(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023133814
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】リスクアセスメント装置およびリスクアセスメント方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/0635 20230101AFI20230920BHJP
G06Q 10/20 20230101ALI20230920BHJP
【FI】
G06Q10/06 326
G06Q10/00 300
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022039017
(22)【出願日】2022-03-14
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000153443
【氏名又は名称】株式会社 日立産業制御ソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 栄人
(72)【発明者】
【氏名】千葉 正敬
(72)【発明者】
【氏名】笹ノ間 啓
(72)【発明者】
【氏名】池田 慎太郎
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA06
5L049CC15
(57)【要約】
【課題】設備や機器が属する上位構成を含めたリスク評価を可能とする。
【解決手段】リスクアセスメント装置100は、設備の属性ごとに設定された故障リスクの評価点を基に当該設備の故障リスクの評価点を算出するとともに、当該算出した評価点を基に当該設備を構成要素として含んで構成される上位構成の故障リスクの評価点を算出し、設備の評価点を基に当該設備の推奨保全レベルを算出する評価部112と、設備の故障リスクの評価点および推奨保全レベルのうち少なくとも1つと、当該設備の上位構成とを含む画面を、表示装置に出力する表示制御部113とを備える。構成は、例えば製造に係る構成であり、設備の上位構成として、工程およびラインのうち少なくとも1つを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設備の属性ごとに設定された故障リスクの評価点を基に当該設備の故障リスクの評価点を算出するとともに、当該算出した評価点を基に当該設備を構成要素として含んで構成される上位構成の故障リスクの評価点を算出し、前記設備の評価点を基に当該設備の推奨保全レベルを算出する評価部と、
前記設備の故障リスクの評価点および前記推奨保全レベルのうち少なくとも1つと、当該設備の上位構成とを含む画面を、表示装置に出力する表示制御部とを備える
リスクアセスメント装置。
【請求項2】
前記構成は、製造に係る構成であり、
前記設備の上位構成として、工程およびラインのうち少なくとも1つを含む
請求項1に記載のリスクアセスメント装置。
【請求項3】
前記構成は、電源に係る構成であり、
前記設備の上位構成として、配電盤および電力系統のうち少なくとも1つを含む
請求項1に記載のリスクアセスメント装置。
【請求項4】
前記構成は、位置に係る構成であり、
前記設備の上位構成として、フロアおよび建屋のうち少なくとも1つを含む
請求項1に記載のリスクアセスメント装置。
【請求項5】
前記画面は、前記設備の評価点とともに、当該設備が属する上位構成の評価点を含む
請求項1に記載のリスクアセスメント装置。
【請求項6】
前記設備の属性は、
取扱物質、設備規模、腐食情報、故障回数、点検コスト、補修コスト、操作温度、操作時の検査状況、使用中の検査状況、年間腐食率、使用環境と材質関係、金属疲労の発生状況、生産減および能力低下、外部スキン温度、設置場所湿潤状況、断熱材の性状、外装板の外観、物質性質、圧力、生産減および機能低下、プラントの位置および役割、生産への影響、部品調達時間、製品への影響度、故障頻度、前後機器の重要度、公害または災害危険度のなかの少なくとも1つを含む
請求項1に記載のリスクアセスメント装置。
【請求項7】
リスクアセスメント装置が、
設備の属性ごとに設定された故障リスクの評価点を基に当該設備の故障リスクの評価点を算出するとともに、当該算出した評価点を基に当該設備を構成要素として含んで構成される上位構成の故障リスクの評価点を算出し、前記設備の評価点を基に当該設備の推奨保全レベルを算出するステップと、
前記設備の故障リスクの評価点および前記推奨保全レベルのうち少なくとも1つと、当該設備の上位構成とを含む画面を、表示装置に出力するステップとを実行する
リスクアセスメント方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設備や機器の故障リスクを評価するリスクアセスメント装置およびリスクアセスメント方法に関する。
【背景技術】
【0002】
