(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023133749
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】ヘドロ厚測定方法およびヘドロ厚測定装置
(51)【国際特許分類】
G01B 17/02 20060101AFI20230920BHJP
G01S 15/88 20060101ALI20230920BHJP
G01F 23/2962 20220101ALI20230920BHJP
【FI】
G01B17/02 Z
G01S15/88
G01F23/2962
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038910
(22)【出願日】2022-03-14
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】514035512
【氏名又は名称】株式会社人材開発支援機構
(74)【代理人】
【識別番号】100143111
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】冨永 晃宏
(72)【発明者】
【氏名】野口 好夫
【テーマコード(参考)】
2F014
2F068
5J083
【Fターム(参考)】
2F014AA07
2F014FB01
2F014GA01
2F068AA28
2F068BB26
2F068FF12
2F068FF14
2F068HH01
2F068KK14
2F068LL03
5J083AA02
5J083AB20
5J083AC28
5J083AD06
5J083AE06
5J083AE10
5J083AF16
5J083BC04
5J083CA01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】一つの波長の超音波を発受信させることにより、ヘドロ層の表面と底面の深度とを測定することができるヘドロ厚測定方法およびヘドロ厚測定装置を提供すること。
【解決手段】発受信器から想定されるヘドロ層の表面深度における照射半径の外縁までの距離が、発受信器から想定されるヘドロ層の底面深度における照射中心までの距離より短く、かつ、ヘドロ層の表面と底面で反射される周波数の超音波を発受信させるようにした。ヘドロ層の底面の中心から反射された底面反射波が、ヘドロ層の表面の照射範囲の外縁から反射される表面反射波より遅れて受信されることにより、一つの周波数の超音波を発信させることにより、ヘドロ層の厚さが推定可能になる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水面に備えさせた発受信器により超音波を発受信して、ヘドロ厚を測定するヘドロ厚測定方法であって、
発受信器として、想定されるヘドロ層の表面深度における照射半径の外縁から発受信器までの距離が、想定されるヘドロ層の底面深度における照射中心から発受信器までの距離より短く、且つ、周波数がヘドロ層の表面だけでなくヘドロ層の底面でも反射される周波数である発受信器が選定され、
前記表面から受信した表面反射波の強さが、漸増してから反曲点を超えて漸減中に、前記底面から受信した底面反射波の強さが、漸増してから反曲点を超えて漸減する現象を確認し、
前記表面反射波の漸増起点となる深度を前記表面深度とし、前記底面反射波の漸増起点となる深度をヘドロ層の底面深度とし、前記表面深度と前記底面深度との差により、前記ヘドロ厚を推定する、
ことを特徴とするヘドロ厚測定方法。
【請求項2】
更に、超音波の発信から受信した表面反射波の強さの漸増起点までの第1時間と、受信した表面反射波の強さの漸増起点から、水面に戻った前記表面反射波の再反射による2次波を受信した反射波の強さの漸増起点までの第2時間とを対比させ、
第1時間と第2時間が近似していることにより、前記表面深度を確定し、
推定したヘドロ厚を、正しいヘドロ層の厚さとして決定する、
ことを特徴とする請求項1に記載のヘドロ厚測定方法。
【請求項3】
水面に備えさせた発受信器により超音波を発受信して、ヘドロ厚を測定するヘドロ厚測定装置において、
ヘドロ層底面確認手段と、ヘドロ厚推定手段とを有し、
前記発受信器の照射角度が、想定されるヘドロ層の表面深度における照射半径の外縁から発受信器までの距離が、想定されるヘドロ層の底面深度における照射中心から発受信器までの距離より短くなる角度とされ、且つ、前記発受信器の周波数が、ヘドロ層の表面だけでなく底面でも反射される周波数とされ、
前記ヘドロ層底面確認手段が、前記表面からの表面反射波の強さが、漸増してから反曲点を超えて漸減中に、前記底面からの底面反射波の強さが漸増してから反曲点を超えて漸減する現象を計測させることによりヘドロ層の底面の存在を確認可能とし、
前記ヘドロ厚推定手段が、前記表面反射波の漸増起点となる深度を前記表面深度とし、前記底面反射波の漸増起点となる深度をヘドロ層の前記底面深度とし、前記表面深度と前記底面深度との差により、前記ヘドロ厚を推定可能とさせている、
