(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023133783
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 27/62 20210101AFI20230920BHJP
【FI】
G01N27/62 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038973
(22)【出願日】2022-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】弁理士法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川北 祥人
(72)【発明者】
【氏名】尾島 典行
【テーマコード(参考)】
2G041
【Fターム(参考)】
2G041CA01
2G041DA16
2G041EA06
2G041GA09
2G041LA06
(57)【要約】
【課題】データベースに保存された既知化合物の情報量が膨大なものであっても試料に含まれる化合物を簡便に解析することができる技術を提供する。
【解決手段】複数の既知化合物の測定条件及び解析方法の情報、及び既知化合物の一部を抽出する複数のフィルタの情報が保存された記憶部21と、表示部26と、記憶部に保存された測定条件に基づく測定を行って試料の測定データを取得する測定制御部224と、複数のフィルタのうちのいずれかを解析フィルタとして選択する入力を受け付けるフィルタ選択受付部と221、解析フィルタにより前記複数の既知化合物の一部を解析対象化合物として抽出する解析対象化合物抽出部223と、解析対象化合物の測定データを表示する第1解析画面と全測定データを表示する第2解析画面を表示する表示制御部226とを備える分析装置1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の既知化合物の測定条件及び解析方法の情報、及びそれぞれが該複数の既知化合物の一部を抽出するものである複数のフィルタの情報が保存された記憶部と、
表示部と、
前記記憶部に保存された測定条件に基づく測定を行って試料の測定データを取得する測定制御部と、
前記複数のフィルタのうちのいずれかを、前記試料の測定データの解析に対して適用する解析フィルタとして選択する入力を受け付けるフィルタ選択受付部と、
前記解析フィルタにより前記複数の既知化合物の一部を解析対象化合物として抽出する解析対象化合物抽出部と、
前記表示部に、前記試料の測定データのうち前記解析対象化合物の測定データを表示する第1解析画面と、全ての測定データを表示する第2解析画面とを表示する表示制御部と
を備える分析装置。
【請求項2】
前記複数の既知化合物の一部又は全部が代謝物であり、前記フィルタが試料の属性に応じて作成されたものである、請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記フィルタ選択受付部が、さらに、前記複数のフィルタのうちのいずれかを、前記試料の測定に対して適用する測定フィルタとして選択する入力を受け付けるものであり、
さらに、
前記測定フィルタにより前記複数の既知化合物の一部を測定対象化合物として抽出する測定対象化合物抽出部
を備え、
前記測定制御部が、前記記憶部に保存された、前記測定対象化合物の測定条件を用いた測定を行って前記試料の測定データを取得する
ものである、請求項1又は2に記載の分析装置。
【請求項4】
前記複数のフィルタが、前記記憶部に保存されている複数の既知化合物のうちの一部を抽出する第1フィルタと、該第1フィルタにより抽出される既知化合物のうちの一部を抽出する第2フィルタを含む
ものである、請求項1から3のいずれかに記載の分析装置。
【請求項5】
前記複数のフィルタが、前記記憶部に保存されている複数の既知化合物のうちの一部を抽出する第1フィルタと、該第1フィルタにより抽出される既知化合物のうちの一部を抽出する第2フィルタを含み、
前記フィルタ選択受付部は、前記測定フィルタとして前記第1フィルタが選択された場合に、前記解析フィルタとして第1フィルタ又は前記第2フィルタの選択を受け付け、前記測定フィルタとして前記第2フィルタが選択された場合に、前記解析フィルタとして前記第2フィルタの選択を受け付ける
ものである、請求項3に記載の分析装置。
【請求項6】
さらに、
前記解析対象化合物の追加及び削除を受け付ける解析対象化合物変更部
を備え、
前記表示制御部が、前記解析対象化合物変更部が受け付けた変更後の解析対象化合物の測定データを前記第1解析画面に表示する
ものである、請求項1から5のいずれかに記載の分析装置。
【請求項7】
さらに、
フィルタを識別する情報の入力、及び前記記憶部に保存されている複数の既知化合物のうちの一部の選択に応じて新たなフィルタを作成して前記記憶部に保存するフィルタ作成部
を備える、請求項1から5のいずれかに記載の分析装置。
【請求項8】
前記フィルタ作成部は、前記測定制御部により取得された試料の測定データを前記解析方法で解析することにより該試料に含まれる化合物を特定した結果に基づいて、前記記憶部に保存されている複数の既知化合物のうちの一部を選択する
ものである、請求項7に記載の分析装置。
【請求項9】
前記フィルタ作成部は、前記特定された化合物のうちの一部を指定する入力を受け付け、前記特定された化合物の中から該指定された化合物を除外することにより前記記憶部に保存されている複数の既知化合物のうちの一部を選択する
ものである、請求項8に記載のフィルタ作成方法。
【請求項10】