設備や機器の故障による損失を最小限にとどめるために、故障を排除して設備や機器を正常な状態に保つ保全が行われる。保全には、保全を行うタイミングによって事後保全と予防保全とに大別できる。事後保全では、設備が故障して初めて修理を行う。故障前に保全を行う予防保全は、時間を基準とする時間基準保全と、状態を基準とする状態基準保全とに分類される。時間基準保全では、定期的に保全を行う。状態基準保全では、設備の状態を監視して、劣化の状態に応じて保全を行う。
【0003】
かつての保全では、設備(機器)が故障してからの事後保全が行われていたが、近年では予防保全が主流になっている。予防保全により故障が発生するリスクは削減できるが、デメリットも存在する。時間基準保全は、決まった周期で保全を行うが、利用可能な部品を交換するなどのデメリットがある。状態基準保全では、適切なタイミングで部品を交換するので部品コストや交換コストは最適化できるが、状態を監視するためには設備投資などの費用が必要となる。このため、設備のリスクを評価し、リスクの高低に基づいて保全を行うことが求められる。
【0004】
特許文献1に記載の設備診断システムは、監視対象となるプラントに属する各設備の劣化状態を示す情報が収集され、格納された設備データベース、この設備データベースに格納された各設備の劣化状態を示す情報に基づき、上記各設備の故障リスクを含むリスク情報を算出するリスク情報算出部、上記プラントに属する各設備について、上記リスク情報算出部により算出されたリスク情報を画面に表示するリスク情報表示部を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の設備診断システムによれば、個々の設備の劣化状態に基づく故障リスクを把握することができる。しかしながら、リスクを評価する基準は、劣化状態に限らず、設備停止の影響度、修理費用など様々な要因を考慮する必要がある。また、設備単体のリスクに限らず、設備が構成し、故障時に影響を与える製造の工程やラインなどのリスクの評価が求められる。
本発明は、このような背景を鑑みてなされたものであり、設備や機器が属する上位構成を含めたリスク評価を可能とするリスクアセスメント装置およびリスクアセスメント方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するため、本発明に係るリスクアセスメント装置は、設備の属性ごとに設定された故障リスクの評価点を基に当該設備の故障リスクの評価点を算出するとともに、当該算出した評価点を基に当該設備を構成要素として含んで構成される上位構成の故障リスクの評価点を算出し、前記設備の評価点を基に当該設備の推奨保全レベルを算出する評価部と、前記設備の故障リスクの評価点および前記推奨保全レベルのうち少なくとも1つと、当該設備の上位構成とを含む画面を、表示装置に出力する表示制御部とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、設備や機器が属する上位構成を含めたリスク評価を可能とするリスクアセスメント装置およびリスクアセスメント方法を提供することができる。上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係るリスクアセスメント装置の機能ブロック図である。
【
図2】本実施形態に係る設備データベースのデータ構成図である。
【
図3】本実施形態に係る評価点設定データベースのデータ構成図である。
【
図4】本実施形態に係る階層設定データベースのデータ構成図である。
【
図5】本実施形態に係る保全レベル設定データベースのデータ構成図である。
【
図6】本実施形態に係る評価結果データベースのデータ構成図である。
【
図7】本実施形態に係るリスク評価処理のフローチャートである。
【
図8】本実施形態に係る設備詳細情報表示画面の画面構成図である。
【
図9】本実施形態に係る設備詳細情報表示画面の画面構成図である。
【
図10】本実施形態に係る設備詳細情報表示画面の画面構成図である。
【
図11】本実施形態に係る設備検索画面の画面構成図である。
【
図12】本実施形態に係る設備検索画面の画面構成図である。
【
図13】本実施形態に係る設備一覧画面の画面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
≪リスクアセスメント装置の概要≫
以下に本発明を実施するための形態(実施形態)におけるリスクアセスメント装置およびリスクアセスメント方法について説明する。リスクアセスメント装置は、設備(機器)の故障に係る属性を基に、故障リスクを評価し、評価結果(評価点)に応じて保全手法を推奨する。故障に係る属性の例として、取扱物質や過去における故障回数、点検コストなどがある。保全手法としては、事後保全、時間基準保全、および状態基準保全がある。
【0011】