ことを特徴とするヘドロ厚測定装置。
【請求項4】
更に、表面深度確定手段と、ヘドロ厚決定手段とを含み、
前記表面深度確定手段が、超音波の発信から前記表面反射波の強さの漸増起点までの第1時間と、前記表面反射波の強さの漸増起点から、水面に戻った前記表面反射波の再反射による2次波の反射波の強さの漸増起点までの第2時間が対比可能とされ、
第1時間と第2時間との近似により前記表面深度が確定可能とされている、
前記ヘドロ厚決定手段が、推定した前記ヘドロ厚を正しいヘドロ層の厚さとして決定可能とさせている、
ことを特徴とする請求項3に記載のヘドロ厚測定装置。
【請求項5】
前記周波数が、50kHzを超えない周波数の超音波である、
ことを特徴とする、
請求項3又は請求項4に記載のヘドロ厚測定装置。
【請求項6】
前記周波数が、28kHz以下の周波数である、
ことを特徴とする請求項3乃至請求項5のいずれか一項に記載のヘドロ厚測定装置。
【請求項7】
請求項3乃至請求項6のいずれか一項に記載の前記発受信器が、無線操縦により移動される小型無人双胴船の中央位置に、水面に接して搭載されている、
ことを特徴とするヘドロ厚測定装置。
【請求項8】
前記小型無人双胴船がGPS測位器を備え、少なくとも4機の仰角70度以上の衛星により緯度経度情報を測位され、
前記緯度経度情報と前記表面深度と前記底面深度と、それらを測位させた時刻情報とが共に記録される、
ことを特徴とする請求項7に記載のヘドロ厚測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川等のヘドロ厚測定方法およびヘドロ厚測定装置に関する。詳細には、一つの超音波発受信器により超音波を発受信させることにより、ヘドロ層の表面深度と底面深度を測定させるヘドロ厚測定方法およびヘドロ厚測定装置に関する。更に、人の搭乗が不要である小型無人双胴船からなり、ヘドロ層の表面深度と底面深度からなるヘドロ層情報を、正確な緯度経度情報と共に取得可能なヘドロ厚測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
河川、ダム湖、湖沼、ため池、運河、港湾(以下、河川等という)の水底を構成する砂層・岩盤層の上には、汚濁物を含有する底質汚泥層(以下、ヘドロ層という)が堆積されている。ヘドロ層が堆積すると、魚介類等の生息環境を悪化させるだけでなく、運河では水質悪化や悪臭の原因となり、ダム湖では放流水の水質悪化の原因となり、港湾では堆積により航行船舶等の港湾機能を阻害させ、ため池では必要な農業用水量が確保できなくなり、又は洪水調整機能が保持できなくなる。
【0003】
堆積したヘドロ層は、自然に消失することはなく、浚渫によらなければ除去することができない。河川等の水質を良好に管理するためには効率的に浚渫をする必要があり、予め定期的にヘドロ層の層厚を測定しなければならない。従来、河川等の堆積物の層厚は、調査船に搭乗した測定員が竿体を水底まで差し込んで人力により測っていた。
【0004】
特許文献1には、2つの超音波発受信器から100kHzと90kHzの高帯域超音波を、同時に発信させて、ヘドロ層の層厚を測定させるヘドロ探査機の技術が開示されている。二つの超音波の相互作用により、水中に超音波の「差の成分」の10kHzの低帯域超音波を発生させることにより、指向性の鋭い超音波信号を発生させると共に超音波発信器の大きさを小さくでき、発信点のずれをなくすことができるとされている。
【0005】
この技術によれば、「和の成分」である広帯域超音波がヘドロ層の表面深度で反射され、水面からヘドロ層表面までの深度が測定され、「差の成分」である10kHzの低帯域超音波がヘドロ層を通過して底面深度で反射されるため、ヘドロ層の厚さ(以下、ヘドロ厚という。)を測定することができるとされている。しかし2種類の超音波の反射波をフィルタで抽出して補正するために、各超音波に応じた増幅をし、記録ができるレベルまで増幅が繰り返されるために誤差が発生しやすいという課題があった。
【0006】
特許文献2には、1つの超音波発受信器から、高帯域の超音波と、その超音波と周波数Δだけ異なる帯域の超音波とを同時に発信させ、高帯域の超音波と2つの超音波の相互作用により発生される低帯域の超音波とによる2つの帯域の反射波を一つの超音波発受信器で受信し、それを分離し増幅して、ヘドロ層の層厚を測定している。この技術によれば、低帯域超音波だけを発生させる超音波発受信器が不要となるが、超音波信号の伝搬タイミングに時間的な誤差が発生するという問題があった。
【0007】
この伝搬タイミングの時間的な誤差を解消させる遅延回路を備えさせた技術が、特許文献3に開示されている。しかし、遅延回路で遅延させる時間を計測するために、予め水中に剛体を配置させ、剛体から反射される高帯域超音波と低帯域超音波の信号を計測しておく必要があり、手間と時間がかかるという課題があった。
【0008】
