かを示す値を格納するフィールドである。リソース数911は、マッチング処理によってマッチングしたEVの数を格納するフィールドである。対策912は、選択された対策を格納するフィールドである。
【0071】
図10は、実施例1の精算DB139のデータ構造の一例を示す図である。
【0072】
精算DB139は、マッチング処理に伴う対策立案者から対策立案装置100の運用者に支払われるマッチング手数料、及び対策立案者からEVの提供者に支払われるインセンティブを管理するためのデータベースである。精算DB139は、例えば、マッチングID1001、支払日時1002、マッチング手数料1003、及びインセンティブ1004を含むエントリを格納する。マッチング手数料又はインセンティブの支払いに対して一つのエントリが存在する。なお、エントリに含まれるフィールドは前述したものに限定されない。前述したフィールドのいずれかを含まなくてもよいし、また、他のフィールドを含んでもよい。
【0073】
次に、対策立案装置100が実行する処理の詳細を説明する。
【0074】
図11A及び
図11Bは、実施例1の対策立案システムの利用フローの一例を示す図である。
図12及び
図13は、実施例1の端末102に表示される画面の一例を示す図である。
図14及び
図15は、実施例1の端末103に表示される画面の一例を示す図である。
図16は、実施例1の対策立案装置100が実行する対策立案処理の一例を説明するフローチャートである。
図17は、実施例1における対策の選択方法のイメージを示す図である。
図18は、実施例1の対策立案装置100が実行する外部リソース充足判定処理の一例を説明するフローチャートである。
図19は、実施例1のリソースマッチングのイメージを示す図である。
図20A及び
図20Bは、実施例1の端末102に表示される画面の一例を示す図である。
図21は、実施例1の端末102に表示される画面の一例を示す図である。
図22は、実施例1の対策立案装置100が実行する派遣計画生成処理の一例を説明するフローチャートである。
図23A及び
図23Bは、実施例1の派遣計画生成処理のイメージを示す図である。
図24及び
図25は、実施例1の端末102に表示される画面の一例を示す図である。
【0075】
図11A及び
図11Bは、対策立案装置100の利用フローを示す図であり、対策立案者、EV提供者、及び対策立案装置100の間のやりとりを示している。利用フローは、対策立案フェーズ、発災フェーズ、状況把握/準備フェーズ、リソース提供フェーズ、及び復旧後フェーズに分けることができる。以下、各フェーズの操作及び処理の詳細について説明する。
【0076】
対策立案者は端末102を用いて対策立案装置100にアクセスし、EV提供者は端末103を用いて対策立案装置100にアクセスする。
【0077】
まず、対策立案フェーズについて説明する。
【0078】
対策立案者及びEV提供者は、対策立案装置100によるサービスを利用するためのユーザ登録を行う(P1101、P1102)。対策立案装置100のユーザ管理部121はユーザ登録処理を実行する。
【0079】
対策立案者は、施設の登録及びリソースの募集の操作を行う(P1103)。具体的には、リソース募集/管理部122は、情報提示/取得部127を介して、
図12及び
図13に示す画面1200、1300を端末102に表示する。
【0080】
端末102には、まず、画面1200が表示される。画面1200は、施設登録欄1201及び施設リスト欄1202を含む。施設登録欄1201は、施設を登録するための欄であり、入力欄1211、1212、1213、1214、1215、1216、1217、1218、及び操作ボタン1221、1222、1223を含む。
【0081】
対策立案者は、入力欄1211-1218に値を入力し、操作ボタン1221を押下した場合、施設の情報が事業者DB131に登録され、また、施設リスト欄1202に登録した施設の情報が表示される。全ての施設を登録するまで同様の操作が繰り返し実行され、全ての施設を登録した後、操作ボタン1223が押下される。複数の施設を一括で登録する場合、対策立案者は操作ボタン1222を押下して、CSVファイル等を入力する。
【0082】
なお、業務/施設タイプに避難所等、機会損失が発生しない施設については、入力欄1217、1218等への入力は無効化される。
【0083】
操作ボタン1223が押下された場合、端末102には画面1300が表示される。画面1300は、施設表示欄1301、詳細表示欄1302、及び操作ボタン1303を含む。施設表示欄1301は、登録された施設の情報を表示する欄であり、詳細表示欄1302は、登録された施設の所在地を示した地図を表示する欄である。対策立案者は、施設表示欄1301及び詳細表示欄1302を確認し、リソースの募集を開始するための操作ボタン1303を押下する。
【0084】
