(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023133907
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
D06F 33/44 20200101AFI20230920BHJP
D06F 33/70 20200101ALI20230920BHJP
【FI】
D06F33/44
D06F33/70
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022039156
(22)【出願日】2022-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 博紀
(72)【発明者】
【氏名】林 祐太朗
(72)【発明者】
【氏名】吉田 哲士
【テーマコード(参考)】
3B167
【Fターム(参考)】
3B167AA11
3B167AE03
3B167AE04
3B167AE05
3B167BA45
3B167BA69
3B167HA01
3B167HA13
3B167HA34
3B167HA53
3B167KA02
3B167KA13
3B167KA18
3B167KA23
3B167KA32
3B167KA78
3B167KB05
3B167LC25
3B167LD03
3B167LG11
(57)【要約】
【課題】使い勝手が良く、忙しいユーザが運転コースを選ぶのに迷いを生じにくい洗濯機を提供する。
【解決手段】重量センサによる洗濯槽内の洗濯対象物の量の検出前で(ステップSS51のYes)、且つ、スタートボタンの押下前に(ステップS52のYes)、今回の洗濯工程に要する残時間を残時間表示部に表示する(ステップS53)。当該残時間は、今回の運転の運転コースと同じ過去の直近の運転コースにおける「運転情報」に基づいて求める。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗濯槽と、
前記洗濯槽を収容する筐体と、
前記筐体に設けられた操作パネルと、
前記洗濯槽内の洗濯対象物の重量を検出する重量センサと、
前記操作パネルに設けられ運転の残時間を表示する残時間表示部と、
今回の運転の運転コースの設定を受付ける運転コース設定部と、
過去の運転の運転コースに基づく運転情報を記憶する記憶部と、
前記運転コース設定部による設定に基づいて洗濯及び乾燥のうち少なくとも洗濯の運転を制御し、洗濯の開始前に前記洗濯槽内の洗濯対象物の重量を前記重量センサで検出して当該検出の値に基づいて運転を行う運転制御部と、
前記重量センサによる検出の前に、前記記憶部に記憶されている過去の運転の際の運転情報に基づいて前記残時間表示部に運転の残時間を表示する残時間表示制御部と、を備えていることを特徴とする洗濯機。
【請求項2】
前記運転コース設定部で受付けた運転コースによる運転の開始指示を受付けるスタートボタンを更に備え、
前記残時間表示制御部は、前記スタートボタンが押下される前に前記記憶部に記憶されている過去の運転の際の運転情報に基づいて前記残時間表示部に運転の残時間を表示することを特徴とする請求項1に記載の洗濯機。
【請求項3】
前記記憶部に記憶する前記運転情報は、過去の運転の運転コースにおける前記洗濯槽内への給水に要する給水時間及び前記洗濯槽内からの排水の排水時間であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の洗濯機。
【請求項4】
前記洗濯槽に給水する水の水質を検出する水質センサと、
前記給水する水の水温を検出する温度センサと、を更に備え、
前記運転制御部は、前記運転コース設定部が所定の運転コースの設定を受付けたときは前記水質センサ及び前記温度センサの各検出値に基づいて運転を行い、
前記記憶部は、前記各検出値を前記運転情報の少なくとも一部として記憶することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかの一項に記載の洗濯機。
【請求項5】
前記水質センサは、前記水質として水硬度を検出することを特徴とする請求項4に記載の洗濯機。
【請求項6】
前記記憶部は、前記運転情報として前記洗濯槽への給水量を更に記憶していて、
残時間表示制御部は、前記スタートボタンの押下前に前記記憶部に記憶されている過去の運転情報の運転コースと前記運転コース設定部で受付けた今回の運転コースとで前記洗濯槽への給水量が異なるときは、今回の運転コースと前記過去の運転情報とに基づいて前記残時間表示部に運転の残時間を更新して表示することを特徴とする請求項2に記載の洗濯機。
【請求項7】
前記残時間表示制御部は、前記記憶部に記憶されている過去の運転の際の運転情報のうち今回の運転で設定された運転コースと同じ直近の運転コースのものに基づいて前記残時間表示部に運転の残時間を表示することを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れかの一項に記載の洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、特開平10-201983号公報(特許文献1)がある。この公報には、「スイッチ入力手段により設定した水位、洗い時間、すすぎ回数、脱水時間などと洗濯終了までの残時間を表示手段に表示し、制御手段により洗い、すすぎ、脱水の各行程を逐次制御する。スイッチ入力手段は、洗い、すすぎ、脱水の各行程を逐次動作するのに要する時間を指定できる洗濯所要時間指定スイッチを有し、制御手段は、洗濯所要時間指定スイッチが入力されれば、洗い、すすぎ、脱水の一連の逐次動作を行うのに要する時間を設定し、洗濯終了までの時間を残時間表示部にて表示する。」と記載されている(要約参照)。
【0003】
別の背景技術として、特開平7-39672号公報(特許文献2)がある。この公報には、「本発明の洗濯機は、洗い行程、すすぎ行程及び脱水行程を順次自動的に実行する洗濯運転機能を備えて成るものにおいて、洗濯時間を設定する洗濯時間設定手段として時間増加キー及び時間減少キーを設け、これらキーを操作することにより設定した洗濯時間で洗濯運転が終了するように、各行程の運転実行時間を長短調整しながら洗濯運転を運転制御する構成としたものである。」と記載されている(要約参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-201983号公報
【特許文献2】特開平7-39672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1,2には、洗濯機の洗濯等の運転に要する残時間を表示してユーザに運転の終了時刻を知らせることが記載されている。しかし、一般に洗濯機で洗濯等の運転に要する時間は洗濯対象物の量や運転のモードである運転コースによって異なる。そのため、一般に洗濯機で運転に要する残時間を表示するタイミングは、ユーザによる運転コースの設定後に洗濯槽内に入れられた洗濯対象物の量(重量)を検出して、運転コースと洗濯対象物の量とに応じた運転時間が明らかになって後のことである。そのため、ユーザが運転コースを選択してから運転の残時間が表示されるまでの所要時間は数十秒程度要するのが一般的である。
【0006】
しかしながら運転コースを選択してから運転の残時間が表示されるまでの所要時間が、このように長いと、運転コースを選択する際に運転の残時間が表示されず、忙しいユーザはどの運転コースを選ぶのが適切かの判断に迷ってしまうという不具合がある。すなわち、洗濯機の使い勝手を良くしたいという要請がある。
そこで、本発明は、使い勝手が良い洗濯機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の一形態となる洗濯機は、洗濯槽と、前記洗濯槽を収容する筐体と、前記筐体に設けられた操作パネルと、前記洗濯槽内の洗濯対象物の重量を検出する重量センサと、前記操作パネルに設けられ運転の残時間を表示する残時間表示部と、今回の運転の運転コースの設定を受付ける運転コース設定部と、過去の運転の運転コースに基づく運転情報を記憶する記憶部と、前記運転コース設定部による設定に基づいて洗濯及び乾燥のうち少なくとも洗濯の運転を制御し、洗濯の開始前に前記洗濯槽内の洗濯対象物の重量を前記重量センサで検出して当該検出の値に基づいて運転を行う運転制御部と、前記重量センサによる検出の前に、前記記憶部に記憶されている過去の運転の際の運転情報に基づいて前記残時間表示部に運転の残時間を表示する残時間表示制御部と、を備えている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、使い勝手が良い洗濯機を提供することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施例における洗濯機の外部構成を示す斜視図である。
