(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023133866
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】エレベータ
(51)【国際特許分類】
B66B 1/34 20060101AFI20230920BHJP
B66B 7/04 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
B66B1/34 A
B66B7/04 D
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022039099
(22)【出願日】2022-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】宮川 行宏
【テーマコード(参考)】
3F305
3F502
【Fターム(参考)】
3F305BA05
3F305BA07
3F305BD26
3F502HA07
3F502HB06
3F502JA62
3F502NA19
3F502NA21
3F502NA23
3F502NA31
(57)【要約】 (修正有)
【課題】かごの運行に関して、消費電力量を抑制できるエレベータを提供する。
【解決手段】本発明のエレベータは、1又は複数のかごと、かごが内部を移動可能な移動路と、かごを移動路内で移動させる移動装置4と、移動路内でのかごの移動をガイドするガイドレールと、ガイドレールに接し、かごの移動に伴って転動するローラ33と、ローラの前記転動によって発電可能な発電手段37と、を備え、発電手段が発電した電力は、かごの運行に用いられる。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は複数のかごと、前記かごが内部を移動可能な移動路と、前記かごを前記移動路内で移動させる移動装置と、前記移動路内でのかごの移動をガイドするガイドレールと、前記ガイドレールに接し、前記かごの移動に伴って転動するローラと、前記ローラの前記転動によって発電可能な発電手段と、を備え、
前記発電手段が発電した電力は、前記かごの運行に用いられるエレベータ。
【請求項2】
前記発電手段の発電状態を制御する発電制御部を備え、
前記発電制御部は、前記かごが減速中、等速移動中、及び、加速中のうち少なくとも1つの間に前記ローラの前記転動によって発電するように前記ローラを制御する請求項1に記載のエレベータ。
【請求項3】
前記ローラを駆動させることができる転動手段をさらに備える請求項1又は2に記載のエレベータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来エレベータとして、特許文献1に記載のような複数の昇降路間を移動可能なエレベータが知られている。エレベータは、隣接して配置される複数の昇降路と、昇降路内を昇降する複数の昇降駆動装置と、乗りかごと、を備え、各昇降駆動装置は、水平方向に延びる軌道部を備え、乗りかごは軌道部に係合し、軌道部に沿って走行可能な軌道走行部を備える。
【0003】
このようなエレベータによれば、複数の昇降路に昇降駆動装置が隣接して並んでいる場合に、各昇降駆動装置の軌道部に沿って軌道走行部が走行することで、乗りかごが複数の昇降路間を移動することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなエレベータでは、かごの運行に関して、軌道走行部を駆動させる必要があるので、かごの運行に関する消費電力が大きくなることがあった。なお、かごの運行に関して消費される電力は、かごの移動に関する電力消費だけでなく、かご内の電灯に関する消費電力なども含まれる。
【0006】
そこで、本発明は、かごの運行に関して、消費電力量を抑制できるエレベータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のエレベータは、1又は複数のかごと、前記かごが内部を移動可能な移動路と、前記かごを前記移動路内で移動させる移動装置と、前記移動路内でのかごの移動をガイドするガイドレールと、前記ガイドレールに接し、前記かごの移動に伴って転動するローラと、前記ローラの前記転動によって発電可能な発電手段と、を備え、前記発電手段が発電した電力は、前記かごの運行に用いられる。
【0008】
