(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023133883
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】アバターの動作判定による金銭的価値移動システム、金銭的価値移動の方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 20/06 20120101AFI20230920BHJP
H04L 67/00 20220101ALI20230920BHJP
G06Q 50/10 20120101ALI20230920BHJP
【FI】
G06Q20/06 300
H04L67/00
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022039123
(22)【出願日】2022-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】302064762
【氏名又は名称】株式会社日本総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 宙久
【テーマコード(参考)】
5L049
5L055
【Fターム(参考)】
5L049CC18
5L055AA15
(57)【要約】
【課題】仮想空間において金銭や金銭的価値を有するもの受け渡しを行なえるシステムを提供する。
【解決手段】仮想空間における金銭的価値移動システムにおいて、動画配信サーバが、仮想空間における視聴者のアバターによる金銭又は金銭価値を有するもの受け渡しの行為に係る所定の動作に対して、投稿者への送金先情報及び送金額のそれぞれを、視聴者の端末から設定させるアバター動作設定手段と、仮想空間において、特定の視聴者のアバターが所定の動作を行ったことに応じて、当該視聴者のアバターの動作を判定するアバター動作判定手段と、当該判定の結果に応じて、投稿者と視聴者の間の金銭的価値移動を完了させる金銭的価値移動手段とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮想空間における金銭的価値移動システムであって、
前記仮想空間におけるライブ動画を配信する動画配信サーバと、前記仮想空間へライブ動画を投稿する投稿者の端末と、前記配信された動画を視聴する視聴者の端末とがインターネットで接続され、
前記動画配信サーバは、
前記仮想空間における前記視聴者のアバターの金銭又は金銭的価値を有するもの受け渡し行為に係る所定の動作に対して、前記投稿者への送金先情報及び送金額のそれぞれを、前記視聴者の端末から設定させるアバター動作設定手段と、
前記仮想空間において、特定の視聴者のアバターが前記所定の動作を行ったことに応じて、当該視聴者のアバターの動作を判定するアバター動作判定手段と、
前記判定の結果に応じて、前記投稿者と前記視聴者の間の金銭的価値移動を完了させる金銭的価値移動手段と、
を備えることを特徴とする金銭的価値移動システム。
【請求項2】
前記受け渡し行為の際に、所定の演出を前記視聴者又は前記投稿者のアバターに実行させる演出手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の金銭的価値移動システム。
【請求項3】
前記演出手段は、前記視聴者からの受け渡し行為の際に、前記視聴者の専用仮想空間上に、前記受け渡し行為に係る送金額、送金先情報、特別の演出を表示することを特徴とする請求項2に記載の金銭的価値移動システム。
【請求項4】
前記受け渡し行為の後に、前記受け渡し行為を取り消す手段を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の金銭的価値移動システム。
【請求項5】
前記受け渡し行為をした視聴者のアバター、当該受け渡し行為に係る金額、当該金額の合計額、及び、前記受け渡し行為があったタイミングの情報、を前記投稿者の端末に表示可能とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の金銭的価値移動システム。
【請求項6】
前記ライブ動画の録画を視聴する視聴者も前記受け渡し行為を可能とし、前記受け渡し行為をする際の前記投稿者のアバターが行うリアクションを事前に設定可能とする手段を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の金銭的価値移動システム。
【請求項7】
仮想空間における金銭的価値移動システムにおいて、