【
図2】外フタ及びタンク収納フタを開いた状態における洗濯機の正面図である。
【
図3】外フタ及びタンク収納フタを開いた状態において、斜め上前方から見た洗濯機の斜視図である。
【
図5】洗濯機の前面パネルを取り外した状態を示す斜視図である。
【
図7】洗濯機の制御回路構成を示すブロック図である。
【
図9】洗濯機の洗濯運転(洗い、すすぎ、脱水等)における一連の運転工程を説明する工程図である。
【
図10】本実施例の残時間表示の制御を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
〈洗濯機1の外部構成〉
以下、
図1、
図2、
図3を参照して、本実施例における洗濯機1の外部構成について説明する。なお、以下に示す各図においては、前後、左右、上下の向きを必要に応じて矢印で図示している。図示の例において、洗濯機1は、洗濯対象物の乾燥機能を有する洗濯乾燥機である。以下の説明では、洗濯乾燥機の例を説明するが、本発明の洗濯機は洗濯乾燥機に限定されるものではなく、乾燥機能を有しない洗濯機も含まれる。なお、以下の説明では、洗濯対象物を「衣類」と称することがある。
【0011】
図1は、本実施例における洗濯機1の外部構成を示す斜視図である。
図1において洗濯機1は、筐体11と、上面カバー12と、外フタ13と、操作パネル14と、タンク収納フタ15と、前面パネル16と、を備えている。上面カバー12、外フタ13及びタンク収納フタ15は、それぞれ筐体11の上面後方部、上面中央部及び上面前方部に配置され、各々後端部において、筐体11に対して回動自在に軸支されている。また、外フタ13の上面には、洗濯機1を操作するための操作パネル14が設けられている。
【0012】
外フタ13の下方には、第1投入部31が設けられている。第1投入部31は、ユーザが手動で洗剤や柔軟剤(仕上剤)等の洗濯処理液を水槽21(
図3参照)に投入するための手動投入部として機能する。また、タンク収納フタ15の下方には、洗濯処理液を自動で水槽21に投入する洗濯処理液投入装置30が配置されている。
【0013】
図2は、外フタ13及びタンク収納フタ15を開いた状態における洗濯機1の正面図である。
図2において、洗濯処理液投入装置30は、タンク42を備えており、タンク42は、洗剤用のタンク42aと、柔軟剤用のタンク42bと、を備えている。また、タンク42a,42bの上端部は、上方に向かって開口しており、その開口部を洗剤及び柔軟剤用の投入部32a,32bと呼ぶ。また、両者を総称して第2投入部32と呼ぶことがある。また、投入部32a,32bには、ユーザによって開閉自在に構成された投入口フタ43a,43bが設けられている。投入口フタ43aを閉状態にすると、洗剤用のタンク42aが封止され、投入口フタ43bを閉状態にすると、柔軟剤用のタンク42bが封止される。なお、投入口フタ43a,43bを総称して投入口フタ43と称することがある。
【0014】
図3は、外フタ13及びタンク収納フタ15を開いた状態において、斜め上前方から見た洗濯機1の斜視図である。
図3に示すように、洗濯機1の外フタ13を開けると、筐体11の内部に開口部11aが形成されている。そして、開口部11aの内部には、洗濯対象物が投入される洗濯兼脱水槽として機能する水槽21が配置されている。また、第1投入部31は、筐体11の左前方上部で、かつ、水槽21の外側の位置に配置されている。また、タンク42は、筐体11の前方上部で、かつ、第1投入部31よりも前方の位置に配置されている。
【0015】
タンク42は、複数回分の洗濯処理液を収容する。洗濯処理液投入装置30は、タンク42に収容された洗濯処理液を計量して、適量の洗濯処理液を水槽21に自動で投入する。このため、洗濯処理液投入装置30は、洗濯処理液を計量して、タンク42から水槽21に搬送する搬送ポンプ46(
図5参照)を備えている。
【0016】
〈洗濯機1の内部構成〉
図4は、洗濯機1の内部構成を示す模式図である。
図4に示すように、洗濯機1は、筐体11の内部に、外槽22を備えており、さらにその内部に水槽21を備えている。外槽22及び水槽21を併せて、以下では「洗濯槽」とも呼称する。
外槽22は、上面部に設けられた外槽カバー22aと、外槽カバー22aに設けられた開口部を封止するフタ部材22bと、底部に他の部位よりも落とし込むようにして設けられた落とし込み部22cと、を有している。水槽21は、上面が開放された有底の円筒形状を有している。水槽21は、円筒の胴体部分を構成する胴板21aと、水槽21の底部で回転する回転翼21bと、水槽21のバランスを維持するバランスリング21cと、を有している。胴板21aには、通水及び通風のための、複数の貫通孔21aaが形成されている。また、バランスリング21cは、内部に流体が封止された流体バランサである。
【0017】
洗濯機1は、水槽21及び回転翼21bを回転駆動するための駆動装置23と、駆動装置23の動作を検出するための回転検出装置24及びモータ電流検出装置25と、を備えている。駆動装置23は、水槽21及び回転翼21bを回転させるモータ23aと、水槽21及び回転翼21bの回転モード(攪拌,脱水)を規定するクラッチ機構23bと、回転翼21bに連結された回転軸23cと、を有している。回転軸23cは、上面視において水槽21の中心に配置されている。
【0018】
また、洗濯機1は、筐体11の後方上部に、水槽21に水を供給する給水ユニット20と、空気を加熱して乾燥風を得るための乾燥ユニット71と、乾燥風を循環させるためのファン72、送風ダクト73及び乾燥ダクト81と、を備えている。
送風ダクト73は、ファン72と吹出ノズル74との間に配置されており、その途中部分に乾燥ユニット71が配置されている。送風ダクト73は、蛇腹管73aで吹出ノズル74に接続されている。吹出ノズル74は、ファン72によって送られ乾燥ユニット71で加熱された乾燥風を、外槽22の内部に吹き出す。乾燥ダクト81は、外槽22とファン72との間に配置されている。乾燥ダクト81は、蛇腹管81aで外槽22の落とし込み部22cと接続されており、内部に除湿機構を有している。
【0019】
上述の構成において、洗濯機1は、例えば、洗い工程時やすすぎ工程時に、水槽21が水で浸されるように、給水ユニット20から外槽22に水を供給する。また、洗濯機1は、例えば、乾燥工程時に、ファン72を回転させて空気を送風ダクト73に送り、乾燥ユニット71で空気を加熱して乾燥風を得て、乾燥風を外槽22及び水槽21の内部を通過させる。これにより、洗濯機1は、水槽21の内部に収容された洗濯対象物を乾燥させる。そして、洗濯機1は、外槽22及び水槽21の内部を通過した空気をファン72で乾燥ダクト81から送風ダクト73に送り込み、同様の動作を繰り返す。
【0020】
また、
図4に示すように、洗濯機1は、注水ホース51aと、投入ホース54aと、洗浄ホース61aと、を備えている。注水ホース51aは、給水ユニット20から外槽22に水を流すホースである。投入ホース54aは、第1投入部31から外槽22に水を流すホースである。洗浄ホース61aは、水槽21や外槽22等の洗浄時に、給水ユニット20から外槽22に水を流すホースである。注水ホース51aは、後記する第1給水経路51(
図6参照)の一部分を構成している。投入ホース54aは、後記する投入経路54(
図6参照)の一部分を構成している。洗浄ホース61aは、後記する第1洗浄経路61(
図7参照)の一部分を構成している。
【0021】
また、洗濯機1は、水を排出する排出経路63と、排出経路63を開閉する排水弁65と、を備えている。
また、洗濯機1は、筐体11の前方上部にタンク42を収容するケース41を備えている。タンク42は、上下方向に移動させることによって、ケース41に対して、取り外し及び取り付けが自在な構造になっている。なお、ケース41は、洗剤と柔軟剤を水槽21に自動投入できるように、好ましくは、少なくとも洗剤用と柔軟剤用の2つ以上のタンク42を収容する構造を備えているとよい。
【0022】
図5は、洗濯機1の前面パネルを取り外した状態を示す斜視図である。
図5に示すように、ケース41は、正面視形状が横長な矩形状で、かつ、側面視形状が縦長な矩形状を有している。従って、ケース41は、全体形状が奥行き方向に薄い略直方体の形状を有している。ケース41は、前面パネル16(
図1参照)の内壁面に沿って上下方向に延在するように配置されている。ケース41の下方には、搬送ポンプ46が配置されている。
【0023】
