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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023133771
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】吸着装置及び燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/04 20060101AFI20230920BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20230920BHJP
   H01M 8/0662 20160101ALI20230920BHJP
   C01B 3/56 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
B01D53/04 110
H01M8/04 N
H01M8/0662
C01B3/56 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038953
(22)【出願日】2022-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】日下 星野
【テーマコード(参考)】
4D012
4G140
5H127
【Fターム(参考)】
4D012BA02
4D012BA03
4D012CA20
4D012CB01
4D012CD04
4D012CD07
4D012CD10
4D012CE01
4D012CE02
4D012CF08
4D012CG01
4G140FA02
4G140FB06
4G140FC02
4G140FD01
4G140FD02
4G140FE02
5H127AC02
5H127BA01
5H127BA02
5H127BA12
5H127BA17
5H127EE12
(57)【要約】
【課題】吸着層の吸着量の低下を抑制する。
【解決手段】吸着装置10は、筒状の容器12と、容器12内に同心状に配置されかつ混合ガス中の特定成分を吸着する吸着材22が充填された筒状の吸着層20と、を備える。混合ガスが容器12の軸方向一端側から導入され、混合ガスから特定成分が除去された精製ガスが容器12の軸方向他端側から導出される。吸着層20には、吸着層20を軸方向に複数の区分吸着層20a、20b、20c、20d、20eに区分する複数の仕切板30が設けられる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の容器と、
前記容器内に同心状に配置されかつ混合ガス中の特定成分を吸着する吸着材が充填された筒状の吸着層と、
を備えており、
前記混合ガスが前記容器の軸方向一端側から導入され、前記混合ガスから前記特定成分が除去された精製ガスが前記容器の軸方向他端側から導出される、吸着装置であって、
前記吸着層には、該吸着層を軸方向に複数の区分吸着層に区分する1又は複数の仕切板が設けられている、吸着装置。
【請求項2】
請求項1に記載の吸着装置であって、
前記吸着層の軸方向に隣り合う前記各区分吸着層において、前記容器の軸方向一端側に位置する一方の前記区分吸着層の圧損が、他方の前記区分吸着層の圧損よりも大きい、吸着装置。
【請求項3】
請求項2に記載の吸着装置であって、
前記一方の前記区分吸着層の軸方向寸法は、前記他方の前記区分吸着層の軸方向寸法よりも小さい、吸着装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の吸着装置であって、
前記各区分吸着層の内周を包囲する通気性を有する内筒部、及び、該区分吸着層の外周を包囲する通気性を有する外筒部を有しており、
前記一方の前記区分吸着層における前記内筒部及び/又は前記外筒部の単位面積当たりの開口面積は、前記他方の前記区分吸着層における前記内筒部及び/又は前記外筒部の単位面積当たりの開口面積よりも小さい、吸着装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載の吸着装置であって、
前記各区分吸着層をそれぞれ加熱する加熱装置を備えた、吸着装置。
【請求項6】
請求項5に記載の吸着装置であって、
前記各区分吸着層の温度をそれぞれ検出する温度センサと、
前記各温度センサの検出情報に基づいて前記各加熱装置を通電制御する制御装置と、
