(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023133917
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】表装枠体、及び、表装枠体の使用方法
(51)【国際特許分類】
E04F 13/08 20060101AFI20230920BHJP
E04F 15/16 20060101ALI20230920BHJP
E04G 21/18 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
E04F13/08 101C
E04F15/16 F
E04G21/18 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022039174
(22)【出願日】2022-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000148151
【氏名又は名称】株式会社川島織物セルコン
(74)【代理人】
【識別番号】100150153
【弁理士】
【氏名又は名称】堀家 和博
(74)【代理人】
【識別番号】100081891
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】平井 義久
(72)【発明者】
【氏名】茂永 健太
【テーマコード(参考)】
2E110
2E174
2E220
【Fターム(参考)】
2E110AA02
2E110AA43
2E110AA65
2E110AB03
2E110AB04
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2E174BA01
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2E220GB28X
2E220GB32X
2E220GB33X
2E220GB35X
2E220GB42X
(57)【要約】
【課題】挟持された表装シート材の長手方向スライドの抵抗荷重を60N/100mm以下とし、略直交方向スライドの抵抗荷重を43N/100mm以上とする等で、「位置調整の容易化」と「挟持力向上」を実現する。
【解決手段】下地面Sを覆う表装シート材Hの端部を挟持する表装枠体1やその使用方法は、挟持された厚さ1.20mmの表装シート材Hを枠体の長手方向Lにスライドさせる際の抵抗荷重を60N/100mm以下とし、挟持された厚さ0.15mmの表装シート材Hを枠体の長手方向Lに略直交する方向Rにスライドさせる際の抵抗荷重を43N/100mm以上とする。又、表装枠体1の使用方法は、表装側の舌片4aと縁板5との間で表装シート材Hの端部を挟持する仮固定工程P1と、表装側の舌片4a及び裏側の舌片4bと縁板5との間で表装シート材Hの端部を挟持する本固定工程P2等を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地面を覆う表装シート材の端部を挟持する表装枠体であって、
当該表装枠体は、長手方向を有した枠材であり、
厚さ1.20mmの前記表装シート材の端部を挟持した状態で、前記表装シート材を前記長手方向に沿ってスライドさせる際の抵抗荷重が60N/100mm以下であり、
厚さ0.15mmの前記表装シート材の端部を挟持した状態で、前記表装シート材を前記長手方向に略直交する方向に沿ってスライドさせる際の抵抗荷重が43N/100mm以上であることを特徴とする表装枠体。
【請求項2】
前記下地面に当接して固定する基板と、前記基板から立ち上がった支持板と、前記支持板の側面から突出した複数の舌片と、前記基板から立ち上がり且つ前記舌片の先端部との間で前記表装シート材の端部を挟持可能な縁板を有していることを特徴とする請求項1に記載の表装枠体。
【請求項3】
前記下地面に当接して固定する基板と、前記基板から立ち上がった一方支持板と、前記一方支持板の側面から突出した複数の一方舌片と、前記基板から立ち上がった他方支持板と、前記他方支持板の側面から突き出し且つ前記一方舌片の先端部との間で前記表装シート材の端部を挟持可能な複数の他方舌片を有していることを特徴とする請求項1に記載の表装枠体。
【請求項4】
請求項2に記載の前記舌片におけるJIS-Z-2246:2000のD形試験機で測定されたショア硬さは、50HS以上80HS以下であり、且つ、請求項2に記載の前記支持板におけるJIS-Z-2246:2000に規定されたショア硬さは、80HSより大きく150HS以下である、又は、
請求項3に記載の前記一方舌片及び前記他方舌片におけるJIS-Z-2246:2000のD形試験機で測定されたショア硬さは、50HS以上80HS以下であり、且つ、請求項3に記載の前記一方支持板及び前記他方支持板におけるJIS-Z-2246:2000のD形試験機で測定されたショア硬さは、80HSより大きく150HS以下であることを特徴とする請求項2又は3に記載の表装枠体。
【請求項5】
下地面を覆う表装シート材の端部を挟持する表装枠体の使用方法であって、
前記表装枠体は、長手方向を有した枠材であり、
厚さ1.20mmの前記表装シート材の端部を挟持した状態で、前記表装シート材を前記長手方向に沿ってスライドさせる際の抵抗荷重を60N/100mm以下とし、
厚さ0.15mmの前記表装シート材の端部を挟持した状態で、前記表装シート材を前記長手方向に略直交する方向に沿ってスライドさせる際の抵抗荷重を43N/100mm以上としていることを特徴とする表装枠体の使用方法。
【請求項6】
前記表装枠体は、前記下地面に当接して固定する基板と、前記基板から立ち上がった支持板と、前記支持板の側面から突出した複数の舌片と、前記基板から立ち上がり且つ前記舌片の先端部との間で前記表装シート材の端部を挟持可能な縁板を有していて、
前記複数の舌片は、表装側の舌片と裏側の舌片を含み、
前記表装側の舌片と、前記縁板との間で前記表装シート材の端部を挟持する仮固定工程と、
前記仮固定工程の後に、前記表装側の舌片及び前記裏側の舌片と、前記縁板との間で前記表装シート材の端部を挟持する本固定工程を備えていることを特徴とする請求項5に記載の表装枠体の使用方法。
【請求項7】
前記表装枠体は、前記下地面に当接して固定する基板と、前記基板から立ち上がった一方支持板と、前記一方支持板の側面から突出した複数の一方舌片と、前記基板から立ち上がった他方支持板と、前記他方支持板の側面から突き出し且つ前記一方舌片の先端部との間で前記表装シート材の端部を挟持可能な複数の他方舌片を有していて、
前記複数の一方舌片は、表装側の一方舌片と裏側の一方舌片を含み、前記複数の他方舌片は、表装側の他方舌片と裏側の他方舌片を含み、