特許文献4には、地上基地局と探査船に搭載されたGPS測位器(Global Positioning System)とにより、探査船の位置を特定させると共に、超音波発受信器から200kHzの超音波を発信させて水深を測定させ、記憶装置に位置情報と深度情報と時刻情報とを一体に記憶させる測定システムの技術が開示されている。この技術によれば、湖底の底質も併せて測定させる場合には、超音波発受信器とは別の底質探査測定装置から2kHzから12kHzの超音波を発信させればよいとされている。
【0009】
この技術によれば、探査船に搭載されたGPS測位器による位置情報の誤差を補正させるためには、探査船以外に地上基地局が必須となり、測定システムが大掛かりとなるだけでなく、ヘドロ層の層厚を測定させるには、超音波を発する2つの装置から、夫々波長の異なる超音波を発信させなければならず、システムが煩雑になるという課題があった。
【0010】
特許文献1から特許文献4に記載の技術によれば、水底の状態を探測するために、2種類の超音波の波長を使って、増幅・遅延処理等の煩雑な処理が必要になり、測定システムが複雑になるという課題があった。そこで、本願の発明者は、測定システムが複雑にならないように、超音波発受信器が一つだけでも、ヘドロ層を測定することができる測定手段を鋭意研究し、本願の発明に至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭60-192281号
【特許文献2】特開昭59-147257号
【特許文献3】特開昭60-85381号
【特許文献4】特開平10-300467号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本願の発明者は、一つの超音波発受信器から超音波を発受信させることにより、ヘドロ層の表面と底面の深度とを測定することができるヘドロ厚測定方法およびヘドロ厚測定装置を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の発明は、水面に備えさせた発受信器により超音波を発受信して、ヘドロ厚を測定するヘドロ厚測定方法であって、発受信器として、想定されるヘドロ層の表面深度における照射半径の外縁から発受信器までの距離が、想定されるヘドロ層の底面深度における照射中心から発受信器までの距離より短く、且つ、周波数がヘドロ層の表面だけでなくヘドロ層の底面でも反射される周波数である発受信器が選定され、前記表面から受信した表面反射波の強さが、漸増してから反曲点を超えて漸減中に、前記底面から受信した底面反射波の強さが、漸増してから反曲点を超えて漸減する現象を確認し、前記表面反射波の漸増起点となる深度を前記表面深度とし、前記底面反射波の漸増起点となる深度をヘドロ層の底面深度とし、前記表面深度と前記底面深度との差により、前記ヘドロ厚を推定することを特徴としている。
【0014】
超音波の発受信器は、ヘドロが蓄積している運河、ため池、ダム湖等に応じて、水底すなわちヘドロ層の表面深度までの水深が約5m又は約30m等のように概略の水深を想定し、ヘドロ層の厚さも表面深度に対して、1割から10割等のように概略の割合を想定する。そして、表面深度における超音波の照射半径の外縁から発受信器までの距離が、ヘドロ層の底面深度における超音波の照射中心から発受信器までの距離よりも小さくなる照射角度の発受信器を選定すればよい。
【0015】
海に接した汽水湖、運河において実験した結果では、所定の周波数の超音波を発信させる一つの発受信器を使って、ヘドロ層の表面と底面からの反射波を測定させている。ヘドロ層の表面だけでなく底面でも反射される周波数としては、特許文献1等の記載によれば、10kHz以下であればよいことが公知である。しかし周波数を10kHz以下とすると発受信器が大きくなるという課題があった。
【0016】
そこで、本願の発明者は、周波数が28kHzと50kHzの2種類の超音波発受信器を使って、水底の測定を試みた。50kHzの周波数の発受信器によればヘドロ層の表面からの反射波と底面からの反射波が区別しにくかったが、28kHzの周波数の超音波発受信器によれば、表面からの表面反射波と底面からの底面反射波が区別でき、本発明に至ったものである。
【0017】
発受信器に到達する反射波の強さは、ヘドロ表面における照射範囲の中心からの表面反射波が到達してから、照射範囲の外縁からの表面反射波が到達するまでは、反射波が累積されて、測定された反射波の強さが徐々に大きくなる。ヘドロ底面からの底面反射波の強さも同様である。
【0018】
ところがヘドロ層の表面深度における照射半径の外縁から発受信器までの距離よりも、ヘドロ層の底面までの距離が大きいと、表面反射波がヘドロ表面の外縁で反射してから、ヘドロ底面の中心からの底面反射波が届くまで時間差があるため、ヘドロ表面からの表面反射波の強さが漸増し反曲点を越えてから漸減する現象が測定される。この現象を確認することにより、ヘドロ層の表面と底面の高さを推定させることにした。
【0019】
