IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジオシステム株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-地中熱交換装置 図1
  • 特開-地中熱交換装置 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023133835
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】地中熱交換装置
(51)【国際特許分類】
   F24T 10/10 20180101AFI20230920BHJP
   E03B 5/06 20060101ALI20230920BHJP
   E03F 1/00 20060101ALI20230920BHJP
   F24F 5/00 20060101ALI20230920BHJP
   F25B 30/06 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
F24T10/10
E03B5/06
E03F1/00 A
F24F5/00 101A
F25B30/06 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022039048
(22)【出願日】2022-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】505292111
【氏名又は名称】ジオシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083404
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 拓也
(72)【発明者】
【氏名】高杉 真司
【テーマコード(参考)】
2D063
3L054
【Fターム(参考)】
2D063AA14
2D063AA17
3L054BG10
(57)【要約】
【課題】安価に構築できるとともに、高い熱交換能力が発揮される地中熱熱交換装置を提供する。
【解決手段】冷媒を地中に溜められた水との間で熱交換させる地中熱交換器110を有し、上記地中熱交換器110にて熱交換された上記冷媒を用いて、所定のヒートポンプ装置との間でさらに熱交換する地中熱交換装置において、地表面から所定の容積をもって掘削され雨水等の水を貯留する浸透升140を有し、上記地中熱交換器110として上記冷媒が流される熱交換パイプを、好ましくは一部分が重なるようにずらしながら環状に巻いた複数の環状部を有する水平埋設型の地中熱交換器として上記浸透升140の底面に沿って配設する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を地中に溜められた水との間で熱交換させる地中熱交換器を有し、上記地中熱交換器にて熱交換された上記冷媒を用いて、所定のヒートポンプ装置との間でさらに熱交換する地中熱交換装置において、
地表面から所定の容積をもって掘削され雨水等の水を貯留する浸透升を有し、上記地中熱交換器として上記冷媒が流される熱交換パイプを上記浸透升の底面に沿って配設したことを特徴とする地中熱交換装置。
【請求項2】
上記熱交換パイプを上記浸透升の底面に沿って配設するにあたって、螺旋型、蛇行型、シート型のいずれかが選択されることを特徴とする請求項1に記載の地中熱交換装置。
【請求項3】
雨水等の水を上記浸透升に供給する水供給手段を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の地中熱交換装置。
【請求項4】
上記浸透升の上面および内周面には、透水シートが設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の地中熱交換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に溜められた水(雨水や地下水等)と熱交換した冷媒を空気調和機等のヒートポンプサイクルに利用する地中熱交換装置に関し、さらに詳しく言えば、安価に構築できるとともに、高い熱交換能力が発揮される地中熱交換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に記載されているように、一般的な地中熱交換システムは、一次冷媒が循環される一次熱交換回路と、空気調和機などの二次熱交換回路とを有し、一次熱交換回路側の一方の熱交換器を地中に埋設して、他方の熱交換器にて二次熱交換回路との間で熱交換することにより、二次熱交換回路で発生した熱と地中熱との間で熱交換するようにしている。
【0003】
通常、地中は一年を通して一定温度(約15℃前後)であるため、夏場はヒートポンプサイクルによって温められた冷媒の熱を地中に逃がし、冬場は冷やされた冷媒を地熱で温める。これにより、二次熱交換回路に設けられた圧縮機への負担を減らし、省電力およびCO排出量を大幅に減らすことができる。
