(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023133930
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】光位相変調器
(51)【国際特許分類】
G02F 1/065 20060101AFI20230920BHJP
G02B 6/12 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
G02F1/065
G02B6/12 363
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022039192
(22)【出願日】2022-03-14
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人情報通信研究機構「革新的情報通信技術研究開発委託研究/超低消費電力・大容量データ伝送を実現する革新的EOポリマー/Siハイブリッド変調技術の研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】304020292
【氏名又は名称】国立大学法人徳島大学
(71)【出願人】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100138759
【弁理士】
【氏名又は名称】大房 直樹
(72)【発明者】
【氏名】藤方 潤一
(72)【発明者】
【氏名】横山 士吉
【テーマコード(参考)】
2H147
2K102
【Fターム(参考)】
2H147AB11
2H147AC01
2H147BG08
2H147DA08
2H147EA12B
2H147EA16A
2H147GA19
2H147GA30
2K102AA21
2K102BA02
2K102BB04
2K102BC04
2K102CA18
2K102DA04
2K102DD01
2K102EA02
2K102EA08
2K102EA12
2K102EA14
(57)【要約】
【課題】スロット導波路を用いた光位相変調器において、変調効率を向上させる。また、光損失を低減し、高速変調を可能とする。
【解決手段】光位相変調器は、基板上に互いに近接して配置された複数の半導体電極と、前記複数の半導体電極の間に配置された電気光学材料とから構成される光導波路と、前記光導波路の光伝搬方向に沿って配列され、各々が前記半導体電極に電気的に接続された、複数の第1引出電極と、前記光導波路の光伝搬方向に沿って配列され、各々が、前記第1引出電極に電気的に接続され、前記第1引出電極に対して前記光伝搬方向にオフセットして配置された、複数の第2引出電極と、を備える。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に互いに近接して配置された複数の半導体電極と、前記複数の半導体電極の間に配置された電気光学材料とから構成される光導波路と、
前記光導波路の光伝搬方向に沿って配列され、各々が前記半導体電極に電気的に接続された、複数の第1引出電極と、
前記光導波路の光伝搬方向に沿って配列され、各々が、前記第1引出電極に電気的に接続され、前記第1引出電極に対して前記光伝搬方向にオフセットして配置された、複数の第2引出電極と、
を備える光位相変調器。
【請求項2】
前記複数の第2引出電極の各々は、前記複数の第1引出電極のうちの隣り合う2つの引出電極の中央に位置するようにオフセットして配置される、請求項1に記載の光位相変調器。
【請求項3】
前記第1および第2引出電極はそれぞれ等間隔に配置される、請求項1または2に記載の光位相変調器。
【請求項4】
前記第1引出電極は、連続する3以上の引出電極が繰り返し単位となるように周期的に配置される、請求項1または2に記載の光位相変調器。
【請求項5】
前記第1引出電極はそれぞれ不等間隔に配置される、請求項1または2に記載の光位相変調器。
【請求項6】
前記第1および第2引出電極の厚さは、前記半導体電極の厚さと等しい、請求項1から5のいずれか1項に記載の光位相変調器。
【請求項7】
前記第1および第2引出電極の厚さは、前記半導体電極の厚さよりも薄い、請求項1から5のいずれか1項に記載の光位相変調器。
【請求項8】
前記第2引出電極の厚さは、前記半導体電極および前記第1引出電極の厚さよりも薄い、請求項1から5のいずれか1項に記載の光位相変調器。
【請求項9】
前記第1および第2引出電極は半導体で構成される、請求項1から8のいずれか1項に記載の光位相変調器。
【請求項10】
前記第2引出電極は、前記第1引出電極より電気伝導度が高い半導体で構成される、請求項9に記載の光位相変調器。
【請求項11】
前記複数の第2引出電極と前記複数の第1引出電極の間に、前記複数の第2引出電極を前記複数の第1引出電極に連続的に接続する接続電極をさらに備える、請求項1から10のいずれか1項に記載の光位相変調器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光位相変調器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スロット導波路のスリット部に電気光学材料を埋め込んだ構成の光変調素子が知られている。