図4に戻り、ケース41と水槽21との間には、洗濯処理液の振動を抑制する制振部材45が装着されている。なお、制振部材45は、タンク42に装着してもよく、ケース41とタンク42との双方に装着してもよい。このように、制振部材45を設けると、タンク42に収容された洗濯処理液が揺れて飛び跳ねる事態を抑制することができる。
また、ケース41は、筐体11の前方上部に取り付けられており、前面パネル16の内壁面と筐体11との間で挟み込まれるように配置されている。そのため、洗濯機1は、仮に制振部材45が無かったとしても、タンク42に収容された洗濯処理液の揺れを抑制することができる。従って、制振部材45は省略することも可能である。但し、洗濯機1は、制振部材45を設けることにより、これを設けない場合と比較して、一層効率よくタンク42に収容された洗濯処理液の揺れを抑制することができる。
【0024】
また、洗濯処理液投入装置30の第2投入部32及びタンク42は、水槽21の中心(例えば、回転軸23c)よりも前方に配置されている。また、乾燥ユニット71は、第2投入部32及びタンク42から離間するように、水槽21の中心よりも後方に配置されている。外槽22には、空圧チャンバ29が設けられており、その上部には、外槽22に溜められた洗濯水の水位を検出する水位センサ28が設けられている。
送風ダクト73には、乾燥運転中に水槽21内に向けて吹き出される風の温度を検出する温度センサ26aが設けられている。また、外槽22の落とし込み部22cには、洗濯水の温度や、乾燥運転中に乾燥ダクト81に吸い込まれる空気の温度を検出する温度センサ26bが設けられている。また、落とし込み部22cと排水弁65の間には、温度センサ26cが設けられている。温度センサ26cは、洗濯水の温度や、乾燥運転中に排出経路63から機外に排出される冷却水の温度等を検出する。また、外槽22の側面上部には、外槽22の振動による振動加速度を検知する加速度センサ27が設けられている。なお、水位センサ28、温度センサ26a,26b,26c、加速度センサ27で検出された信号は、制御装置100に送信される。
【0025】
水質センサ35は、洗濯前の水道水や洗濯(洗い、すすぎ、脱水)時に洗濯液の電導度を検出するものであり、外槽22の底壁部22dの外周縁部に配置されている。水質センサ35は、洗濯前の水道水等の水質、具体的には、水の硬度を検出することができる。また、水質センサ35には、外槽22の径方向(法線方向)に沿って延びるように溝部が形成されている(図示せず)。そして、外槽22の周壁部22eから水質センサ35の溝部を通って外槽22の底壁部22dに至る面は、ほぼ連続した面となるように構成されている。例えば、洗濯運転時の脱水工程において、水槽21の貫通孔21aaから外槽22に排出されたすすぎ水の一部は、外槽22の周壁部22eを沿って流れ落ち、水質センサ35の溝部、外槽22の底壁部22dを流れるようになっている。
【0026】
〈洗濯機1の配管経路の構成〉
図6は、洗濯機1の配管経路を示す模式図である。
図6に示すように、洗濯機1は、洗濯対象物の洗濯時に使用する配管経路として、第1給水経路51と、第2給水経路52と、搬送経路53と、投入経路54と、を備えている。
第1給水経路51は、給水ユニット20と第1投入部31とを結び、給水ユニット20から第1投入部31に水を供給する。
【0027】
第2給水経路52は、第1給水経路51の途中部分と搬送経路53とを結び、第1給水経路51を介して給水ユニット20から搬送経路53に水を供給する。
搬送経路53は、タンク42と第1投入部31とを結び、タンク42から搬送ポンプ46を介して排出された洗濯処理液を搬送する。
投入経路54は、第1投入部31と水槽21(外槽22)とを結び、第1投入部31から水槽21に洗濯処理液及び水を投入する。
【0028】
第2給水経路52と搬送経路53との接続箇所には、流れを切り替える切替弁64が配置されている。切替弁64は、「タンク42から搬送経路53に洗濯処理液を流す方向」及び「第2給水経路52から搬送経路53に水を流す方向」のうち何れか一方に選択的に切り替える。また、搬送経路53の経路上には、搬送ポンプ46と、流体の逆流を防止する逆止弁47a,47bとが配置されている。逆止弁47a,47bは、それぞれ、搬送ポンプ46の上流側(タンク42側)と下流側(第1投入部31側)とに配置されている。また、洗濯機1は、水槽21や外槽22、ケース41等の洗浄時に使用する配管経路として、第1洗浄経路61と、第2洗浄経路62と、排出経路63と、を備えている。第1洗浄経路61は、給水ユニット20と第1投入部31とを結び、給水ユニット20から第1投入部31に洗浄用の水を供給する。
【0029】
第2洗浄経路62は、第1洗浄経路61の途中部分とケース41とを結び、第1洗浄経路61を介して給水ユニット20からケース41に洗浄用の水を供給する。排出経路63は、ケース41と排水口66とを結び、ケース41から排水する。排出経路63は、ケース41と乾燥ダクト81とを接続する排水管63aと、乾燥ダクト81と外槽22とを接続する排水管63bと、外槽22に設けられた排水弁65と排水口66とを接続する排水管63cと、を備えている。外槽22には排水弁65が設けられている。洗濯機1は、排水弁65を開放することにより、排水管63cを経由して洗濯処理液及び水を排水口66から外部に排出する。
【0030】
洗濯機1は、自動投入を行う場合に(すなわち、洗濯処理液投入装置30で洗濯処理液を水槽21に投入する場合に)、タンク42に収容された洗濯処理液を、搬送経路53を介して第1投入部31に搬送する。そして、洗濯機1は、搬送された洗濯処理液を、第1投入部31から投入経路54を通って水槽21に投入することができる。そのため、洗濯機1は、手動投入時及び自動投入時にかかわらず、洗濯処理液が第1投入部31を通過するため、第1投入部31に水を通過させることにより、洗剤投入時に使用する水量を低減することができる。
【0031】
上述のように、洗濯機1は、タンク42に収容された洗濯処理液を、搬送経路53を通ってタンク42から第1投入部31に搬送する。その際、搬送経路53には、一部の洗濯処理液が残留するが、第2給水経路52から給水された水で、搬送経路53に残留した洗濯処理液を第1投入部31へ搬送することができる。また、第2給水経路52は、第1給水経路51の途中部分に接続されている。そのため、洗濯機1は、仮に、搬送経路53が塞がってしまい、意図しない圧力が搬送経路53に加わる現象が発生した場合であっても、搬送経路53に加わる圧力を、第1給水経路51を介して外部(水槽21側)に逃がすことができる。従って、洗濯機1は、このような現象が発生した場合であっても、搬送経路53に加わる圧力を低減することができる。これにより、洗濯機1は、搬送経路53の性能を比較的長く維持することができる。
【0032】
また、洗濯機1は、第1洗浄経路61に沿って給水ユニット20から第1投入部31に洗浄用の水を流すことによって、第1投入部31を洗浄することができる。また、洗濯機1は、第2洗浄経路62に沿って給水ユニット20からケース41に洗浄用の水を流すことによって、ケース41を洗浄することができる。ケース41の底部には、例えばタンク42の下部に嵌合するノズル(図示略)が設けられているが、本実施形態によれば、ケース41とともにそのノズルも洗浄することができる。
【0033】
また、洗濯機1は、第1洗浄経路61に供給された洗浄用の水を投入経路54に沿って水槽21に排出するとともに、第2洗浄経路62に供給された洗浄用の水を排水管63aに沿って(乾燥ダクト81を経由して)水槽21に排出することができる。そのため、洗濯機1は、水槽21や外槽22を洗浄することができる。
【0034】
〈洗濯機1の回路構成〉
図7は、洗濯機1の制御回路構成を示すブロック図である。
図7において、制御装置100は、マイコン110と、駆動回路129a~129iと、を備えている。マイコン110は、記憶部111と、運転コース設定部112と、回転速度算出部113と、衣類重量算出部114と、電導度測定部115と、洗剤量・洗い時間決定部116と、洗剤状態判定部117と、発泡判定部118と、洗濯処理液投入判定部119と、運転制御部151と、残時間表示制御部152を備える。
【0035】
ここで、マイコン110は、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等、一般的なコンピュータとしてのハードウエアを備えており、ROM、EEPROMには、CPUによって実行される制御プログラム、DSPによって実行されるマイクロプログラム及び各種データ等が格納されている。
