(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023133772
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】改質器及び燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
C01B 3/04 20060101AFI20230920BHJP
H01M 8/0606 20160101ALI20230920BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20230920BHJP
H01M 8/0662 20160101ALI20230920BHJP
【FI】
C01B3/04 B
H01M8/0606
H01M8/04 N
H01M8/0662
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038958
(22)【出願日】2022-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】日下 星野
【テーマコード(参考)】
5H127
【Fターム(参考)】
5H127AC15
5H127BA01
5H127BA02
5H127BA12
5H127BA17
5H127EE12
(57)【要約】
【課題】改質器の改質効率の低下を抑制する。
【解決手段】改質器10は、容器12と、容器12内に配置されかつ原料ガスを改質ガスに改質する触媒22が充填された筒状の触媒層20と、を備える。触媒層20の軸方向一端側から触媒層20の中空部又は外周部に導入された原料ガスが触媒層20を径方向に流れる。触媒層20には、触媒層20を軸方向に複数の区分触媒層20a、20b、20c、20d、20eに区分する複数の仕切板30が設けられる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器と、
前記容器内に配置されかつ原料ガスを改質ガスに改質する触媒が充填された筒状の触媒層と、
を備えており、
前記触媒層の軸方向一端側から該触媒層の中空部又は外周部に導入された原料ガスが該触媒層を径方向に流れる、改質器であって、
前記触媒層には、該触媒層を軸方向に複数の区分触媒層に区分する1又は複数の仕切板が設けられている、改質器。
【請求項2】
請求項1に記載の改質器であって、
前記触媒層の軸方向に隣り合う前記各区分触媒層において、前記触媒層の軸方向一端側に位置する一方の前記区分触媒層の圧損が、他方の前記区分触媒層の圧損よりも大きい、改質器。
【請求項3】
請求項2に記載の改質器であって、
前記一方の前記区分触媒層の軸方向寸法は、前記他方の前記区分触媒層の軸方向寸法よりも小さい、改質器。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の改質器であって、
前記各区分触媒層の内周を包囲する通気性を有する内筒部、及び、該区分触媒層の外周を包囲する通気性を有する外筒部を有しており、
前記一方の前記区分触媒層における前記内筒部及び/又は前記外筒部の単位面積当たりの開口面積は、前記他方の前記区分触媒層における前記内筒部及び/又は前記外筒部の単位面積当たりの開口面積よりも小さい、改質器。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載の改質器であって、
前記改質ガスの熱を前記原料ガスに伝達する熱伝達部材を備えた、改質器。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1つに記載の改質器であって、
前記触媒層より下流側の通路の最小開口面積は、該触媒層より上流側の通路の最小開口面積よりも大きい、改質器。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1つに記載の改質器であって、
前記各区分触媒層をそれぞれ加熱する加熱装置を備えた、改質器。
【請求項8】
請求項7に記載の改質器であって、
前記各区分触媒層の温度をそれぞれ検出する温度センサと、
前記各温度センサの検出情報に基づいて前記各加熱装置を通電制御する制御装置と、
を備えた、改質器。
【請求項9】
前記原料ガスとしてのアンモニアを水素と窒素を含む前記改質ガスに改質する、請求項1~8のいずれか1つに記載の改質器と、
前記改質ガスのアンモニアを吸着する吸着装置と、
前記吸着装置により得られた水素を燃料として発電する燃料電池と、
