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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023133798
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】窒化物半導体デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/337 20060101AFI20230920BHJP
   H01L 21/338 20060101ALI20230920BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
H01L29/80 V
H01L29/80 H
H01L29/80 C
H01L29/78 301B
H01L29/78 301V
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038999
(22)【出願日】2022-03-14
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、環境省、未来のあるべき社会・ライフスタイルを創造する技術イノベーション事業委託業務、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 直生
(72)【発明者】
【氏名】柴田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】田村 聡之
【テーマコード(参考)】
5F102
5F140
【Fターム(参考)】
5F102GB04
5F102GC09
5F102GD04
5F102GD10
5F102GJ01
5F102GJ02
5F102GJ03
5F102GJ04
5F102GK04
5F102GK08
5F102GL04
5F102GL07
5F102GM04
5F102GM07
5F102GQ01
5F102GR04
5F102GV05
5F102GV06
5F102GV07
5F102GV08
5F102HC01
5F102HC11
5F102HC15
5F140AA06
5F140AC23
5F140BA06
5F140BB06
5F140BB18
5F140BC12
5F140BD04
5F140BD05
5F140BD07
5F140BF05
5F140BF08
5F140BF43
5F140BG30
5F140BJ05
5F140BJ07
5F140BK29
5F140BK38
(57)【要約】
【課題】オフ特性が改善された窒化物半導体デバイスを提供する。
【解決手段】窒化物半導体デバイス1は、基板10と、ドリフト層12と、第1の下地層14と、第2の下地層16と、ゲート開口部20と、ゲート開口部20の内面に沿って一部が配置され、かつ、第2の下地層16の上方に他の一部が配置され、チャネル領域を有する半導体多層膜21と、閾値調整層28と、ゲート電極34と、ソース電極32と、ドレイン電極36と、終端部3に設けられた、第1の下地層14を貫通して少なくともドリフト層12に達する溝部40と、ゲート電極34の上方に配置された層間絶縁膜42と、層間絶縁膜42を貫通してソース電極32に達するソース配線44と、を備える。層間絶縁膜42の端部は、平面視において、溝部40の端部と一致し、または、溝部40の端部よりも内側の範囲で、かつ、ソース電極32のうち最外周に位置する部分よりも外側に位置する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化物半導体デバイスであって、
基板と、
前記基板の上方に配置された第1の導電型の第1の半導体層と、
前記第1の半導体層の上方に配置された第2の導電型の第2の半導体層と、
前記第2の半導体層の上方に配置された第3の半導体層と、
前記第3の半導体層および前記第2の半導体層を貫通して前記第1の半導体層に達する第1の開口部と、
前記第1の開口部の内面に沿って一部が配置され、かつ、前記第3の半導体層の上方に他の一部が配置され、前記第1の導電型のチャネル領域を有する半導体多層膜と、
前記半導体多層膜の上面に沿って配置された前記第2の導電型の第4の半導体層と、
前記第4の半導体層の上方に配置されたゲート電極と、
前記ゲート電極と離間して配置されたソース電極と、
前記基板の下面側に配置されたドレイン電極と、
前記窒化物半導体デバイスの終端部に設けられた、前記第2の半導体層を貫通して少なくとも前記第1の半導体層に達する溝部と、
前記ゲート電極の上方に配置された層間絶縁膜と、
前記層間絶縁膜を貫通して前記ソース電極に達するソース配線と、を備え、
前記層間絶縁膜の端部は、平面視において、前記溝部の端部と一致し、または、前記溝部の端部よりも内側の範囲で、かつ、前記ソース電極のうち最外周に位置する部分よりも外側に位置する、
窒化物半導体デバイス。
【請求項2】
前記ソース配線の上方に配置された表面保護膜を備え、
前記表面保護膜の端部は、平面視において、前記溝部の端部と一致し、または、前記溝部の端部よりも内側の範囲で、かつ、前記ソース電極のうち最外周に位置する部分よりも外側に位置する、
請求項1に記載の窒化物半導体デバイス。
【請求項3】
前記溝部の側壁と前記第2の半導体層の上面とがなす角度は、90度未満である、
請求項1または2に記載の窒化物半導体デバイス。
【請求項4】
前記溝部の深さは、1μm以上であり、または、前記溝部は、前記基板まで達する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の窒化物半導体デバイス。
【請求項5】
前記層間絶縁膜は、SiN、SiO、HfO、Al、ZrO、AlN、HfONおよびZrONからなる群から選択される1つの単層または多層膜である、
請求項1から4のいずれか1項に記載の窒化物半導体デバイス。
【請求項6】
前記第1の半導体層と前記第2の半導体層との間に配置された高抵抗層を備える、
請求項1から5のいずれか1項に記載の窒化物半導体デバイス。
【請求項7】
前記高抵抗層には、CまたはFeが含まれている
請求項6に記載の窒化物半導体デバイス。
【請求項8】
窒化物半導体デバイスであって、
基板と、
前記基板の上方に配置された第1の導電型の第1の半導体層と、
前記第1の半導体層の上方に配置された第2の導電型の第2の半導体層と、
前記第2の半導体層の上方に配置された第5の半導体層と、
前記第5の半導体層の上方に配置された第6の半導体層と、
前記第6の半導体層、前記第5の半導体層および前記第2の半導体層を貫通して前記第1の半導体層に達する第2の開口部と、
前記第2の開口部の内面に沿って配置され、かつ、前記第6の半導体層の上方に他の一部が配置されたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜の上面に沿って配置されたゲート電極と、
前記ゲート電極と離間して配置されたソース電極と、
前記基板の下面側に配置されたドレイン電極と、
前記窒化物半導体デバイスの終端部に設けられた、前記第2の半導体層を貫通して少なくとも前記第1の半導体層に達する溝部と、
前記ゲート電極の上方に配置された層間絶縁膜と、
前記層間絶縁膜を貫通して前記ソース電極に達するソース配線と、を備え、
前記層間絶縁膜の端部は、平面視において、前記溝部の端部と一致し、または、前記溝部の端部よりも内側の範囲で、かつ、前記ソース電極のうち最外周に位置する部分よりも外側に位置する、
窒化物半導体デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、窒化物半導体デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
GaN(窒化ガリウム)に代表される窒化物半導体は、バンドギャップが大きいワイドギャップ半導体であり、絶縁破壊電界が大きく、電子の飽和ドリフト速度がGaAs(ヒ化ガリウム)などの化合物半導体またはSi(シリコン)半導体などに比べて大きいという特長を有している。例えば、GaNおよびAlN(窒化アルミニウム)のバンドギャップはそれぞれ、室温で3.4eV、6.2eVである。このため、高出力化、かつ、高耐圧化に有利な窒化物半導体を用いたパワートランジスタの研究開発が行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、GaN系半導体層を備える縦型FET(Field Effect Transistor)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6107430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の半導体デバイスに対して、オフ特性の改善の余地がある。