リスクアセスメント装置は、設備自体の評価点を算出するとともに、設備が構成する工程やラインについても評価点を算出する。すなわち、当該設備を構成要素として含んで構成される工程やラインなどの上位構成についても評価点を算出する。リスクアセスメント装置が出力する評価点や推奨保全手法を参照することで設備の管理者は、適切な保全計画を策定することができ、設備や機器の信頼性向上、および保全費の最適化を行うことができるようになる。
【0012】
≪リスクアセスメント装置の構成≫
図1は、本実施形態に係るリスクアセスメント装置100の機能ブロック図である。リスクアセスメント装置100はコンピュータであり、制御部110、記憶部120、および入出力部180を備える。入出力部180には、ディスプレイやキーボード、マウスなどのユーザインターフェイス機器が接続される。入出力部180が通信デバイスを備え、他の装置とのデータ送受信が可能であってもよい。また入出力部180にメディアドライブが接続され、記録媒体を用いたデータのやり取りが可能であってもよい。
【0013】
≪リスクアセスメント装置:記憶部≫
記憶部120は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)、SSD(Solid State Drive)などの記憶機器を含んで構成される。記憶部120には、設備データベース130、評価点設定データベース140、階層設定データベース150、保全レベル設定データベース160、評価結果データベース170、およびプログラム128が記憶される。プログラム128は、リスク評価処理(後記する
図7参照)の手順の記述を含む。
【0014】
≪リスクアセスメント装置:記憶部:設備データベース≫
図2は、本実施形態に係る設備データベース130のデータ構成図である。設備データベース130は表形式のデータである。設備データベース130の1つの行(レコード)は、1つの設備または機器を示し、設備番号、設備名称、取扱物質、設備規模、腐食情報、故障回数、点検コスト、補修コストなどの列(属性)を含む。
【0015】
設備番号は、設備の識別番号である。設備名称は、設備の名称である。取扱物質は、設備が扱う(処理する)物質の性質であり、「考慮不要」、「取扱注意」、「危険物質」の何れかである。設備規模は、設備の規模であり、「小規模」、「中規模」、「大規模」の何れかである。腐食情報は、腐食による設備への影響の度合いであり、「影響小」、「影響中」、「影響大」の何れかである。
【0016】
故障回数は、直近1年における設備の故障回数である。点検コストは、設備の点検に掛かるコストであって、単位は、例えば千円である。補修コストは、設備の補修に掛かるコストであって、単位は、例えば千円である。
設備データベース130の属性は、
図2に示した取扱物質や設備規模などに限定されず、他の属性を含んでもよいし、他の属性と入れ替わってもよい。また設備データベース130は、随時更新される。例えば設備データベース130は、定期的に更新されたり、点検や補修のたびに更新されたりする。
【0017】
≪リスクアセスメント装置:記憶部:評価点設定データベース≫
図3は、本実施形態に係る評価点設定データベース140のデータ構成図である。評価点設定データベース140は表形式のデータである。評価点設定データベース140の1つの行(レコード)は、設備データベース130(
図2参照)に含まれる、設備番号および設備名称を除く属性(項目)についての評価点を示す。換言すれば、設備に係る属性の評価点の和が、設備の評価点となる。評価点設定データベース140のレコードは、項目名、パターン、および重みの列(属性)を含む。
【0018】
項目名は、設備データベース130の属性(項目)の名称である。パターンは、評価点の算出のパターンであり、「値別設定」、「係数設定」、「範囲別設定」の何れかである。
値別設定は、設備データベース130の属性の値により、属性の評価点が算出されるパターンであって、重みの内容に従って評価点が決まる。係数設定は、設備データベース130の属性の数値に、重みの数値を乗じて属性の評価点が算出されるパターンである。範囲別設定は、設備データベース130の属性の値を含む数値の範囲により、属性の評価点が算出されるパターンであって、重みの内容に従って評価点が決まる。以下、評価点算出の例を示す。
【0019】
「取扱物質」の評価点の算出パターンは「値別設定」であって、「考慮不要」なら1点、「取扱注意」なら2点、「危険物質」なら3点である。「故障回数」の評価点の算出パターンは「係数設定」であって、直近1年における設備の故障回数に2を乗じた値が評価点である。「点検コスト」の評価点の算出パターンは「範囲別設定」であり、1000未満なら1点、1000以上5000未満なら2点、5000以上10000未満なら3点、10000以上なら5点である。評価点の点数が少ない方がリスクは低く好ましい。
【0020】
図2記載の1行目の設備番号「A001」で設備名称「設備A」の設備の評価点については、「取扱物質」が「取扱注意」で2点、「設備規模」が「大規模」で5点、「腐食情報」が「影響小」で1点、「故障回数」回数が2で4点、「点検コスト」が120で1点、「補修コスト」が500で1点であり、合計14点が評価点となる。