を備えた、燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、改質器及び燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、容器と、容器内に配置されかつ混合ガス中の特定成分を吸着する吸着材が充填された筒状の吸着層と、を備える吸着装置が記載されている。吸着層の軸方向一端側から該吸着層の中空部又は外周部に導入された混合ガスが触媒層を径方向に流れる、特許文献1の吸着装置は、吸着材を触媒に置き換えることにより、改質器として用いることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
改質器として特許文献1に記載の吸着装置を用いる場合、触媒層を軸方向に区分する仕切板が設けられていない。したがって、例えば、触媒層の軸方向一端側から触媒層の中空部又は外周部に導入された原料ガスが、触媒層を径方向に流れる際、斜め方向にショートカットして流れやすい。このため、触媒層の一部に流れの淀みが生じる結果、改質効率が低下するおそれがある。
【0005】
本明細書に開示の技術が解決しようとする課題は、改質器の改質効率の低下を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本明細書が開示する技術は次の手段をとる。
【0007】
第1の手段は、容器と、前記容器内に配置されかつ原料ガスを改質ガスに改質する触媒が充填された筒状の触媒層と、を備えており、前記触媒層の軸方向一端側から該触媒層の中空部又は外周部に導入された原料ガスが該触媒層を径方向に流れる、改質器であって、前記触媒層には、該触媒層を軸方向に複数の区分触媒層に区分する1又は複数の仕切板が設けられている、改質器である。
【0008】
第1の手段によると、触媒層を複数の区分触媒層に区分する1又は複数の仕切板により、原料ガスの流れが整流されることで、触媒層全域に対する原料ガスの流れが均一化される。これにより、触媒層全域にわたって触媒を有効利用することができる。よって、改質器の改質効率の低下を抑制することができる。
【0009】
第2の手段は、第1の手段の改質器であって、前記触媒層の軸方向に隣り合う前記各区分触媒層において、前記触媒層の軸方向一端側に位置する一方の前記区分触媒層の圧損が、他方の前記区分触媒層の圧損よりも大きい、改質器である。
【0010】
第2の手段によると、触媒層の軸方向に隣り合う各区分触媒層において、一方の区分触媒層は原料ガスが流れにくく、他方の区分触媒層は原料ガスが流れやすい。これにより、各区分触媒層を流れる原料ガスの流れを均一化することができる。
【0011】
第3の手段は、第2の手段の改質器であって、前記一方の前記区分触媒層の軸方向寸法は、前記他方の前記区分触媒層の軸方向寸法よりも小さい、改質器である。
【0012】
第3の手段によると、触媒層の軸方向に隣り合う各区分触媒層において、一方の区分触媒層の軸方向寸法を、他方の区分触媒層の軸方向寸法よりも小さくすることで、一方の区分触媒層の圧損を他方の区分触媒層の圧損よりも大きくすることができる。
【0013】
第4の手段は、第2又は3の手段の改質器であって、前記各区分触媒層の内周を包囲する通気性を有する内筒部、及び、該区分触媒層の外周を包囲する通気性を有する外筒部を有しており、前記一方の前記区分触媒層における前記内筒部及び/又は前記外筒部の単位面積当たりの開口面積は、前記他方の前記区分触媒層における前記内筒部及び/又は前記外筒部の単位面積当たりの開口面積よりも小さい、改質器である。
【0014】
第4の手段によると、触媒層の軸方向に隣り合う各区分触媒層において、一方の区分触媒層における内筒部及び/又は外筒部の単位面積当たりの開口面積を、他方の区分触媒層における内筒部及び/又は外筒部の単位面積当たりの開口面積よりも小さくすることで、一方の区分触媒層の圧損を他方の区分触媒層の圧損よりも大きくすることができる。
【0015】
第5の手段は、第1~4のいずれか1つの手段の改質器であって、前記改質ガスの熱を前記原料ガスに伝達する熱伝達部材を備えた、改質器器である。
【0016】
第5の手段によると、熱伝達部材により改質ガスの熱を受熱し、その熱が原料ガスに伝達されることで、原料ガスが加熱される。これにより、原料ガスの改質を促進することができる。
【0017】
第6の手段は、第1~5のいずれか1つの手段の改質器であって、前記触媒層より下流側の通路の最小開口面積は、該触媒層より上流側の通路の最小開口面積よりも大きい、改質器である。
【0018】
