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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023133845
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】ロックボルトの施工方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 20/00 20060101AFI20230920BHJP
【FI】
E21D20/00 X
E21D20/00 F
E21D20/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022039060
(22)【出願日】2022-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(71)【出願人】
【識別番号】000129758
【氏名又は名称】株式会社ケー・エフ・シー
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】新宮 信也
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸口 大志
(72)【発明者】
【氏名】坂上 哲嗣
(72)【発明者】
【氏名】小松 花穂里
(72)【発明者】
【氏名】村上 安奈
(72)【発明者】
【氏名】手塚 仁
(72)【発明者】
【氏名】畔高 伸一
(72)【発明者】
【氏名】青木 宏一
(72)【発明者】
【氏名】松尾 勉
(72)【発明者】
【氏名】田中 祐介
(57)【要約】
【課題】ロックボルトの打設作業をスムーズかつ正確に行え、かつ、座金の不測の落下を防止できるロックボルトの施工方法を提供する。
【解決手段】ロックボルトの施工方法は、ロックボルト2の後端部に取付けられる座金9を保持するための座金保持手段8をガイド34の先端側に設置する座金保持手段設置ステップと、座金保持手段に座金を保持させる座金保持ステップと、ロックボルトの先端側を座金保持手段に保持された座金9の中央貫通孔90に通すロックボルト位置決めステップと、座金保持手段に保持された座金を打設用の孔Hの周囲の壁面Wに近接させるとともに、ロックボルトを打設用の孔に打設するロックボルト打設ステップと、ロックボルトを打設した後に、座金保持手段から座金を離脱させて、当該座金をロックボルトの後端部に残置させることにより、トンネル空洞部Tの壁面Wを支えるように座金を設置する座金設置ステップとを備えたことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル空洞部から地山にロックボルトを打設するための打設用の孔を形成した後、建設機械のブームの先端側に設けられたガイド上に当該ガイドの延長方向に沿って移動可能なように押圧手段を設けるとともに、当該押圧手段の先端側にロックボルトの後端部を取付けて、その後、当該押圧手段をガイドの先端側に移動させることによって、トンネル空洞部から打設用の孔にロックボルトを打設するようにしたロックボルトの施工方法であって、
ロックボルトの後端部に取付けられる座金を保持するための座金保持手段をガイドの先端側に設置する座金保持手段設置ステップと、
座金保持手段に座金を保持させる座金保持ステップと、
押圧手段をガイドの先端側に移動させることによりロックボルトの先端側を座金保持手段に保持された座金の中央貫通孔に通すロックボルト位置決めステップと、
ブームを駆動して座金保持手段に保持された座金を打設用の孔の周囲の壁面に近接させるとともに、押圧手段をガイドの先端側に移動させることによりロックボルトを打設用の孔に打設するロックボルト打設ステップと、
ロックボルトを打設した後に、座金保持手段から座金を離脱させて、当該座金をロックボルトの後端部に残置させることにより、トンネル空洞部の壁面を支えるように座金を設置する座金設置ステップとを備えたことを特徴とするロックボルトの施工方法。
【請求項2】
座金保持手段に座金を保持させる手段は、座金保持手段に設けられた磁石であることを特徴とする請求項1に記載のロックボルトの施工方法。
【請求項3】
ロックボルトは、鋼管膨張型摩擦式のロックボルトであり、
座金設置ステップでは、ブームを駆動して座金保持手段を打設用の孔から離れる方向に移動させることにより、座金保持手段の磁石から離れた座金の中央貫通孔の周囲の板面が、打設用の孔に打設された鋼管膨張型摩擦式のロックボルトの後端部に設けられた段差部に係合して、当該座金がロックボルトの後端部に残ることにより、トンネル空洞部の壁面を支えるように座金が設置されることを特徴とする請求項2に記載のロックボルトの施工方法。
【請求項4】
ロックボルトは、定着材を介して孔の孔壁に定着させる定着材式のロックボルトであり、
ロックボルトを打設する前に、当該ロックボルトの後端部に形成されたねじ部に予めナットを螺着させておき、