EV提供者は、対策立案者のリソース募集を参考にして、提供するEVを登録する(P1104)。具体的には、リソース募集/管理部122は、情報提示/取得部127を介して、
図14及び
図15に示す画面1400、1500を端末103に表示する。
【0085】
端末103には、まず、画面1400が表示される。画面1400は、リソース登録欄1401及びリソースリスト欄1402を含む。リソース登録欄1401は、リソースを登録するための欄であり、入力欄1411、1412、1413、及び操作ボタン1421、1422、1423を含む。
【0086】
EV提供者は、入力欄1411-1413に値を入力し、操作ボタン1421を押下した場合、EVの情報が提供リソースDB135に登録され、また、リソースリスト欄1402に登録したEVの情報が表示される。なお、この時点では、提供可能エリア606は空欄である。全てのEVを登録するまで同様の操作が繰り返し実行され、全てのEVを登録した後、操作ボタン1423が押下される。複数のEVを一括で登録する場合、EV提供者は操作ボタン1422を押下して、CSVファイル等を入力する。
【0087】
操作ボタン1423が押下された場合、端末103には画面1500が表示される。画面1500は、検索欄1501、施設表示欄1502、詳細表示欄1503、及び操作ボタン1504を含む。検索欄1501は、リソース募集を行っている施設を検索するための欄である。EV提供者は検索欄1501に住所等を入力する。リソース募集/管理部122は、入力された住所の近辺でリソース募集を行っている施設を検索し、施設表示欄1502に施設の情報を表示し、詳細表示欄1503に施設を記した地図を表示する。
図15では、三つの施設が表示されている。EV提供者は、施設表示欄1502のチェックボックスを操作することによって、提供を希望する施設を選択し、操作ボタン1504を押下する。当該操作によって、提供可能エリア606に施設の識別情報が格納される。
【0088】
対策立案者は、対策立案装置100に対策の立案を依頼する(P1105)。対策立案装置100は、対策立案処理を実行する。ここで、
図16及び
図17を用いて対策立案処理について説明する。
【0089】
対策立案処理では、対策立案装置100は、一つの施設に対して以下の処理を実行する。ここでは、施設f_aに対して実行される処理を例に説明する。
【0090】
まず、対策立案部123は、事業者DB131及び災害リスクDB132に基づいて、機会損失の期待値(第1コスト)を算出する(ステップS1601)。なお、機会損失が発生しない施設の場合、ステップS1601の処理は省略される。
【0091】
対策立案部123は、事業者DB131から施設のエントリを取得し、エントリの位置204に基づいて災害リスクDB132を参照し、施設が存在するエリアに対応するエントリの災害リスク303の値を取得する。対策立案部123は式(1)を用いて第1コストcost1_aを算出する。ここで、aは施設を識別する文字であり、sale_aは平均売上210の値を表し、stock_aは在庫規模211の値を表し、risk_aは災害リスク303の値を表す。
【0092】
【0093】
式(1)は、災害発生から3日間(72時間)の売上及び在庫の損失を想定した機会損失の期待値の合計値を算出する式である。なお、式(1)は一例であって第1コストの算出方法はこれに限定されない。
【0094】
次に、対策立案部123は、事業者DB131及び電力DB133に基づいて、施設の必要電力を算出する(ステップS1602)。具体的には以下のような処理が実行される。
【0095】
(S1602-1)対策立案部123は、施設のエントリの業種/施設タイプ205に基づいて施設のタイプを特定し、また、給電タイプ206に基づいて給電タイプを特定する。対策立案部123は、電力DB133を参照し、避難所404及び小売/飲食405、並びに、コンセント402及びV2H403の値に基づいて、災害発生時に施設で利用される機器を特定する。例えば、業種/施設タイプ205が「自治体/避難所」かつ給電タイプ206が「V2H」である場合、対策立案部123は、V2H403及び避難所404のそれぞれに「1」が格納されるエントリを検索する。
【0096】
(S1602-2)対策立案部123は、施設のエントリの施設面積209及び検索された機器のエントリの必要台数407に基づいて特定された機器の台数を算出する。さらに、対策立案部123は、特定された機器のエントリの消費電力406及び利用時間408を用いて、災害発生から3日間の機器の必要電力(kWh)を算出する。
【0097】
次に、対策立案部123は、施設の必要電力及び非常用電源情報500に基づいて、自己投資対策のコスト(第2コスト)を算出する(ステップS1603)。対策立案部123は、第1コスト及び第2コストをコスト情報として管理する。
【0098】