図2Aおよび2Bは、そのような従来構成による光位相変調器の一例(例えば、非特許文献1参照)を示す図である。スロット導波路120には、その長手方向に沿って周期的に配列された複数の引出電極130が接続され、この引出電極130を介して、スロット導波路120を構成する半導体電極122に金属電極150から高周波電圧が印加される。これに応じて、スリット部123の電気光学材料の屈折率が変化し、スロット導波路120の伝搬光が位相変調される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Antao Chen他、”Achieving Higher Modulation Efficiency in Electrooptic Polymer Modulator With Slotted Silicon Waveguide”、Journal of Lightwave Technology, Vol. 29, No. 21、2011年11月1日、p.3310-3318
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような構成の光位相変調器では、光電界が金属電極150の近傍まで広がるため、スリット部123への光の閉じ込めが弱くなり、変調効率が低下する。また、金属電極150において光吸収が生じることにより、光損失が増大する。さらに、金属電極150における光吸収を小さくするには引出電極130の長さLを長くする必要があることから、半導体電極122と金属電極150間の電気抵抗が大きくなり、高速変調動作させることが困難である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様は、基板上に互いに近接して配置された複数の半導体電極と、前記複数の半導体電極の間に配置された電気光学材料とから構成される光導波路と、前記光導波路の光伝搬方向に沿って配列され、各々が前記半導体電極に電気的に接続された、複数の第1引出電極と、前記光導波路の光伝搬方向に沿って配列され、各々が、前記第1引出電極に電気的に接続され、前記第1引出電極に対して前記光伝搬方向にオフセットして配置された、複数の第2引出電極と、を備える光位相変調器である。
【0006】
また、本発明の他の一態様は、上記一態様において、前記複数の第2引出電極の各々は、前記複数の第1引出電極のうちの隣り合う2つの引出電極の中央に位置するようにオフセットして配置される。
【0007】
また、本発明の他の一態様は、上記一態様において、前記第1および第2引出電極はそれぞれ等間隔に配置される。
【0008】
また、本発明の他の一態様は、上記一態様において、前記第1引出電極は、連続する3以上の引出電極が繰り返し単位となるように周期的に配置される。
【0009】
また、本発明の他の一態様は、上記一態様において、前記第1引出電極はそれぞれ不等間隔に配置される。
【0010】
また、本発明の他の一態様は、上記一態様において、前記第1および第2引出電極の厚さは、前記半導体電極の厚さと等しい。
【0011】
また、本発明の他の一態様は、上記一態様において、前記第1および第2引出電極の厚さは、前記半導体電極の厚さよりも薄い。
【0012】
また、本発明の他の一態様は、上記一態様において、前記第2引出電極の厚さは、前記半導体電極および前記第1引出電極の厚さよりも薄い。
【0013】
また、本発明の他の一態様は、上記一態様において、前記第1および第2引出電極は半導体で構成される。
【0014】
また、本発明の他の一態様は、上記一態様において、前記第2引出電極は、前記第1引出電極より電気伝導度が高い半導体で構成される。
【0015】
また、本発明の他の一態様は、上記一態様において、前記複数の第2引出電極と前記複数の第1引出電極の間に、前記複数の第2引出電極を前記複数の第1引出電極に連続的に接続する接続電極をさらに備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、スロット導波路を用いた光位相変調器において、変調効率を向上させることができる。また、光損失の低減および高速変調が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1A】本発明の第1実施形態に係る光位相変調器の概略構成図である。
【
図1B】本発明の第1実施形態に係る光位相変調器の概略構成図である。
【
図2A】従来構成による光位相変調器の概略構成図である。
【
図2B】従来構成による光位相変調器の概略構成図である。
【
図3】本実施形態による光位相変調器と従来構成による光位相変調器の各々における光電界分布のシミュレーション結果を示す。
【
図4】本実施形態による光位相変調器と従来構成による光位相変調器の各々における光伝搬損失のシミュレーション結果を示す。
【
図5】本実施形態による光位相変調器と従来構成による光位相変調器の周波数応答特性のシミュレーション結果を示す。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る光位相変調器の概略構成図である。
【
図7】本発明の第3実施形態に係る光位相変調器の概略構成図である。
【
図8】本発明の第4実施形態に係る光位相変調器の概略構成図である。
【
図9】本発明の第4実施形態に係る光位相変調器の概略構成図である。
【
図10】本発明の第5実施形態に係る光位相変調器の概略構成図である。
【
図11】本発明の第5実施形態に係る光位相変調器の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
【0019】
図1Aおよび1Bは、本発明の第1実施形態に係る光位相変調器の概略構成図である。
図1Aは、光位相変調器の上面図を示し、
図1Bは、