第6の手段によると、原料ガスの容積より改質ガスの容積が増える場合において、触媒層の下流側の通路における圧力の増大を抑制し、原料ガスが触媒層へ流入しにくくなることを抑制することができる。また、原料ガスの改質(分解反応)は高圧下で阻害されるため、触媒層の下流側の通路における圧力を下げることで、改質効率の低下を抑制することができる。
【0019】
第7の手段は、第1~6のいずれか1つの手段の改質器であって、前記各区分触媒層をそれぞれ加熱する加熱装置を備えた、改質器である。
【0020】
第7の手段によると、各加熱装置により各区分触媒層を加熱することにより、触媒の改質を促進することができる。
【0021】
第8の手段は、第7の手段の改質器であって、前記各区分触媒層の温度をそれぞれ検出する温度センサと、前記各温度センサの検出情報に基づいて前記各加熱装置を通電制御する制御装置と、を備えた、改質器である。
【0022】
第8の手段によると、制御装置が各温度センサの検出情報に基づいて各加熱装置を通電制御する。これにより、各区分触媒層の温度を適正化し、無駄な加熱を抑制することができる。すなわち、各区分触媒層の熱マネジメントを行うことにより、省エネを達成することができる。
【0023】
第9の手段は、前記原料ガスとしてのアンモニアを水素と窒素を含む前記改質ガスに改質する、請求項1~8のいずれか1つに記載の改質器と、前記改質ガスのアンモニアを吸着する吸着装置と、前記吸着装置により得られた水素を燃料として発電する燃料電池と、を備えた、燃料電池システムである。
【0024】
第8の手段によると、改質効率の低下を抑制することのできる改質器により改質ガスが得られ、吸着装置により改質ガスの特定成分が吸着された精製ガスとしての水素を燃料として燃料電池が発電する。
【発明の効果】
【0025】
本明細書に開示の技術によると、改質器の改質効率の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】実施形態1にかかる燃料電池システムの概要を示す模式図である。
【
図3】実施形態2にかかる改質器を示す断面図である。
【
図4】実施形態3にかかる改質器を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本明細書に開示の技術を実施するための形態について図面を用いて説明する。
【0028】
[実施形態1]
本実施形態では、水素を燃料とする燃料電池システムに用いられる改質器について例示する。
【0029】
(燃料電池システムの概要)
図1は燃料電池システムの概要を示す模式図である。
図1に示すように、燃料電池システム100は、改質器10とアンモニア吸着装置(以下、「吸着装置」という)102と燃料電池(FC:Fuel Cell)104とを備えている。
【0030】
改質器10は、純アンモニア(NH3)を原料ガスとし、アンモニアを熱分解反応によって水素と窒素とに改質(分解)する改質触媒を備える。改質器10により得られる改質ガスの成分は、主に水素、窒素であり、改質反応に寄与しなかったアンモニアも含まれる。改質ガスは吸着装置102に供給される。
【0031】
吸着装置102は、改質器10から供給された改質ガスに含まれるアンモニアを吸着する。吸着装置102によりアンモニアが除去された精製ガスが燃料電池104に供給される。精製ガスの成分は主に水素と窒素である。
【0032】
燃料電池104は、精製ガスの水素を燃料として発電する。吸着装置102によりアンモニアが除去されることで、燃料電池104のスタックの劣化が抑制される。
【0033】
(改質器10)
図2は改質器10を示す断面図である。
図2において、左方を前方とし、右方を後方として説明を行う。
図2に示すように、改質器10は、円筒状の容器12と、容器12内に同心状に設けられた円筒状の触媒層20と、を備えている。
【0034】
容器12は、容器本体13と蓋板14とを有する。容器本体13は、円筒状の筒部13aの一端開口部(前端開口部)を円板状の端壁部13bで閉鎖してなる。筒部13aの他端開口端(後端開口部)は、蓋板14により閉鎖されている。
【0035】
蓋板14の後面側の中央部には、容器12内外を連通する円筒状の導入口16が同心状に突出されている。蓋板14の後面側の外周部(
図2において下部)には、容器12内外を連通する円筒状の導出口18が突出されている。導出口18は、導入口16の口径16dよりも大きい口径18dを有する。容器12の後側が本明細書でいう「軸方向一端側」に相当する。容器12の前側が本明細書でいう「軸方向他端側」に相当する。
【0036】
