(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023133916
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】眼科装置及び眼科装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
A61B 3/10 20060101AFI20230920BHJP
【FI】
A61B3/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022039172
(22)【出願日】2022-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】高山 賢次郎
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA03
4C316AA06
4C316AA13
4C316AA20
4C316AA24
4C316AA28
4C316FA06
4C316FB21
4C316FB26
4C316FC01
4C316FY02
4C316FY09
4C316FZ01
(57)【要約】
【課題】左右眼切替を正確かつ短時間で実行可能な眼科装置及び眼科装置の制御方法を提供する。
【解決手段】第1眼の眼特性を装置本体(測定ヘッド14)が取得した場合に、相対移動部(駆動機構13)を制御して装置本体を少なくとも左右方向に移動させることで、装置本体を左右の被検眼の他方である第2眼の眼特性を取得可能な位置へ移動させる移動制御部44と、装置本体に設けられ、被検眼の撮影に用いられる撮影部(前眼部カメラ17)と、撮影画像Dに対して楕円検出処理を行って、第2眼の瞳孔Epに対応する瞳孔像56の有無を検出する瞳孔像検出部48と、装置本体の左右方向の移動中に、撮影部による撮影動作と、瞳孔像検出部による検出と、を繰り返し実行させる繰り返し制御部50と、瞳孔像56が検出された場合に装置本体の停止制御を行う停止制御部52と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼の眼特性を取得する装置本体と、
前記被検眼に対して前記装置本体を相対移動させる相対移動部と、
左右の前記被検眼の一方である第1眼の前記眼特性を前記装置本体が取得した場合に、前記相対移動部を制御して前記装置本体を少なくとも左右方向に移動させることで、前記装置本体を左右の前記被検眼の他方である第2眼の眼特性を取得可能な位置へ移動させる移動制御部と、
前記装置本体に設けられ、前記被検眼の撮影に用いられる撮影部と、
前記撮影部が撮影した撮影画像に対して上下方向を長手軸とする楕円を検出する楕円検出処理を行って、前記第2眼の瞳孔に対応する瞳孔像の有無を検出する瞳孔像検出部と、
前記装置本体の前記左右方向の移動中に、前記撮影部による撮影動作と、前記瞳孔像検出部による検出と、を繰り返し実行させる繰り返し制御部と、
前記瞳孔像検出部により前記瞳孔像が検出された場合に、前記相対移動部を制御して、前記装置本体の前記左右方向の移動を停止させる停止制御を行う停止制御部と、
を備える眼科装置。
【請求項2】
前記移動制御部が、前記相対移動部により前記装置本体を前記左右方向に移動させる移動速度を、前記撮影部による撮影の露光時間内で前記装置本体の前記左右方向の位置変化が発生する速度に設定している請求項1に記載の眼科装置。
【請求項3】
前記相対移動部が、予め定められた基準位置を中心として前記装置本体を少なくとも前記左右方向に移動自在に保持し、
前記装置本体が前記第1眼の眼特性を取得する場合には、前記撮影部の撮影光軸が前記基準位置よりも前記左右方向の一方側に位置し、
前記移動制御部が、前記装置本体により前記第1眼の前記眼特性が取得された場合に、前記相対移動部を制御して、前記装置本体を前記左右方向の他方側へ移動させ、
前記繰り返し制御部が、前記相対移動部により前記装置本体が前記左右方向の他方側に移動される場合に、前記撮影光軸が前記基準位置を通過してから少なくとも前記瞳孔像検出部による検出を繰り返し実行させる請求項1又は2に記載の眼科装置。
【請求項4】
前記相対移動部による前記装置本体の前記左右方向の移動が開始されてから予め定められた時間が経過又は予め定められた距離だけ前記装置本体が移動しても前記瞳孔像検出部が前記瞳孔像を検出しない場合に、前記停止制御部が前記停止制御を行う請求項1から3のいずれか1項に記載の眼科装置。
【請求項5】
前記停止制御部による前記停止制御が開始されてから前記装置本体が停止するまでの間に、前記装置本体が前記左右方向に慣性移動し、
前記移動制御部が、前記相対移動部により前記装置本体を前記左右方向に移動させる移動速度を、前記停止制御に応じて前記装置本体の移動が停止した場合に前記瞳孔像が前記撮影画像内の前記左右方向の中心領域で停止する速度に設定している請求項1から4のいずれか1項に記載の眼科装置。
【請求項6】
前記左右方向の中で前記相対移動部が前記装置本体を移動させている方向を進行方向側とし、前記撮影画像の前記左右方向の幅を左右幅とした場合に、前記移動制御部が前記移動速度を、前記撮影画像の前記進行方向側に対応する画像端から前記左右幅の1/4の領域内で前記瞳孔像検出部が前記瞳孔像を検出可能な速度に設定している請求項5に記載の眼科装置。
【請求項7】
前記撮影部が、前記相対移動部による前記装置本体の前記左右方向の移動前に前記第1眼の撮影を実行し、
前記撮影部により撮影された前記第1眼の第1眼撮影画像に基づき、前記第1眼の瞳孔径を検出する瞳孔径検出部を備え、
前記移動制御部が、前記瞳孔径検出部により検出された前記瞳孔径が予め定められた閾値未満である場合には、前記瞳孔径が前記閾値以上である場合よりも前記相対移動部により前記装置本体を前記左右方向に移動させる移動速度を低速に設定する請求項1から6のいずれか1項に記載の眼科装置。
【請求項8】
前記撮影部が、前記相対移動部による前記装置本体の前記左右方向の移動前に前記第1眼の撮影を実行し、
前記撮影部により撮影された前記第1眼の第1眼撮影画像に基づき、前記第1眼の瞳孔径を検出する瞳孔径検出部と、
前記瞳孔径検出部により検出された前記瞳孔径が予め定められた閾値未満である場合には、前記瞳孔径が前記閾値以上である場合よりも前記撮影部のシャッタ速度及びゲインを上げる第1撮影制御部と、
を備える請求項1から7のいずれか1項に記載の眼科装置。
【請求項9】