具体的には、対策立案部123は、非常用電源情報500の各エントリの出力502に基づいて、施設の必要電力を充足する非常用電源を特定する。すなわち、自己投資対策が生成される。対策立案部123は、前述の結果に基づいて、自己投資対策のコストcost2_aを算出する。自己投資対策のコストは例えば、式(2)を用いて算出される。ここで、icost_aは導入コスト503の値を表し、оcost_aは維持管理コスト504の値を表し、y_aは耐用年数505の値を表す。
【0099】
【0100】
次に、対策立案部123は、第1コスト及び第2コストに基づいて、外部リソース活用対策のコストの上限値を算出する(ステップS1604)。
【0101】
ここで、第1コスト、第2コスト、及び外部リソース活用対策のコストは、
図17のような関係で表される。外部リソース活用対策のコストが、第1コスト及び第2コストのいずれか小さいコストよりも大きい場合、外部リソースを活用する以外の対策が望ましい。外部リソース活用対策のコストは、対策立案装置100が提供するサービスの定額利用料(年額)、マッチング成立時に支払われるマッチング手数料、及びEVの提供実績に応じてEV提供者に支払われるインセンティブの合計である。そこで、外部リソース活用対策のコストの上限値costST_aは式(3)で表すことができる。ここで、PROFITは、外部リソース活用対策のコストの上限値を決めるためのパラメータであり、第1コスト及び第2コストのいずれか小さいコストからPROFIT分の利益を対策立案者が得られるように外部リソース活用対策のコストを決めることを意味する。
【0102】
【0103】
次に、リソースマッチング部124は、外部リソース充足判定処理を実行する(ステップS1605)。ここで、
図18及び
図19を用いて外部リソース充足判定処理の詳細を説明する。
【0104】
リソースマッチング部124は、施設の必要電力に基づいてEVの利用可否を判定する(ステップS1801)。
【0105】
具体的には、リソースマッチング部124は、給電情報510の給電タイプ511を参照し、施設に必要な機器の給電タイプに対応するエントリを特定する。リソースマッチング部124は、特定されたエントリの出力512の値が、機器の電力より小さい場合、リソースマッチング部124は、EVを利用できないと判定する。
【0106】
リソースマッチング部124は、ステップS1801の判定結果に基づいて、外部リソース活用対策を立案できるか否かを判定する(ステップS1802)。
【0107】
外部リソース活用対策を立案できない場合、リソースマッチング部124は外部リソース充足判定処理を終了する。このとき、リソースマッチング部124は、「外部リソース活用対策の立案不可」を対策立案部123に出力する。この場合、外部リソース活用対策は選択肢から除外されることになる。
【0108】
外部リソース活用対策を立案できる場合、リソースマッチング部124は、利用可能なEVを特定する(ステップS1803)。
【0109】
具体的には、リソースマッチング部124は、提供リソースDB135を参照し、提供可能エリア606に施設の識別情報を含み、かつ、EVの給電タイプが施設の給電タイプと一致するエントリを検索する。
【0110】
リソースマッチング部124はリソースマッチングを行い(ステップS1804)、その後、外部リソース充足判定処理を終了する。
【0111】
具体的には、リソースマッチング部124は、式(5)及び式(6)の制約条件のもとで、式(4)で表される最適化問題を解く。式(4)は線形計画問題であり、最大化するx_a、e、EV_eを施設に割り当てるか否か(1or0)のフラグの組合せを求める問題である。すなわち、式(4)で表される最適化問題は、各施設の電力供給量を最大化し、かつ、EVの移動距離、並びに、マッチング手数料及びインセンティブの総和を最小化する施設及びEVの組合せを算出する問題である。
【0112】
supplyTGT_aは施設の電力供給目標量を表し、reliability_aは施設の派遣確度を表し、travelT_a,eはEV_eの施設への移動時間を表し、unitsupply_eはEV_eの施設単位供給量を表し、insentive_a,eはEV_eの施設に対するインセンティブを表し、commision_a,eはEV_eと施設aのマッチング手数料を表し、w_1、w_2、w_3は重みを表す。マッチング手数料及びインセンティブは、例えば、ベースとなる費用をあらかじめ設定しておく。
【0113】
【0114】
【0115】
【0116】
式(5)は各施設の必要供給量をEVによる電力供給量が満足する必要があることを意味する。式(6)は各施設の外部リソース活用対策のコストの上限を上回ってはいけないことを意味する。
【0117】
なお、マッチング結果DB136の過去のデータから、対象施設に対してマッチングが成立し、提供が可能であったEVの割合を算出し、派遣確度として用いてもよい。
