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特開2023-133737パネル用吊り具及びこれを用いたパネルの楊重方法
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  • 特開-パネル用吊り具及びこれを用いたパネルの楊重方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023133737
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】パネル用吊り具及びこれを用いたパネルの楊重方法
(51)【国際特許分類】
   B66C 1/62 20060101AFI20230920BHJP
【FI】
B66C1/62 G
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038891
(22)【出願日】2022-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】502215557
【氏名又は名称】株式会社吉田工商
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】吉田 和資
【テーマコード(参考)】
3F004
【Fターム(参考)】
3F004AA08
3F004AB01
3F004AC01
3F004AD04
3F004AF06
3F004EA27
(57)【要約】
【課題】安定してパネルを吊り下げることができ、パネルが傾斜しても外れることがなく、上方から牽引することにより倒して重ねたパネルを起立させることもできるパネル用吊り具及びこれを用いたパネルの楊重方法を提供すること。
【解決手段】天板22の両側端部に切欠き23を有するパネル2を吊り上げるパネル用吊り具1は、上方から牽引可能な吊上げ部10と、吊上げ部10の下部に設けられた係止部11とを備え、係止部11の両側に、パネル2の天板22の切欠き23を挟んだ両側を着脱可能に挟持する挟持部15a,15bが形成されている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板の両側端部に切欠きを有するパネルを吊り上げるパネル用吊り具であって、
上方から牽引可能な吊上げ部と、該吊上げ部の下部に設けられた係止部とを備え、
前記係止部の両側に、前記パネルの天板の前記切欠きを挟んだ両側を着脱可能に挟持する挟持部が形成されていることを特徴とするパネル用吊り具。
【請求項2】
前記係止部は、前記切欠きの上下にそれぞれ位置し、互いに接離可能な上板及び下板を備え、前記上板及び下板の両側部が、接近時に前記天板の前記切欠きを挟んだ両側を挟持する前記挟持部となっていることを特徴とする請求項1に記載のパネル用吊り具。
【請求項3】
前記上板と前記下板の間に、前記上板と前記下板とを離間方向に付勢するバネを配置し、正逆方向に回動操作することにより、前記上板と下板とを接離させるクランプレバーを備える請求項2に記載のパネル用吊り具。
【請求項4】
前記上板の長辺の長さは前記切欠きの幅より広く、前記下板の長辺の長さは前記切欠きの幅よりも大きく、且つ、前記下板の短辺の長さは前記切欠きの幅よりも短いことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のパネル用吊り具。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のパネル用吊り具を用いたパネルの楊重方法であって、前記パネルの天板の両側端部に前記パネル用吊り具を配置し、前記天板の前記切欠きを挟んだ両側を前記係止部の両側に形成された前記挟持部により上下から挟持し、前記吊上げ部を上方から牽引して、前記パネルの両側を吊り上げることを特徴とするパネルの楊重方法。
【請求項6】
前記係止部は互いに接離可能な上板及び下板を備え、前記上板と前記下板の間に、前記上板と前記下板とを離間方向に付勢するバネが配置され、前記上板及び前記下板の両側部に前記挟持部が形成され、前記上板及び前記下板を前記切欠きの上下にそれぞれ配置してからクランプレバーを正方向に回動操作して、前記上板と前記下板を前記バネの付勢力に抗して接近させることにより、前記挟持部で前記天板の前記切欠きを挟んだ両側を挟持し、前記クランプレバーを逆方向に回動操作して、前記上板と前記下板を前記バネの付勢力により離間させることを特徴とする請求項5に記載のパネルの楊重方法。
