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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023133862
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】殺菌剤組成物および防臭化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20230920BHJP
   A61Q 15/00 20060101ALI20230920BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
A61K8/73
A61Q15/00
A61K8/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022039094
(22)【出願日】2022-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】390011442
【氏名又は名称】株式会社マンダム
(72)【発明者】
【氏名】山科 拓也
(72)【発明者】
【氏名】武藤 謙
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA112
4C083AB172
4C083AB212
4C083AB332
4C083AB432
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC182
4C083AC352
4C083AC432
4C083AC442
4C083AC471
4C083AC472
4C083AC531
4C083AC532
4C083AC692
4C083AC792
4C083AC932
4C083AD042
4C083AD152
4C083AD321
4C083AD322
4C083AD532
4C083BB48
4C083CC17
4C083DD08
4C083DD17
4C083DD23
4C083DD27
4C083EE18
(57)【要約】
【課題】油性成分を用いなくとも、経時的に殺菌効果を発揮することができる殺菌剤組成物を提供すること。
【解決手段】(A)キチンナノファイバー及び/又はエデト酸塩を含有することを特徴とする殺菌剤組成物とする。更に、(B)前記(A)成分以外の殺菌成分を含有することが好ましく、(B)成分が、イソプロピルメチルフェノールであることがより好ましい。本発明の殺菌剤組成物は、制汗剤や防臭化粧料に好適に用いることができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)キチンナノファイバー及び/又はエデト酸塩を含有することを特徴とする殺菌剤組成物。
【請求項2】
更に、(B)前記(A)成分以外の殺菌成分を含有することを特徴とする請求項1に記載の殺菌剤組成物。
【請求項3】
(B)成分が、イソプロピルメチルフェノールであることを特徴とする請求項2に記載の殺菌剤組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の殺菌剤組成物からなる、制汗剤または防臭化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺菌剤組成物および防臭化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
人に不快感を与える腋臭、足臭、頭皮臭、汗臭などの体臭は、汗が皮脂と混ざり、それが皮膚常在菌により分解されることにより生じるとされている。これら体臭を抑えるために、従来から、イソプロピルメチルフェノール等の殺菌成分を殺菌剤組成物に配合する試みがなされている。
【0003】
しかし、イソプロピルメチルフェノールは、経皮吸収性が高く経時的に肌上に残存することができないため、長時間に亘って殺菌効果が期待できないという問題がある。そこで、イソプロピルメチルフェノール等の殺菌成分と、固形ワックスやエステル化合物などの油性成分とを含有することで、殺菌成分の皮膚残存性に優れる組成物が提案されている(特許文献1および2)。しかし、油性成分と併用すると、独特のべたつき感が生じ使用感に優れない場合があるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-88925号公報
【特許文献2】国際公開第2015/146398号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、油性成分を用いなくとも、経時的に殺菌効果を発揮することができる殺菌剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題に鑑みて鋭意検討した結果、キチンナノファイバーやエデト酸塩が、高い殺菌効果を発揮することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の殺菌剤組成物は、(A)キチンナノファイバー及び/又はエデト酸塩を含有することに大きな特徴がある。
【0008】
本発明の殺菌剤組成物は、更に、(B)前記(A)成分以外の殺菌成分を含有することが好ましく、(B)成分が、イソプロピルメチルフェノールであることがより好ましい。
【0009】
また、本発明の殺菌剤組成物は、制汗剤または防臭化粧料であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の殺菌剤組成物は、上記構成を有することで、油性成分を用いなくとも、経時的に優れた殺菌効果を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔(A)キチンナノファイバー及び/又はエデト酸塩〕
本発明の殺菌剤組成物は、キチンナノファイバー及び/又はエデト酸塩を必須に含有する。
【0012】
本発明のキチンナノファイバーは、化粧料に用いられるものであれば特に限定されないが、カニ殻などの甲殻類の外皮から抽出したキチンを粉砕し、超極細繊維(直径10~20nm程度)の状態で取り出したもの等が挙げられる。キチンナノファイバーは市販品を用いることもでき、例えば、商品名マリンナノファイバーキチンNF(マリンナノファイバー社製)等が挙げられる。
【0013】
エデト酸の塩としては、薬学的に許容される塩であり、化粧料に用いられるものであれば特に限定されないが、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;マグネシウム、カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属塩等を挙げることができ、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩を用いるのが好ましく、具体的には、エデト酸二ナトリウム、エデト酸四ナトリウム等が挙げられる。
【0014】
(A)成分としてキチンナノファイバーを用いる場合、その含有量は、本発明の効果を発揮すれば特に限定されないが、十分な殺菌効果を得る観点から、殺菌剤組成物中、好ましくは0.005質量%以上であり、より好ましくは0.01質量%以上である。また、製剤安定性の観点から殺菌剤組成物中、好ましくは0.5質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以下である。これらから、好ましい含有量は、殺菌剤組成物中、0.005~0.5質量%であり、より好ましくは0.01~0.1質量%である。