容器12の後端部(
図2において右端部)内に熱伝達部材50が設けられている。熱伝達部材50は、円筒状の接続筒50aと、複数(例えば4枚)の円環板状の受熱板50bと、を有する。接続筒50aの後端部(
図2において右端部)は、導入口16と連続的に接続されている。接続筒50aに各受熱板50bの内周側端部が接続されている。各受熱板50bは、軸方向に等間隔で平行状に配置されている。受熱板50bは本明細書でいう「受熱部材」に相当する。
【0037】
前端(
図2において左端)の受熱板50bは、その前面が接続筒50aの前端面と同一平面をなすように配置されている。後端(
図2において右端)の受熱板50bは、蓋板14に対して所定の間隔を空けて対向状に配置されている。受熱板50bの外径は、容器本体13の筒部13aに内径よりも小さい。本実施形態では、受熱板50bの外径は、外筒部26(後出)の外径と略等しい。
【0038】
容器12内には、触媒層20に対応する円筒状空間が形成されている。円筒状空間は、熱伝達部材50の前端の受熱板50b、内筒部24、外筒部26及び端板部28により形成されている。円筒状空間に粒状の改質触媒(以下、「触媒」という)22が充填されている。触媒22により触媒層20が形成されている。触媒22は、アンモニアを水素と窒素に改質可能(分解可能)である。また、触媒22は、例えば、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)等を含有する。
【0039】
内筒部24は円筒状に形成されている。内筒部24は、容器12内に同心状に配置されている。内筒部24の後端部(
図2において右端部)は、熱伝達部材50の接続筒50aと連続的に接続されている。内筒部24、熱伝達部材50の接続筒50a、及び、導入口16の中空部により一連の原料ガス通路25が形成されている。原料ガス通路25において、導入口16の開口面積が最小開口面積に相当する。原料ガス通路25は本明細書でいう「触媒層より上流側の通路」に相当する。内筒部24の中空部は本明細書でいう「触媒層の中空部」に相当する。
【0040】
また、内筒部24は、メッシュ状に形成されており、通気性を有する。なお、内筒部24のメッシュの孔径、ピッチ、開孔率等は適宜設定することができる。また、メッシュの孔の大きさは、触媒22の大きさよりも大きくてもよい。この場合、触媒22のこぼれを防止するため、例えば、内筒部24の外周面又は内周面を包囲するグラスウール等のフィルタ部材を設けるとよい。
【0041】
外筒部26は、内筒部24を所定の間隔を隔てて取り囲む円筒状に形成されている。外筒部26は、容器本体13の筒部13aに対して所定の間隔を隔てて配置されている。すなわち、外筒部26は、内筒部24及び筒部13aと三重円筒状をなすように配置されている。外筒部26は、熱伝達部材50の前端の受熱板50bと端板部28との間に配置されている。容器本体13の筒部13aと外筒部26との間の空間部は本明細書でいう「触媒層の外周部」に相当する。
【0042】
また、外筒部26は、軸方向(前後方向)に複数(例えば5個)の短筒部26a、26b、26c、26d、26eに分割されている。前端の短筒部26aは端板部28に接続されている。後端の短筒部26eは熱伝達部材50の前端の受熱板50bに接続されている。
【0043】
各短筒部26a、26b、26c、26d、26eの軸方向寸法La、Lb、Lc、Ld、Leは、後方(寸法Le側)から前方(寸法La側)に向かって段階的に大きく(長く)なるように設定されている。
【0044】
各短筒部26a、26b、26c、26d、26eは、メッシュ状に形成されており、通気性を有する。なお、各短筒部26a、26b、26c、26d、26eのメッシュの孔径、ピッチ、開孔率等は適宜設定することができる。また、メッシュの孔の大きさは、触媒22の大きさよりも大きくてもよい。この場合、触媒22のこぼれを防止するため、例えば、各短筒部26a、26b、26c、26d、26eの外周面又は内周面を包囲するグラスウール等のフィルタ部材を設けるとよい。
【0045】
端板部28は円板状に形成されている。端板部28は、内筒部24と外筒部26との間の前端開口部を閉鎖するように配置されている。内筒部24及び外筒部26の後端開口部は熱伝達部材50の前端の受熱板50bにより閉鎖されている。
【0046】