座金設置ステップでは、ブームを駆動して座金保持手段を打設用の孔から離れる方向に移動させることにより、座金保持手段の磁石から離れた座金の中央貫通孔の周囲の板面がナットに係合して、当該座金がロックボルトの後端部に残り、その後、ナットを締め付けて座金を地山に押し付けることにより、トンネル空洞部の壁面を支えるように座金が設置されることを特徴とする請求項2に記載のロックボルトの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル空洞部から地山にロックボルトを打設するロックボルトの施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロックボルトの施工方法は、トンネル空洞部から地山にロックボルトを打設するための打設用の孔を形成した後、ドリルジャンボ(登録商標)等と呼ばれる切羽穿孔機のブームの先端側に設けられたガイド上に当該ガイドの延長方向に沿って移動可能なように削岩機(ドリフタ)を設けるとともに、当該削岩機の先端側にロックボルトの後端部を取付けて、その後、当該削岩機をガイドの先端側に移動させることによって、トンネル空洞部から打設用の孔にロックボルトを打設するようにしている。そして、当該ロックボルトを打設する際には、ロックボルトに、トンネル空洞部の壁面を支えるための座金(フェイスプレート10)を取付けるようにしている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2008-540874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたロックボルトの施工方法においては、支持手段8,9を備えるが、ロックボルトの打設時において、支持手段8は、壁面(岩肌6)から離れて位置される。
従って、特許文献1においては、支持手段8に、ロックボルトの径よりも大きい径のチャック手段12を通過させるための貫通孔を設けなくてはならない。
よって、支持手段8に設けられた貫通孔の径が、ロックボルトの径よりも大きいため、支持手段8に設けられた貫通孔にロックボルトを貫通させたとしても、ロックボルトが軸ずれし易くなる。
従って、ロックボルトの軸心と打設用の孔の径中心とを一致させ難くなり、ロックボルトの軸心と打設用の孔の径中心とが一致していない状態でロックボルトの打設作業を行った場合、打設作業をスムーズかつ正確に行えないという課題があった。
特に、鋼管膨張型摩擦式のロックボルト(加圧流体膨張式ロックボルト)を打設用の孔に打設する作業においては、鋼管膨張型摩擦式のロックボルトが変形しないようにロックボルトをスムーズかつ正確に打設する必要があるが、ロックボルトの軸心と打設用の孔の径中心とが一致していない状態でロックボルトの打設作業を行った場合、鋼管膨張型摩擦式のロックボルトが変形してしまう可能性があり、変形してしまうと、鋼管膨張型摩擦式のロックボルトが正常に膨張しない事態が生じ得る。
また、特許文献1では、座金の中央貫通孔にロックボルトを貫通させて、座金がロックボルトの周面上を移動可能なようにロックボルトに取付けられているため、ブームを移動させた時にロックボルトの先端から座金が落下する虞があった。
本発明は、上述した課題に鑑みて、ロックボルトの打設作業をスムーズかつ正確に行え、かつ、座金の不測の落下を防止できるロックボルトの施工方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るロックボルトの施工方法は、トンネル空洞部から地山にロックボルトを打設するための打設用の孔を形成した後、建設機械のブームの先端側に設けられたガイド上に当該ガイドの延長方向に沿って移動可能なように押圧手段を設けるとともに、当該押圧手段の先端側にロックボルトの後端部を取付けて、その後、当該押圧手段をガイドの先端側に移動させることによって、トンネル空洞部から打設用の孔にロックボルトを打設するようにしたロックボルトの施工方法であって、ロックボルトの後端部に取付けられる座金を保持するための座金保持手段をガイドの先端側に設置する座金保持手段設置ステップと、座金保持手段に座金を保持させる座金保持ステップと、押圧手段をガイドの先端側に移動させることによりロックボルトの先端側を座金保持手段に保持された座金の中央貫通孔に通すロックボルト位置決めステップと、ブームを駆動して座金保持手段に保持された座金を打設用の孔の周囲の壁面に近接させるとともに、押圧手段をガイドの先端側に移動させることによりロックボルトを打設用の孔に打設するロックボルト打設ステップと、ロックボルトを打設した後に、座金保持手段から座金を離脱させて、当該座金をロックボルトの後端部に残置させることにより、トンネル空洞部の壁面を支えるように座金を設置する座金設置ステップとを備えたことを特徴とする。
また、座金保持手段に座金を保持させる手段は、座金保持手段に設けられた磁石であることを特徴とする。
また、ロックボルトは、鋼管膨張型摩擦式のロックボルトであり、座金設置ステップでは、ブームを駆動して座金保持手段を打設用の孔から離れる方向に移動させることにより、座金保持手段の磁石から離れた座金の中央貫通孔の周囲の板面が、打設用の孔に打設された鋼管膨張型摩擦式のロックボルトの後端部に設けられた段差部に係合して、当該座金がロックボルトの後端部に残ることにより、トンネル空洞部の壁面を支えるように座金が設置されることを特徴とする。
また、ロックボルトは、定着材を介して孔の孔壁に定着させる定着材式のロックボルトであり、ロックボルトを打設する前に、当該ロックボルトの後端部に形成されたねじ部に予めナットを螺着させておき、座金設置ステップでは、ブームを駆動して座金保持手段を打設用の孔から離れる方向に移動させることにより、座金保持手段の磁石から離れた座金の中央貫通孔の周囲の板面がナットに係合して、当該座金がロックボルトの後端部に残り、その後、ナットを締め付けて座金を地山に押し付けることにより、トンネル空洞部の壁面を支えるように座金が設置されることを特徴とする。
本発明に係るロックボルトの施工方法によれば、ロックボルトの打設作業をスムーズかつ正確に行え、かつ、座金の不測の落下を防止できるロックボルトの施工方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】ロックボルトの施工方法手順を示す工程図。