第1の発明のヘドロ厚測定方法によれば、一つの周波数の超音波の発受信だけでも、ヘドロ層の表面と底面の深度を推定することができ、一つの発受信器だけでもヘドロ厚の測定が可能且つ容易であるという有利な効果を奏する。
【0020】
本発明の第2の発明は、第1の発明のヘドロ厚測定方法において、更に、超音波の発信から受信した表面反射波の強さの漸増起点までの第1時間と、受信した表面反射波の強さの漸増起点から、水面に戻った前記表面反射波の再反射による2次波を受信した反射波の強さの漸増起点までの第2時間とを対比させ、第1時間と第2時間が近似していることにより、前記表面深度を確定し、推定したヘドロ厚を、正しいヘドロ層の厚さとして決定することを特徴としている。
【0021】
超音波はヘドロ表面で反射し、水面まで戻った超音波が発受信器の位置で反射し2次波となり水底に向かう。2次波は、再びヘドロ層表面で反射し、発受信器で2次波の強さの漸増が測定される。2次波の漸増起点は、超音波発信からヘドロ層表面までを2回往復させた距離に相当する距離であるため、第1時間と第2時間が近似していることにより、ヘドロ層の表面深度が確定され、推定したヘドロ層を正しいヘドロ厚として決定させればよい。水中の生育物等の影響により、近似は必ずしも一致に限定されず、約2割から約4割までの誤差があってもよい。
【0022】
超音波発受信器とヘドロ層表面との間の反射が繰り返される毎に、減衰や雑音が発生しやすく、2次波の反射によりヘドロ層の表面深度を確認させることが好適である。第2の発明によれば、第1の発明で推定したヘドロ層の表面深度が裏付けられ、一つの周波数の超音波を使って推定したヘドロ厚を、正しいヘドロ厚と決定させることができるという効果を奏する。
【0023】
本発明の第3の発明は、水面に備えさせた発受信器により超音波を発受信して、ヘドロ厚を測定するヘドロ厚測定装置において、ヘドロ層底面確認手段と、ヘドロ厚推定手段とを有し、前記発受信器の照射角度が、想定されるヘドロ層の表面深度における照射半径の外縁から発受信器までの距離が、想定されるヘドロ層の底面深度における照射中心から発受信器までの距離より短くなる角度とされ、且つ、前記発受信器の周波数が、ヘドロ層の表面だけでなく底面でも反射される周波数とされ、前記ヘドロ層底面確認手段が、前記表面からの表面反射波の強さが、漸増してから反曲点を超えて漸減中に、前記底面からの底面反射波の強さが漸増してから反曲点を超えて漸減する現象を計測させることによりヘドロ層の底面の存在を確認可能とし、前記ヘドロ厚推定手段が、前記表面反射波の強さの漸増起点となる深度を前記表面深度とし、前記底面反射波の強さの漸増起点となる深度をヘドロ層の前記底面深度とし、前記表面深度と前記底面深度との差により、前記ヘドロ厚を推定可能とさせていることを特徴としている。
【0024】
第3の発明のヘドロ厚測定装置は、第1の発明のヘドロ厚測定方法を実施する装置であり、一つの発受信器だけでヘドロ厚を推定することができ、ヘドロ厚の測定が容易であるという有利な効果を奏する。
【0025】
本発明の第4の発明は、第3の発明のヘドロ厚測定装置において、更に、表面深度確定手段と、ヘドロ厚決定手段とを含み、前記表面深度確定手段が、超音波の発信から前記表面反射波の強さの漸増起点までの第1時間と、前記表面反射波の強さの漸増起点から、水面に戻った前記表面反射波の再反射による2次波の反射波の強さの漸増起点までの第2時間が対比可能とされ、第1時間と第2時間との近似により前記表面深度が確定可能とされ、前記ヘドロ厚決定手段が、推定した前記ヘドロ厚を正しいヘドロ層の厚さとして決定可能とさせていることを特徴としている。
【0026】
水中の生育物等の影響により、近似は必ずしも一致に限定されず、約2割までの誤差があってもよい。第4の発明のヘドロ厚測定装置は、第2の発明のヘドロ厚測定方法を実施する装置であり、一つの発受信器を使って推定したヘドロ厚を、正しいヘドロ厚と決定させることができるという効果を奏する。
【0027】
本発明の第5の発明は、第3又は第4の発明のヘドロ厚測定装置において、前記周波数が、50kHzを超えない周波数の超音波であることを特徴としている。実施例にて後述する浜名湖の測定実験においては、28kHzの超音波ではヘドロ底面を識別することができた。水深、ヘドロの堆積状況により、ヘドロ層の硬さが柔らかければ、28kHz以上50kHz未満の超音波であってもよい。第5の発明によれば、50kHz以下の周波数でもヘドロ厚を測定できるという効果を奏する。
【0028】
本発明の第6の発明は、第3から第5の発明のヘドロ厚測定装置において、前記周波数が、28kHz以下の周波数であることを特徴としている。第6の発明によれば、ヘドロ底面が明確に測定可能であり好適である。また特許文献1等によれば、28kHzよりも小さい超音波、例えば2kHzから10kHzの超音波でヘドロ底面が測定できることは公知となっており、低帯域の超音波の周波数が限定されないことは勿論のことである。
【0029】
本発明の第7の発明は、第3から第6の発明に記載の発受信器が、無線操縦により移動される小型無人双胴船の中央位置に、水面に接して搭載されていることを特徴としている。