図1A中のAA、BB、CC線による光位相変調器の断面図を示す。本発明の第1実施形態に係る光位相変調器100は、スロット導波路120を備える。スロット導波路120は、基板110上に近接して配置された一対の半導体電極122と、半導体電極122間のスリット123に埋設された電気光学ポリマー124とから構成される。電気光学ポリマー以外の電気光学材料が用いられてもよい。
【0020】
図1Aにおいて、半導体電極122は、基板110上において一方向(Z軸)に沿って長く線状に延びている。2本の半導体電極122は狭いスリット123を介して平行に配置され、このスリット123に電気光学ポリマー124が充填されている。光はこの2本の半導体電極122間のスリット123付近に局在して、スリット123の長手方向に伝搬する。すなわち、スロット導波路120の光伝搬方向は
図1AのZ軸方向である。電気光学ポリマー124は、電界に応答して電気光学効果を発現する。2本の半導体電極122間に電界(高周波電界)が印加されることで、半導体電極122間のスリット123に充填された電気光学ポリマー124の屈折率が変化する。これにより、スロット導波路120を伝搬する光に位相変調が加えられる。
【0021】
2本の半導体電極122間に電界を印加するために、各半導体電極122は、複数の第1引出電極130および複数の第2引出電極140を介して、金属電極150に電気的に接続されている。複数の第1引出電極130および複数の第2引出電極140もまた、半導体材料で構成された電極である。一対の金属電極150には、不図示の駆動回路から、スロット導波路120を伝搬する光を位相変調するための変調信号が入力される。
【0022】
複数の第1引出電極130は、半導体電極122の長手方向に沿って所定の間隔で配列されている。各第1引出電極130は、半導体電極122の側面に接続され、半導体電極122の長手方向と垂直な方向(X軸方向)に沿って延びている。平面視において、各第1引出電極130は、例えば、幅(Z軸方向の寸法)W1、長さ(X軸方向の寸法)L1の矩形形状であってよい。各第1引出電極130間の間隔d1は、等間隔であってよい。
【0023】
複数の第2引出電極140も、同様に半導体電極122の長手方向に沿って所定の間隔で配列されている。各第2引出電極140は、第1引出電極130の端部に接続され、第1引出電極130と同方向(X軸方向)に沿って延びている。各第2引出電極140の反対側の端部は、金属電極150に接続されている。平面視において、各第2引出電極140は、例えば、幅W2、長さL2の矩形形状であってよい。各第2引出電極140間の間隔d2は、等間隔であってよい。
【0024】
図1Aに示されるように、本発明の第1実施形態に係る光位相変調器100において、複数の第1引出電極130および複数の第2引出電極140は、ともにスロット導波路120の光伝搬方向に沿って周期的に配置されているが、各第2引出電極140は、第1引出電極130に対して、スロット導波路120の光伝搬方向にオフセットしている。より具体的には、各第2引出電極140は、隣り合う2つの第1引出電極130と接続され、Z軸方向において当該2つの第1引出電極130のちょうど真ん中に配置されている。換言すると、複数の第1引出電極130と複数の第2引出電極140は互いに半周期ずれて配置されており、第2引出電極140間のギャップ142(引出電極の存在しない部分)が、各第1引出電極130に隣接している。
【0025】
スロット導波路120には半導体で構成された第1引出電極130が接続されているので、スロット導波路120を伝搬する光の電界は、この第1引出電極130を伝ってスロット導波路120から横方向(X軸方向)にはみ出して広がる。しかし、各第1引出電極130には第2引出電極140間のギャップ142が隣接していることにより、光電界が第1引出電極130の端部を越えてさらに横方向に(すなわちギャップ142の部分にまで)広がることが抑制される。つまり、スロット導波路120を伝搬する光の電界の横方向への広がりは、おおよそ第1引出電極130が存在する範囲(
図1Bにおいて2つの縦の破線で挟まれた範囲)と同程度となる。
【0026】
このように光電界の横方向への広がりが抑えられる結果、光は、スロット導波路120のスリット123により強く閉じ込められることとなる。したがって、スロット導波路120を伝搬する光とスリット123内の電気光学ポリマー124との相互作用がより大きくなり、光位相変調器100における変調効率を向上させることができる。
【0027】
また、光電界が第2引出電極140まで広がらないため、金属電極150に光が吸収されることによる光位相変調器100の光損失の増大を防止することができる。さらに、金属電極150による光吸収を増大させることなく、金属電極150をよりスロット導波路120の近くに配置して、第2引出電極140の長さL2を短くすることができる。これにより、半導体電極122と金属電極150との間の電気抵抗が小さくなることで回路のCR時定数が小さくなり、その結果、光位相変調器100において高速な変調動作を行うことが可能となる。
【0028】
ここで、本実施形態による光位相変調器100の特性を従来構成による光位相変調器と比較する。
図2Aおよび2Bは、従来構成による光位相変調器900(例えば非特許文献1参照)の概略構成図である。
図2Aは光位相変調器の上面図であり、
図2Bは
図2A中のAA線による光位相変調器の断面図を示している。
【0029】
光位相変調器900は、1段の引出電極130のみによって半導体電極122と金属電極150が接続された構成を有し、第2引出電極を備えていない。このような構成では、長い引出電極130が半導体電極122から金属電極150まで延びているので、光電界がこの長い引出電極130を伝って横方向(X軸方向)に大きく広がり、スロット導波路120のスリット123への光の閉じ込めが弱くなる。