【0015】
(A)成分としてエデト酸塩を用いる場合、その含有量は、本発明の効果を発揮すれば特に限定されないが、十分な殺菌効果を得る観点から、殺菌剤組成物中、好ましくは0.005質量%以上であり、より好ましくは0.01質量%以上である。また、安全性の観点から、殺菌剤組成物中、好ましくは2.0質量%以下であり、より好ましくは1.0質量%以下である。これらから、好ましい含有量は、殺菌剤組成物中、0.005~2.0質量%であり、より好ましくは0.01~1.0質量%である。
【0016】
〔(B)(A)成分以外の殺菌成分〕
本発明の殺菌剤組成物には、上記(A)成分以外の殺菌成分を含有することができる。(A)成分と(B)成分とを併用することで、相乗的な殺菌効果を発揮することができる。(A)成分以外の殺菌成分としては、化粧料に用いられるものであれば特に限定されないが、例えば、イソプロピルメチルフェノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、セチルトリメチルアンモニウム塩、ヒノキチオール、フェノキシエタノール、トリクロサン、トリクロカルバン、サリチル酸、パラベン類、塩化リゾチーム、クロルヘキシジン、1,2-ペンタンジオール、1,2-オクタンジオール等が挙げられ、二種以上を適宜混合して用いることもできる。なかでも、皮膚刺激性を抑制する観点からイソプロピルメチルフェノールを用いるのが好ましい。
【0017】
(B)成分の含有量は、本発明の効果を発揮すれば特に限定されないが、併用する(B)成分の殺菌力等の程度に応じて適宜設定することができる。一例として、イソプロピルメチルフェノール等の殺菌成分を用いる場合、好ましい含有量は、殺菌剤組成物中、0.01~0.5質量%であり、より好ましくは0.05質量%~0.3質量%である。
【0018】
〔他の成分〕
本発明の殺菌剤組成物は、必要に応じて、通常の化粧料に用いられる各種成分を含有することができる。具体的には、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレングリセリン脂肪酸等の非イオン性界面活性剤;脂肪酸石けん、ポリオキシエチレンエーテルカルボン酸塩、N-アシルサルコシン塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルりん酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルりん酸塩などの陰イオン性界面活性剤;アルキルアミン塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩などの陽イオン性界面活性剤;アルキルベタイン、アミドスルホベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタイン、アルキルアミンオキシドなどの両性界面活性剤;油脂、高級アルコール、エステル油、植物油、炭化水素油、ロウ類等の油性成分;ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、(アクリレーツ/メタクリル酸ステアレス-20)コポリマー、キサンタンガム、カラギーナン、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カチオン化セルロース類等の水溶性増粘剤;1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、マルチトール、トレハロースなどの多価アルコール;グリチルリチン酸、トラネキサム酸、アラントインなどの抗炎症剤;メントール、3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール、メンチルグリセリルエーテル、ボルネオール、カンファー、チモール、イソプレゴール、ペパーミント等の清涼剤;ビタミン類;アミノ酸類;収斂剤;保湿剤;パール化剤;スクラブ剤;美白剤;粉体;色素;顔料;動植物抽出物;酸;アルカリ;エタノール;水などが挙げられる。
【0019】
本発明の殺菌剤組成物は、経時的に優れた殺菌効果を発揮することから、ニキビ用化粧料、制汗剤、防臭化粧料、手指消毒剤等に用いることができ、制汗剤や防臭化粧料に好適に用いることができる。
【0020】
本発明の殺菌剤組成物を、制汗剤や防臭化粧料に用いる場合、上記した成分に加え、制汗成分を含有することができる。用いられる制汗成分は、皮膚を収斂することにより汗の発生を抑制する薬剤であり、例えば、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム、硫酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、クロロヒドロキシアルミニウム、アラントインクロロヒドロキシアルミニウム、パラフェノールスルホン酸亜鉛などを例示することができる。
【実施例0021】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。尚、含有量は特記しない限り「質量%」を表す。
【0022】
(実施例1~7および比較例1~6)
下記の表1~2に示す配合成分を配合し、殺菌剤組成物を調製した。なお、表中の含有量(殺菌剤組成物100質量%中の含有量)は、純分の含有量(単位:質量%)で示した。
【0023】
(殺菌力評価)
殺菌力評価は、Time-Kill試験にて行った。すなわち、予め25℃の恒温器に保存した実施例および比較例の各殺菌剤組成物19.8mLを滅菌バイアル瓶にとり、これに前培養した試験菌液を1%量(0.2mL)接種した。接種したのち、30秒後にその1mLを採取し、LP希釈液9mLで希釈した。この希釈液をさらに段階希釈し、寒天平板混釈法により生菌数を測定し、下記評価基準により評価した。結果は、表1~2中に示した。なお、試験菌は、C.xerosis(NBRC16721)を用い、初期の生菌数は表1~2中に示した。
【0024】
(評価基準)
◎:10個未満の生菌数
〇:10個以上10の4乗個未満の生菌数
×:10の4乗個以上の生菌数
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】
本発明の殺菌剤組成物の処方例を以下に示す。
(処方例1:液体防臭剤)
パラフェノールスルホン酸亜鉛 2.0
エタノール 30.0
1,3-ブチレングリコール 3.0
イソプロピルメチルフェノール 0.1
ポリオキシエチレン(50)硬化ヒマシ油 0.5
香料 適 量
エデト酸Na 0.2
精製水 残 部
合計 100.0
【0028】
(処方例2:消臭スプレー)
エタノール 50.0
キチンナノファイバー 0.05
イソプロピルメチルフェノール 0.1
緑茶エキス 10.0
精製水 残 部
合計 100.0
【0029】
(処方例3:パウダースプレー)
クロロヒドロキシアルミニウム 3.0
無水ケイ酸 1.5
シリコーン処理タルク 1.5
酸化亜鉛 0.5
イソプロピルメチルフェノール 0.1
イソプロピルミリスチン酸エステル 1.05
ジメチルポリシロキサン 1.0
ソルビタン脂肪酸エステル 0.3
エタノール 1.0
キチンナノファイバー 0.05
液化石油ガス 90.0
合計 100.0