【0030】
ヘドロ厚測定装置が、小型無人双胴船の中央部から超音波を直下に発信させやすく、2次波が発受信器だけでなく小型無人双胴船の底面全体でも反射され、波立つ水面からの反射が排除され、2次波の反射波が明確に識別しやすくなり、2次波の測定が容易であるという効果を奏する。
【0031】
本発明の第8の発明は、第7の発明のヘドロ厚測定装置において、前記小型無人双胴船がGPS測位器を備え、少なくとも4機の仰角70度以上の衛星により緯度経度情報を測位され、前記緯度経度情報と前記表面深度と前記底面深度と、それらを測位させた時刻情報とが共に記録されることを特徴としている。
【0032】
第8の発明によれば、周辺の人工物に遮蔽されないで、直上に近い仰角70度以上に位置する4機以上の衛星から位置が捕捉されているため、ヘドロ厚測定装置の正確な緯度経度情報が途切れないで計測される。緯度経度情報と、ヘドロ層の前記表面深度と前記底面深度とを正確に計測しているため、浚渫すべきヘドロ体積も正確に把握できるという効果を奏する。また、時刻情報も共に記録しているため、満干潮による水位の影響も併せて記録できるという効果を奏する。
【発明の効果】
【0033】
・本発明の第1の発明によれば、一つの周波数の超音波の発受信だけでも、ヘドロ層の表面と底面の深度を推定することができ、一つの発受信器だけでもヘドロ厚の測定が可能且つ容易であるという有利な効果を奏する。
・本発明の第2の発明によれば、第1の発明で推定したヘドロ層の表面深度が裏付けられ、一つの周波数の超音波を使って推定したヘドロ厚を、正しいヘドロ厚と決定させることができるという効果を奏する。
・本発明の第3の発明によれば、一つの発受信器だけでヘドロ厚を推定することができ、ヘドロ厚の測定が容易であるという有利な効果を奏する。
・本発明の第4の発明によれば、一つの発受信器を使って推定したヘドロ厚を、正しいヘドロ厚と決定させることができるという効果を奏する。
【0034】
・本発明の第5の発明によれば、50kHz以下の周波数でもヘドロ厚を測定できるという効果を奏する。
・本発明の第6の発明によれば、ヘドロ底面が明確に測定可能であり好適である。
・本発明の第7の発明によれば、ヘドロ厚測定装置が、双胴船の中央部から超音波を直下に発信させやすく、2次波が発受信器だけでなく双胴船の底面全体でも反射され、波立つ水面からの反射が排除され、2次波の反射波が明確に識別しやすくなり、2次波の測定が容易であるという効果を奏する。
・本発明の第8の発明によれば、緯度経度情報と、ヘドロ層の前記表面深度と前記底面深度とを正確に計測しているため、浚渫すべきヘドロ体積も正確に把握できるという効果を奏する。また、時刻情報も共に記録しているため、満干潮による水位の影響も併せて記録できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図2】浜名湖の測定実験における測定地点の説明図(実施例1)
【発明を実施するための形態】
【0036】
想定されるヘドロ層の表面深度(X)(
図1参照)における照射半径の外縁(R)から発受信器までの距離(Z)が、想定されるヘドロ層の底面深度(X+Y)における照射中心Cから発受信器までの距離より短く、且つ、ヘドロ層の表面と底面で反射される周波数の超音波を発信する発受信器10を使い、ヘドロ層の表面反射波の受信(a)と底面反射波の受信(c)のタイムラグに基づいて、ヘドロ厚を測定させることにした。
【実施例0037】
実施例1においては、ヘドロ厚測定方法とヘドロ厚測定装置について、
図1から
図5を参照して説明する。
図1はヘドロ厚測定方法の説明図を示している。
図2は浜名湖の測定実験における測定地点の説明図を示している。
図3(A)図は、
図2に示した第1の測定地点におけるヘドロ厚の測定結果を示し、
図3(B)図は
図2に示した第2の測定地点におけるヘドロ厚の測定結果を示している。
図4は、
図2に示した第3の測定地点において測定された反射波の説明図を示している。
図5(A)図はヘドロ厚測定装置1の概略図を示し、
図5(B)図はヘドロ厚測定装置1のブロック図を示している。
【0038】
従来、ヘドロ厚の測定は、河川・ため池等に有人船を浮かべ、人が測量棒をヘドロ層に突き立て、その手ごたえの変化を感じ取るか、又は、ヘドロ層にコーン先端を貫入させて、その抵抗値を測定させるコーン貫入試験かのいずれかの試験方法により、水面からヘドロ層の表面までの深度(以下、表面深度という。)と、水面からヘドロ層の底面までの深度(以下、底面深度という。)を測定していた。
【0039】
ヘドロ厚の具体例としては、2009年1月12日に実施された愛知県名古屋市の堀川における複数のコーン貫入試験によれば、表面深度が約1.5m、底面深度が約2.5mから約3.0mと測定され、ヘドロ厚は約1mから約1.5mとの測定結果であった。この試験の結果によれば、表面深度に対するヘドロ厚の割合は、約7割から約10割となり、大きな割合であることが推測された。