コンピュータが、
前記仮想空間における動画の視聴者のアバターの金銭又は金銭的価値を有するもの受け渡し行為に係る所定の動作に対して、前記動画の投稿者への送金先情報及び送金額のそれぞれを、前記視聴者の端末から設定させるステップと、
前記仮想空間において、特定の視聴者のアバターが前記所定の動作を行ったことに応じて、当該視聴者のアバターの動作を判定するステップと、
前記判定の結果に応じて、前記投稿者と前記視聴者の間の金銭的価値移動を完了させるステップと、
を実行することを特徴とする金銭的価値移動の方法。
【請求項8】
請求項7に記載の各ステップをコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮想空間における金銭的価値の移動手段を備えたシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
現状、YouTube(登録商標) Liveなどに代表されるライブ配信サービスにおいて、スーパーチャット(登録商標)や投げ銭(登録商標)(以下、単に「投げ銭」と呼ぶ)の市場が年々増大しており、特定の宛先に集金する仕組みに対する需要がある。ここで、投げ銭とは、インターネットコンテンツの動画配信者に対して、視聴者自らが指定した金額をオンラインで送金することを指す。金額は、配信サイトの画面上で指定可能で、いつでも好きなタイミングで配信者に送金できるため、物理的な壁を超えて、配信者とのつながりを感じられるという視聴者が多い。
【0003】
そのため、投げ銭を利用した技術も存在する。例えば、特許文献1には、動画配信において投げ銭を利用した新しい興趣をもたらす動画配信のサーバシステムが開示されている。このサーバシステムによれば、投稿者端末から画像生成空間(仮想空間又は拡張現実空間)の投稿者動画データを取得し、画像生成空間にイベントエリアを設定し、視聴者端末にて受け付けたアクション操作入力に基づき画像生成空間中に移動体を出現させて移動させる。そして、投稿者動画データに基づく画像と、イベントエリアの識別表示と、移動体の移動表示とを合成した配信用動画を生成しておき、イベントエリアに対して移動体が所与の位置関係条件を満たしたか否かに基づいて、投稿者端末の投稿者及び/又はアクション操作入力を行った視聴者に所与の特典を付与する処理を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1に記載の技術は、動画配信において投げ銭を利用した新しい興趣をもたらすものであるが、仮想空間において、臨場感を損なわず、送金、寄付、贈物などの、金銭又は金銭的価値を有するものの移動を行う仕組みは未成熟である。
【0006】
したがって、本発明では、上記のような課題にかんがみ、金銭的価値の移動を仮想空間上で行うことができる金銭的価値移動システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、以下のような解決手段を提供する。
【0008】
(1)仮想空間における金銭的価値移動システムであって、前記仮想空間におけるライブ動画を配信する動画配信サーバと、前記仮想空間へライブ動画を投稿する投稿者の端末と、前記配信された動画を視聴する視聴者の端末とがインターネットで接続され、前記動画配信サーバは、前記仮想空間における前記視聴者のアバターの金銭又は金銭的価値を有するもの受け渡し行為に係る所定の動作に対して、前記投稿者への送金先情報及び送金額のそれぞれを、前記視聴者の端末から設定させるアバター動作設定手段と、前記仮想空間において、特定の視聴者のアバターが前記所定の動作を行ったことに応じて、当該視聴者のアバターの動作を判定するアバター動作判定手段と、前記判定の結果に応じて、前記投稿者と前記視聴者の間の金銭的価値移動を完了させる金銭的価値移動手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
(2)上記(1)の構成において、前記受け渡し行為の際に、所定の演出を前記視聴者又は前記投稿者のアバターに実行させる演出手段を備えることを特徴とする。
【0010】
(3)上記(2)の構成において、前記演出手段は、前記視聴者からの受け渡し行為の際に、前記視聴者の専用仮想空間上に、前記受け渡し行為に係る送金額、送金先情報、特別の演出を表示することを特徴とする。
【0011】
(4)上記(1)又は(2)の構成において、前記受け渡し行為の後に、前記受け渡し行為を取り消す手段を備えることを特徴とする。
【0012】