を備えた、吸着装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の吸着装置であって、
前記容器と前記仕切板とは熱的に接続されている、吸着装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1つに記載の吸着装置と、該吸着装置により得られた精製ガスとしての水素を燃料として発電する燃料電池と、を備えた、燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、吸着装置及び燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載された吸着装置は、筒状の容器と、容器内に同心状に配置されかつ混合ガス中の特定成分を吸着する吸着材が充填された筒状の吸着層と、を備える。混合ガスが容器の軸方向一端側から導入され、混合ガスから特定成分が除去された精製ガスが容器の軸方向他端側から導出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平1-164417公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の吸着装置によると、吸着層を軸方向に区分する仕切板が設けられていない。したがって、容器の軸方向一端側から導入された混合ガスが吸着層の外周側から内周側に向かって流れる際、斜め方向にショートカットして流れやすい。このため、容器の軸方向一端側の吸着層の内周部、及び、容器の軸方向他端側の外周部、に流れの淀みが生じる結果、吸着量が低下する。
【0005】
本明細書に開示の技術が解決しようとする課題は、吸着層の吸着量の低下を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本明細書が開示する技術は次の手段をとる。
【0007】
第1の手段は、筒状の容器と、前記容器内に同心状に配置されかつ混合ガス中の特定成分を吸着する吸着材が充填された筒状の吸着層と、を備えており、前記混合ガスが前記容器の軸方向一端側から導入され、前記混合ガスから前記特定成分が除去された精製ガスが前記容器の軸方向他端側から導出される、吸着装置であって、前記吸着層には、該吸着層を軸方向に複数の区分吸着層に区分する1又は複数の仕切板が設けられている、吸着装置である。
【0008】
第1の手段によると、吸着層を複数の区分吸着層に区分する1又は複数の仕切板により、混合ガスの流れが整流されることで、吸着層全域に対する混合ガスの流れが均一化される。これにより、吸着層全域にわたって吸着材を有効利用することができる。よって、吸着層の吸着量の低下を抑制することができる。
【0009】
第2の手段は、第1の手段の吸着装置であって、前記吸着層の軸方向に隣り合う前記各区分吸着層において、前記容器の軸方向一端側に位置する一方の前記区分吸着層の圧損が、他方の前記区分吸着層の圧損よりも大きい、吸着装置である。
【0010】
第2の手段によると、吸着層の軸方向に隣り合う各区分吸着層において、一方の区分吸着層は混合ガスが流れにくく、他方の区分吸着層は混合ガスが流れやすい。これにより、各区分吸着層を流れる混合ガスの流れを均一化することができる。
【0011】
第3の手段は、第2の手段の吸着装置であって、前記一方の前記区分吸着層の軸方向寸法は、前記他方の前記区分吸着層の軸方向寸法よりも小さい、吸着装置である。
【0012】
第3の手段によると、吸着層の軸方向に隣り合う各区分吸着層において、一方の区分吸着層の軸方向寸法を、他方の区分吸着層の軸方向寸法よりも小さくすることで、一方の区分吸着層の圧損を他方の区分吸着層の圧損よりも大きくすることができる。
【0013】
第4の手段は、第2又は3の手段の吸着装置であって、前記各区分吸着層の内周を包囲する通気性を有する内筒部、及び、該区分吸着層の外周を包囲する通気性を有する外筒部を有しており、前記一方の前記区分吸着層における前記内筒部及び/又は前記外筒部の単位面積当たりの開口面積は、前記他方の前記区分吸着層における前記内筒部及び/又は前記外筒部の単位面積当たりの開口面積よりも小さい、吸着装置である。
【0014】
第4の手段によると、吸着層の軸方向に隣り合う各区分吸着層において、一方の区分吸着層における内筒部及び/又は外筒部の単位面積当たりの開口面積を、他方の区分吸着層における内筒部及び/又は外筒部の単位面積当たりの開口面積よりも小さくすることで、一方の区分吸着層の圧損を他方の区分吸着層の圧損よりも大きくすることができる。