【0021】
≪リスクアセスメント装置:記憶部:階層設定データベース≫
図4は、本実施形態に係る階層設定データベース150のデータ構成図である。階層設定データベース150は表形式のデータである。階層設定データベース150の1つの行(レコード)は、設備や工程、ラインなどの上下関係を示し、下位の列(属性)にある設備や工程が、上位の列にある工程やラインの下位であることを示す。例えば「設備AAA」や「設備AAB」は、「工程AA」を構成しており(構成要素であり)、下位にあることを示す。換言すると、「工程AA」は「設備AAA」や「設備AAB」を含んで構成される上位構成であり、「設備AAA」や「設備AAB」は「工程AA」の下位構成である。
【0022】
図4に示す階層設定データベース150は、設備、工程、ラインという3階層の上下関係を含むが、他の階層(上下関係)を含んでもよい。本実施形態では、設備、工程、ラインというラインの上下関係の他に、設備、配電盤、電力系統という電力系統の上下関係、および、設備、フロア、建屋という建屋の上下関係を含むものとする。設備の上位であり、設備を構成要素として含む工程やライン、配電盤、電力系統、フロア、建屋などを上位構成とも記す。また、ライン、電力系統、および建屋は、それぞれ工程、配電盤、およびフロアの上位構成である。
【0023】
以上に説明したように、リスクアセスメント装置100に係る構成には、製造に係る構成があり、設備の上位構成として、工程およびラインのうち少なくとも1つを含む。またリスクアセスメント装置100に係る構成には、電源に係る構成があり、設備の上位構成として、配電盤および電力系統のうち少なくとも1つを含む。他にリスクアセスメント装置100に係る構成には、位置に係る構成があり、設備の上位構成として、フロアおよび建屋のうち少なくとも1つを含む。
【0024】
≪リスクアセスメント装置:記憶部:保全レベル設定データベース≫
図5は、本実施形態に係る保全レベル設定データベース160のデータ構成図である。保全レベル設定データベース160は表形式のデータであり、設備の評価点と推奨保全レベルとの関連を示す。詳しくは、設備の評価点が10点未満ならば当該設備の推奨保全レベルは「事後保全」であり、10点以上20点未満ならば「時間基準保全」、20点以上ならば「状態基準保全」である。つまりは「事後保全」ならば不具合が生じた後に設備を保全することが推奨され、「時間基準保全」ならば定期的に設備を保全することが推奨され、「状態基準保全」ならば設備の状態を見ながら設備を保全することが推奨され、とい言った趣旨である。
【0025】
≪リスクアセスメント装置:記憶部:評価結果データベース≫
図6は、本実施形態に係る評価結果データベース170のデータ構成図である。評価結果データベース170は表形式のデータであり、設備や工程、ライン、電力系統などの評価点を示す。
【0026】
≪リスクアセスメント装置:制御部≫
図1に戻って制御部110の説明を続ける。制御部110は、CPU(Central Processing Unit)を含んで構成され、設備情報取得部111、評価部112、および表示制御部113が備わる。
【0027】
設備情報取得部111は、設備に係る情報を取得して設備データベース130や階層設定データベース150に格納する。例えば設備情報取得部111は、設備の管理者が入力した設備の名称や取扱物質を、設備データベース130の設備名称や取扱物質の属性に格納する。また設備情報取得部111は、設備の管理者が入力した設備や工程、ライン、電力系統、建屋などの上下関係を階層設定データベース150に格納する。他に設備情報取得部111は、評価点や推奨保全レベルに係る設定を取得して、評価点設定データベース140や保全レベル設定データベース160に格納する。設備情報取得部111は、管理者の入力限らず、他の装置から情報を取得してデータベースに格納してもよい。例えば設備情報取得部111は、設備の保守状況を管理する装置から、設備の故障発生や補修コストに係る情報を取得して、設備データベース130を更新してもよい。
【0028】
評価部112は、設備データベース130を基に設備の故障リスクの評価点を算出して評価結果データベース170に格納する。設備の評価点の算出手法は、
図3において説明したとおりである。また評価部112は、設備の評価点を基に保全レベル設定データベース160を参照して、設備の推奨保全レベルを決定する。
【0029】
また評価部112は、工程やラインなどの上位構成の評価点を、当該上位構成に属する設備の評価点を基に算出して評価結果データベース170に格納する。例えば評価部112は、上位構成に属する設備の評価点の合計値、平均値、または最大値を当該上位構成の評価として算出する。
【0030】
