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特開2023-133781アルミニウム製のボトル状缶、アルミニウム製のカップ及びそれらの製造方法並びにアルミニウム再生塊の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023133781
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】アルミニウム製のボトル状缶、アルミニウム製のカップ及びそれらの製造方法並びにアルミニウム再生塊の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 25/20 20060101AFI20230920BHJP
   C22B 21/00 20060101ALI20230920BHJP
   C22B 7/00 20060101ALI20230920BHJP
   B65D 1/00 20060101ALI20230920BHJP
   B65D 1/16 20060101ALI20230920BHJP
   B65D 1/26 20060101ALI20230920BHJP
   A47G 19/22 20060101ALI20230920BHJP
   B22D 11/00 20060101ALN20230920BHJP
   B21B 3/00 20060101ALN20230920BHJP
【FI】
B65D25/20 Q BRH
B65D25/20 BSA
C22B21/00
C22B7/00 F
B65D1/00 110
B65D1/16 111
B65D1/26 110
A47G19/22 A
B22D11/00 E
B21B3/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038969
(22)【出願日】2022-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】305060154
【氏名又は名称】アルテミラ製缶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】今野 史晴
(72)【発明者】
【氏名】湯田 晃典
【テーマコード(参考)】
3B001
3E033
3E062
4K001
【Fターム(参考)】
3B001AA02
3B001BB10
3B001CC36
3B001CC38
3B001DB20
3E033AA06
3E033AA08
3E033BA09
3E033CA20
3E033DA03
3E033DA08
3E033DB01
3E033GA02
3E062AA04
3E062AA10
3E062AB02
3E062AC03
3E062DA02
3E062DA09
4K001AA02
4K001BA22
4K001DA05
(57)【要約】
【課題】JIS5000系のアルミニウム合金の部材とJIS3000系のアルミニウム合金の部材との複合部材から成るアルミニウム製缶と、容易に識別することができるJIS3000系のみからなるアルミニウム製のボトル状缶を提供する。
【解決手段】ボトル状胴体21に設けられていて使用済みのアルミニウム製缶を用いて製造されたアルミニウム再生塊のみから製造されたことを示すリサイクル表示部60を備えている。リサイクル表示部60は例えば記述部61と光学式の読取装置で読取可能なコード部62とを設けている。記述部61は、一般消費者や取引者などに向けて、資源の有効活用を図る上で、使用済みのアルミニウム製缶を製造原料としていることと、さらに使用後に回収されて再びアルミニウム製缶の製造原料としてリサイクルできることを伝えるものである。記述部61は、例えば「100%リサイクル」の文字を表している。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
JIS3000系のアルミニウム合金で成るボトル状胴体と、アルミニウム合金で成り前記ボトル状胴体に着脱自在に取り付けられるキャップと、前記ボトル状胴体に設けられていて前記ボトル状胴体が使用済みアルミニウム製缶を用いて製造されたアルミニウム再生塊のみから製造されたことを示すリサイクル表示部と、を備えていることを特徴とする、アルミニウム製のボトル状缶。
【請求項2】
前記リサイクル表示部が文字,記号,図形及び電子コードの少なくとも何れかであることを特徴とする、請求項1に記載のアルミニウム製のボトル状缶。
【請求項3】
JIS3000系のアルミニウム合金で有底筒状に形成された缶ボディと、前記缶ボディの外面に設けられており前記缶ボディが使用済みのアルミニウム製缶を用いて製造されたアルミニウム再生塊のみから製造されたことを示すリサイクル表示部と、を備えていることを特徴とする、アルミニウム製のカップ。
【請求項4】
前記リサイクル表示部が文字,記号,図形及び電子コードの少なくとも何れかであることを特徴とする、請求項3に記載のアルミニウム製のカップ。
【請求項5】
使用済みのアルミニウム製缶を溶解及び鋳造してアルミニウム再生塊を製造する方法であって、
JIS3000系のアルミニウム合金で成る缶ボディが前記アルミニウム再生塊のみから製造されたことを示すリサイクル表示部を設けている使用済みのリサイクル表示付缶を回収する回収工程と、
アルミニウム合金で成り前記リサイクル表示部を設けていない使用済みのリサイクル表示無缶を用いて、JIS3000系のアルミニウム合金で成る前記アルミニウム再生塊を製造する再生塊製造工程と、を備え、
前記再生塊製造工程では、前記リサイクル表示付缶の前記缶ボディを成分調整に用いることを特徴とする、アルミニウム再生塊の製造方法。
【請求項6】
使用済みのアルミニウム製缶を溶解及び鋳造してアルミニウム再生塊を製造する方法であって、
JIS3000系のアルミニウム合金で成る缶ボディが前記アルミニウム再生塊のみから製造されたことを示すリサイクル表示部を設けている使用済みのリサイクル表示付缶を回収する回収工程と、