かかる構成によれば、ローラの転動によって発電でき、発電によって得た電力をかごの運行に用いるので、かごの運行に必要な電力の少なくとも一部をローラの転動による発電により供給することができる。よって、かごの運行に関する消費電力量を抑えることができる。
【0009】
また、前記発電手段の発電状態を制御する発電制御部を備え、前記発電制御部は、前記かごが減速中、等速移動中、及び、加速中のうち少なくとも1つの間に前記ローラの前記転動によって発電するように前記ローラを制御することもできる。
【0010】
かかる構成によれば、ローラが発電するタイミングを発電制御部によって制御できるので、ローラが発電することで、ローラの転動に関する抵抗が増大してかごの運行に悪影響を及ぼすことを抑制できる。
【0011】
また、前記ローラを駆動させることができる転動手段をさらに備えることもできる。
【0012】
かかる構成によれば、ローラを転動手段によって駆動させることができるので、かごの移動をローラで補助することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、かごの運行に関して、消費電力量を抑制できるエレベータを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係るエレベータの概略図である。
【
図2】同エレベータの昇降移動装置を示す図である。
【
図3】同エレベータのかご及び横移動装置を示す図である。
【
図4】同エレベータにおけるかごの横移動を示す概略図である。
【
図5】同エレベータにおけるかごの移動を示す概略図である。
【
図7】同エレベータの横移動装置を示す背面図である。
【
図8】同横移動装置が昇降移動装置に結合した状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態に係るエレベータ1について
図1乃至
図9を参照して説明する。なお、説明の便宜上、上下方向、左右方向、及び前後方向は
図1に記載した方向を基準に説明する。
【0016】
図1乃至
図5に示すように、エレベータ1は、かご2と、かご2が内部を移動する移動路3と、かご2を移動路3内で移動させる移動装置4と、移動路3内でのかご2の移動をガイドするガイドレール5と、を備える。また、本実施形態のエレベータ1は、複数台のかご2を備える。
【0017】
図4乃至
図6に示すように、移動路3は、上下方向に延びる複数の昇降路A,Bと、昇降路A,B間に亘って延びる横移動路Cと、を備える。本実施形態の移動路3では、2本の昇降路A,Bが隣接して設けられている。また、横移動路Cは、昇降路A,Bの延伸方向に直交する方向(左右方向)に沿って延びるように設けられる。本実施形態の横移動路Cは、移動装置4(具体的には後述する昇降移動装置13)によって形成される。
【0018】
ガイドレール5は、移動路3に沿って延びるレールである。具体的に、ガイドレール5は、昇降路A,Bに沿って延びる縦ガイドレール11と、横移動路Cに沿って延びる横ガイドレール12と、を備える。縦ガイドレール11は、一対の棒状体で構成され、一対の棒状体の内側を昇降移動装置13が移動可能に構成される。横ガイドレール12については後述する。
【0019】
図1に示すように、移動装置4は、昇降路A,Bに沿って移動可能な昇降移動装置13と、横移動路Cに沿って移動可能な横移動装置14と、を備える。本実施形態の昇降移動装置13は、昇降路A,Bの上部に設けられる巻き上げ機(図示しない)にロープ6で連結されており、巻き上げ機がロープ6を巻き上げることで昇降路A,Bに沿って上下方向に移動可能である。また、横移動装置14は、内部に駆動源としての移動手段35を備え、駆動源による駆動力で横移動路Cに沿って横方向に移動可能である。
【0020】
昇降移動装置13は、かご2が分離又は結合可能であり、かご2が結合した状態で上下方向に移動することで、結合したかご2を昇降路A,B内で移動させることができる。具体的には、
図2に示すように、昇降移動装置13は、巻き上げ機から延びるロープ6が連結されるロープ連結部21と、横移動装置14が嵌合可能な結合部22と、縦ガイドレール11が嵌合可能な被案内部23と、を備える。被案内部23は、上下方向に延びる窪みであり、昇降移動装置13の左右両側面に形成されている。本実施形態の昇降移動装置13は、前面に結合部22を備え、左右両側面に被案内部23を備える直方体状の装置である。このような昇降移動装置13は、ロープ連結部21に連結されたロープ6が巻上げ又は巻下げされることで、縦ガイドレール11に沿って上下に移動する。
【0021】