以上に説明したように、リスクアセスメント装置100は、設備の属性ごとに設定された故障リスクの評価点を基に当該設備の故障リスクの評価点を算出するとともに、当該算出した評価点を基に当該設備を構成要素として含んで構成される上位構成の故障リスクの評価点を算出し、前記設備の評価点を基に当該設備の推奨保全レベルを算出する評価部112を備える。
【0031】
表示制御部113は、設備データベース130や評価結果データベース170にある設備の属性や評価点、設備が属する上位構成などを含む画面(後記する
図8~
図13参照)を、入出力部180に接続されたディスプレイに表示する。
以上に説明したように、リスクアセスメント装置100は、設備の故障リスクの評価点および推奨保全レベルのうち少なくとも1つと、当該設備の上位構成とを含む画面を、表示装置に出力する表示制御部113とを備える。
【0032】
≪リスク評価処理≫
図7は、本実施形態に係るリスク評価処理のフローチャートである。リスク評価処理は、ステップS11~S13の評価点算出処理と、ステップS14~S17の表示処理とを含む。
図7では、評価点算出処理と表示処理とが連続して実行されるが、それぞれ単独に実行されてもよい。評価点算出処理は所定のタイミング、例えば定期的または設備データベース130が更新された時点で実行されてもよい。
【0033】
ステップS11において評価部112は、階層設定データベース150を参照して、階層を特定する。詳しくは、評価部112は階層設定データベース150にある上下関係から、設備、工程、ライン、配電盤、電力系統、フロア、建屋などの木構造を特定する。
ステップS12において評価部112は、ステップS11で特定した木構造における下位のノードである評価対象から評価点を算出する。評価対象は、設備、工程、ライン、配電盤、電力系統、フロア、建屋などである。
【0034】
ステップS13において評価部112は、評価対象の評価点を算出して評価結果データベース170に格納する。評価対象が木構造の最下位となる設備である場合の評価点算出手法は、評価点設定データベース140(
図3参照)とともに説明したとおりである。設備以外の評価対象(上位構成)の評価点は、当該評価対象の直下となる評価対象の評価点の合計値、平均値、または最大値である。例えば仮に、
図4に記載の6つの上下関係が全ての上位関係であるとすると、「工程AA」の評価点は「設備AAA」と「設備AAB」の評価点の合計値、平均値、または最大値である。また、「ラインA」の評価点は「工程AA」と「工程AB」の評価点の合計値、平均値、または最大値である。
【0035】
ステップS14において表示制御部113は、設備詳細情報表示画面610(後記する
図8参照)を表示する。
ステップS15において表示制御部113は、設備詳細情報表示画面610を含む画面(後記する
図8~
図13参照)に対する操作を取得する。
ステップS16において表示制御部113は、ステップS15で取得した操作が表示終了を指示する操作であれば(ステップS16→YES)リスク評価処理を終え、表示終了を指示する操作でなければ(ステップS16→NO)ステップS17に進む。
ステップS17において表示制御部113は、ステップS15で取得した操作に応じた画面(後記する
図8~
図13参照)を表示する(画面に遷移する)。画面や操作、操作に応じた画面遷移を以下に説明する。
【0036】
≪リスクアセスメント装置:設備詳細情報表示画面≫
図8は、本実施形態に係る設備詳細情報表示画面610の画面構成図である。設備詳細情報表示画面610の左側の領域611には「詳細情報」、「検索」、「設備一覧」のタブがある。設備詳細情報表示画面610では「詳細情報」タブが選択されていて、領域611には、設備と上位構成の木構造(上下関係)を含むナビゲーションウィンドウが表示される。プルダウンリスト613では「ライン」が選択されており、領域611にはラインを最上位とする木構造が表示される。
【0037】
設備詳細情報表示画面610の右側の領域612には、ナビゲーションウィンドウで指定された設備の詳細情報が表示される。
図8では「ラインA」の下位の「工程AA」の下位の「設備AAB」が選択されており、領域612に「設備AAB」の詳細情報が表示されている。
【0038】
詳細情報として、設備番号と、設備名称と、設備情報(「■設備情報」の欄参照)と、項目別評価点(「■項目別評価点」の欄参照)と、評価(「■評価」の欄参照)とが表示されている。設備情報として、設備データベース130にある設備の属性が表示される。項目別評価点として、項目別(設備の属性別)の評価点が表示されている。この項目別の評価点は、評価点設定データベース140(
図3参照)を参照して算出される。
【0039】
評価として、設備の評価点(評価点合計)や推奨保全レベル、設備が属する(設備の上位である)ラインや電力系統、建屋と、そのそれぞれの評価点が表示されている。評価点は、評価結果データベース170(
図6参照)から取得される。推奨保全レベルは、評価点を基に保全レベル設定データベース160(
図5参照)を参照して算出される。設備が属するラインや電力系統、建屋は、階層設定データベース150(