図2】ロックボルトの説明図であり、(a)はロックボルトの側面図、(b)は(a)図におけるA-A断面図、(c)はロックボルトの鋼管部の膨張変化を示す図。
図3】力伝達装置を示す図であり、(a)は力伝達装置の平面図、(b)は力伝達装置の側面図。
図4】前側連結手段を示す側面図。
図5】摺動機構を示す断面図。
図6】中間伝達軸、及び、スイベルを分離して示した分解図。
図7】座金保持手段を前側から見た正面図。
図8】座金保持手段に座金が離脱可能に取付けられた状態を示す斜視図。
図9】座金保持手段と座金とを分離して示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態1
図1に示すように、実施形態1に係るロックボルトの施工方法は、トンネル空洞部Tから地山Mにロックボルト2を打設するための打設用の孔Hを形成した後、建設機械としての例えばドリルジャンボ(登録商標)等と呼ばれる図外の切羽穿孔機のブーム32の先端側に設けられたガイド34上に当該ガイド34の延長方向に沿って移動可能なように押圧手段としての例えば削岩機(ドリフタ)3を設けるとともに、当該削岩機3の先端側にロックボルト2の後端部を取付けて、その後、削岩機3をガイド34の先端側に移動させることによって、トンネル空洞部Tから打設用の孔Hにロックボルト2を打設するようにしたロックボルトの施工方法であって、以下の(1)~(5)に示すステップを備える。
(1)ロックボルト2の後端部に取付けられる座金9を保持するための座金保持手段8をガイド34の先端側に設置する座金保持手段設置ステップ。
(2)座金保持手段8に座金9を保持させる座金保持ステップ。
(3)削岩機3をガイド34の先端側に移動させることによりロックボルト2の先端側を座金保持手段8に保持された座金9の中央貫通孔90に通すロックボルト位置決めステップ(以上、図1(b)参照)。
(4)ブーム32を駆動して座金保持手段8に保持された座金9を打設用の孔Hの周囲の壁面Wに近接させるとともに、削岩機3をガイド34の先端側に移動させることによりロックボルト2を打設用の孔Hに打設するロックボルト打設ステップ(図1(c),(d)参照)。
(5)ロックボルト2を打設した後に、座金保持手段8から座金9を離脱させて、当該座金9をロックボルト2の後端部に残置させることにより、トンネル空洞部Tの壁面Wを支えるように座金9を設置する座金設置ステップ(図1(e)参照)。
【0008】
尚、実施形態1に係るロックボルトの施工方法においては、図1に示すように、削岩機3とロックボルト2との間に設けられて削岩機3からの力をロックボルト2に伝達するための力伝達装置1を用いてロックボルト2を打設する。
切羽穿孔機には、例えば、複数本のブームが設けられ、少なくとも1つのブーム31の先端側には削孔装置4が設けられ、少なくとも1つのブーム32の先端側にはロックボルト取付装置5が設けられている。
尚、ブームとは、油圧シリンダ等のアクチュエータにより、起伏,伸縮,旋回等の機能を有した棒状構造体のことをいう。
ブーム31,32の先端側にはガイドセル33が設けられている。例えば、ガイドセル33は、ガイド34と、ガイド34に沿って摺動可能なキャリッジ35とを有する。
削岩機3はキャリッジ35上に固定されており、図外のキャリッジ駆動機構を駆動させることによって、キャリッジ35及び削岩機3がガイド34上を往復移動可能なように構成されている。
【0009】
図1(a)に示すように、削孔装置4は、削岩機3と、削岩機3のシャンクロッド30の先端側に連結された削孔ロッド36とを備えて構成される。
図1(b)に示すように、ロックボルト取付装置5は、削岩機3と、削岩機3のシャンクロッド30の先端側に連結された力伝達装置1と、座金保持手段8とを備えて構成される。
【0010】
ブーム31,32は、削孔装置4やロックボルト取付装置5を、所望の位置まで移動させるとともに所望の姿勢に維持する装置である。
即ち、ブーム31を駆動して、削孔装置4を、所望の位置まで移動させるとともに所望の姿勢に維持した後、削岩機3をトンネル空洞部Tの壁面Wに向けて移動させて、削孔ロッド36の先端側に設けられた削岩ビット37を穿孔位置まで移動させる。その後、図1(a)に示すように、キャリッジ駆動機構を駆動させながら削岩機3を駆動させて、削孔ロッド36に回転力と打撃力とを付与しながら削孔ロッド36を押圧することにより、壁面Wから地山M中に向けて、ロックボルト2を挿入するための孔Hを削孔する。
【0011】
また、削岩機3のシャンクロッド30の先端側に連結された力伝達装置1の先端側にロックボルト2を取付けた後、ブーム32を駆動して、ロックボルト取付装置5を、所望の位置まで移動させるとともに所望の姿勢に維持する(図1(b)参照)。その後、削岩機3を孔Hに近付く方向に前進移動させることによって、ロックボルト2を孔Hに挿入する(図1(c),(d),(e)参照)。尚、ロックボルト2を孔Hに挿入する際には、ロックボルト2に回転力や打撃力を加えないことが好ましい。しかしながら、ロックボルト2を孔Hに挿入する際の抵抗が大きい場合等は、必要に応じて、削岩機3でロックボルト2に打撃や回転を与えながらロックボルト2を孔Hに挿入するようにしてもよい。
【0012】
図2に示すように、ロックボルト2は、例えば鋼管膨張型摩擦式のロックボルトである。
当該ロックボルト2は、図2(a)に示すように、鋼管部20と、鋼管部20の先端側を封止する先端側封止部21と、鋼管部20の後端側を封止する後端側封止部22とを備えて構成される。
【0013】
