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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023013387
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】建具用錠
(51)【国際特許分類】
   E05B 65/10 20060101AFI20230119BHJP
   E05C 1/04 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
E05B65/10 L
E05C1/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021117529
(22)【出願日】2021-07-16
(71)【出願人】
【識別番号】000138613
【氏名又は名称】株式会社ユニオン
(74)【代理人】
【識別番号】100119725
【弁理士】
【氏名又は名称】辻本 希世士
(74)【代理人】
【識別番号】100168790
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 英之
(72)【発明者】
【氏名】榎本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】若林 亮
(57)【要約】
【課題】
トイレなどで使用される個室の扉に使用され、施錠中で扉が開かない状態であっても、外部からの操作にて扉を開くことができる建具用錠を提供することを目的とする。
【解決手段】
一の面1Aから突設された回動軸11と貫通孔12を有する錠座部1と、貫通孔12と連通する係止孔21を有し、前記回動軸11を軸支する錠基部2と、錠基部2に沿って略水平方向に移動可能であり、一端側の下部又は上部のいずれか一方に切欠部31を有する操作部3と、操作部3の一端側との係合により施錠又は係脱により解錠となる受部4と、貫通孔12及び係止孔21に挿通され係止孔21の縁部22にて係止可能であるとともに回動により係止孔21の縁部22との係止を解除可能である1を一端側に有し、外部部材Tの先端と接続可能である連結部52を他端側に有する係止部5を備える建具用錠により解決した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一の面(1A)から突設された回動軸(11)と貫通孔(12)を有する錠座部(1)と、
前記貫通孔(12)と連通する係止孔(21)を有し、前記回動軸(11)を軸支する錠基部(2)と、
前記錠基部(2)に沿って略水平方向に移動可能であり、一端側の下部又は上部のいずれか一方に切欠部(31)を有する操作部(3)と、
前記切欠部(31)を通過可能であり、前記操作部(3)の一端側との係合により施錠又は係脱により解錠となる受部(4)と、
前記貫通孔(12)及び前記係止孔(21)に挿通され前記係止孔(21)の縁部(22)にて係止可能であるとともに回動により前記係止孔(21)の縁部(22)との係止を解除可能である係止片(51)を一端側に有し、外部部材(T)の先端と接続可能である連結部(52)を他端側に有する係止部(5)
を備えることを特徴とする建具用錠。
【請求項2】
前記錠座部(1)の他の面(1B)側に位置し、前記回動軸(11)が突設されている方向とは反対方向へ前記係止部(5)を付勢する弾性部材(6)を備えることを特徴とする請求項1に記載の建具用錠。
【請求項3】
前記切欠部(31)が前記操作部(3)の一端側の下部に設けられており、前記錠基部(2)に軸支される前記回動軸(11)が前記錠基部(2)及び前記操作部(3)の重心よりも前記受部(4)に近い方向に設けられている、又は、前記切欠部(31)が前記操作部(3)の一端側の上部に設けられており、前記錠基部(2)に軸支される前記回動軸(11)が前記錠基部(2)及び前記操作部(3)の重心よりも前記受部(4)から遠い方向に設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の建具用錠。
【請求項4】
前記回動軸(11)が突設されている方向とは反対方向へ前記錠座部(1)の他の面(1B)より突設され、前記係止部(5)を内包する筒状部(7)を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の建具用錠。
【請求項5】
前記切欠部(31)における略水平方向の長さが、受部(4)における略水平方向の長さよりも長いことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の建具用錠。
【請求項6】