図7において、マイコン110の内部は、制御プログラム及びマイクロプログラム等によって実現される機能を、ブロックとして示している。なお、洗濯機1に用いられるマイコンは複数機能を複数台のマイコンで分担するようにしてもよい。しかし、本実施形態では、便宜上、一台のマイコン110で各機能をすべて実施するかのように説明し、また、図示している。
【0036】
マイコン110は操作パネル14に接続されている。操作パネル14は、ユーザに各種情報を表示するLED14aと、ユーザによって操作される操作スイッチ14bと、を備えている。これにより、マイコン110は、操作パネル14によるユーザの操作指示に基づいて、洗濯機1の運転状態を制御する。
記憶部111は、上述したRAM、ROM、EEPROM等から構成され、マイコン110が実行するプログラムや、各種データ等を記憶する。特に、記憶部111は、様々な運転コースにおける運転パターンを記憶している。マイコン110は、操作パネル14等から運転コースが指定されると、該運転コースに応じた運転パターンを記憶部111から読み出す。この運転パターンとは、洗い工程、すすぎ工程、脱水工程、乾燥工程の内容を定めるものである。
【0037】
運転コース設定部112は、操作パネル14の操作による運転コースの選択、設定をユーザから受付ける。
運転制御部151は、洗濯機1の各運転を制御し、特に、洗濯の開始前に洗濯槽内の洗濯対象物の重量を後記する衣類重量算出部114、回転速度算出部113、モータ電流検出装置25(重量センサ)で検出して当該検出の値に基づいて運転を行う。具体的には、運転コース設定部112で受付けた設定に応じて、上述した各工程の内容に基づいて、洗濯機1の各部を制御する。例えば、運転コース設定部112は、駆動回路129aを介して給水ユニット20を駆動制御し、駆動回路129bを介して排水弁65を駆動制御する。また、運転コース設定部112は、駆動回路129cを介して切替弁64を駆動制御し、モータ用の駆動回路129eを介して駆動装置23のモータ23aを駆動制御し、クラッチ用の駆動回路129fを介してクラッチ機構23bを切り替え、ヒータスイッチ用の駆動回路129gを制御する。これにより、運転コース設定部112は、乾燥ユニット71(図中では「ヒータ」と記す)の通電を制御し、ファン用の駆動回路129hを介してファン72を制御し、搬送ポンプ用の駆動回路129iを介して搬送ポンプ46を駆動制御する機能を有する。
【0038】
回転速度算出部113は、回転検出装置24(
図4参照)からの検出値に基づき、モータ23aの回転速度を算出する機能を有する。
衣類重量算出部114は、回転速度算出部113で算出された回転速度と、モータ電流検出装置25の検出値と、に基づいて、水槽21内の衣類すなわち洗濯対象物の重量を算出する機能を有する。すなわち、回転速度算出部113とモータ電流検出装置25と衣類重量算出部114とが重量センサとして機能する。洗濯対象物の重量が増加すると、水槽21を回転させるための負荷が大きくなり、モータ23aに流れるモータ電流を大きくする必要が生じる。従って、モータ23aのモータ電流と回転速度とに基づいて、洗濯対象物の重量を算出することができる。
【0039】
電導度測定部115は、水質センサ35からの検出値を用いて、水道水や洗濯液の電導度を測定する機能を有する。
洗剤量・洗い時間決定部116は、電導度測定部115が測定した電導度等に基づいて、洗剤量及び衣類の洗い時間を決定する機能を有するものであり、詳細は後述する。
洗剤状態判定部117は、電導度測定部115が測定した電導度等に基づいて、洗剤の状態を判定する機能を有するものであり、詳細は後述する。
【0040】
発泡判定部118は、電導度測定部115と洗剤状態判定部117が判定した洗濯液の状態に基づいて、洗い時間や水量、モータ回転速度を決定する機能を有するものであり、詳細は後述する。
洗濯処理液投入判定部119は、洗濯処理液の投入制御を行う機能を有する。より具体的には、洗濯処理液投入判定部119は、洗剤量・洗い時間決定部116が決定した洗剤量に基づいて、搬送ポンプ用の駆動回路129iで搬送ポンプ46を制御する。
残時間表示制御部152は、洗濯機1の運転に要する残時間を操作パネル14(
図8参照)に表示するための制御を行う。
【0041】
<操作パネル14の詳細>
図8は、操作パネル14の一構成例を示す平面図である。
操作パネル14には、コース設定部161、動作設定部162、機能設定部163、自動投入設定部164、残時間表示部165、スタートボタン166が設けられている。
コース設定部161は、主たる運転コースの選択、設定をユーザから受付ける。コース設定部161は、洗濯設定ボタン161a、洗濯及び乾燥設定ボタン161b、乾燥設定ボタン161c、表示部161dを備えている。洗濯設定ボタン161a、洗濯及び乾燥設定ボタン161b、乾燥設定ボタン161cは、前記した操作スイッチ14b(
図7参照)の一部をなすボタンである。洗濯設定ボタン161aは、洗濯工程だけの運転(乾燥工程なし)を選択、設定するボタンである。洗濯設定ボタン161aを押下すると、洗濯設定ボタン161aのLED14a(
図7参照)が点灯し、洗濯工程だけの実行という運転コースが設定される。洗濯及び乾燥設定ボタン161bは、洗濯工程及び乾燥工程を一連の工程として運転することを選択、設定するボタンである。洗濯及び乾燥設定ボタン161bを押下すると、洗濯及び乾燥設定ボタン161bのLED14aが点灯し、洗濯工程及び乾燥工程を一連の工程として運転する運転コースが設定される。乾燥設定ボタン161cは、乾燥工程のみ(洗濯工程なし)の運転を選択、設定するボタンである。乾燥設定ボタン161cを押下すると、乾燥設定ボタン161cのLED14aが点灯し、乾燥工程のみの運転を行う運転コースが設定される。
【0042】
また、表示部161dには、この例で、標準、おいそぎ、手造り、デリケート、おしゃれ着、毛布、低温乾燥、ダニ対策、消臭除菌、花粉、槽洗浄、槽乾燥の個別の運転コースが表示されている。これらの運転コースは、洗濯設定ボタン161a、洗濯及び乾燥設定ボタン161b、乾燥設定ボタン161cを操作することで選択、設定することができる。これらの運転コースが選択、設定されたときは、選択、設定された運転コースに対応する表示部161dの文字のLED14aが点灯する。なお、これらの個別の運転コースの運転の詳細については便宜上説明を省略する。
【0043】
動作設定部162は、水量設定ボタン162a、洗い設定ボタン162b、すすぎ設定ボタン162c、脱水設定ボタン162d、乾燥設定ボタン162e、表示部162fを備えている。
水量設定ボタン162aは、洗濯槽に供給する水量を設定するボタンである。この例では、水量として26L、42L、55L、72L、82Lを選択することができる。水量を選択、設定すると、残時間表示部165に水量を示す文字のLED14aが点灯する。
【0044】
洗い設定ボタン162bは、洗い工程に要する時間を設定するボタンである。この例では、洗濯時間として3分、5分、8分、12分、20分を選択することができる。洗濯時間を選択、設定すると、残時間表示部165に洗濯時間を示す文字のLED14aが点灯する。
すすぎ設定ボタン162cは、すすぎ工程の運転コースを設定するボタンである。この例では、すすぎ工程として、1回、2回、注水、ナイアガラを選択することができる。すすぎ工程を設定すると、残時間表示部165にすすぎ工程の運転コースを示す文字のLED14aが点灯する。「1回」は、すすぎ工程を1回だけ行う運転コースである。「2回」は、すすぎ工程を2回行う運転コースである。「注水」は、すすぎ工程の間、水を少しずつ出し続けて行う「注水すすぎ」を行う運転コースである。「ナイアガラ」は、たっぷりの水を循環させ、強い遠心力を生み出す高速回転を水槽21で行って、汚れや繊維に潜んだ洗剤まで徹底的にすすぐ運転コースである。
【0045】
脱水設定ボタン162dは、脱水工程に要する脱水時間を設定するボタンである。この例では、脱水時間として、1分、3分、6分、9分を選択することができる。脱水時間を選択、設定すると、残時間表示部165に脱水時間を示す文字のLED14aが点灯する。
乾燥設定ボタン162eは、乾燥工程に要する乾燥時間を設定するボタンである。この例では、乾燥時間として、30分、60分、90分、自動を選択ことができる。乾燥時間を選択、設定すると、残時間表示部165に乾燥時間を示す文字のLED14aが点灯する。
【0046】
機能設定部163は、温水ミスト等設定ボタン163a、お湯取ボタン163b、AIボタン163c、表示部163dを備えている。