前記装置本体に設けられ、前記装置本体の前記左右方向の移動中に前記撮影部の撮影範囲に照明光を照射する照明部と、
前記撮影画像内において前記瞳孔像以外の白飛びを発生可能な範囲内で前記照明部から出射される前記照明光の光量を増加させる照明制御部と、
を備える請求項1から8のいずれか1項に記載の眼科装置。
【請求項10】
前記撮影画像内において前記瞳孔像以外の白飛びを発生可能な範囲内で前記撮影部のゲインを上げる第2撮影制御部を備える請求項1から9のいずれか1項に記載の眼科装置。
【請求項11】
被検眼の眼特性を取得する装置本体と、前記装置本体に設けられ、前記被検眼の撮影に用いられる撮影部と、を備える眼科装置の制御方法において、
前記装置本体により左右の前記被検眼の一方である第1眼の前記眼特性を取得した場合に、前記装置本体を少なくとも左右方向に移動させることで、前記装置本体を左右の前記被検眼の他方である第2眼の眼特性を取得可能な位置へ移動させる移動ステップと、
前記撮影部が撮影した撮影画像に対して上下方向を長手軸とする楕円を検出する楕円検出処理を行って、前記第2眼の瞳孔に対応する瞳孔像の有無を検出する瞳孔像検出ステップと、
前記装置本体の前記左右方向の移動中に、前記撮影部による撮影動作と、前記瞳孔像検出ステップと、を繰り返し実行させる繰り返し制御ステップと、
前記瞳孔像検出ステップで前記瞳孔像が検出された場合に、前記装置本体の前記左右方向の移動を停止させる停止ステップと、
を有する眼科装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右の被検眼の眼特性を順番に取得する眼科装置及び眼科装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
眼科では、眼科装置を用いて被検眼の眼屈折力、眼圧、及び角膜内皮細胞の数などの各種の眼特性の取得(測定、撮影、及び観察等)を行う。このような被検眼の眼特性の取得は、左右の被検眼でそれぞれ実行されることが多い。この場合には、最初に、左右の被検眼の一方(第1眼)に対する眼科装置の装置本体のアライメント及び装置本体による眼特性の取得が実行される。次いで、装置本体を少なくとも左右方向に移動させてこの装置本体を左右の被検眼の他方(第2眼)に対応した眼特性取得位置まで移動させる左右眼切替を行った後、装置本体のアライメント及び装置本体による眼特性の取得を実行する。
【0003】
特許文献1には、被検眼の前眼部の撮影に用いられる二次元固体撮像素子を備え、この二次元固体撮像素子の受光面の左端部及び右端部にそれぞれ存在する縦方向に延びた画素領域の輝度値(画素値)を選択的に抽出可能な眼科装置が開示されている。この眼科装置は、左右眼切替において装置本体を左右方向に移動させている間、二次元固体撮像素子の左右の画素領域から抽出した輝度値に基づき、第2眼の像が二次元固体撮像素子により受像されたか否かを判断する。次いで、眼科装置は、第2眼の像が二次元固体撮像素子により受像された場合に、第2眼の像が二次元固体撮像素子の左右方向の中心領域で受像されるように装置本体の左右方向の移動を停止させる。これにより、左右眼切替を迅速に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の眼科装置は、二次元固体撮像素子の左右の画素領域から抽出した輝度値のみに基づき左右眼の他方の像が二次元固体撮像素子により受像されたか否かを判断している。このため、特許文献1に記載の眼科装置では、目頭の像或いは鼻の影の像を第2眼の像として誤検出することで、装置本体の左右方向の移動を停止させてしまうおそれがある。その結果、左右眼切替に時間がかかってしまう。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、左右眼切替を正確かつ短時間で実行可能な眼科装置及び眼科装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的を達成するための眼科装置は、被検眼の眼特性を取得する装置本体と、被検眼に対して装置本体を相対移動させる相対移動部と、左右の被検眼の一方である第1眼の眼特性を装置本体が取得した場合に、相対移動部を制御して装置本体を少なくとも左右方向に移動させることで、装置本体を左右の被検眼の他方である第2眼の眼特性を取得可能な位置へ移動させる移動制御部と、装置本体に設けられ、被検眼の撮影に用いられる撮影部と、撮影部が撮影した撮影画像に対して上下方向を長手軸とする楕円を検出する楕円検出処理を行って、第2眼の瞳孔に対応する瞳孔像の有無を検出する瞳孔像検出部と、装置本体の左右方向の移動中に、撮影部による撮影動作と、瞳孔像検出部による検出と、を繰り返し実行させる繰り返し制御部と、瞳孔像検出部により瞳孔像が検出された場合に、相対移動部を制御して、装置本体の左右方向の移動を停止させる停止制御を行う停止制御部と、を備える。
【0008】
この眼科装置によれば、瞳孔像検出部による誤検出を低減することができる。
【0009】
本発明の他の態様に係る眼科装置において、移動制御部が、相対移動部により装置本体を左右方向に移動させる移動速度を、撮影部による撮影の露光時間内で装置本体の左右方向の位置変化が発生する速度に設定している。装置本体の左右方向の移動(左右眼切替)を短時間で行うことができる。
【0010】
本発明の他の態様に係る眼科装置において、相対移動部が、予め定められた基準位置を中心として装置本体を少なくとも左右方向に移動自在に保持し、装置本体が第1眼の眼特性を取得する場合には、撮影部の撮影光軸が基準位置よりも左右方向の一方側に位置し、移動制御部が、装置本体により第1眼の眼特性が取得された場合に、相対移動部を制御して、装置本体を左右方向の他方側へ移動させ、繰り返し制御部が、相対移動部により装置本体が左右方向の他方側に移動される場合に、撮影光軸が基準位置を通過してから少なくとも瞳孔像検出部による検出を繰り返し実行させる。これにより、瞳孔像検出部による不要な検出処理(演算処理)を省略することができる。
【0011】
本発明の他の態様に係る眼科装置において、相対移動部による装置本体の左右方向の移動が開始されてから予め定められた時間が経過又は予め定められた距離だけ装置本体が移動しても瞳孔像検出部が瞳孔像を検出しない場合に、停止制御部が停止制御を行う。これのより、瞳孔が小瞳孔などの原因によって瞳孔像検出部による瞳孔像の検出が困難である場合でも、測定ヘッドの左右移動を停止させることができる。
【0012】