複数の既知化合物の測定条件及び解析方法の情報が保存されたデータベースから該複数の既知化合物の一部を、試料の測定時の測定対象化合物又は試料の測定データの解析時の解析対象化合物として抽出するためのフィルタを作成する方法であって、
前記複数の既知化合物のいずれかについて記載された文献の情報を収集し、
前記文献に記載された情報に基づいて、該文献に記載された既知化合物を試料の属性に対応づけ、
前記試料の属性の選択に応じて該属性に対応付けられた既知化合物を抽出するフィルタを作成する
ものである、フィルタの作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料に含まれる化合物を分析する分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
メタボロミクスは、生命活動によって生じる様々な代謝物の種類や濃度を網羅的に解析する手法であり、様々な分野への応用が期待されている。例えば、医療の分野では、疾病の早期発見を目的としたバイオマーカーの探索や疾病の原因物質の特定などへの応用が期待されている。また、食品の分野では、メーカー間の製品比較や原材料の産地比較などの品質評価や品質予測、機能性成分の探索などへの応用が可能である。
【0003】
メタボロミクスにおいて代謝物を分析する手法の1つにガスクロマトグラフ質量分析がある。ガスクロマトグラフ質量分析を用いた代謝物の分析では、多数の既知の代謝物のそれぞれの測定条件と解析方法の情報を収録したデータベースが用いられている(例えば非特許文献1)。測定条件の情報には、例えば、各代謝物の保持時間や、各代謝物を特徴づけるイオンの質量電荷比の情報が含まれる。解析方法の情報には、例えば、測定データからマスクロマトグラムやトータルイオンカレントクロマトグラムを作成したり、クロマトグラムからピークを抽出したりする際の解析パラメータや、ピークの面積から代謝物を定量するための検量線の情報が含まれる。分析者は、こうしたデータベースに収録されている測定条件や解析方法の情報を用いることで、自らが測定条件や解析方法を検討することなく、試料に含まれる様々な代謝物を網羅的に分析することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】"Smart Metabolites Database",[online],株式会社島津製作所,[2022年2月14日検索],インターネット<URL: https://www.an.shimadzu.co.jp/gcms/smartdb/metabolite.htm>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
メタボロミクスの対象は多岐にわたっており、代謝物を網羅的に解析するメタボローム解析において用いられるデータベースには様々な属性の試料のいずれかに含まれうる多数の代謝物の情報が登録されている。また、メタボロミクスの対象の広がりとともに、データベースに登録される代謝物の数が増加している。このため、こうしたデータベースに登録された測定条件に基づいて多数の代謝物を網羅的に測定できる一方、膨大な測定データを解析するには手間と時間がかかる。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、データベースに保存された既知化合物の測定条件及び解析方法の情報量が膨大なものであっても、それを用いて試料に含まれる化合物を簡便に解析することができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために成された本発明に係る分析装置は、
複数の既知化合物の測定条件及び解析方法の情報、及びそれぞれが該複数の既知化合物の一部を抽出するものである複数のフィルタの情報が保存された記憶部と、
表示部と、
前記記憶部に保存された測定条件に基づく測定を行って試料の測定データを取得する測定制御部と、
前記複数のフィルタのうちのいずれかを、前記試料の測定データの解析に対して適用する解析フィルタとして選択する入力を受け付けるフィルタ選択受付部と、
前記解析フィルタにより前記複数の既知化合物の一部を解析対象化合物として抽出する解析対象化合物抽出部と、
前記表示部に、前記試料の測定データのうち前記解析対象化合物の測定データを表示する第1解析画面と、全ての測定データを表示する第2解析画面とを表示する表示制御部と
を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る分析装置は、複数の既知化合物の測定条件及び解析方法の情報に加えて、複数の既知化合物のうちの一部を抽出するための複数のフィルタの情報が保存された記憶部を備えている。試料の分析を行う際には、記憶部に保存されている複数の既知化合物の測定条件に基づく測定を行って試料の測定データを取得する。また、フィルタ選択受付部が例えば使用者による解析フィルタの選択を受け付け、解析対象化合物抽出部が、その解析フィルタに対応する1又は複数の既知化合物(解析対象化合物)を抽出する。そして、表示制御部は、解析対象化合物の測定データを表示する第1解析画面と、全ての測定データを表示する第2解析画面とを表示する。表示制御部は、第1解析画面と第2解析画面を切り替えて表示部に表示するものであってもよく、第1解析画面と第2解析画面を並べて同時に表示するものであってもよい。第1解析画面と第2解析画面の表示は、例えば使用者による指示に基づいて行われる。本発明に係る分析装置では、例えば使用者が、試料の分析内容に応じて解析用のフィルタを選択して解析すべき化合物を簡便に絞り込むだけで、それらの解析対象化合物の測定データが表示された第1解析画面が表示されるため、それらの化合物を簡便に解析することができる。また、解析対象化合物以外の測定データについても、必要に応じて第2解析画面により確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る分析装置の一実施例であるガスクロマトグラフ質量分析装置の要部構成図。