前記リサイクル表示付缶の前記缶ボディを用いてJIS3000系のアルミニウム合金で成る前記アルミニウム再生塊を製造する再生塊製造工程と、を備えることを特徴とする、アルミニウム再生塊の製造方法。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載の前記再生塊製造工程で製造した前記アルミニウム再生塊を圧延してアルミニウム合金板に成形する圧延工程と、
前記缶ボディとして前記アルミニウム合金板を用いてボトル状胴体を成形する缶ボディ成形工程と、
前記ボディ成形工程で成形した前記ボトル状胴体の外面に前記リサイクル表示部を設ける表示工程と、を備えたことを特徴とする、アルミニウム製のボトル状缶の製造方法。
【請求項8】
請求項5又は請求項6に記載の前記再生塊製造工程で製造した前記アルミニウム再生塊を圧延してアルミニウム合金板に成形する圧延工程と、
前記缶ボディとして前記アルミニウム合金板を用いてカップを成形する缶ボディ成形工程と、
前記ボディ成形工程で成形した前記カップの外面に前記リサイクル表示部を設ける表示工程と、を備えたことを特徴とする、アルミニウム製のカップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、JIS3000系のアルミニウム合金で成るボトル状缶及びカップと、それらの製造方法と、さらに使用済みのアルミニウム製缶からJIS3000系のアルミニウム合金で成るアルミニウム再生塊を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の炭酸飲料水やアルコール飲料等の容器として、軽量で加工性や耐腐食性に優れるため、アルミニウム製の構成部材により形成された缶(以下、アルミニウム製缶という)が大量に使用されている。このアルミニウム製缶には、円筒状の胴体(筒状胴体)とその開口部を閉鎖する蓋とからなる筒状缶と、ボトル形状をした胴体(ボトル状胴体)とその口部に結合されるキャップとからなるボトル状缶とが普及している。
【0003】
そして使用済みアルミニウム製缶(Used aluminum beverage cans;略してUBCという)は回収され溶解して、アルミニウム製缶の材料となるアルミニウム再生塊(以下、再生塊と言う場合がある)として再生される。このようなアルミニウム再生塊を製造するために要するエネルギーは、ボーキサイトから電解精錬によって新たに鋳塊を製造する場合に要するエネルギーの約3%であるといわれている。このため、近年における省エネルギーによる地球環境保護や資源の有効活用の要請の高まりから、使用済みアルミニウム製缶を回収し、これを再びアルミニウム製缶とするために再生利用することが行なわれている。
【0004】
従来、特許文献1に示されるように、アルミニウム製缶の回収再生方法は、主として使用済みアルミニウム製缶からなるプレスされた塊状の回収物を薫蒸処理する薫蒸工程と、前記回収物を解砕する解砕工程と、得られた前記回収物から非アルミニウム材を分離する選別工程と、選別されたアルミニウム製缶を焙焼処理するとともに焙焼された前記アルミニウム製缶を200℃~550℃の温度範囲に保持したままで振動篩に供給して付着物を除去する焙焼工程と、この焙焼工程を経た前記アルミニウム製缶を溶解する溶解工程と、この溶解工程において得られたアルミニウムの溶湯からスラブまたは再生塊を得る鋳造工程とを、一貫して連続的に行なう技術が知られている。
【0005】
一方、近年プラスチックの海洋汚染等の環境破壊があり、脱プラスチックが社会問題となっている。そこでプラスチック製のカップに代わり、特許文献2に開示のようなカップが登場してきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4465798号公報
【特許文献2】特表2020-508874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
回収されたUBC重量の80%以上が、通常、Al-Mn系合金であるA3004材またはA3104材(いずれもJIS規格の呼称)によって成形されたボディ材(筒状缶及びボトル状缶の胴体の材料)の重量によって占められているものの、当該アルミニウム製缶を構成する筒状缶の蓋材またはボトル状缶のキャップ材はAl-Mg系合金であるA5052A、5082材またはA5182材等が多く使用されており、また筒状缶の蓋に取り付けられているタブとしては、A5182材等が用いられて構成されている。キャップ材には一部A3004材またはA3104材を用いたものもある。
これらの各種材料が混合した使用済みアルミニウム製缶(筒状缶及びボトル状缶)を溶解して得た溶湯をそのままスラブとすると、Mg(マグネシウム)が多すぎるため、ボディ材として使用することができない。そこで使用済みアルミニウム製缶を再生して、新規のアルミニウム製缶におけるボディ材の再生塊を製造するためには、保持炉の中に成分調節用の新塊を投入して、Mg量を1.3%以下となるように合金成分を調整する必要がある。
一方、成分調整において、溶湯へのJIS3000系の使用済アルミニウム缶の投入量を増やすことで、溶湯への新塊投入を減らして、UBCの割合が大きい再生塊を製造することが資源を有効に活用するうえで重要である。
そこでJIS3000系UBCを分別回収しておき、溶解工程で通常のJIS5000系を含むUBCにJIS3000系のUBCを適宜混入させることが考えられる。しかし、JIS3000系のUBCを筒状缶と選別して回収することは困難であり、JIS3000系のアルミニウム合金だけで成るボトル状缶の胴体やカップを容易に回収することが望まれる。
【0008】
そこで、本発明は、JIS5000系のアルミニウム合金の蓋とJIS3000系のアルミニウム合金の筒状胴体との複合部材から成る筒状缶と、容易に識別することができるJIS3000系のみからなるアルミニウム製のボトル状缶やカップ及びそれらの製造方法を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、使用済みのアルミニウム製缶を用いた再生塊製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のアルミニウム製のボトル状缶は、アルミニウム合金で成るボトル状胴体と、JIS3000系のアルミニウム合金で成り前記ボトル状胴体に着脱自在に取り付けられるキャップと、前記ボトル状胴体及び前記キャップの少なくとも一方に設けられていて使用済みのアルミニウム製缶を用いて製造されたアルミニウム再生塊のみから製造されたことを示すリサイクル表示部と、を備えている。