前記表装側の一方舌片と、前記表装側の他方舌片との間で前記表装シート材の端部を挟持する仮固定工程と、
前記仮固定工程の後に、前記表装側の一方舌片及び前記裏側の一方舌片と、前記表装側の他方舌片及び前記裏側の他方舌片との間で前記表装シート材の端部を挟持する本固定工程を備えていることを特徴とする請求項5に記載の表装枠体の使用方法。
【請求項8】
下地面を覆う表装シート材の端部を挟持する表装枠体の使用方法であって、
前記表装枠体は、前記下地面に当接して固定する基板と、前記基板から立ち上がった支持板と、前記支持板の側面から突出した複数の舌片と、前記基板から立ち上がり且つ前記舌片の先端部との間で前記表装シート材の端部を挟持可能な縁板を有していて、
前記複数の舌片は、表装側の舌片と裏側の舌片を含み、
前記表装側の舌片と、前記縁板との間で前記表装シート材の端部を挟持する仮固定工程と、
前記仮固定工程の後に、前記表装側の舌片及び前記裏側の舌片と、前記縁板との間で前記表装シート材の端部を挟持する本固定工程を備えていることを特徴とする表装枠体の使用方法。
【請求項9】
下地面を覆う表装シート材の端部を挟持する表装枠体の使用方法であって、
前記表装枠体は、前記下地面に当接して固定する基板と、前記基板から立ち上がった一方支持板と、前記一方支持板の側面から突出した複数の一方舌片と、前記基板から立ち上がった他方支持板と、前記他方支持板の側面から突き出し且つ前記一方舌片の先端部との間で前記表装シート材の端部を挟持可能な複数の他方舌片を有していて、
前記複数の一方舌片は、表装側の一方舌片と裏側の一方舌片を含み、前記複数の他方舌片は、表装側の他方舌片と裏側の他方舌片を含み、
前記表装側の一方舌片と、前記表装側の他方舌片との間で前記表装シート材の端部を挟持する仮固定工程と、
前記仮固定工程の後に、前記表装側の一方舌片及び前記裏側の一方舌片と、前記表装側の他方舌片及び前記裏側の他方舌片との間で前記表装シート材の端部を挟持する本固定工程を備えていることを特徴とする表装枠体の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下地面を覆う表装シート材の端部を挟持する表装枠体、及び、その表装枠体の使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、壁取付部材の使用方法が知られている(特許文献1)。
この壁取付部材の使用方法は、建築物の壁面に取り付けられる基板部と、前記基板部から立上がるよう形成された一対の立設板部とを備え、前記立設板部の先端部をほぼUターン状に折り曲げて互いに先端部を弾性的に押圧して接触させ、前記一対の立設板部の先端部の断面に各々波形の凹凸面を形成してこの一対の凹凸面の互いの凹部と凸部を噛み合わせて接触するように形成し、前記一対の立設板部にこの長さ方向に間隔をおいて前記基板部に及ぶ切り込みを交互に入れることにより前記壁面に沿って折り曲げ自在に形成した壁取付部材を、前記壁面に沿って折り曲げて壁面に取り付け、前記折り曲げた壁取付部材の内側及び/又は外側の壁面上に壁取付部材の高さと同じ位の厚さの機能材料を固定し、前記壁取付部材の先端部の互いに押圧して接触させた一対の波形の凹凸面の間に壁面カバーシート材の周縁部を挾んで係止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された壁取付部材の使用方法は、建築物における壁面に施工する際、壁面カバーシート材を壁取付部材の先端部の間に挾んだ状態で、その壁面カバーシート材の位置調整(壁面カバーシート材が布帛等であれば、布目曲がり調整等)を行う場合、当該壁面カバーシート材を挾んで係止する力が強過ぎて位置調整し難い問題があった。
更に、特許文献1の壁取付部材の使用方法は、壁面カバーシート材の厚さによっては(薄い場合など)、当該壁面カバーシート材を挾んで係止する力が十分ではなかった。
【0005】
本発明は、このような点に鑑み、挟持された表装シート材を枠体の長手方向にスライドさせる際の抵抗荷重を60N/100mm以下とし、枠体の略直交方向にスライドさせる際の抵抗荷重を43N/100mm以上とする等によって、「表装シート材の位置調整の容易化」と「表装シート材の挟持力向上」を実現できる表装枠体、及び、表装枠体の使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る表装枠体1は、下地面を覆う表装シート材の端部を挟持する表装枠体であって、当該表装枠体は、長手方向を有した枠材であり、厚さ1.20mmの前記表装シート材の端部を挟持した状態で、前記表装シート材を前記長手方向に沿ってスライドさせる際の抵抗荷重が60N/100mm以下であり、厚さ0.15mmの前記表装シート材の端部を挟持した状態で、前記表装シート材を前記長手方向に略直交する方向に沿ってスライドさせる際の抵抗荷重が43N/100mm以上であることを第1の特徴とする。
【0007】
本発明に係る表装枠体1の第2の特徴は、上記第1の特徴に加えて、前記下地面に当接して固定する基板と、前記基板から立ち上がった支持板と、前記支持板の側面から突出した複数の舌片と、前記基板から立ち上がり且つ前記舌片の先端部との間で前記表装シート材の端部を挟持可能な縁板を有している点にある。
【0008】
本発明に係る表装枠体1の第3の特徴は、上記第1の特徴に加えて、前記下地面に当接して固定する基板と、前記基板から立ち上がった一方支持板と、前記一方支持板の側面から突出した複数の一方舌片と、前記基板から立ち上がった他方支持板と、前記他方支持板の側面から突き出し且つ前記一方舌片の先端部との間で前記表装シート材の端部を挟持可能な複数の他方舌片を有している点にある。
【0009】
本発明に係る表装枠体1の第4の特徴は、上記第2又は3の特徴に加えて、上述した前記舌片におけるJIS-Z-2246:2000のD形試験機で測定されたショア硬さは、50HS以上80HS以下であり、且つ、上述した前記支持板におけるJIS-Z-2246:2000に規定されたショア硬さは、80HSより大きく150HS以下である、又は、上述した前記一方舌片及び前記他方舌片におけるJIS-Z-2246:2000のD形試験機で測定されたショア硬さは、50HS以上80HS以下であり、且つ、上述した前記一方支持板及び前記他方支持板におけるJIS-Z-2246:2000のD形試験機で測定されたショア硬さは、80HSより大きく150HS以下である点にある。
【0010】