前記外部部材(T)の先端が棒状であり、連結部(52)に前記外部部材(R)の先端と嵌合する嵌合穴(521)を備えることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の建具用錠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレなどで使用される個室の扉に取り付けられ、その個室が使用中であることにより施錠されており扉が開かない状態であっても、外部から操作することで扉を開くことが可能である建具用錠に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トイレなどで使用される個室の扉に取り付けられ、その個室が使用中であることにより施錠されており扉が開かない状態であっても、その個室内で体調不良などのために自ら扉を開くことができない緊急事態のときに、他者が外部から操作することで扉を開くことが可能となり、その個室内の使用者を救助等することができる建具用錠が種々知られている。
【0003】
そのような建具用錠として、例えば、特許文献1において、操作部11を操作して受部13との係脱により施錠又は解錠とし、扉Dの内表面に固設される錠装置1と、錠装置1の施錠操作に応じて、扉Dの外表面側から先端部21が突出する表示部材2と、表示部材2に並設された棒状の係合部材3を備え、さらに、操作部11において、係合部材3の基端部32と当接可能である傾斜面112aを有している建具用錠に係る発明が開示されている。なお、当段落における符号は、特許文献1における符号である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-145731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の建具用錠では、明細書段落0029において、「図6に示す施錠状態において、施錠状態において、係合部材3の傾斜部33が、操作基部112の傾斜面112aを押すため、係合部材3の傾斜部33と操作基部112の傾斜面112aの当接箇所が錠基部12側から操作枠部111側に向かって移動することになるので、操作部11が錠基部12に対して相対的に移動して、操作部11と受部13との係合が解除され、錠装置1が図5に示す解錠状態となる。」と記載されていように、非常時には、係合部材3の傾斜部33が操作基部112の傾斜面112aと当接しながら錠基部112を移動させることにより解錠して扉Dを開けることができるが、各種部材の経年変化によって傾斜部33を傾斜面112aに対して円滑に摺動させることができないおそれがあるという課題があった。なお、当段落における符号は、特許文献1における符号である。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題に鑑み、トイレなどで使用される個室の扉に使用され、その個室が使用中であることにより施錠されており扉が開かない状態であっても、その個室内で体調不良などのために自ら扉を開くことができない緊急事態のときに、他者が外部から操作することで操作部等を略水平方向へ移動させなくても円滑に解錠して扉を開くことが可能となる建具用錠を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
〔1〕すなわち、本発明は、一の面(1A)から突設された回動軸(11)と貫通孔(12)を有する錠座部(1)と、前記貫通孔(12)と連通する係止孔(21)を有し、前記回動軸(11)を軸支する錠基部(2)と、前記錠基部(2)に沿って略水平方向に移動可能であり、一端側の下部又は上部のいずれか一方に切欠部(31)を有する操作部(3)と、前記切欠部(31)を通過可能であり、前記操作部(3)の一端側との係合により施錠又は係脱により解錠となる受部(4)と、前記貫通孔(12)及び前記係止孔(21)に挿通され前記係止孔(21)の縁部(22)にて係止可能であるとともに回動により前記係止孔(21)の縁部(22)との係止を解除可能である係止片(51)を一端側に有し、外部部材(T)の先端と接続可能である連結部(52)を他端側に有する係止部(5)を備えることを特徴とする建具用錠である。
【0008】
〔2〕そして、前記錠座部(1)の他の面(1B)側に位置し、前記回動軸(11)が突設されている方向とは反対方向へ前記係止部(5)を付勢する弾性部材(6)を備えることを特徴とする前記〔1〕に記載の建具用錠である。
【0009】
〔3〕そして、前記切欠部(31)が前記操作部(3)の一端側の下部に設けられており、前記錠基部(2)に軸支される前記回動軸(11)が前記錠基部(2)及び前記操作部(3)の重心よりも前記受部(4)に近い方向に設けられている、又は、前記切欠部(31)が前記操作部(3)の一端側の上部に設けられており、前記錠基部(2)に軸支される前記回動軸(11)が前記錠基部(2)及び前記操作部(3)の重心よりも前記受部(4)から遠い方向に設けられていることを特徴とする前記〔1〕又は前記〔2〕に記載の建具用錠である。
【0010】