図4参照)を参照して、設備の上位のさらに上位を辿ることで特定される。
【0040】
以上に説明したように、設備詳細情報表示画面610は、設備の評価点とともに、当該設備が属する上位構成の評価点を含む。
【0041】
プルダウンリスト613において「電力系統」が選択されると設備詳細情報表示画面610A(後記する
図9参照)に、「建屋」が選択されると設備詳細情報表示画面610B(後記する
図10参照)に遷移する。また、領域611上部の「検索」タブが選択されると設備検索画面620(
図11参照)に、「設備一覧」タブが選択されると設備一覧画面630(
図13参照)に遷移する。
【0042】
図9は、本実施形態に係る設備詳細情報表示画面610Aの画面構成図である。設備詳細情報表示画面610Aのプルダウンリスト613では「電力系統」が選択されており、領域611Aには電力系統を最上位とする木構造が表示される。
図10は、本実施形態に係る設備詳細情報表示画面610Bの画面構成図である。設備詳細情報表示画面610Bのプルダウンリスト613では「建屋」が選択されており、領域611Bには建屋を最上位とする木構造が表示される。
【0043】
≪リスクアセスメント装置:設備検索画面≫
図11は、本実施形態に係る設備検索画面620の画面構成図である。設備検索画面620の左側の領域621には「詳細情報」、「検索」、「設備一覧」のタブがある。設備検索画面620では「検索」が選択されていて、領域621には、検索条件を指定するナビゲーションウィンドウが表示される。
プルダウンリスト623では「設備」が選択されており、設備検索画面620の右側の領域622には、ナビゲーションウィンドウで指示された検索条件の検索結果である設備の一覧が表示される。
図11では検索条件の指定がなく、検索結果として全ての設備について、設備番号、設備名称、評価点、推奨保全レベルが表示されている。
【0044】
図11に記載の設備検索画面620では、検索条件として設備番号や取扱物質など、設備データベース130にある設備の属性で検索可能であるが、他の属性で検索が可能であってもよい。
図12は、本実施形態に係る設備検索画面620Aの画面構成図である。設備検索画面620Aの左側の領域621Aにある検索条件は、評価点や推奨保全レベルであり、これらの条件で設備が検索可能である。
【0045】
設備検索画面620Aのプルダウンリスト623では「建屋」が選択されており、設備検索画面620Aの右側の領域622には、ナビゲーションウィンドウで指示された検索条件の検索結果である設備を含む建屋の一覧が木構造の形式で表示される。推奨保全レベルが「状態基準」である設備は「設備AAB」および「設備BBB」であり、「設備AAB」または「設備BBB」を含む建屋を最上位とする木構造が表示される。
領域621,621A上部の「詳細情報」タブが選択されると設備詳細情報表示画面610(
図8参照)に、「設備一覧」タブが選択されると設備一覧画面630に遷移する。
【0046】
≪リスクアセスメント装置:設備一覧画面≫
図13は、本実施形態に係る設備一覧画面630の画面構成図である。設備一覧画面630の左側の領域631には「詳細情報」、「検索」、「設備一覧」のタブがある。設備一覧画面630では「設備一覧」が選択されている。設備一覧画面630右側の領域632には、木構造の形式で全ての設備と上位構成(工程、ラインなど)が表示される。
【0047】
≪リスクアセスメント装置の特徴≫
リスクアセスメント装置は、設備の故障に係る属性を基に、故障リスクを評価して評価点を算出し、評価点に応じて保全レベルを推奨する。リスクアセスメント装置100は、設備自体の評価点を算出するとともに、設備が構成する工程やラインなどの上位構成についても評価点を算出する。
【0048】
リスクアセスメント装置100を用いることで設備の管理者は、設備の故障リスクを把握でき、保全レベルを決定の参考とすることができる。また管理者は、算出された評価点や推奨保全レベルを検索条件として設備を検索でき、検索結果の設備の上位構成となる工程やラインを把握できて、工程やラインの重要度も加味しながら設備の保全レベルを決定することができる。延いては、管理者は適切な保全計画を策定することができ、設備や機器の信頼性向上、および保全費の最適化を行うことができるようになる。
【0049】
≪変形例:設備検索画面≫
上記した実施形態における設備検索画面620A(
図12参照)では、評価点や推奨保全レベルを検索条件として、設備を検査しているが、工程やライン、電力系統などの上位構成を検索対象としてもよい。例えば、リスクアセスメント装置100は、評価点を条件に上位構成を検索できるようにしてもよい。
【0050】
≪変形例:設備の属性≫