本発明の他の態様に係る眼科装置において、停止制御部による停止制御が開始されてから装置本体が停止するまでの間に、装置本体が左右方向に慣性移動し、移動制御部が、相対移動部により装置本体を左右方向に移動させる移動速度を、停止制御に応じて装置本体の移動が停止した場合に瞳孔像が撮影画像内の左右方向の中心領域で停止する速度に設定している。これにより、第2眼に対向する位置で装置本体を停止させることができる。
【0013】
本発明の他の態様に係る眼科装置において、左右方向の中で相対移動部が装置本体を移動させている方向を進行方向側とし、撮影画像の左右方向の幅を左右幅とした場合に、移動制御部が移動速度を、撮影画像の進行方向側に対応する画像端から左右幅の1/4の領域内で瞳孔像検出部が瞳孔像を検出可能な速度に設定している。これにより、第2眼に対向する位置で装置本体を停止させることができる。
【0014】
本発明の他の態様に係る眼科装置において、撮影部が、相対移動部による装置本体の左右方向の移動前に第1眼の撮影を実行し、撮影部により撮影された第1眼の第1眼撮影画像に基づき、第1眼の瞳孔径を検出する瞳孔径検出部を備え、移動制御部が、瞳孔径検出部により検出された瞳孔径が予め定められた閾値未満である場合には、瞳孔径が閾値以上である場合よりも相対移動部により装置本体を左右方向に移動させる移動速度を低速に設定する。これにより、被検眼の瞳孔径に関係なく、左右眼切替を正確かつ短時間で実行することができる。
【0015】
本発明の他の態様に係る眼科装置において、撮影部が、相対移動部による装置本体の左右方向の移動前に第1眼の撮影を実行し、撮影部により撮影された第1眼の第1眼撮影画像に基づき、第1眼の瞳孔径を検出する瞳孔径検出部と、瞳孔径検出部により検出された瞳孔径が予め定められた閾値未満である場合には、瞳孔径が閾値以上である場合よりも撮影部のシャッタ速度及びゲインを上げる第1撮影制御部と、を備える。これにより、被検眼の瞳孔径に関係なく、左右眼切替を正確かつ短時間で実行することができる。
【0016】
本発明の他の態様に係る眼科装置において、装置本体に設けられ、装置本体の左右方向の移動中に撮影部の撮影範囲に照明光を照射する照明部と、撮影画像内において瞳孔像以外の白飛びを発生可能な範囲内で照明部から出射される照明光の光量を増加させる照明制御部と、を備える。これにより、瞳孔像検出部の誤検出を防止することができる。
【0017】
本発明の他の態様に係る眼科装置において、撮影画像内において瞳孔像以外の白飛びを発生可能な範囲内で撮影部のゲインを上げる第2撮影制御部を備える。これにより、瞳孔像検出部の誤検出を防止することができる。
【0018】
本発明の目的を達成するための眼科装置の制御方法は、被検眼の眼特性を取得する装置本体と、装置本体に設けられ、被検眼の撮影に用いられる撮影部と、を備える眼科装置の制御方法において、装置本体により左右の被検眼の一方である第1眼の眼特性を取得した場合に、装置本体を少なくとも左右方向に移動させることで、装置本体を左右の被検眼の他方である第2眼の眼特性を取得可能な位置へ移動させる移動ステップと、撮影部が撮影した撮影画像に対して上下方向を長手軸とする楕円を検出する楕円検出処理を行って、第2眼の瞳孔に対応する瞳孔像の有無を検出する瞳孔像検出ステップと、装置本体の左右方向の移動中に、撮影部による撮影動作と、瞳孔像検出ステップと、を繰り返し実行させる繰り返し制御ステップと、瞳孔像検出ステップで瞳孔像が検出された場合に、装置本体の左右方向の移動を停止させる停止ステップと、を有する。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、左右眼切替を正確かつ短時間で実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図2】第1実施形態の眼科装置の制御装置のブロック図である。
【
図3】撮影画像に含まれる第2眼の瞳孔像を説明するための説明図である。
【
図4】撮影画像に対して瞳孔像検出部が行う瞳孔像検出処理の具体例を説明するための説明図である。
【
図5】繰り返し制御部による繰り返し制御を説明するための説明図である。
【
図6】第1実施形態の眼科装置による被検者の左右の被検眼Eの眼特性の測定処理、特に左右眼切替処理の流れを示したフローチャートである。
【
図7】被検眼の瞳孔が小瞳孔である場合の課題を説明するための説明図である。
【
図8】第2実施形態の眼科装置の構成を示すブロック図である。
【
図9】第2実施形態の眼科装置による被検者の左右の被検眼の眼特性の測定処理、特に測定ヘッドの左右移動開始までの処理の流れを示したフローチャートである。
【
図10】第2実施形態の変形例の眼科装置による測定ヘッドの左右移動開始までの処理の流れを示したフローチャートである。
【
図11】第3実施形態の眼科装置における測定ヘッドの左右移動の移動速度の設定を説明するための説明図である。
【
図12】第4実施形態の眼科装置の構成を示すブロック図である。
【
図13】照明制御部の機能を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の眼科装置10の側面図である。
図1に示すように、被検者の左右の被検眼Eの眼圧値、眼屈折力、及び角膜曲率等を測定可能な複合機である。この眼科装置10は、ベース11と、顔支持部12と、駆動機構13と、本発明の装置本体に相当する測定ヘッド14と、モニタ15と、制御装置16と、を備える。
【0022】
なお、図中の互いに直交するXYZ方向(3軸方向)のうちで、Y方向は上下方向であり、Z方向は被検者(被検眼E)に近づく前方向と被検者から遠ざかる後方向とに平行な前後方向(作動距離方向ともいう)であり、X方向は上下方向及び前後方向の双方に垂直な左右方向である。
【0023】
ベース11上には、Z方向の前方側から後方側に向かって顔支持部12と駆動機構13とが設けられている。
【0024】
顔支持部12は、被検者の顎を受ける顎受け部12aと、被検者の額が当接する額当て部12bとを備え、被検者の顔を支持する。
【0025】
駆動機構13は、本発明の相対移動部に相当するものであり、例えばモータ等の不図示のアクチュエータにより構成されている。この駆動機構13は、ベース11に対して測定ヘッド14をXYZ方向に移動させる。これにより、被検眼Eに対して測定ヘッド14をXYZ方向に相対移動させることができる。そして、後述の制御装置16の制御の下、駆動機構13を駆動することで、被検眼Eに対する測定ヘッド14のXYZ方向のアライメント、及び眼特性の測定対象を左右の被検眼Eの一方から他方に切り替える「左右眼切替」を行うことができる。