温水ミスト等設定ボタン163aは、温水ミスト、つけおき+の運転コースを設定するボタンである。温水ミスト又はつけおき+を選択、設定すると、表示部163dの該当の運転コースの文字のLED14aが点灯する。「温水ミスト」は、温風と暖かいミストを洗濯対象物の全体に吹き付け、洗剤の酵素パワーを発揮させることで皮脂汚れを落とし、黄ばみを抑制・除去する運転コースである。「つけおき+」は、少ない水で溶かした高濃度洗浄液でじっくりつけおきしながら、洗濯対象物を優しく動かしてじっくり洗い上げて、皮脂汚れや黄ばみを抑制する運転コースである。
【0047】
お湯取ボタン163bは、お湯取運転を運転コースとして設定するボタンである。お湯取運転とは、風呂水を洗濯工程に使用することで水道代の節約を図る運転コースである。この例では、洗い、すすぎ1、すすぎ2を運転コースとして設定することができる。お湯取ボタン163bで運転コースを設定すると、設定した運転コースを示す表示部163dの文字のLED14aが点灯する。「洗い」は、洗い工程で風呂水を使用する運転コースである。「すすぎ1」は、洗い工程から1回目のすすぎ工程まで風呂水を使用する運転コースである。「すすぎ2」は、洗い工程から2回目のすすぎ工程まで風呂水を使用する運転コースである。
【0048】
AIボタン163cは、AI運転又は自動おそうじを運転コースとして選択するボタンである。「自動おそうじ」は、AIボタン163cを3秒押しすることで設定することができる。「AI運転」は、AI(人工知能)によって、洗濯機1の運転を自動制御する運転コースである。「自動おそうじ」は、自動で洗濯槽の汚れを洗い流して、洗濯槽の除菌や黒カビ発生の抑制を図る運転コースである。
自動投入設定部164は、洗剤設定ボタン164a、柔軟剤設定ボタン164b、表示部164cを備えている。洗剤設定ボタン164aは、洗濯機1で自動投入される洗剤の量を多め又は少なめに設定するボタンである。洗剤設定ボタン164aの設定により、選択された「多め」又は「少なめ」の表示部164cの文字のLED14aが点灯する。「多め」が設定されれば自動投入される洗剤の量は多めに設定され、「少なめ」が設定されれば、自動投入される洗剤の量は少なめに設定される。
【0049】
柔軟剤設定ボタン164dは、洗濯機1で自動投入される柔軟剤(仕上剤)の量を多め又は少なめに設定するボタンである。柔軟剤設定ボタン164bの設定により、選択された「多め」又は「少なめ」の表示部164cの文字のLED14aが点灯する。「多め」が設定されれば自動投入される柔軟剤の量は多めに設定され、「少なめ」が設定されれば、自動投入される柔軟剤の量は少なめに設定される。
なお、洗剤、柔軟剤の残量が所定程度少なくなったときは、該当する自動投入設定部164は洗剤設定ボタン164aと、表示部164cの「残量少」の文字とのLED14aを点灯して知らせる。
【0050】
残時間表示部165は、LED14a(7セグメントLED)の点灯によって洗濯機1の運転に要する残時間を表示する。この表示は、洗濯機1の運転中に刻々と変化する。なお、残時間表示部165に、洗濯槽内に自動投入する洗剤の量も表示するようにしてもよい。
スタートボタン166は、操作パネル14で運転コースを設定した後に押下することにより、設定された運転コースでの洗濯機1の運転の開始を指示するボタンである。
【0051】
〈洗濯機1の工程制御〉
図9は、洗濯機1の洗濯運転(洗い、すすぎ、脱水等)における一連の運転工程を説明する工程図である。なお、操作パネル14における情報の表示制御については、
図10を参照して後記する。また、
図9を参照して行う説明は、比較的基本的な洗濯機1の運転工程に関してであり、
図8を参照して説明した運転コースの全てについて説明するものではない。
【0052】
まず、ユーザにより洗濯機1の主電源(図示せず)が投入されると、工程はステップS0に進む。ステップS0では、運転コース設定部112は、ユーザによる運転コースの選択、設定等を受け付ける。
次に、ステップS1では、ユーザは水槽21内に洗濯する洗濯対象物を投入する。ユーザが操作パネル14を操作してスタートボタンを押下して運転開始指示を行うと、運転制御部151(
図7参照)は、回転翼21b(
図4参照)を回転させる。また、マイコン110の衣類重量算出部114は、給水前の衣類について布量(重量)を算出する。
【0053】
次に、ステップS2では、運転制御部151は、水道水を外槽22内に排出する。給水ユニット20に接続されているホース(図示せず)内には、空気が含まれていることがある。そこで、運転制御部151は、圧縮された空気を水道水とともに、外槽22内に排出する。
ステップS3では、洗剤量・洗い時間決定部116は、衣類の布量に基づいて、投入すべき洗剤量と、洗濯完了までの所要時間を演算する。
【0054】
また、ステップS3では、ステップS0において洗濯処理液投入の設定がONであった場合に限り、洗剤量・洗い時間決定部116が決定した洗剤量に基づいて、駆動回路129iで搬送ポンプ46を制御し、搬送経路53を通過させ、第1投入部31へと、洗濯処理液を供給する。
ステップS4では、まず、運転制御部151は、給水ユニット20を開弁して、第1投入部31及び外槽22に洗剤と水を供給する。ここで、水位が所定位に到達すると、運転制御部151は給水ユニット20を閉弁する。また、第1投入部31への給水時には、第1給水経路51と第2給水経路52へ分岐されているため、搬送経路53に残留した洗濯処理液を第1投入部31へ搬送することができる。
【0055】
ステップS5では、運転制御部151は、供給された洗剤を含む水の温度を温度センサ26b(または、温度センサ26c)によって測定する。次に、運転制御部151は、洗剤と水を均一化させる混合工程を実行した後に、電導度を水質センサ35により測定する。次に、運転制御部151は、水道水の水温と電導度とに基づいて、洗剤溶かし時間を決定する。なお、その詳細については後述する。
ステップS6では、運転制御部151は、ステップS5で決定した洗剤溶かし時間だけモータ23aを駆動して、水槽21、及び回転翼21bを回転させ、発生した水流を利用して洗剤を溶かして高濃度の洗剤溶液を生成する。なお、高濃度の洗剤溶液の生成方法としては、水槽21と回転翼21bの両方を回転させた方法に限らず、回転翼21bのみを回転させたり、循環ポンプ(図示せず)の逆回転を利用した方法等であってもよい。
【0056】
ステップS7では、電導度測定部115は、生成された洗剤溶液の電導度を水質センサ35により測定し、洗剤状態判定部117により、判定した洗剤種類の見直しを行うとともに、実際に投入された洗剤の濃度を判定する。生成された洗剤溶液は、一定の水量に洗剤を溶かしているため、洗剤の濃度変化を電導度の変化量として検出できる。投入した洗剤量が多い(洗剤の濃度が高い)場合は、投入した洗剤量が少ない(洗剤の濃度が低い)場合と比較して、電導度が大きくなる。このため、発泡判定部118により、すすぎ運転を1回と判定していた場合であっても、投入した洗剤量が多い場合には、すすぎ運転を2回に変更することが可能である。なお、このステップS7においては、電導度の計測精度を高めるため、洗剤溶かしのため回転していた水槽21や回転翼21bを一旦停止させた後、次のステップS8で再び回転を開始させている。したがって、このステップS7をスキップすれば、全体の運転時間を更に短縮することも可能である。
【0057】
ステップS8では、運転制御部151は、水槽21、及び回転翼21bを回転させながら、給水ユニット20から、後の本洗い工程(S13からS19)における水量よりも少ない水量(水位)まで給水する。また、第1投入部31への給水も同時に行うため、第1給水経路51と第2給水経路52へ分岐された水で、搬送経路53の洗浄も同時に可能である。
ステップS9では、前洗い工程が実行される。すなわち、運転制御部151は、後の本洗い工程(S13からS19)における水量よりも少ない水量の状態、すなわち高濃度の洗剤溶液で、衣類を洗う。以下、本洗い工程よりも低水位の状態で、駆動装置23により回転翼21bを回転させながら、高濃度の洗剤溶液を衣類に浸透させる運転を、高濃度洗浄と呼ぶ。なお、本実施形態における高濃度洗浄工程は、給水を行わずに一定の水位の状態で運転しているが、給水しながら運転してもよい。但し、ステップS6の洗剤溶かし動作のように、所定の水位になる前に別工程で(非連続で)行うものについては、高濃度洗浄工程には含まれない。
【0058】
また、本実施形態では、液体洗剤及び液体洗剤(濃縮)の場合、粉末洗剤の場合と比べて高い回転速度で、モータ(回転翼21b)を回転しながら高濃度の洗浄を行う。これにより、発泡しやすい高濃度洗浄時において、粉末洗剤を用いた場合の発泡を抑制しつつ、液体洗剤を用いた場合に洗浄力をより高めることが可能となる。