【0006】
本開示は、オフ特性が改善された窒化物半導体デバイスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る窒化物半導体デバイスは、基板と、前記基板の上方に配置された第1の導電型の第1の半導体層と、前記第1の半導体層の上方に配置された第2の導電型の第2の半導体層と、前記第2の半導体層の上方に配置された第3の半導体層と、前記第3の半導体層および前記第2の半導体層を貫通して前記第1の半導体層に達する第1の開口部と、前記第1の開口部の内面に沿って一部が配置され、かつ、前記第3の半導体層の上方に他の一部が配置され、前記第1の導電型のチャネル領域を有する半導体多層膜と、前記半導体多層膜の上面に沿って配置された前記第2の導電型の第4の半導体層と、前記第4の半導体層の上方に配置されたゲート電極と、前記ゲート電極と離間して配置されたソース電極と、前記基板の下面側に配置されたドレイン電極と、前記窒化物半導体デバイスの終端部に設けられた、前記第2の半導体層を貫通して少なくとも前記第1の半導体層に達する溝部と、前記ゲート電極の上方に配置された層間絶縁膜と、前記層間絶縁膜を貫通して前記ソース電極に達するソース配線と、を備える。前記層間絶縁膜の端部は、平面視において、前記溝部の端部と一致し、または、前記溝部の端部よりも内側の範囲で、かつ、前記ソース電極のうち最外周に位置する部分よりも外側に位置する。
【0008】
本開示の別の一態様に係る窒化物半導体デバイスは、基板と、前記基板の上方に配置された第1の導電型の第1の半導体層と、前記第1の半導体層の上方に配置された第2の導電型の第2の半導体層と、前記第2の半導体層の上方に配置された第5の半導体層と、前記第5の半導体層の上方に配置された第6の半導体層と、前記第6の半導体層、前記第5の半導体層および前記第2の半導体層を貫通して前記第1の半導体層に達する第2の開口部と、前記第2の開口部の内面に沿って配置され、かつ、前記第6の半導体層の上方に他の一部が配置されたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜の上面に沿って配置されたゲート電極と、前記ゲート電極と離間して配置されたソース電極と、前記基板の下面側に配置されたドレイン電極と、前記窒化物半導体デバイスの終端部に設けられた、前記第2の半導体層を貫通して少なくとも前記第1の半導体層に達する溝部と、前記ゲート電極の上方に配置された層間絶縁膜と、前記層間絶縁膜を貫通して前記ソース電極に達するソース配線と、を備える。前記層間絶縁膜の端部は、平面視において、前記溝部の端部と一致し、または、前記溝部の端部よりも内側の範囲で、かつ、前記ソース電極のうち最外周に位置する部分よりも外側に位置する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、オフ特性が改善された窒化物半導体デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施の形態1に係る窒化物半導体デバイスの断面図である。
図2図2は、実施の形態1に係る窒化物半導体デバイスの平面図である。
図3図3は、実施の形態2に係る窒化物半導体デバイスの断面図である。
図4図4は、実施の形態2の変形例1に係る窒化物半導体デバイスの断面図である。
図5図5は、実施の形態2の変形例2に係る窒化物半導体デバイスの断面図である。
図6図6は、実施の形態3に係る窒化物半導体デバイスの断面図である。
図7図7は、実施の形態4に係る窒化物半導体デバイスの断面図である。
図8図8は、実施の形態5に係る窒化物半導体デバイスの断面図である。
図9図9は、実施の形態6に係る窒化物半導体デバイスの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本開示の基礎となった知見)
本発明者は、「背景技術」の欄において記載した従来の半導体デバイスに関し、以下の問題が生じることを見出した。
【0012】
特許文献1には、縦型のトレンチゲートMOSFET(Metal Oxide Semiconductor)である半導体装置が開示されている。当該半導体装置の外周部には、pn接合界面が露出する段差部が設けられている。当該半導体装置は、段差部の側面および底面を覆う保護膜と、保護膜を介して段差部の側面および底面を覆うフィールドプレート電極と、を備える。
【0013】
特許文献1に開示された半導体装置では、段差部を覆う保護膜を形成する際のプロセスダメージにより、pn接合界面が劣化し、オフ時のリーク電流が増加する。すなわち、特許文献1に開示された半導体装置では、オフリーク特性が劣化するという問題がある。
【0014】
そこで、上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る窒化物半導体デバイスは、基板と、前記基板の上方に配置された第1の導電型の第1の半導体層と、前記第1の半導体層の上方に配置された第2の導電型の第2の半導体層と、前記第2の半導体層の上方に配置された第3の半導体層と、前記第3の半導体層および前記第2の半導体層を貫通して前記第1の半導体層に達する第1の開口部と、前記第1の開口部の内面に沿って一部が配置され、かつ、前記第3の半導体層の上方に他の一部が配置され、前記第1の導電型のチャネル領域を有する半導体多層膜と、前記半導体多層膜の上面に沿って配置された前記第2の導電型の第4の半導体層と、前記第4の半導体層の上方に配置されたゲート電極と、前記ゲート電極と離間して配置されたソース電極と、前記基板の下面側に配置されたドレイン電極と、前記窒化物半導体デバイスの終端部に設けられた、前記第2の半導体層を貫通して少なくとも前記第1の半導体層に達する溝部と、前記ゲート電極の上方に配置された層間絶縁膜と、前記層間絶縁膜を貫通して前記ソース電極に達するソース配線と、を備える。前記層間絶縁膜の端部は、平面視において、前記溝部の端部と一致し、または、前記溝部の端部よりも内側の範囲で、かつ、前記ソース電極のうち最外周に位置する部分よりも外側に位置する。
【0015】
これにより、窒化物半導体デバイスの終端部に設けられた溝部には層間絶縁膜が形成されないので、pn接合界面へのプロセスダメージを無くすことができる。よって、オフリーク特性を改善することができる。
【0016】
また、例えば、本開示の一態様に係る窒化物半導体デバイスは、前記ソース配線の上方に配置された表面保護膜を備える。前記表面保護膜の端部は、平面視において、前記溝部の端部と一致し、または、前記溝部の端部よりも内側の範囲で、かつ、前記ソース電極のうち最外周に位置する部分よりも外側に位置してもよい。
【0017】
これにより、窒化物半導体デバイスの表面に対する埃、塵などの付着を抑制することができる。また、表面保護膜が水分の進入を抑制することができるので、窒化物半導体デバイスの信頼性を高めることができる。
【0018】
また、例えば、前記溝部の側壁と前記第2の半導体層の上面とがなす角度は、90度未満であってもよい。
【0019】
これにより、窒化物半導体デバイスの終端部における電界の集中を緩和することができるので、オフリーク特性を改善することができる。
【0020】
また、例えば、前記溝部の深さは、1μm以上であり、または、前記溝部は、前記基板まで達してもよい。
【0021】
これにより、溝部が深くなることによって、窒化物半導体デバイスの表面と溝部との距離を長くすることができる。このため、窒化物半導体デバイスの終端部における電界の集中を緩和することができ、オフリーク特性を改善することができる。
【0022】
また、例えば、前記層間絶縁膜は、SiN、SiO、HfO、Al、ZrO、AlN、HfONおよびZrONからなる群から選択される1つの単層または多層膜であってもよい。
【0023】
これにより、吸湿性が低く、膜質の良好な層間絶縁膜を形成することができる。よって、水分の進入を抑制することができ、窒化物半導体デバイスの信頼性を高めることができる。
【0024】
また、例えば、前記第1の半導体層と前記第2の半導体層との間に配置された高抵抗層を備えてもよい。
【0025】
仮に、高抵抗層が設けられていない窒化物半導体デバイスのトランジスタ部を逆導通動作させた場合、ソース電極からドレイン電極に向けて第2の半導体層を電流が流れた場合に、耐圧が低下するおそれがある。この耐圧の低下によるオフ特性の劣化を逆導通劣化と呼ぶ場合がある。本態様に係る窒化物半導体デバイスでは、高抵抗層が設けられていることにより、逆導通動作時に第2の半導体層を流れる電流を抑制することができる。よって、逆導通劣化を抑制することができる。