【0026】
測定ヘッド14には、本発明の眼特性取得部として、非接触式眼圧計14A及びオートレフケラトメータ14Bが設けられている。
【0027】
非接触式眼圧計14Aは、被検眼Eの角膜に向けてノズルから空気(流体)を吹き付けることで角膜を変形させてその変形状態を検出することにより、非接触で被検眼Eの眼圧値を測定する。なお、非接触式眼圧計14Aの詳細構成については公知技術であるので、ここでは説明を省略する。
【0028】
オートレフケラトメータ14Bは、各種光学系及びセンサを用いて被検眼Eの眼屈折力及び角膜曲率等を測定する。なお、オートレフケラトメータ14Bの具体的な構成についても公知技術であるので、ここでは説明を省略する。
【0029】
また、非接触式眼圧計14A及びオートレフケラトメータ14Bには、それぞれ前眼部カメラ17(観察光学系ともいう、
図2参照)が含まれる。前眼部カメラ17は、本発明の撮影部に相当するものであり、被検眼Eの前眼部の撮影に用いられる。前眼部カメラ17は、公知の対物光学系と、CCD(Charge Coupled Device)型或いはCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)の2次元固体撮像素子(以下、単に撮像素子と略す)と、を備える。
【0030】
モニタ15は、測定ヘッド14の背面側に取り付けられている。このモニタ15は、例えばタッチパネル式モニタが用いられる。モニタ15は、後述の制御装置16の制御の下、前眼部カメラ17により撮影された被検眼Eの撮影画像D(観察像)と、被検眼Eの眼圧値、眼屈折力、及び角膜曲率等の眼特性の測定結果と、各種操作を行うための操作メニュー画面と、を含む各種画像を表示する。
【0031】
図2は、第1実施形態の眼科装置10の制御装置16のブロック図である。なお、
図2では、制御装置16の左右眼切替に係る機能について詳細に図示し、その他(アライメント検出、アライメント、眼特性測定)の機能については簡略的に図示している。また、
図2では、非接触式眼圧計14A及びオートレフケラトメータ14Bにそれぞれ設けられている前眼部カメラ17の代表例を図示している。
【0032】
図2に示すように、制御装置16は、眼科装置10の動作を統括制御する。制御装置16は、各種のプロセッサ(Processor)及びメモリ等から構成された演算回路を備える。各種のプロセッサには、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、及びプログラマブル論理デバイス[例えばSPLD(Simple Programmable Logic Devices)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、及びFPGA(Field Programmable Gate Arrays)]等が含まれる。なお、制御装置16の各種機能は、1つのプロセッサにより実現されてもよいし、同種または異種の複数のプロセッサで実現されてもよい。制御装置16には、既述の駆動機構13、測定ヘッド14(非接触式眼圧計14A、オートレフケラトメータ14B、前眼部カメラ17)、及びモニタ15等が接続されている。そして、制御装置16は、眼科装置10の動作、例えばアライメント、左右眼切替、眼圧値測定、眼屈折力測定、及び角膜曲率測定等を統括制御する。
【0033】
制御装置16は、不図示の制御プログラムを読み出して実行することにより、眼圧計制御部40及びオートレフケラトメータ制御部42として機能する。また、制御装置16は、左右眼切替時には、移動制御部44、撮影制御部46、瞳孔像検出部48、繰り返し制御部50、及び停止制御部52として機能する。
【0034】
眼圧計制御部40は、前眼部カメラ17による被検眼Eの撮影、被検眼Eに対する非接触式眼圧計14Aのアライメント、及び非接触式眼圧計14Aによる被検眼Eの眼圧測定等を制御する。なお、非接触式眼圧計14Aによる被検眼Eの眼圧測定については公知技術であるので、ここでは具体的な説明は省略する。
【0035】
オートレフケラトメータ制御部42は、前眼部カメラ17による被検眼Eの撮影、被検眼Eに対するオートレフケラトメータ14Bのアライメント、オートレフケラトメータ14Bによる被検眼Eの眼屈折力及び角膜曲率の測定等を制御する。なお、オートレフケラトメータ14Bによる被検眼Eの眼屈折力及び角膜曲率の測定については公知技術であるので、ここでは具体的な説明は省略する。
【0036】
移動制御部44は、左右の被検眼Eの一方である第1眼の眼特性(眼圧値又は眼屈折力等)の測定後、駆動機構13を駆動して、測定ヘッド14を第1眼の眼特性を取得した位置から左右の被検眼Eの他方である第2眼の眼特性を取得可能な位置へ移動させる。
【0037】
例えば非接触式眼圧計14Aによる眼圧値の測定を行う場合には、非接触式眼圧計14Aと被検眼E(第1眼、第2眼)との間のZ方向の作動距離が短い。この場合には移動制御部44は、駆動機構13を駆動して、測定ヘッド14をZ方向後方側に移動させる回避動作と、測定ヘッド14をX方向(左右方向)に移動させる左右移動と、測定ヘッド14をZ方向前方側に移動させる回避戻し動作と、を行う。ここで回避動作及び回避戻し動作、すなわち測定ヘッド14のZ方向の移動は、被検者の顔への測定ヘッド14の衝突を回避するために低速で行われる。一方、測定ヘッド14の左右移動は、被検者の顔への測定ヘッド14の衝突のリスクが低いので高速で行われる。
【0038】
オートレフケラトメータ14Bによる眼屈折力及び角膜曲率の測定を行う場合には、オートレフケラトメータ14Bと被検眼E(第1眼、第2眼)との間に十分なZ方向の作動距離が確保されている。この場合には移動制御部44は、駆動機構13を駆動して、測定ヘッド14の左右移動のみを高速で行う。
【0039】
測定ヘッド14を左右移動させる場合の移動速度は、前眼部カメラ17の撮像素子の露光時間(例えば約30msec)内において測定ヘッド14のX方向(左右方向)の位置変化が発生するような高速に設定されている。
【0040】
撮影制御部46は、測定ヘッド14の左右移動中に作動する。この撮影制御部46は、後述の繰り返し制御部50の制御の下、前眼部カメラ17による撮影動作を繰り返し実行させる。なお、撮影動作とは前眼部カメラ17によるその撮影範囲の撮影及び撮影画像Dの出力を行うことである。これにより、測定ヘッド14の左右移動に応じて前眼部カメラ17の撮影範囲を被検者の顔表面上で第1眼から第2眼に向かって走査させながら、前眼部カメラ17による撮影及び撮影画像Dの出力が実行される。そして、前眼部カメラ17の撮影範囲内に第2眼が含まれると、前眼部カメラ17による第2眼の撮影及び第2眼の撮影画像Dの出力が実行される。