リサイクル表示部が外面に設けられていることで、例えばJIS3000系のアルミニウム合金で成る筒状胴体にJIS5000系のアルミニウム合金で成る蓋が巻締られて固定されている通常の筒状缶と容易に区別することが可能となる。
ボトル状缶は、キャップも含めてJIS3000系のアルミニウム合金で構成されていると、キャップが付いた状態でそのままリサイクルすることができる。使用済みアルミニウム製缶を用いて製造されたアルミニウム再生塊とは、使用済みアルミニウム製缶だけで製造されたもの、又は使用済みアルミニウム製缶を主材としつつ製缶屑や若干の調整用の新塊を投入して製造したものであり、新塊などを加える場合でも使用済みアルミニウム製缶の割合が90%以上であることが望ましい。本発明で用いるアルミニウム再生塊は、各種アルミスクラップと少量のUBCとが混合された溶湯に新塊を投入して製造されたJIS3000系再生塊とは新塊の使用量が異なり明確に区別される。
【0010】
本発明のアルミニウム製のカップは、JIS3000系のアルミニウム合金で有底筒状に形成された缶ボディと、前記缶ボディの外面に設けられており前記缶ボディが使用済みのアルミニウム製缶を用いて製造されたアルミニウム再生塊のみから製造されたことを示すリサイクル表示部と、を備えている。アルミニウム製のカップは、例えば野球やサッカースタジアムで使用すると専用の回収ボックスに捨てられるため、容易に選別して回収することが可能である。
【0011】
本発明のアルミニウム製のボトル状缶とアルミニウム製のカップとは、好ましくは、前記リサイクル表示部が文字、記号、図形、電子コードの少なくとも何れかである。文字、記号、図形で表すことで、消費者が識別でき、さらに人の手による分別に利用できる。バーコードやカルラコードなどの電子コードであれば、機械で識別でき、選別に利用できる。
【0012】
本発明のアルミニウム再生塊を製造する方法は、使用済みのアルミニウム製缶を溶解及び鋳造してアルミニウム再生塊を製造する。この製造方法では、JIS3000系のアルミニウム合金で成る缶ボディが前記アルミニウム再生塊のみから製造されたことを示すリサイクル表示部を設けている使用済みのリサイクル表示付缶を回収する回収工程と、アルミニウム合金で成り前記リサイクル表示部を設けていない使用済みのリサイクル表示無缶を用いて、JIS3000系のアルミニウム合金で成る前記アルミニウム再生塊を製造する再生塊製造工程と、を備え、前記再生塊製造工程では、前記リサイクル表示付缶の前記缶ボディを成分調整に用いる。
リサイクル表示付缶ではリサイクル表示部が外面に設けられていることで、例えばJIS3000系のアルミニウム合金で成る筒状胴体にJIS5000系のアルミニウム合金で成る蓋が巻締られて固定されている通常の筒状缶と容易に区別することが可能となる。リサイクル表示付缶を成分調整に利用することで、新塊の使用量を低減することができる。
【0013】
本発明のアルミニウム再生塊を製造する方法は、使用済みのアルミニウム製缶を溶解及び鋳造してアルミニウム再生塊を製造する。この製造方法は、JIS3000系のアルミニウム合金で成る缶ボディが前記アルミニウム再生塊のみから製造されたことを示すリサイクル表示部を設けている使用済みのリサイクル表示付缶を回収する回収工程と、前記リサイクル表示付缶の前記缶ボディを用いてJIS3000系のアルミニウム合金で成る前記アルミニウム再生塊を製造する再生塊製造工程と、を備える。
【0014】
本発明のアルミニウム再生塊の製造方法は、使用済みのアルミニウム製缶を溶解及び鋳造してアルミニウム再生塊を製造する方法であって、使用済みの前記アルミニウム製缶を用いて製造されたアルミニウム再生塊のみから製造されたことを示すリサイクル表示部をボトル状缶及びカップの少なくとも一方の外面に設けておき、使用済みの以下のJIS3000系品A1及びJIS3000系品A2の少なくとも一方又は前記JIS3000系品A1及び前記JIS3000系品A2の少なくとも一方及びJIS3000系品A3を含むJIS3000系回収物を回収する回収工程と、前記JIS3000系回収物と、使用済みの以下のJIS5000系含有品B1及びJIS5000系含有品B2の少なくも一方を含むJIS5000系含有回収物と、からJIS3000系のアルミニウム合金で成る前記アルミニウム再生塊を製造する再生塊製造工程と、を備えている。前記再生塊製造工程では、前記JIS3000系回収物の内、前記JIS3000系品A1及び前記JIS3000系品A2の少なくとも一方を前記アルミニウム再生塊の成分調整に用いる。
JIS3000系品A1: JIS3000系のアルミニウム合金で成るボトル状胴体にJIS3000系のアルミニウム合金で成るキャップを着脱自在に取り付けていて前記リサイクル表示部を設けた前記ボトル状缶
JIS3000系品A2: JIS3000系のアルミニウム合金で成り前記リサイクル表示部を設けた前記カップ
JIS3000系品A3: JIS3000系のアルミニウム合金で成るボトル状胴体にJIS3000系のアルミニウム合金で成るキャップを着脱自在に取り付けていて前記リサイクル表示部を設けていないボトル状缶
JIS5000系含有品B1: JIS3000系のアルミニウム合金で成るボトル状胴体にJIS5000系のアルミニウム合金で成るキャップを着脱自在に取り付けていて前記リサイクル表示部を設けていないボトル状缶
JIS5000系含有品B2: JIS5000系のアルミニウム合金で成る蓋をJIS3000系のアルミニウム合金で成る筒状胴体に固定していて前記リサイクル表示部を設けていない筒状缶
【0015】