(5)上記(1)又は(2)の構成において、前記受け渡し行為をした視聴者のアバター、当該受け渡し行為に係る金額、当該金額の合計額、及び、前記受け渡し行為があったタイミングの情報、を前記投稿者の端末に表示可能とすることを特徴とする。
【0013】
(6)上記(1)又は(2)の構成において、前記ライブ動画の録画を視聴する視聴者も前記受け渡し行為を可能とし、前記受け渡し行為をする際の前記投稿者のアバターが行うリアクションを事前に設定可能とする手段を備えることを特徴とする。
【0014】
(7)仮想空間における金銭的価値移動システムにおいて、コンピュータが実行する方法であって、前記仮想空間における動画の視聴者のアバターの金銭又は金銭的価値を有するもの受け渡し行為に係る所定の動作に対して、前記動画の投稿者への送金先情報及び送金額のそれぞれを、前記視聴者の端末から設定させるステップと、前記仮想空間において、特定の視聴者のアバターが前記所定の動作を行ったことに応じて、当該視聴者のアバターの動作を判定するステップと、前記判定の結果に応じて、前記投稿者と前記視聴者の間の金銭的価値移動を完了させるステップと、を実行することを特徴とする。
【0015】
(8)上記(7)に記載の各ステップをコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、金銭的価値の移動を仮想空間上で行うことができる金銭的価値移動システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】本発明の一実施形態の動画配信システムの機能構成を示す図である。
【
図3】アバター動作テーブルの具体例を示す図である。
【
図4】アバター動作テーブルの具体例を示す続図である。
【
図5】動画配信サーバの処理フローを示す図である。
【
図7】投稿者側の投げ銭集計画面の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(概要)
以下、本発明の実施形態における金銭的価値移動システム(以下、「本システム」と呼ぶ)の概要について説明する。本システムでは、仮想空間上でのアバターの動作に応じて、金銭的価値移動(金銭又金銭的価値を有するものによる、代金の支払い、寄付、投資、贈与など)を実現するものである。ただし、ここでいう「金銭的価値を有するもの」とは、必ずしも金銭的価値を計れないもの(例えば、手作り品など)であってもよい。金銭的価値の移動が送金であれば、送金先(振込先)と送金額とをそれぞれ設定しておいて、アバターが事前に設定した動作をしたら、リアルタイムでその金銭的価値移動を完了させるようにしたものである。すなわち、仮想空間でのアバターの表情や動作に、事前に取引内容・金額・振込先などを設定することで、ユーザが特定の表情・動作を組み合わせて行った際に、自身のアバターが仮想空間上で表現することで、振込などの金銭的価値移動をスムーズに行えるようにする。
【0019】
また、金銭的価値移動には、あらかじめ、このサービスを受ける前にデポジットでポイントを購入しておき、ポイントを投入するだけの行為(金融機関の決済を行わない行為)も含まれる。また、金銭的価値移動は、有体物である物品の移動であってもよい。その場合は、物品の送付先と送付元の情報とをそれぞれ設定しておいて、アバターが事前に設定した動作をしたら、リアルタイムでその物品の移動に係る金銭的価値移動を完了させるようする。仮想空間上では、受け渡しの際に、その物品のアイテムが表示されるようにしてもよい。
【0020】
ここでいう「仮想空間」とは、仮想現実(VR;Virtual Reality)、拡張現実(AR;Augmented Reality)、複合現実(MR;Mixed Reality)の技術を用いて、現実世界には存在しないものや情報を、表現・体験できるインターネット上の空間を意味する。仮想空間は、通常は3次元の空間を意味するが、平面である2次元、及び3次元の空間に時間軸を追加した4次元の空間(例えば、同じ空間の現在、過去、未来の状態)も概念上は含むものとする。また、VR技術,AR技術,MR技術を総称して、xR(Cross Reality)とも呼ぶが、xR技術を活用することで、現実世界と仮想世界を融合させる新たな体験や、今までにない課題解決ができるようになる。この仮想空間では、動画の投稿者はもちろん、試聴者も自分のアバターを作成して、そのアバターが仮想空間上で自由に移動したり、様々な動作をしたりすることで、投稿者や視聴者のアバター同士でコミュニケーションをすることができる。
【0021】