鋼管部20は、例えば表面に溶融亜鉛とアルミニウムとマグネシウムとの合金めっき層を備え、図2(b)に示すような断面形状に形成されている。
即ち、鋼管部20は、膨張変形前の初期状態では、図2(b),(c)に示すように、管の延長方向と直交する断面が扁平な鋼管材の扁平断面の両端(管の径方向両端)を互いに近付けるように変形させて断面外形が円形に近い形になるように形成された異形鋼管により構成され、当該異形鋼管内に水圧を加えることにより膨張して円形鋼管状に変形するように構成されたものである。
【0014】
先端側封止部21は、鋼管部20の先端側の外周を覆うとともに鋼管部20の先端開口を封止する先端側封止スリーブ23と、先端側封止スリーブ23の先端に設けられた円錐状の先端コーン24とを備える。当該先端コーン24は、先端側封止スリーブ23と一体又は別体で設けられる。尚、先端側封止部21は、先端コーン24を備えない構成であってもよい。
【0015】
後端側封止部22は、鋼管部20の後端側の外周を覆う小径スリーブ25と、鋼管部20の後端側の外周を覆うとともに鋼管部20の後端開口を封止する注水用スリーブ26とを備える。当該注水用スリーブ26は、小径スリーブ25よりも後端側に設けられて外径が当該小径スリーブ25の外径よりも大径に形成されており、スリーブの中心線に沿った方向の中央側の外周面には、当該外周面を一周する円環状に形成された円環状溝27が形成されている。そして、当該円環状溝27の溝底から注水用スリーブ26の内面に貫通するとともに、当該注水用スリーブ26の内側に位置される鋼管部20の外面から内面に貫通する注水孔28が設けられている。
【0016】
即ち、鋼管部20は、後述する注水ヘッド50、円環状溝27、注水孔28を介して、鋼管部20の内側に注水される水の圧力によって、図2(c)に示すように、異形鋼管状から膨張して円形鋼管状に変形するように構成されている。
また、先端側封止部21及び後端側封止部22は、鋼管部20を異形鋼管状から円形鋼管状に変形させる水の圧力では変形しない材料(例えば、合成樹脂等)により形成されている。
【0017】
図3に示すように、力伝達装置1は、後側伝達軸11と、中間伝達軸12と、前側伝達軸13と、後側伝達軸11の前端部と中間伝達軸12の後端部とを連結する後側連結手段15と、中間伝達軸12の前端部と前側伝達軸13の後端部とを連結する前側連結手段16と、スイベル40とを備えて構成される。
【0018】
後側連結手段15、及び、前側連結手段16は、それぞれ、摺動機構6と、制限機構7とを備えている。
【0019】
図4,5に示すように、摺動機構6は、前後に配置される伝達軸のうちの一方の伝達軸61の一端部に形成された球面63と、前後に配置される伝達軸のうちの他方の伝達軸62の一端部に形成されて球面63と接触する凹部である球面座64とで構成され、球面63と球面座64とが接触して摺動するように構成されている。
即ち、摺動機構6は、一方の伝達軸61の一端に設けられた球面63と他方の伝達軸62の一端に設けられた球面座64とが摺動する球面摺動機構により構成されている。
尚、図4,5においては、一方の伝達軸61が前側伝達軸13であり、他方の伝達軸62が中間伝達軸12である場合、即ち、前側連結手段16を図示している。
【0020】
球面63は、一方の伝達軸61の一端部(例えば前側伝達軸13の後端部)に設けられた板部65の板面(後板面)65aより突出するように形成された半球状の球面により構成される。
球面座64は、他方の伝達軸62の一端部(例えば中間伝達軸12の前端部)に設けられた板部66の板面(前板面)66aより窪むように形成されて球面63と全面接触する半球状の凹面により構成される。
板部65,66は、例えば円形の板面を有した円形板部により構成される。
【0021】
即ち、板部65の板面65aは、一方の伝達軸61の中心線61Cと直交する面上に位置され、球面63は、当該板面65aより突出するように形成された半球状の球面により構成され、当該球面63の中心が一方の伝達軸61の中心線61C上に位置されるように構成されている。
また、板部66の板面66aは、他方の伝達軸62の中心線62Cと直交する面上に位置され、球面座64は、当該板面66aより窪むように形成された半球状の凹面により構成され、当該球面座64の中心が他方の伝達軸62の中心線62C上に位置されるように構成されている。
【0022】
制限機構7は、次のように構成される。
まず、図5に示すように、一方の伝達軸61の中心線61Cと他方の伝達軸62の中心線62Cと一致させ、かつ、球面63と球面座64とを接触させた状態において、一方の伝達軸61の板部65の板面65aと他方の伝達軸62の板部66の板面66aとが所定の間隔Sを隔てて互いに平行に対向するように構成されている。
【0023】
また、一方の板部65の板面65aにおける周縁側において、一方の伝達軸61の中心線61Cを中心とした周方向に互いに90°隔てた4箇所に、板部65を貫通する図外のボルト通し孔が形成されている。同様に、他方の板部66にも図外のボルト通し孔が形成されている。
そして、例えばボルト70の軸部を一方の板部65のボルト通し孔及び他方の板部66のボルト通し孔に貫通させた後、ボルト70の軸部を圧縮コイルばね72のばね中空部に貫通させ、その後、ボルト70の軸部の先端側からナット73を締結することにより、他方の板部66とナット73との間に圧縮コイルばね72が装着された状態に構成される。
【0024】
当該制限機構7を備えているので、図4に示すように、一方の伝達軸61の中心線61Cと他方の伝達軸62の中心線62Cとの交差角度αが所定の角度になった場合には、一方の板部65の板面(後板面)65aの周縁65bと他方の板部66の板面(前板面)66aとが接触することにより、交差角度αが所定の角度よりも大きくならないように制限される。