【請求項7】
前記上板の長辺の長さは前記切欠きの幅より広く、前記下板の長辺の長さは前記切欠きの幅よりも大きく、且つ、前記下板の短辺の長さは前記切欠きの幅よりも短く、前記上板と前記下板を離間させてから、前記下板を回転させて、前記下板の短辺方向を前記切欠きの幅方向と一致させ、前記切欠きを通して前記下板を上方へ引き抜くことにより、前記パネル用吊り具を前記パネルから取り外すことを特徴とする請求項6に記載のパネルの楊重方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上面両側端部に切り欠きを有するパネルを吊り上げるパネル用吊り具及びこれを用いたパネルの楊重方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両が通過する際に発生する騒音を外部に漏れにくくするために、道路の外側縁に沿って防音パネルを設置してある。
このような防音パネルを施工するには、道路の外側縁に沿って適宜間隔ごとに断面H形の支柱を立設し、クレーン等で吊り上げた防音パネルを隣接する支柱の溝間に落とし込み、複数段積み重ねるのが一般的である。
【0003】
従来、防音パネルを吊り上げるには、防音パネルの周囲にベルトスリングをかけ回し、当該ベルトスリングのアイにクレーン等から吊り下げたフックを引っ掛けて吊り上げていた。
このような方法では、防音パネルにベルトスリングをかけるのが面倒であるばかりか、防音パネルを支柱間に落とし込んだ後にも、ベルトスリングを取り外す等の煩雑な作業が必要であった。
【0004】
また、特許文献1には、防音パネルの上面左右端部に設けられた切欠部の内形より幅が狭く、且つ、長さが大きく、長手方向の中心から偏心した位置で吊り具により吊り下げられる係止具を、防音パネルの切欠部内に挿入し、切欠部内縁に係止して防音パネルを吊り下げる技術が記載されている。
上記特許文献1に開示されているような係止具は、切欠部内縁に当接するだけで簡単に係止することができ、支柱間に落とし込んだ後にも切欠部から引き抜くだけで済むため、防音パネルにベルトスリングを掛けたり、ベルトスリングを外す手間が不要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-90037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1に記載のような係止具は、一枚の平板より成り、切欠部内縁に引っ掛けてあるだけなので、係止状態が非常に不安定である。したがって、吊り上げ時に防音パネルが傾くと切欠部から脱出しやすく、この結果、強風に煽られた際に防音パネルが落下するなどの危険性があった。
また、防音パネルは積み重ねて運搬するのが一般的であるが、このような係止具は、防音パネルを起立させて吊り上げるまでは安定して切欠部内縁に係止することができず、人手による補助が必要で、防音パネルを起立させるのは重労働であった。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、安定してパネルを吊り下げることができ、パネルが傾斜しても外れることがなく、上方から牽引することにより倒して重ねたパネルを起立させることもできるパネル用吊り具及びこれを用いたパネルの楊重方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、天板の両側端部に切欠きを有するパネルを吊り上げるパネル用吊り具に関し、上方から牽引可能な吊上げ部と、該吊上げ部の下部に設けられた係止部とを備え、前記係止部の両側に、前記パネルの天板の前記切欠きを挟んだ両側を着脱可能に挟持する挟持部が形成されている。
【0009】
前記係止部は、前記切欠きの上下にそれぞれ位置し、互いに接離可能な上板及び下板を備え、前記上板及び下板の両側部が、接近時に前記天板の前記切欠きを挟んだ両側を挟持する前記挟持部となっていることがある。
【0010】
この場合、前記上板と前記下板の間に、前記上板と前記下板とを離間方向に付勢するバネを配置し、正逆方向に回動操作することにより、前記上板と下板とを接離させるクランプレバーを備えることが望ましい。
【0011】
前記上板の長辺の長さは前記切欠きの幅より広く、前記下板の長辺の長さは前記切欠きの幅よりも大きく、且つ、前記下板の短辺の長さは前記切欠きの幅よりも短くするとよい。