「投げ銭」とは、通常は、アーティストやクリエイターがインターネット上で公開しているコンテンツである動画に対して、視聴者やファンがオンラインで送金し、投稿者の収益源とする行為のことである。しかし、本システムでは、この「投げ銭」の概念を拡張し、「投げ銭」の投入を、仮想空間の動画における投稿者と視聴者との間の「金銭又は金銭的価値を有するものの受け渡し行為」を意味するものとする。「金銭的価値を有するもの」は、有体物であっても無体物であってもよい。ここで、受け渡し行為は、仮想空間上において、視聴者側及び/又は投稿者側のアバターの動作によって行われる。なお、以降では、表記を簡単にするため、「拡張された概念の投げ銭」を、単に、「投げ銭」と言うことにする。
【0022】
なお、投稿者側である事業者が仮想空間の活用ビジネスに参入するメリットは、まず、「場所・空間、人数等の物理的な制約がない」、「非現実的・非日常的な体験」、「他者と気軽に交流できるコミュニティ」が挙げられる。その上で、仮想空間を活用する目的として、「新規事業」、「マーケティング」、「生産性向上」などがある。
【0023】
図1は、本発明の適用場面の例を示す図である。本システムの典型的な利用場面としては、仮想空間上での、ライブショー、セリ/オークション、寄付/チャリティイベント、実演販売、個別の商談、における決済(金融的価値移動の一種)が考えられる。それぞれの場面で、現実の空間の映像と仮想空間の映像を組み合わせることで、参加者が、臨場感や没入感を損なわず送金等を行うことができる。現実と仮想がリアルタイムで連動して動くようにすることで、実感がダイレクトに伝わってくる。
【0024】
例えば、ライブショーの場面では、視聴者側の興奮度や一体感などが盛り上がり、より多くの投げ銭を促し、投稿者側の収益増加につながる。そのために、仮想空間上で様々な演出を加えてもよい。
【0025】
また、セリ/オークションの場面では、場の興奮度や緊張度が高まり、落札価格の増大に繋がる。また、寄付/チャリティイベントの場面では、多くの人が募金している映像や寄付を送る対象者や場所の映像を見せることで、寄付額の増大に繋がる。なお、寄付/チャリティイベントの場面には、クラウドファンディング(多数の人による少額の資金が他の人々や組織に対する財源の提供や協力などを行うこと)も含まれるが、クラウドファンディングには投資の側面もあるので、クラウドファンディングで投資を募る者の説明に感動した投資家が投資を決定した意思表示をすることは投げ銭をするのと同じである。
【0026】
また、物品の実演販売の場面では、仮想空間の画像と現実の商品の画像を併用することで、リアル感が高まり、より多くの商品の購入につながる。場合によっては、商品の手触りや香りなども伝えることも可能である。
【0027】
また、個別の商談の場面では、例えば、不動産取引において、物件の立地、外観、建物内の間取り等を、現地に行かずとも仮想空間の映像を使って商談することで、契約の迅速化に繋がり、手付金の支払いなどの金銭的価値移動もその場で行うこともできる。ここでの不動産取引は、現実世界の不動産はもちろん、仮想世界の土地や建物も扱えるので、アバターを活用した取引に好適である。
【0028】
また、個別商談のその他の例として、保険商品の販売、農作物の取引交渉、などが挙げられる。保険商品の販売では、保険商品を説明するパフォーマが投稿者であり商品説明を受ける者が視聴者であると置き換えて考えることができる。視聴者は、納得のいく保険商品の説明が聞けた場合に保険購入契約をすることは、感動したパフォーマンスに対して投げ銭をするのと同じである。また、農産物の生産者(パフォーマー)が自分の作物について、何に配慮し如何に育てたかを語り、実物の大きさや色艶を見せ、糖度などの測定値を示し、食感までも含んだ説明をし、バイヤー(視聴者)が納得して購入契約を結ぶことは、パフォーマンスに感動して投げ銭をする場面に置き換えて考えることができる。以上のように、本発明は様々なビジネスシーンでも適用可能である。特にアバター同士が握手をする仕組みはビジネスシーンにこそ相応しい仕組みとも言える。
【0029】
ここで、金銭的価値移動の内容としては、投げ銭を投入する際の、送金先(振込先)、送金額の他、送金側からのメッセージを含んでもよい。仮想空間上での投げ銭の投入の行為は、金銭を直接渡すような映像でなく、何らかの別のアイテム(例えば、花のアイテムなど)を渡すような映像で表現してもよい。なお、投げ銭による金融的価値移動は、現金の送金だけでなく、電子マネー、ギフトカード、暗号資産、デジタル通貨であってもよい。また、金銭的価値を有するもの(有体物又は無体物)であってもよい。また、投げ銭を受け取った側からのメッセージを受けることも可能とする。普通、決済は一方向であるが、受取側からの反応がもらえたら嬉しいからである。
