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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023133774
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】圧入構造
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/58 20060101AFI20230920BHJP
   H01M 50/533 20210101ALI20230920BHJP
   H01M 50/553 20210101ALI20230920BHJP
   H01M 50/564 20210101ALI20230920BHJP
   H01M 50/55 20210101ALI20230920BHJP
   H01R 4/26 20060101ALI20230920BHJP
   H01R 4/28 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
H01R4/58 F
H01M50/533
H01M50/553
H01M50/564
H01M50/55 101
H01R4/26
H01R4/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038960
(22)【出願日】2022-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 泰士
(72)【発明者】
【氏名】山中 健司
【テーマコード(参考)】
5H043
【Fターム(参考)】
5H043AA03
5H043AA19
5H043AA20
5H043BA19
5H043CA04
5H043DA01
5H043DA20
5H043EA11
5H043EA60
5H043HA07D
5H043HA07E
5H043HA09D
5H043HA09E
5H043JA02D
5H043JA02E
5H043JA03D
5H043JA03E
5H043JA10D
5H043JA10E
5H043LA21D
5H043LA21E
5H043LA22D
5H043LA22E
(57)【要約】
【課題】圧入部材と被圧入部材との間の電気抵抗をできる限り小さくできる圧入構造を提供すること。
【解決手段】接続端子は、貫通孔22が形成された内端子20(被圧入部材)と、貫通孔22に対して圧入される圧入部11を有する外端子10(圧入部材)とを備える。圧入部11の外周面には、圧入される先端から圧入方向に沿って延びる溝部12が設けられている。溝部12は、溝部12の両側壁面の間隔が部分的に広がった拡径部13を有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧入構造であって、
貫通孔が形成された被圧入部材と、前記貫通孔に圧入される圧入部を有する圧入部材とを備えており、
前記圧入部の外周面には、圧入される先端から圧入方向に沿って延びる溝部が設けられており、
前記溝部は、該溝部の両側壁面の間隔が部分的に広がった拡径部を有する圧入構造。
【請求項2】
請求項1に記載の圧入構造であって、
前記拡径部が、前記圧入部の圧入される先端に向けて開口するように前記溝部の端部に設けられる圧入構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の圧入構造であって、
前記拡径部は、前記溝部の両側壁面の間隔が前記圧入部の圧入される先端側に向かうにつれて次第に広がるような形とされる圧入構造。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の圧入構造であって、
前記圧入部の圧入される先端には面取り部が形成されている圧入構造。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の圧入構造であって、
前記被圧入部材と前記圧入部材がリチウムイオン電池の端子を構成する二つの部材であって、前記圧入部材が前記被圧入部材に圧入されることによって前記被圧入部材と前記圧入部材とが電気的に接続される圧入構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧入構造に関する。詳しくは、リチウムイオン電池等の電池を構成する導通用の端子に用いられる圧入構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2009-259524号公報には、リチウムイオン電池のケース内部の電極体と、ケース蓋上面に取り付けられた外部端子とを電気的に接続する端子の接合構造が開示されている。具体的には、電極体に溶接された接続部材の端部が外部端子に挿通されて、挿通された先端がかしめられることで外部端子に固定される。そして、そのかしめ部において接続部材と外部端子とが互いに溶接される。それにより、接続部材と外部端子とが一体化されるとともに、外部端子と電極体とが電気的に接続されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-259524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記公報のリチウムイオン電池では、貫通孔に挿通された接続部材がかしめ及び溶接によって外部端子に接合されている。上記構成では接続部材と外部端子との接合のために複数の工程が必要であり、手順が複雑化して作業性が悪化する懸念がある。そのため、接続部材を外部端子の貫通孔に圧入することで簡便に互いを接合させることが考えられる。