本発明のアルミニウム再生塊の製造方法は、使用済みのアルミニウム製缶を溶解及び鋳造してアルミニウム再生塊を製造する方法であって、使用済みの前記アルミニウム製缶を用いて製造されたアルミニウム再生塊のみから製造されたことを示すリサイクル表示部をボトル状缶及びカップの少なくとも一方の外面に設けておき、使用済みの前述のJIS3000系品A1及びJIS3000系品A2の少なくとも一方を含むJIS3000系回収物を回収する回収工程と、前記JIS3000系回収物からJIS3000系のアルミニウム合金で成る前記アルミニウム再生塊を製造する再生塊製造工程と、を備えている。
【0016】
本発明のボトル状缶の製造方法は、前記再生塊製造工程で製造した前記アルミニウム再生塊を圧延してアルミニウム合金板に成形する圧延工程と、前記アルミニウム合金板を用いて新規のボトル状胴体を成形する缶ボディ成形工程と、前記アルミニウム合金板を用いて新規のキャップを成形するキャップ成形工程と、前記成形工程で成形した前記新規のボトル状胴体及び前記新規のキャップの少なくとも一方に外面に前記リサイクル表示部を設ける表示工程と、を備えている。
本発明のカップの製造方法は、前記再生塊製造工程で製造した前記アルミニウム再生塊を圧延してアルミニウム合金板に成形する圧延工程と、前記アルミニウム合金板を用いて新規のカップを成形する缶ボディ成形工程と、前記新規のカップの外面に前記リサイクル表示部を設ける表示工程と、を備えている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、リサイクル表示部を有することで、特にJIS3000系アルミニウム合金のみから成るボトル状缶やカップをJIS5000系アルミニウム材からなる部材を含む筒状缶とを容易に識別可能となり、回収も行い易くなる。従来、使用済みのアルミニウム製缶の回収を促す指標として、リサイクルの表示がアルミニウム製缶に付されている。この表示のリサイクルの概念としては、アルミニウム製缶の製造原料に使用済みのアルミニウム製缶を利用することは含まれているが、必ずしもアルミニウム製缶が使用済みのアルミニウム製缶を製造原料として製造されたことやJIS3000系アルミニウム合金で構成されていることを具体的には明示してはいない。
一般消費者に対して、アルミニウム製のボトル缶やカップが、使用済みのアルミニウム製缶を製造原料として製造されたものであることを伝えることができれば、使用の後に、一般消費者が使用済みのアルミニウム製缶を再びボトル缶やカップの製造に利用するための回収などへの協力を行う契機になり得るし、使用済みのアルミニウム製缶を再びアルミニウム製缶にするリサイクル活動を一層普及させることが期待できる。
このようなリサイクル活動を進める上で、使用済みのアルミニウム製缶が、リサイクルされて製造されたものであることを示す情報を明示していることが必要である。特に、リサイクルが有利なJIS3000系のみからなるボトル状胴体やカップ(缶ボディ)は、溶湯のMgが増加せずにリサイクル率が向上できるので、このような表示をすることにより、分別回収の可能性が高まる。これらのボトル状胴体やカップ(缶ボディ)を分別回収し、溶湯へ投入することにより、溶湯への新塊の投入の割合を減少させることができるので、リサイクル率を高めてエネルギー効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】従来の筒状缶を示す正面図であり、中心軸を中心に半分を縦断面で示す。
図2】本発明の実施形態のボトル状缶を示す正面図であり、中心軸を中心に半分を縦断面で示す。
図3】本発明の実施形態のカップを示す正面図であり、中心軸を中心に半分を縦断面で示す。
図4】本発明の実施形態のアルミニウム製缶の製造方法の実施形態を示す概略工程図である。
図5図4の回収工程の概略図である。
図6】本発明の実施形態のアルミニウム製缶の製造方法の実施形態の変形例を示す概略工程図である。
図7】本発明の実施形態のアルミニウム製缶の製造方法の実施形態の他の第一変形例を示す概略工程図である。
図8】本発明の実施形態のアルミニウム製缶の製造方法の実施形態の他の第二変形例を示す概略工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
アルミニウム製缶は、図1に示す筒状缶10、図2に示すボトル状缶20、図3に示すカップ40、の三種類が存在する。
【0020】
筒状缶10は、図1に示すように、有底円筒状の筒状胴体11と、その筒状胴体11の開口部に巻き締められた蓋12とを有している。筒状胴体11は、有底円筒状の一体成形品であり、底部13と胴部14とが一体成形されている。この筒状缶10の筒状胴体11は、アルミニウム及びアルミニウム合金の板及び条についてのJIS(JIS H4000:2006)に規定されている合金番号で3004又は3104のAl-Mn系アルミニウム合金により形成され、蓋12は、蓋本体17が5052、5082又は5182のAl-Mg系アルミニウム合金、タブ18が5182のAl-Mg系アルミニウム合金により形成されていて、筒状胴体11の口に巻締られている。
【0021】
ボトル状缶20は、図2に示すように、ボトル形状を有するボトル状胴体21と、そのボトル状胴体21の上部で縮径した口部22に取り付けられるキャップ23とを有している。このボトル状缶20のボトル状胴体21は、前述のJISの合金番号で3004又は3104のアルミニウム合金により形成され、キャップ23は、3004、3104、5052、5082、5182等のいずれかのアルミニウム合金により形成されている。
【0022】
カップ40は、図3に示すように、全体としては有底円筒状であるが、その直径は、底部13より開口部42の方が大きく形成されている。このカップ40は、JIS合金番号で3004又は3104の材料が用いられる。
【0023】