【0030】
(機能構成)
図2は、本発明の一実施形態である動画配信システム(金銭的価値移動システムの中核)の機能構成を示す図である。以降の図においては、同じ構成要素には同じ番号又は符号を付している。また、機能構成の図において、機能ブロック間の矢印は、データの流れ方向、又は処理の流れ方向を表す。
【0031】
図2で示すように、本システムは、ライブ動画を配信する動画配信サーバ100が、インターネットを介して、投稿者の端末10と、視聴者の端末20と、金融機関のシステム30とが接続される。ここで、投稿者とは、ライブ動画を作成し、投稿する者だけでなく、投稿者側の関係者や事業者を含んでもよい。投げ銭が金銭でなく、ギフトカードや物品で行われる場合は、視聴者がその物品を予め購入するオンラインショップのシステム40とも接続される。なお、動画中であっても場合によっては、投稿者と視聴者の立場が入れ替わってもよい。
【0032】
動画配信サーバ100は、機能構成の一例として、仮想空間生成手段101と、動画投稿手段102と、アバター管理手段103と、動画配信手段104と、演出手段105と、アバター動作設定手段106と、アバター動作判定手段107と、金銭的価値移動手段108とを備えている。以下、順に各機能について説明する。
【0033】
仮想空間生成手段101は、仮想空間の動画を視聴させるためのアプリケーション(アプリ)を、クライアントである端末に提供する。実際には、投稿者の端末10と視聴者の端末20に、仮想空間のビューワのアプリをダウンロードさせ、ヘッドセットなどを装着した視聴者に仮想空間を体験させる。仮想空間自体は、サーバ側で用意してもよいが、仮想空間の雛形や構成するパーツ群を提供し、投稿者が独自の仮想空間を作成できるようにしてもよい。なお、xR技術を用いた仮想空間の具体的な生成方法は、公知の技術を利用するものとする。
【0034】
動画投稿手段102は、投稿者が作成した仮想空間上での動画を動画配信サーバ100に投稿する機能を有する。投稿する動画には、端末側のカメラで撮像した実画像(投稿者自身の映像や商品の映像など)を仮想空間内に埋め込んでもよいし、仮想空間の実空間を並列的又は重畳的に表示させるようにしてもよい。
【0035】
アバター管理手段103は、視聴者ごとに視聴者のアバターを管理する。視聴者は、ユーザIDで、アバターは、ユーザごとのアバターIDで識別される。視聴者として登録したユーザは、投稿者の動画に対してチャンネル登録していることが望ましいが、投げ銭を行うユーザは、チャンネル登録以外に、自身の銀行口座の番号やクレジットカード番号などの入金先情報を登録する必要がある。なお、アバターの映像は、システムで用意した雛形にユーザ独自の編集を加えたり、アイテムを付加したりするなどして、他のユーザのアバターと見た目からも識別可能とする。
【0036】
動画配信手段104は、投稿者が作成した仮想空間の動画を視聴者の端末20に配信する機能を有する。初めてその投稿者の動画を視聴する場合には、チャンネル登録画面を表示するようにしてもよい。チャンネル登録や口座情報を登録しなくても動画自体は視聴できるが、コメントを書き込んだり、投げ銭機能を使ったりすることはできない。
【0037】
演出手段105は、投稿者が投稿した動画上に、様々な演出を加える機能を提供する。ここでいう演出とは、例えば、投げ銭を受けたときに、投稿者のアバターが、お礼の動作をしたり、視聴者のアバターと握手したりするなどして、その場を盛り上げる効果を生じさせる映像や音を付加するものである。演出は、動画作成時に前もって組み込まれていてもよいし、投稿者がその場で追加できるようにしてもよい。
【0038】
アバター動作設定手段106は,投稿者及び視聴者が作成したアバターに所定の動作を登録し、アバターが、その所定の動作をさせたときに、動作ごとに対応するアクションを設定する機能を有する。なお、アバターの作成方法や動作の方法は、公知の技術を利用するが、アバターの作成や動作は端末側のアプリで行い、サーバ側に送信するものとする。
【0039】
アバターの動作は、例えば、視聴者のアバターが動画の中の特定の出演者のアバターを指さしたときには、その出演者に視聴者のアバターに接近を求めているということを設定しておく。このようにすることで、特に、出演者が複数いるときに、特定の出演者(又はそのアバター)を指名し、投げ銭を投入しやすくできる。その後、出演者が接近したタイミングで、視聴者のアバターが所定の動作をすると、実際に投げ銭の投入が行われる。具体的には、