【0012】
本発明のパネルの楊重方法は、前記パネルの天板の両側端部に前記パネル用吊り具を配置し、前記天板の前記切欠きを挟んだ両側を前記係止部の両側に形成された前記挟持部により上下から挟持し、前記吊上げ部を上方から牽引して、前記パネルの両側を吊り上げる。
【0013】
前記係止部は互いに接離可能な上板及び下板を備え、前記上板と前記下板の間に、前記上板と前記下板とを離間方向に付勢するバネが配置され、前記上板及び前記下板の両側部に前記挟持部が形成され、前記上板及び前記下板を前記切欠きの上下にそれぞれ配置してからクランプレバーを正方向に回動操作して、前記上板と前記下板を前記バネの付勢力に抗して接近させることにより、前記挟持部で前記天板の前記切欠きを挟んだ両側を挟持し、前記クランプレバーを逆方向に回動操作して、前記上板と前記下板を前記バネの付勢力により離間させることがある。
【0014】
前記上板の長辺の長さは前記切欠きの幅より広く、前記下板の長辺の長さは前記切欠きの幅よりも大きく、且つ、前記下板の短辺の長さは前記切欠きの幅よりも短く、前記上板と前記下板を離間させてから、前記下板を回転させて、前記下板の短辺方向を前記切欠きの幅方向と一致させ、前記切欠きを通して前記下板を上方へ引き抜くことにより、前記パネル用吊り具を前記パネルから取り外すとよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、係止部の両側に形成した挟持部でパネルの天板の切欠きを挟んだ両側を挟持するので、パネル用吊り具を安定してパネルに取り付けることができ、吊上げたパネルが傾いたり、振動してもパネル用吊り具が外れることがなく、パネル吊り上げ作業の安全性が増す。
また、パネルを倒した状態でもパネル用吊り具を安定して取り付けることが可能であり、クレーン等を用いて吊上げ部を上方から牽引することにより、倒れたパネルを起立させることができ、パネルの吊り上げ作業に要する労力が低減される。
【0016】
互いに接離可能な上板及び下板の両側部を挟持部とすれば、上板と下板とを接離させるだけで両側の挟持部を同時に着脱することができる。
【0017】
上板と下板とを離間方向に付勢するバネを配置することにより、開いた上板及び下板を切欠きの上下に配置しやすくなり、クランプレバーを回動させるだけで、速やかに挟持部を天板に着脱することができる。
【0018】
下板の長辺の長さを切欠きの幅よりも大きく、且つ、下板の短辺の長さを切欠きの幅よりも短くすると、上板と下板を離間させてから、下板を回転させてその短辺方向を切欠きの幅方向と一致させ、下板を上方へ引き抜くことができるので、遮音パネルの幅方向外側に係止部を引き出すのに十分な空間が無い場合でも、吊り具を遮音パネルから取り外すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第一の実施形態を示すパネル用吊り具の解放状態における側面図である。
図2】本発明の第一の実施形態を示すパネル用吊り具の解放状態における正面図である。
図3】本発明の第一の実施形態を示すパネル用吊り具の底面図である。
図4】本発明の第一の実施形態を示すパネル用吊り具の固定状態における側面図である。
図5】本発明の第一の実施形態を示すパネル用吊り具の固定状態における正面図である。
図6】本発明の第一の実施形態に係るパネル用吊り具の取付手順を示す斜視図である。
図7】本発明の第一の実施形態に係るパネル用吊り具の取り外し手順を示す概略平面図である。
図8】本発明の第一の実施形態に係るパネルの引き起こし手順を示す斜視図である。
図9】本発明の第二の実施形態を示すパネル用吊り具の使用状態における側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
なお、本発明は、実施形態に限定されないことはいうまでもない。
【0021】
[第一の実施形態]
図1図8は、本発明の第一の実施形態を示す。
図1及び図2は、第一の実施形態を示すパネル用吊り具の解放状態における側面図と正面図であり、図3は、第一の実施形態を示すパネル用吊り具の底面図であり、図4及び図5は、第一の実施形態を示すパネル用吊り具の固定状態における側面図と正面図であり、図6は、パネル用吊り具の取付手順を示す斜視図であり、図7は、パネル用吊り具の取り外し手順を示す平面図であり、図8は、パネルの引き起こし手順を示す斜視図である。