筒状缶10とボトル状缶20とカップ40とを製造するには、それぞれアルミニウム合金板を絞り成形して比較的浅いカップを形成してそのカップにさらに絞りしごき加工を施して有底円筒体を成形する。さらに、筒状缶10であれば有底円筒体の開口部にフランジ等が形成される。ボトル状缶20であれば有底円筒体をボトル状の形に成形して口部にネジ部等が形成される。カップ40であれば有底円筒体の缶ボディを底部側から開口部にかけて徐々に拡径してテーパー状に形成した後、カール部が開口部に成形される。この製造の過程で外面に印刷と塗装とが行われる。筒状缶10は飲料が充填されると共に蓋12がフランジに巻き締められた状態で、ボトル状缶20は飲料の充填とキャップ23が口部に被せられた状態で、カップ40はそのままの状態でそれぞれ商品として提供される。
【0024】
以下、筒状缶10とボトル状缶20とカップ40とを総称してアルミニウム製缶と呼ぶ。アルミニウム製缶は、使用に供された後に回収されアルミニウム再生塊としてアルミニウム製缶の製造原料として再利用される。このためアルミニウム製缶の材料としては、ボーキサイトから電解精錬によって新たに製造された新塊(例えば、純度99.0~99.9質量%のアルミニウム地金)と、使用済みのアルミニウム製缶を製造原料の一部又は全部としたアルミニウム再生塊がある。アルミニウム製缶のリサイクルでは、使用済みのアルミニウム製缶を溶解鋳造してアルミニウム再生塊に再生し、このアルミニウム再生塊を板状にしたものから新規のアルミニウム製缶の製造を行う。アルミニウム再生塊を製造する際に、成分調整のために新塊が投入される場合がある。
【0025】
使用済みのアルミニウム製缶としては、以下のJIS3000系品A1~A3と、以下のJIS5000系含有品B1~B2とがある。
JIS3000系品A1: JIS3000系のアルミニウム合金で成るキャップ23をJIS3000系のアルミニウム合金で成るボトル状胴体21の口部22に着脱自在に取り付けていて後述するリサイクル表示部60を設けたボトル状缶20
JIS3000系品A2: JIS3000系のアルミニウム合金で成り後述するリサイクル表示部を設けたカップ40
JIS3000系品A3: JIS3000系のアルミニウム合金で成るキャップ23をJIS3000系のアルミニウム合金で成るボトル状胴体21の口部22に着脱自在に取り付けていて後述するリサイクル表示部60を設けていないボトル状缶20
JIS5000系含有品B1: JIS5000系のアルミニウム合金で成るキャップ23をJIS3000系のアルミニウム合金で成るボトル状胴体21の口部22に着脱自在に取り付けていて後述するリサイクル表示部60を設けていないボトル状缶20
JIS5000系含有品B2: JIS5000系のアルミニウム合金で成る蓋12をJIS3000系のアルミニウム合金で成る筒状胴体11に固定していて後述するリサイクル表示部60を設けていない筒状缶10
以下、ボトル状缶の符号として、JIS3000系品A1,A3のボトル状缶やその部材には数字の末尾にAを付し、JIS5000系含有品B1のボトル状缶やその部材には『B』を数字の末尾に付している。さらに本発明の実施形態に係るボトル状缶は、JIS3000系品A1のボトル状缶であり、JIS3000系品A3などと区別するようにリサイクル表示部60を設けており、以下の説明では符号に『″』を付している。
本発明の実施形態では、ボトル状缶20A″と、カップ40とが、使用済みのアルミニウム製缶を用いた、JIS3000系のアルミニウム合金で構成されている。つまり前述の使用済みのアルミニウム製缶(JIS3000系品A1~A3とJIS5000系含有品B1~B2)が、ボトル状缶20A″のボトル状胴体21″とキャップ23″、カップ40の製造原料として利用されている。
【0026】
ボトル状胴体21A″とカップ40とは、外面の一部の領域に使用済みのアルミニウム製缶を用いて製造されたことに関する情報を示すリサイクル表示部60を設けている。リサイクル表示部60は、文字,記号,図形及び電子コードの少なくとも何れかであってもよい。図示例のリサイクル表示部60は、文字を表した記述部61と、電子コードを表したコード部62と、を備えている。
【0027】
記述部61は、一般消費者や取引者などに向けて、資源の有効活用を図る上で、使用済みのアルミニウム製缶を製造原料としていることと、さらに使用後に回収されて再びアルミニウム製缶の製造原料としてリサイクルできることを伝えるものである。
記述部61は、例えば「100%リサイクル」の文字を記して、使用済みのアルミニウム製缶から製造した原料のみからなる缶としていることを一般消費者における認識を容易にする。
ボトル状缶20A″とカップ40が記述部61を設けて、その「100%リサイクル」の文字を一般消費者に向けて示すことで、一般消費者などにおける脱炭素社会への意識と相俟って、商品購入の際に積極的に選択する要因になり得る。これにより、使用済みのアルミニウム製缶のみを製造原料とした製品が多く消費されることが期待される。
【0028】
コード部62は、ボトル状缶20A″及びカップ40を筒状缶10と区別する際に光学式の読取装置で読取可能な電子コードを示している。コード部62は、識別子として、バーコードなどの一次元シンボル、カルラコードやQRコード(登録商標)などの二次元シンボル、文字や記号或いはそれらの組み合わせ、識別専用の図形などを外部から読み取れるように表している。実施形態では、バーコードをコード部62に設けた場合を例に説明を進める。
【0029】
リサイクル表示部60は、ボトル状胴体21A″とカップ40の外周面にオフセット印刷法で印刷してもよいし、インクジェット印刷又はレーザマーカで直接印刷を施して設けられ。予めリサイクル表示部60が印刷等により設けられた合成樹脂製のフィルムをボトル状胴体21A″とカップ40に装着してもよい。
【0030】
以上のように構成された、リサイクル表示部60を設けたボトル状缶20A″及びカップ40と、リサイクル表示部60を設けていない筒状缶10及びボトル状缶20A,20Bとが使用に供され、使用後は回収されて新規のボトル状缶20A″とカップ40として再生される。ここで、回収物として、前記のJIS3000系品A1~A3を総称して『JIS3000系回収物A』と呼び、前記のJIS5000系含有品B1~B2を総称して『JIS5000系含有回収物B』と呼ぶ。
【0031】
以下にJIS3000系回収物AとJIS5000系含有回収物Bとから新規のボトル状缶20A″とカップ40とを製造する方法を説明する。