〔4〕そして、前記回動軸(11)が突設されている方向とは反対方向へ前記錠座部(1)の他の面(1B)より突設され、前記係止部(5)を内包する筒状部(7)を備えることを特徴とする前記〔1〕から前記〔3〕のいずれかに記載の建具用錠である。
【0011】
〔5〕そして、前記切欠部(31)における略水平方向の長さが、受部(4)における略水平方向の長さよりも長いことを特徴とする前記〔1〕から前記〔4〕のいずれかに記載の建具用錠。
である。
【0012】
〔6〕そして、前記外部部材(T)の先端が棒状であり、連結部(52)に前記外部部材(R)の先端と嵌合する嵌合穴(521)を備えることを特徴とする前記〔1〕から前記〔5〕のいずれかに記載の建具用錠。
【発明の効果】
【0013】
本願発明によれば、トイレなどで使用される個室の扉に使用され、その個室が使用中であることにより施錠されており扉が開かない状態であっても、その個室内で体調不良などのために自ら扉を開くことができない緊急事態のときに、他者が外部から操作することで操作部等を略水平方向へ移動させなくても円滑に解錠して扉を開くことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態の建具用錠における扉の外側から視た分解斜視図である。
図2】本発明の一実施形態の建具用錠における扉の内側から視た分解斜視図である。
図3】本発明の一実施形態の建具用錠における扉の外側から視た通常時の解錠状態を示す斜視図である。
図4】本発明の一実施形態の建具用錠における扉の外側から視た通常時の施錠状態及び外部部材を示す斜視図である。
図5】本発明の一実施形態の建具用錠における扉の外側から視た非常時の解錠操作開始時を示す斜視図である。
図6】本発明の一実施形態の建具用錠における扉の外側から視た非常時の解錠操作途中時を示す斜視図である。
図7】本発明の一実施形態の建具用錠における扉の外側から視た非常時の解錠状態を示す斜視図である。
図8】本発明の一実施形態の建具用錠における施錠状態において、非常時の解錠操作開始時を示す水平方向断面図である。
図9】本発明の一実施形態の建具用錠における施錠状態において、非常時の解錠操作途中時を示す水平方向断面図である。
図10】本発明の一実施形態の建具用錠における施錠状態において、非常時の解錠操作終了時を示す水平方向断面図である。
図11】本発明の一実施形態の建具用錠における施錠状態において、非常時の解錠状態を示す水平方向断面図である。
図12】本発明の一実施形態の建具用錠の錠基部2と係止部5において、相対的な位置関係を表す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る建具用錠に関する実施形態について詳しく説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するに好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に発明を限定する旨明記されていない限り、これらの形態に限定されるものではない。
【0016】
図1から図12において、本発明に係る建具用錠の一実施形態における構成部材、組み立てられた状態、通常の施錠時及び解錠時の状態、非常時の解錠操作の一連の状態、非常時の解錠時の状態などを示している。本実施形態では、建具用錠が、錠座部1、錠基部2、操作部3、受部4、係止部5、弾性部材6、筒状部7などから構成されている。
【0017】
錠座部1は、一の面である表面1Aから突設された回動軸11と、貫通孔12を有する部材である。錠座部1は、板状の部材であって、表面1Aとは反対側に位置する他の面である裏面1B側にて扉Dの内側面に固設される。なお、扉Dの内側面とは、扉Dに区切られる個室の内部側である。本発明において、錠座部1は、錠座部1に穿設された螺子孔13を介して2本の螺子14により扉Dに固設されるが、他の実施形態において、錠座部1は裏面1Bに付着された接着材により扉Dに固設されてもよい。
【0018】
回動軸11は、錠座部1の表面1Aから略垂直に突出して設けられ、突設方向に垂直な断面における外形が円形となる円柱状又は円筒状など部材である。回動軸11により、回動軸11を軸支する錠基部2が錠基部1に対して回動可能となっている。回動軸11は、回動軸本体11aと、錠座部1を回動軸本体11aとで挟持するように回動軸11の一端に螺設される第一回動軸固定部11bと、錠基部2を回動軸本体11aと挟持するように回動軸11の他端に螺設される第二回動軸固定部11cを備えている。回動軸本体11a、第一回動軸固定部11b、第二回動軸固定部11cにより、錠基部2が錠基部1に対して回動可能となるように、錠座部1と錠基部2が繋げられている。なお、回動軸11は、本実施形態において、錠座部1とは別部材であり錠座部1に取り付けられて一体化される部材であるが、他の実施形態において、錠座部1と予め一体となるように成形されていてもよい。
【0019】