【0118】
図19はリソースマッチングのイメージを表している。被提供者Aの施設及び被提供者Bの施設の周辺に6人のEV提供者が存在しており、被提供者Aの施設には、提供者A、提供者B、提供者C、及び提供者Dが保有するリソースがマッチングされ、被提供者Bの施設には、提供者D、提供者E、及び提供者Fが保有するリソースがマッチングされている。
【0119】
リソースマッチング部124は、解が得られた場合、マッチング結果とともに、「外部リソース活用対策の立案可」を対策立案部123に出力する。また、施設の周囲にEVが存在しない等、EVの登録状況によって制約条件を満たす解が得られない場合、リソースマッチング部124は、「外部リソース活用対策の立案不可」を対策立案部123に出力する。
【0120】
以上が、外部リソース充足判定処理の説明である。
図16の説明に戻る。
【0121】
対策立案部123は、第1コスト、第2コスト、及び外部リソース充足判定処理の結果に基づいて対策を選択する(ステップS1606)。
【0122】
具体的には、外部リソース充足判定処理の結果として「外部リソース活用対策の立案可」が得られた場合、対策立案部123は外部リソース活用対策を選択する。外部リソース充足判定処理の結果として「外部リソース活用対策の立案不可」が得られ、かつ、第1コストが第2コスト以上の場合、対策立案部123は自己投資対策を選択する。外部リソース充足判定処理の結果として「外部リソース活用対策の立案不可」が得られ、かつ、第1コストが第2コストより小さい場合、対策立案部123は「何もしない」を対策として選択する。
【0123】
なお、第1コストが存在せず、外部リソース充足判定処理の結果として「外部リソース活用対策の立案不可」が得られた場合、対策立案部123は自己投資対策を選択する。
【0124】
対策立案部123は、対策履歴DB138にエントリを追加し、当該エントリの各フィールドに一連の処理の結果を設定する。外部リソース活用対策が選択された場合、対策立案部123は、マッチング結果DB136に、リソースマッチングの結果を反映する。なお、この時点では、マッチング結果DB136に格納されるエントリのマッチングID701、施設ID702、リソースID703、及びマッチング日時704以外のフィールドは空欄である。
【0125】
対策立案部123は、情報提示/取得部127を介して、選択された対策に関する情報を対策立案者が操作する端末102に表示する。例えば、対策立案部123は、
図20A及び
図20Bに示すような画面を表示する。
【0126】
端末102には、
図20Aに示す画面2000が表示される。画面2000は、対策表示欄2001、詳細表示欄2002、及び操作ボタン2003を含む。対策表示欄2001は、施設毎の対策を表示する欄である。詳細表示欄2002は、対策の立案に関する詳細情報を表示する欄であり、アイコン2011を押下した場合に情報が表示される。詳細表示欄2002にはコストのグラフ、必要な電力、及び手数料等が表示される。外部リソース活用対策が選択されている場合、詳細表示欄2002には地図ボタンが表示される。当該ボタンが押下された場合、
図20Bに示すように、詳細表示欄2002にはマッチング結果が重畳された地図が表示される。対策立案者は、選択された対策を確認し、操作ボタン2003を押下することによって、対策が確定する。
【0127】
なお、第1コスト及び第2コストの少なくともいずれか一方は対策立案者によって入力されてもよい。第1コストが入力された場合、ステップS1601の処理を省略することができる。第2コストが入力された場合、ステップS1603の処理を省略することができる。
【0128】
以上が対策立案処理の説明である。
図11Aの説明に戻る。以下の説明では、対策立案処理が実行された結果、外部リソース活用対策が選択されたものとする。
【0129】
対策立案装置100は、EV提供者にマッチング結果を通知し、EV提供者はマッチング結果を確認する(P1106)。
【0130】
対策立案者は、対策立案装置100の運用者に対してマッチング手数料の支払いを行う(P1107)。対策立案装置100の実績/精算管理部126は、精算処理を実行する。具体的には、実績/精算管理部126は、精算DB139にエントリを追加し、エントリのマッチングID1001、支払日時1002、及びマッチング手数料1003に値を設定する。
【0131】
以上が対策立案フェーズの利用フローの説明である。次に、災害発生後に外部リソース活用対策を実施する場合を例に、発災フェーズ、状況把握/準備フェーズ、リソース提供フェーズ、及び復旧後フェーズの利用フローについて説明する。
【0132】
なお、実施例1では、災害発生後にEVを施設に派遣する利用方法を想定しているが、台風等予め災害の発生を予測できる場合、災害発生前にEVを施設に派遣して災害に備える利用方法でもよい。
【0133】