【0026】
なお、逆導通動作とは、ソース電極とゲート電極とを短絡させることにより、トランジスタ部をダイオード動作させることである。この場合、ソース電極がアノード電極となり、ドレイン電極がカソード電極となる。
【0027】
また、例えば、前記高抵抗層には、CまたはFeが含まれていてもよい。
【0028】
これにより、高抵抗層の電気抵抗を高めることができ、逆導通劣化を更に抑制することができる。
【0029】
また、本開示の別の一態様に係る窒化物半導体デバイスは、基板と、前記基板の上方に配置された第1の導電型の第1の半導体層と、前記第1の半導体層の上方に配置された第2の導電型の第2の半導体層と、前記第2の半導体層の上方に配置された第5の半導体層と、前記第5の半導体層の上方に配置された第6の半導体層と、前記第6の半導体層、前記第5の半導体層および前記第2の半導体層を貫通して前記第1の半導体層に達する第2の開口部と、前記第2の開口部の内面に沿って配置され、かつ、前記第6の半導体層の上方に他の一部が配置されたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜の上面に沿って配置されたゲート電極と、前記ゲート電極と離間して配置されたソース電極と、前記基板の下面側に配置されたドレイン電極と、前記窒化物半導体デバイスの終端部に設けられた、前記第2の半導体層を貫通して少なくとも前記第1の半導体層に達する溝部と、前記ゲート電極の上方に配置された層間絶縁膜と、前記層間絶縁膜を貫通して前記ソース電極に達するソース配線と、を備える。前記層間絶縁膜の端部は、平面視において、前記溝部の端部と一致し、または、前記溝部の端部よりも内側の範囲で、かつ、前記ソース電極のうち最外周に位置する部分よりも外側に位置する。
【0030】
これにより、窒化物半導体デバイスの終端部に設けられた溝部には層間絶縁膜が形成されないので、pn接合界面へのプロセスダメージを無くすことができる。よって、オフリーク特性を改善することができる。
【0031】
以下では、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0032】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0033】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、例えば、各図において縮尺などは必ずしも一致しない。また、各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付しており、重複する説明は省略または簡略化する。
【0034】
また、本明細書において、平行または直交などの要素間の関係性を示す用語、および、矩形または台形などの要素の形状を示す用語、ならびに、数値範囲は、厳格な意味のみを表す表現ではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度の差異をも含むことを意味する表現である。
【0035】
また、本明細書および図面において、x軸、y軸およびz軸は、三次元直交座標系の三軸を示している。x軸およびy軸はそれぞれ、基板の平面視形状が矩形である場合に、当該矩形の第1の辺、および、当該第1の辺に直交する第2の辺に平行な方向である。z軸は、基板の厚み方向である。なお、本明細書において、基板の「厚み方向」とは、基板の主面に垂直な方向のことをいう。厚み方向は、半導体層の積層方向と同じであり、「縦方向」とも記載される。また、基板の主面に平行な方向を「横方向」と記載する場合がある。
【0036】
また、基板に対してゲート電極およびソース電極が設けられた側(z軸の正側)を「上方」または「上側」とみなし、基板に対してドレイン電極が設けられた側(z軸の負側)を「下方」または「下側」とみなす。
【0037】
なお、本明細書において、「上方」および「下方」という用語は、絶対的な空間認識における上方向(鉛直上方)および下方向(鉛直下方)を指すものではなく、積層構成における積層順を基に相対的な位置関係により規定される用語として用いる。また、「上方」および「下方」という用語は、2つの構成要素が互いに間隔を空けて配置されて2つの構成要素の間に別の構成要素が存在する場合のみならず、2つの構成要素が互いに密着して配置されて2つの構成要素が接する場合にも適用される。
【0038】
また、本明細書において、「平面視」とは、窒化物半導体デバイスの基板の主面に対して垂直な方向から見たとき、すなわち、基板の主面を正面から見たときのことをいう。
【0039】
また、本明細書において、「第1」、「第2」などの序数詞は、特に断りのない限り、構成要素の数または順序を意味するものではなく、同種の構成要素の混同を避け、区別する目的で用いられている。
【0040】
また、本明細書において、AlGaNとは、三元混晶AlGa1-xN(0<x<1)のことを表す。以下、多元混晶はそれぞれの構成元素記号の配列、例えばAlInN、GaInNなどでもって略記される。例えば、窒化物半導体の一例であるAlGa1-x-yInN(0<x<1、0<y<1、かつ、0<x+y<1)は、AlGaInNと略記される。
【0041】
(実施の形態1)
[概要]
まず、実施の形態1に係る窒化物半導体デバイスの概要について、図1および図2を用いて説明する。
【0042】
図1は、本実施の形態に係る窒化物半導体デバイス1の断面図である。図2は、本実施の形態に係る窒化物半導体デバイス1の平面図である。図1は、図2のI-I線における断面を表している。なお、図1では、トランジスタ部2と終端部3との間を模式的に分離して図示している。
【0043】
図1に示されるように、窒化物半導体デバイス1は、トランジスタ部2と、終端部3と、を備える。具体的には、窒化物半導体デバイス1は、基板10と、ドリフト層12と、第1の下地層14と、第2の下地層16と、ゲート開口部20と、半導体多層膜21と、閾値調整層28と、ソース開口部30と、ソース電極32と、ゲート電極34と、ドレイン電極36と、層間絶縁膜42と、ソース配線44と、を備える。半導体多層膜21は、電子走行層22と、電子供給層24との積層体であり、チャネル領域としての二次元電子ガス(2DEG)26を含む。また、窒化物半導体デバイス1は、終端部3に設けられた溝部40を備える。
【0044】
トランジスタ部2は、FETを含む領域であり、図2に示されるように、窒化物半導体デバイス1の中央を含む領域である。具体的には、トランジスタ部2は、平面視において、第2の下地層16、ゲート開口部20、半導体多層膜21、閾値調整層28、ソース電極32およびゲート電極34が配置された領域である。
【0045】
なお、図2では、トランジスタ部2に配置された各構成要素の図示が省略されている。一例として、平面視形状が一方向に長尺の複数のソース電極32がストライプ状に配置されており、ゲート電極34、閾値調整層28およびゲート開口部20が隣り合うソース電極32間に配置されている。あるいは、平面視形状が六角形の複数のソース電極32が互いに隙間を空けながら平面充填されるように配置されていてもよい。
【0046】
終端部3は、トランジスタ部2以外の領域であり、トランジスタ部2を囲むリング状に設けられている。終端部3には、第2の下地層16、ゲート開口部20、半導体多層膜21、閾値調整層28、ソース電極32およびゲート電極34が配置されていない。なお、ソース電極32と電気的に分離されていれば、第2の下地層16、半導体多層膜21および閾値調整層28が終端部3に配置されていてもよい。この場合においても、溝部40は、少なくともドリフト層12まで達している。
【0047】
本実施の形態では、窒化物半導体デバイス1は、GaNおよびAlGaNなどの窒化物半導体を主成分とする半導体層の積層構造を有するデバイスである。具体的には、窒化物半導体デバイス1は、AlGaN膜とGaN膜とのヘテロ構造を有する。
【0048】
AlGaN膜とGaN膜とのヘテロ構造において、(0001)面上での自発分極またはピエゾ分極によって、ヘテロ界面には高濃度の二次元電子ガス26が発生する。このため、アンドープ状態であっても、当該界面には、1×1013cm-2以上のシートキャリア濃度が得られる特徴を有する。
【0049】
本実施の形態に係る窒化物半導体デバイス1は、AlGaN/GaNのヘテロ界面に発生する二次元電子ガス26をチャネルとして利用した電界効果トランジスタ(FET)である。具体的には、窒化物半導体デバイス1は、いわゆる縦型FETである。
【0050】