【0004】
多くの場合、一次熱交換側の熱交換器は、地下水を含む地盤の中に地中約10~200mの深さに形成された直径150mm程度の熱交換井の中に一次冷媒を循環させた熱交換パイプ(φ30mm程度)を配置し、さらに熱交換井の内部に砂や砂利などで満たすことによって形成されている。これによれば、熱交換井の内部に地下水が満たされ、熱交換が促進される。
【0005】
しかしながら、一般的な地下水位は、地下5~10m程度のところにあるため、熱交換井の内部が水で満たされるのも地下5~10mよりも下の位置となり、地表から地下水位までの間では、熱交換が十分発揮されてない。
【0006】
また、別の観点として、都市部では地表面の多くがアスファルトなどの不透水層で覆われており、地表に降った雨の多くが地中に浸透することなく、下水道を介して海に戻されるため、地下水が減少している。
【0007】
そこで、本出願人は、特許文献2において、熱交換井に雨水などの水を積極的に浸透させる水浸透手段を設けて、地表面から地下水位面に至るまでの間の熱交換井の空間に水を供給することを提案している。これによれば、より熱交換効率を高めることができるが、他方において、熱交換井を掘削するには1本あたりかなりのコストがかかる、という問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002-115873号公報
【特許文献2】特許第4360690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の課題は、安価に構築できるとともに、高い熱交換能力が発揮される地中熱交換装置を提供することにある。
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は、冷媒を地中に溜められた水との間で熱交換させる地中熱交換器を有し、上記地中熱交換器にて熱交換された上記冷媒を用いて、所定のヒートポンプ装置との間でさらに熱交換する地中熱交換装置において、
地表面から所定の容積をもって掘削され雨水等の水を貯留する浸透升を有し、上記地中熱交換器が水平埋設型として上記冷媒が流される熱交換パイプを上記浸透升の底面に沿って配設したことを特徴としている。
【0011】
本発明において、上記熱交換パイプを上記浸透升の底面に沿って配設するにあたって、螺旋型、蛇行型、シート型のいずれかが選択されることが好ましい。
【0012】
また、本発明の好ましい態様によると、雨水等の水を上記浸透升に供給する水供給手段を備える。
【0013】
また、上記浸透升の上面および内周面には透水シートが設けられることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、地表面から所定の容積をもって雨水等の水を貯留する浸透升を掘削し、上記浸透升の底面に沿って冷媒が流される熱交換パイプを配設するだけでよいことから、安価に構築できるとともに、高い熱交換能力が発揮される地中熱熱交換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明による地中熱交換装置の一実施形態を示す模式図。
図2】上記地中熱交換装置に適用される水平埋設型地中熱交換器の一例を示す模式的な平面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、図1および図2により、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0017】
図1を参照して、この地中熱交換装置は、雨水等の水との間で熱交換を行う一次側熱交換回路100と、所定のヒートポンプ装置(この例では空気調和機)の一部に組み込まれる二次側熱交換回路200とを備えている。
【0018】
一次側熱交換回路100は、地中熱交換器110と、ポンプPを介して地中熱交換器110に一次側冷媒を循環させる循環パイプ120と、二次側熱交換回路200との間で熱交換を行うための熱交換器130とを備えている。
【0019】
一次側熱交換回路100に用いられる一次側冷媒としては、冬場においても凍らないように不凍液が好適であるが、地熱温度が高い場合など、冷媒が凍らないような状況であれば、蒸留水などであってもよく、仕様に応じて任意に変更されてよい。
【0020】
地中熱交換器110は水平埋設型の熱交換器として、地表から所定の容積をもって形成された浸透升140の底面に沿って配設される。地下水が豊富な地域においては、浸透升140は、内部に地下水が流れるように地下水位深度よりも深く掘削されるが、通常の地域では例えば1~2m程度の深さであってよい。浸透升140は、建物の床下に設けられてもよい。
【0021】
好ましい態様として、浸透升140の内周面(底面が含まれてもよい)には、浸透升140内に土砂等が入り込まないようにするための透水シート(透水フィルタ)141が設けられる。
【0022】