端板部28は、容器本体13の端壁部13bに対して軸方向(前後方向)に所定の隙間を隔てて対向状に配置されている。容器12内において、外筒部26の外周側の空間部と、熱伝達部材50の外周側の空間部(隣り合う受熱板50bの間の空間部、及び、後端の受熱板50bと蓋板14との間の空間部を含む)と、導出口18の中空部と、により一連の改質ガス通路29が形成されている。改質ガス通路29において、導出口18の開口面積が最小開口面積に相当する。改質ガス通路29は本明細書でいう「触媒層より下流側の通路」に相当する。
【0047】
触媒層20は、複数(例えば4枚)の円環板状の仕切板30により複数(例えば5個)に仕切られている。すなわち、外筒部26の隣り合う短筒部26aと短筒部26bとの間、短筒部26bと短筒部26cとの間、短筒部26cと短筒部26dとの間、短筒部26dと短筒部26eとの間に仕切板30が配置されている。各仕切板30の内周側端部は内筒部24に接続されている。各仕切板30の外周側端部は各短筒部26a、26b、26c、26d、26eに接続されている。各仕切板30は、相互に所定の間隔を隔てて平行状に配置されている。
【0048】
各仕切板30により、触媒層20が軸方向(前後方向)に複数(例えば5個)の区分触媒層20a、20b、20c、20d、20eに区分されている。なお、各区分触媒層20a、20b、20c、20d、20eのうち、軸方向(前後方向)に隣り合う区分触媒層20aと区分触媒層20b、区分触媒層20bと区分触媒層20c、区分触媒層20cと区分触媒層20d、区分触媒層20dと区分触媒層20eにおいて、後側の区分触媒層が「触媒層の軸方向一端側に位置する一方の区分触媒層」に相当し、前側の区分触媒層が「他方の区分触媒層」に相当する。
【0049】
外筒部26の各短筒部26a、26b、26c、26d、26eの軸方向寸法La、Lb、Lc、Ld、Leは、後方から前方に向かって段階的に大きく(長く)なっている。このため、各区分触媒層20a、20b、20c、20d、20eの軸方向寸法は、後方(寸法Le側)から前方(寸法La側)に向かって段階的に大きく(長く)なっている。
【0050】
これにより、各区分触媒層20a、20b、20c、20d、20eの圧損は、後方から前方に向かって段階的に小さくなっている。すなわち、触媒層20の軸方向に隣り合う各区分触媒層20a,20b、20b,20c、20c,20d、20d,20eにおいて、一方(後側)の区分触媒層の圧損は他方(前側)の区分触媒層の圧損よりも大きい。
【0051】
各区分触媒層20a、20b、20c、20d、20eの内周を包囲する内筒部24の各部分(各区分触媒層に対応する各部分)の単位面積当たりの開口面積は、後方から前方に向かって段階的に大きくなるように設定されている。これにより、各区分触媒層20a、20b、20c、20d、20eの圧損は、後方から前方に向かって段階的に小さくなっている。すなわち、触媒層20の軸方向に隣り合う各区分触媒層20a,20b、20b,20c、20c,20d、20d,20eにおいて、一方(後側)の区分触媒層の圧損は他方(前側)の区分触媒層の圧損よりも大きい。
【0052】
各区分触媒層20a、20b、20c、20d、20eの外周を包囲する外筒部26において、外筒部26の各部分(各短筒部26a、26b、26c、26d、26e)の単位面積当たりの開口面積は、後方から前方に向かって段階的に大きくなるように設定されている。これにより、各区分触媒層20a、20b、20c、20d、20eの圧損は、後方から前方に向かって段階的に小さくなっている。すなわち、触媒層20の軸方向に隣り合う各区分触媒層20a,20b、20b,20c、20c,20d、20d,20eにおいて、一方(後側)の区分触媒層の圧損は他方(前側)の区分触媒層の圧損よりも大きい。
【0053】
容器12、内筒部24、外筒部26(各短筒部26a、26b、26c、26d、26e)、端板部28、各仕切板30及び熱伝達部材50は、触媒22の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する金属材料、例えばステンレス材によりそれぞれ形成されている。また、熱伝達部材50には、容器12及びその他の部材よりも高い熱伝導率を有する金属材料を用いるとよい。
【0054】
(改質器10の作用)
原料ガス(アンモニア)が原料ガス通路25に導入される。その原料ガスは、各区分触媒層20a、20b、20c、20d、20eを径方向外方に向かって放射状に流れる。このとき、各区分触媒層20a、20b、20c、20d、20eの触媒22によりアンモニアが水素と窒素に分解(改質)された改質ガスとされる。その後、改質ガスは、改質ガス通路29を流れた後、吸着装置102(
図1参照)へ供給される。
【0055】