【0041】
瞳孔像検出部48は、測定ヘッド14の左右移動中に作動する。瞳孔像検出部48は、後述の繰り返し制御部50の制御の下、前眼部カメラ17による撮影動作が実行されるごとに、前眼部カメラ17により撮影された撮影画像Dに対して瞳孔像検出処理を繰り返し行う。瞳孔像検出処理とは、撮影画像D内に第2眼の瞳孔Ep(
図3参照)に対応する瞳孔像56(
図3参照)が含まれているか否か、すなわち撮影画像D内の瞳孔像56の有無を検出(判定)する処理である。
【0042】
図3は、撮影画像Dに含まれる第2眼の瞳孔像56(以下、単に瞳孔像56という)を説明するための説明図である。既述の通り、測定ヘッド14の左右移動の移動速度は高速に設定されているので、
図3に示すように前眼部カメラ17の撮像素子の露光時間内で測定ヘッド14のX方向(左右方向)の位置変化が発生する。このため、略円形状の瞳孔Epの左右部分は、瞳孔Epの他の部分よりも撮像素子の受光面に写る時間が短くなる。その結果、撮影画像D内の瞳孔像56はY方向(上下方向)を長手軸とする楕円形状(以下、縦長楕円形状という)になる。
【0043】
図4は、撮影画像Dに対して瞳孔像検出部48が行う瞳孔像検出処理の具体例を説明するための説明図である。
図4の符号4A,4Bに示すように、瞳孔像56は縦長楕円形状になるので、瞳孔像検出部48は、撮影画像Dに対してエッジ検出処理及び楕円近似処理を施したり、或いは楕円検出Hough変換処理を施したりなどの公知の楕円検出処理を行って、撮影画像D内の全領域(受光面の全領域)からの楕円形状の検出を行う。
【0044】
次いで、瞳孔像検出部48は、撮影画像Dから楕円形状が検出された場合には、この楕円形状と、測定ヘッド14の移動速度、撮像素子の露光時間、及び一般的な瞳孔Epの瞳孔径などから定められる縦長楕円形状と、の適合率を公知の方法で算出する。そして、瞳孔像検出部48は、算出した適合率が所定の閾値以上であれば撮影画像Dから瞳孔像56が検出されたと判断する。また逆に、瞳孔像検出部48は、楕円検出処理に失敗した場合(楕円形状が検出できなかった場合)、或いは算出した適合率が閾値未満であった場合には、撮影画像Dから瞳孔像56が検出されなかったと判断する。以上で1つの撮影画像Dに対する瞳孔像検出処理が完了する。
【0045】
図5は、繰り返し制御部50による繰り返し制御を説明するための説明図である。
図5中の符号ERは左右の被検眼Eのうちの第1眼に相当する右眼であり、符号ELは被検眼Eの第2眼に相当する左眼である。なお、第1眼を左眼ELとすると共に第2眼を右眼ERとしてもよい。
【0046】
図5及び既述の
図2に示すように、繰り返し制御部50は、駆動機構13による測定ヘッド14の左右移動中に、撮影制御部46による前眼部カメラ17の撮影動作の実行と、瞳孔像検出部48による瞳孔像検出処理とを繰り返し実行させる繰り返し制御を行う。ここで前眼部カメラ17の撮影動作と、瞳孔像検出部48による瞳孔像検出処理と、の双方を測定ヘッド14の左右移動中に常時繰り返し実行してもよいが、本実施形態では、少なくとも瞳孔像検出部48による瞳孔像検出処理については測定ヘッド14の左右移動中の特定のタイミングで開始する。
【0047】
具体的には
図5の符号5Aに示すように、駆動機構13は、ベース11に対して測定ヘッド14を予め定められた基準位置SPを中心としてX方向(左右方向)に移動自在に保持している。そして、測定ヘッド14による第1眼(右眼ER)の眼特性の測定時には、前眼部カメラ17の撮影光軸OA(測定ヘッド14の測定光軸)が基準位置SPよりもX方向(左右方向)の一方側(ここでは左方側)に位置している。この撮影光軸OAが基準位置SPよりもX方向の一方側に位置している間は、前眼部カメラ17の撮影範囲内に第2眼(左眼EL)が存在しないため、瞳孔像検出部48は常に撮影画像Dから瞳孔像56を検出することができない。このため、撮影光軸OAが基準位置SPよりもX方向の一方側に位置している間は瞳孔像検出部48による瞳孔像検出処理を行う必要性が低い。
【0048】
そこで、繰り返し制御部50は、
図5の符号5Bに示すように、測定ヘッド14がX方向の他方側(ここでは右方側)に左右移動される場合に、不図示の位置検出部による測定ヘッド14のX方向の位置検出結果に基づき、撮影光軸OAが基準位置SPを通過してから瞳孔像検出部48による瞳孔像検出処理の繰り返し制御を開始する。なお、前眼部カメラ17の撮影動作についても瞳孔像検出処理と同じタイミングで繰り返し制御を開始してもよい。
【0049】
停止制御部52は、測定ヘッド14の左右移動中に作動する。停止制御部52は、繰り返し制御により瞳孔像検出部48が瞳孔像検出処理を実行するごとに、その結果を監視する。そして、停止制御部52は、瞳孔像検出部48により撮影画像Dから瞳孔像56が検出された場合には、移動制御部44に対して測定ヘッド14の左右移動を停止させる停止トリガ信号を出力する停止制御を実行する。これにより、移動制御部44が、駆動機構13を制御して測定ヘッド14の左右移動を停止させる。
【0050】
また、停止制御部52は、測定ヘッド14の左右移動が開始されてからの経過時間をカウントする。そして、停止制御部52は、経過時間が規定時間を過ぎても瞳孔像検出部48により撮影画像Dから瞳孔像56が検出されない場合には停止制御を実行する。この規定時間は、例えば、被検者の一般的な眼幅と、測定ヘッド14の左右移動の移動速度と、に基づき定められる。
【0051】
なお、停止制御部52が、測定ヘッド14の左右移動が開始されてからの測定ヘッド14の移動距離を検出し、この移動距離が規定距離に到達しても瞳孔像検出部48により撮影画像Dから瞳孔像56が検出されない場合に停止制御を実行してもよい。この規定距離は、例えば、被検者の一般的な眼幅に基づき定められる。
【0052】
[第1実施形態の眼科装置の作用]
図6は、本発明の眼科装置の制御方法に係る、第1実施形態の眼科装置10による被検者の左右の被検眼Eの眼特性の測定処理、特に左右眼切替処理の流れを示したフローチャートである。ここでは、左右の被検眼Eのうちの右眼ERの眼特性の取得を最初に行ってから左眼ELの眼特性の取得を行うと共に、被検眼Eの眼特性として眼圧値を測定する場合を例に挙げて説明を行う。
【0053】