【0015】
第5の手段は、第1~4のいずれか1つの手段の吸着装置であって、前記各区分吸着層をそれぞれ加熱する加熱装置を備えた、吸着装置である。
【0016】
第5の手段によると、脱離時において、各加熱装置により各区分吸着層を加熱することにより、脱離時の吸熱による各区分吸着層の温度低下を抑制し、特定成分の脱離を促進することができる。
【0017】
第6の手段は、第5の手段の吸着装置であって、前記各区分吸着層の温度をそれぞれ検出する温度センサと、前記各温度センサの検出情報に基づいて前記各加熱装置を通電制御する制御装置と、を備えた、吸着装置である。
【0018】
第6の手段によると、制御装置が各温度センサの検出情報に基づいて各加熱装置を通電制御する。これにより、各区分吸着層の温度を適正化し、無駄な加熱を抑制することができる。すなわち、脱離時の熱マネジメントを行うことにより、省エネを達成することができる。
【0019】
第7の手段は、第5又は6の手段の吸着装置であって、前記容器と前記仕切板とは熱的に接続されている、吸着装置である。
【0020】
第7の手段によると、仕切板の熱を容器を介して外部に放熱させることができる。これにより、脱離後の各区分吸着層の温度を吸着適正温度まで速やかに低下させ、次回の吸着工程を早く実施することが可能となる。よって、サイクルタイムの短縮化を図ることができる。
【0021】
第8の手段は、請求項1~7のいずれか1つに記載の吸着装置と、該吸着装置により得られた精製ガスとしての水素を燃料として発電する燃料電池と、を備えた、燃料電池システムである。
【0022】
第8の手段によると、吸着層の吸着量の低下を抑制することのできる吸着装置により得られた精製ガスとしての水素を燃料として燃料電池が発電する。
【発明の効果】
【0023】
本明細書に開示の技術によると、吸着層の吸着量の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施形態1にかかる燃料電池システムの概要を示す模式図である。
図2】吸着装置を示す断面図である。
図3】実施形態2にかかる吸着装置を示す断面図である。
図4】実施形態3にかかる吸着装置を示す断面図である。
図5】実施形態4にかかる仕切板の要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本明細書に開示の技術を実施するための形態について図面を用いて説明する。
【0026】
[実施形態1]
本実施形態では、水素を燃料とする燃料電池システムに用いられるアンモニア吸着装置(以下、「吸着装置」という)について例示する。
【0027】
(燃料電池システムの概要)
図1は燃料電池システムの概要を示す模式図である。図1に示すように、燃料電池システム100は、改質器102と吸着装置10と燃料電池(FC:Fuel Cell)104とを備えている。
【0028】
改質器102は、純アンモニア(NH3)を原燃料とし、アンモニアを熱分解反応によって水素と窒素とに改質する触媒を備える。改質器102により得られる改質ガスの成分は、主に水素、窒素であり、改質反応に寄与しなかったアンモニアも含まれる。改質ガスは、吸着装置10に供給される。
【0029】
吸着装置10は、改質器102から供給された改質ガスに含まれるアンモニアを吸着する。吸着装置10によりアンモニアが除去された精製ガスが燃料電池104に供給される。精製ガスの成分は主に水素と窒素である。
【0030】
燃料電池104は、精製ガスの水素を燃料として発電する。吸着装置10によりアンモニアが除去されることで、燃料電池104のスタックの劣化が抑制される。
【0031】
(吸着装置10)
図2は吸着装置10を示す断面図である。図2において、左方を吸着装置10の前方とし、右方を吸着装置10の後方として説明を行う。図2に示すように、吸着装置10は、円筒状の容器12と、容器12内に同心状に設けられた円筒状の吸着層20と、を備えている。容器12は、容器本体13と蓋板14とを有する。容器本体13は、円筒状の筒部13aの一端開口部(前端開口部)を円板状の端壁部13bで閉鎖してなる。筒部13aの他端開口端(後端開口部)は、蓋板14により閉鎖されている。容器12の端壁部13b側(前側)が本明細書でいう「容器の軸方向一端側」に相当する。容器12の蓋板14側(後側)が本明細書でいう「容器の軸方向他端側」に相当する。
【0032】