【0005】
しかし、接続部材と外部端子とのそれぞれの表面には通常酸化皮膜が形成されているため、圧入の場合、接続部材と外部端子との間の電気抵抗が大きくなってしまう懸念がある。例えば、圧入時の摩擦により酸化皮膜を削り取ったとしても、それにより生じた剥離片が接合界面に入り込んでしまうと電気抵抗が大きくなってしまう。そこで、圧入部材と被圧入部材との間の電気抵抗をできる限り小さくできる圧入構造が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの態様としての圧入構造は、貫通孔が形成された被圧入部材と、貫通孔に圧入される圧入部を有する圧入部材とを備える。圧入部の外周面には、圧入される先端から圧入方向に沿って延びる溝部が設けられている。溝部は、溝部の両側壁面の間隔が部分的に広がった拡径部を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係る圧入構造が適用された電池を示す斜視図である。
図2】蓋と接続端子の正面図である。
図3】蓋と接続端子の分解図である。
図4】接続端子の断面図である。
図5】圧入部の下面図である。
図6】他の実施形態に係る圧入部の変形例である。
図7】他の実施形態に係る圧入部の変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<リチウムイオン電池>
以下、種々の実施形態を図1~7を用いて説明する。図1に示す電池1は、直方体状のケース2を備える。ケース2は金属から成り、上面が開口した有底筒形状である。ケース2の内部には例えば正極側及び負極側それぞれの電極体と、電極体同士を隔てるセパレータと、電解液とが収容されている。電池1は、ケース2の上面を閉塞する蓋3を有する。蓋3は金属から成る平板状部材である。電池1は例えばリチウムイオン電池とすることができるが、他の種類の電池とすることもできる。
【0009】
<接続端子>
図1及び図2に示すように、蓋3の長手方向の両部には、外部回路を電池1に電気的に接続するための接続端子4が正極側と負極側とでそれぞれ設けられている。以下では、一方の接続端子4(例えば負極側)について詳述するが、他方の接続端子4(例えば正極側)についても以下に説明するものと同様の構成を有するものとすることができる。
【0010】
接続端子4は、図3に示すように外端子10と内端子20とを有する。外端子10は金属製で、例えば略Z字状を成す。外端子10は蓋3の上面側に配置される。外端子10の下面には下方に延び出る円柱状の圧入部11が形成されている。内端子20は金属製で蓋3の下面側に配置される。内端子20は水平方向に延びるタブ21と、タブ21の端部から下方に延び出る集電部23とを有する。集電部23は電極体に例えば溶接等によって一体的に組み付けられる。タブ21には、外端子10の圧入部11が圧入される円形状の貫通孔22が形成されている。
【0011】
外端子10は、圧入部11が上方から蓋3の貫通孔3aを通って内端子20の貫通孔22に圧入されることで、内端子20と一体的に組み付けられる。このとき、圧入部11や貫通孔22の表面の酸化皮膜が圧入部11の圧入により削り取られることにより、外端子10と内端子20との電気的な導通が確保される。
【0012】
<圧入部>
圧入部11の外周面には、図4及び図5に示すように、平目状のローレット加工が施される。具体的には、圧入部11の先端から圧入方向に沿って平行に延びる複数の溝部12が形成されている。各溝部12は圧入部11の圧入される先部に設けられる。各溝部12は、圧入部11が蓋3を介して貫通孔22に圧入された際に圧入部11の貫通孔22と接合する領域の全域に亘るように配置される。各溝部12は、圧入部11及び貫通孔22の表面の酸化皮膜が圧入部11の圧入により削り取られて生じる剥離片(バリ)を収納する。このため、圧入部11と貫通孔22との接合界面に上記剥離片が入り込みにくくすることができる。これにより、外端子10と内端子20とが適切に接合され、外端子10と内端子20との間の電気抵抗の上昇を抑えることができる。
【0013】
各溝部12の先端には、各溝部12の周方向の幅が大きくなっている拡径部13が形成されている。各拡径部13は、具体的には各溝部12の両側壁面の間隔が先端側に向かうにつれてより広がるような形とされる。さらに具体的には、各拡径部13において、各溝部12の両側壁面が両方とも圧入方向に対して傾斜することで互いに次第に離れるようになっている。各拡径部13は圧入部11の先端に向かって開口するようになっている。これにより、圧入時に圧入部11の先端側で生じる剥離片を各拡径部13が広く受け入れることで、剥離片を溝部12に収納しやすくすることができる。なお、拡径部13において、溝部12の両側壁面のうち片方だけが溝部12の延びる方向に対して傾斜することによって、両側壁面が互いに離れる構成であっても良い。
【0014】
各溝部12の先端には全周に亘って面取り部14が形成されている。面取り部14により圧入部11が貫通孔22に圧入しやすくなる。また圧入部11からタブ21に対して圧入時に急激な荷重が掛かることを防止できる。図4に示すように、貫通孔22に圧入された面取り部14が貫通孔22を越えるように圧入部11の長さが設定されている。図6に示すように、貫通孔22を越えた圧入部11の先端をタブ21の下面に押し付けるようにかしめたかしめ部15としても良い。それにより、圧入部11を内端子20に対してより強固に接合することができる。
【0015】
<パッキンと絶縁樹脂>