【
図2】本実施例における化合物データベースの一例。
【
図6】本実施例において対象外化合物を解析対象化合物に追加する画面の一例。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る分析装置の一実施例について、以下、図面を参照して説明する。本実施例の分析装置は、例えば、植物、動物などに由来する試料や生体試料などの様々な属性の試料について、その試料に含まれる種々の代謝物を分析するために用いられる。このように、試料に含まれる様々な代謝物の種類や濃度を網羅的に解析する手法はメタボロミクスと呼ばれる。生体試料に含まれる特定の代謝物を分析することにより疾病の早期発見につなげたり、食品試料に含まれる特定の代謝物を分析することにより、その商品の品質を評価したり産地を特定したりするために用いられる。メタボロミクスにおける
分析において測定の対象となる代謝物は既知の化合物であり、多くの場合、試料の属性(例えば、試料の種類)に応じて解析対象化合物が予め決まっている。
【0011】
図1は、本発明に係る分析装置の一実施例であるガスクロマトグラフ質量分析装置1の要部構成図である。本実施例のガスクロマトグラフ質量分析装置1は、大別して測定部であるガスクロマトグラフ質量分析部(GC/MS/MS)10と、制御・処理部20で構成されている。
【0012】
GC/MS/MS10は、試料に含まれる各種の化合物を分離するためのガスクロマトグラフと、該ガスクロマトグラフで分離された化合物を順に分析する質量分析部を組み合わせたものである。本実施例の質量分析部には、MS/MS測定を実施可能な構成を有する質量分析部(三連四重極型質量分析装置、イオントラップ-飛行時間型質量分析装置等)をガスクロマトグラフと組み合わせたものが用いられる。本実施例では、MRM測定やMS/MSスキャン測定を行うためにこのような構成のものを用いているが、SIM測定やMSスキャン測定のみを行う場合はシングル四重極型の質量分析装置等を用いてもよい。
【0013】
制御・処理部20は、記憶部21のほかに、機能ブロックとして、フィルタ選択受付部221、測定対象化合物抽出部222、解析対象化合物抽出部223、測定制御部224、解析データ生成部225、表示制御部226、解析対象化合物変更部227、及びフィルタ作成部228を備えている。制御・処理部20の実体はパーソナルコンピュータであり、予めインストールされたソフトウェア(プログラム)をプロセッサで実行することにより上記の各機能ブロックが具現化される。また、制御・処理部20には、入力部25と表示部26が接続されている。
【0014】
記憶部21には、化合物データベース(化合物DB)211が保存されている。
図2に化合物データベース211の一例を示す。化合物データベース211には、種々の試料から検出される既知の多数の代謝物(例えば500~1000種類)のそれぞれについて、測定情報と解析情報が収録されている。測定情報には、当該代謝物を測定する際にガスクロマトグラフで使用するカラムの種類と温度、キャリアガスの種類と流量、及び保持時間や、質量分析部における測定モード(SIM、MSスキャン、MRM、MS/MSスキャンなど)とイオンの質量電荷比(SIM測定時の質量電荷比、MSスキャン測定時の質量電荷比の範囲、MRM測定時のMRMトランジションの質量電荷比の組み合わせ、MS/MS測定時のプリカーサイオンの質量電荷比とプロダクトイオンの質量電荷比の範囲など)の情報が含まれる。また、解析情報には、同定条件(SIM測定時の定量イオンの測定強度と確認イオンの測定強度の比の許容範囲、MRM測定時の定量用MRMトランジションの測定強度と確認用MRMトランジションの測定強度の比の許容範囲、MSスキャンやMS/MSスキャン測定時のMSスペクトルやMS/MSスペクトルと標準スペクトルの一致度の閾値など)、検量線データ(クロマトグラムのピーク強度と定量値の関係など)、及び標準マススペクトル(MSスペクトル、MS/MSスペクトルなど)の情報が含まれる。
【0015】
化合物データベース211は、また、フィルタ情報を有している。フィルタ情報は、試料の属性に応じて、化合物データベース211に収録されている多数の化合物の中から当該属性の試料に関する測定対象化合物及び/又は解析対象化合物を抽出するものである。試料の属性は、属性A、属性B、属性Cなどの大分類、属性A-1、属性A-2、属性A-3などの中分類、属性A-1-1などの小分類、のように階層的に設けられている。
【0016】
図3にフィルタ情報の一例を示す。この例では3つの階層で試料の属性を表しているが、階層の数は適宜に変更可能である。また、階層構造を設けず、上記大分類に相当するもの(属性A、属性B、属性Cなど)のみとしてもよい。大分類は、例えば植物、動物といったものであり、植物の下層に位置する中分類は、例えば、小麦、大麦、米、大豆といったものであり、小麦の下層に位置する小分類は、例えば、北海道産の小麦、アメリカ産の小麦といったものである。階層構造のフィルタは、下層に位置するフィルタほど少数の化合物(代謝物)を抽出するように構成されている。例えば、中分類である小麦のフィルタは、大分類である植物のフィルタにより抽出される化合物(代謝物)の一部を抽出するように構成されている。
【0017】