容器本体13の端壁部13bの前面側の中央部には、容器12内外を連通する円筒状の導入口16が同心状に突出されている。蓋板14の後面側の中央部には、容器12内外を連通する円筒状の導出口18が同心状に突出されている。容器本体13及び蓋板14は、吸着材22の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する金属材料、例えばステンレス材により形成されている。
【0033】
容器12内には、吸着層20に対応する円筒状空間が形成されている。円筒状空間に吸着材22が充填されている。吸着材22により吸着層20が形成されている。吸着材22は、特定成分(例えば、アンモニア)を吸着・脱離可能である。また、吸着材22は、例えば活性炭、ゼオライト等からなる粒状多孔質体である。吸着材22を充填する円筒状空間は、容器12内に設けられた内筒部24、外筒部26及び端板部28により区画されている。
【0034】
内筒部24は円筒状に形成されている。内筒部24は、容器12内に同心状に配置されている。内筒部24の後端部(図2において右端部)は、導出口18と連続的に接続されている。内筒部24の内部空間と導出口18の内部空間とにより一連の導出通路25が形成されている。
【0035】
また、内筒部24は、メッシュ状に形成されており、通気性を有する。なお、内筒部24のメッシュの孔径、ピッチ、開孔率等は適宜設定することができる。また、メッシュの孔の大きさは、吸着材22の大きさよりも大きくてもよい。この場合、吸着材22のこぼれを防止するため、例えば、内筒部24の外周面又は内周面を包囲するグラスウール等のフィルタ部材を設けるとよい。
【0036】
外筒部26は、内筒部24を所定の間隔を隔てて取り囲む円筒状に形成されている。外筒部26は、容器本体13の筒部13aに対して所定の間隔を隔てて配置されている。外筒部26は、内筒部24及び筒部13aと三重円筒状をなすように配置されている。外筒部26は、蓋板14と端板部28との間に配置されている。
【0037】
また、外筒部26は、軸方向(前後方向)に複数(例えば5個)の短筒部26a、26b、26c、26d、26eに分割されている。前端の短筒部26aは端板部28に接続されている。後端の短筒部26eは蓋板14に接続されている。各短筒部26a、26b、26c、26d、26eの軸方向寸法La、Lb、Lc、Ld、Leは、前方から後方に向かって段階的に大きく(長く)なるように設定されている。
【0038】
各短筒部26a、26b、26c、26d、26eは、メッシュ状に形成されており、通気性を有する。なお、各短筒部26a、26b、26c、26d、26eのメッシュの孔径、ピッチ、開孔率等は適宜設定することができる。また、メッシュの孔の大きさは、吸着材22の大きさよりも大きくてもよい。この場合、吸着材22のこぼれを防止するため、例えば、各短筒部26a、26b、26c、26d、26eの外周面又は内周面を包囲するグラスウール等のフィルタ部材を設けるとよい。
【0039】
端板部28は円板状に形成されている。端板部28は、内筒部24と外筒部26との間の前端開口部を閉鎖するように配置されている。端板部28は、蓋板14と平行状に配置されている。内筒部24及び外筒部26の後端開口部は蓋板14により閉鎖されている。
【0040】
端板部28は、容器本体13の端壁部13bに対して軸方向(前後方向)に所定の間隔を隔てて対向状に配置されている。導入口16の内部空間と、容器本体13の端壁部13bと端板部28との間の空間と、容器本体13の筒部13aと外筒部26及び端板部28との間の空間と、により一連の導入通路29が形成されている。
【0041】
吸着層20の内筒部24、外筒部26の各短筒部26a、26b、26c、26d、26e、及び、端板部28は、吸着材22の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する金属材料、例えばステンレス材により形成されている。
【0042】
吸着層20は、複数(例えば4枚)の円環板状の仕切板30により複数(例えば5個)に仕切られている。すなわち、外筒部26の隣り合う短筒部26aと短筒部26bとの間、短筒部26bと短筒部26cとの間、短筒部26cと短筒部26dとの間、短筒部26dと短筒部26eとの間に仕切板30が配置されている。各仕切板30の内周側端部は内筒部24に接続されている。各仕切板30の外周側端部は各短筒部26a、26b、26c、26d、26eに接続されている。各仕切板30は、相互に所定の間隔を隔てて平行状に配置されている。各仕切板30は、吸着材22の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する金属材料、例えばステンレス材により形成されている。