図3に示すように、製造方法では、JIS3000系回収物AとJIS5000系含有回収物Bとを回収する回収工程と、リサイクル表示部60を有するJIS3000系品A1,A2を用いて成分調整用再生塊を製造する調整材製造工程と、JIS3000系回収物AとJIS5000系含有回収物Bと成分調整用再生塊とを用いて新規缶の製造に利用するアルミニウム再生塊を製造する再生塊製造工程と、アルミニウム再生塊を用いて新規缶を製造する新規缶製造工程と、を備えている。
【0032】
回収工程では、JIS3000系回収物A及びJIS5000系含有回収物Bの回収場所や回収方法は限定されるものではないが、例えば回収装置を商業施設に設置して使用済みボトル状缶20A″,20A,20B及び筒状缶10を回収する。回収装置としては、リサイクル表示部60のコード部62を読み取る機能を備えた読取型回収装置と、読み取る機能を備えていない非読取型回収装置とがある。
【0033】
読取型回収装置100は、ボトル状缶20A″,20A,20Bや筒状缶10を入れる回収口と、リサイクル表示部60のコード部62を読み取るバーコードリーダー等の読取装置と、リサイクル表示部60を有するボトル状缶20A″をボトル状缶20A,20B及び筒状缶10と分けて収容するかごやケースなどの複数の収容部と、を備えていて、選別工程として、読み取った電子コードによってボトル状缶20A″をボトル状缶20A,20B及び筒状缶10と区別し、さらに装置内で収容部へ通じるルートを切り替えてボトル状缶20A″とボトル状缶20A,20B及び筒状缶10とを分ける。購入者がボトル状缶20A″,ボトル状缶20A,20B及び筒状缶10の何れかを読取型回収装置100に入れた際に所定の額を返金するデポジット式に回収してもよい。ボトル状缶20A″,ボトル状缶20A,20B及び筒状缶10の選別は機械に限らず、手作業で行ってもよい。
【0034】
非読取型回収装置は、JIS3000系のアルミニウム合金で構成されたカップ40だけを回収する限定回収装置200と、筒状缶10及びボトル状缶20A,20Bを回収する非限定回収装置300とがあり、例えば籠状或いは箱状に形成されている。限定回収装置200は、例えばスタジアム,映画館などの商業施設で飲料の販売にカップ40だけを用いるときに利用すると、効率良く使用済みのカップ40を回収することができる。
【0035】
図4では、回収装置として、二つの読取型回収装置100と、一つの限定回収装置200と、三つの非限定回収装置300とを示しているが、回収装置の数は図示例に限るものではない。
【0036】
各回収装置で集められた回収物の内、JIS3000系回収物Aの一部が調整原料製造工程で用いられる。リサイクル表示部60を設けていない筒状缶10及びボトル状缶20A,20Bは、例えばリサイクル業者によって1000本以上のUBCをプレスしたアルミ缶プレスを利用することができる。
【0037】
調整材製造工程では、機械などで選別されたリサイクル表示部60を有するJIS3000系品A1,A2に対して、薫蒸工程、解砕工程、焙焼工程、溶解工程、鋳造工程を行う。薫蒸工程では、水蒸気によって、異臭の原因となる微生物を死滅させるとともに、内部に含まれるおそれのある虫やその卵を死滅させる。解砕工程では、燻蒸処理がなされたJIS3000系回収物Aを解砕する。焙焼工程では、塗料や樹脂層などの有機物や砂等の付着物を分離する。溶解工程では、焙焼したJIS3000系回収物Aを溶解炉(図示略)に投入して溶解する。鋳造工程では、保持炉を経た溶湯中に含まれる水素等のガス分を除去するとともに、溶湯を濾過して非金属介在物等を除去した後に、鋳造機に送ってスラブよりもかなり小さいインゴットに鋳造する。このインゴットは、JIS3000系品A1~A2を製造原料としていることから、Mgの含有率を1.3%以下の範囲に収めることができて、JIS3000系のアルミニウム合金に相当する。
【0038】
再生塊製造工程では、筒状缶10とボトル状缶20A,20B(ボトル状胴体21A,21B,キャップ23A,23B)及び/又はアルミ缶プレスとに対して、薫蒸工程、解砕工程、焙焼工程、溶解工程、鋳造工程を行って、スラブ(アルミニウム再生塊)を製造する。再生塊製造工程ではJIS5000系のアルミニウム合金を含む筒状缶11やキャップ23Bを取り扱うにあたり、溶解工程でアルミニウム再生塊がJIS3000系のアルミニウム合金に相当するように成分(Mgの含有率)の調整を行う必要があり、ボトル状胴体21A,21Bと筒状缶10とキャップ20A,23Bとを溶解した溶湯の中に調整材料を投入する。調整材料としては、その一部或いは全部に調整材製造工程で再生したインゴットを利用する。成分調整に製缶屑や若干の調整用の新塊を溶湯に投入する場合には、使用済みのアルミニウム製缶(JIS3000系回収物A及びJIS5000系含有回収物B)の割合がインゴットも含めて90%以上であることが望ましい。
【0039】
新規缶製造工程では、再生塊製造工程で製造されたスラブ(アルミニウム再生塊)を用いて、アルミニウム製の新規缶として、ボトル状缶20A″又は/及びカップ40を製造する。
ボトル状缶20A″の製造方法では、圧延工程と、缶ボディ成形工程と、キャップ成形工程と、表面処理工程と、蓋取付工程と、を行う。圧延工程では、スラブが圧延工場へと搬出されて、スラブを圧延して合金板に成形する。缶ボディ成形工程では、合金板を浅いカップに成形した後に、さらにしごき加工などを施してボトル状胴体21A″を成形する。キャップ成形工程では、合金板をしごき加工などを施して浅いカップ状に成形してキャップ23A″を成形し、さらに内面にライナーを設ける。表皮工程では、ボトル状胴体21A″などの表面の処理、例えば外面に印刷と塗装などが行われる。蓋取付工程では、ボトル状胴体21A″に飲料の充填とその口部22A″にキャップ23A″を取り付ける。表面処理工程の印刷などによってボトル状胴体21A″の外面にリサイクル表示部60を設ける(表示工程)。
カップ40の製造方法では、圧延工程と、缶ボディ成形工程と、表面処理工程と、を行う。缶ボディ成形工程では、合金板を浅い容器状に成形した後に、さらにしごき加工などを施して底を深い位置に設けたカップ40を成形する。ボトル状缶20A″の製造と同様に、表示工程によって、カップ40の外面にリサイクル表示部60を設ける。