【0040】
浚渫工事が必要となるような、ヘドロ厚が1mを超える場所では、上層側が軟質層となり、下層側が硬質層となりやすい。超音波を下層側まで透過させて、ヘドロが堆積する前の砂層又は岩盤層で反射させるためには、従来は約10kHzの低帯域の超音波による測定が必要とされていた。
【0041】
発明者らは、前記調査の結果を踏まえ、2020年7月7日と同年7月8日に、海に接した静岡県浜名湖(
図2)の測定地点において、28kHzの周波数の超音波によりヘドロ層の測定試験を試みた。この測定試験においては、28kHzの超音波によれば、一つの周波数だけで表面深度と底面深度の測定ができた。しかし、ヘドロ層が軟質である場合や、ヘドロ層の下層が岩盤等でヘドロ層と層質が明確に異なる場合等には、50kHzの周波数よりも小さな周波数による場合でも、ヘドロ層の底面深度で超音波を反射させうると判断した。
【0042】
発受信器は、河川、ダム湖、湖沼、ため池、運河、港湾等の測定対象に応じて、予め想定したヘドロ厚に応じて選定されればよい。例えば、ダム湖であれば、流水の正常な機能を維持するため設計された洪水調整容量・利水容量・堆砂容量に基づいて、ヘドロ厚を想定すればよい。運河であれば、前述の予備調査の結果等に基づいてヘドロ厚を想定すればよい。
【0043】
超音波の発受信器は、想定した表面深度、ヘドロ厚に適合するように、所定の照射角度となる発受信器が選定される。超音波の照射角度とは、発受信器から発信される超音波が広がる角度をいい、超音波は照射角度を外縁とする範囲を照射範囲として照射される。照射角度は、例えば、発受信器から1mの距離で、超音波の強さが約1/2に減衰する角度で表示されている指向角を目途に選定すればよい。
【0044】
ここで
図1を参照して、反射波の作用について、具体的に説明する。発受信器10からヘドロ層100に向けて直下に発信された超音波は、最短距離で照射範囲の中心(C)に向かいヘドロ層の表面で反射される(実線矢印参照)。照射範囲の中心から外縁に至るにつれて、徐々に反射距離が大きくなるため、発受信器が反射波を受信する時間が徐々に遅延し、中心(C)から外縁(R)まで、受信される反射波の強さは累積されて漸増し、外縁(R)を反曲点として漸減する(
図4(A)図a~c参照)。ヘドロ層の底面からの底面反射波(破線矢印参照)の強さも同様に、漸増してから反曲点を越えて漸減する(
図4(A)図c~e参照)。
【0045】
ヘドロ層100の中に透過した超音波の一部は、ヘドロ層の底面で反射する。ヘドロ層の底面深度における照射中心から発受信器までの距離(X+Y)より、想定した表面深度Xにおける照射半径の外縁(R)から発受信器10までの距離(Z)が短い照射角度の発受信器としておけば、その距離差(D)に応じたタイムラグだけ反射波の強さが低下する。この照射角度(θ)の範囲となる発受信器を使用することにより、表面反射波の強さが、漸増してから反曲点(b)を超えて漸減中に、前記底面から受信した底面反射波の強さが、漸増してから反曲点(d)を超えて漸減する現象が確認される(
図4参照)。
【0046】
図1を参照し、水面Aから想定される表面深度を(X)とし、想定されるヘドロ厚を(Y)とし、想定した表面深度(X)における照射半径の外縁(R)から発受信器までの距離を(Z)とする。この照射角度(θ)の範囲となるためには、前記距離(Z)が、想定したヘドロ層の底面深度における照射中心から発受信器までの距離(X+Y)よりも短ければよく、距離Zは下記の数式1に示した2つの式の関係を充たせば良い。
【0047】
【0048】
ダム湖などで、水深に対してヘドロ厚の厚さが薄く、表面深度(X)に対するヘドロ厚(Y)の割合が5%から10%の場合と、運河などで、水深に対するヘドロ厚が厚く、表面深度に対するヘドロ厚の割合が50%から100%の場合とを想定し、それらに適合される上記の式に基づいた照射角度(θ)の上限角度を下記の表1に示した。
【0049】
【0050】
超音波の発受信器は、主として空気中で使用される発受信器の場合には、指向角が8度から30度の小さい角度のものであり、水中の広範囲の魚群探知用には、指向角が広い約60度の広い角度のものが実用されている。表1によれば、ヘドロ層の割合が50%を超える河川等のように、ヘドロ厚の割合が高い場合には、指向角が96.2度より小さければよく、魚群探査用の発受信器も含めて大部分の発受信器が適用できる。更に、ヘドロ層の割合が約5%程度のダムのように、ヘドロ層の割合が小さい場合であっても、指向角が約35.4度より小さい発受信器は多く、その中から指向角が小さい発受信器を選定すれば、実用的に適用できる。
【0051】
ここで、静岡県浜名湖における複数の測定地点で、28kHzの超音波を発受信して取得された測定データを、
図2,
図3,
図4を参照して説明する。
図2には、第1から第3の測定地点と浜名湖の略図を示している。
図3(A)図には、第1の測定地点において、7月7日午前10時56分に実施した測定データを示している。