次に、本実施例のガスクロマトグラフ質量分析装置1の動作を説明する。
【0018】
使用者が分析の実行を指示すると、フィルタ選択受付部221は、測定フィルタの使用/不使用を選択させる画面を表示部26に表示する。この画面で測定フィルタの使用を選択すると、次に測定フィルタの選択画面へと進む。測定フィルタを使用する場合の流れは後述する。
【0019】
次に、測定制御部224は、化合物データベース211から各化合物の測定情報を読み出す。この例では、測定フィルタを使用しないため、化合物データベース211に収録されている全ての化合物のそれぞれの測定情報を読み出し、それらを実行するバッチファイルを作成する。なお、測定する化合物の数が多いと、全ての化合物を一度に測定することができない場合がある。例えば、保持時間が同じ化合物が多数含まれると同一時間帯に多数の化合物を順に測定することになり、それらの化合物を測定する時間間隔が長くなる。その結果、マスクロマトグラムのピークを構成する測定点の数が不足してピークの再現性が悪くなる可能性がある。あるいは、マスクロマトグラムのピークを構成する測定点の数が充足するように各化合物を測定する時間間隔を短くすると、各化合物の1回あたりの測定時間が短くなって感度が悪くなる可能性がある。そのため、測定制御部224は、所定の条件(例えば、同じ時間帯に測定する化合物の数が、予め決められた上限数を超えないこと)に照らし、必要に応じて複数のメソッドファイルを作成し、複数回の測定により全ての化合物の測定データを取得するようにバッチファイルを作成する。
【0020】
バッチファイル作成後、使用者が測定開始を指示すると、測定制御部224は、試料に含まれる化合物(ここでは化合物データベース211に収録されている全ての化合物)を順に測定する。測定により取得されたデータは順次、記憶部21に保存される。
【0021】
測定終了後、表示制御部226は、まず、測定した全ての化合物の測定データを表示部26に表示する。このときに表示される画面は、本発明における第2解析画面に相当する。
図4に第2解析画面の一例を示す。この画面例では、測定した化合物(ここでは測定フィルタを使用していないため、化合物データベース211に収録されている全ての化合物)の一覧が表示され、その下に、各化合物の測定データが表示される。例えば、MRM測定やSIM測定が行われた化合物については、測定データとしてマスクロマトグラムが表示される。また、例えばMSスキャン測定やMS/MSスキャン測定が行われた化合物については、測定データとしてトータルイオンカレントクロマトグラムが表示される。使用者は、この画面に表示された各化合物の測定データであるマスクロマトグラムやトータルイオンカレントクロマトグラムなどにピークが現れているか否かを確認することで、当該化合物が試料に含まれているか否かを確認することができる。
図4の画面例からは、化合物3が試料に含まれており、化合物1, 2, 5, 6は試料に含まれていないことが分かる。
【0022】
表示制御部226により表示部26に第2解析画面が表示されると、フィルタ選択受付部221は、解析フィルタの使用/不使用を使用者に選択させる画面を表示部26に表示する。使用者が解析フィルタの使用を選択すると、フィルタ選択受付部221は、使用する解析フィルタを選択させる画面を表示部26に表示する。使用者がいずれかの解析フィルタを選択すると、フィルタ選択受付部221は、選択されたフィルタを解析フィルタに決定する。
【0023】
解析フィルタが決定すると、解析対象化合物抽出部223は、選択された解析フィルタの内容に従って、化合物データベース211に収録されている多数の化合物のうちの一部の化合物を、解析対象化合物として抽出する。例えば、属性A-1-1を選択すると、化合物3, 7, 13, 18などが解析対象化合物として抽出される。なお、解析フィルタを使用しない場合は、化合物データベース211に収録されている全ての化合物の測定データを各化合物の解析情報に基づいて解析する。測定フィルタと解析フィルタのいずれも使用しない場合の処理は従来同様であるため、説明を省略する。
【0024】
解析対象化合物抽出部223により解析対象化合物が抽出されると、解析データ生成部225は、測定により取得された測定データのうち、解析対象化合物の測定データを、当該化合物の解析情報を用いて解析する。例えば、MRM測定が行われた化合物について、定量用MRMトランジションと確認用MRMトランジションの測定データから得られるマスクロマトグラムからピークを抽出し、定量用MRMトランジションのマスピークの面積と確認用MRMトランジションのマスピークの面積の比を算出する。そして、その比が同定条件として定められた許容範囲内であるか否かを判定する。また、定量用MRMトランジションのマスクロマトグラムのピーク面積を検量線情報と照合して定量値を算出する。あるいは、例えばMS/MSスキャン測定が行われた化合物について、トータルイオンカレントクロマトグラムからピークを抽出し、そのピークトップの時間に取得されたMS/MSスペクトルを標準スペクトルと照合し、その一致度が予め決められた閾値を超えているか否かを判定する。そして、トータルイオンカレントクロマトグラムのマスピークのピーク面積を検量線情報と照合して定量値を算出する。
【0025】
解析対象化合物について解析データが作成されると、表示制御部226は、解析対象化合物の測定データと解析データを表示部26に表示する。この表示画面は、本発明における第1解析画面に相当する。
図5に第1解析画面の一例を示す。この画面例では、画面上部に解析フィルタにより抽出された化合物(解析対象化合物)の一覧が表示され、その下に、各解析対象化合物の測定データ(