貫通孔12は、錠座部1の表面1Aと裏面1Bを貫通する孔である。貫通孔12は、少なくとも係止部5の係止片51を挿通可能とする孔であり、本実施形態において錠座部1の長手方向に長い長孔であるが、係止片51を挿通可能であれば丸孔、多角形状の孔とすることができる。貫通孔12は、本実施形態において、錠座部1において、受部4から距離が回動軸11よりも遠くなる位置、受部4からより離れて穿設されているが、他の実施形態において、受部4から距離が回動軸11よりも近くなる位置、すなわち受部4からより近づいて穿設されていてもよい。
【0020】
錠基部2は、貫通孔12と連通する係止孔21を有し、回動軸11を回動可能に支持しており、使用者が操作する操作部3を取付けられる部材である。錠基部2は、錠座部1の表面1A側に設けられ、回動軸11により錠座部1と繋げられている。そして、錠基部2は、通常時において、係止孔21の縁である縁部22と係止する係止部5によって、錠座部1に対して回動しないように規制されているが、非常時には、縁部22と係止部5との係止が解除され係止部5が係止孔21から離脱することで、錠座部1に対して回動することができるようになる。
【0021】
係止孔21は、錠基部2が錠座部1に軸支されると、貫通孔12と連なることが可能である位置に穿設された孔であり、係止部5における少なくとも一端側を挿通することが可能である形状を有している。そして、縁部22は、係止孔21の縁であって、係止孔21に挿通された係止部5の一端側と係止可能な錠基部2の一部である。係止孔21は、本実施形態において水平方向Hに長い長孔であるが、係止部5の一端側を挿通し係止部5の一端側と縁部22が係止可能な限り、他の方向に長い長孔や、三角形、四角形などの多角形、星型多角形などの種々の形状とすることができる。
【0022】
回動孔23は、錠基部2に穿設され、回動軸11を軸支する孔である。回動孔23は、回動軸11の外周に合わせて円形状に設けられているため、回動軸11を介して錠座部1に対して回動することができる。
【0023】
摺動規制片24は、錠基部2に設けられた窪みからバネを介して、操作部3側へ付勢されている略円柱状の部材であって、操作部3に設けられた摺動溝33に摺動して水平方向Hへ所定の長さだけ移動することができる。摺動規制片24により、摺動規制片24が摺動溝33に嵌合することができる範囲内でしか操作部3が移動できないように規制されているため、操作部3が錠基部2から脱落しないようになっている。
【0024】
操作部3は、錠基部2に沿って略水平方向に移動可能であり、一端側の下部又は上部のいずれか一方に切欠部31を有する部材である。また、操作部3は、扉Dによって区切られた個室の内部から使用者が直接手で触れて操作する部材である。操作部3は、略直方体形状で、水平方向Hに長く、長手方向に垂直な断面において、角張った略C字状を有しており、その略C字状の先端側で板状に張り出した係合部32にて受部4と係合することができる。通常時の使用として、使用者が操作部3を錠基部2に対して水平方向Hへ摺動して、操作部3の一端側における上部又は下部に設けられた係合部32が受部4と係合することにより施錠状態となり、扉Dが内部からも外部からも開かなくなる。
【0025】
切欠部31は、上述のように、操作部3の一端側の下部又は上部のいずれか一方に設けられているため、操作部3が受部4と係合していることにより施錠状態であっても、非常時には切欠部31を受部4が通過して操作部3等が回動することにより解錠することができる。本実施形態において、切欠部31は、使用者の目に付きにくいように、操作部3の一端の下部に設けられている。そして、切欠部31における略水平方向の長さが、受部4における略水平方向の長さよりも長いことが好ましい。このような寸法であれば、操作部3が受部4と係合していることにより施錠状態であっても、切欠部31を受部4が通過して操作部3等が回動することにより解錠することができるとともに、操作部3により受部4を覆い隠して確実に施錠状態とすることができる。なお、切欠部31は、本実施形態において、操作部3の一端において水平方向Hに開放されるように操作部3の下部にてL字状に設けられているが、他の実施形態において、切欠部31を受部4が通過することができる限り、水平方向Hに開放されないように操作部3の下部にてコの字状に設けられていてもよい。
【0026】
摺動溝33は、操作部3の内面であって、錠基部2と対向する面に設けられて、摺動規制片24と緩嵌する操作部3の長手方向に伸びて設けられた窪みである。摺動溝33は、本実施形態において操作部3の長手方向の4分の1程度の長さの長孔として設けられており、その範囲でしか摺動規制片24が摺動することができない。このため、操作部3は、受部4と係合により施錠又は係脱により解錠となるように移動することは可能であるが、錠基部2から脱落しないようになっている。
【0027】