これらの特徴により、厚さ1.20mmの表装シート材Hの端部を挟持した状態で、その表装シート材Hを、表装枠体1の長手方向Lに沿ってスライドさせる際の抵抗荷重を60N/100mm以下とし、厚さ0.15mmの表装シート材Hの端部を挟持した状態で、表装シート材Hを、表装枠体1の長手方向Lに略直交する方向Rに沿ってスライドさせる際の抵抗荷重を43N/100mm以上とすることによって、特許文献1とは異なり、建築物における壁面等の下地面Sに表装シート材Hを施工する際、表装シート材Hの端部を表装枠体1に挟持した状態で、その表装シート材Hの位置調整(表装シート材Hが布帛であれば、布目曲がり調整等)を行い易くなる(「表装シート材の位置調整の容易化」)。
これと同時に、特許文献1とは異なり、表装シート材Hの厚さによらず(薄い場合などであっても)、当該表装シート材Hを十分な挟持力を発揮できる(「表装シート材の挟持力向上」)。
尚、布目曲がり調整とは、表装シート材Hが布帛(織物や編物等)である場合、その図柄の向きや、織物や編物の経方向や緯方向を調整することを意味する。
【0011】
その他、基板2、支持板3、複数の舌片4、縁板5を有することによっても、「表装シート材の位置調整の容易化」や「表装シート材の挟持力向上」を図れる。
又、基板2、一方支持板3A、複数の一方舌片4A、他方支持板3B、複数の他方舌片4Bを有することによっても、「表装シート材の位置調整の容易化」や「表装シート材の挟持力向上」を図れる。
【0012】
更に、舌片4や一方舌片4A、他方舌片4Bのショア硬さを50HS以上80HS以下とし、支持板3や一方支持板3A、他方支持板3Bショア硬さを80HSより大きく150HS以下とすることによって、「表装シート材の位置調整の容易化」や「表装シート材の挟持力向上」を図っても良い。
【0013】
本発明に係る表装枠体1の使用方法は、下地面を覆う表装シート材の端部を挟持する表装枠体の使用方法であって、前記表装枠体は、長手方向を有した枠材であり、厚さ1.20mmの前記表装シート材の端部を挟持した状態で、前記表装シート材を前記長手方向に沿ってスライドさせる際の抵抗荷重を60N/100mm以下とし、厚さ0.15mmの前記表装シート材の端部を挟持した状態で、前記表装シート材を前記長手方向に略直交する方向に沿ってスライドさせる際の抵抗荷重を43N/100mm以上としていることを第1の特徴とする。
【0014】
本発明に係る表装枠体1の使用方法の第2の特徴は、上記第1の特徴に加えて、前記表装枠体は、前記下地面に当接して固定する基板と、前記基板から立ち上がった支持板と、前記支持板の側面から突出した複数の舌片と、前記基板から立ち上がり且つ前記舌片の先端部との間で前記表装シート材の端部を挟持可能な縁板を有していて、前記複数の舌片は、表装側の舌片と裏側の舌片を含み、前記表装側の舌片と、前記縁板との間で前記表装シート材の端部を挟持する仮固定工程と、前記仮固定工程の後に、前記表装側の舌片及び前記裏側の舌片と、前記縁板との間で前記表装シート材の端部を挟持する本固定工程を備えている点にある。
【0015】
本発明に係る表装枠体1の使用方法の第3の特徴は、上記第1の特徴に加えて、前記表装枠体は、前記下地面に当接して固定する基板と、前記基板から立ち上がった一方支持板と、前記一方支持板の側面から突出した複数の一方舌片と、前記基板から立ち上がった他方支持板と、前記他方支持板の側面から突き出し且つ前記一方舌片の先端部との間で前記表装シート材の端部を挟持可能な複数の他方舌片を有していて、前記複数の一方舌片は、表装側の一方舌片と裏側の一方舌片を含み、前記複数の他方舌片は、表装側の他方舌片と裏側の他方舌片を含み、前記表装側の一方舌片と、前記表装側の他方舌片との間で前記表装シート材の端部を挟持する仮固定工程と、前記仮固定工程の後に、前記表装側の一方舌片及び前記裏側の一方舌片と、前記表装側の他方舌片及び前記裏側の他方舌片との間で前記表装シート材の端部を挟持する本固定工程を備えている点にある。
【0016】
本発明に係る表装枠体1の使用方法の第4の特徴は、下地面を覆う表装シート材の端部を挟持する表装枠体の使用方法であって、前記表装枠体は、前記下地面に当接して固定する基板と、前記基板から立ち上がった支持板と、前記支持板の側面から突出した複数の舌片と、前記基板から立ち上がり且つ前記舌片の先端部との間で前記表装シート材の端部を挟持可能な縁板を有していて、前記複数の舌片は、表装側の舌片と裏側の舌片を含み、前記表装側の舌片と、前記縁板との間で前記表装シート材の端部を挟持する仮固定工程と、前記仮固定工程の後に、前記表装側の舌片及び前記裏側の舌片と、前記縁板との間で前記表装シート材の端部を挟持する本固定工程を備えている点にある。
【0017】
本発明に係る表装枠体1の使用方法の第5の特徴は、下地面を覆う表装シート材の端部を挟持する表装枠体の使用方法であって、前記表装枠体は、前記下地面に当接して固定する基板と、前記基板から立ち上がった一方支持板と、前記一方支持板の側面から突出した複数の一方舌片と、前記基板から立ち上がった他方支持板と、前記他方支持板の側面から突き出し且つ前記一方舌片の先端部との間で前記表装シート材の端部を挟持可能な複数の他方舌片を有していて、前記複数の一方舌片は、表装側の一方舌片と裏側の一方舌片を含み、前記複数の他方舌片は、表装側の他方舌片と裏側の他方舌片を含み、前記表装側の一方舌片と、前記表装側の他方舌片との間で前記表装シート材の端部を挟持する仮固定工程と、前記仮固定工程の後に、前記表装側の一方舌片及び前記裏側の一方舌片と、前記表装側の他方舌片及び前記裏側の他方舌片との間で前記表装シート材の端部を挟持する本固定工程を備えている点にある。
【0018】
これらの特徴により、挟持された厚さ1.20mmの表装シート材Hを枠体の長手方向Lにスライドさせる際の抵抗荷重を60N/100mm以下とし、挟持された厚さ0.15mmの表装シート材Hを枠体の長手方向Lに略直交する方向Rにスライドさせる際の抵抗荷重を43N/100mm以上とすることによって、特許文献1とは異なり、建築物における壁面等の下地面Sに表装シート材Hを施工する際、「表装シート材の位置調整の容易化」が図れる。
これと同時に、特許文献1とは異なり、表装シート材Hの厚さによらず(薄い場合などであっても)、「表装シート材の挟持力向上」が図れる。
【0019】
その他、表装枠体1に、基板2、支持板3、複数の舌片4に含まれる表装側の舌片4aと裏側の舌片4b、縁板5を設けていて、表装側の舌片4aと縁板5との間で表装シート材Hの端部を挟持する仮固定工程P1と、その後に、表装側の舌片4a及び裏側の舌片4bと縁板5との間で表装シート材Hの端部を挟持する本固定工程P2を備えることによっても、「表装シート材の位置調整の容易化」や「表装シート材の挟持力向上」を図れる。