本実施の形態に係る窒化物半導体デバイス1は、ノーマリオフ型のFETである。窒化物半導体デバイス1では、例えば、ソース電極32が接地され(すなわち、電位が0V)、ドレイン電極36に正の電位が与えられている。ドレイン電極36に与えられる電位は、例えば100V以上1200V以下であるが、これに限らない。窒化物半導体デバイス1がオフ状態である場合には、ゲート電極34には0Vまたは負の電位(例えば-5V)が印加されている。窒化物半導体デバイス1がオン状態である場合には、ゲート電極34には正の電位(例えば+5V)が印加されている。なお、窒化物半導体デバイス1は、ノーマリオン型のFETであってもよい。
【0051】
[構成]
以下では、窒化物半導体デバイス1が備える各構成要素の詳細について説明する。
【0052】
基板10は、窒化物半導体からなる基板であり、図1に示されるように、互いに背向する第1の主面10aおよび第2の主面10bを有する。第1の主面10aは、ドリフト層12が形成される側の主面(上面)である。具体的には、第1の主面10aは、c面に略一致する。第2の主面10bは、ドレイン電極36が形成される側の主面(下面)である。基板10の平面視形状は、例えば矩形であるが、これに限らない。
【0053】
基板10は、例えば、厚さが300μmであり、キャリア濃度が1×1018cm-3であるn型のGaNからなる基板である。なお、n型およびp型は、半導体の導電型を示している。n型は、半導体にn型のドーパントが高濃度に添加された状態、いわゆるヘビードープを表している。また、n型とは、半導体にn型のドーパントが低濃度に添加された状態、いわゆるライトドープを表している。p型およびp型についても同様である。n型、n型およびn型は、第1の導電型の一例である。p型、p型およびp型は、第2の導電型の一例である。第2の導電型は、第1の導電型の逆極性の導電型である。
【0054】
なお、基板10は、窒化物半導体基板でなくてもよい。例えば、基板10は、シリコン(Si)基板、炭化シリコン(SiC)基板、または、酸化亜鉛(ZnO)基板などであってもよい。
【0055】
ドリフト層12は、基板10の上方に配置された第1の導電型の第1の窒化物半導体層の一例である。ドリフト層12は、例えば、厚さが8μmのn型のGaNからなる膜である。ドリフト層12のドナー濃度は、例えば、1×1015cm-3以上1×1017cm-3以下の範囲であり、一例として1×1016cm-3である。また、ドリフト層12の炭素濃度(C濃度)は、1×1015cm-3以上2×1017cm-3以下の範囲である。
【0056】
ドリフト層12は、例えば、基板10の第1の主面10aに接触して設けられている。ドリフト層12は、例えば、有機金属気相エピタキシャル成長(MOVPE)法などの結晶成長により、基板10の第1の主面10a上に形成される。
【0057】
第1の下地層14は、ドリフト層12の上方に配置された第2の導電型の第2の窒化物半導体層の一例である。第1の下地層14は、例えば、厚さが400nmであり、キャリア濃度が1×1017cm-3であるp型のGaNからなる膜である。第1の下地層14は、ドリフト層12の上面に接触して設けられている。第1の下地層14は、例えば、MOVPE法などの結晶成長により、ドリフト層12上に形成される。なお、第1の下地層14は、成膜したアンドープのGaN膜にマグネシウム(Mg)を注入することで形成されてもよい。アンドープについては後で説明を行う。
【0058】
第1の下地層14は、ソース電極32とドレイン電極36との間のリーク電流を抑制する。例えば、第1の下地層14とドリフト層12とで形成されるpn接合に対して逆方向電圧が印加された場合、具体的には、ソース電極32よりもドレイン電極36が高電位となった場合に、ドリフト層12に空乏層が延びる。これにより、窒化物半導体デバイス1の高耐圧化が可能である。本実施の形態では、オフ状態およびオン状態のいずれにおいても逆導通動作の場合を除いて、ソース電極32よりドレイン電極36が高電位となっている。このため、窒化物半導体デバイス1の高耐圧化が実現される。
【0059】
本実施の形態では、図1に示されるように、第1の下地層14は、ソース電極32と接触している。このため、第1の下地層14は、ソース電極32と同電位に固定されている。
【0060】
第2の下地層16は、第1の下地層14の上方に配置された第3の窒化物半導体層の一例である。第2の下地層16は、第1の下地層14より抵抗が高い高抵抗層である。第2の下地層16は、絶縁性または半絶縁性の窒化物半導体から形成されている。第2の下地層16は、例えば、厚さが200nmのアンドープGaNからなる膜である。第2の下地層16は、第1の下地層14に接触して設けられている。第2の下地層16は、例えば、MOVPE法などの結晶成長により、第1の下地層14上に形成される。
【0061】
なお、ここで“アンドープ”とは、GaNの極性をn型またはp型に変化させるSiまたはMgなどのドーパントがドープされていないことを意味する。本実施の形態では、第2の下地層16には、炭素(C)がドープされている。具体的には、第2の下地層16の炭素濃度は、第1の下地層14の炭素濃度より高い。
【0062】
また、第2の下地層16には、成膜時に混入する珪素(Si)または酸素(O)が含まれる場合がある。この場合に、第2の下地層16の炭素濃度は、珪素濃度(Si濃度)または酸素濃度(O濃度)より高い。例えば、第2の下地層16の炭素濃度は、例えば3×1017cm-3以上であるが、1×1018cm-3以上でもよい。第2の下地層16の珪素濃度または酸素濃度は、例えば、5×1016cm-3以下であるが、2×1016cm-3以下でもよい。
【0063】
なお、第2の下地層16は、炭素以外に、マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)またはホウ素(B)などのイオン注入により形成されてもよい。GaNの高抵抗化を実現できるイオン種であれば、他のイオン種を用いてもよい。
【0064】
ここで、仮に、窒化物半導体デバイス1が第2の下地層16を備えない場合、ソース電極32とドレイン電極36との間には、電子走行層22とp型の第1の下地層14とn型のドリフト層12という寄生npn構造、すなわち、寄生バイポーラトランジスタが存在することになる。このため、窒化物半導体デバイス1がオフ状態である場合において、p型の第1の下地層14に電流が流れた場合に、寄生バイポーラトランジスタがオン状態になり、窒化物半導体デバイス1の耐圧を低下させる恐れがある。この場合、窒化物半導体デバイス1の誤動作が発生しやすい。本実施の形態では、高抵抗の第2の下地層16が設けられていることで、寄生npn構造が形成されることを抑制し、窒化物半導体デバイス1の誤動作を抑制することができる。
【0065】
なお、第2の下地層16の上面には、第1の下地層14からMgなどのp型不純物が拡散するのを抑制するための層が設けられていてもよい。例えば、第2の下地層16上には、厚さが20nmのAlGaN層が設けられていてもよい。
【0066】
ゲート開口部20は、第2の下地層16および第1の下地層14を貫通してドリフト層12に達する第1の開口部の一例である。ゲート開口部20は、第2の下地層16および第1の下地層14の両方を貫通している。ゲート開口部20の底部20aは、ドリフト層12の上面の一部である。図1に示されるように、底部20aは、第1の下地層14の下面より下側に位置している。なお、第1の下地層14の下面は、第1の下地層14とドリフト層12との界面に相当する。底部20aは、例えば、基板10の第1の主面10aに平行である。
【0067】
本実施の形態では、ゲート開口部20は、基板10から遠ざかる程、開口面積が大きくなるように形成されている。具体的には、ゲート開口部20の側壁20bは、斜めに傾斜している。図1に示されるように、ゲート開口部20の断面視形状は、逆台形、より具体的には、逆等脚台形である。
【0068】
底部20aに対する側壁20bの傾斜角は、例えば30°以上45°以下の範囲である。傾斜角が小さい程、側壁20bがc面に近づくので、結晶再成長により側壁20bに沿って形成される電子走行層22などの膜質を高めることができる。一方で、傾斜角が大きい程、ゲート開口部20が大きくなりすぎることが抑制され、窒化物半導体デバイス1の小型化が実現される。
【0069】
ゲート開口部20は、基板10の第1の主面10a上に、ドリフト層12、第1の下地層14および第2の下地層16をこの順で連続的な成膜により形成した後、部分的にドリフト層12を露出させるように、第2の下地層16および第1の下地層14の各々の一部を除去することで形成される。このとき、ドリフト層12の表層部分を所定の厚さ分、除去することで、ゲート開口部20の底部20aは、第1の下地層14の下面よりも下方に形成される。
【0070】