図5の例ではマスクロマトグラム)と解析結果(定量値)が表示される。使用者は、この画面に表示された内容を確認することにより、目的とする測定対象化合物の解析結果を簡便に確認することができる。
【0026】
このように、本実施例では、使用者による指示に基づいて、表示制御部226が、解析対象化合物の測定データ及び解析結果を表示する第1解析画面と、測定した全ての化合物の測定データを表示する第2解析画面を表示する。本実施例では、表示制御部226が、最初に第2解析画面を表示し、使用者が解析フィルタを選択した場合に第1解析画面に表示を切り替えるが、第1解析画面と第2解析画面の表示の形態は適宜に変更することができる。例えば、表示制御部226は、一定の時間間隔で第1解析画面と第2解析画面の表示を自動的に切り替えるようにしてもよい。あるいは、第1解析画面と第2解析画面を並べて同時に表示してもよい。
【0027】
第2解析画面において、例えば、試料に含まれることが測定前には想定されていなかった化合物について有意な測定データが得られていることが分かった場合に、その化合物を個別に解析対象化合物に追加することができる。使用者が解析対象化合物の変更を指示すると、解析対象化合物変更部227は、化合物データベース211に収録されている化合物のうち、解析対象化合物と、それ以外の化合物(対象外化合物)の一覧を表示する。使用者は、この一覧表示において、例えば対象外化合物のうちのいずれか選択し、解析対象化合物に追加する所定の操作を行うことにより解析対象化合物を追加することができる。
図6は、対象外化合物である化合物5を解析対象化合物に追加する場合の例である。また、解析対象化合物を対象外化合物に変更することもできる。解析対象化合物に追加されたものは、それ以降、第1解析画面に表示される。また、解析対象化合物から削除されたものは、それ以降、第1解析画面に表示されなくなる。
【0028】
この例では、解析フィルタを用いることにより化合物データベース211に収録されている化合物の一部を解析対象化合物として抽出し、第1解析画面にその解析対象化合物の測定データ及び解析データのみを表示させるため、目的とする化合物の解析を容易に行うことができる。また、第2解析画面を確認することにより、試料に含まれることが測定前には想定されていなかった化合物の測定データを確認することもできる。さらに、解析対象化合物変更部227により、そうした化合物を解析対象化合物に個別に追加することもできる。
【0029】
次に、使用者が測定フィルタの使用を選択した場合の例を説明する。使用者が測定フィルタの使用を選択すると、フィルタ選択受付部221は、使用する測定フィルタを選択させる画面を表示部26に表示する。使用者がいずれかの測定フィルタを選択して決定すると、フィルタ選択受付部221は、選択されたフィルタを測定フィルタに決定する。
【0030】
測定フィルタが決定すると、測定対象化合物抽出部222は、測定フィルタの内容に従って、化合物データベース211に収録されている多数の化合物のうちの一部の化合物を、測定対象化合物として抽出する。例えば、測定フィルタが属性Aである場合には、化合物2, 3, 5-7, 10-14, 18などが測定対象化合物として抽出される。
【0031】
次に、測定制御部224は、試料の測定条件を記載したメソッドファイルを読み出してバッチファイルを作成する。この例では、測定フィルタを使用しているため、測定対象化合物(化合物2, 3, 5-7, 10-14, 18など)をそれぞれ測定するメソッドファイルを読み出し、それらを実行するバッチファイルを作成する。
【0032】
バッチファイル作成後、使用者が測定開始を指示すると、測定制御部224は、試料に含まれる測定対象化合物を順に測定する。測定により取得されたデータは順次、記憶部21に保存される。
【0033】
測定終了後、表示制御部226は、まず、測定フィルタにより抽出された測定化合物の測定データを表示部26に表示する。このときに表示される画面も、測定フィルタで抽出された測定対象化合物について測定制御部224が取得した全ての測定データを表示した画面であり、本発明における第2解析画面に相当する。
【0034】
表示制御部226により表示部26に第2解析画面が表示されると、フィルタ選択受付部221は、使用者に解析フィルタを選択させる画面を表示部26に表示する。このとき、画面には、測定フィルタと同じもの、又はそれよりも下位の階層に位置するフィルタが選択可能なフィルタとして表示される。例えば、測定フィルタが属性Aである場合には、選択可能な解析フィルタとして、属性A、属性A-1、属性A-1-1、属性A-2、属性A-3などが表示される。使用者がこれらの中から解析フィルタを選択して決定すると、フィルタ選択受付部221は、選択されたフィルタを解析フィルタに決定する。
【0035】
解析フィルタが決定すると、解析対象化合物抽出部223は、解析フィルタの内容に従って、化合物データベース211に収録されている化合物のうちの一部を、解析対象化合物として抽出する。例えば、解析フィルタが属性A-1-1である場合には、化合物3, 7, 13, 18などが解析対象化合物として抽出される。
【0036】
解析対象化合物が抽出されると、解析データ生成部225は、測定により取得された測定データのうち、解析対象化合物(化合物3, 7, 13, 18など)の測定データを読み出し、当該化合物の解析情報に基づいて測定データを解析する。
【0037】
解析対象化合物について解析データが作成されると、表示制御部226は、解析対象化合物の測定データと解析データを第1解析画面として表示部26に表示する。この例でも、使用者は適宜に解析対象化合物の追加や削除を行うことができる。