なお、対策立案者は、対策を一度立案した後、再度、対策の立案を依頼してもよい。状況の変化に応じて最適な対策を選択することができる。例えば、自己投資対策から外部リソース活用対策への変更ができる。
【0134】
災害が発生した(発災フェーズ)後、状況把握/準備フェーズでは、対策立案者は被害状況を確認する(P1108)。例えば、施設において停電が発生しているか否かを確認する。対策立案者は、外部リソース活用対策の実施が必要であると判断した場合、端末102を操作して対策立案装置100にEVの派遣要請を行う(P1109)。具体的には、情報提示/取得部127は、
図21に示す画面2100を端末102に表示する。
【0135】
画面2100は、施設選択欄2101及び操作ボタン2102を含む。施設選択欄2101は、EVの派遣要請を行う施設を選択する欄である。なお、施設選択欄2101には外部リソース活用対策が選択された施設のみが表示される。対策立案者は、チェックボックスを操作することによってEVの派遣要請を行う施設を選択し、操作ボタン2102を押下する。
【0136】
対策立案装置100の派遣計画立案部125は、派遣要請を受け付けた場合、選択された施設のマッチング結果に基づいてEV提供者にEVの提供が可能か否かを問い合わせる。なお、EVの提供可否の問合せとともに、EVの充電率についても問合せを行ってもよい。
【0137】
EV提供者は、対策立案装置100からの問合せに対して、EVの提供可否を判断し、応答を行う(P1110)。
【0138】
派遣計画立案部125は、マッチング結果DB136の該当エントリの提供可否706に応答の内容を設定する。なお、EVの充電率についても問合せを行った場合、派遣計画立案部125は、マッチング結果DB136の該当エントリのSoC707に応答の内容を設定する。
【0139】
派遣計画立案部125は応答に基づいて災害時マッチング処理を実行する。具体的には、派遣計画立案部125は、改めて、式(4)に示す最適化問題を解くことによって、施設に提供可能なEVをマッチングする。さらに、派遣計画立案部125は、災害時マッチング処理の結果に基づいて、派遣計画生成処理を実行する。派遣計画立案部125は、生成された派遣計画を対策立案者及びEV提供者に送信する。ここで、
図22を用いて派遣計画生成処理について説明する。
【0140】
派遣計画立案部125は、提供可能なEVの中からリソースを選択する(ステップS2201)。ここでは、施設とEVの提供元との間の距離が近い順に選択されるものとする。
【0141】
派遣計画立案部125は、選択したEVの提供元から施設への派遣計画を生成する(ステップS2202)。
【0142】
派遣計画立案部125は、提供可能な全てのEVの派遣計画を生成したか否かを判定する(ステップS2203)。派遣計画立案部125は、生成された派遣計画を派遣計画DB137に格納する。
【0143】
提供可能な全てのEVの派遣計画を生成していない場合、派遣計画立案部125は、ステップS2201に戻り、同様の処理を実行する。
【0144】
提供可能な全てのEVの派遣計画を生成した場合、派遣計画立案部125は派遣計画生成処理を終了する。
【0145】
図23Aは、EV提供者からの応答結果を反映したマッチング結果を示す。被提供者Aの施設には、EV(R001)、EV(R002)、EV(R003)、EV(R004)、EV(R005)の5台のEVがマッチングされていたが、提供者Bから提供不可の応答を受け取っている。そのため、被提供者Aの施設にはEV(R001)、EV(R002)、EV(R004)、EV(R005)の4台のEVが提供される。4台のEVの各々について、例えば、
図23Bに示すような派遣計画が生成される。白部分は移動を表し、黒部分は給電を表し、斜線部分は待機を表す。
【0146】
施設との距離が近い順に、給電を行うようにEVを派遣することによって、災害発生後から3日間の迅速かつ継続的な電力供給を実現できる。
図23Bでは、1台のEVが給電している場合、施設に到着しているEVは待機状態となっている。
【0147】
以上が派遣計画生成処理の説明である。
図11Bの説明に戻る。
【0148】
リソース提供フェーズでは、対策立案者は派遣計画を確認する(P1111)。例えば、派遣計画立案部125は、情報提示/取得部127を介して、端末102に
図24に示すような画面2400を表示する。画面2400は、施設表示欄2401、派遣計画表示欄2402、及び操作ボタン2403を含む。派遣計画表示欄2402は、施設に対するEVの派遣計画の詳細を表示する欄であり、アイコン2411を押下した場合に情報が表示される。派遣計画表示欄2402には、施設における電力の供給予測に関するグラフ、及び派遣されるEVの派遣計画等が表示される。
【0149】