第2の下地層16および第1の下地層14の除去は、レジストの塗布およびパターニング、ならびに、ドライエッチングによって行われる。具体的には、レジストをパターニングした後、ベークすることにより、レジストの端部が斜めに傾斜する。その後にドライエッチングを行うことで、レジストの形状が転写されるようにして側壁20bが斜めになったゲート開口部20が形成される。
【0071】
半導体多層膜21は、ゲート開口部20の内面に沿って一部が配置され、かつ、第2の下地層16の上方に他の一部が配置されている。半導体多層膜21は、電子走行層22と、電子供給層24との積層膜である。
【0072】
電子走行層22は、ゲート開口部20の内面に沿って設けられた第1の再成長層の一例である。具体的には、電子走行層22の一部は、ゲート開口部20の底部20aおよび側壁20bに沿って設けられ、電子走行層22の他の部分は、第2の下地層16の上面上に設けられている。電子走行層22は、例えば、厚さが150nmのアンドープGaNからなる膜である。なお、電子走行層22は、アンドープではなく、Siドープなどにより、n型化されてもよい。
【0073】
電子走行層22は、ゲート開口部20の底部20aおよび側壁20bにおいてドリフト層12に接触している。電子走行層22は、ゲート開口部20の側壁20bにおいて、第1の下地層14および第2の下地層16の各々の端面に接触している。さらに、電子走行層22は、第2の下地層16の上面に接触している。電子走行層22は、ゲート開口部20を形成した後に、結晶の再成長により形成される。
【0074】
電子走行層22は、チャネル領域を有する。具体的には、電子走行層22と電子供給層24との界面の近傍には、二次元電子ガス26が発生する。二次元電子ガス26が電子走行層22のチャネルとして機能する。図1では、二次元電子ガス26が模式的に破線で図示されている。二次元電子ガス26は、電子走行層22と電子供給層24との界面に沿って、すなわち、ゲート開口部20の内面に沿って屈曲している。
【0075】
また、図1には示されていないが、電子走行層22と電子供給層24との間に、厚さが1nm程度のAlN膜が第2の再成長層として設けられていてもよい。AlN膜は、合金散乱を抑制し、チャネルの移動度を向上させることができる。
【0076】
電子供給層24は、ゲート開口部20の内面に沿って設けられた第3の再成長層の一例である。電子走行層22と電子供給層24とは、基板10側からこの順で設けられている。電子供給層24は、電子走行層22の上面に沿った形状で略均一な厚さで形成されている。電子供給層24は、例えば、厚さが50nmのアンドープAlGaNからなる膜である。電子供給層24は、電子走行層22の形成工程に続いて、結晶の再成長により形成される。
【0077】
電子供給層24は、電子走行層22との間でAlGaN/GaNのヘテロ界面を形成している。これにより、電子走行層22内に二次元電子ガス26が発生する。電子供給層24は、電子走行層22に形成されるチャネル領域(すなわち、二次元電子ガス26)への電子の供給を行う。
【0078】
閾値調整層28は、半導体多層膜21の上面に沿って配置された第2の導電型の第4の窒化物半導体層の一例である。具体的には、閾値調整層28は、ゲート電極34と電子供給層24との間に設けられている。閾値調整層28は、電子供給層24の上面に沿った形状で略均一な厚さで形成されている。
【0079】
閾値調整層28は、例えば、厚さが100nmであり、キャリア濃度が1×1017cm-3であるp型のGaNまたはAlGaNからなる窒化物半導体層である。閾値調整層28は、電子供給層24の形成工程から引き続いてMOVPE法による再成長で成膜され、パターニングされることで形成される。
【0080】
閾値調整層28が設けられていることによって、チャネル部分の伝導帯端のポテンシャルが持ち上げられる。このため、窒化物半導体デバイス1の閾値電圧を高くすることができる。したがって、窒化物半導体デバイス1をノーマリオフ型のFETとして実現することができる。つまり、ゲート電極34に対して0Vの電位を印加した場合に、窒化物半導体デバイス1をオフ状態にすることができる。
【0081】
ソース開口部30は、ゲート開口部20から離れた位置において、半導体多層膜21および第2の下地層16を貫通して第1の下地層14に達する第2の開口部の一例である。ソース開口部30は、平面視において、ゲート電極34から離れた位置に配置されている。
【0082】
ソース開口部30の底部30aは、第1の下地層14の上面の一部である。図1に示されるように、底部30aは、第2の下地層16の下面よりも下側に位置している。なお、第2の下地層16の下面は、第2の下地層16と第1の下地層14との界面に相当する。底部30aは、例えば基板10の第1の主面10aに平行である。
【0083】
図1に示されるように、ソース開口部30は、基板10からの距離によらず開口面積が一定になるように形成されている。具体的には、ソース開口部30の側壁30bは、底部30aに対して垂直である。つまり、ソース開口部30の断面視形状は、矩形である。
【0084】
あるいは、ソース開口部30は、ゲート開口部20と同様に、基板10から遠ざかる程、開口面積が大きくなるように形成されていてもよい。具体的には、ソース開口部30の側壁30bは、斜めに傾斜していてもよい。例えば、ソース開口部30の断面形状は、逆台形、より具体的には、逆等脚台形であってもよい。このとき、底部30aに対する側壁30bの傾斜角は、例えば、30°以上60°以下の範囲であってもよい。例えば、ソース開口部30の側壁30bの傾斜角は、ゲート開口部20の側壁20bの傾斜角よりも大きくてもよい。側壁30bが斜めに傾斜していることで、ソース電極32と電子走行層22(二次元電子ガス26)との接触面積が増えるので、オーミック接続が行われやすくなる。なお、二次元電子ガス26は、ソース開口部30の側壁30bに露出し、露出部分でソース電極32に接続されている。
【0085】
ソース開口部30は、例えば、閾値調整層28の形成工程(すなわち、結晶の再成長工程)に続いて、ゲート開口部20とは異なる領域において第1の下地層14を露出させるように、閾値調整層28、電子供給層24、電子走行層22および第2の下地層16をエッチングすることにより形成される。このとき、第1の下地層14の表層部分も除去することにより、ソース開口部30の底部30aが第2の下地層16の下面よりも下方に形成される。ソース開口部30は、例えば、フォトリソグラフィによるパターニング、および、ドライエッチングなどによって所定形状に形成される。
【0086】
ソース電極32は、ゲート電極34と離間して配置されている。本実施の形態では、ソース電極32は、ソース開口部30の内面に沿って設けられている。具体的には、ソース電極32は、電子供給層24、電子走行層22および第1の下地層14の各々に接続されている。ソース電極32は、電子走行層22および電子供給層24の各々に対してオーミック接続されている。ソース電極32は、側壁30bにおいて二次元電子ガス26と直接接触している。これにより、ソース電極32と二次元電子ガス26(チャネル)とのコンタクト抵抗を低減することができる。
【0087】
ソース電極32は、金属などの導電性の材料を用いて形成されている。ソース電極32の材料としては、例えば、Ti/Alなど、熱処理することでn型のGaN層に対してオーミック接続される材料を用いることができる。ソース電極32は、例えば、スパッタまたは蒸着などによって成膜した導電膜をパターニングすることにより形成される。
【0088】
ゲート電極34は、閾値調整層28の上方に配置されている。具体的には、ゲート電極34は、ゲート開口部20を覆うように閾値調整層28の上面に接して設けられている。ゲート電極34は、例えば、閾値調整層28の上面に沿った形状で略均一な膜厚で形成されている。あるいは、ゲート電極34は、閾値調整層28の上面の凹部を埋めるように形成されていてもよい。
【0089】
ゲート電極34は、金属などの導電性の材料を用いて形成されている。例えば、ゲート電極34は、パラジウム(Pd)を用いて形成されている。なお、ゲート電極34の材料としては、p型のGaN層に対してオーミック接続される材料を用いることができ、例えば、ニッケル(Ni)系材料、タングステンシリサイド(WSi)、金(Au)などを用いることができる。ゲート電極34は、閾値調整層28の成膜後、ソース開口部30の形成後、または、ソース電極32の形成後、例えば、スパッタまたは蒸着などによって成膜した導電膜をパターニングすることにより形成される。
【0090】