【0043】
各仕切板30により、吸着層20が軸方向(前後方向)に複数(例えば5個)の区分吸着層20a、20b、20c、20d、20eに区分されている。なお、各区分吸着層20a、20b、20c、20d、20eのうち、軸方向(前後方向)に隣り合う区分吸着層20aと区分吸着層20b、区分吸着層20bと区分吸着層20c、区分吸着層20cと区分吸着層20d、区分吸着層20dと区分吸着層20eにおいて、導入口16に近い前側の区分吸着層が「一方の区分吸着層」に相当し、導入口16から遠い後側の区分吸着層が「他方の区分吸着層」に相当する。
【0044】
外筒部26の各短筒部26a、26b、26c、26d、26eの軸方向寸法La、Lb、Lc、Ld、Leは、前方から後方に向かって段階的に大きく(長く)なっている。このため、各区分吸着層20a、20b、20c、20d、20eの軸方向寸法は、前方から後方に向かって段階的に大きく(長く)なっている。
【0045】
これにより、各区分吸着層20a、20b、20c、20d、20eの圧損は、前方から後方に向かって段階的に小さくなっている。すなわち、吸着層20の軸方向に隣り合う各区分吸着層20a,20b、20b,20c、20c,20d、20d,20eにおいて、一方(前側)の区分吸着層の圧損は他方(後側)の区分吸着層の圧損よりも大きい。
【0046】
各区分吸着層20a、20b、20c、20d、20eの内周を包囲する内筒部24の各部分(各区分吸着層に対応する各部分)の単位面積当たりの開口面積は、前方から後方に向かって段階的に大きくなるように設定されている。これにより、各区分吸着層20a、20b、20c、20d、20eの圧損は、前方から後方に向かって段階的に小さくなっている。すなわち、吸着層20の軸方向に隣り合う各区分吸着層20a,20b、20b,20c、20c,20d、20d,20eにおいて、一方(前側)の区分吸着層の圧損は他方(後側)の区分吸着層の圧損よりも大きい。
【0047】
各区分吸着層20a、20b、20c、20d、20eの外周を包囲する外筒部26において、外筒部26の各部分(各短筒部26a、26b、26c、26d、26e)の単位面積当たりの開口面積は、前方から後方に向かって段階的に大きくなるように設定されている。これにより、各区分吸着層20a、20b、20c、20d、20eの圧損は、前方から後方に向かって段階的に小さくなっている。すなわち、吸着層20の軸方向に隣り合う各区分吸着層20a,20b、20b,20c、20c,20d、20d,20eにおいて、一方(前側)の区分吸着層の圧損は他方(後側)の区分吸着層の圧損よりも大きい。
【0048】
(吸着装置10の作用)
〈吸着時〉
水素、窒素及びアンモニアを含む混合ガス(改質ガス)が導入通路29に導入される。その混合ガスは、各区分吸着層20a、20b、20c、20d、20eを通過する。このとき、混合ガス中のアンモニアが各区分吸着層20a、20b、20c、20d、20eの吸着材22に吸着される。その後、各区分吸着層20a、20b、20c、20d、20eを通過することによりアンモニアが除去された精製ガスは、導出通路25から燃料電池104(図1参照)へ供給される。吸着時のガスの流れが図2に矢印で示されている。
【0049】
〈脱離時〉
脱離時のガスの流れは、吸着時のガスの流れとは逆方向となる。すなわち、窒素又は水素等の脱離用ガスが、導出通路25に導入され、各区分吸着層20a、20b、20c、20d、20eを通過する。このとき、各区分吸着層20a、20b、20c、20d、20eの吸着材22から特定成分(アンモニア)が脱離される。その後、各区分吸着層20a、20b、20c、20d、20eを通過することにより特定成分が回収された脱離用ガスは、導入通路29から排出される。その排出ガスは、改質器102に供給されるかもしくは燃焼処理される。
【0050】
(実施形態1の利点)
本実施形態によると、吸着層20を複数の区分吸着層20a、20b、20c、20d、20eに区分する複数の仕切板30により、混合ガスの流れが整流される。つまり、特許文献1に生じた混合ガスの流れのショートカットが抑制される。したがって、吸着層20全域(全ての区分吸着層20a、20b、20c、20d、20e)に対する混合ガスの流れが均一化される。これにより、全ての区分吸着層20a、20b、20c、20d、20eにわたって吸着材22を有効利用することができる。よって、吸着層20の吸着量の低下を抑制することができる。