また、浸透升140の上面は、透水シート142によって覆われる。浸透升140の上面に適用される透水シート142は、透水性アスファルトからなる路盤が好ましいが、これ以外に砂利や透水ブロックなどであってもよく、基本的に透水性を備えていれば、仕様に応じて任意に選択可能である。
【0023】
浸透升140内には、砂利や砕石、あるいは透水ブロックが充填されていることが好ましい。これによれば、砂利などの間にできた空間に水が蓄えられる。浸透升140の形状は、通常の枡形以外に円筒状などであってもよく、その容積も、施工現場の状況や仕様に応じて任意に変更されてよい。
【0024】
浸透升140には、雨水等を浸透升140内に積極的に浸透させるための水供給手段160が設けられる。水供給手段160は、例えばビルBの屋上などに降り注いだ雨水を集めて排水する排水パイプ161と、排水パイプ161の他端側に接続される給水パイプ162とを備えている。
【0025】
この例において、排水パイプ161は、建物(ビル)Bの屋上に設置された雨水等の排水口に接続されているが、これ以外の場所に設置されていてもよい。また、雨水等の水を一時的に溜めておくタンクや、雨水を供給するポンプおよびその制御装置などに接続されていてもよい。
【0026】
さらには、例えばプールや噴水などに接続しておき、その残り水を利用するようにしてもよく、また、工場排水や多くの水を使用する例えば水産施設等から排水される水が使用されてもよい。
【0027】
図2を参照して、本実施形態における地中熱交換器110は螺旋型として、1本の熱交換パイプ111を平面に沿って一部分が重なるようにずらしながら環状に巻いた複数の環状部112を有し、水平埋設型の熱交換器として浸透升140の底面に沿って配設される。
【0028】
熱交換パイプ111は、熱交換効率のよい素材が好ましく用いられるが、耐食性や耐候性なども考慮して樹脂製パイプが最も好ましい。
【0029】
地中熱交換器110に使用する熱交換パイプ111の長さLpは、環状部112の直径をd,環状部112のピッチ(ずらし量)をP,地中熱熱交換器110の長さをLとして、次式(1)により求められる。
【数1】
【0030】
これによれば、熱交換パイプ111の単位面積当たりの敷設量をより多くする(より密にする)ことができるため、浸透升140内の水との熱交換能力が高められる。また、設置現場での敷設面積に応じて、単位ユニットを工場等で必要量を作製し、コンパクトに包装を行い設置現場に搬入することができる。
【0031】
地中熱交換器110は螺旋型以外に、熱交換パイプを床暖房やロードヒーティング等と同様にワイヤーメッシュ等に括り付けて蛇行状に施工する蛇行型や、2本のヘッダー管の間に複数本の熱交換パイプを並列に接続してなるシート型であってもよい。
【0032】
再び図1を参照して、二次熱交換回路200は、ビルB内に配置される室内機ユニット220と、各室内機ユニット220に接続された室外機ユニット210とを有し、それらが専用の配管を介して接続されている。
【0033】
室外機ユニット210には、内部に図示しないコンプレッサや四方弁などの冷凍サイクル機構が配置されている。室外機ユニット210には、さらに、一次熱交換回路100と二次熱交換回路200との間で熱交換を行う熱交換器130が設けられている。
【0034】
この例において、熱交換器130は、一次冷媒管が組み込まれた金属製の熱交換板と、二次冷媒管が組み込まれた金属製の熱交換板とを互いに接触させることにより、熱交換を行う形式となっているが、一次冷媒を溜めたタンク内に二次冷媒管を配置して直接熱交換を行ってもよく、一次冷媒と二次冷媒との熱交換ができれば、その具体的な方法は特に限定されない。
【0035】
また、本実施形態においては、一次側熱交換回路100と二次側熱交換回路200との間で相互に雨水等の熱を熱交換するようにしているが、浸透升140の底部に配置される地中熱交換器110を二次側熱交換回路200の室外機側の熱交換器として用いることもできる。
【0036】
さらには、本実施形態において、二次熱交換回路200はビル空調システムの冷凍サイクルに組み込まれているが、これ以外のヒートポンプ給湯システムなど冷媒と地熱との間で相互熱交換を行う基本構成を備えていれば、これら変形例も本発明に含まれる。
【0037】
以上、本発明について実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態の記載に限定されるものではない。当業者であるならば上記実施形態に加えられる変更もしくは改良も本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0038】
1 空気調和機
100 一次側熱交換回路
110 地中熱熱交換器(水平式地中熱熱交換器)
111 熱交換パイプ
112 環状部
120 循環パイプ
130 熱交換器
140 浸透升
141,142 透水シート
160 水供給手段
162 給水パイプ
200 二次側熱交換回路
B 建物(ビル)
図1
図2