【0022】
第一の実施形態において、パネル用吊り具1は、防音性を有するパネル2(図6参照)を吊り上げて支柱間に建て込むために用いる。
パネル2は、図6の(ア)に示すように、パネル本体20と、パネル本体20の両側面に沿って取り付けられた断面溝形の側枠21と、パネル本体20の上端面に沿って取り付けられた天板22を備える。両側の側枠21は、フランジ間に形成される溝がパネル2の幅方向外方に向いて開口しており、側枠21のウェブの上端部は幅方向外側に屈曲されて、天板22の延長部22’となっている。
また、天板22の両側端部に形成された延長部22’には、幅方向外側に開口するU字状の切欠き23がそれぞれ形成されている。
【0023】
図1図5に示すように、パネル用吊り具1は、上方から牽引可能な吊上げ部10と、吊上げ部10の下部に設けられた係止部11と、クランプレバー12とを備える。
吊上げ部10は、鋼等の金属を素材とする帯板状の吊上げ部本体100を有し、吊上げ部本体100の上端部にワイヤー取付部101が設けられる。また、吊上げ部本体100の下端には、ネジ軸102の上端が固定されている。
【0024】
係止部11は、上下に対向する上板13及び下板14を備え、上板13及び下板14の両側部が、パネル2の天板22の切欠き23を挟んだ両側をそれぞれ着脱可能に挟持する挟持部15a,15bとなっている。
上板13は、長辺の長さがパネル2の切欠き23の幅よりも長い略長方形である。上板13の下面には一方の短辺に沿って棒材130が取り付けられている。
上板13の上面には、断面角形のレバー受け台131が固定される。レバー受け台131の下片は上片よりも上板13の短辺方向一側へ長く延びており、この延びた部分に、パネル2の天板22に当接可能な当接ボルト132が取り付けられる。
上板13及びレバー受け台131は、吊上げ部10のネジ軸102に摺動可能に挿通されている。
【0025】
下板14は、長辺の長さがパネル2の切欠き23の幅よりも長く、短辺の長さが切欠き23の幅よりも短い長方形である。下板14の上面には、一方の短辺に沿って棒材140が取り付けられている。棒材140の一端は下板14の一方の長辺に達しないよう短くなっている。
下板14の棒材140と逆側の短辺と一方の長辺との交差する角部には角取り部141が形成されている。
また、下板14は、上板13の下方においてネジ軸102に挿通され、ネジ軸102に螺合したナット103によって下板14の下降が規制されている。
【0026】
上板13と下板14は、上板13の棒材130と下板14の棒材140が長辺方向の逆側に位置し、レバー受け台131に設けた当接ボルト132と下板14の角取り部141が短辺方向に同じ側に位置するよう対向して配置される。
また、上板13と下板14の間には、上板13と下板14とを離間方向に付勢するバネ16が配置されている。
【0027】
クランプレバー12は、一端に把持部120が設けられ、他端にカム部121が形成される。カム部121は、二股に分岐しており、カム部121で吊上げ部本体100の下部を挟み、カム部121及び吊上げ部本体100を貫通する軸122を中心として吊上げ部本体100に回動可能に取り付けられている。
【0028】
カム部121の側縁は所定のカムリフト量を有して湾曲しており、レバー受け台131の上面に当接している。すなわち、カム部121は、軸122を中心に短径部分と長径部分を有しており、クランプレバー12の回動角度に応じて、軸122とカム部121の側縁までの距離が変更可能となっている。
【0029】
図1及び図2に示すように、クランプレバー12が起立して、カム部121の短径部分がレバー受け台131の上面に当接している時は、バネ16の付勢力により上板13と下板14とが離間している。
一方、図4及び図5に示すように、クランプレバー12を正方向(図5の時計回り)に回動操作して、カム部121の長径部分をレバー受け台131の上面に当接させると、上板13はバネ16の付勢力に抗して下板14に対して相対的に押し下げられ、上板13と下板14とが接近する。
クランプレバー12を逆方向(図5の反時計回り)に回動操作すると、上板13と下板14とは再び離間する。
【0030】