結合部22は、かご2が結合可能な、昇降移動装置13の前面に設けられる部位であり、本実施形態では、かご2に設けられた横移動装置14が結合可能な部位である。具体的に、結合部22は、昇降移動装置13の前面に、後方に凹となるように形成された、昇降移動装置13の左右方向全域にわたって延びるくぼみ部分である。結合部22は、横移動装置14の駆動源として設けられるリニアモータの二次側導体を構成するリアクションプレート24と、リアクションプレート24に沿って延びるリニアスケール25と、横移動装置14の左右方向への移動をガイドする横ガイドレール12と、嵌合した横移動装置14が前方に移動することを規制する抜け止め部26(
図8参照)と、を備える。
【0022】
リアクションプレート24及びリニアスケール25は、結合部22の左右方向の全域にわたって延びるように配置される板状体である。リアクションプレート24は、強磁性体(例えば鉄材)と良導電体(例えばアルミ材)を組み合わせて構成された板状体であり、横移動装置14に設けられる駆動源としてのリニアモータの一次側導体(移動手段35)が発生させる磁界によって良導電体に誘導電流が流れ、良導電体を流れる誘導電流によって、強磁性体に磁力が励起されるように構成されている。リニアスケール25は、リアクションプレート24に沿って延びる板状体であり、前面に光学的手段で読み取り可能な目盛りが形成されている。目盛りは、結合部22における左端又は右端からの距離を示す目盛りである。
【0023】
横ガイドレール12は、左右方向に沿って延びる部位である。また、横ガイドレール12は、一対設けられ、一対の横ガイドレール12が対向するように配置されている。本実施形態では、結合部22の上面及び下面がそれぞれ横ガイドレール12として構成される。即ち、本実施形態の一対の横ガイドレール12は、上下方向に離間して配置された左右方向に延びる部位であり、上下方向の幅が左右方向の全域にわたって略一定である。
【0024】
図8に示すように、抜け止め部26は、結合部22に嵌合した横移動装置14に対して係合して、横移動装置14が前方に移動することを規制する部位である。具体的に、抜け止め部26は、昇降移動装置13の前面に形成されたくぼみの前端部に設けられた、上下方向に延びる部位であり、くぼみの前端部の上下方向の幅を狭める部材である。
【0025】
図4乃至
図6に示すように、横移動路Cは、横並びの配置となった昇降移動装置13によって形成される。具体的に、横移動路Cは、隣り合って配置される各昇降路A,B内を移動する昇降移動装置13が横並びの配置となった際に、各昇降移動装置13の結合部22によって形成される。また、横移動路Cを構成する各結合部22のリアクションプレート24は、略一直線状に配置される。本実施形態の横移動路Cには、昇降移動装置13同士の間に継ぎ目部分Dが形成される。横移動路Cにおいて、継ぎ目部分Dにはリアクションプレート24、リニアスケール25、及び、横ガイドレール12が設置されていない。
【0026】
図3及び
図8に示すように、横移動装置14は、駆動源を内蔵する本体部31と、本体部31の前方に設けられ、本体部31及びかご2を連結するかご連結部32と、を備え、左右方向に延伸する棒状の装置である。本実施形態の横移動装置14は、かご2の背面にかご連結部32によって連結されている。また、かご連結部32は本体部31よりも上下方向長さが短く構成されている。このような横移動装置14は、結合部22に対して分離及び結合可能であり、結合部22に結合した状態で、本体部31が抜け止め部26に当接して、横移動装置14の前側への移動が規制される。また、横移動装置14は、かご2と一体となって横移動路Cを移動することで、かご2を移動路3内で移動させる。
【0027】
図7乃至
図9に示すように、横移動装置14は、一部が本体部31の上方又は下方に突出するローラ33と、リニアスケール25の目盛りを読み取り可能な位置検出器34と、リニアの一次側導体を有する移動手段35と、を備える。また、横移動装置14は、ローラ33を転動させることができる転動手段36及びローラ33の転動によって発電可能な発電手段37を有するモータジェネレータ38と、外部電源又は発電手段37が発電した電力を蓄電可能であり、少なくとも転動手段36及び移動手段35に電力を供給可能な蓄電池39と、発電手段37を制御し、かつ、発電手段37が発電した電力を蓄電池39が蓄電可能なように変換する充電装置40と、横移動装置14の移動速度を制御する制御マイコン41と、転動手段36及び移動手段35に供給される電流の周波数を変化させるインバータ42と、を備える。