上記した実施形態における設備の故障リスクに係る属性として、取扱物質や設備規模、故障回数などがある。他の属性として、操作温度、操作時の検査状況、使用中の検査状況、年間腐食率、使用環境と材質関係、金属疲労の発生状況、生産減および能力低下、外部スキン温度、設置場所湿潤状況、断熱材の性状、外装板の外観、物質性質、圧力、生産減および機能低下、プラントの位置および役割、生産への影響、部品調達時間、製品への影響度、故障頻度、前後機器の重要度、公害または災害危険度などがある。
【0051】
≪その他の変形例≫
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、これらの実施形態は、例示に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明はその他の様々な実施形態を取ることが可能であり、さらに、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略や置換等種々の変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、本明細書等に記載された発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0052】
100 リスクアセスメント装置
111 設備情報取得部
112 評価部
113 表示制御部
130 設備データベース
140 評価点設定データベース
150 階層設定データベース
160 保全レベル設定データベース
170 評価結果データベース
610,610A,610B 設備詳細情報表示画面
620,620A 設備検索画面
630 設備一覧画面
【手続補正書】
【提出日】2022-08-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設備を最下位の構成要素として構成の上下関係を示す階層設定データベース、および、前記設備の故障リスクの評価点と当該設備の推奨保全レベルとの関連を示す保全レベル設定データベースを記憶する記憶部と、
前記設備の属性ごとに設定された故障リスクの評価点を基に当該設備の故障リスクの評価点を算出し、
前記階層設定データベースを参照して、前記設備の算出された評価点を基に当該設備を構成要素として含んで構成される上位構成の故障リスクの評価点を算出し、
前記保全レベル設定データベースを参照して、前記設備の算出された評価点を基に当該設備の推奨保全レベルを算出する評価部と、
前記設備の故障リスクの評価点および前記推奨保全レベルのうち少なくとも1つと、複数の前記構成の上下関係における当該設備の上位構成の故障リスクの評価点とを含む画面を、表示装置に出力する表示制御部とを備える
リスクアセスメント装置。
【請求項2】
前記構成は、製造に係る構成であり、
前記設備の上位構成として、工程およびラインのうち少なくとも1つを含む
請求項1に記載のリスクアセスメント装置。
【請求項3】
前記構成は、電源に係る構成であり、
前記設備の上位構成として、配電盤および電力系統のうち少なくとも1つを含む
請求項1に記載のリスクアセスメント装置。
【請求項4】
前記構成は、位置に係る構成であり、
前記設備の上位構成として、フロアおよび建屋のうち少なくとも1つを含む
請求項1に記載のリスクアセスメント装置。
【請求項5】
前記設備の属性は、
取扱物質、設備規模、腐食情報、故障回数、点検コスト、補修コスト、操作温度、操作時の検査状況、使用中の検査状況、年間腐食率、使用環境と材質関係、金属疲労の発生状況、生産減および能力低下、外部スキン温度、設置場所湿潤状況、断熱材の性状、外装板の外観、物質性質、圧力、生産減および機能低下、プラントの位置および役割、生産への影響、部品調達時間、製品への影響度、故障頻度、前後機器の重要度、公害または災害危険度のなかの少なくとも1つを含む
請求項1に記載のリスクアセスメント装置。
【請求項6】
リスクアセスメント装置が、
設備を最下位の構成要素として構成の上下関係を示す階層設定データベース、および、前記設備の故障リスクの評価点と当該設備の推奨保全レベルとの関連を示す保全レベル設定データベースを記憶する記憶部を備え、
前記設備の属性ごとに設定された故障リスクの評価点を基に当該設備の故障リスクの評価点を算出するステップと、
前記階層設定データベースを参照して、前記設備の算出された評価点を基に当該設備を構成要素として含んで構成される上位構成の故障リスクの評価点を算出するステップと、
前記保全レベル設定データベースを参照して、前記設備の算出された評価点を基に当該設備の推奨保全レベルを算出するステップと、
前記設備の故障リスクの評価点および前記推奨保全レベルのうち少なくとも1つと、複数の前記構成の上下関係における当該設備の上位構成の故障リスクの評価点とを含む画面を、表示装置に出力するステップとを実行する
リスクアセスメント方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