さらに、本実施形態では、従来は30秒程度であった高濃度洗浄工程の運転時間を、2分30秒程度に長く設定している。このように、高濃度洗浄工程の運転時間を長くすることで、食べ物の油汚れを効果的に落とすことが可能となる。一方で、全体の洗濯時間を短くする「時短」のニーズも考慮する必要がある。そこで、高濃度洗浄工程の運転時間を長くする一方、本洗い工程の運転時間を短くすることが望ましい。
【0059】
ステップS10では、まず、衣類重量算出部114は、水を含んだ状態の衣類の重量を算出する。そして、ステップS1で算出した水を含まない衣類の重量とステップS10で算出した水を含んだ状態の衣類の重量から、衣類の布質(吸水性)を判断する。判別された衣類の布質に従って以下の工程が制御される。
ステップS11では、運転制御部151は、洗い工程前の水温を取得する。これは、水温が高い場合は洗剤の化学的作用が向上し、洗浄力が向上し、洗い時間を短縮できるためである。洗い工程前に水温を測定することで、例えば、風呂の残り湯を利用した洗濯時においても正確な水温が検知でき、洗い時間を変更することが可能である。測定した水温が高い場合や水の硬度が低い場合、後述するステップS18やステップS19をスキップすることで洗い時間を短縮することが可能である。
【0060】
このように、洗い工程時の発泡しやすさを、水質センサ35を用いて洗濯液の電導度を測定し、発泡判定部118が制御することで、洗い時間を制御(短縮または延長)することが可能になる。記憶部111は、汚れ度合いにより洗い時間(短縮または延長時間)を決定するテーブルを予め記憶している。なお、ステップS1で算出した布量により複数の閾値を設定してもよい。
ステップS12では、運転制御部151は、所定の設定水位まで水槽21に水を給水する。ステップS13では、運転制御部151は、1回目の本洗いを行い、その後に水の電導度を測定する。測定した電導度に基づく、この時点の汚れ度をd1とする。ステップS14では、運転制御部151は、1回目の「ほぐし」を行い、その後に水の電導度を測定する。測定した電導度に基づく、この時点の汚れ度をd2とする。ステップS13,S14と同様に、ステップS15,S16では、運転制御部151は、2回目の本洗い及び「ほぐし」を実行する。各々における汚れ度をd3,d4とする。ステップS17,S18 では、運転制御部151は、3回目の本洗い及び「ほぐし」を実行する。各々における汚れ度をd5,d6とする。ステップS19では、運転制御部151は、4回目の本洗いを実行する。その際の汚れ度をd7とする。
【0061】
ステップS20では、運転制御部151は、衣類のアンバランス状態を監視し、脱水に移行するか否かを判断する。
ステップS21では、運転制御部151は、排水弁65を開弁し、外槽22内の洗い水を排水する。
ステップS22では、運転制御部151は、水槽21を回転させて衣類に含まれる水を脱水する。
【0062】
ステップS23では、運転制御部151は、排水弁65を閉弁、給水ユニット20を開弁して、水槽21にすすぎ水を供給する。そして、水槽21を回転させつつ、水槽21内の衣類にすすぎ水を散布する。
ステップS24では、運転制御部151は、水槽21を回転させつつ、給水ユニット20を閉弁して、衣類からすすぎ水を脱水する。
ステップS25では、運転制御部151は、排水弁65を閉弁し、給水ユニット20を開弁して、水槽21にすすぎ水を供給する。そして、水槽21を回転させつつ、水槽21内の衣類にすすぎ水を散布する。
【0063】
ステップS26では、運転制御部151は、給水ユニット20を閉弁して、水槽21を停止させて、排水弁65を開弁し、外槽22内のすすぎ水を排水する。
ステップS27では、運転制御部151は、水槽21を回転させて衣類に含まれる水を脱水する。
ステップS23、及びステップS25の回転シャワーすすぎの実行は、発泡判定部118により決定される。発泡判定部118は、回転シャワーすすぎの回数を1回と決定した場合は、運転制御部151にステップS23からステップS27へスキップする指令を送信することで、回転シャワーすすぎの回数を1回とすることが可能である。
【0064】
ステップS28では、脱水が正常に終了した場合は外槽22内には水が無い状態であり、水質センサ35を動作させて水無しの電導度を測定する。ここで測定した電導度は初期値として記憶部111に記憶され、水質センサ35の故障判断や、電極部への汚れ付着などによる経年変化を補正することに利用することができる。
ステップS29では、運転制御部151は、排水弁65を閉弁、給水ユニット20を開弁して、水硬度を検知する水位まで外槽22にすすぎ水を供給する。
【0065】
ステップS30では、電導度測定部115は、水質センサ35、温度センサ26b(または、温度センサ26c)を動作させて、すすぎ水の水温と電導度を測定して水の硬度を算出する。ここで測定した水温と水の硬度は記憶部111に記憶され、次回の洗剤量、洗い時間の決定に利用する。
また、ステップS30では、運転制御部151は、ステップS0において洗濯処理液投入の設定がONであった場合に限り、水槽21に洗濯処理液を供給する。すなわち、運転制御部151は、ステップS30において、すすぎ水の水温と電導度を測定して水の硬度を算出した後に、洗剤量・洗い時間決定部116が決定した仕上剤量に基づいて、駆動回路129iで搬送ポンプ46を制御する。これにより、仕上剤は搬送経路53を介して、第1投入部31に供給される。
【0066】
ステップS31では、運転制御部151は、設定水位まで給水する。
ステップS32では、運転制御部151は、外槽22にすすぎ水を溜めた状態で回転翼21b(または、水槽21)を回転させて衣類を攪拌しながら、給水ユニット20を開弁して、水槽21に仕上剤を投入する。また、同時に第1投入部31への給水も同時に行うため、水は第1給水経路51と第2給水経路52へ分岐される。これにより、搬送経路53に残留した洗濯処理液を第1投入部31へ搬送することができる。
【0067】
ステップS33では、運転制御部151は、仕上剤投入後の1 回目のすすぎ攪拌を実行し、その後に水の電導度を測定する。なお、
図4に示したように、本実施形態における水質センサ35は、外槽22の下部(底部)に設けられているので、すすぎ工程時には、水質センサ35が水没している状態であり、すすぎ水の電導度を測定することができる。測定した電導度に基づく、この時点のすすぎ度をs1とする。
ステップS34,S35では、運転制御部151は、同様に仕上剤投入後の2回目および3回目のすすぎ攪拌を実行する。各時点のすすぎ度をs2,s3とする。
【0068】
このように、すすぎ工程時に水質センサ35を用いて、すすぎ水の電導度を測定することで、すすぎ時間を制御(短縮または延長)することが可能になる。より具体的には、記憶部111には、すすぎ水の電導度変化量からすすぎ時間(短縮または延長時間)を決定するテーブルが予め記憶されている。また、すすぎ水の電導度変化量は、ステップS30で計測した水道水の電導度と比較して判断してもよい。また、すすぎ水の電導度変化量は、すすぎ時間を短縮・延長する以外にすすぎ回数を増減することにも利用できる。従って、洗剤状態判定部117によりすすぎ運転を1回にしてもよい。また、発泡判定部118が、「洗剤は濃縮タイプの液体洗剤」と判定し、すすぎ運転が1回と決定された場合でも、すすぎが不十分と判定された場合は、追加のすすぎ運転を実行することが可能である。また、すすぎ工程時に水質センサ35を動作させるタイミングとしては、ステップS33~S35の実行時に限定されるものではなく、上述したステップS23,S25等の実行時に動作させて、すすぎ時間を制御(短縮または延長)してもよい。また、運転制御部151は、ステップS23またはS25において、ステップS10で判別された衣類の布質によって、すすぎ時間を制御(短縮または延長)してもよい。
【0069】
ステップS36では、運転制御部151は、衣類のアンバランス状態を監視し、最終脱水に移行するか否かを判断する。
ステップS37では、運転制御部151は、排水弁65を開弁し、外槽22内のすすぎ水を排水する。また、脱水時の起動を安定させるため、ある一定量のすすぎ水が残った状態でステップS38(脱水工程)に移行する場合もある。
ステップS38では、運転制御部151は、水槽21を高速で回転させて衣類に含まれる水を脱水する。また、水質センサ35を用いて衣類から脱水される水を測定することで、洗濯対象物に含まれている水分量を判定することが可能になる。脱水工程時に水槽21が回転することにより、洗濯対象物に含まれる水分が洗濯対象物から分離され、水槽21の貫通孔21aaから外槽22の周壁部22eの内面に向けて排出される。周壁部22eに排出された水は、重力の作用によって周壁部22eの内面を流れ落ち、水質センサ35の溝部に流れ込む。これにより、水質センサ35は、脱水時の水の電導度を検出することができる。
【0070】