即ち、一方の伝達軸61の中心線と61Cと他方の伝達軸62の中心線62Cとの交差角度αが所定の角度よりも大きくならないように、摺動機構6の摺動動作範囲を制限する制限機構7を備える。
尚、制限機構7は、交差角度αが、例えば、所定の角度5°よりも大きくならないように構成されている。
【0025】
即ち、当該制限機構7は、球面63と球面座64とを接触させた状態において、一方の伝達軸61の板部65の板面(後板面)65aと他方の伝達軸62の板部66の板面(前板面)66aとが所定の間隔Sを隔てて互いに平行に対向するように構成され(図5参照)、かつ、一方の伝達軸61の中心線61Cと他方の伝達軸62の中心線62Cとの交差角度αが所定の角度になった場合には、一方の板部65の板面65aの周縁65bと他方の板部66の板面66aとが接触して、交差角度αが所定の角度よりも大きくならないように制限する構成となっている。
【0026】
尚、後側連結手段15の詳細な図示は省略するが、当該後側連結手段15も、上述した前側連結手段16と同様に構成される。
また、後側連結手段15、及び、前側連結手段16は、圧縮コイルばね72が装着された構成であるため、一方の伝達軸61の中心線61Cと他方の伝達軸62の中心線62Cとが交差する屈曲状態からの復元性能に優れた構成となる。
【0027】
図3に示すように、前側伝達軸13の前端部には、鋼管膨張型摩擦式のロックボルト2の後端部が装着される注水ヘッド50が設けられている。
また、後側伝達軸11の後端部には、削岩機3のシャンクロッド30の先端部と連結するためのねじ部等の連結部18が設けられている。
つまり、ロックボルト2の後端部である注水用スリーブ26の部分が、注水ヘッド50内に装着されて連結され、前側伝達軸13の後端部と中間伝達軸12の前端部とが摺動機構6及び制限機構7を有した前側連結手段16により連結され、中間伝達軸12の後端部と後側伝達軸11の前端部とが摺動機構6及び制限機構7を有した後側連結手段15により連結され、後側伝達軸11の後端部に形成されたねじ部等の連結部18と削岩機3のシャンクロッド30の先端部に形成されたねじ部等の図外の連結部とが図外の連結手段を介して連結されることによって、削岩機3からの力(押圧力や回転力等)が力伝達装置1を介してロックボルト2に伝達されるように構成される。
従って、上述した力伝達装置1によれば、摺動機構6を備えたので、削岩機3からの力がロックボルト2に伝わりやすくなり、ロックボルト2を孔Hに挿入する作業の作業効率を向上できるようになる。
また、上述した力伝達装置1によれば、制限機構7が機能して、一方の伝達軸61の板部65と他方の伝達軸62の板部66とが接触した場合でも、削岩機3からの力がロックボルト2に伝達されるので、削岩機3のシャンクロッド30の中心線とロックボルト2の中心線とが同一直線上に位置しない状態となったとしても、削岩機3からの力がロックボルト2に伝わりやすくなり、ロックボルト2を孔Hに挿入する作業の作業効率を向上できるようになる。
【0028】
図6に示すように、スイベル40は、ロックボルト2の鋼管部20内に水を供給するための水供給用の可撓性の給水ホース39(図1参照)が連結される取水口41(図3(a)参照)を備え、力伝達装置1の軸(後側伝達軸11、中間伝達軸12、前側伝達軸13)が回転しても回転しないように中間伝達軸12に装着されて、取水口41を介して供給された水を力伝達装置1の軸に形成された水路に供給するための筒状部材である。
そして、図外のポンプ等の水供給手段に接続された給水ホース39、中間伝達軸12に形成された取水口41を介してスイベル40に供給された水が、スイベル40の内側に形成された図外の水路、中間伝達軸12の外周面を一周するように形成された円環状溝42、円環状溝42の溝底に形成された導水口43、当該導水口43から連通して中間伝達軸12の内側の設けられた図外の水路、当該水路の水出口44と注水ヘッド50の水入口46とを連結する水路管45を経由して、注水ヘッド50に供給されるように構成されている。
尚、図6に示すように、中間伝達軸12は、例えば、スイベル40の筒内側を貫通する貫通軸部12sを後端側に備えたスイベル装着軸12Aと、スイベル装着軸12Aが着脱可能に連結される連結軸12Bとに分離可能に構成されている。
そして、例えば、スイベル装着軸12Aの後端部に設けられた雄ねじ部12aと連結軸12Bの前端部に設けられた雌ねじ部12bとがねじ結合されることによって、スイベル装着軸12Aと連結軸12Bとが着脱可能に連結される構成となっている。
つまり、スイベル40は、スイベル装着軸12Aに設けられた鍔部12xと連結軸12Bの前端に設けられ鍔部12yとの間の貫通軸部12sの軸周りに、当該貫通軸部12sと一緒に回転しないように装着される。
即ち、実施形態1に係る力伝達装置1は、伝達軸としての貫通軸部12sと一緒に回転しないように当該貫通軸部12sに装着されて、取水口41から取込まれた水を伝達軸(中間伝達軸12、前側伝達軸13)に設けられた水路を介して注水ヘッド50に供給するスイベル40を備えた構成である。
【0029】
注水ヘッド50は、ロックボルト2の注水用スリーブ26を挿入するために前端が開口された筒状体により構成されている。当該注水ヘッド50の筒状体の内側内周面には、ロックボルト2の後端側封止部22に形成された円環状溝27に対応する図外の円環状溝が形成されており、かつ、当該円環状溝の前後の位置には、注水用スリーブ26の外周面との水密性を維持するための図外の円環状パッキン等の水密維持部材が設けられている。