図3で示すような試聴者自身のアバターの動作と、その動作の意味を定義した「アバター動作テーブル」を設定しておく。そして、アバターの一つの動作に一つの意味を定義しておく。
【0040】
また、アバター動作テーブルには、投げ銭を送金する方法も設定することができる。送金方法には、銀行振込、クレジットカード、電子マネー、暗号資産などを設定できる。また、投げ銭を金銭でなく物品で贈ることもできる。なお、アバター動作は一度設定しておけば、変更がない限り、直前の動作の設定が踏襲される。このようにして設定された動作を組み合わせてアバターに連続して行わせることで、出演者ごとに様々な方法でアバターから投げ銭を投入することができる。
【0041】
アバター動作テーブルのその他の具体例を
図3及び
図4に示す。
図3のアバター動作テーブルには、アバターの動作と、その動作の意味が設定される。例えば、
図3(a)のように、「片手を上げる」と、相手に接近を求めていることを意味し、出演者に向かって「手を伸ばしたら、その出演者と握手を求めていることを意味し、「片手を振る」と、投げ銭を実際に投入するなどである。このような一連の動作によって、特に出演者が複数の場合は、その中で誰に投げ銭を渡したいのかが明確になる。
【0042】
また、投げ銭を投入する金額もアバターの動作で設定することもできる。例えば、
図3(b)のように、「コインを掴む」と、投げ銭の金額を500円とし、「指を1本立てる」と、投げ銭の金額を1000円とする、などと設定しておくことができる。また、投げ銭の金額の間違えなどを防止するため、金額がわかるようなアイテムをお互いの目に見える形で渡すようにしてもよい。例えば、少額は1輪の花のアイテムにし、金額が大きいと花束のアイテムにするとかである。
【0043】
また、「両手を開く」と、投げ銭を金銭でなく、物品を贈ること意味するなども設定できる。なお、ここでは図示していないが、アバター動作テーブルには、金額指定動作の代わりに、プレゼントする物品を指定する動作やアイテムを設定してもよい。また、「ごめんねの動作」をすると、投入した投げ銭を取り消す意味とすることもできる。このようにすることで、アバターの動作、アイテム、アバター間のつながりが画面上で見て明確になり、取消もできるので、投げ銭を渡す相手や金額等の間違いが起きにくくすることができる。なお、
図3(a)の動作と
図3(b)の金額指定の動作を、別の一つの動作にまとめて、場合によってはアイテムも追加して設定してもよい。
【0044】
図4のアバター動作テーブルでは、投げ銭の送付先を指定する動作を設定している。例えば、「出演者の上方を指さす」と、投稿者が事前に指定した送付先(金銭の場合は、指定の金融機関の送金先、また物品の場合は指定の住所)を意味するようにする。また、「グーを高く上げる」と、個別の投稿者の送金先でなく、システムが備えたデフォルトの送金先に送ることを意味するようにもできる。なお、投稿者側の送金先詳細情報や視聴者の入金元詳細情報は、暗号化されるなど、高度なセキュリテイで管理されるのは言うまでもない。
【0045】
図2に戻り、アバター動作判定手段107は、設定したアバターの動作を仮想空間上で特定のアバターが実際に行ったことを検知し、その動作に係る金銭的価値移動を判定する機能を有する。この判定のためには、アバターの腕や足、顔の表情などのモーションポイントを検知し、アバターが単一の動作でなく複数の動作を連続して行ったことが検知される必要がある。判定が正常に完了すれば、視聴者が予め設定しておいた送金方法に従って、次の金銭的価値移動手段108に処理を受け渡す。
【0046】
金銭的価値移動手段108は、アバター動作判定手段107が行った判定結果が正常であることを条件に、視聴者が登録した金融機関のシステム30又はオンラインショップのシステム40に接続し、金銭を送金したり、又はプレゼントする商品を購入したりして、投稿者側の指定先に送付する機能を果たす。以上でシステムの機能構成の説明を終わる。
【0047】
上記の本システムの機能構成は、あくまで一例であり、一つの機能ブロックを分割したり、複数の機能ブロックをまとめて一つの機能ブロックとして構成したりしてもよい。各機能処理部は、装置に内蔵されたCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphic Processing Unit)が、フラッシュメモリ、SSD(Solid State Drive)、ハードディスク等の記憶装置に格納されたコンピュータ・プログラムを読み出し、CPU/GPU