又、表装枠体1に、基板2、一方支持板3A、複数の一方舌片4Aに含まれる表装側の一方舌片4Aaと裏側の一方舌片4Ab、他方支持板3B、複数の他方舌片4Bに含まれる表装側の他方舌片4Baと裏側の他方舌片4Bbを設けていて、表装側の一方舌片4Aaと、表装側の他方舌片4Baとの間で表装シート材Hの端部を挟持する仮固定工程P1と、その後に、表装側の一方舌片4Aa及び裏側の一方舌片4Abと、表装側の他方舌片4Ba及び裏側の他方舌片との間で表装シート材Hの端部を挟持する本固定工程P2を備えることによっても、「表装シート材の位置調整の容易化」や「表装シート材の挟持力向上」を図れる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る表装枠体、及び、表装枠体の使用方法によると、挟持された表装シート材を枠体の長手方向にスライドさせる際の抵抗荷重を60N/100mm以下とし、枠体の略直交方向にスライドさせる際の抵抗荷重を43N/100mm以上とする等によって、「表装シート材の位置調整の容易化」と「表装シート材の挟持力向上」を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る表装枠体などの断面斜視を示す断面図である。
【
図2】第1実施形態の変形例に係る表装枠体などの断面斜視を示す断面図である。
【
図3】本発明の第2実施形態に係る表装枠体などの断面斜視を示す断面図である。
【
図4】本発明に係る表装枠体の使用方法における仮固定工程を示す概要斜視図であり、(a)は第1実施形態を示し、(b)は第2実施形態を示す。
【
図5】本発明に係る表装枠体の使用方法における本固定工程を示す概要斜視図であり、(a)は第1実施形態を示し、(b)は第2実施形態を示す。
【
図6】本発明の実施例と比較例における抵抗荷重を測定する様子を示す図面代用写真であって、(a)は、長手方向スライドの抵抗荷重(調整力)を測定する様子を示し、(b)は、略直交方向スライドの抵抗荷重(保持力)を測定する様子を示す。
【
図7】本発明の実施例と比較例における長手方向スライドの抵抗荷重(調整力)と、略直交方向スライドの抵抗荷重(保持力)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
<表装枠体1>
図1~7には、本発明に係る表装枠体1が示されている。
【0023】
この表装枠体1は、後述の下地面Sを覆う、後述の表装シート材Hの端部を挟持するものであり、長手方向Lを有している枠材である(つまり、表装枠体1は長尺状に形成されている)。尚、表装枠体1の長手方向Lは、略直線状であったり、湾曲していても良く、又、下地面Sも略平面状や湾曲状であっても構わない。
表装枠体1は、複数の当該表装枠体1間で、上述した表装シート材Hを張設できるのであれば、何れの構成でも良いが、例えば、それぞれの表装枠体1は、少なくとも2つの表装枠体1の間で表装シート材Hを張設できるように、下地面Sに所定の距離をおいて固定しても構わない(
図4、5参照)。
【0024】
図1に示したように、本発明の第1実施形態に係る表装枠体1は、基板2、支持板3、舌片4、縁板5を有している構成でも良い。
第1実施形態の表装枠体1は、
図2で示した変形例であっても良い。
図3に示したように、本発明の第2実施形態に係る表装枠体1は、基板2、一方支持板3A、一方舌片4A、他方支持板3B、他方舌片4Bを有している構成でも良く、表装枠体1は、
図1~3に示した以外の構成でも構わない。
以下、各構成について述べる。
【0025】
<基板2>
図1~5に示したように、基板2は、上述した下地面Sに当接して固定する部材であり、長手方向(表装枠体1の長手方向Lと同方向)を有した板状の部材である。この基板2は、第1実施形態やその変形例、第2実施形態の何れでも同じ構成であるとも言える。
基板2において、後述する支持板3等が立ち上がっていない部分の表装側(露出面側)には、微小突起2aが1又は複数形成されていても良く、この微小突起2aは、基板2の長手方向に沿って連続して形成されていても構わない。
【0026】
この微小突起2aが形成されていることによって、表装枠体1を下地面Sにタッカー(略コ字状の釘)等の固定部材Tで固定する(
図1、3参照)際、その固定(タッカー打ち等)の衝撃を吸収し、基板2や表装枠体1の割れを低減するとも言える。
基板2の素材も特に制限はないが、例えば、硬質の素材で形成されていても良い。尚、本発明における「硬質」とは、JIS-Z-2246:2000に規定されたショア硬さが80HSより大きく150HS以下であるものを言う。
【0027】
<支持板3、一方支持板3A、他方支持板3B>
図1~5に示したように、支持板3等は、上述した基板2から、断面視において立ち上がった部材であり、長手方向(表装枠体1の長手方向Lと同方向)を有した板状の部材である。
支持板3等は、基板2の幅方向中途部の表装側の面から立ち上がっていても良い。
尚、一方支持板3Aと他方支持板3Bは、1つの表装枠体1に存在する部材である。
【0028】
図1に示したように、第1実施形態の支持板3は、基板2から立ち上がった後、立上り方向(表装側から裏側にかけての方向や、上下方向、表装シート材Hの厚さ方向とも言う)中途部において、クランク状に屈曲していても良く、このクランク部分から更に立上り方向へ所定距離だけ延出しても構わない。尚、第1実施形態の支持板3等は、この延出部分の側面から突出する後述の舌片4等の突出方向とは逆側の側面から、逆方向に突出する庇部分が形成されていても良い。
図2に示したように、第1実施形態の変形例の支持板3は、上述したクランク部分や延出部分、庇部分が形成されていなくとも良く、その代わりに、基板2から立ち上がった後、立上り方向中途部において、略L字状に屈曲していても構わず、その略L字状部分の先端面側(立上り方向においては側面)から後述の舌片4等が突出しても構わない。尚、第1実施形態の変形例の支持板3は、第1実施形態の支持板3より立上り高さが低く形成されていても良い。
【0029】
図3に示したように、一方支持板3Aと他方支持板3Bは、基板2の幅方向略中央部の表装側の面から、所定間隔を空けて、向かい合うように立ち上がっていても良く、一方支持板3Aと他方支持板3Bそれぞれも、第1実施形態の支持板3にて述べたクランク部分や延出部分、庇部分が形成されていても構わない。
又、第1実施形態の支持板3や第2実施形態の一方支持板3Aと他方支持板3Bにおける立上り高さ(表装枠体1の立上り高さ)は、特に限定はないが、例えば、10mm以上20mm以下(14mmなど)であっても良く、第1実施形態の変形例の支持板3における立上り高さも、特に限定はないが、例えば、4mm以上9mm以下(7mmなど)であっても構わない。
支持板3等の素材も特に制限はないが、例えば、硬質の素材で形成されていても良い。