図6に示すように、最初に眼圧計制御部40の制御の下、非接触式眼圧計14Aの前眼部カメラ17による右眼ERの撮影、右眼ERに対する非接触式眼圧計14Aのアライメント(ステップS1)、及び非接触式眼圧計14Aによる右眼ERの眼圧測定(ステップS2)が公知の方法で実行される。右眼ERの眼圧測定が完了すると、検者が不図示の操作部に対して左右眼切替操作を行う。
【0054】
左右眼切替操作が実行されると、移動制御部44が、駆動機構13を駆動して、測定ヘッド14をZ方向後方側に移動させる回避動作を行った後(ステップS3)、この測定ヘッド14の左右移動を開始する(ステップS4、本発明の移動ステップに相当)。
【0055】
繰り返し制御部50は、測定ヘッド14の左右移動が開始されてからも前眼部カメラ17の撮影動作を継続、すなわち左右移動中の撮影動作の繰り返し制御を実行する(ステップS5)。また、停止制御部52が、測定ヘッド14の左右移動が開始されてからの経過時間のカウント、又は測定ヘッド14の移動距離の検出を開始する。
【0056】
次いで、繰り返し制御部50は、不図示の位置検出部による測定ヘッド14のX方向の位置検出結果に基づき、測定ヘッド14の前眼部カメラ17の撮影光軸OAが基準位置SPを通過すると(ステップS6)、瞳孔像検出部48による瞳孔像検出処理の繰り返し制御を開始する(ステップS7、本発明の瞳孔像検出ステップに相当)。これにより、瞳孔像検出部48による不要な演算処理を省略することができる。
【0057】
このように撮影光軸OAが基準位置SPを通過すると、繰り返し制御部50による繰り返し制御によって、前眼部カメラ17の撮影動作と、瞳孔像検出部48による瞳孔像検出処理と、が継続に繰り返し実行される(本発明の繰り返し制御ステップに相当)。この際に瞳孔像検出部48は、測定ヘッド14の高速の左右移動によって撮影画像D内の瞳孔像56が縦長楕円形状になることに対応して、楕円検出処理を用いて撮影画像D内の瞳孔像56の有無を検出している。これにより、瞳孔像検出部48が目頭の像或いは鼻の影の像を瞳孔像56として誤検出することが防止される。その結果、撮影画像D内の瞳孔像56の有無を正確に検出することができる。
【0058】
また、撮影光軸OAが基準位置SPを通過すると、停止制御部52が、瞳孔像検出部48による新たな瞳孔像検出処理が実行されるごとに、その瞳孔像検出処理の結果を監視する。そして、停止制御部52は、瞳孔像検出部48により撮影画像Dから瞳孔像56が検出されなかった場合には(ステップS8でNO)、測定ヘッド14の左右移動の経過時間が規定時間を経過したか否か、或いは測定ヘッド14の移動距離が規定距離に到達したか否かを判定する。以下、瞳孔像検出部48により撮影画像Dから瞳孔像56が検出されず、且つ経過時間が規定時間に到達せず或いは移動距離が規定距離に到達していない場合には、測定ヘッド14の左右移動と、繰り返し制御部50による繰り返し制御と、が継続する(ステップS8及びステップS9の双方でNO)。
【0059】
停止制御部52は、瞳孔像検出部48により撮影画像Dから瞳孔像56が検出された場合には(ステップS8でYES)、移動制御部44に対して停止トリガ信号を出力する停止制御を実行する(ステップS10、本発明の停止ステップに相当)。これにより、移動制御部44が、駆動機構13を制御して測定ヘッド14の左右移動を停止させる。また、停止制御部52は、瞳孔像検出部48により撮影画像Dから瞳孔像56が検出されない場合でも、経過時間が規定時間に到達したり或いは測定ヘッド14の移動距離が規定距離に到達したりした場合には、停止制御を実行する(ステップS8でNO、ステップS9でYES、ステップS10)。これにより、瞳孔Epが小瞳孔などの原因によって瞳孔像検出部48による瞳孔像56の検出が困難である場合でも、測定ヘッド14の左右移動を停止させることができる。
【0060】
測定ヘッド14の左右移動の停止後、移動制御部44が、駆動機構13を駆動して、測定ヘッド14をZ方向前方側に移動させる回避戻し動作を行う(ステップS11)。これにより、左右眼切替での測定ヘッド14の移動が全て完了し、測定ヘッド14が左眼ELの眼圧測定を可能な位置で確実に停止される(ステップS12)。
【0061】
そして、左右眼切替が完了すると、眼圧計制御部40の制御の下、非接触式眼圧計14Aの前眼部カメラ17による左眼ELの撮影、左眼ELに対する非接触式眼圧計14Aのアライメント(ステップS13)、及び非接触式眼圧計14Aによる左眼ELの眼圧測定(ステップS14)が公知の方法で実行される。
【0062】
なお、被検眼Eの眼特性として眼圧値の代わりに、オートレフケラトメータ14Bによる眼屈折力及び角膜曲率の測定を行う場合には、ステップS3(回避操作)及びステップS11(回避戻し動作)を省略可能である。
【0063】
以上のように第1実施形態では、測定ヘッド14の左右移動中に、楕円検出処理を用いて撮影画像Dの全体(全領域)で瞳孔像56の有無を検出する瞳孔像検出処理を繰り返し実行することにより、目頭の像或いは鼻の影の像を瞳孔像56として誤検出することが防止される。これにより、測定ヘッド14の左右移動が誤った位置で停止されることが防止されるので、左右眼切替に余計な時間を費やすことが防止される。その結果、左右眼切替を正確かつ短時間で実行することができる。
【0064】
[第2実施形態]
図7は、被検眼Eの瞳孔Epが小瞳孔である場合の課題を説明するための説明図である。なお、図中の符号7Aは、被検眼Eの瞳孔Epが通常の大きさである場合に、測定ヘッド14の左右移動中に前眼部カメラ17により撮影された瞳孔像56を示す。また、
図7の符号7Bは、被検眼Eの瞳孔Epが小瞳孔である場合に、測定ヘッド14の左右移動中に前眼部カメラ17により撮影された瞳孔像56を示す。
【0065】
図7の符号7A,7Bに示すように、被検眼Eの瞳孔Epが小瞳孔である場合には、瞳孔像56の面積が小さくなるので、この瞳孔像56が撮影画像Dに含まれていたとしても瞳孔像検出部48が瞳孔像56の検出に失敗してしまうおそれがある。
【0066】
そこで、第2実施形態の眼科装置10では、測定ヘッド14の左右移動の開始前に被検眼Eの瞳孔Epの瞳孔径を検出し、この瞳孔径が予め定められた瞳孔径閾値未満である場合には、測定ヘッド14の左右移動の移動速度を通常よりも減速させる。
【0067】
図8は、第2実施形態の眼科装置10の構成を示すブロック図である。