パネル用吊り具1を用いてパネル2を吊り上げるは、図6の(イ)に示すように、吊り具1のワイヤー取付部101にクレーン等の楊重機から延びるワイヤーAを取り付けておく(もちろん、パネル用吊り具1をパネル2に取り付けて、揚重する直前にワイヤーAを取り付けてもよい。)。そして、クランプレバー12を起立させた状態(図2等参照)にして、吊り具1の上板13と下板14とを離間させ、両側の挟持部15a,15bを開いておく。この状態で、上板13及び下板14の長辺方向を切欠き23の幅方向(パネル2の厚さ方向)と一致させ、下板14をパネル2の幅方向外側から側枠21のフランジ間に差し込み、上板13及び下板14を切欠き23の上下にそれぞれ配置する。
この時、パネル2の左右両側に配置したパネル用吊り具1は、上板13の棒材130及びレバー受け台131に設けた当接ボルト132が、パネル2の天板22の上面に当接するように取り付けられる。加えて、下板14の角取り部141が、パネル2の側枠21のウェブに臨み、クランプレバー12の回動操作における正方向がパネル2の幅方向内側へ倒す方向となるよう、パネル2の左右両側に、パネル用吊り具1を左右対称に配置する。
【0031】
次に、図6の(ウ)に示すように、クランプレバー12を正方向に回動操作して、上板13と下板14とを接近させる。上板13はパネル2の天板22に当接して下降できないので、下板14が上昇し、上板13及び下板14の両側の挟持部15a,15bが閉じて、パネル2の天板22の切欠き23を挟んだ両側を挟持する。
上板13の下面に設けた棒材13が天板22の上面に当接し、下板14の上面に設けた棒材140が天板22の下面に当接するので、挟持部15a,15bは天板22を安定して挟持する。
また、下板14の棒材140の一端は下板14の長辺に達していないので、側枠21のウェブから天板22の延長部22’を折り曲げることにより形成される湾曲した角部分にぶつかることがない。
【0032】
このようにパネル2の天板22の両側部にパネル用吊り具1を取り付け、ワイヤー取付部101に連結したワイヤーAを上方から牽引してパネル2を吊り上げる。
パネル用吊り具1は、係止部11の上板13及び下板14の両側に設けられた挟持部15a,15bが天板22を挟持しているので、パネル2が傾くなどしても、パネル吊り具1が外れてパネル2が落下する心配はない。
【0033】
吊上げたパネル2は、隣接して立設した断面H型の支柱間に上から落とし込む。
パネル2を所定位置に設置した後は、パネル用吊り具1を取り外す。
パネル2からパネル用吊り具1を外す際は、図7の(ア)に示すように、上板13及び下板14の長辺方向を切欠き23の幅方向と一致させたまま、クランプレバー12を逆方向に回動操作して上板13と下板14とを離間させ、挟持部15a,15bからパネル2の天板22を解放する。
【0034】
次に、図7の(イ)に示すように、パネル用吊り具1を下板14と共に回転させて、下板14の角取り部141が形成された端部を回転させる。
下板14の短辺は切欠き23の幅よりも短いので、下板14は切欠き23を通して上方へ引き抜くことができ、パネル2の幅方向外側端と支柱との間隙が狭くても、パネル用吊り具1をパネル2から取り外すことができる。
また、下板14は角取り部141を有するので、下板14を回転させた時に角部が側枠21の内周面に引っ掛かることはない。
【0035】
図8の(ア)に示すように、多数積み重ねてあるパネル2を上方から1枚ずつ吊り上げる場合には、図8の(イ)に示すように、最も上段のパネル2の両側端部にパネル用吊り具1を取り付け、両側のパネル用吊り具1に取り付けたワイヤーAをクレーン等により上方から牽引する。
すると、パネル2はパネル用吊り具1が取り付けられた天板22を上にして引き起こされ、起立した状態で吊り上げられる。
係止部11の両側の挟持部15a,15bはパネル2の天板22を挟持しているので、パネル2を倒した状態から起立させる際にパネル用吊り具1が外れることはない。
【0036】
[第二の実施形態]
図9は、本発明の第二の実施形態を示す。
第二の実施形態では、吊上げ部10の吊上げ部本体100が、軸方向中央部において上板13及び下板14の長辺方向に屈曲している。
従って、天板22がパネル2の厚さ方向に傾斜している場合であっても、吊り上げた際にパネル2が傾くことなく、垂直に吊り上げて、支柱間に建て込むことができる。
その他の構造及び使用方法は、第一の実施形態と変わるところは無い。
【0037】
本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。例えば以下のようなものも含まれる。
【0038】