【0051】
また、吸着層20の軸方向に隣り合う各区分吸着層20a,20b、20b,20c、20c,20d、20d,20eにおいて、一方(前側)の区分吸着層の圧損が、他方(後側)の区分吸着層の圧損よりも大きい。したがって、一方(前側)の区分吸着層は混合ガスが流れにくく、他方(後側)の区分吸着層は混合ガスが流れやすい。これにより、各区分吸着層20a、20b、20c、20d、20eを流れる混合ガスの流れを均一化することができる。
【0052】
また、吸着層20の軸方向に隣り合う各区分吸着層20a,20b、20b,20c、20c,20d、20d,20eにおいて、一方(前側)の区分吸着層の軸方向寸法を、他方(後側)の区分吸着層の軸方向寸法よりも小さくすることで、一方の区分吸着層の圧損を他方の区分吸着層の圧損よりも大きくすることができる。
【0053】
また、吸着層20の軸方向に隣り合う各区分吸着層20a,20b、20b,20c、20c,20d、20d,20eにおいて、一方(前側)の区分吸着層における内筒部24の各部分の単位面積当たりの開口面積を、他方(後側)の区分吸着層における内筒部24の各部分の単位面積当たりの開口面積よりも小さくすることで、一方の区分吸着層の圧損を他方の区分吸着層の圧損よりも大きくすることができる。
【0054】
また、吸着層20の軸方向に隣り合う各区分吸着層20a,20b、20b,20c、20c,20d、20d,20eにおいて、一方(前側)の区分吸着層における外筒部26の各短筒部の単位面積当たりの開口面積を、他方(後側)の区分吸着層における外筒部26の各短筒部の単位面積当たりの開口面積よりも小さくすることで、一方の区分吸着層の圧損を他方の区分吸着層の圧損よりも大きくすることができる。
【0055】
また、燃料電池システム100は、吸着装置10と、吸着装置10により得られた精製ガスとしての水素を燃料として発電する燃料電池104と、を備える。したがって、吸着層20の吸着量の低下を抑制することのできる吸着装置10により得られた精製ガスとしての水素を燃料として燃料電池104が発電する。
【0056】
[実施形態2]
本実施形態は、実施形態1の吸着装置10に変更を加えたものであるから、その変更部分について説明し、実施形態1と同一部位については同一符号を付して重複する説明を省略する。図3は吸着装置10を示す断面図である。
【0057】
図3に示すように、各仕切板30の片面又は両面には、円環板状のヒータ40が同心状に設けられている。例えば、最前部から4枚目までの仕切板30には、前面にヒータ40が配置されている。残り(最後部)の仕切板30には、前後両面にヒータ40が配置されている。各ヒータ40は、各区分吸着層20a、20b、20c、20d、20eの吸着材22によって覆われている。各ヒータ40は、通電によって発熱し、各区分吸着層20a、20b、20c、20d、20eの吸着材22を加熱する。各ヒータ40は、制御装置(ECU)42によって通電制御される。ヒータ40は、本明細書でいう「加熱装置」に相当する。ECU42は本明細書でいう「制御装置」に相当する。
【0058】
吸着装置10には、各区分吸着層20a、20b、20c、20d、20eの温度をそれぞれ検出する温度センサ44が設けられている。各温度センサ44は、各区分吸着層20a、20b、20c、20d、20eの温度をそれぞれ検出し、その検出情報をECU42に入力する。ECU42は、各温度センサ44の検出情報に基づいて各ヒータ40を個別に通電制御する。
【0059】
本実施形態によると、脱離時において、各区分吸着層20a、20b、20c、20d、20eを各ヒータ40によりそれぞれ加熱することにより、脱離時の吸熱による各区分吸着層20a、20b、20c、20d、20eの温度低下を抑制し、特定成分の脱離を促進することができる。
【0060】
また、各区分吸着層20a、20b、20c、20d、20eの温度をそれぞれ検出する各温度センサ44の検出情報に基づいて、ECU42が各ヒータ40を通電制御する。これにより、各区分吸着層20a、20b、20c、20d、20eの温度を適正化し、無駄な加熱を抑制することができる。すなわち、脱離時の熱マネジメントを行うことにより、省エネを達成することができる。
【0061】