図8に示すように、第2実施形態の眼科装置10は、移動制御部44及び撮影制御部46の機能が一部異なり、制御装置16がさらに瞳孔径検出部54として機能する点を除けば上記第1実施形態の眼科装置10と基本的に同じ構成である。このため、上記第1実施形態と機能又は構成上同一のものについては同一符号を付してその説明は省略する。
【0068】
図9は、第2実施形態の眼科装置10による被検者の左右の被検眼Eの眼特性の測定処理、特に測定ヘッド14の左右移動開始までの処理の流れを示したフローチャートである。なお、ステップS1からステップS3までの処理は、既述の
図6に示した第1実施形態と基本的に同じであるので、ここでは具体的な説明を省略する。
【0069】
図9に示すように、第2実施形態の撮影制御部46は、ステップS3の回避動作後(眼圧測定を行う場合)であって且つステップS4の左右移動前、すなわちZ方向の作動距離が測定ヘッド14の左右移動時と同条件になっている状態で、前眼部カメラ17による右眼ER(第1眼)の撮影を実行させる(ステップS3A)。これにより、右眼ERの撮影画像D(第1眼撮影画像に相当)が得られる。この場合には、測定ヘッド14の回避動作が行われることで前眼部カメラ17のピントがずれるが、撮影画像D内の右眼ERの瞳孔像56の円形は保たれる。なお、オートレフケラトメータ14Bによる眼屈折力等の測定時には、ステップS2における眼屈折力等の測定完了後に、前眼部カメラ17による第1眼の撮影が実行される。
【0070】
瞳孔径検出部54は、ステップS3Aで前眼部カメラ17が撮影した撮影画像Dに基づき、右眼ERの瞳孔径を検出する(ステップS3B)。なお、前眼部の撮影画像Dに基づき瞳孔径を検出する方法は公知技術であるので、ここでは具体的な説明は省略する。左右の被検眼E(右眼ER、左眼EL)の瞳孔径は略同一であるので、瞳孔径検出部54の検出結果に基づき左眼ELの瞳孔径も推定可能である。これにより、瞳孔径検出部54の検出結果に基づき、被検眼Eの瞳孔Epが小瞳孔か否かを判定可能である。
【0071】
第2実施形態の移動制御部44は、瞳孔径検出部54の検出結果に基づき、測定ヘッド14の左右移動の移動速度を決定する。具体的には移動制御部44は、瞳孔径検出部54が検出した瞳孔径が予め定めた瞳孔径閾値(例えば3mm)以上である場合には(ステップS3CでYES)、瞳孔Epが小瞳孔ではないと判定して、上記第1実施形態と同様に測定ヘッド14の左右移動の移動速度を「高速」に設定する(ステップS3D)。
【0072】
一方、移動制御部44は、瞳孔径検出部54が検出した瞳孔径が瞳孔径閾値未満である場合には(ステップS3CでNO)、瞳孔Epが小瞳孔であると判定して、測定ヘッド14の左右移動の移動速度を上記第1実施形態よりも「低速」に設定する(ステップS3E)。ここで「低速」とは、小瞳孔径の瞳孔Epの瞳孔像56を撮影画像D内で認識可能な速度である。これにより、瞳孔Epが小瞳孔径である場合には、測定ヘッド14の左右移動の移動速度を低下させることで図中に示した瞳孔Epの重複部分が増加するため、瞳孔像56の面積を確保することができる。
【0073】
次いで、移動制御部44は、駆動機構13を駆動して、先に決定した移動速度で測定ヘッド14の左右移動を開始する(ステップS4)。なお、ステップS4以降の処理は、
図6に示した第1実施形態と基本的に同じであるので具体的な説明は省略する。
【0074】
以上のように第2実施形態では、測定ヘッド14の左右移動の開始前に被検眼Eの瞳孔径を検出し、この瞳孔径が瞳孔径閾値未満である場合には、測定ヘッド14の左右移動の移動速度を低下させることで、瞳孔Epが小瞳孔であったとしても瞳孔像検出部48が撮影画像Dから瞳孔像56を確実に検出可能である。その結果、被検眼Eの瞳孔径に関係なく、左右眼切替を正確かつ短時間で実行することができる。
【0075】
図10は、第2実施形態の変形例の眼科装置10による測定ヘッド14の左右移動開始までの処理の流れを示したフローチャートである。なお、ステップS3Cまでの処理、及びステップS4以降の処理は上記第2実施形態と同じであるので具体的な説明は省略する。
【0076】
上記第2実施形態では、瞳孔径検出部54が検出した瞳孔径が瞳孔径閾値以上であるか否かに基づき、移動制御部44が測定ヘッド14の左右移動の移動速度を「高速」又は「低速」に設定している。これに対して第2実施形態の変形例では、瞳孔径検出部54が検出した瞳孔径に基づき、撮影制御部46が前眼部カメラ17のシャッタ速度及びゲインを制御する。この場合には、撮影制御部46が本発明の第1撮影制御部として機能する。
【0077】
図10に示すように、撮影制御部46は、ステップS3Cで瞳孔径検出部54が検出した瞳孔径が瞳孔径閾値以上である場合には、瞳孔Epが小瞳孔ではないと判定して、前眼部カメラ17のシャッタ速度及びゲインを第1実施形態と同様の値である「通常」に設定する(ステップS3F)。
【0078】
一方、撮影制御部46は、瞳孔径検出部54が検出した瞳孔径が瞳孔径閾値未満である場合には(ステップS3CでNO)、瞳孔Epが小瞳孔径であると判定して、前眼部カメラ17のシャッタ速度を第1実施形態よりも「高速」に設定すると共にゲインを第1実施形態よりも「上昇」させる(ステップS3G)。これにより、測定ヘッド14の左右移動の移動速度を「低速」に設定した場合と同様の効果が得られるので、瞳孔Epが小瞳孔であっても瞳孔像56の面積が確保される。その結果、第2実施形態と同様の効果が得られる。
【0079】
なお、第2実施形態で説明した測定ヘッド14の左右移動の移動速度の制御と、第2実施形態の変形例で説明した前眼部カメラ17のシャッタ速度及びゲインの制御と、を組み合わせてもよい。
【0080】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態の眼科装置10について説明を行う。測定ヘッド14は高速で左右移動するため、停止制御部52が停止制御を行ってから測定ヘッド14が実際に停止するまでの間に測定ヘッド14はX方向(左右方向)の進行方向側に慣性移動する。そこで、第4実施形態の眼科装置10では、停止制御部52の停止制御に応じて測定ヘッド14の左右移動が停止した場合に、測定ヘッド14(前眼部カメラ17)が第2眼に対向する位置、すなわち第2眼の瞳孔像56が撮影画像DのX方向の中心領域で停止するように、測定ヘッド14の左右移動の移動速度を設定している。
【0081】
なお、第3実施形態の眼科装置10は、上記各実施形態の眼科装置10と基本的に同じ構成であるので、上記各実施形態と機能又は構成上同一のものについては同一符号を付してその説明は省略する。