図3(B)図には、第2の測定地点において、7月7日午後12時13分に実施した測定データを示している。
図4(A)図は2020年7月8日午前9時36分に実施した測定試験結果をグラフで示している。
【0052】
この実験においては、ヘドロ厚測定装置とGPS測位器とを船に搭載し、取得された反射波情報と、緯度経度情報と、時刻情報とを合わせて記録させた。また
図3においては、図の左側に緯度経度情報に基づいた測定地点の地図を示すと共に、図の右側に反射波の強さを2値化して表した図を示している。この地図には、測定時刻と満干潮の潮位グラフと方位とを合わせて表示している。超音波発受信器は、5秒の間に、0.04秒間隔で、125回超音波を発受信して測定した。
【0053】
第1の測定地点は、浜名湖の北緯34度47.463分、東経137度38.557分の地点であった(
図2,
図3(A)図参照)。第1の測定地点は、浜名湖の浅瀬部分であり、流入する都田川の河口から南南西に約350mの地点であった。表面深度が約1.0m、底面深度が約1.5m、ヘドロ層の厚さが約0.5mであった。同地点において人が測量棒をヘドロに突き立ててヘドロ厚を測定したが、ほぼ同一の結果であった。
【0054】
第2の測定地点は、浜名湖の北緯約34度46.040分、東経137度37.709分の地点とした(
図2,
図3(B)図参照)。第2の測定地点は、浜名湖の浅瀬部分であり、流入する呉松川の河口から南に約100mの地点であった。表面深度が約1.8m、底面深度が約3.1m、ヘドロ層の厚さが約1.3mであった。第2の測定地点においても、人が測量棒をヘドロに突き立ててヘドロ厚を測定したが、ほぼ同一の結果であった。
【0055】
次に、第1の測定地点、第2の測定地点における測定実験の翌日午前9時36分に実施した、
図2に示した第3の測定地点における測定実験の反射波について
図4を参照して説明する。第3の測定地点は、北緯34度47.4626分、東経137度38.5555分の地点であり、第1の測定地点よりも南西方向で都田川の河口から離れた位置であった(
図2参照)。満干潮の影響により、第3の測定の時点においては、前日に実施された第1の測定実験よりも、潮位が約0.4m高い水位において測定がされた。
【0056】
図4(A)図は、周波数が28kHz、前記所定の照射角度の発受信器を使って測定された表面反射波(実線で示したa~c)と底面反射波(破線で示したc~e)と2次波(一点鎖線で示したe~)の強さを線グラフに示している。同図においては、縦軸に反射波の強さを示し、横軸に超音波の移動距離である深度を示している。
【0057】
また、発受信器には、発信器と受信器とが並列されているため、雑音が発生しやすい発受信器の近くの深度が1.0mを超えるまでを除外している(
図4(A)図参照)。
図4(B)図は、同じ地点で5秒間に亘って複数回の反射波を測定して、表面反射波から推定される表面深度(X:
図1参照)の平均値(同図a参照)と、2次波から推定される表面深度の2往復分の平均値(同図e参照)を示している。
【0058】
この実験結果によれば、表面反射波の強さが漸増され(
図4線グラフの太線aからb部分参照)、反射波が反曲点を超えて漸減中に(
図4線グラフの太線bからc部分参照)、底面反射波が漸増され(
図4線グラフの太線破線cからd部分参照)、反曲点を超えて漸減される現象が確認された。
【0059】
前記所定の照射角度が、測定地点の表面深度とヘドロ厚とにおいて適合されていたため、前記現象が明確に確認される良好な結果が得られている。この結果により、一つの周波数の超音波だけで、表面反射波と底面反射波とを区別させ、ヘドロ厚を推定させている。
【0060】
第3の測定地点においては、表面深度が超音波の発信から表面反射波の漸増起点aまでの深度から、約1.5mと推定される。底面深度が、超音波の発信から底面反射波の漸増起点cまでの深度から、約2.0mと推定される。ヘドロ厚はこの差から約0.5mと推定される。
【0061】
なお、満干潮の影響により、第3の測定地点の測定実験における潮位は、第1の測定地点(
図2参照)の測定実験における潮位よりも約0.4m高かった。この潮位の差を考慮すると、表面深度は約1.1mとなり、近くの第1の測定地点の表面深度である約1.0mと、近似する結果が得られた。第3の測定地点における潮位を考慮した底面深度は約1.6mとなり、第1の測定地点の底面深度が約1.5mであり、底面深度も近似している結果となった。
【0062】
また、第3の測定地点においても、5秒間に125回超音波を発受信して測定し、その平均値を使った。測定された2次波(
図4(A)図一点鎖線e~)により、第1時間(
図4(A)
図T1参照)と、第2時間(同
図T2参照)とが近似しているかを判定した。具体的には、第1時間は、超音波の発信から表面反射波の漸増起点aまで、すなわち超音波が約1.5m移動する時間であった。詳細には、第1時間は、超音波が1.476m移動する時間であった(
図4(B)図a参照)。
【0063】
第2時間(
図4(A)