上記した課題を解決するため、本発明に係るリスクアセスメント装置は、設備を最下位の構成要素として構成の上下関係を示す階層設定データベース、および、前記設備の故障リスクの評価点と当該設備の推奨保全レベルとの関連を示す保全レベル設定データベースを記憶する記憶部と、前記設備の属性ごとに設定された故障リスクの評価点を基に当該設備の故障リスクの評価点を算出し、前記階層設定データベースを参照して、前記設備の算出された評価点を基に当該設備を構成要素として含んで構成される上位構成の故障リスクの評価点を算出し、前記保全レベル設定データベースを参照して、前記設備の算出された評価点を基に当該設備の推奨保全レベルを算出する評価部と、前記設備の故障リスクの評価点および前記推奨保全レベルのうち少なくとも1つと、複数の前記構成の上下関係における当該設備の上位構成の故障リスクの評価点とを含む画面を、表示装置に出力する表示制御部とを備える。
【手続補正書】
【提出日】2022-12-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設備を最下位の構成要素として構成の上下関係を示す階層設定データベース、および、前記設備の故障リスクの評価点と当該設備の推奨保全レベルとの関連を示す保全レベル設定データベースを記憶する記憶部と、
前記設備の属性ごとに設定された故障リスクの評価点を基に当該設備の故障リスクの評価点を算出し、
前記階層設定データベースを参照して、前記設備の算出された評価点を基に当該設備を構成要素として含んで構成される上位構成の故障リスクの評価点を算出し、
前記保全レベル設定データベースを参照して、前記設備の算出された評価点を基に当該設備の推奨保全レベルを算出する評価部と、
前記設備の故障リスクの評価点および前記推奨保全レベルのうち少なくとも1つと、前記構成の上下関係における当該設備が属する複数の上位構成の故障リスクの評価点とを含む画面を、表示装置に出力する表示制御部とを備える
リスクアセスメント装置。
【請求項2】
前記構成は、製造に係る構成であり、
前記設備の上位構成として、工程およびラインのうち少なくとも1つを含む
請求項1に記載のリスクアセスメント装置。
【請求項3】
前記構成は、電源に係る構成であり、
前記設備の上位構成として、配電盤および電力系統のうち少なくとも1つを含む
請求項1に記載のリスクアセスメント装置。
【請求項4】
前記構成は、位置に係る構成であり、
前記設備の上位構成として、フロアおよび建屋のうち少なくとも1つを含む
請求項1に記載のリスクアセスメント装置。
【請求項5】
前記設備の属性は、
取扱物質、設備規模、腐食情報、故障回数、点検コスト、補修コスト、操作温度、操作
時の検査状況、使用中の検査状況、年間腐食率、使用環境と材質関係、金属疲労の発生状況、生産減および能力低下、外部スキン温度、設置場所湿潤状況、断熱材の性状、外装板の外観、物質性質、圧力、生産減および機能低下、プラントの位置および役割、生産への影響、部品調達時間、製品への影響度、故障頻度、前後機器の重要度、公害または災害危険度のなかの少なくとも1つを含む
請求項1に記載のリスクアセスメント装置。
【請求項6】
リスクアセスメント装置が、
設備を最下位の構成要素として構成の上下関係を示す階層設定データベース、および、前記設備の故障リスクの評価点と当該設備の推奨保全レベルとの関連を示す保全レベル設定データベースを記憶する記憶部を備え、
前記設備の属性ごとに設定された故障リスクの評価点を基に当該設備の故障リスクの評価点を算出するステップと、
前記階層設定データベースを参照して、前記設備の算出された評価点を基に当該設備を構成要素として含んで構成される上位構成の故障リスクの評価点を算出するステップと、
前記保全レベル設定データベースを参照して、前記設備の算出された評価点を基に当該設備の推奨保全レベルを算出するステップと、
前記設備の故障リスクの評価点および前記推奨保全レベルのうち少なくとも1つと、前記構成の上下関係における当該設備が属する複数の上位構成の故障リスクの評価点とを含む画面を、表示装置に出力するステップとを実行する
リスクアセスメント方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
上記した課題を解決するため、本発明に係るリスクアセスメント装置は、設備を最下位の構成要素として構成の上下関係を示す階層設定データベース、および、前記設備の故障リスクの評価点と当該設備の推奨保全レベルとの関連を示す保全レベル設定データベースを記憶する記憶部と、前記設備の属性ごとに設定された故障リスクの評価点を基に当該設備の故障リスクの評価点を算出し、前記階層設定データベースを参照して、前記設備の算出された評価点を基に当該設備を構成要素として含んで構成される上位構成の故障リスクの評価点を算出し、前記保全レベル設定データベースを参照して、前記設備の算出された評価点を基に当該設備の推奨保全レベルを算出する評価部と、前記設備の故障リスクの評価点および前記推奨保全レベルのうち少なくとも1つと、前記構成の上下関係における当該設備が属する複数の上位構成の故障リスクの評価点とを含む画面を、表示装置に出力する表示制御部とを備える。