上記実施形態では、クランプレバーを回動操作することにより、上板と下板とを接離させているが、上板の上方に設置されてネジ軸に螺合されたナットを回動させて、上板と下板とを接離させることもできる。
【0039】
上記実施形態では、パネルの天板を安定して挟持するために、上板の下面及び下板の上面の棒材を取り付けてあるが、上板の端部を下方に屈曲し、下板の端部を上方に屈曲してもよい。
【0040】
吊上げ部本体の上端部に設けるワイヤー取付部は、両端部で吊上げ部本体の上部を挟んで枢着したU字状金具(所謂シャックル)であってもよいし、吊上げ部本体の上端部に、ワイヤーを挿通させる孔であってもよい。もちろん、ワイヤーを直接連結することに限定されるものではなく、フックを掛けるような構造としてもよい。
【0041】
本発明のパネル用吊り具は、種々のパネルを揚重する際に使用することができるが、特に防音パネルを対象とした場合は、当該防音パネルの積み下ろしから、設置にいたるまで、施工効率を大幅に向上させることが可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 パネル用吊り具
10 吊上げ部
100 吊上げ部本体
101 ワイヤー取付部
102 ネジ軸
11 係止部
12 クランプレバー
120 把持部
121 カム部
122 軸
13 上板
130 棒材
131 レバー受け台
132 当接ボルト
14 下板
140 棒材
141 角取り部
15a,15b 挟持部
16 バネ
2 パネル
20 パネル本体
21 側枠
22 天板
22’ 延長部
23 切欠き
A ワイヤー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2023-06-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板の両側端部に切欠きを有する防音パネルを吊り上げる防音パネル用吊り具であって、
上方から牽引可能な吊上げ部と、該吊上げ部の下部に設けられた係止部とを備え、
前記係止部の両側に、前記防音パネルの天板の前記切欠きを挟んで対向する両側部分を着脱可能に挟持する挟持部が形成され
前記係止部は、前記切欠きの上下にそれぞれ位置し、互いに接離可能な上板及び下板を備え、前記上板及び下板の両側部が、接近時に前記天板の前記切欠きを挟んで対向する前記両側部分を挟持する前記挟持部となり、
前記上板の長辺の長さは前記切欠きの幅より広く、前記下板の長辺の長さは前記切欠きの幅よりも大きく、且つ、前記下板の短辺の長さは前記切欠きの幅よりも短いことを特徴とする防音パネル用吊り具。
【請求項2】
前記上板と前記下板の間に、前記上板と前記下板とを離間方向に付勢するバネを配置し、正逆方向に回動操作することにより、前記上板と下板とを接離させるクランプレバーを備える請求項1に記載の防音パネル用吊り具。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の防音パネル用吊り具を用いた防音パネルの楊重方法であって、前記防音パネルの天板の両側端部に前記防音パネル用吊り具を配置し、前記天板の前記切欠きを挟んで対向する両側部分を前記係止部の両側に形成された前記挟持部により上下から挟持し、前記吊上げ部を上方から牽引して、前記防音パネルの両側を吊り上げることを特徴とする防音パネルの楊重方法。
【請求項4】
前記係止部は互いに接離可能な上板及び下板を備え、前記上板と前記下板の間に、前記上板と前記下板とを離間方向に付勢するバネが配置され、前記上板及び前記下板の両側部に前記挟持部が形成され、前記上板及び前記下板を前記切欠きの上下にそれぞれ配置してからクランプレバーを正方向に回動操作して、前記上板と前記下板を前記バネの付勢力に抗して接近させることにより、前記挟持部で前記天板の前記切欠きを挟んで対向する両側部分を挟持し、前記クランプレバーを逆方向に回動操作して、前記上板と前記下板を前記バネの付勢力により離間させることを特徴とする請求項3に記載の防音パネルの楊重方法。
【請求項5】
前記上板の長辺の長さは前記切欠きの幅より広く、前記下板の長辺の長さは前記切欠きの幅よりも大きく、且つ、前記下板の短辺の長さは前記切欠きの幅よりも短く、前記上板と前記下板を離間させてから、前記下板を回転させて、前記下板の短辺方向を前記切欠きの幅方向と一致させ、前記切欠きを通して前記下板を上方へ引き抜くことにより、前記防音パネル用吊り具を前記パネルから取り外すことを特徴とする請求項4に記載の防音パネルの楊重方法。