すなわち、脱水時の水質センサ35では、水質センサ35の溝部に水が流れ込むことにより、通り抜ける水の量に応じて検出値(電導度)が変化する。例えば、洗濯対象物がバスタオルなど吸水性の高いものの場合には、排出される水の量も多くなり、検出値(電導度)は高くなる。一方、例えば、洗濯対象物がワイシャツなど吸水性の低いものの場合には、排出される水の量は少なくなり、検出値(電導度)は低くなる。
このように、脱水工程時に水質センサ35を用いて測定した衣類から脱水される水の電導度を測定することで、脱水時間を制御(短縮または延長)することが可能になる。記憶部111は、脱水時間(短縮または延長時間)を決定するテーブルを予め記憶している。
【0071】
なお、ステップS1で算出した布量により複数の閾値を設定してもよい。
また、脱水工程時に水質センサ35を動作させるタイミングとしては、ステップS38時に限定されるものではなく、他の脱水工程(ステップS22,S24,S27)において動作させてもよい。また、水質センサ35の検出結果に応じて脱水時間を制御(短縮または延長)してもよい。
ステップS39では、運転制御部151は、駆動回路129hを介してファン72を回転させて空気を送風ダクト73に送り、乾燥ユニット(ヒータ)71で空気を加熱して乾燥風を得て、乾燥風を外槽22及び水槽21の内部を通過させる。これにより、洗濯機1は、水槽21の内部に収容された洗濯対象物(布類)を乾燥させる。そして、洗濯機1は、外槽22及び水槽21の内部を通過した空気をファン72で乾燥ダクト81から送風ダクト73に送り込み、同様の動作を繰り返すことができる。
【0072】
ステップS40では、運転制御部151は、駆動回路129hを介してファン72を回転させて空気を送風ダクト73に送り、乾燥風を外槽22及び水槽21の内部を通過させる。ステップS40の実行前、水槽21の内部の洗濯対象物(布類)は乾燥し高温状態であった。ステップS40が実行されることにより、洗濯機1は、水槽21の内部に収容された洗濯対象物(布類)の温度を下げることができる。そして、洗濯機1は、外槽22及び水槽21の内部を通過した空気をファン72で乾燥ダクト81から送風ダクト73に送り込み、同様の動作を繰り返ことができる。
【0073】
ステップS41では、マイコン110は洗濯機1の主電源をオフにする。これにより一連の洗濯機1の運転動作は終了する。
<残時間表示の制御>
ところで、前記特許文献1,2には、洗濯機の洗濯等の運転に要する残時間を表示してユーザに運転の終了時刻を知らせることが記載されている。しかし、一般に洗濯機で洗濯等の運転に要する時間は、洗濯対象物の量や運転のモードである運転コースによって異なる。そのため、一般に洗濯機で運転に要する残時間を表示するタイミングは、ユーザの運転コースの設定後に洗濯槽内に入れられた洗濯対象物の重量を検出して、運転コースと洗濯対象物の量とに応じた運転時間が明らかになって後のことである。具体的には、主電源が投入されて、運転コースの設定を洗濯機がユーザから受け付けた後に、スタートボタンが押下されて洗濯槽内の洗濯対象物の重量を測定してから、該当の運転コースで洗濯機を運転するのに要する残時間が表示される。そのため、ユーザが洗濯機の運転コースを選択してから洗濯機の運転の残時間が表示されるまでの所要時間は数十秒程度要するのが一般的である。
【0074】
しかしながら運転コースを選択してから運転の残時間が表示されるまでの所要時間が、このように長いと、運転コースを選択する際に運転の残時間が表示されず、忙しいユーザはどの運転コースを選ぶのが適切かの判断に迷ってしまうという不具合がある。すなわち、洗濯機の使い勝手を良くしたいという要請がある。
そこで、本実施例は、忙しいユーザが運転コースを選ぶのに迷いを生じにくい洗濯機1(使い勝手の良い洗濯機1)を提供することを課題とする。この課題を解決するため、本実施例では、以下のような洗濯機1の運転に要する残時間の表示の制御を実行する。
【0075】
図10は、本実施例の残時間表示の制御を説明するフローチャートである。
まず、
図10の処理は、主電源(図示せず)の投入により開始する(
図9のS0)。まず、洗濯機1の洗濯工程は、この主電源の投入後に、ユーザから運転コースの選択、設定を受付け、その後、スタートボタン166(
図8)が押下されることにより、開始する。すなわち、スタートボタン166の押下後に、まず、衣類重量算出部114、回転速度算出部113、及びモータ電流検出装置25(重量センサ)(
図4、
図7参照)により、洗濯槽内の洗濯対象物の量(重量)を検出する(
図9のS1)。その上で、当該検出結果及びユーザから受付けた運転コースの設定に基づいて洗濯が開始する。なお、洗濯対象物の量(重量)を検出するのには時間がかかるので、本実施形態では、スタートボタン166の押下前に以下のような制御を行う。
【0076】
残時間表示制御部152は、前記の重量センサで洗濯槽内の洗濯対象物の量を検出前か否かを判断して(ステップS51)、洗濯対象物の量の検出前のときは(ステップS51のYes)、スタートボタン166の押下前か否かを判断する(ステップS52)。スタートボタン166の押下後の場合は(ステップS52のNo)、残時間表示制御部152は、処理をステップS51に戻す。
洗濯対象物の量の検出前で(ステップS51のYes)、スタートボタン166の押下前(ステップS52)の場合は(ステップS52のYes)、残時間表示制御部152は、洗濯工程の終了までに要する時間である残時間を計算して残時間表示部165(
図8)に表示する(ステップS53)。
【0077】
ここでの残時間計算は、マイコン110(
図7)の記憶部111を構成するEEPROM(不揮発性メモリ)に記憶されている「運転情報」と、ROMに記憶されている「初期設定情報」とに基づいて実行する。「運転情報」は、「給水量」、「給水時間」、及び「排水時間」である。「給水量」とは、過去の運転における洗濯機1の運転コースごとの洗濯槽への「給水量」(濯槽内への給水量は洗濯対象物の量(重量)によって決まるので、過去の運転の際の前記重量センサによる洗濯槽内の洗濯対象物の量の検出値であってもよい)である。「給水時間」は、洗濯槽への給水に要する時間である。「給水時間」には、洗い工程のものと、すすぎ工程のものとがある。単位時間あたりの給水時間は、洗濯機1の設置場所が同じである場合、同じ浄水場から供給される水を用いるので基本的に変化はない。また、「排水時間」は、洗濯槽から洗濯機1外に水を排出するのに要する時間である。「排水時間」には、洗い工程のものと、すすぎ工程のものとがある。単位時間当たりの排水時間は、洗濯機1の排水ホース(図示せず)等の条件により変化する。通常、洗濯機1の排水ホース等の条件は運転ごとに変化はない。そこで、「運転情報」のうち、過去の「給水時間」及び「排水時間」を今回の運転に要する給水時間及び排水時間として用いる。過去の「給水時間」及び「排水時間」とは、今回、操作パネル14(
図8参照)の操作により選択された運転コースと同じ運転コースのものの中から直近の過去のものを用いる。例えば、運転コースとして今回、「毛布」(
図8参照)が選択された場合、過去に「毛布」で運転した際の「運転情報」のうち直近のものを用いる。もし、今回選択された運転コースに対応した過去の「運転情報」が存在しない場合は、デフォルトとしてROMに記憶されている固定データを用いるようにしてもよい。
【0078】
一方、「初期設定情報」とは、「洗濯工程」を構成する「洗い工程」、「すすぎ工程」「脱水工程」に夫々要する時間である。これらの時間は、運転コースごとに予め定まっていて、マイコン110の記憶部111を構成するROMに固定データとして予め記憶されている。
こうして、今回の運転で選択された運転コースごとの、「運転情報」の「給水時間」及び「排水時間」と、「初期設定情報」の「洗い工程」、「すすぎ工程」、及び「脱水工程」に夫々要する時間を合算することで、今回の運転に要する残時間が一応求められる。これを、ステップS53では、残時間表示制御部152が残時間表示部165に表示する。
【0079】
また、運転コースとして「AI運転」(
図8)が選択されたときには、水質センサ35による洗濯槽への給水の「水質」、例えば、「水硬度」や、温度センサ26b又は26cによる洗濯槽への給水の「水温」が検出される。そして、この「水質」及び「水温」に応じて、AIが自動的に「洗い工程」、「すすぎ工程」に要する時間を可変している。そこで、運転コースとしての「AI運転」が選択された場合は、「運転情報」として、過去の直近の「AI運転」の際の「水質」及び「水温」も記憶部111に記憶されている。そして、AI運転が今回の運転コースとして選択されたときは、直近の過去の「AI運転」の際の「水質」及び「水温」の情報から「洗い工程」、「すすぎ工程」に夫々要する時間をAIが求め、これを前記した「初期設定情報」の「洗い工程」、「すすぎ工程」代わりに用いる。