【0030】
<舌片4、一方舌片4A、他方舌片4B>
図1~5に示したように、舌片4等は、上述した支持板3等の側面から、断面視において突出した部材であり、長手方向(表装枠体1の長手方向Lと同方向)を有した板状の部材である。
舌片4等は、支持板3等の先端部の側面から突出しても良いし、支持板3等の立上り方向中途部や基部等の側面から突出しても良く、その突出角度は、若干下方へ(基板2側)に突出したり、逆に、若干上方へ(基板2とは反対側)に突出しても良く、例えば、-5°以上20°以下(上方へ5°以上で下方へ20°以下)であっても構わない。
尚、一方舌片4Aと他方舌片4Bは、1つの表装枠体1に存在する部材である。
【0031】
図1に示したように、舌片4は、複数存在し、例えば、表装側(立上り方向の先端側)の舌片4a、裏側(立上り方向の基端側)の舌片4bが含まれていても良い。
裏側の舌片4bは、上述した支持板3のクランク部分(立上り方向中途部)における側面から突出しており、表装側の舌片4aは、上述した支持板3の延出部分の先端部における側面から突出している。
第1実施形態の表装側の舌片4aや裏側の舌片4bは、後述する縁板5までに到達するまでの長さであったり、縁板5までに到達しない長さであって(つまり、舌片4a、4bの先端と縁板5との間に隙間があって)も良く、表装側の舌片4aの長さは、裏側の舌片4bの長さより短かったり、長かったり、略等しくても構わない。又、表装側の舌片4aの厚さは、裏側の舌片4bの厚さより薄かったり、厚かったり、略等しくても良い。
【0032】
図2でも、舌片4は、複数存在し、例えば、表装側の舌片4a、裏側(立上り方向の基端側)の舌片4bが含まれていても良く、第1実施形態の変形例の支持板3の略L字状部分における先端部の側面上寄りから表装側の舌片4aが突出し、略L字状部分における先端部の側面下寄りから裏側の舌片4bが突出していても構わない。
第1実施形態の変形例の表装側の舌片4aや裏側の舌片4bも、後述する縁板5までに到達するまでの長さであったり、縁板5までに到達しない長さであって(つまり、舌片4a、4bの先端と縁板5との間に隙間があって)も良く、表装側の舌片4aの長さは、裏側の舌片4bの長さより短かったり、長かったり、略等しくても構わない。又、表装側の舌片4aの厚さは、裏側の舌片4bの厚さより薄かったり、厚かったり、略等しくても良い。
【0033】
図3に示したように、一方舌片4Aと他方舌片4Bは、それぞれが複数存在し、例えば、一方舌片4Aには、表装側の一方舌片4Aa、裏側の一方舌片4Abが含まれ、他方舌片4Bには、表装側の他方舌片4Ba、裏側の他方舌片4Bbが含まれていても良い。
裏側の一方舌片4Abは、上述した一方支持板3Aのクランク部分(立上り方向中途部)における側面から突出し、裏側の他方舌片4Bbは、上述した他方支持板3Bのクランク部分(立上り方向中途部)における側面から突出しており、表装側の一方舌片4Aaは、上述した一方支持板3Aの延出部分の先端部における側面から突出し、表装側の他方舌片4Baは、上述した他方支持板3Bの延出部分の先端部における側面から突出している。
第2実施形態の表装側の一方舌片4Aaや裏側の一方舌片4Ab、表装側の他方舌片4Ba、裏側の他方舌片4Bbは、互いの先端が接触し合う長さであったり、互いに接触しない長さであって(つまり、表装側の一方舌片4Aaの先端と表装側の他方舌片4Baの先端との間、及び/又は、裏側の一方舌片4Abの先端と裏側の他方舌片4Bbの先端との間に隙間があって)も良く、表装側の一方及び他方舌片4Aa、4Baの長さは、裏側の一方及び他方舌片4Ab、4Bbの長さより短かったり、長かったり、略等しくても構わない。又、表装側の一方及び他方舌片4Aa、4Baの厚さは、裏側の一方及び他方舌片4Ab、4Bbの厚さより薄かったり、厚かったり、略等しくても良い。
又、第2実施形態の表装側の一方舌片4Aaの先端部と、表装側の他方舌片4Baの先端部との間で表装シート材Hの端部を挟持可能であり、第2実施形態の裏側の一方舌片4Abの先端部と、裏側の他方舌片4Bbの先端部との間で、表装シート材Hの端部を挟持可能である。
【0034】
図1~5に示したように、表装側の舌片4a等の先端と、裏側の舌片4b等の先端との間の距離(表装・裏間距離)Dも、特に限定はなく、例えば、下限値は1mm以上や2mm以上であったり、上限値は10mm以下や7mm以下であっても(3.7mmや1.1mmなど)良い。
舌片4等の先端部は、断面視において、複数に分岐していても良い。
舌片4等の素材も特に制限はないが、例えば、後述する軟質の素材で形成されていても良く、この軟質の素材は、表装側の舌片4aの基端部から裏側の舌片4bの間に、支持板3等の側面に層状に付着していても構わない。尚、本発明における「軟質」とは、JIS-Z-2246:2000に規定されたショア硬さが50HS以上80HS以下であるものを言う。
【0035】
<縁板5>
図1、2や、
図4(a)、
図5(a)に示したように、縁板5は、上述した基板2から、断面視において立ち上がり、且つ、上述した舌片4の先端部との間で、表装シート材Hの端部を挟持可能な部材であり、長手方向(表装枠体1の長手方向Lと同方向)を有した板状の部材である。
縁板5は、基板2の幅方向端部の表装側の面から立ち上がっていても良い。
又、第1実施形態の縁板5における立上り高さ(表装枠体1の立上り高さ)も、特に限定はないが、例えば、10mm以上20mm以下(14mmなど)であっても良く、第1実施形態の変形例の縁板5における立上り高さも、特に限定はないが、例えば、4mm以上9mm以下(7mmなど)であっても構わない。
縁板5の素材も特に制限はないが、例えば、硬質の素材で形成されていても良い。
【0036】
<表装枠体1の使用方法>
図4、5には、本発明に係る表装枠体1の使用方法(以下「使用方法」)が示されている。
この使用方法は、上述した表装枠体1で、下地面Sを覆う表装シート材Hの端部を挟持する。
使用方法は、後述する仮固定工程P1と、本固定工程P2を備えていても良く、その他の工程を備えていても構わない。
まずは、仮固定工程P1と、本固定工程P2について、以下に述べる。
【0037】
<仮固定工程P1>
図4に示したように、仮固定工程P1は、第1実施形態の表装枠体1であれば、表装側の舌片4aと、縁板5との間で表装シート材Hの端部を挟持する工程(
図4(a)参照)であり、第2実施形態の表装枠体1であれば、表装側の一方舌片4Aaと、表装側の他方舌片4Baとの間で表装シート材Hの端部を挟持する工程(
図4(b)参照)である。