により実行されたコンピュータ・プログラムによって実現される。すなわち、各機能処理部は、このコンピュータ・プログラムが、記憶装置に格納されたデータベース(DB;Data Base)やメモリ上の記憶領域からテーブル等の必要なデータを読み書きし、場合によっては、関連するハードウェア(例えば、入出力装置、表示装置、通信インターフェース装置)を制御することによって実現される。また、本発明の実施形態におけるデータベース(DB)は、商用データベースであってよいが、単なるテーブルやファイルの集合体をも意味し、データベースの内部構造自体は問わないものとする。
【0048】
(処理フロー)
図5は、動画配信サーバの処理フローを示す図である。なお、この処理フロー図(フローチャート)においては、各ステップの入力と出力の関係を損なわない限り、各ステップの処理順序を入れ替えてもよい。また、以降では、
図2で用いた各要素に付加した符号は省略する。
【0049】
まず、ステップS10において、動画配信サーバ(以下、単にサーバとする)は、動画の配信を開始する。次に、ステップS11において、新たに設定されたアバターの動作があるか否かをチェックする。アバターの動作設定は、動画配信前でも配信中であってもよい。
【0050】
新たに設定されたアバターの動作がなければ(ステップS11:N)、ステップS13に飛ぶが、新たに設定されたアバターの動作があれば、ステップS12において、そのアバターの動作設定を視聴者の端末から読み込む。
【0051】
次に、ステップS13において、参加しているすべての試聴者のアバターの動作を監視し、設定された動作をしているアバターを検知する。設定された動作をしているアバターがなければ(ステップS13:N)、監視を続けるが、設定された動作をしているアバターを検知すると、ステップS14において、視聴者のアバターの動作に設定されたアクションに対応する出演者側のアバターがもしあればその動作を行わせる。このとき、場を盛り上げるための所定の演出を行うようにしてもよい。
【0052】
そして、ステップS15において、検知したアバターの動作が金銭による投げ銭の投入であれば、ステップS16において、視聴者が指定した送金方法に従って、受け取った金銭を所定の送金先へ送金する。
【0053】
また、ステップS15において、アバターの動作が金銭の投げ銭の投入でなければ(ステップS15:N)、ステップS17に移動し、物品による投げ銭であるか否かをチェックする。
【0054】
物品による投げ銭であれば(ステップS17:Y)、ステップS18において、試聴者が予めオンラインショップなどで購入してショップ側に留め置きしておいた物品(オンラインショップの商品)を出演者側の指定の送り先へ送付する。このとき画面上では、その物品に相当するアイテムを受け渡している画像が表示される。なお、物品による投げ銭の投入以外の動作の(ステップS17:N)の場合は、ステップS17aにおいて、その動作に対応する処理を行い、ステップS11に戻る。
【0055】
最後に、以上の処理を動画が終了するまで(ステップS19:Y)繰り返す。
【0056】
(オプション機能)
以下では本システムのオプション機能(拡張機能)について説明する。オプション機能としては、
図3(a)のアバター動作テーブルで示した投げ銭を取り消できる機能や、画面上で、他の人がいくらあげたのかが、金額を表すアイテムを表示するようにする機能も含まれる。
【0057】
また、前述したように、本システムでは、仮想空間上でのアバターの動作に関して、様々な演出を施すことが可能である。例えば、
図6に示すように、アイドルのライブショーなどにおいて、試聴者が出演者に投げ銭として花束のアイテムを渡したことに応じて、又は投入した投げ銭の金額に応じて、目の前に出演者の映像が現れ、音声を発するなどの演出をすることができる。このような演出効果によって、他の試聴者を羨ましくさせるなどして、投げ銭行為を増やすこともできる。
【0058】
また、
図6(a)で示すような皆が見ている共通の仮想空間の映像では、投げ銭を行う視聴者のアバターが表示されるが、その視聴者専用の仮想空間を生成し、視聴者がその専用の仮想空間に入ったときには、
図6(b)で示すような、視聴者自身の実画像が表示されたり、出演者と特別の会話ができたりするようにしてもよい。また、この視聴者の専用仮想空間からは、自身が投入した投げ銭の送金方法や送金額が確認できるようにしてもよい。
【0059】
また、
図7で示すように、投稿者専用の画面を生成し、どの視聴者から何をもらったかということや動画中の投げ銭の合計額などを、投稿者が、管理・集計できる機能を備えてもよい。その集計画面では、1件ずつアバターの絵が入金明細として表示される。