また、当該注水ヘッド50の筒状体の内側後端部には、ロックボルト2の注水用スリーブ26の後端面26e(図2(a)参照)に接触する図外のストッパーが設けられている。
ロックボルト2の注水用スリーブ26を注水ヘッド50内に挿入して注水用スリーブ26の後端面26eを注水ヘッド50内のストッパーに接触させた装着状態においては、図3に示すように、注水用スリーブ26の前端部側が注水ヘッド50の前端面51よりも若干前方に突出した状態になる。
【0030】
よって、図外の注水ポンプ等の水供給手段からの水が、給水ホース39、スイベル40、中間伝達軸12(スイベル装着軸12A)、水路管45、注水ヘッド50、ロックボルト2の円環状溝27、注水口28を経由して、ロックボルト2の鋼管部20内に供給されることによって、鋼管部20が水圧で異形鋼管状から円形鋼管状に膨張変形して孔Hの内壁に定着する。
【0031】
また、鋼管膨張型摩擦式のロックボルト2の場合、孔Hに挿入されて定着するロックボルト2の後端部に、トンネル空洞部Tの壁面Wを支えるための座金9が設けられる。
【0032】
実施形態1においては、図1(b)に示すように、ガイド34の先端側に、座金保持手段8が設けられ、当該座金保持手段8に上述した座金9が離脱可能に保持される。
図7図9に示すように、座金保持手段8は、座金保持枠80と、ガイド34に対する取付部81とを備えて構成される。
【0033】
座金保持枠80は、枠板部82と、後板部83とを備える。
枠板部82は、例えば枠の中心線が前後方向に延長する四角形状の枠体の上枠部の中央部が欠損して開口した枠状板により形成される。
後板部83は、枠板部82の後端縁より枠板部82の枠の内側に延長し、かつ、中央に上部開口の円形状の中央貫通孔84が形成された板により形成される。
枠板部82の枠の内面と後板部83の前板面とが互いに直交する面に形成される。
そして、枠板部82の枠の内面と後板部83の前板面とで構成された凹部85内に座金9が離脱可能に保持される。
例えば、凹部85の底面となる後板部83の前板面における4つの角部近傍の位置には、座金保持手段8に座金9を保持させる手段としての磁石86が取付けられている。
枠板部82の枠の内径は、座金9を形成する例えば四角形の板(プレート)の外径寸法よりも若干大きい寸法に形成される。
そして、座金9の後側板面91と凹部85の底面を形成する後板部83の前板面とが対向した状態で当該座金9が凹部85に収納されて、座金9の後側板面91が磁石86,86…に吸着されることにより、当該座金9が凹部85内に離脱可能に保持される。
尚、座金保持手段8は、取付部81がボルト等の固定手段87によってガイド34に固定されることにより、ガイド34に固定状態に取付けられている。
【0034】
従って、座金保持手段8の凹部85内に保持された座金9の中央貫通孔90にロックボルト2を通した状態で(図1(b)参照)、ロックボルト2を壁面Wの打設位置まで移動させた後、孔Hに挿入する際に、座金保持手段8に保持された座金9がロックボルト2の軸ずれ防止手段(セントラライザー)として機能するので、ロックボルト2を孔Hに挿入する作業を容易に行えるようになる。
【0035】
次に、ロックボルト施工方法について説明する。
まず、図1(a)に示すように、ブーム31に設けた削孔装置4を用いて、トンネル空洞部Tの壁面Wの所定の位置にロックボルト2を挿入するための孔Hを削孔する。
次に、ブーム32に設けられた削岩機3に力伝達装置1を取付けるとともに、ガイド34の先端側に座金保持手段8を取付ける(座金保持手段設置ステップ)ことによって、ロックボルト取付装置5を構成し、当該ロックボルト取付装置5における力伝達装置1の前端側の注水ヘッド50にロックボルト2を取付ける。また、座金9を座金保持手段8の凹部85内に保持させた状態にセットする(座金保持ステップ)。そして、キャリッジ35を操作して削岩機3を移動させることにより、図1(b)に示すように、ロックボルト2を先端側から座金9の中央貫通孔90に通す(ロックボルト位置決めステップ)。
次に、ブーム32及びキャリッジ35を操作して、ロックボルト2を孔Hに近付く方向に移動させ、ロックボルト2の先端を孔Hの入口に位置させる。その後、ブーム32を操作して、座金保持手段8に保持された座金9の前側板面92を壁面Wに近接させる。その後、キャリッジ35を操作して削岩機3を前方に移動させながら、ロックボルト2を前進させることによって、ロックボルト2を孔Hに挿入する(ロックボルト打設ステップ)(図1(c),(d)参照)。即ち、図1(d)に示すように、座金9の前側板面92と壁面Wとが接触して、削岩機3を前方に移動させることができなくなった場合に、孔Hへのロックボルト2の挿入が完了する。
【0036】
孔Hへのロックボルト2の挿入が完了したならば、ロックボルト2の鋼管部20内への注水を開始する。例えば、ロックボルト2の鋼管部20内の水圧が所定の施工水圧に到達した場合に、水供給手段としての図外の注水ポンプを停止させることによって、ロックボルト2の鋼管部20内への注水作業が完了する。
注水作業が完了した状態においては、先端側封止部21と後端側封止部22との間の鋼管部20が、図2(a)の実線の状態から想像線(二点鎖線)で示した状態に膨張変形して、前端側封止部21と後端側封止部22との間の膨張した鋼管部20の外周面が孔H内の孔壁Wに定着する。
【0037】
尚、座金9の中央貫通孔90の径寸法は、ロックボルト2の小径スリーブ25の外周径に対応した径寸法に形成されている。