【0080】
なお、「AI運転」では、「洗い工程」の洗濯水の「汚れ」の程度を検出して(水質センサ35で検出する)、汚れが多い場合は、「洗濯工程」に要する時間を長くしているので、「洗い工程」の洗濯水の「汚れ」の情報を「運転情報」として記憶して用いてもよい。すなわち、「AI運転」に際して、洗濯水の「汚れ」の直近の過去の情報を用いて、AIが「洗い工程」に要する時間を求める。また、「AI運転」では、「すすぎ工程」において、「すすぎ具合」を検出して(水質センサ35で検出する)、十分にすすげている場合は、2回目のすすぎを短縮しているので、「すすぎ具合」の情報を「運転情報」として記憶して用いてもよい。すなわち、「AI運転」に際して、「すすぎ具合」の直近の過去の情報を用いて、AIが「すすぎ工程」に要する時間を求める。さらに、「AI運転」では、「脱水工程」において、衣類から出る「水分量」を検出して、「水分量」が少ない場合には「脱水工程」に要する時間を短くしているので、「水分量」の情報を「運転情報」として記憶して用いてもよい。すなわち、「AI運転」に際して、「水分量」の直近の過去の情報を用いて、AIが「脱水工程」に要する時間を求める。
【0081】
次に、今回の運転に際して選択された運転コースでは、直近の過去の運転コースと比べて、洗濯槽への給水量が異なるときは(S54のYes)、残時間表示制御部152は、洗濯工程の終了までに要する時間である残時間を再度計算して残時間表示部165(
図8)の残時間表示を更新する(ステップS55)。今回の運転に際して選択された運転コースの洗濯槽への給水量が、直近の過去の運転コースの洗濯槽への給水量と同じときは(S54のNo)、残時間表示制御部152は、処理をステップS51に戻す。このときは、ステップS53の残時間表示が維持される。
【0082】
すなわち、操作パネル14(
図8)の水量設定ボタン162aで洗濯槽への給水量を選択したときは、「運転情報」のうち「給水量」の情報も用いて今回の運転における給水時間及び排水時間を求める。つまり、「運転情報」のうち「給水時間」及び「排水時間」に「給水量」の情報を加味することで、単位時間当たりの洗濯槽の給水時間及び排水時間が判明する。これと、水量設定ボタン162aで選択した給水量から、今回の運転に要する給水時間及び排水時間を求めることができる。これに、前記した「初期設定情報」を加味することで、選択した洗濯槽への給水量に応じた洗濯工程の残時間を求めることができる。
【0083】
一方、前記した重量センサで今回の運転における洗濯槽内の洗濯対象物の量(重量)を検出したときは(スタートボタン166(
図8)の押下後である)、残時間表示制御部152は、今回の運転に要する残時間を新たに求めて、新たな残時間を残時間表示部165に表示する(ステップS56)。
具体的には、ステップS53,ステップS55の説明で前記したように、「運転情報」である「給水時間」、「排水時間」、「給水量」の情報に基づいて、今回の運転の洗い工程、すすき工程における給水時間、排水時間が求められるのはステップS53,ステップS55と同様である。ただし、正確な洗濯槽内の給水量は、洗濯槽内の洗濯対象物の量を求めることで初めて明らかになる。この給水量は、今回の運転の給水時間、排水時間、洗い工程の要する時間、すすぎ工程に要する時間を左右する。そこで、ここでは、洗濯槽内の洗濯対象物の量(正確な洗濯槽への給水量が判明する)も加味して今回の運転の給水時間、排水時間、洗い工程の要する時間、すすぎ工程に要する時間を求め、今回の運転における残時間を求める。今回選択された運転コースが「AI運転」の場合も同様である。よって、ステップS56の残時間表示はステップS53,ステップS55のものに比べて比較的正確である。なお、既存の洗濯機では、ステップS56のおける洗濯槽内の洗濯対象物の量(重量)を検出した後の残時間表示が、今回の運転における最初の残時間表示となっていた。
【0084】
その後、スタートボタン166(
図8)の押下により洗濯工程が開始すると(ステップS57のYes)、残時間表示制御部152は、ステップS56で表示した残時間を更新する(ステップS58)。具体的には、洗濯工程を開始後なので、洗濯工程に要する時間は刻々と減っていく。そこで、洗濯工程開始後の経過時間をカウントして洗濯工程に要する残時間をダウンカウントして、刻々と変化する残時間をリアルタイム表示する。また、洗濯工程の進展に伴って諸条件により洗濯工程に要する残時間は変動する。この変動も考慮して洗濯工程に要する残時間を更新する。なお、スタートボタン166の押下により前記のとおり洗濯対象物の重量の測定がなされるが、洗濯工程の運転開始後に洗濯対象物の重量の情報が必要なときは、スタートボタン166の押下により前記のとおり測定した洗濯対象物の重量の情報が使用される。
【0085】
洗濯工程が終了するまでは(ステップS59のNo)、残時間表示制御部152は、処理をステップS58に戻す。洗濯工程が終了したときは(ステップS59のYes)、記憶部111(
図7)は、今回の運転に関する前記の「運転情報」をマイコン110(
図7)のEEPROMの所定記憶領域に記憶する。「運転情報」は前記した「給水量」、「給水時間」及び「排水時間」(「AI運転」の場合は前記した「水質」及び「水温」等)である。この「運転情報」は運転コースごとに異なる記憶領域に記憶される。例えば、今回の運転が運転コースとして「標準」(
図8)が設定されて実行されたときは、今回の「運転情報」は、「標準」運転コースのために用意された記憶領域の記憶情報を更新記憶することとなる。これにより、次回の洗濯機1の運転で「標準」運転コースが設定されたときは、当該更新記憶された「運転情報」が直近の過去の「運転情報」として使用される。
【0086】
以上説明した本実施例の洗濯機1によれば、前記した洗濯槽内の洗濯対象物の量を検出する前で、スタートボタン166(
図8)の押下前に(ステップS51のYes、ステップS2のYes)、今回の洗濯工程に要する一応の残時間を残時間表示部165(
図8)に表示する(ステップS53)。そのため、操作パネル14(
図8)を操作して今回の運転コースを選択したユーザは、おおよその洗濯工程の所要時間を知ることができるので、忙しくても、今回の洗濯で設定すべき運転コースを迷うことなく設定しやすくなる。
【0087】
なお、この残時間表示は、前記した洗濯槽内の洗濯対象物の量を検出する前で、スタートボタン166の押下後に表示しても、ユーザは既存の洗濯機に比べれば速やかに当該残時間を知ることができる。しかし、前記した洗濯槽内の洗濯対象物の量を検出する前で、スタートボタン166の押下前に当該残時間表示を行う方が更に速やかに当該残時間を知ることができるので、忙しいユーザにとって利点が大きい(使い勝手が良い)。
また、今回の運転で「AI運転」の際にも「水質」、「水温」という「運転情報」が過去の「AI運転」の「運転情報」として用いられるので、今回選択された運転コースが「AI運転」であっても、比較的正確な当該残時間表示を速やかに行うことができる。
【0088】
さらに、「運転情報」として、前記「給水時間」、「排水時間」の他に前記「給水量」も用いるので、洗濯槽への給水量を水量設定ボタン162a(
図8)で選択し、この給水量が前回の運転と異なっていても、比較的正確な当該残時間を表示することができる。
さらに、用いる「運転情報」は、今回選択した運転コースと同じ運転コースに関する過去の直近のものを用いる。そのため、当該「運転情報」に基づいて求めた当該残時間は、今回の運転と時間的に近いときの「運転情報」に基づいたものになる蓋然性が高いため、当該残時間を比較的正確なものとできる可能性が高い。
【0089】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウエアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、又はICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0090】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてよい。
【符号の説明】
【0091】
1 洗濯機
11 筐体
14 操作パネル
25 モータ電流検出装置(重量センサ)
35 水質センサ
26b 温度センサ
26c 温度センサ
111 記憶部
112 運転コース設定部
113 回転速度算出部(重量センサ)
114 衣類重量算出部(重量センサ)
151 運転制御部
152 残時間表示制御部
165 残時間表示部
166 スタートボタン