【0060】
また、ライブ中の動画を録画(アーカイブ)し、出演者側の専用画面で、どのタイミング(どのパフォーマンス)で、投げ銭があったかを後からわかるように、動画時刻と投げ銭の件数とを紐づけるようなグラフを表示する機能を備えるようにしてもよい。このようにすることで、動画中で収益の高いパフォーマンスなどがわかるようにもできる。
【0061】
また、録画されたライブ動画にも視聴者が後からでも投げ銭を投入することを可能とし、投げ銭を投入する際の投稿者側のアバターが行うリアクションなどを事前に設定することも可能とし、どのようなアクションをしたら出演者がどんなリアクションをするかを、事前に設定できるようにしてもよい。
【0062】
また、振込金額によって投稿者側が行うアクションを変化させたりしてもよい。例えば、5回に1回は投稿者側の特別の映像が流れるとかである。また、視聴者が目立つ動きをすると出演者側に見つけてもらえやすくなるので、視聴者は、自身のアバターの動作を目立つようにも設定できる。例えば、1度のジャンプで自動的に10回ジャンプを繰り返すようにしたり、視聴者の実際の動きよりもアバターの表情や動作をオーバーにしたりすることもできる。
【0063】
(実施形態の効果)
以上、本システムによれば、第一に、インターネット上の投げ銭の概念を拡張し、仮想空間を利用した金銭的価値移動に投げ銭の概念を適用したシステムを提供することができる。ここで、投げ銭の投入は、仮想空間上のアバターの動作によって実行される。すなわち、仮想空間における視聴者のアバターの投げ銭の投入に係る所定の動作に対して、投稿者への送金先情報及び送金額のそれぞれを、視聴者の端末から設定させ、その仮想空間において、特定の視聴者のアバターが所定の動作を行ったことに応じて、当該視聴者のアバターの動作を判定し、その判定の結果に応じて、投稿者と視聴者の間の金銭的価値移動を完了させることができる。なお、投げ銭は、金銭の送金だけでなく、物品の送付であってもよいので、オンラインショップで購入した商品をその場で送ることもできる。
【0064】
また、投げ銭が投入される際には、所定の演出を投稿者及び/又は視聴者のアバターに動作させることで臨場感を高めることができる。また、視聴者からの投げ銭が投入される際に、視聴者の専用仮想空間上に、投入された投げ銭の送金額、送金先情報、特別の演出を表示することもできる。
【0065】
また、投げ銭が投入された後であっても、投げ銭の投入を取り消す手段を備えるので、誤った投げ銭を投入してしまうことが防げる。
【0066】
また、投げ銭を受け取った金額、及び投げ銭を投入した視聴者のアバターを、投稿者の端末に表示可能なので、投稿者側の投げ銭の集計作業などに役立つ。また、どのタイミング(どのパフォーマンス)で、投げ銭があったかを後からわかるようにすることで、収益性の高いパフォーマンスを調べることができる。
【0067】
また、ライブ動画の録画を視聴する視聴者が後からでも投げ銭を投入することを可能とし、投げ銭を投入する際の投稿者のアバターが行うアクションを事前に設定可能としてもよい。そのようにすることで、ライブ動画に参加できなかったユーザでも、録画された動画から、実際にライブに参加したような感覚を持たせることができる。
【0068】
上記したような仮想空間を使った演出は、ライブショーなどに限らず、決済や寄付など金銭的価値移動を伴う様々な取引や物品の販売において、取引の迅速性や収益向上のための効果的な手段となる。また、上記の実施形態では、主に仮想空間の動画を配信する動画配信サーバについて説明したが、実画像を主に配信する動画サーバにも適用が可能である。
【0069】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲に限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。なお、上記の実施形態では、本発明を物の発明として、動画配信サーバについて説明したが、本発明は、方法の発明(金銭的価値移動の方法)又はコンピュータ・プログラムの発明としても捉えることもできる。
【符号の説明】
【0070】
10 投稿者の端末
20 視聴者の端末
30 金融機関のシステム
40 オンラインショップのシステム
100 動画配信サーバ
101 仮想空間生成手段
102 動画投稿手段
103 アバター管理手段
104 動画配信手段
105 演出手段
106 アバター動作設定手段
107 アバター動作判定手段
108 金銭的価値移動手段