従って、孔Hへのロックボルト2の挿入が完了した状態においては、座金9の中央貫通孔90の内周面と小径スリーブ25の外周面とが近接した状態となって、座金9は、小径スリーブ25の周面上に位置され、かつ、座金9の後側板面91と注水用スリーブ26の前端面29(小径スリーブ25の外周面と注水用スリーブ26の外周面との境界となる段差面(図2(a)参照))とが近接した状態となる。
その後、図1(e)に示すように、ブーム32を操作して、ロックボルト取付装置5を孔Hから離れる方向に移動させる。
これにより、力伝達装置1の注水ヘッド50が注水用スリーブ26から外れる。さらに、座金保持手段8が孔Hから離れる方向に移動する際に、座金9が座金保持手段8の磁石86,86…から外れるとともに、当該座金9が注水用スリーブ26の前端面29に引っ掛かる(係合する)ので、ロックボルト2の後端部に、トンネル空洞部Tの壁面Wを支えるための座金9が取付けられることになる(座金設置ステップ)。
【0038】
実施形態1に係る、削岩機3とロックボルト2との間に設けられて削岩機3からの力をロックボルト2に伝達する力伝達装置1によれば、摺動機構6及び制限機構7を有した後側連結手段15、及び、前側連結手段16を備えたので、ロックボルト2に無理な力が加わることを防止できて、ロックボルトを孔H内に真っすぐに挿入できるようになる。
特に、鋼管膨張型摩擦式のロックボルト2の場合、鋼管部20が曲がってしまうと、鋼管部20内への注水を確実に行えなくなり、ロックボルト2を孔Hの孔壁に定着させることが出来なくなることがあるので、鋼管膨張型摩擦式のロックボルト2を孔H内に真っすぐに挿入できるようになることは、当該鋼管膨張型摩擦式のロックボルト2の打設作業を正確かつ確実に行えるようになるという、優れた効果をもたらすものである。
【0039】
また、後側連結手段15、及び、前側連結手段16が摺動機構6及び制限機構7を備えているので、削岩機3のシャンクロッド30の中心線とロックボルト2の中心線とが同一直線上に位置しない状態となった場合でも、削岩機3からの力がロックボルト2に伝わり易くなり、ロックボルトを孔H内に真っすぐに挿入する作業を効率的に行えるようになる。
【0040】
また、力伝達装置1によれば、後側伝達軸11と、中間伝達軸12と、前側伝達軸13と、後側伝達軸11の前端部と中間伝達軸12の後端部とを連結する後側連結手段15と、中間伝達軸12の前端部と前側伝達軸13の後端部とを連結する前側連結手段16とを備えるので、後側伝達軸11、中間伝達軸12、前側伝達軸13の軸の屈曲方向の自由度が増すとともに、ロックボルト2に無理な力が加わることを、より効果的に防止できるようになる。
【0041】
また、力伝達装置1は、スイベル40を備えるので、力伝達装置1の軸(後側伝達軸11、中間伝達軸12、前側伝達軸13)を回転させた場合に、スイベル40の取水口41に連結された給水ホース39が軸に絡まってしまうことを防止できるようになる。つまり、力伝達装置1の軸を回転させても、取水口41に連結された給水ホース39が軸に絡まないようにできる。
【0042】
また、ロックボルト取付装置5は、削岩機3と、削岩機3のシャンクロッド30の先端側に連結された実施形態1に係る力伝達装置1と、座金保持手段8とを備えて構成されたので、座金保持手段8の凹部85内に保持された座金9の中央貫通孔90にロックボルト2を通すことで、座金保持手段8に保持された座金9をロックボルト2の軸ずれ防止手段として機能させることができるようになり、ロックボルト2を孔Hに挿入する作業を容易に行えるようになる。
即ち、実施形態に係るロックボルトの施工方法によれば、ロックボルト2の径寸法とほぼ同じ径寸法に形成された中央貫通孔90、つまり、ロックボルト2の径寸法よりも若干大きい径寸法に形成された中央貫通孔90を有した座金9を用いることができ、座金保持手段8に保持された座金9の中央貫通孔90にロックボルト2の先端側を貫通させることによって、ロックボルト2が軸ずれし難くなる。
従って、ロックボルト2の軸心と打設用の孔Hの径中心とを一致させ易くなり、打設作業をスムーズかつ正確に行えるようになる。
特に、鋼管膨張型摩擦式のロックボルト2を、変形しないように、打設用の孔Hにスムーズかつ正確に打設することができるようになり、鋼管膨張型摩擦式のロックボルト2を正常に膨張させることができるようになるから、鋼管膨張型摩擦式のロックボルト2の打設作業をスムーズかつ正確に行えるようになる。
一方、上述した特許文献1では、座金保持手段8に相当する構成を備えていないため、実施形態に係るロックボルトの施工方法と比べて、ロックボルトの打設作業をスムーズかつ正確に行い難い。
【0043】
また、実施形態に係るロックボルトの施工方法によれば、ロックボルト2の打設位置決めのためにブーム32を移動させる際に、座金保持手段8に座金9が保持されていることによって、座金9の不測の落下が防止される。
一方、上述した特許文献1では、本発明の座金保持手段8に相当する構成を備えておらず、座金の中央貫通孔にロックボルトを貫通させて、座金がロックボルトの周面上を移動可能なようにロックボルトに取付けられている。従って、ブームを移動させた時にロックボルトの先端から座金が落下する虞があった。
【0044】
また、実施形態に係るロックボルトの施工方法によれば、ロックボルト2の後端部に取付けられる座金9を保持するための座金保持手段8をガイド34の先端側に設置し、ブーム32を駆動して座金保持手段8に保持された座金9を打設用の孔Hの周囲の壁面Wに近接させることができるようにして、ロックボルト2を打設した後に、ブーム32を駆動して座金保持手段8を壁面Wから離れる方向に移動させることで、座金保持手段8から座金9を離脱させるようにしている。