図T2参照)は、表面反射波の漸増起点aから2次波の強さの漸増起点eまで、すなわち超音波が1.737mを移動する時間であった。詳細には、2次波の強さの漸増起点eまでの深度が3.213mであり、前記1.476mを減算すると、1.737mを超音波が距離を移動する時間であった。第1時間、第2時間と表記しているが、第1時間の移動距離と、第2時間の移動距離を比較してもよいことは勿論のことである。
【0064】
第3の測定地点においては、第1時間と第2時間の比は、約1.17倍となったため、近似の範囲内として、推定されたヘドロ厚を、正しいヘドロ厚として決定させると共に、推定された表面深度を正しい表面深度として確定させた。なお、近似の範囲は、ヘドロ底の元の地形の形状の相違、ヘドロ層の軟質・硬質などの層質の違い等によって、ばらつきが予想されるため、例えば約1.2倍から1.4倍までを上限として近似の範囲とさせればよい。
【0065】
次に、ヘドロ厚測定装置について、
図5を参照して説明する。ヘドロ厚測定装置1は、超音波の発受信器10を備えている(
図5参照)。超音波の発受信器10は、本多電子工業株式会社製のTD87の同等品であり、28kHzの周波数の超音波を発受信する発受信器を使用した。この発受信器(TD87)は、超音波の出力3kWとされ、28kHz又は55kHzの周波数の超音波のいずれかを選択して発受信可能とされている。本実験については28kHzの超音波によりヘドロ厚を測定させた。また発受信器をなす振動子の周囲がゴムモールドで被覆されると共に、大きさが、長辺約200mm、短辺約150mm、高さ約130mmであった。
【0066】
本体部20は、制御手段30と、記憶手段40とを有している(
図5(B)図参照)。反射波情報を解析するときには、本体部に表示手段50、入力手段60が接続可能とされ、測定を行うときには、本体部にGPS測位器70と時刻情報取得器80が接続可能とされている。制御手段30は中央演算処理装置であればよい。制御手段30は、ヘドロ層底面確認手段とヘドロ厚推定手段として機能される。
【0067】
ヘドロ層底面確認手段は、制御手段を判定手段として機能させ、ヘドロ底面を確認させてもよく、表示手段50をなすモニターに判別可能に表示させてもよい。例えば、本体部20に表示手段50を接続させ、反射波情報を表示させることにより、人が底面深度を確認できる状態としてもよい。ヘドロ厚推定手段、表面深度確定手段、ヘドロ厚決定手段についても、同様に、制御手段30のみでヘドロ厚の推定判定等を行ってもよく、表示手段50をなすモニターに判別可能に表示させてもよい。
【0068】
記憶手段40は、ハードディスク、USBメモリ、SDカード等の記憶装置であればよい。記憶手段は、測定情報として、反射波情報、緯度経度情報、時刻情報等を一体に記憶させた。また解析情報として、表面深度、底面深度、ヘドロ厚、第1時間、第2時間等が判別できるように記憶させた。
【0069】
緯度経度情報、時刻情報の記録は必須ではないが、浜名湖における測定実験においては、複数の測定地点で測定を実施したため(
図2参照)、本体部20にGPS測位器70と時刻情報取得器(図を省略している)とを接続させ、測定地点における緯度経度情報と測定日時とを記憶手段に記憶させるようにした。GPS測位器70により時刻情報も取得できる場合には、時刻情報取得器を省略してもよい。本実施例においては、ヘドロ厚測定装置1を有人小型船に試験者が搭乗して実験した。
小型無人双胴船200は、少なくとも駆動手段(図を省略している)と超音波の発受信器10が備えられている。発受信器10が受信した受信情報は、地上の基地局に通信手段90により送信してもよく、小型無人双胴船200に備えさせたRAM等の記憶手段に記憶させてもよい。取得した受信情報を、表示手段をなすモニターで表示させ確認しながら、小型無人双胴船を駆動させてもよい。受信情報を確認しながらヘドロ層の状態を測量すれば、異常値が発生した場合でも即応できて好適である。
また、通信手段90を介して、取得情報を基地施設に送信してモニターで表示させるようにすれば、蓄積させた他のヘドロ層の状態と比較して、対比が可能である点で優れる。いずれにしても小型無人双胴船にはモニターや解析手段等を積載しないようにし、測量できる航続距離を延伸させると好適である。
ヘドロ層の表面で反射された表面反射波を、再び2次波としてヘドロ層に向けて反射させる際に、2次波が水面で散乱されないように、胴体110の底面を略平坦とさせ、底面で反射させるとよい。小型無人双胴船200は、内陸部のため池のヘドロ厚の測量にも使用できるように小型とされ、車載されて運搬可能とされている。具体的には、船の全長、双胴の幅共約1.0m以内とするとよいが、大きさは限定されない。
小型無人双胴船200は、予め測定地点の座標を入力することにより、自動操縦されるようにしてもよく、測位地点の座標と、取得した緯度経度情報の違いが所定の範囲を超えている場合には、航行位置を矯正させる機能を備えさせてもよいことは勿論のことである。なお、船体の姿勢を自動制御できるように姿勢制御器を備えさせると好適である。