ドレイン電極36は、基板10の下面側、すなわち、ドリフト層12とは反対側に設けられている。具体的には、ドレイン電極36は、基板10の第2の主面10bに接触して設けられている。ドレイン電極36は、金属などの導電性の材料を用いて形成されている。ドレイン電極36の材料としては、ソース電極32の材料と同様に、例えばTi/Alなど、n型のGaN層に対してオーミック接続される材料を用いることができる。ドレイン電極36は、例えば、スパッタまたは蒸着などによって成膜した導電膜をパターニングすることにより形成される。
【0091】
[特徴的な構成]
続いて、本実施の形態に係る窒化物半導体デバイス1の主な特徴的な構成を説明する。まず、窒化物半導体デバイス1の終端部3の構成について説明する。
【0092】
図1に示されるように、本実施の形態では、終端部3では、第2の下地層16、半導体多層膜21および閾値調整層28は設けられていない。例えば、ソース開口部30の形成と同時に、終端部3における第2の下地層16、半導体多層膜21および閾値調整層28が除去される。終端部3において、第1の下地層14の上面は、ソース開口部30の底部30aと同じ高さに位置している。なお、「同じ高さ」とは、基板10の第1の主面10aからの距離が同じであることを意味する。
【0093】
終端部3には、溝部40が設けられている。溝部40は、トランジスタ部2を区画し分離するためのアイソレーション用のトレンチである。溝部40は、第1の下地層14を貫通してドリフト層12に達している。
【0094】
溝部40は、底部40aと、側壁40bと、を有する。本実施の形態では、溝部40は、トランジスタ部2側にのみ側壁40bを有する段差部である。つまり、溝部40の底部40aは、窒化物半導体デバイス1の端面に繋がっている。溝部40は、図2に示されるように、トランジスタ部2を囲むリング状に設けられている。
【0095】
溝部40の底部40aは、ドリフト層12の上面の一部である。図1に示されるように、底部40aは、第1の下地層14の下面よりも下側に位置している。底部40aは、例えば基板10の第1の主面10aに平行である。
【0096】
図1に示されるように、溝部40は、基板10からの距離によらず開口面積が一定になるように形成されている。具体的には、溝部40の側壁40bは、底部40aに対して垂直である。つまり、溝部40の断面視形状は、矩形である。
【0097】
溝部40の深さは、例えば、1μm以上である。溝部40の深さとは、側壁40bの高さであり、終端部3における第1の下地層14の上面と溝部40の底部40aとの距離(z軸方向の長さ)である。溝部40が深くなることにより、終端部3において窒化物半導体デバイス1の表面(上面)と溝部40の底部40aとの距離が長くなる。これにより、終端部3における電界の集中を緩和することができ、オフ時のリーク電流を低減することができる。
【0098】
なお、溝部40は、基板10に達していてもよい。すなわち、溝部40の底部40aは、基板10の第1の主面10aであってもよい。溝部40の深さを最大限大きくすることにより、リーク電流をさらに低減することができる。
【0099】
溝部40は、層間絶縁膜42を形成した後、ドライエッチングを行うことにより形成される。あるいは、ソース配線44を形成した後、ドライエッチングによって溝部40を形成してもよい。
【0100】
層間絶縁膜42は、ゲート電極34の上方に配置されている。具体的には、層間絶縁膜42は、トランジスタ部2のほぼ全域を覆い、かつ、端部が終端部3に配置されている。層間絶縁膜42には、ソース電極32を露出させるためのコンタクトホール43が設けられている。
【0101】
層間絶縁膜42は、例えば、無機材料を主成分として含む絶縁膜である。具体的には、層間絶縁膜42は、SiN、SiO、HfO、Al、ZrO、AlN、HfONおよびZrONからなる群から選択される1つの単層または多層膜である。
【0102】
このような無機材料を利用することにより、有機材料を使用する場合に比べて、層間絶縁膜42の水分透過率を低減することができる。すなわち、層間絶縁膜42は、水分の進入をより強く抑制することができる。
【0103】
例えば、層間絶縁膜42は、ゲート電極34およびソース電極32を形成した後、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)またはスパッタリングなどによって無機膜を全面に形成した後、所定形状にパターニングすることによって形成される。パターニングによって、コンタクトホール43が形成される。コンタクトホール43の形成と同時に、後工程で溝部40を形成するための終端部分も同時に除去されてもよい。
【0104】
図1に示されるように、層間絶縁膜42を覆うようにソース配線44が設けられている。ソース配線44は、層間絶縁膜42を貫通してソース電極32に達している。具体的には、ソース配線44は、コンタクトホール43を埋めるように設けられており、複数のソース電極32を電気的に接続している。
【0105】
ソース配線44は、金属などの導電性材料を用いて形成されている。例えば、ソース配線44の材料としては、ソース電極32と同じ材料を用いることができる。
【0106】
本実施の形態では、層間絶縁膜42の端部は、平面視において、溝部40の端部よりも内側の範囲で、かつ、ソース電極32のうち最外周に位置する部分よりも外側に位置している。図1に示されるように、層間絶縁膜42の端部と、溝部40の端部(すなわち、側壁40bの上端)との距離をdとする。また、ソース電極32のうち、最も溝部40の端部に近い部分と、溝部40の端部との距離をAとする。この場合において、0≦d<Aが満たされる。
【0107】
0≦dは、層間絶縁膜42は、溝部40には設けられていないことを意味している。具体的には、層間絶縁膜42を形成した後、溝部40が形成されるので、0≦dを容易に満すことができる。例えば、溝部40を形成するためのドライエッチングに使用されるマスクを用いて、層間絶縁膜42の端部を除去することで、d=0を容易に実現することができる。層間絶縁膜42の端部の除去から連続して溝部40を形成することで、溝部40内に層間絶縁膜42が形成されないようにすることができる。
【0108】
溝部40の側壁40bには、n型のドリフト層12とp型の第1の下地層14との界面、すなわち、pn接合界面の端部が露出している。pn接合界面は、溝部40が形成される際に露出する。すなわち、pn接合界面は、層間絶縁膜42を形成した後の工程で露出する。
【0109】
層間絶縁膜42を形成する際のプラズマCVDおよびスパッタリングは、成膜時に下地となる層に対してプロセスダメージを与えやすい。このため、溝部40内に層間絶縁膜42を形成した場合には、プロセスダメージによって側壁40bに露出したpn接合界面が劣化するおそれがある。本実施の形態によれば、層間絶縁膜42を形成した後に、溝部40を形成することができるので、層間絶縁膜42の形成の際のプロセスダメージをなくすことができる。したがって、層間絶縁膜42の形成時のダメージがpn接合界面に入るのを抑制することができる。よって、pn接合界面の劣化が抑制されるので、オフ時のリーク電流が増加するのを抑制することができる。
【0110】
また、d<Aを満たすことによって、すなわち、終端部3の近傍において、ソース電極32が露出しないように層間絶縁膜42が設けられていることによって、ソース電極32を介した短絡またはリーク電流の発生を抑制することができる。dが0に近づくことにより、すなわち、層間絶縁膜42の端部が溝部40の側壁40bに近づくにつれて、保護範囲が広くなるのでトランジスタ部2の保護機能を高めることができる。
【0111】
(実施の形態2)
続いて、実施の形態2について説明する。
【0112】
実施の形態2では、実施の形態1と比較して、表面保護膜を備える点が相違する。以下では、実施の形態1との相違点を中心に説明を行い、共通点の説明を省略または簡略化する。
【0113】
図3は、本実施の形態に係る窒化物半導体デバイス101の断面図である。図3に示されるように、窒化物半導体デバイス101は、図1に示される窒化物半導体デバイス1と比較して、表面保護膜146をさらに備える。
【0114】
表面保護膜146は、ソース配線44の上方に配置されている。具体的には、表面保護膜146は、トランジスタ部2のほぼ全域を覆い、かつ、端部が終端部3に配置されている。表面保護膜146は、ソース配線44の上面と、ソース配線44が設けられていない部分では層間絶縁膜42の上面と、を接触して覆っている。
【0115】
表面保護膜146は、例えば、有機材料を主成分として含む絶縁膜である。例えば、表面保護膜146は、ソース配線44を形成した後、塗布法などによって有機材料を全面に塗布した後、所定形状にパターニングすることによって形成される。パターニングは、例えば、溝部40を形成する前に行われる。表面保護膜146は、例えば、水分透過率が低い材料を用いて形成される。