【0082】
図11は、第3実施形態の眼科装置10における測定ヘッド14の左右移動の移動速度の設定を説明するための説明図である。なお、図中の符号W1は、撮影画像DのX方向の幅である左右幅を示す。また、図中の符号XCは、撮影画像DのX方向の中央位置を示す。さらに図中の符号58は、測定ヘッド14の左右移動の進行方向側に対応する撮影画像Dの画像端、すなわち撮影画像D内で瞳孔像56が出現する側の画像端を示す。
【0083】
図11の符号XIAに示すように、第3実施形態では画像端58から左右幅W1の1/4の幅W2に対応する領域内で瞳孔径検出部54が瞳孔像56を検出できるように、測定ヘッド14の左右移動の移動速度を設定している。この移動速度については、実験又はシミュレーションにより定めることができる。これにより、第4実施形態では、幅W2の領域内で瞳孔像検出部48が瞳孔像56を検出し、この検出結果に基づき停止制御部52が速やかに停止制御を開始することができる。
【0084】
その結果、
図11の符号XIBに示すように、停止制御部52の停止制御に応じて測定ヘッド14が実際に停止するまでの間に測定ヘッド14が慣性移動したとしても、第2眼の瞳孔像56が撮影画像DのX方向の中心領域で停止するように、測定ヘッド14の左右移動を停止させることができる。これにより、測定ヘッド14が第2眼に対向する位置で速やかにアライメント及び眼特性の測定を開始することができる。
【0085】
[第4実施形態]
図12は、第4実施形態の眼科装置10の構成を示すブロック図である。上記各実施形態では、瞳孔像検出部48により撮影画像D内の瞳孔像56の有無を検出しているが、撮影画像D内に瞳孔像56以外の被写体像57(
図13参照)が含まれていると、瞳孔像検出部48が被写体像57を瞳孔像56として誤検出するおそれがある。そこで、第4実施形態の眼科装置10は、瞳孔像検出部48の誤検出を防止する機能を有する。
【0086】
図12に示すように、第4実施形態の眼科装置10は、非接触式眼圧計14A及びオートレフケラトメータ14Bにそれぞれ照明部19が設けられ(図中では代表例を図示)、且つ制御装置16がさらに照明制御部62として機能する点を除けば、上記各実施形態の眼科装置10と基本的に同じ構成である。このため、上記各実施形態と機能又は構成上同一のものについては同一符号を付してその説明は省略する。
【0087】
照明部19は、例えば、非接触式眼圧計14A及びオートレフケラトメータ14Bにそれぞれ設けられている公知の照明光学系であり、前眼部カメラ17の撮影範囲に照明光を照射する。照明制御部62は、照明部19から前眼部カメラ17の撮影範囲に照射される照明光の光量を制御する。
【0088】
図13は、照明制御部62の機能を説明するための説明図である。なお、
図13中の被写体像57は例示であり、その形状及び大きさは特に限定されるものではない。
【0089】
図13の符号XIIIAに示すように、照明制御部62は、測定ヘッド14の左右移動中に常時、或いは上記第1実施形態で説明したように撮影光軸OAが基準位置SPを通過してから、照明部19から前眼部カメラ17の撮影範囲に照射される照明光の光量を増加させる。具体的には照明制御部62は、撮影画像D内において瞳孔像56の白飛びを発生させることなく瞳孔像56以外の各種の被写体像57の白飛びを発生可能な範囲内で照明部19から出射される照明光の光量を増加させる。なお、照明光の光量の増加量については予め実験或いはシミュレーションを行うことで決定される。
【0090】
照明部19から前眼部カメラ17の撮影範囲に照射される照明光の光量を増加させることで、
図13の符号XIIIBに示すように、撮影画像D内の被写体像57を白飛びさせることができる。これにより、瞳孔像検出部48が、撮影画像D内の瞳孔像56を検出し易くなり、さらに撮影画像D内の被写体像57を瞳孔像56として誤検出することが防止される。その結果、瞳孔像検出部48の誤検出を防止することができる。
【0091】
なお、上記第4実施形態では、測定ヘッド14の左右移動中に照明光の光量を増加させているが、その代わりに、撮影制御部46(本発明の第2撮影制御部に相当)が、撮影画像D内において瞳孔像56以外の各種の被写体像57の白飛びを発生可能な範囲内で前眼部カメラ17のゲインを上げてもよい。この場合にも照明光の光量を増加させた場合と同様の効果が得られる。さらに、照明制御部62による照明光の光量増加と、撮影制御部46による前眼部カメラ17のゲイン増加と、を組み合わせてもよい。
【0092】
また、上記第4実施形態では、撮影画像D内に各種の被写体像57が含まれているか否かに関係なく、照明光の光量増加(前眼部カメラ17のゲイン増加でも可)を実行しているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、測定ヘッド14の左右移動の開始前、或いは測定ヘッド14の左右移動中において、前眼部カメラ17が撮影した撮影画像D内の被写体像57の有無を判定する判定部を設け、この判定部により被写体像57が有りと判定された場合に照明光の光量増加を実行してもよい。
【0093】
[その他]
上記各実施形態では、非接触式眼圧計14A及びオートレフケラトメータ14Bにそれぞれ設けられた前眼部カメラ17により被検眼Eの前眼部を撮影しているが、測定ヘッド14に設けられ且つ被検眼Eの前眼部を撮影可能な撮影部であればその種類及び数は特に限定はされない。
【0094】
上記各実施形態では、眼科装置10として非接触式眼圧計14A及びオートレフケラトメータ14Bを備える複合機を例に挙げて説明したが、左右の被検眼Eの各種の眼特性(眼圧、角膜内皮細胞数、眼底観察像、断層像等)の取得を行う眼科装置における左右眼切替に本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0095】
10…眼科装置
11…ベース
12…顔支持部
12a…顎受け部
12b…額当て部
13…駆動機構
14…測定ヘッド
14A…非接触式眼圧計
14B…オートレフケラトメータ
15…モニタ
16…制御装置
17…前眼部カメラ
19…照明部
40…眼圧計制御部
42…オートレフケラトメータ制御部
44…移動制御部
46…撮影制御部
48…瞳孔像検出部
50…繰り返し制御部
52…停止制御部
54…瞳孔径検出部
56…瞳孔像
57…被写体像
58…画像端
62…照明制御部
D…撮影画像
E…被検眼
EL…左眼
ER…右眼
Ep…瞳孔
OA…撮影光軸
S1…ステップ
SP…基準位置
W1…左右幅