【0028】
ローラ33は、横ガイドレール12に接し、横移動装置14の横移動路Cに沿った移動に伴って転動可能な部位である。本実施形態のローラ33は、横ガイドレール12に接して転動する円柱状の転動部43と、転動部43の軸心に沿って前後方向に延びる転動軸44と、を有し、転動部43は、転動軸44周りで回動可能である。また、本実施形態のローラ33は、転動部43と転動軸44とが一体となって回動する。本実施形態のローラ33は、横移動装置14の左右方向に離間して複数配置される。本実施形態で、ローラ33は、横移動装置14の上部及び下部に設けられており、具体的には、横移動装置14の下部に2つ、上部に1つ設けられている。上部に配置されるローラ33は、左右方向で下部に配置される2つのローラ33の間の位置に、転動部43が上方の横ガイドレール12に接するように設けられている。下部に配置されるローラ33は、転動部43が下方の横ガイドレール12に接するように設けられている。
【0029】
位置検出器34は、リニアスケール25を読み取って、横移動路Cに対する横移動装置14の位置を把握可能な装置である。本実施形態の位置検出器34は、光学的手段によってリニアスケール25の目盛りを読み取って横移動路Cに対する横移動装置14の位置を把握する。また、位置検出器34は、検出した横移動装置14の位置を制御マイコン41に出力する。位置検出器34は、結合部22に結合した本体部31における、リニアスケール25と対向する位置に設けられる。また、位置検出器34は、左右方向に離間して複数配置されており、具体的には、横移動路Cにおける継ぎ目部分Dの左右方向長さ以上に離間して2つ配置されている。本実施形態の位置検出器34は、横移動装置14の左右両端部に設けられている。
【0030】
移動手段35は、横移動装置14を横移動路Cに沿って移動させる駆動力を発生させる。本実施形態の移動手段35は、リニアモータの一次側導体として構成されており、結合部22に結合した本体部31における、リアクションプレート24と対向する位置に設けられ、交流電流が流れることで、リアクションプレート24の延伸方向に移動する駆動力を発生させる。また、移動手段35は、左右方向に離間して複数配置されており、具体的には、横移動路Cにおける継ぎ目部分Dの左右方向長さ以上に離間して2つ配置されている。
【0031】
モータジェネレータ38は、ローラ33の転動軸44に連結されており、転動軸44を介して転動部43を転動させる転動手段36と、転動軸44を介して転動部43の転動による力を伝達される発電手段37と、を備える。本実施形態のモータジェネレータ38は、転動手段36と発電手段37が一体として構成されており、具体的には、ローラ33に対して回動力を与えて転動させる運転及びローラ33の回動力を受けて発電する運転の両方が可能なモータである。即ち、本実施形態で転動手段36及び発電手段37は一体として構成されている。また、本実施形態のモータジェネレータ38は、交流電流を受けて回動する交流モータであり、転動部43の転動によって交流電流を発電可能である。
【0032】
モータジェネレータ38は、少なくとも1つ設けられている、本実施形態でモータジェネレータ38は、2つ設けられており、横移動装置14の下部に設けられる2つのローラ33にそれぞれ連結されている。また、モータジェネレータ38は、ローラ33と一体として構成されている。即ち、本実施形態のモータジェネレータ38は、インホイールモータである。
【0033】
蓄電池39は、外部電源から供給される電力及び発電手段37が発電した電力を蓄電可能な電池である。また、蓄電池39は、蓄電した電力をかご2の運行のために供給可能である。具体的に、蓄電池39は、移動手段35及び転動手段36に対して電力を供給可能である。また、蓄電池39は、かご2内の設備(例えば、電灯や空調)に対して電力を供給する。
【0034】
充電装置40は、外部電源から供給される電力及び発電手段37が発電した電力を蓄電池39に充電するための装置である。具体的に、充電装置40は、外部電源から供給される電力及び発電手段37が発電した電力を蓄電池39に蓄電可能なように整流する装置である。また、充電装置40は、発電手段37の発電状態を制御する発電制御部として機能する。具体的に、充電装置40は、発電手段37を制御して、発電手段37がローラ33の転動によって発電する状態と発電しない状態とを切り替える制御を行う。また、充電装置40は、蓄電池39に蓄電された電力の残量に応じて、蓄電池39に電力を供給する制御を行う。具体的に、充電装置40は、抵抗器(図示しない)を備え、蓄電池39が満充電であるにもかかわらずローラ33が転動によって発電手段37が発電した場合に、発電手段37が発電した電力を抵抗器に流して、消費する制御を行う。