この仮固定工程P1では、所定厚さの表装シート材Hの端部を表装枠体1が挟持した状態で、表装シート材Hを、当該表装枠体1の長手方向Lに沿ってスライドさせることが可能である(長手方向Lに沿ってスライドさせ易い)とも言え、布目Mの調整等の位置調整の容易化が図れる。尚、布目Mとは、表装シート材Hが布帛である場合には、その図柄の向きや、織物や編物の経方向や緯方向を意味し、表装シート材Hが合成樹脂製のフィルムなどのシート状物である場合には、その図柄の向きを意味する(
図4(b)等参照)。
【0038】
<本固定工程P2>
図5に示したように、本固定工程P2は、第1実施形態の表装枠体1であれば、その第1実施形態の仮固定工程P1の後に、表装側の舌片4a及び裏側の舌片4bと、縁板5との間で表装シート材Hの端部を挟持する工程(
図5(a)参照)であり、第2実施形態の表装枠体1であれば、その第2実施形態の仮固定工程P1の後に、表装側の一方舌片4Aa及び裏側の一方舌片4Abと、表装側の他方舌片4Ba及び裏側の他方舌片4Bbとの間で表装シート材Hの端部を挟持する工程(
図5(b)参照)である。
この本固定工程P2は、仮固定工程P1において、所定厚さの表装シート材Hの端部を表装枠体1が挟持した状態で、表装シート材Hを、当該表装枠体1の長手方向Lに略直交する方向Rに沿ってスライドさせて、更に押し込む工程であるとも言え、その略直交する方向Rに沿ってスライドさせ難いとも言える。尚、
図5に示したように、本発明における「略直交する方向R」とは、表装枠体1の長手方向Lに略直交し且つ表装シート材Hの表装側の面(露出面)に略沿った方向R1であったり、表装枠体1の長手方向Lに略直交し且つ表装シート材Hの表装側の面(露出面)に略直交する方向(法線方向)R2であっても良く、この表装側の面の法線方向R2は、表装シート材Hを表装枠体1の更に奥に押し込んだり、表装シート材Hを表装枠体1から引き抜く方向であるともいえる。
【0039】
<長手方向スライドの抵抗荷重(調整力)>
ここまで述べた表装枠体1やその使用方法では、厚さ1.20mmの表装シート材Hの端部を挟持した状態で、この表装シート材Hを長手方向Lに沿ってスライドさせる際の抵抗荷重を60N(ニュートン)/100mm以下であっても良く、この長手方向Lに沿ってスライドさせる際の抵抗荷重は、表装シート材Hにおける布目M等の位置調整の容易化に関わるため、調整力であるとも言える。
この調整力は、低い値であるほど好ましいとも言え、上述した60N/100mm以下であったり、好ましくは43N/100mm以下、更に好ましくは40N/100mm以下(32.29N/100mmや50.12N/100mmなど)であっても良い。ここまでは、調整力の上限値に言及したが、下限値は、0N/100mm以上となるとも言える。
【0040】
<略直交方向スライドの抵抗荷重(保持力)>
ここまで述べた表装枠体1やその使用方法では、厚さ0.15mmの表装シート材Hの端部を挟持した状態で、表装シート材Hを長手方向Lに略直交する方向Rに沿ってスライドさせる際の抵抗荷重が43N(ニュートン)/100mm以上であっても良く、この略直交する方向Rに沿ってスライドさせる際の抵抗荷重は、表装枠体1が表装シート材Hの端部を挟持した状態を保持することに関わるため、保持力であるとも言える。
この保持力は、高い値であるほど好ましいとも言え、上述した43N/100mm以上であったり、好ましくは70N/100mm以上、更に好ましくは90N/100mm以上(45.58N/100mmや100.28N/100mm)など)であっても良い。ここまでは、調整力の下限値に言及したが、上限値は、400N/100mm以下となるとも言える。
特に、保持力が、表装シート材Hを表装枠体1から引き抜く方向に沿ってスライドさせる際の抵抗荷重である場合には、その値が高いほど、少なくとも2つの表装枠体1の間で張設した表装シート材Hの緩み(ゆるみ)や弛み(たるみ)、皺、そして、張設後の表装シート材Hに触れた際の凹みの発生を低減できると言える。
【0041】
<試験>
本発明の試験においては、ここまで述べた表装枠体1について、実施例と、比較例1、2を作成し、これら実施例、比較例1、2について、2種類の表装シート材Hに対する「調整力」と「保持力」を調べる。
まずは、実施例、比較例1、2について詳解する。
【0042】
<実施例>
実施例の表装枠体1の構成は、
図1で示した第1実施形態であって、立上り高さが14.0mm、表装・裏間距離Dは3.7mm、裏側の舌片4bにおける基端から先端までの長さは2.2mmである。
【0043】
<比較例1>
比較例1の構成は、下地面Sに当接して固定する基板と、この基板から立ち上がった一方支持板と、この一方支持板の立上り方向中途部から先端部に亘る側面に形成された一方の略鋸歯状凹凸部と、上述した基板から立ち上がり且つ立上り方向中途部において略L字状に屈曲し且つ略L字状部分の先端部から再び立ち上がった他方支持板と、この他方支持板の再び立ち上がった部分の側面に形成された他方の略鋸歯状凹凸部を有している。
比較例1の構成における立上り高さは22.5mmであり、複数の舌片が存在しないため、表装・裏間距離Dを有さず、一方及び他方の略鋸歯状凹凸部の谷から山までの高さは1.0mmである。
【0044】
<比較例2>
比較例2の構成は、下地面Sに当接して固定する基板と、この基板から立ち上がり且つ立上り方向中途部において略45°屈曲した支持板と、この支持板の先端部から基板側(下方)へ突出した1つの舌片と、上述した基板から立ち上がり且つ上述した1つの舌片の側面との間で表装シート材の端部を挟持可能な縁板を有している。
比較例2の構成における立上り高さは26.0mmであり、舌片は1つだけ存在するため、表装・裏間距離Dを有さず、下方へ突出した舌片における基端から先端までの長さは4.0mmである。
【0045】
試験では、上述した実施例と比較例1、2について、2種類の表装シート材Hに対する「調整力」と「保持力」を、
図6(a)、(b)に示したようにスライドさせて抵抗荷重を測定した結果を、以下の表1と
図7に示す。
ここで、実施例、比較例1、2それぞれの長手方向の長さは、
図6(a)で示した「調整力」の測定では100mmである一方で、
図6(b)で示した「保持力」の測定では50mmであるため、
図6(b)の測定値を2倍した値を「保持力」として、表1と
図7中に示す。この試験における測定値は、実施例、比較例1、2それぞれにおける複数(例えば、3つ等)の試験片について測定した値の平均値であっても良い。
尚、実施例、比較例1、2に対する下地面Sは、何れも略平坦な面である。
又、2種類の表装シート材Hとは、表装シート材H-1(厚さ1.20mm、目付379g/m
2、株式会社川島織物セルコン製、2021年品番:FT6537)、表装シート材H-2(厚さ0.15mm、目付120g/m