図3及び図4に示すように、外端子10と蓋3との間にはパッキン30が設けられる。パッキン30はPTFE等の樹脂から成る平板形状である。パッキン30はその中央部に設けられる円形状の貫通孔31と、貫通孔31の周縁の全周から下方に張り出す張出部32とを有する。パッキン30は蓋3の上方から組み付けられる。それにより張出部32が貫通孔3aの内周面を覆うように嵌合する。圧入部11はパッキン30の貫通孔31を通って蓋3の貫通孔3aを通過する。パッキン30により、外端子10と蓋3とが電気的に絶縁されるようになっている。
【0016】
またパッキン30は貫通孔3aの気密性を高めることができる。圧入部11と張出部32とを貫通孔3aに対して同じ向きに挿入することで、パッキン30を蓋3に適切に密着させることができる。蓋3の上面にはパッキン30を圧縮するための不図示の突起を設けることができる。外端子10の圧入時の押し込み量でパッキン30の圧縮率を調整できる。
【0017】
内端子20と蓋3との間には絶縁樹脂40が設けられる。絶縁樹脂40は樹脂製の平板状部材である。絶縁樹脂40は圧入部11を通過させるための貫通孔41を有する。絶縁樹脂40は、内端子20と蓋3とを電気的に絶縁させる。
【0018】
<利点>
以上をまとめると、電池1は、貫通孔22が形成された内端子20(被圧入部材)と、貫通孔22に圧入される圧入部11を有する外端子10(圧入部材)とを備える。圧入部11の外周面には、圧入される先端から圧入方向に沿って延びる溝部12が設けられている。溝部12は、溝部12の両側壁面の間隔が部分的に広がった拡径部13を有する。このような構成となっていることにより、圧入部11が貫通孔22に圧入された際に生じる酸化皮膜の剥離片(バリ)が溝部12に収納される。拡径部13により剥離片が溝部12に収納されやすくなる。これらにより、剥離片が圧入部11と貫通孔22との間に入り込みにくくなり、電気抵抗をできる限り小さくすることができる。
【0019】
また、拡径部13が、圧入部11の圧入される先端に向けて開口するように溝部12の端部に設けられる。すなわち、剥離片が生じやすい圧入部11の先端に剥離片を広く受け止める拡径部13が設けられる。このため剥離片が溝部12により収納されやすくなる。
【0020】
また、拡径部13は、溝部12の両側壁面の間隔が圧入部11の圧入される先端側に向かうにつれて次第に広がるような形とされる。このような構成となっていることにより、拡径部13に収納された剥離片が拡径部13以外の溝部12に向けて流れやすくなる。これにより、溝部12が剥離片をより適切に収納することができる。
【0021】
また、圧入部11の圧入される先端には面取り部14が形成されている。このような構成となっていることにより、圧入部11を貫通孔22に圧入しやすくなる。
【0022】
また、被圧入部材と圧入部材がリチウムイオン電池の端子10、20を構成する二つの部材である。外端子10が内端子20に圧入されることによって内端子20と外端子10とが電気的に接続される。このような構成となっていることにより、外端子10と内端子20との間の電気抵抗を小さくしつつ簡便に一体化することができる。
【0023】
<その他の実施形態>
別の実施形態として、以上に説明した特徴は電池の接続端子の他、圧入部材と被圧入部材とから成る種々の圧入構造に適用することができる。
【0024】
別の実施形態として、圧入部は柱状に延びる形態であれば中実のほか中空(筒状)であっても良い。また円柱形状のほか角柱形状であっても良い。圧入部の長さは、貫通孔に圧入した際の圧入部の先端がタブの下面と同じ高さに来るように設定されていても良い。
【0025】
別の実施形態として、上述の実施形態とは逆に圧入部を内端子に、貫通孔を外端子に設け、内端子の圧入部を外端子の貫通孔に下方から上向きに圧入する構成としても良い。
【0026】
別の実施形態として、溝部は圧入方向に対して傾いた方向に延びて、螺旋状に形成されていても良い。別の実施形態として、各溝部が綾目状のローレットを成すように互いに交差して形成されていても良い。
【0027】
別の実施形態として、溝部は圧入部の貫通孔と接合する領域において圧入方向の全域ではなく途中領域までしか延びていなくても良い。溝部は圧入部の絶縁樹脂やパッキンと接する領域まで延びるように設けられても良い。溝部は圧入部の圧入方向の全域に亘って設けられても良い。
【0028】
別の実施形態として、拡径部は圧入部の先端以外で溝部の延びる途中箇所に設けられる構成でも良い。拡径部は圧入部の先端側に向かうにつれて次第に広がっていなくても良く、別の実施形態として、溝部の拡径部以外の箇所よりも広い一様な間隔を有していても良い。別の実施形態として、拡径部において、溝部の両側壁面は溝部の延びる方向に対して直線状に傾斜する他、凹状又は凸状に曲線状に傾斜する構成でも良い。
【0029】
別の実施形態として、図7に示すように、溝部は面取り部を有しない形態であっても良い。
【0030】
以上、様々な実施形態を説明したが、本開示はそれらの実施形態に限定されるものではなく、当業者であれば他にも各種の変形、置換、改良などが可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 電池
2 ケース
3 蓋
3a 貫通孔
4 接続端子
10 外端子
11 圧入部
12 溝部
13 拡径部
14 面取り部
15 かしめ部
20 内端子
21 タブ
22 貫通孔
23 集電部
30 パッキン
31 貫通孔
32 張出部
40 絶縁樹脂
41 貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7