このようにボトル状缶20A″、カップ40が製造され、商品として提供される。これらのボトル状缶20A″、カップ40も使用後は、前記と同様に回収されて、調整材料等に再生することができる。
【0040】
本実施形態によればボトル状缶20A″とカップ40が記述部61の「リサイクル100%」を設けることで、JIS5000系のアルミニウム合金の部材とJIS3000系のアルミニウム合金の部材との複合部材から成るアルミニウム製缶(筒状缶10及びボトル状缶20B)と容易に識別することができる。一般消費者などには使用済みのアルミニウム製缶(筒状缶10,ボトル状缶20A″,20A,20B及びカップ40)で製造されたことを容易に認識させることができて、使用済みのアルミニウム製缶を新規のボトル状缶20A″やカップ40に変えるリサイクル活動を普及させて、循環型社会である『ゼロエミッション』の実現に貢献することができる。商品購入の際に一般消費者側で再利用されたものを選択する意識が一層高まることから、製造会社側でも蓋12やキャップ23Bの材料をJIS5000系のアルミニウム合金からJIS3000系のアルミニウム合金に変えることに成り得て、今後、ボトル状缶20B、ボトル状缶20Bのキャップ23BがJIS3000系のアルミニウム合金で構成されれば、或はボトル状缶20A″,20Aの割合が増えれば、JIS3000系のアルミニウム合金で成るカップ40と併せて、UBCのJIS3000系合金の割合が大きくなるので、新塊を使用ぜずにJIS3000系のアルミニウム再生塊として再生可能とすることが期待できる。
本実施形態のボトル状缶20A″とカップ40がコード部62を設けることで、読取型回収装置100でボトル状缶20A″やカップ40を筒状缶10及びボトル状缶20A,20Bと容易に区別して取り扱うことができる。
本実施形態の製造方法によれば、JIS3000系回収物Aとして、選別したリサイクル表示部60を有するボトル状缶20A″やカップ40を成分調整用再生塊に再生し、更にアルミニウム再生塊の製造において使用済みの筒状缶10及びボトル状缶20A,20Bを溶解した溶湯の中にMgの含有率を調整するために成分調整用再生塊を加えることで、新塊の利用を低減することができる。これにより、資源の有効活用に貢献することができ、延いては環境への負荷も低減することができる。
【0041】
本発明は、前記実施形態の構成のものに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0042】
(変形例)
実施形態のJIS3000系回収物Aには、JIS3000系品A1~A3が全て含まれる場合を例示したが、これに限られるものではなく、JIS3000系品A1~A2の少なくとも一方、又はJIS3000系品A1~A2の少なくとも一方とJIS3000系品A3の組み合わせでもよく、例えばボトル状缶20A″,20Aだけを用いる場合やカップ40とボトル状缶20Aを用いる場合のように少なくとも一部にリサイクル表示部60を設けたボトル状缶20A″或いはカップ40を含めてリサイクルする。この場合、調整材製造工程では、ボトル状缶20A″或いはカップ40を用いて、JIS3000系の成分調整用再生塊を製造する。
さらに、実施形態の再生塊製造工程では、燻蒸工程の対象にボトル状缶20A″及びカップ40を含めていないが、ボトル状缶20A″及びカップ40の少なくとも一方を筒状缶10及びボトル状缶20A,20Bと共に製造原料として燻蒸工程から取り扱ってもよい。
さらにアルミニウム再生塊の製造方法では、JIS3000系回収物Aを再生したインゴットを用いずに、例えばJIS3000系回収物AとJIS5000系含有回収物Bとを所定の割合で燻蒸装置に投入し、燻蒸工程の後に、解砕工程、焙焼工程、溶解工程、鋳造工程を経て、アルミニウム再生塊に再生してもよい。この場合、JIS3000系回収物Aの内、アルミニウム再生塊のMgの含有率をJIS3000系のアルミニウム合金相当の範囲に収める成分調整用として、リサイクル表示部60を有するJIS3000系品A1~A2(ボトル状缶A″及びカップ40)の分量が調整されている。
さらに実施形態では、JIS3000系回収物AとJIS5000系含有回収物Bとを用いてアルミニウム再生塊を製造する場合を例示したが、図6に示すように再生塊製造工程ではJIS3000系回収物Aだけを用いて調整材料を別途用いず或いは少ない量を加えてアルミニウム再生塊を製造してもよい。例えば、JIS3000系回収物Aの内、リサイクル表示部60を有するJIS3000系品A1~A2(ボトル状缶A″及びカップ40)の少なくとも一方を用いることができる。
【0043】
実施形態のJIS5000系含有回収物Bとしては、筒状缶10,ボトル状缶20Bの少なくとも何れかを取り扱うようにしてもよい。例えば筒状缶10だけの場合には、再生塊製造工程では使用済みの筒状缶10だけを製造原料として燻蒸工程から処理して、JIS3000系回収物Aを製造原料としたインゴット或いはJIS3000系回収物Aそのものを溶解工程で溶湯に投入して、アルミニウム再生塊を製造してもよい。
回収物の内、JIS5000系アルミニウム合金のキャップ23Bを取り付けたボトル状缶20Bは、キャップ23Bを外してボディ側のボトル状胴体21を成分調整用の材料として利用してもよい。これと同様に、リサイクル表示部を設けていないボトル状缶20Aも成分調整用の材料として利用してもよい。
【0044】
実施形態のボトル状缶20A″では、リサイクル表示部60がボトル状胴体21A″の外面に設けられているが、リサイクル表示部60はキャップ21A″にだけ設けられもよいし、或いはボトル状胴体21A″とキャップ21のそれぞれに設けられてもよい。
【0045】
(他の第一変形例)