【0035】
インバータ42は、制御マイコン41の制御に応じて、蓄電池39から転動手段36及び移動手段35に供給される電力について、電流の周波数を変換する装置である。具体的に、インバータ42は、制御マイコン41の移動手段35及び転動手段36に対する推力の制御に対応して、蓄電池39から転動手段36及び移動手段35に供給される電力について、電流の周波数を変換する。本実施形態のインバータ42は、1ユニットで移動手段35及び転動手段36に供給される電流の周波数を変換可能な多軸制御インバータである。
【0036】
制御マイコン41は、位置検出器34が把握した横移動路Cに対する横移動装置14の位置に基づいて移動手段35及び転動手段36の推力を制御する。また、制御マイコン41は、位置検出器34が把握した横移動路Cに対する横移動装置14の位置に基づいて横移動装置14を制動させるための制御を行う。具体的に、制御マイコン41は、位置検出器34が把握した横移動路Cに対する横移動装置14の位置に基づいて、横移動装置14を加速又は減速させるための制御を実行する。本実施形態の制御マイコン41は、インバータ42及び充電装置40を制御することで、横移動装置14の加速、減速及び等速での移動についての制御をする。
【0037】
以上のような構成のエレベータ1のかご2について、横移動路Cに沿った移動(横移動)について説明する。本実施形態のかご2は、横移動装置14の横移動に伴って横移動する。
【0038】
図4及び
図5に示すように、本実施形態におけるかご2の横移動は、かご2が横並びになった昇降移動装置13の一方側(昇降路A側)から他方側(昇降路B側)に向かう移動である。具体的に、横移動の際には、横移動装置14が一方側の昇降移動装置13の結合部22に結合した状態から他方側の昇降移動装置13の結合部22に結合する状態に移行することで、横移動装置14と連結されたかご2が横移動装置14と共に横移動する。例えば、
図5に示すように、本実施形態のかご2は、上方で停止又は移動するかご2を追い越して上方に移動したい場合に、横移動して隣の昇降路A,Bで昇降する。
【0039】
横移動装置14が横移動する際には、制御マイコン41が移動手段35又は転動手段36の推力を制御して、横移動装置14を加速させる。本実施形態では、制御マイコン41が、インバータ42を制御し、移動手段35に対して所定の周波数の電流を供給させることで、横移動装置14を所定速度まで加速させる。また、制御マイコン41は、横移動装置14が所定速度まで加速すると、移動手段35の推力を切る制御を行う。移動手段35の推力が切られると、横移動装置14は、横移動路Cに沿って惰行する。さらに、制御マイコン41は、横移動装置14が惰行する状態において、所定速度以下に減速した場合に、再度移動手段35に対して所定の周波数の電流を供給するように制御することもできる。なお、このような構成に限らず、制御マイコン41は、横移動装置14が所定速度まで加速した後は、横移動装置14が略等速で移動できるように制御することもできる。
【0040】
また、本実施形態で、転動手段36は、ローラ33を転動させて移動手段35による横移動装置14の横移動を補助する。例えば、かご2の積載量が多く、移動手段35の推力のみでは十分な加速を得られない場合や、移動手段35に不具合が生じた場合に、転動手段36がローラ33を転動させて、横移動装置14の横移動を補助する。
【0041】
横移動装置14が所定位置まで移動したことを位置検出器34が把握すると、制御マイコン41は、横移動装置14を減速させ、停止させる制御を行う。具体的に、横移動装置14を減速させる際に、制御マイコン41は、インバータ42を制御して移動手段35の推力を切りつつ、発電手段37が発電するように制御する。
【0042】
図8に示すように、ローラ33(具体的には転動部43)は、横ガイドレール12に接した状態であり、横移動装置14及びかご2の横移動に伴って横ガイドレール12に接して転動する。また、本実施形態では、上部に設けられるローラ33及び下部に設けられるローラ33の両方が常時横ガイドレール12に接した状態となるようにローラ33が設けられている。即ち、ローラ33は横移動に伴って常に転動する。
【0043】