【0038】
この例では、測定フィルタを用いることにより化合物データベース211に収録されている化合物の一部を測定対象化合物として抽出するため、化合物データベース211に収録されている全ての化合物を測定する場合に比べて、測定する化合物の数が少ない。そのため、測定時間を短縮することができる。あるいは、全ての化合物を測定する場合に比べて各化合物の測定時間を長くして測定感度を高めたり、測定間隔を短くして測定の再現性を高めたりすることができる。また、この例では、解析フィルタによって測定対象化合物の一部を解析対象化合物として抽出し、第1解析画面にその解析対象化合物の測定データ及び解析データのみを表示するため、解析対象化合物(化合物3, 7, 13, 18など)の測定データ及び解析結果を容易に確認することができる。また、第2解析画面を確認することにより、当初、解析の対象にしていなかった化合物(化合物2, 5, 6, 10-12, 14など)の測定データを確認することにより、これらの化合物が試料に含まれているか否かを確認するができる。
【0039】
次に、化合物データベース211において使用するフィルタを新たに作成する手順を説明する。
【0040】
使用者は、化合物データベース211に収録されている化合物に関して記載された論文などの文献等の情報を収集する。そして、それらの化合物がどのような属性の試料に関する文献において報告されているかを確認し、各化合物を試料の属性に対応付ける。これにより、例えば、属性Zの試料に化合物1, 5-9, 13, 15などを対応付けた情報を得ることができる。
【0041】
その後、使用者がフィルタの作成を指示すると、フィルタ作成部228は、追加するフィルタ名(試料の属性などの、フィルタを識別する情報)を入力する画面を表示部26に表示する。使用者がフィルタ名を入力すると、フィルタ作成部228は、化合物データベース211に収録されている化合物の一覧をチェックボックスとともに表示する。
図7にその一例を示す。使用者が、表示された化合物のうち、文献により得た情報に基づいて、当該属性の試料に含まれていた化合物のチェックボックスを選択し決定すると、使用者が入力したフィルタ名(試料の属性)と、選択された化合物が対応付けられたフィルタが作成される。
【0042】
また、使用者が行った測定及び解析の結果に基づいてフィルタを作成することも可能である。使用者は、新たに登録しようとする属性の試料について、化合物データベース211に収録された化合物の測定情報を用いて測定を実行して測定データを取得する。この測定も、測定制御部224によって実行される。また、解析データ生成部225は、それら化合物の解析情報を用いて解析データを作成する。最上位の階層に新たなフィルタを作成する場合は、測定フィルタと解析フィルタのいずれも使用せず、試料の測定及び解析を行う。一方、既存のフィルタの下位の階層に新たなフィルタを作成する場合は、作成しようとするフィルタの上位の階層のフィルタを測定フィルタ及び解析フィルタとして用いてもよい。フィルタ作成部228は、解析データ生成部225により得られた解析結果から、試料に含まれている化合物を特定する。これにより、試料の属性と、該属性の試料に含まれる化合物を対応付けた情報が得られる。その後、フィルタ作成部228は、化合物データベース211に収録されている化合物のうち当該属性の試料に含まれていた化合物を選択し、使用者により入力されたフィルタ名を対応づけて新たなフィルタを作成する。
【0043】
試料の測定及び解析によって当該試料から検出された化合物の中には、ブランク試料からも検出される化合物などが含まれている場合がある。そのような化合物を測定対象化合物や解析対象化合物として抽出すると、実試料の測定及び解析を行う際に擬陽性という結果を生じさせる可能性がある。従って、そうした化合物については、試料から検出される化合物であっても解析対象化合物から除外しておくことが好ましい。そこで、フィルタ作成部228は、使用者による所定の入力操作に応じて試料に含まれていることを特定した化合物の一覧を表示部26に表示し、削除対象の化合物を使用者に指定させる。使用者が削除対象の化合物を指定すると、フィルタ作成部228は、試料に含まれていることを特定した化合物から、使用者に指定された化合物を削除して新たなフィルタを作成する。
【0044】
また、化合物データベース211に既に保存されているフィルタを編集することもできる。使用者が、フィルタの編集を指示すると、フィルタ作成部228は、フィルタの一覧を表示し、使用者に編集対象のフィルタの選択を促す。使用者がフィルタを選択すると、そのフィルタに対応付けられた化合物の一覧が表示される。使用者が、この一覧を見て、擬陽性を生じさせる可能性がある化合物を選択し、その削除を決定すると、フィルタ作成部228は選択された化合物を削除し、フィルタの情報を更新して化合物データベース211に保存する。
図8にフィルタ編集画面の一例を示す。
【0045】
上記実施例は一例であって、本発明の趣旨に沿って適宜に変更することができる。上記実施例では、化合物データベース211を代謝物に関するデータベースとしたが、代謝物以外の既知化合物の分析を行う場合にも上記同様のものを用いることができる。
【0046】
上記実施例は、ガスクロマトグラフ質量分析装置1としたが、他の分析装置を用いて試料に含まれる化合物を測定することもできる。その場合には、当該分析装置について予め用意された化合物データベースを用いればよい。
【0047】