また、改質ガス通路29を流れる改質ガスは、熱伝達部材50の外表面に接触する。これにより、改質ガスの熱が熱伝達部材50に受熱され、その熱が原料ガス通路25(詳しくは熱伝達部材50の接続筒50aの中空部)を流れる原料ガスに伝達されることで、原料ガスが加熱される。
図2に原料ガスの流れが矢印で示されている。
【0056】
(実施形態1の利点)
本実施形態によると、触媒層20を複数の区分触媒層20a、20b、20c、20d、20eに区分する複数の仕切板30により、原料ガスの流れが整流される。つまり、特許文献1に生じた流れのショートカットが抑制される。したがって、触媒層20全域(全ての区分触媒層20a、20b、20c、20d、20e)に対する原料ガスの流れが均一化される。これにより、全ての区分触媒層20a、20b、20c、20d、20eにわたって触媒22を有効利用することができる。よって、改質器10の改質効率の低下を抑制することができる。
【0057】
また、触媒層20の軸方向に隣り合う各区分触媒層20a,20b、20b,20c、20c,20d、20d,20eにおいて、一方(後側)の区分触媒層の圧損が、他方(前側)の区分触媒層の圧損よりも大きい。したがって、一方(後側)の区分触媒層は原料ガスが流れにくく、他方(前側)の区分触媒層は原料ガスが流れやすい。これにより、各区分触媒層20a、20b、20c、20d、20eを流れる原料ガスの流れを均一化することができる。
【0058】
また、触媒層20の軸方向に隣り合う各区分触媒層20a,20b、20b,20c、20c,20d、20d,20eにおいて、一方(後側)の区分触媒層の軸方向寸法を他方(前側)の区分触媒層の軸方向寸法よりも小さくすることで、一方(後側)の区分触媒層の圧損を他方(前側)の区分触媒層の圧損よりも大きくすることができる。
【0059】
また、触媒層20の軸方向に隣り合う各区分触媒層20a,20b、20b,20c、20c,20d、20d,20eにおいて、一方(後側)の区分触媒層における内筒部24の各部分の単位面積当たりの開口面積を、他方(前側)の区分触媒層における内筒部24の各部分の単位面積当たりの開口面積よりも小さくすることで、一方(後側)の区分触媒層の圧損を他方(前側)の区分触媒層の圧損よりも大きくすることができる。
【0060】
また、触媒層20の軸方向に隣り合う各区分触媒層20a,20b、20b,20c、20c,20d、20d,20eにおいて、一方(後側)の区分触媒層における外筒部26の各短筒部の単位面積当たりの開口面積を、他方(前側)の区分触媒層における外筒部26の各短筒部の単位面積当たりの開口面積よりも小さくすることで、一方(後側)の区分触媒層の圧損を他方(前側)の区分触媒層の圧損よりも大きくすることができる。
【0061】
また、熱伝達部材50により改質ガスの熱を受熱し、その熱が原料ガスに伝達されることで、原料ガスが加熱される。これにより、原料ガスの改質を促進することができる。
【0062】
また、改質ガス通路29の最小開口面積は、原料ガス通路25の最小開口面積よりも大きい。したがって、原料ガスの容積より改質ガスの容積が増える場合において、改質ガス通路29における圧力の増大を抑制し、原料ガスが触媒層20へ流入しにくくなることを抑制することができる。
【0063】
例えば、2NH3→N2+3H2で示されるアンモニアの分解反応の場合、改質ガスの容積が原料ガスの容積の2倍に増える。そうすると、仮に原料ガス通路25の最小開口面積と改質ガス通路29の最小開口面積とが同等では、改質ガス通路29の圧力が増大することによって、原料ガスが原料ガス通路25から触媒層20へ流入しにくくなる不具合をきたす。しかしながら、改質ガス通路29の最小開口面積を原料ガス通路25の最小開口面積よりも大きくすることで、そのような不具合を改善することができる。
【0064】
また、原料ガスの改質(分解反応)は高圧下で阻害されるため、改質ガス通路29における圧力を下げることで、改質効率の低下を抑制することができる。
【0065】
また、燃料電池システム100は、原料ガスとしてのアンモニアを水素と窒素を含む改質ガスに改質する改質器10と、改質ガスのアンモニアを吸着する吸着装置102と、吸着装置102により得られた水素を燃料として発電する燃料電池104と、を備える。したがって、改質効率の低下を抑制することのできる改質器10により改質ガスが得られ、吸着装置102により改質ガスの特定成分が吸着された精製ガスとしての水素を燃料として燃料電池104が発電する。
【0066】
[実施形態2]
本実施形態は、実施形態1の改質器10に変更を加えたものであるから、その変更部分について説明し、実施形態1と同一部位については同一符号を付して重複する説明を省略する。