受部4は、切欠部31を通過可能であり、操作部3の一端側との係合により施錠又は係脱により解錠となる部材である。本実施形態において、操作部3の係合部32が水平方向Hに移動され、受部4の外周側面に設けられた係合溝41に進入することで、操作部3と受部4が係合する。そして、他の実施形態において、受部4の一の面と係合部32が係合して施錠できるようにするなど、必ずしも受部4に係合溝41が設けられていなくてもよい。また、受部4は、Dと略同一平面上に位置する壁Wに螺子42などの固定手段により取付けられている。
【0028】
そして、錠基部2、操作部3の位置関係について、以下のように設けられていることが好ましい。すなわち、切欠部31が操作部3の一端側の下部に設けられており、錠基部2に軸支される回動軸11が、錠基部2及び操作部3の重心よりも受部4に近い方向に設けられていることが好ましい。錠基部2、操作部3がこのような位置関係で設けられていると、操作部3の他端側が重くなるため、縁部22と係止部5との係止が解除され係止部5が係止孔21から離脱することで、錠座部1に対して回動することができるようになったときに、重力により錠基部2及び操作部3が錠座部1に対して確実に自動的に回動して解錠されるので、個室の外部側から扉Dを開くことができる。または、切欠部31が操作部3の一端側の上部に設けられており、錠基部2に軸支される回動軸11が、錠基部2及び操作部3の重心よりも受部4から遠い方向に設けられていることが好ましい。錠基部2、操作部3がこのような位置関係で設けられていると、操作部3の一端側が重くなるため、同様に、重力により錠基部2及び操作部3が錠座部1に対して確実に自動的に回動して解錠されるので、個室の外部側から扉Dを開くことができる。
【0029】
係止部5は、貫通孔12及び係止孔21に挿通され係止孔21の縁部22にて係止可能であるとともに回動により係止孔21の縁部22との係止を解除可能である1を一端側に有し、扉Dの外側から挿入した外部部材Tの先端と接続可能である連結部52を他端側に有する部材である。係止部5により、通常時には、係止孔21の縁である縁部22と係止することで、錠基部2が錠座部1に対して回動しないように規制しており、非常時には、縁部22との係止が解除され係止部5が係止孔21から離脱することで、錠基部2が錠座部1に対して回動することができるようになり、施錠状態であっても個室の外部側から扉Dを開くことができる。
【0030】
係止部5は、回動軸11と略平行となるように配設された略棒状の部材であり、一端側には、略T字状の係止片51を有し、他端側には嵌合穴521を備えた連結部52を有している。係止部5は、本実施形態において、係止部本体5aと連結部52の二つの部材から形成されているが、他の実施形態において、係止部本体5aと連結部52が予め一体成型されていてもよい。係止片51は、本実施形態において略T字状であるが、係止孔21の縁である縁部22と係止可能及び係脱可能である限り、略L字状、略J字状、星型多角形など種々の形状とすることができる。また、連結部52は工具などの外部部材Tの先端と接続して係止部5を回動するための部分であり、本実施形態において、連結部52には六角レンチなどの工具である外部部材Tの先端と嵌合可能な六角形状の嵌合穴521が設けられているが、他の実施形態において、外部部材Tの先端と接続して係止部5を回動することができる限り、連結部52として、他の多角形状の穴が設けられていてもよいし、フック、磁石など種々の部材として設けられていてもよい。
【0031】
弾性部材6は、錠座部1の他の面である裏面1B側に位置し、回動軸11が突設されている方向とは反対方向へ前記係止部5を付勢する部材である。係止片51は、係止孔21の縁である縁部22と係止している通常時において、弾性部材6の付勢力に抗って貫通孔12及び係止孔21に挿通されているが、縁部22と係止が解除された非常時には、弾性部材6の付勢力によって貫通孔12及び係止孔21から離脱し錠基部2が錠座部1に対して回動することができるようになり、施錠状態であってもより素早く個室の外部側から扉Dを開くことができる。このように、弾性部材6により、施錠状態であってもより素早く個室の外部側から扉Dを開くことができる。また、弾性部材6は設けられていることが好ましい部材であるが、上述した係止部5の操作は可能であることから必ずしも設けられていなければならない部材ではない。なお、弾性部材6は、本実施形態において、筒状部7内に位置し、錠座部1の裏面1Bに一端が当接し他端が係止部5の鍔部に当接しているコイルバネであり、係止部5を外部側へ付勢するように設けられているが、他の実施形態において、係止部5を外部側へ付勢する限り、板バネ、トーションバネ、弾性ゴムを用いることもできる。
【0032】