発電手段37が発電しているときには、ローラ33の転動について回転抵抗が発生する。即ち、発電手段37が発電しているときには、回転抵抗によって、横移動装置14が減速するように力がかかる。本実施形態の制御マイコン41は、横移動装置14が減速する際に発電手段37が発電するように充電装置40(発電制御部)を制御するので、発電手段37の発電のためにローラ33にかかる回転抵抗によって、横移動装置14が制動され、減速する。
【0044】
発電手段37が発電した電力は、蓄電池39に蓄電されて、かご2の運行のために用いられる。具体的に、発電手段37が発電した電力は、一度蓄電池39に蓄電され、移動手段35又は転動手段36に供給されることで、かご2の運行(具体的には横移動)のために用いられる。また、発電手段37が発電した電力は、蓄電池39を介してかご2の内部の設備(例えば電灯)にも供給される。
【0045】
以上のような構成のエレベータ1によれば、ローラ33の転動によって発電でき、発電によって得た電力をかご2の運行に用いるので、かご2の運行に必要な電力の少なくとも一部をローラ33の転動による発電により供給することができる。よって、かご2の運行に関する消費電力量を抑えることができる。
【0046】
また、ローラ33が発電するタイミングを発電制御部(充電装置40)によって制御できるので、ローラ33が発電することで、ローラ33の転動に関する抵抗が増大してかご2の運行に悪影響を及ぼすことを抑制できる。
【0047】
さらに、ローラ33を転動手段36によって駆動させることができるので、かご2の移動をローラ33で補助することができる。
【0048】
また、移動装置4は、かご2を横方向に移動させる横移動装置14を備え、ガイドレール5は、横方向に延伸し、横移動装置14の横方向への移動をガイドする横ガイドレール12を備え、発電手段37は、ローラ33は横移動装置14が横移動する際の転動で発電する。よって、かご2が横移動する際のローラ33の転動で発電できる。
【0049】
さらに、発電制御部は、かご2を制動させる必要がある場合に、ローラ33の転動によって発電するように発電手段37を制御する。よって、かご2の運動エネルギーで発電できるのでエネルギー効率が良い。
【0050】
また、横移動路Cには、リアクションプレート24が配置されない区間(継ぎ目部分D)が形成され、移動手段35は、横移動装置14の延伸方向に、リアクションプレート24が配置されない区間の距離以上に離間して複数設けられる。よって、複数の移動手段35のうち少なくとも一つが、リアクションプレート24が配置される区間に位置することができるので、横移動路Cにおいて確実にかご2を横移動させることができる。
【0051】
さらに、ローラ33は、横移動装置14の延伸方向に離間して複数設けられて設けられるので、横移動装置14の延伸方向における複数位置で横ガイドレール12に接することができる。よって、横移動装置14が安定した状態で横移動することができる。
【0052】
また、発電手段37は、横移動装置14の下部に設けられるローラ33の転動によって発電可能に構成される。よって、重力により下部に設けられるローラ33は、確実に横ガイドレール12に接することができるので、かご2の移動に伴って確実に発電することができる。
【0053】
さらに、ローラ33は、横移動装置14の上方及び下方の一方に横移動装置14の延伸方向に離間して少なくとも2つ設けられ、横移動装置14の上方及び下方の他方に横移動装置14の延伸方向に離間して少なくとも1つ設けられる。よって、横移動装置14が安定した状態で横移動することができる。
【0054】
また、横移動路Cには、横ガイドレール12が配置されない区間(継ぎ目部分D)が形成され、ローラ33は、横移動装置14の延伸方向において、横ガイドレール12が配置されない区間の距離以上に離間して3つ以上設けられて設けられるので、横移動装置14の延伸方向における複数位置で横ガイドレール12に接することができる。よって、横移動装置14が安定した状態で横移動することができる。
【0055】
以上、本発明の実施形態について一例を挙げて説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えることができる。
【0056】
例えば、移動装置4は電力で駆動する場合について説明したが、このような構成に限らず、電力以外(例えばエンジン)で駆動するようにすることもできる。このような構成を採用する場合には、ローラ33の転動によって発電された電力をかご2の内部の機器(例えば電灯)に使用できる。