上記実施例は好ましい実施形態について記載したものであり、本発明において上記実施例で説明した構成要素の全てを備える必要はない。例えば、測定対象化合物抽出部222、解析対象化合物変更部227、及びフィルタ作成部228を有しない装置によっても本発明を実施することができる。
【0048】
上記実施例では、解析対象化合物の測定データを解析したうえで、その結果を第1画面に表示する場合を説明したが、測定データの解析を行わず、解析対象化合物の測定データのみを第1画面に表示してもよい。その場合には、例えば、使用者による追加の指示に基づいて定量値を求めるなどの解析処理を行うようにすればよく、解析データ生成部225を備えなくてもよい。
【0049】
上記実施例では、使用者がフィルタそのものを選択したが、フィルタ選択受付部221は他の方法でフィルタの選択を受け付けてもよい。例えば、試料の分析時に使用者が入力した試料名に応じて自動的にその試料名に対応するフィルタを選択するものなど、予め決められた基準に従ってフィルタを自動的に選択するものとしてもよい。
【0050】
上記実施例では、測定フィルタの使用/不使用を選択して試料の測定を実行した後に、解析フィルタの使用/不使用を選択する構成としたが、試料を測定する前に解析フィルタの使用/不使用を選択してもよい。また、上記実施例では、試料の測定後に第2解析画面を表示し、その後、使用者が解析フィルタの使用を選択した場合に第1解析画面を表示する構成としたが、試料を測定する前に解析フィルタを選択する場合には、試料の測定後に第1解析画面を表示し、その後、使用者による指示により第2解析画面を表示するようにしてもよい。
【0051】
[態様]
上述した複数の例示的な実施例は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0052】
(第1項)
本発明の一態様に係る分析装置は、
複数の既知化合物の測定条件及び解析方法の情報、及びそれぞれが該複数の既知化合物の一部を抽出するものである複数のフィルタの情報が保存された記憶部と、
表示部と、
前記記憶部に保存された測定条件に基づく測定を行って試料の測定データを取得する測定制御部と、
前記複数のフィルタのうちのいずれかを、前記試料の測定データの解析に対して適用する解析フィルタとして選択する入力を受け付けるフィルタ選択受付部と、
前記解析フィルタにより前記複数の既知化合物の一部を解析対象化合物として抽出する解析対象化合物抽出部と、
前記表示部に、前記試料の測定データのうち前記解析対象化合物の測定データを表示する第1解析画面と、全ての測定データを表示する第2解析画面とを表示する表示制御部と
を備える。
【0053】
第1項の分析装置は、複数の既知化合物の測定条件及び解析方法の情報に加えて、複数の既知化合物のうちの一部を抽出するための複数のフィルタの情報が保存された記憶部を備えている。こうしたフィルタは、例えば、過去に行われた分析の結果や実試料の測定及び解析結果に基づいて作成されたものである。これら複数のフィルタには、例えば試料の属性ごとに作成されたものや、試料の分析目的ごとに作成されたものを用いることができる。あるいは、例えば、試料の属性(例えば「植物」)に応じて、当該属性の試料に含まれることが考えにくい化合物(例えば動物からしか生成されない代謝物)を除く化合物を化合物データベースから抽出するフィルタとしてもよい。いずれの場合も、記憶部に保存された複数のフィルタの中から試料の属性や分析の目的に適したものを解析用のフィルタとして選択することができる。
【0054】
試料の分析を行う際には、記憶部に保存されている測定条件を用いた測定を行って試料の測定データを取得する。フィルタ選択受付部は、例えば使用者によるフィルタの選択を受け付ける。フィルタ選択受付部は、使用者によるフィルタの選択を受け付けるものに限らず、試料の分析時に使用者が入力した試料名に応じて自動的にその試料名に対応するフィルタを選択するものなど、予め決められた基準に従ってフィルタを自動的に選択するものであってもよい。
【0055】
生成された解析対象化合物の測定データは、表示制御部により第1解析画面として表示部に表示される。また、測定制御部により取得された全ての測定データは、表示制御部により第2解析画面として表示される。表示制御部による第1解析画面と第2解析画面の表示は、それらを切り替えて表示部に表示するものであってもよく、それらを並べて同時に表示するものであってもよい。第1項の分析装置では、例えば使用者が、試料の分析内容に応じて解析用のフィルタを選択するのみで解析すべき化合物を簡便に絞り込むだけで、それらの解析対象化合物の測定データが表示された第1解析画面が表示されるため、それらの化合物を簡便に解析することができる。また、解析対象化合物以外の測定データについても、第2解析画面により確認することができる。
【0056】
(第2項)
第1項に記載の分析装置において、
前記複数の既知化合物の一部又は全部が代謝物であり、前記フィルタが試料の属性に応じて作成されたものである。
【0057】
第2項の分析装置では、記憶部に保存される複数のフィルタとして、試料の属性が異なるものを用いる。第2項の分析装置は、植物、動物などの様々な属性の試料に含まれる代謝物を解析するメタボロミクスにおいて好適に用いることができる。
【0058】
(第3項)
第1項又は第2項に記載の分析装置において、
前記フィルタ選択受付部が、さらに、前記複数のフィルタのうちのいずれかを、前記試料の測定に対して適用する測定フィルタとして選択する入力を受け付けるものであり、
さらに、
前記測定フィルタにより前記複数の既知化合物の一部を測定対象化合物として抽出する測定対象化合物抽出部
を備え、
前記測定制御部が、前記記憶部に保存された、前記測定対象化合物の測定条件を用いた測定を行って前記試料の測定データを取得する。