対策立案者は、派遣計画の内容等を確認し、操作ボタン2403を押下する。対策立案装置100は、当該操作を受け付けた場合、EV提供者に派遣計画を送信する。EV提供者は、送信された派遣計画を確認し(P1112)、当該派遣計画に基づいてEVを施設に派遣する(P1113)。対策立案者は、提供されたEVを用いて給電を行う(P1114)。
【0150】
停電が復旧した場合、復旧後フェーズに移行し、対策立案者はEV提供者にEVを返却するための手続を行い(P1115)、EV提供者はEVを回収する(P1116)。このとき、対策立案装置100の実績/精算管理部126は対策実績登録処理を実行する。具体的には、実績/精算管理部126は、マッチング結果DB136を参照し、EVの派遣計画に基づいて、対応するエントリの提供開始日時708及び提供終了日時709に値を設定する。
【0151】
対策立案者は、EV提供の実績を確認して、EV提供者に対してインセンティブを支払い(P1117)、EV提供者はインセンティブを受け取る(P1118)。
【0152】
対策立案装置100の実績/精算管理部126は、情報提示/取得部127を介して、端末102に
図25に示すような画面2500を表示する。画面2500は、実績テーブル2501及び操作ボタン2502を含む。対策立案者は、実績テーブル2501を参照して、提供実績を確認し、操作ボタン2502を押下することによってインセンティブの支払いを確定する。実績/精算管理部126は、当該操作に伴って精算処理を実行する。具体的には、実績/精算管理部126は、精算DB139にエントリを追加し、エントリのマッチングID1001、支払日時1002、及びインセンティブ1004に値を設定する。
【0153】
以上のように、対策立案システムは、外部のEVの提供状況、並びに、第1コスト及び第2コストに基づいて、コストを抑え、かつ、履行確率が高い対策を選択できる。実施例1では、災害発生時の電力供給の対策を一例として説明したが、適用分野はこれに限定されず、幅広く適用できることは言うまでもない。例えば、人及び物資等をリソースとして扱うこともできる。
【0154】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。また、例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために構成を詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、各実施例の構成の一部について、他の構成に追加、削除、置換することが可能である。
【0155】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、本発明は、実施例の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードによっても実現できる。この場合、プログラムコードを記録した記憶媒体をコンピュータに提供し、そのコンピュータが備えるプロセッサが記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出す。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施例の機能を実現することになり、そのプログラムコード自体、及びそれを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。このようなプログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、CD-ROM、DVD-ROM、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)、光ディスク、光磁気ディスク、CD-R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROMなどが用いられる。
【0156】
また、本実施例に記載の機能を実現するプログラムコードは、例えば、アセンブラ、C/C++、perl、Shell、PHP、Python、Java(登録商標)等の広範囲のプログラム又はスクリプト言語で実装できる。
【0157】
さらに、実施例の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを、ネットワークを介して配信することによって、それをコンピュータのハードディスクやメモリ等の記憶手段又はCD-RW、CD-R等の記憶媒体に格納し、コンピュータが備えるプロセッサが当該記憶手段や当該記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出して実行するようにしてもよい。
【0158】
上述の実施例において、制御線や情報線は、説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。全ての構成が相互に接続されていてもよい。