2、株式会社川島織物セルコン製、2021年品番:ME8280)の各織物である。
【0046】
【0047】
<試験の評価>
表1と
図7より、実施例の表装枠体1は、厚さ1.20mmの表装シート材H-1に対する「調整力」が、仮固定工程P1か本固定工程P2かを問わず、60N/100mm以下の「32.29N/100mm」や「50.12N/100mm」となるため、「表装シート材の位置調整の容易化」が図れ、厚さ0.15mmの表装シート材H-2に対する「保持力」が、仮固定工程P1か本固定工程P2かを問わず、43N/100mm以上の「45.12N/100mm」や「100.28N/100mm」となるため、「表装シート材の挟持力向上」も図れる。
一方、比較例1の構成は、複数の舌片が存在しないため、表装・裏間距離Dを有さず、一方及び他方の略鋸歯状凹凸部で挟持するため、厚さ1.20mmの表装シート材H-1に対する「調整力」が、60N/100mmを越えた「67.34N/100mm」であるため、表装シート材H-1の位置調整が非常にし難く、厚さ0.15mmの表装シート材H-2に対する「保持力」が、43N/100mm未満の「41.82N/100mm」であるため、少なくとも2つの比較例1の間で張設した表装シート材H-2等の緩み、弛み、皺、凹み等の発生を低減できないと言える。
又、比較例2の構成は、舌片は1つだけ存在するため、表装・裏間距離Dを有さず、厚さ0.15mmの表装シート材H-2に対する「保持力」が、43N/100mm未満の「20.88N/100mm」しかなく、少なくとも2つの比較例1の間で張設した表装シート材H-2等の緩みや弛み、皺、凹みの発生を低減できないと言える。
尚、実施例では、仮固定工程P1の場合における「調整力」や「保持力」と、本固定工程P2の場合における「調整力」や「保持力」が存在するが、仮固定工程P1の場合における厚さ1.20mmの表装シート材H-1に対する「調整力」だけが60N/100mm以下であっても良く、本固定工程P2の場合における厚さ0.15mmの表装シート材H-2に対する「保持力」だけが43N/100mm以上であっても良いとも言える。
又、具体的な「調整力」や「保持力」の値を問わず、ここまで述べた仮固定工程P1と本固定工程P2を備える(換言すれば、複数の舌片4等は、表装側の舌片4a等と裏側の舌片4b等を含む)だけによっても、「表装シート材の位置調整の容易化」や「表装シート材の挟持力向上」を図れるとも言える。
【0048】
<その他>
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではない。表装枠体1やその使用方法等の各構成又は全体の構造、形状、寸法などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することが出来る。
表装枠体1の構成として、基本的には第2実施形態であるが、一方及び他方支持板3A、3Bがクランク部分や延出部分、庇部分が形成されておらず、その代わりに、基板2から立ち上がった後、立上り方向中途部において、略L字状に屈曲していても構わず、その略L字状部分の先端面側(立上り方向においては側面)から、複数の一方及び他方舌片4A、4Bが突出しても(謂わば、第2実施形態の変形例であっても)良く、この第2実施形態の変形例の一方及び他方支持板3A、3Bは、第2実施形態の一方及び他方支持板3A、3Bより立上り高さが低く形成されていても構わない。
支持板3等における立上り方向の基端部分は、クランク部分や延出部分より薄肉状であっても良く、その厚さは、例えば、1.0mm以上1.5mm以下(1.2mmなど)であっても構わない。
舌片4や、一方舌片4A、他方舌片4Bは、3つ以上存在しても良く、この場合、表装側の舌片4a等が複数存在する、及び/又は、裏側の舌片4b等が複数存在することとなる。
表装側の舌片4a等の先端を下方傾斜させたり、この下方傾斜した部分の基端側は、軟質の素材で、支持板3の庇部分とは逆方向に突出した部分が形成されていても良い。
裏側の舌片4b等の基端部における下方側だけに、硬質の素材が突出した部分を形成し、この突出した部分が下方の上に、軟質の素材で形成された裏側の舌片4b等を形成していても良い(つまり、硬質の素材の突出した部分が、裏側の舌片4b等を支えるとも言える)。
表装枠体1は、各構成が押出成形(例えば、押出機、冷却水槽、引取機、切断機をこの順に介した押出成形など)によって一体的に構成されていても良く、又、表装枠体1を構成する素材そのもの、又は、その素材のJIS-Z-2246:2000に規定されたショア硬さは、上述した2種類だけでなく、1種類や、3種類以上であっても構わない。
ここまで述べた表装枠体1が挟持する表装シート材Hや、その表装シート材Hに覆われる下地面S、その他、クッション層材Cについて詳解する。
【0049】
<表装シート材H>
図4、5に示したように、表装シート材Hは、後述する下地面Sを覆う部材であり、少なくとも2つの表装枠体1の間で張設される部材であるとも言える。この表装シート材Hの厚さは、特に限定はないが、例えば、下限値は0.05mm以上や0.10mm以上(0.15mmなど)であったり、上限値は3.00mm以下や2.00mm以下(1.20mmなど)であっても良い。
尚、表装シート材Hの表面は、表装枠体1に張設されて露出する側の面(露出面)であるとも言える。
表装シート材Hは、複数の表装枠体1の間で張設されるのであれば、何れの構成でも良いが、例えば、シート状であっても良く、シート状の表装シート材Hは、布帛であったり、合成樹脂製のフィルムなどのシート状物などであっても構わない。
ここで、布帛とは、織物、編物、不織布や、それらを組み合わせたものである。
表装シート材Hが織物の場合、何れの織組織でも構わないが、例えば、平織や綾織、朱子織、二重織、二重織以上の多重織などであっても良い。
表装シート材Hが編物の場合、デンビー編(トリコット編)や、ラッシェル編、ダブルラッシェル編、バンダイク編(アトラス編)、コード編などの経編や、平編(天竺編)、ゴム編(リブ編)、パール編などの緯編など、それぞれ何れの組織であっても構わない。
表装シート材Hが不織布である場合には、例えば、往復するニードルに繊維を引っ掛けて繊維相互間を交絡したニードルパンチ不織布であっても良く、その他、熱融着性繊維を含有し加熱により成形されたサーマルボンド不織布、ノズルから紡糸された長繊維(フィラメント)を動くスクリーン上に積層して結合させたスパンボンド不織布、ステッチボンド不織布等をニードルパンチ法などによって結合させたものであっても構わない。