従って、座金9として、上述した四角形状の板で形成された座金9を用いた場合には、座金9は、ロックボルト2の打設後に、座金保持手段8に保持されていた姿勢のままでロックボルト2の後端部に取付けられた状態となる。このため、各ロックボルト2,2…に取付けられた各座金9,9…の辺縁が水平方向や垂直方向に延長するように統一された状態となるようにできる。即ち、四角形状の板で形成された各座金9,9…の辺縁が、水平方向や垂直方向に揃うように、各座金9,9…を各ロックボルト2,2…の後端部に取付けることができるようになるので、ロックボルト打設後の壁面Wに設置された各座金9,9…の辺縁が水平方向や垂直方向にきれいに揃った状態の施工壁面を構築できるようになる。
一方、特許文献1では、座金保持手段8に相当する構成を備えていないため、四角形状の板で形成された座金を用いた場合、座金がロックボルトの軸心を回転中心として回転しやすくなるので、ロックボルト打設後の壁面に設置された各座金の辺縁が水平方向や垂直方向に揃わない可能性が高くなる。
【0045】
即ち、実施形態に係るロックボルトの施工方法によれば、ロックボルト2の打設作業をスムーズかつ正確に行えるようになるとともに、座金9の不測の落下を防止できるようになり、しかも、各ロックボルト2,2…の打設後の壁面Wに設置される各座金9,9…の並びを綺麗に揃えることができるようになる。
【0046】
実施形態2
実施形態1では、後側伝達軸11と、中間伝達軸12と、前側伝達軸13と、後側伝達軸11の前端部と中間伝達軸12の後端部とを連結する後側連結手段15と、中間伝達軸12の前端部と前側伝達軸13の後端部とを連結する前側連結手段16とを備えた力伝達装置1を例示したが、連結手段を1つだけ備えた力伝達装置であってもよい。
即ち、ロックボルトをトンネル空洞部から地山に打設する際に、削岩機とロックボルトとの間に設けられて削岩機からの力をロックボルトに伝達する力伝達装置は、押圧手段に後端部が取付けられた後側伝達軸と、前端部にロックボルトが取付けられた前側伝達軸と、後側伝達軸の前端部と前側伝達軸の後端部とを連結する連結手段とを備え、連結手段は、後側伝達軸の中心線と前側伝達軸の中心線とが交差する状態を許容するように動作する後側伝達軸の前端部と前側伝達軸の後端部との摺動機構と、後側伝達軸の中心線と前側伝達軸の中心線との交差角度が所定角度以上にならないように摺動機構の摺動動作範囲を制限する制限機構とを備えた構成としてもよい。
つまり、後側伝達軸と前側伝達軸と連結手段とを備えた構成の力伝達装置であってもよい。
【0047】
尚、上記では、四角板面を有した四角形板の座金9を例示したが、座金は、例えば円形板面を有した円形板により構成してもよい。この場合、座金保持手段は、円形板により構成された座金を収容できる凹部を備え、凹部の底面に当該座金を吸着して保持するための磁石を備えた構成とすればよい。
【0048】
また、上記では、水圧で膨張変形させる鋼管膨張型摩擦式のロックボルト2を例示したが、空気圧で膨張変形させる鋼管膨張型摩擦式のロックボルトを使用してもよい。即ち、ロックボルトとしては、水や空気などの流体圧によって膨張変形する鋼管膨張型摩擦式のロックボルトを用いればよい。
【0049】
また、上記では、鋼管膨張型摩擦式のロックボルト2を打設する施工方法を例示したが、本発明に係るロックボルトの施工方法は、モルタル系や樹脂系等の定着材を介して孔Hの孔壁に定着させる定着材式の棒鋼等のロックボルトを孔Hに打設する際にも使用可能である。
尚、定着材式のロックボルトの場合、ロックボルトの後端側に形成されたねじ部に予めナットを螺着しておいて、当該ロックボルトの孔Hへの定着が終了した後、ナットを増し締めして、座金9を壁面Wに定着させるようにすればよい。
即ち、ロックボルトが、定着材を介して孔の孔壁に定着させる定着材式のロックボルトである場合には、ロックボルトを打設する前に、当該ロックボルトの後端部に形成されたねじ部に予めナットを螺着させておき、座金設置ステップでは、ブーム32を駆動して座金保持手段8を打設用の孔Hから離れる方向に移動させることにより、座金保持手段8の磁石86から離れた座金9の中央貫通孔90の周囲の板面がナットに引っ掛かって(係合して)、当該座金9がロックボルトの後端部に残り、その後、ナットを締め付けて座金9を地山Mに押し付けることにより、トンネル空洞部Tの壁面Wを支えるように座金9が設置されるようにすればよい。
この場合でも、座金保持手段8に保持された座金9の中央貫通孔90にロックボルトの先端側を貫通させることによって、ロックボルトが軸ずれし難くなるため、ロックボルトの軸心と打設用の孔Hの径中心とを一致させ易くなり、打設作業をスムーズかつ正確に行えるようになる。
【0050】
また、上記では、力伝達装置を用いたロックボルトの施工方法を例示したが、本発明に係るロックボルトの施工方法は、力伝達装置を用いない場合にも適用可能である。
【0051】
また、上記では、押圧手段として、削岩機を使用した例を示したが、押圧手段は、削岩機以外の機械であってもよい。即ち、本発明では、押圧手段は、ロックボルトに押圧力を付与する手段であれば、どのような手段であっても構わない。
【符号の説明】
【0052】
2 ロックボルト、3 削岩機(押圧手段)、8 座金保持手段、9 座金、
32 ブーム、34 ガイド、86 磁石、90 座金の中央貫通孔、H 打設用の孔、M 地山、T トンネル空洞部、W 壁面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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