【0116】
なお、表面保護膜146は、無機材料を主成分として含む絶縁膜であってもよい。例えば、表面保護膜146は、SiN、SiO、HfO、Al、ZrO、AlN、HfONおよびZrONからなる群から選択される1つの単層または多層膜であってもよい。
【0117】
本実施の形態では、表面保護膜146の端部は、平面視において、溝部40の端部よりも内側の範囲で、かつ、ソース電極32のうち最外周に位置する部分よりも外側に位置している。図3に示されるように、表面保護膜146の端部は、平面視において、層間絶縁膜42の端部と一致している。例えば、表面保護膜146と層間絶縁膜42とを一括してエッチングすることにより、端部を一致させることができる。表面保護膜146および層間絶縁膜42の各々の端部を除去した後、溝部40を形成することにより、表面保護膜146および層間絶縁膜42を形成する際のプロセスダメージが側壁40bのpn接合界面に入るのを抑制することができる。これにより、オフ時のリーク電流を抑制することができる。
【0118】
表面保護膜146が設けられていることによって、トランジスタ部2(トランジスタ動作をする部分)への水分の進入を抑制することができる。よって、窒化物半導体デバイス101の信頼性を高めることができる。
【0119】
なお、表面保護膜146の端部は、層間絶縁膜42の端部と一致していなくてもよい。以下では、図4および図5を用いて本実施の形態の変形例について説明する。図4および図5はそれぞれ、本実施の形態の変形例1および2に係る窒化物半導体デバイス102および103の断面図である。
【0120】
図4に示される窒化物半導体デバイス102では、表面保護膜146の端部は、層間絶縁膜42の端部よりも溝部40に近い位置に位置している。すなわち、表面保護膜146の端部は、平面視において、溝部40の端部(側壁40bの上端)と層間絶縁膜42の端部との間に位置している。このような表面保護膜146は、例えば、層間絶縁膜42の端部の除去を行った後、溝部40を形成する前に形成することができる。
【0121】
これにより、層間絶縁膜42の端部を露出させないように表面保護膜146によって覆うことができる。表面保護膜146が覆う領域が大きくなることによって、水分の進入の抑制効果をさらに高めることができる。よって、窒化物半導体デバイス102の信頼性をさらに高めることができる。
【0122】
図5に示される窒化物半導体デバイス103では、表面保護膜146の端部は、層間絶縁膜42の端部よりもソース電極32に近い位置に位置している。すなわち、表面保護膜146の端部は、平面視において、層間絶縁膜42の端部とソース電極32のうち最外周に位置する部分との間に位置している。このような表面保護膜146は、例えば、層間絶縁膜42の端部の除去を行った後、溝部40を形成する前に形成することができる。あるいは、表面保護膜146は、層間絶縁膜42の端部の除去を行う前に形成されてもよい。
【0123】
(実施の形態3)
続いて、実施の形態3について説明する。
【0124】
実施の形態3では、実施の形態2と比較して、溝部の形状が相違する。以下では、実施の形態2との相違点を中心に説明を行い、共通点の説明を省略または簡略化する。
【0125】
図6は、本実施の形態に係る窒化物半導体デバイス201の断面図である。図6に示されるように、窒化物半導体デバイス201は、図3に示される窒化物半導体デバイス101と比較して、溝部40の代わりに溝部240を備える。
【0126】
溝部240は、傾斜した側壁240bを有する。側壁240bと第1の下地層14の上面とがなす角度θは、90度未満である。傾斜した側壁240bは、ドライエッチングに使用するマスクとして、端部が斜めに傾斜したマスクを利用することにより、形成することができる。例えば、レジストをパターニングした後、ベークすることにより、レジストの端部が斜めに傾斜する。その後に、レジストをマスクとしてドライエッチングを行うことで、レジストの形状が転写されるようにして側壁240bが斜めになった溝部240が形成される。
【0127】
なお、図6に示される例では、溝部240は、底部を有さず、第1の下地層14の端部を斜めに切り落とした形状を有するが、これに限定されない。溝部240は、例えば、基板10の第1の主面10aに平行な底部を有してもよい。
【0128】
このように、溝部240の側壁240bが斜めに傾斜していることにより、終端部3における電界の集中を緩和することができる。よって、オフ時のリーク電流を低減することができる。
【0129】
なお、本実施の形態では、実施の形態2に係る窒化物半導体デバイス101が溝部240を備える構成を説明したが、側壁240bが傾斜した溝部240は、他の実施の形態または変形例に係る窒化物半導体デバイスに備えられていてもよい。具体的には、窒化物半導体デバイス1または102または103が溝部240を備えてもよい。
【0130】
(実施の形態4)
続いて、実施の形態4について説明する。
【0131】
実施の形態4では、実施の形態2と比較して、層間絶縁膜および表面保護膜の各々の端部の位置が相違する。以下では、実施の形態2との相違点を中心に説明を行い、共通点の説明を省略または簡略化する。
【0132】
図7は、本実施の形態に係る窒化物半導体デバイス301の断面図である。図7に示されるように、窒化物半導体デバイス301では、層間絶縁膜42の端部と表面保護膜146の端部とが、平面視において、溝部40の端部(側壁40bの上端)に一致している。すなわち、層間絶縁膜42の端部と溝部40の端部との距離dが0である。この構成は、例えば、表面保護膜146および層間絶縁膜42をこの順でエッチングすることにより端部を除去し、同じマスクを利用して連続的に第1の下地層14とドリフト層12の一部とを除去することによって形成される。つまり、エッチングのマスク交換が不要で簡単なプロセスで製造することができる。
【0133】
なお、層間絶縁膜42の端部と、表面保護膜146の端部と、溝部40の端部との位置関係は、図7に示した例には限定されず、他の実施の形態および変形例で示した位置関係であってもよい。
【0134】
また、本実施の形態に係る窒化物半導体デバイス301では、溝部40の代わりに、実施の形態3に係る溝部240が設けられていてもよい。
【0135】
(実施の形態5)
続いて、実施の形態5について説明する。
【0136】
実施の形態5では、実施の形態4と比較して、高抵抗層を備える点が相違する。以下では、実施の形態4との相違点を中心に説明を行い、共通点の説明を省略または簡略化する。
【0137】
図8は、本実施の形態に係る窒化物半導体デバイス401の断面図である。図8に示されるように、窒化物半導体デバイス401は、図7に示される窒化物半導体デバイス301と比較して、高抵抗層418をさらに備える。
【0138】
高抵抗層418は、ドリフト層12と第1の下地層14との間に各々に配置されている。高抵抗層418は、ドリフト層12よりも抵抗が高い層である。例えば、高抵抗層418は、ドリフト層12よりも第1の導電型の不純物濃度が低い層である。高抵抗層418は、例えば絶縁性または半絶縁性の窒化物半導体から形成されている。高抵抗層418の不純物濃度(ドナー濃度)は、例えば、1×1016cm-3以下である。高抵抗層418は、例えば厚さが200nmのアンドープGaNからなる膜である。
【0139】
高抵抗層418には、炭素(C)または鉄(Fe)が含まれている。高抵抗層418の炭素濃度または鉄濃度は、例えば、2×1016cm-3以上、1×1020cm-3以下の範囲であり、一例として1×1018cm-3である。なお、GaNの高抵抗化を実現できる元素であれば、他の元素を用いてもよい。
【0140】
本実施の形態では、図8に示されるように、溝部40は、高抵抗層418を貫通している。すなわち、実施の形態1と同様に、溝部40の底部40aは、ドリフト層12に位置している。
【0141】
なお、溝部40の底部40aは、高抵抗層418の上面の一部であってもよい。すなわち、溝部40は、高抵抗層418を貫通していなくてもよい。これにより、溝部40の近傍で、高抵抗層418の横方向に空乏層が延びやすくなり、電界集中の緩和が可能になる。よって、窒化物半導体デバイス401のオフ特性を改善することができる。
【0142】
以上のように、本実施の形態に係る窒化物半導体デバイス401では、高抵抗層418が設けられていることによって、トランジスタ部2の逆導通動作時に、第1の下地層14とドリフト層12とのpn接合に電流が流れにくくすることができる。これにより、逆導通劣化が抑制されるので、窒化物半導体デバイス401のオフ特性の劣化を抑制することができる。
【0143】