表装シート材Hが織物や編物、不織布等の布帛である場合、それらを構成(織成、編成)する繊維としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)や、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル繊維、ナイロン(ポリアミド)繊維、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系繊維、レーヨン繊維、キュプラ繊維、アセテート繊維、ポリアクリロニトリル(PAN)を主成分とするアクリル系繊維、ポリビニルアルコール(PVA)繊維(ビニロン繊維)、ポリウレタン(PU)繊維などの合成繊維、その他、絹(シルク)繊維、綿繊維、麻繊維、羊毛繊維、ガラス繊維などであり、これらを単独又は組み合わせて用いられても良い。
又、表装シート材Hが織物や編物、不織布等の布帛である場合、それらを構成(織成、編成)する繊維の繊度も、何れの値でも良いが、例えば、総繊度で、20dtex以上3000dtex以下である。
表装シート材Hがフィルムなどのシート状物であれば、それを構成する材料としては、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂や、ポリエチレンテレフタレート(PET)や、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル樹脂、ポリアミド(PA)樹脂などの合成樹脂などや、これらを単独又は組み合わせて用いられても良い。
表装シート材Hは、その色彩については、赤色系、橙色系、黄色系、緑色系、青色系、紫色系、黒色系、白色系など何れの色調でも良く、彩度や明度についても何れの値でも構わない。表装シート材Hの模様についても、花や草木などの植物の柄や、動物の柄、幾何学模様、無地、表面凹凸等による模様など何れでも良い。
表装シート材Hは、所望により、酸化チタン、炭酸カルシウム等の体質顔料やフィラー(充填材)を任意に付与したり、消臭剤、抗菌剤、防カビ剤、難燃剤、撥水剤、防汚剤、着色剤、香料、発泡剤等を付与しても良く、付与するタイミングも、表装シート材Hとして構成する(織成・編成等をする)前後を問わず、付与の方法も何れであっても良い。
【0050】
<下地面S>
図1~5に示したように、下地面Sは、上述した表装シート材Hとで覆われる面であり、又、表装枠体1にも覆われる(表装枠体1が取り付けられる)面であるとも言える。
下地面Sは、建築物における壁面や、天井面、床面、屋内の柱の外周面などであり、その他、ドアの表裏面や、衝立の表裏面などであっても良い。
下地面Sは、略平面であったり、ある一方向に沿って湾曲している曲面であっても良い。
このような下地面Sを覆う際に使用する表装枠体1は、内装システム(内装材)の一部であるとも言える。
【0051】
<クッション層材C>
図4、5に示したように、クッション層材Cは、上述した表装シート材Hと下地面Sとの間に存在する部材である。
クッション層材Cは、表装シート材Hと下地面Sとの間に存在すれば、何れの構成であっても良いが、例えば、1つの層材のみであったり、低密度層材と高密度層材など、複数の層材を備えていても構わない。
クッション層材Cの素材も、特に制限はないが、例えば、繊維ウェブ(不織布など)であっても良い。
特に、クッション層材Cが不織布である場合には、上述したように、例えば、往復するニードルに繊維を引っ掛けて繊維相互間を交絡したニードルパンチ不織布であっても良く、その他、熱融着性繊維を含有し加熱により成形されたサーマルボンド不織布、ノズルから紡糸された長繊維(フィラメント)を動くスクリーン上に積層して結合させたスパンボンド不織布、ステッチボンド不織布等をニードルパンチ法などによって結合させたものであっても構わない。
繊維ウェブであるクッション層材Cが不織布である場合、それらを構成(織成、編成)する繊維としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)や、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル繊維、ナイロン(ポリアミド)繊維、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系繊維、レーヨン繊維、キュプラ繊維、アセテート繊維、ポリアクリロニトリル(PAN)を主成分とするアクリル系繊維、ポリビニルアルコール(PVA)繊維(ビニロン繊維)、ポリウレタン(PU)繊維などの合成繊維、その他、絹(シルク)繊維、綿繊維、麻繊維、羊毛繊維などであり、これらを単独又は組み合わせて用いられても良い。
クッション層材Cは、ガラス繊維を含んでいても良く、又、クッション層材Cはガラス繊維のみで構成されても構わない(この場合、クッション層材Cは、グラスウールで構成されているとも言える)。
クッション層材Cの素材は、上述した以外に、ポリウレタン等の合成樹脂を発泡させた合成樹脂フォーム(ウレタンフォームなど)であっても良い。
【0052】
表装枠体1の使用方法は、その他の工程を備えていても良く、例えば、上述した表装枠体1を下地面Sに固定部材T等で取り付ける枠体取付工程や、表装シート材Hと下地面Sとの間にクッション層材Cを設けるクッション設置工程などを有していても良い。
この場合、表装枠体1の使用方法は、表装シート材H(又は、内装システム)の施工方法であるとも言える。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明に係る表装枠体は、建築物における壁面や、各種の部屋、廊下の壁面だけでなく、天井面や床面、屋内の柱の外周面などの下地面を覆うものとして利用可能であり、その他、ドアの表裏面や、衝立の表裏面を含む板状体における表裏面などであったり、船舶や航空機、乗用車、鉄道車両など乗り物の内側面など、何れの下地面に対しても利用できる。
本発明に係る表装枠体の使用方法は、建築物における壁面や、各種の部屋、廊下の壁面だけでなく、天井面や床面、屋内の柱の外周面などの下地面に対して表装枠体を使用する際に利用可能であり、その他、ドアの表裏面や、衝立の表裏面を含む板状体における表裏面などであったり、船舶や航空機、乗用車、鉄道車両など乗り物の内側面など、何れの下地面に対して表装枠体を使用する際にも利用できる。
【符号の説明】
【0054】
1 表装枠体
2 基板
3 支持板
3A 一方支持板
3B 他方支持板
4 舌片
4a 表装側の舌片
4b 裏側の舌片
4A 一方舌片
4Aa 表装側の一方舌片
4Ab 裏側の一方舌片
4B 他方舌片
4Ba 表装側の他方舌片
4Bb 裏側の他方舌片
5 縁板
S 下地面
H 表装シート材
L 表装枠体の長手方向
R 表装枠体の長手方向に略直交する方向
P1 仮固定工程
P2 本固定工程