前記の実施形態では、ボトル状缶20A″(ボトル状胴体21A″及びキャップ23A″)やカップ40それぞれが全体をアルミニウム再生塊のみから製造されていたが、他の第一変形例ではリサイクル表示部60の用い方が実施形態と異なる。他の第一変形例では、JIS5000系のアルミニウム合金の部材(キャップ23)とJIS3000系のアルミニウム合金の部材(ボトル状胴体21″)との複合部材から成るボトル状缶20Bに、缶ボディ側のボトル状胴体23がアルミニウム再生塊のみから製造されたものにリサイクル表示部60を付与してリサイクルを行う。具体的に他の第一変形例で扱う使用済みのアルミニウム製缶としては、前記の実施形態での特定(JIS3000系品A1~A3とJIS5000系含有品B1~B2)に代えて、下記のものを利用する。
リサイクル表示付缶C1: JIS3000系のアルミニウム合金で成るキャップ23をJIS3000系のアルミニウム合金で成るボトル状胴体21の口部22に着脱自在に取り付けていてリサイクル表示部60を設けたボトル状缶20
リサイクル表示付缶C2: JIS3000系のアルミニウム合金で成りリサイクル表示部を設けたカップ40
リサイクル表示付缶C3: JIS5000系のアルミニウム合金で成るキャップ23をJIS3000系のアルミニウム合金で成るボトル状胴体21の口部22に着脱自在に取り付けていてリサイクル表示部60を設けているボトル状缶20
リサイクル表示無缶D1: JIS3000系のアルミニウム合金で成るキャップ23をJIS3000系のアルミニウム合金で成るボトル状胴体21の口部22に着脱自在に取り付けていてリサイクル表示部60を設けていないボトル状缶20
リサイクル表示無缶D2: JIS5000系のアルミニウム合金で成るキャップ23をJIS3000系のアルミニウム合金で成るボトル状胴体21の口部22に着脱自在に取り付けていてリサイクル表示部60を設けていないボトル状缶20
リサイクル表示無缶D3: JIS5000系のアルミニウム合金で成る蓋12をJIS3000系のアルミニウム合金で成る筒状胴体11に固定していてリサイクル表示部60を設けていない筒状缶10
リサイクル表示付缶C3(ボトル状缶20)は、ボトル状胴体21にリサイクル表示部60を設けていて、消費者やリサイクルの作業者などが、キャップ23をボトル状胴体21から取り外すことで、JIS3000系のアルミニウム合金のボトル状胴体21を、主に成分調整に利用することができる。
リサイクル表示無缶D1~D3は、例えばリサイクル業者によって1000本以上のUBCをプレスしたアルミ缶プレスを利用することができる他、これに代えて或いは加えて回収装置で集めたボトル状缶20や筒状缶10を利用できる。
他の第一変形例では、リサイクル表示付缶C1~C3とリサイクル表示無缶D1~D3とから新規のボトル状缶20のボトル状胴体21及び/又はカップ40を製造する。他の第一変形例におけるアルミニウム再生塊の製造方法は、図7に示すように、リサイクル表示付缶C1~C3とリサイクル表示無缶D1~D3とを回収する回収工程と、リサイクル表示部60を有するリサイクル表示付缶C1~C3の少なくとも何れかを用いて成分調整用再生塊を製造する調整材製造工程と、リサイクル表示無缶D1~D3の少なくとも何れかと成分調整用再生塊とを用いて新規缶の製造に利用するアルミニウム再生塊を製造する再生塊製造工程と、アルミニウム再生塊を用いて新規缶を製造する新規缶製造工程と、を備えている。
回収工程は、実施形態と同様に、選別工程として、バーコードリーダー等の読取装置で読み取った電子コードによってリサイクル表示付缶C1~C3とリサイクル表示無缶D1~D3とを分ける。選別は機械に限らず、手作業で行ってもよい。
溶解工程では調整材料の一部或いは全部に調整材製造工程で再生したインゴットを利用する。
新規缶製造工程では、再生塊製造工程で製造されたスラブ(アルミニウム再生塊)を用いて、アルミニウム製の新規の缶ボディとして、ボトル状缶20Aのボトル状胴体21又は/及びカップ40を製造する。ボトル状缶20の製造方法では、圧延工程と、缶ボディ成形工程と、キャップ成形工程と、表面処理工程と、蓋取付工程と、を行う。蓋取付工程では、アルミニウム合金で成るキャップ23を、アルミニウム再生塊から製造したボトル状胴体21に取り付ける。カップ40の製造方法では、圧延工程と、缶ボディ成形工程と、表面処理工程と、を行う。
他の第一変形例によれば、リサイクル表示付缶C1~C3がリサイクル表示部60を設けていることで、JIS5000系のアルミニウム合金の蓋とJIS3000系のアルミニウム合金の筒状胴体との複合部材から成る筒状缶10(リサイクル表示無缶D3)などと、容易に識別することができる。
【0046】
(他の第二変形例)
他の第一変形例では、リサイクル表示付缶C1~C3とリサイクル表示無缶D1~D3とを用いてアルミニウム再生塊を製造する場合を例示したが、他の第二変形例として、図8に示すように再生塊製造工程ではリサイクル表示付缶C1~C3の少なくとも何れかだけを用いて調整材料を別途用いず或いは少ない量を加えてアルミニウム再生塊を製造してもよい。
【0047】
光学式の読取装置はバーコードスキャナー型のバーコードリーダーに代えてカメラなどの撮像装置として構成されてもよい。撮像装置で取得された画像からコード部62の情報を抽出する画像処理の機能が、撮像装置或いは制御装置に設けられ、コード部62が文字や数字等であれば画像から文字を取得するOCR(Optical Character Recognition)の機能を備え、コード部62が図形であれば予め記録された図形の像を抽出するソフトウェアを内蔵する。制御装置が抽出された情報と予めレファレンス情報として保存されている識別用のデータ(文字、数字、図形など)と一致するか判断するように構成してもよい。コード部62は読取装置で読み取り可能な秘密表示であっても良い。
【0048】
筒状缶10,ボトル状缶20A″、カップ40の形状や寸法は例示である。
【符号の説明】
【0049】
10 筒状缶
11 筒状胴体
13 底部
14 胴部
20 ボトル状缶
21 ボトル状胴体
23 キャップ
40 カップ
60 リサイクル表示部
61 記述部
62 コード部
C1~C3 リサイクル表示付缶
D1~D3 リサイクル表示無缶
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8