【0057】
また、かご2が横移動する際に発電する場合について説明したが、このような構成に限らず、かご2が縦移動する際に発電するようにすることもできるし、かご2が縦移動する際及び横移動する際の両方で発電するようにすることもできる。
【0058】
さらに、移動路3として、複数の昇降路A,Bと、昇降路A,B間に形成される横移動路Cを備えるエレベータ1を例に挙げて説明したが、このような構成に限らず、1つの昇降路A,B内を1台のかご2が移動するエレベータ1に本発明を適用することもできる。
【0059】
また、ローラ33の転動によって発電された電力は蓄電される場合について説明したが、このような構成に限らず、発電した電力を蓄電せずにかご2の運行に用いることもできる。
【0060】
さらに、転動手段36と発電手段37が一体となったモータジェネレータ38を備える場合について説明したが、このような構成に限らず、転動手段36と発電手段37が別体として構成されることもできる。
【0061】
また、モータジェネレータ38は、ローラ33と一体として構成されるインホイールモータである場合について説明したが、このような構成に限らず、モータジェネレータ38とローラ33が別体として構成されることもできる。
【0062】
さらに、横移動装置14は、横移動路Cの全領域を主として移動手段35の推進力で移動する場合について説明したが、このような構成に限らない。例えば、横移動路Cが左右方向に長く、かつ、リアクションプレート24が設けられていない区間が横移動装置14の長さよりも長い場合に、リアクションプレート24が設けられていない区間は転動手段36によりローラ33を転動させることで得られる推進力で移動するように構成することもできる。
【0063】
また、発電手段37は、横移動装置14の下部に設けられるローラ33の転動によって発電する場合について説明したが、このような構成に限らず、横移動装置14の上部に設けられるローラ33の転動によって発電するように構成することもできる。このような構成では、かご2の重みで横移動装置14がかご連結部32を軸に上方に浮き上がった場合にも確実に発電できる。
【0064】
さらに、発電手段37は、かご2が減速する際に発電するように制御される場合について説明したが、このような構成に限らず、例えば、かご2の加速時やかご2が等速移動する際に発電して、かご2の移動速度(加速度)を調整することもできる。
【符号の説明】
【0065】
1…エレベータ、2…かご、3…移動路、4…移動装置、5…ガイドレール、6…ロープ、11…縦ガイドレール、12…横ガイドレール、13…昇降移動装置、14…横移動装置、21…ロープ連結部、22…結合部、23…被案内部、24…リアクションプレート、25…リニアスケール、26…抜け止め部、31…本体部、32…かご連結部、33…ローラ、34…位置検出器、35…移動手段、36…転動手段、37…発電手段、38…モータジェネレータ、39…蓄電池、40…充電装置、41…制御マイコン、42…インバータ、43…転動部、44…転動軸、A,B…昇降路、C…横移動路、D…継ぎ目部分
【手続補正書】
【提出日】2023-06-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は複数のかごと、前記かごが内部を移動可能な移動路と、前記かごを前記移動路内で移動させる移動装置と、前記移動路内でのかごの移動をガイドするガイドレールと、前記ガイドレールに接し、前記かごの移動に伴って転動するローラと、前記ローラの前記転動によって発電可能な発電手段と、を備え、
前記移動路は、上下方向に延びる昇降路と、横移動路と、を備え、
前記かごと分離又は結合可能であるとともに、前記昇降路内を昇降する昇降駆動装置を備え、
前記昇降駆動装置は、前記横移動路を形成し、
前記ガイドレールは、前記昇降路に沿って延びる縦ガイドレールと、前記横移動路に沿って延びる横ガイドレールと、を備え、
前記ローラは、前記横ガイドレールに接し、前記かごの前記横移動路における移動に伴って転動し、
前記発電手段が発電した電力は、前記かごの運行に用いられるエレベータ。
【請求項2】
前記発電手段の発電状態を制御する発電制御部を備え、
前記発電制御部は、前記かごが減速中、等速移動中、及び、加速中のうち少なくとも1つの間に前記ローラの前記転動によって発電するように前記ローラを制御する請求項1に記載のエレベータ。
【請求項3】
前記ローラを駆動させることができる転動手段をさらに備える請求項1又は2に記載のエレベータ。