【0059】
(第4項)
第1項から第3項のいずれかに記載の分析装置において、
前記複数のフィルタが、前記記憶部に保存されている複数の既知化合物のうちの一部を抽出する第1フィルタと、該第1フィルタにより抽出される既知化合物のうちの一部を抽出する第2フィルタを含む。
【0060】
(第5項)
第3項に記載の分析装置において、
前記複数のフィルタが、前記記憶部に保存されている複数の既知化合物のうちの一部を抽出する第1フィルタと、該第1フィルタにより抽出される既知化合物のうちの一部を抽出する第2フィルタを含み、
前記フィルタ選択受付部は、前記測定フィルタとして前記第1フィルタが選択された場合に、前記解析フィルタとして第1フィルタ又は前記第2フィルタの選択を受け付け、前記測定フィルタとして前記第2フィルタが選択された場合に、前記解析フィルタとして前記第2フィルタの選択を受け付ける。
【0061】
第3項及び第5項の分析装置では、記憶部に保存されたフィルタを解析用のフィルタとしてだけでなく、測定用のフィルタとしても使用する。第3項及び第5項の分析装置では、第1フィルタを用いて測定する化合物を絞り込むことにより、各化合物の測定時間を長くしたり測定間隔を短くしたりして測定感度や測定の再現性を高めることができる。
また、第4項及び第5項の分析装置では、第1フィルタと第2フィルタが階層的に設けられているため、試料の属性や分析の目的により適したフィルタを用いることができる。
【0062】
(第6項)
第1項から第5項のいずれかに記載の分析装置において、さらに、
前記解析対象化合物の追加及び削除を受け付ける解析対象化合物変更部
を備え、
前記表示制御部が、前記解析対象化合物変更部が受け付けた変更後の解析対象化合物の測定データを前記第1解析画面に表示する。
【0063】
第6項の分析装置では、試料に含まれることが測定前には想定されておらず、解析フィルタでは抽出しなかった化合物が検出された場合に、それを解析対象化合物に追加することで、その化合物の測定データを第1解析画面で簡便に確認することができる。
【0064】
(第7項)
第1項から第6項のいずれかに記載の分析装置において、さらに、
フィルタを識別する情報の入力、及び前記記憶部に保存されている複数の既知化合物のうちの一部の選択に応じて新たなフィルタを作成して前記記憶部に保存するフィルタ作成部
を備える。
【0065】
第7項の分析装置では、使用者が所望のフィルタを作成して化合物データベースに追加することができる。
【0066】
(第8項)
第7項に記載の分析装置において、
前記フィルタ作成部は、前記測定制御部により取得された試料の測定データを前記解析方法で解析することにより該試料に含まれる化合物を特定した結果に基づいて、前記記憶部に保存されている複数の既知化合物のうちの一部を選択する
ものである。
【0067】
(第9項)
第8項に記載の分析装置において、
前記フィルタ作成部は、前記特定された化合物のうちの一部を指定する入力を受け付け、前記特定された化合物の中から該指定された化合物を除外することにより前記記憶部に保存されている複数の既知化合物のうちの一部を選択する
ものである。
【0068】
第8項の分析装置では、実試料の測定により得られた測定データを解析した結果に基づいて化合物データベースにフィルタを追加することができる。なお、測定制御部が実試料を測定する際には、記憶部に保存された複数の化合物の全てを測定してもよく、測定フィルタを用いるなどして、記憶部に保存された複数の化合物のうちの一部のみを測定してもよい。また、典型的には測定した化合物の全てについて、記憶部に保存された解析方法で解析結果を取得するが、測定した化合物のうちの一部についてのみ記憶部に保存された解析方法で解析結果を取得してもよい。
【0069】
第8項の分析装置では、典型的には、上記解析結果に基づいて実試料に含まれることを特定した化合物の全てを抽出するフィルタを作成するが、第9項の分析装置のように、特定された化合物の一部を除外してフィルタを作成してもよい。第9項の分析装置では、実試料の測定及び解析において検出された化合物のうち、ブランク試料からも検出される化合物などを使用者に指定させ、上記特定された化合物の中から該指定された化合物を除いた化合物を抽出するフィルタを作成することにより、試料の測定及び解析を行う際に擬陽性という結果を生じさせる可能性を低減することができる。
【0070】
(第10項)
本発明の別の一態様は、複数の既知化合物の測定条件及び解析方法の情報が保存されたデータベースから該複数の既知化合物の一部を、試料の測定時の測定対象化合物又は試料の測定データの解析時の解析対象化合物として抽出するためのフィルタを作成する方法であって、
前記複数の既知化合物のいずれかについて記載された文献の情報を収集し、
前記文献に記載された情報に基づいて、該文献に記載された既知化合物を試料の属性に対応づけ、
前記試料の属性の選択に応じて該属性に対応付けられた既知化合物を抽出するフィルタを作成するものである。
【0071】
第10項の方法では、論文等の文献で発表された測定結果や解析結果に基づいて新たなフィルタを作成することができる。
【符号の説明】
【0072】
1…ガスクロマトグラフ質量分析装置
10…測定部(ガスクロマトグラフ質量分析部)
20…制御・処理部
21…記憶部
211…化合物データベース
221…フィルタ選択受付部
222…測定対象化合物抽出部
223…解析対象化合物抽出部
224…測定制御部
225…解析データ生成部
226…表示制御部
226…表示部
227…解析対象化合物変更部
228…フィルタ作成部
25…入力部
26…表示部