筒状部7は、回動軸11が突設されている方向とは反対方向へ錠座部1の他の面である裏面1Bより突設され、係止部5を内包する部材である。筒状部7は、係止部5が内包される容積を有する中空状の筒状部本体7aと、筒状部本体7aの他端を封じる筒状部蓋体7bから構成されている。そして、筒状部7の内部が、貫通孔12及び係止孔21と連通するように錠座部1の裏面1Bに突設されている。本発明の建物用錠が扉Dに設置されたとき、筒状部本体7aは扉Dの内部を貫通するように埋設されるので、使用者らは筒状部本体7a視認できることができず扉Dの外側面から筒状部蓋体7bを視認することができるにとどまる。そして、筒状部蓋体7bの中央近傍に穿設された挿入孔71により、非常時に外部部材Tの一端を係止部5の連結部52に接続するために、扉Dの外側から外部部材Tを挿入することができる。筒状部7により、本発明の建物用錠のうち、錠座部1、係止部5、筒状部7が一体化された状態となるので、施工現場において、取付けがより簡便になる。また、筒状部本体7aのみを設け、扉Dの外側面に挿入孔71に相当する孔を形成することにより、扉Dの外側から外部部材Tを挿入可能とすることもできる。さらに、筒状部7は、設けられていることが好ましい部材であるが、扉Dの内側面から外側面へ窪んだ円筒形状の穴を設けて、扉Dの外側面に挿入孔71に相当する孔を形成するなどして代用することができることから必ずしも設けられていなければならない部材ではない。
【0033】
次に本発明の建物用錠の使用方法について説明する。
【0034】
まず、通常時における操作を説明する。図3の状態は解錠されている様態であるので、扉Dを内側面からも外側面からも開けることができる。そして、図3の状態から、操作部を錠基部2に沿って水平方向Hに移動することにより、図4に示すように、操作部3の一端側における上部に設けられた係合部32が受部4の係合溝41と係合することにより施錠された状態となり、扉Dを開けることができなくなる。
【0035】
そして、非常時における操作を説明する。まず、図4に示すように、六角レンチなどの工具である外部部材Tの先端を筒状部7の挿入孔71に挿入しようとする。そして、図5図8に示すように、外部部材Tの先端を係止部5の連結部52に嵌合する。そして、図6図9に示すように、外部部材Tを90度の角度にて回動すると、係止部5の係止片51も90度の角度にて回動し、係止片51と縁部22の係止が解除される。そして、図10に示すように、外部部材Tの先端を係止部5の連結部52から外すと、係止部5は、弾性部材6の付勢力によって貫通孔12及び係止孔21から離脱する。その結果、錠座部1及び錠基部2を繋いでいる部材が回動軸11のみとなり、さらに、錠基部2に軸支される回動軸11が、一体化されている錠基部2と操作部3の重心よりも受部4に近い方向に設けられているので操作部3の他端側が重くなっていることから、図7図11に示すように、切欠部31を受部4が通過して錠基部2及び操作部3が錠座部1に対して自然に回動して解錠される。このため、個室の外部側から扉Dを開くことができ、その個室内の使用者を救助等することができる。
【0036】
また、図12において、係止部5の係止片51と、係止孔21の縁である縁部22との係止されている状態及び係止が解除されている状態を理解しやすいように部分的に示している。図12(a)、(a´)においては、通常時である図3図4などの状態に対応しており、係止片51と縁部22とが係止されている状態を示している。そして、図12(b)、(b´)においては、非常時である図6図9の状態に対応しており、係止片51と縁部22との係止が解除された状態を示している。そして、図12(c)、(c´)においては、非常時である図10の状態に対応しており、係止片51と縁部22との係止が解除された後に係止部5が係止孔21から離脱した状態を示している。このように、通常時では、係止片51と縁部22が係止しているが、非常時では、係止片51と縁部22の係止が解除される。
【0037】
したがって、本発明の建物用錠では、取り付けられている個室が使用中であることにより施錠されており扉が開かない状態であっても、その個室内で体調不良などのために自ら扉を開くことができない緊急事態のときに、他者が外部部材Tを用いて外部から回動操作を行うだけで操作部等を略水平方向へ移動させなくても円滑に解錠して扉を開くことができる。
【符号の説明】
【0038】
1・・・錠座部
11・・・回動軸
12・・・貫通孔
13・・・螺子孔
1A・・・表面(一の面)
1B・・・裏面(他の面)
2・・・錠基部
21・・・係止孔
22・・・縁部
23・・・回動孔
24・・・摺動規制片
3・・・操作部
31・・・切欠部
32・・・係合部
33・・・摺動溝
4・・・受部
41・・・係合溝
5・・・係止部
51・・・係止片
52・・・連結部
521・・・嵌合穴
6・・・弾性部材
7・・・筒状部
71・・・挿入孔
T・・・工具(外部部材)
D・・・扉
W・・・壁
H・・・水平方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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図12