なお、本実施の形態では、実施の形態4に係る窒化物半導体デバイス301が高抵抗層418を備える構成を説明したが、高抵抗層418は、他の実施の形態または変形例に係る窒化物半導体デバイスに備えられていてもよい。すなわち、窒化物半導体デバイス1、101~103または201が高抵抗層418を備えてもよい。
【0144】
また、本実施の形態に係る窒化物半導体デバイス401では、溝部40の代わりに、実施の形態3に係る溝部240が設けられていてもよい。
【0145】
(実施の形態6)
続いて、実施の形態6について説明する。
【0146】
実施の形態6では、実施の形態4と比較して、半導体多層膜の配置が主に相違する。以下では、実施の形態4との相違点を中心に説明を行い、共通点の説明を省略または簡略化する。
【0147】
図9は、本実施の形態に係る窒化物半導体デバイス501の断面図である。図9に示されるように、窒化物半導体デバイス501は、図7に示される窒化物半導体デバイス301と比較して、ゲート開口部20、半導体多層膜21および閾値調整層28の代わりに、ゲート開口部520、半導体多層膜521およびゲート絶縁膜528を備える点が相違する。
【0148】
半導体多層膜521は、電子走行層522および電子供給層524を備える。
【0149】
電子走行層522は、第1の下地層14の上方に配置された第5の窒化物半導体層の一例である。電子走行層522は、例えば、厚さが150nmのアンドープGaNからなる膜である。なお、電子走行層522は、アンドープではなく、Siドープなどにより、n型化されてもよい。電子走行層522は、第2の下地層16と同じ機能を有する。
【0150】
電子供給層524は、電子走行層522の上方に配置された第6の窒化物半導体層の一例である。電子供給層524は、例えば、厚さが50nmのアンドープAlGaNからなる膜である。電子供給層524は、電子走行層522の形成工程に続いて、結晶の成長により形成される。
【0151】
電子供給層524は、電子走行層522との間でAlGaN/GaNのヘテロ界面を形成している。これにより、電子走行層522内に二次元電子ガス(図示せず)が発生する。電子供給層524は、電子走行層522に形成される二次元電子ガスへの電子の供給を行う。
【0152】
本実施の形態では、ゲート開口部520は、電子供給層524、電子走行層522および第1の下地層14を貫通してドリフト層12に達する。ゲート開口部520の底部520aは、ドリフト層12の上面の一部である。図9に示されるように、底部520aは、第1の下地層14の下面より下側に位置している。なお、第1の下地層14の下面は、第1の下地層14とドリフト層12との界面に相当する。底部520aは、例えば、基板10の第1の主面10aに平行である。
【0153】
図9に示されるように、ゲート開口部520は、基板10からの距離によらず開口面積が一定になるように形成されている。具体的には、ゲート開口部520の側壁520bは、底部520aに対して垂直である。つまり、ゲート開口部520の断面視形状は、矩形である。
【0154】
あるいは、ゲート開口部520は、実施の形態1のゲート開口部20と同様に、基板10から遠ざかる程、開口面積が大きくなるように形成されていてもよい。具体的には、ゲート開口部520の側壁520bは、斜めに傾斜していてもよい。例えば、ゲート開口部520の断面形状は、逆台形、より具体的には、逆等脚台形であってもよい。
【0155】
ゲート開口部520は、基板10の第1の主面10a上に、ドリフト層12、第1の下地層14、電子走行層522および電子供給層524をこの順で連続的な成膜により形成した後、部分的にドリフト層12を露出させるように、電子供給層524、電子走行層522および第1の下地層14の各々の一部を除去することで形成される。このとき、ドリフト層12の表層部分を所定の厚さ分、除去することで、ゲート開口部520の底部520aは、第1の下地層14の下面よりも下方に形成される。
【0156】
ゲート絶縁膜528は、例えば、SiO、SiN、Alなどの酸化膜である。本実施の形態に係る窒化物半導体デバイス501では、ゲート絶縁膜528およびゲート電極34がこの順で、ゲート開口部520の内面に沿って設けられている。具体的には、ゲート絶縁膜528の一部は、ゲート開口部520の底部520aおよび側壁520bに沿って設けられ、ゲート絶縁膜528の他の部分は、電子供給層524の上面上に設けられている。ゲート絶縁膜528は、ゲート開口部520の側壁520bにおいて、第1の下地層14、電子走行層522および電子供給層524の各々の端面に接触している。
【0157】
ゲート電極34に所定の電圧が印加された場合、p型の第1の下地層14の、ゲート絶縁膜528に接する端面の近傍には、n型に反転した反転領域が形成される。当該反転領域がチャネルとして機能することにより、電子走行層522とドリフト層12とが導通するので、ソース電極32とドレイン電極36との間で電流が流れる。このように、本実施の形態に係る窒化物半導体デバイス501では、いわゆるMOSFETと同等の動作が可能になる。
【0158】
本実施の形態においても、終端部3では、層間絶縁膜42の端部が、平面視において、溝部40の端部に一致している。したがって、他の実施の形態と同様に、オフ時のリーク電流を低減することができる。
【0159】
なお、他の実施の形態と同様に、層間絶縁膜42の端部は、平面視において、溝部40の端部よりも内側の範囲で、かつ、ソース電極32のうち最外周に位置する部分よりも外側に位置していてもよい。また、表面保護膜146の端部は、実施の形態2およびその変形例のように、層間絶縁膜42の端部と一致していなくてもよい。
【0160】
(他の実施の形態)
以上、1つまたは複数の態様に係る窒化物半導体デバイスについて、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、これらの実施の形態に限定されるものではない。本開示の主旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したもの、および、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本開示の範囲内に含まれる。
【0161】
例えば、ソース開口部30が設けられていなくてもよい。この場合、ソース電極32は、半導体多層膜21の上面において、閾値調整層28から離れた位置に設けられている。
【0162】
また、例えば、ドリフト層12は、基板10側から第1の下地層14側にかけて徐々に不純物濃度(ドナー濃度)を低減させていくグレーデッド構造にしてもよい。なお、ドナー濃度の制御は、ドナーとなるSiで制御してもよいし、Siを補償するようなアクセプターとなる炭素で制御してもよい。あるいは、ドリフト層12は、不純物濃度が異なる複数の窒化物半導体層の積層構造を有してもよい。
【0163】
また、例えば、終端部3は、窒化物半導体デバイス1の端面を含んでいなくてもよい。終端部3は、トランジスタ部2を他の装置から分離するための部分である。トランジスタ部2の終端部3を挟んだ隣の領域に他の素子が配置されていてもよい。例えば、他の素子は、ドリフト層12と第1の下地層14とのpn接合を利用したpnダイオードである。窒化物半導体デバイス1は、トランジスタ部2と、終端部3と、pnダイオードと、を備えてもよい。
【0164】
また、第1の導電型がp型、p型、p型であり、第2の導電型がn型、n型、n型であってもよい。
【0165】
また、上記の各実施の形態は、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0166】
本開示は、オフ特性が改善された窒化物半導体デバイスとして利用でき、例えばテレビなどの民生機器の電源回路などで用いられるパワートランジスタなどのパワーデバイスなどに利用することができる。
【符号の説明】
【0167】
1、101、102、103、201、301、401、501 窒化物半導体デバイス
2 トランジスタ部
3 終端部
10 基板
10a 第1の主面
10b 第2の主面
12 ドリフト層
14 第1の下地層
16 第2の下地層
20、520 ゲート開口部
20a、30a、40a、520a 底部
20b、30b、40b、240b、520b 側壁
21、521 半導体多層膜
22、522 電子走行層
24、524 電子供給層
26 二次元電子ガス
28 閾値調整層
30 ソース開口部
32 ソース電極
34 ゲート電極
36 ドレイン電極
40、240 溝部
42 層間絶縁膜
43 コンタクトホール
44 ソース配線
146 表面保護膜
418 高抵抗層
528 ゲート絶縁膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9