図3は改質器10を示す断面図である。
【0067】
図3に示すように、各仕切板30の片面又は両面には、円環板状のヒータ40が同心状に設けられている。例えば、前端の仕切板30には、前後両面にヒータ40が配置されている。残りの3枚の仕切板30には、後面にヒータ40が配置されている。各ヒータ40は、各区分触媒層20a、20b、20c、20d、20eの触媒22によって覆われている。各ヒータ40は、通電によって発熱し、各区分触媒層20a、20b、20c、20d、20eの触媒22を加熱する。各ヒータ40は、制御装置(ECU)42によって通電制御される。ヒータ40は、本明細書でいう「加熱装置」に相当する。ECU42は本明細書でいう「制御装置」に相当する。
【0068】
改質器10には、各区分触媒層20a、20b、20c、20d、20eの温度をそれぞれ検出する温度センサ44が設けられている。各温度センサ44は、各区分触媒層20a、20b、20c、20d、20eの温度をそれぞれ検出し、その検出情報をECU42に入力する。ECU42は、各温度センサ44の検出情報に基づいて各ヒータ40を個別に通電制御する。
【0069】
本実施形態によると、各ヒータ40により各区分触媒層20a、20b、20c、20d、20eを加熱することにより、触媒22の改質を促進することができる。
【0070】
また、ECU42が各温度センサ44の検出情報に基づいて各ヒータ40を通電制御する。これにより、各区分触媒層20a、20b、20c、20d、20eの温度を適正化し、無駄な加熱を抑制することができる。すなわち、各区分触媒層20a、20b、20c、20d、20eの熱マネジメントを行うことにより、省エネを達成することができる。
【0071】
[実施形態3]
本実施形態は、実施形態2の改質器10に変更を加えたものであるから、その変更部分について説明し、実施形態2と同一部位については同一符号を付して重複する説明を省略する。
図4は改質器10を示す断面図である。
図4に示すように、本実施形態では、各ヒータ40(実施形態2と同一符号を付す)が各区分触媒層20a、20b、20c、20d、20e内の中央部に配置されている。また、各温度センサ44(実施形態2と同一符号を付す)は、各仕切板30の温度を検出するように配置されている。この場合、各温度センサ44により各区分触媒層20a、20b、20c、20d、20eの温度を各仕切板30を介して検出することができる。なお、各温度センサ44は、実施形態2(
図3参照)と同様に配置してもよい。
【0072】
[他の実施形態]
本明細書に開示の技術は、前記した実施形態に限定されるものではなく、その他各種の形態で実施可能である。例えば、改質器10は、アンモニアに限らず、様々な原料ガスに対応することが可能である。また、実施形態では、原料ガスが触媒層20を中空部側(原料ガス通路25側)から径方向外方に向かって放射状に流れるようにしたが、原料ガスによっては、原料ガスを流す向きを逆にしてもよい。すなわち、原料ガスが触媒層20を外周側から径方向内方に向かって収束状に流れるようにしてもよい。また、容器12の導入口16及び導出口18は、実施形態では蓋板14に配置したが、端壁部13bに配置してもよいし、両方の口16,18を異なる部位に分けて配置してもよい。
【0073】
また、容器12は、円筒状に限らず、角筒状でもよい。また、仕切板30は1枚でもよい。また、内筒部24は、軸方向に複数に分割したもので形成してもよい。また、外筒部26は、一部材で形成してもよい。また、各区分触媒層20a、20b、20c、20d、20eの圧損は、各区分触媒層の軸方向寸法、各区分触媒層における内筒部24の各部分の単位面積当たりの開口面積、各区分触媒層における外筒部26の各部分(各短筒部)の単位面積当たりの開口面積のうち、少なくとも1つにより変更してもよい。また、ヒータ40の形状、個数、配置形態は任意である。熱伝達部材50の受熱板50bは1枚でもよい。また、熱伝達部材50の受熱板50bは、フィン型、パイプ型の受熱部材に代えてもよい。
【符号の説明】
【0074】
10 改質器
12 容器
20 触媒層
20a、20b、20c、20d、20e 区分触媒層
22 触媒
24 内筒部
25 原料ガス通路(触媒層より上流側の通路)
26 外筒部
29 改質ガス通路(触媒層より下流側の通路)
30 仕切板
40 ヒータ(加熱装置)
42 ECU(制御装置)
44 温度センサ
50 熱伝達部材
100 燃料電池システム
102 吸着装置
104 燃料電池