また、各仕切板30の他、各区分吸着層20a、20b、20c、20d、20eの吸着材22に接触する部材(内筒部24、外筒部26の各短筒部26a、26b、26c、26d、26e、端板部28及び蓋板14)が吸着材22の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有するため、各区分吸着層20a、20b、20c、20d、20eの吸着材22を効率良く加熱することができる。
【0062】
[実施形態3]
本実施形態は、実施形態2の吸着装置10に変更を加えたものであるから、その変更部分について説明し、実施形態2と同一部位については同一符号を付して重複する説明を省略する。図4は吸着装置10を示す断面図である。図4に示すように、本実施形態では、各ヒータ40(実施形態2と同一符号を付す)が各区分吸着層20a、20b、20c、20d、20e内の中央部に配置されている。また、各温度センサ44(実施形態2と同一符号を付す)は、各仕切板30の温度を検出するように配置されている。この場合、各温度センサ44により各区分吸着層20a、20b、20c、20d、20eの温度を各仕切板30を介して検出することができる。なお、各温度センサ44は、実施形態2(図3参照)と同様に配置してもよい。
【0063】
[実施形態4]
本実施形態は、実施形態2の仕切板30に変更を加えたものである。図5は仕切板30の要部を示す断面図である。図5に示すように、仕切板30には、外径を拡張する拡径部32が形成されている。拡径部32の外周端部は、容器本体13の筒部13aに接続されている。これにより、容器12と仕切板30とが熱的に接続されている。仕切板30の拡径部32には、導入通路29におけるガスの流通を可能とする多数の連通孔32aが形成されている。
【0064】
本実施形態によると、容器12と仕切板30とが熱的に接続されている。したがって、仕切板30の熱を容器12を介して外部に放熱することができる。これにより、脱離後の各区分吸着層20a、20b、20c、20d、20eの温度を吸着適正温度まで速やかに低下させることができる。このため、次回の吸着工程を早期に実施することが可能となり、サイクルタイムを短縮することができる。なお、仕切板30の拡径部32は実施形態3(図4参照)の吸着装置10に適用してもよい。
【0065】
また、容器12、及び、各区分吸着層20a、20b、20c、20d、20eの吸着材22に接触する部材(内筒部24、外筒部26の各短筒部26a、26b、26c、26d、26e)、端板部28及び蓋板14)が吸着材22の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有するため、各区分吸着層20a、20b、20c、20d、20eの吸着材22の熱を効率良く外部に放熱することができる。
【0066】
[他の実施形態]
本明細書に開示の技術は、前記した実施形態に限定されるものではなく、その他各種の形態で実施可能である。例えば、吸着装置は、アンモニア吸着装置に限らず、一酸化炭素吸着装置、二酸化炭素吸着装置に適用してもよい。また、吸着装置10は、温度スイング式吸着ガス分離法、圧力スイング式吸着ガス分離法又は圧力・温度スイング式吸着脱離法に適用してもよい。また、容器12は、円筒状に限らず、角筒状でもよい。また、仕切板30は1枚でもよい。
【0067】
また、内筒部24は、軸方向に複数に分割したもので形成してもよい。また、外筒部26は、一部材で形成してもよい。また、各区分吸着層20a、20b、20c、20d、20eの圧損は、各区分吸着層の軸方向寸法、各区分吸着層における内筒部24の各部分の単位面積当たりの開口面積、各区分吸着層における外筒部26の各部分(各短筒部)の単位面積当たりの開口面積のうち、少なくとも1つにより変更してもよい。また、ヒータ40の形状、個数、配置形態は任意である。
【0068】
また、導入口16と導出口18とを逆配置としてもよい。この場合、吸着層20の端板部28以外の部材(吸着材22、内筒部24、外筒部26)の配置を軸方向に逆向きに配置すればよい。また、仕切板30の拡径部32は、容器12と仕切板30とを熱的に接続するものであれば仕切板30と別体で形成してもよい。
【符号の説明】
【0069】
10 吸着装置
12 容器
20 吸着層
20a、20b、20c、20d、20e 区分吸着層
22 吸着材
24 内筒部
26 外筒部
30 仕切板
40 ヒータ(加熱装置)
42 ECU(制御装置)
44 温度センサ
100 燃料電池システム
104 燃料電池
図1
図2
図3
図4
図5