図3は、本実施形態による光位相変調器100と従来構成による光位相変調器900の各々における、光電界分布のシミュレーション結果を示す。
図3の横軸と縦軸は、それぞれ
図1Aおよび2AにおけるX軸とZ軸に対応している。
図3に示されるように、本実施形態による光位相変調器100においては、光位相変調器900よりも光電界の横方向への広がりが抑えられており、その分、スロット導波路120のスリット123への光の閉じ込めが強い。したがって、本実施形態による光位相変調器100は、従来の光位相変調器900よりも高い変調効率を実現することが可能である。
【0030】
図4は、本実施形態による光位相変調器100と従来構成による光位相変調器900の各々における光伝搬損失のシミュレーション結果を示す。
図4の横軸は、半導体電極122と金属電極150間の距離L(
図2A参照)を示し、縦軸は、スロット導波路120の単位長さ当りの光伝搬損失を示している。従来構成の光位相変調器900では、光電界が金属電極150の近くにまで広がるため光損失が大きいが、本実施形態による光位相変調器100においては、光電界が広がる範囲は第1引出電極130が存在している領域付近までである(光電界は金属電極150の近くまでは広がらない)ため、光損失が低減されている。
【0031】
図5は、本実施形態による光位相変調器100と従来構成による光位相変調器900の周波数応答特性のシミュレーション結果を示す。本実施形態の光位相変調器100では、半導体電極122と金属電極150間の電気抵抗の低減によりCR時定数が小さくなることで、従来の光位相変調器900よりも高速な変調動作が実現されている。
【0032】
図6は、本発明の第2実施形態に係る光位相変調器の概略構成図である。
図6において、前述の第1実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、以下ではその説明を省略する。本発明の第2実施形態に係る光位相変調器200は、第1引出電極130と第2引出電極140の間に接続電極135を備える。接続電極135は、スロット導波路120と平行に長く線状に延びて配置され、第1引出電極130と第2引出電極140を接続している。接続電極135の幅W3は、例えば第1引出電極130の幅W1と同程度であってよい。このような接続電極135を用いて第1引出電極130と第2引出電極140を接続することにより、半導体電極122と金属電極150間の電気抵抗を低減することができる。
【0033】
図7は、本発明の第3実施形態に係る光位相変調器の概略構成図である。
図7において、前述の第1実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、以下ではその説明を省略する。本発明の第3実施形態に係る光位相変調器300において、各第2引出電極140は、第1実施形態の光位相変調器100と同様、第1引出電極130に対してスロット導波路120の光伝搬方向にオフセットしているが、隣り合う2つの第1引出電極130の真ん中には配置されていない。より具体的には、光位相変調器100の各第2引出電極140は隣り合う2つの第1引出電極130と接続されていたが、本実施形態の光位相変調器300では、各第2引出電極140は、1つの第1引出電極130とのみ接続され、当該1つの第1引出電極130の側に偏って配置されている。
【0034】
しかし、
図7に示されるように、この光位相変調器300においても、各第1引出電極130には、第2引出電極140間のギャップ142(引出電極の存在しない部分)が隣接している。そのため、第1実施形態の場合と同様に、光電界が第1引出電極130の端部を越えてギャップ142の部分にまで広がることを抑制することができる。したがって、第1引出電極130と第2引出電極140のオフセットが
図7に示されるようなものであっても、高い変調効率、低光損失、高速変調動作を実現することが可能である。
【0035】
図8および9は、本発明の第4実施形態に係る光位相変調器の概略構成図である。
図8および9において、前述の第2実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、以下ではその説明を省略する。本発明の第4実施形態に係る光位相変調器400において、複数の第1引出電極130は、等間隔ではなく、第1引出電極130間の間隔がd1、d3、d1、d3、…(但しd1≠d3)と繰り返すように、配置される。また本発明の第4実施形態に係る光位相変調器500において、複数の第1引出電極130は、第1引出電極130間の間隔がd1、d1、d3、d1、d1、d3、…(但しd1≠d3)と繰り返すように、配置される。このように、本実施形態では、第1引出電極130間の間隔が不等間隔となっている。第1引出電極130間の間隔は、
図8および9に示されるのとは異なる任意の態様の不等間隔であってもよい。
【0036】
既述した実施形態の光位相変調器のように第1引出電極130間の間隔が等間隔である場合、スロット導波路120を伝搬する光は、そのような周期的構造(すなわち等間隔配置された第1引出電極130)によって多重反射されて、減衰することが起こり得る。第4実施形態に係る光位相変調器では、第1引出電極130間の間隔が不等間隔であることにより、複数の第1引出電極130が連なった構造からの多重反射を抑制し、光損失をさらに低減することができる。
【0037】
図10および11は、本発明の第5実施形態に係る光位相変調器の概略構成図である。
図10および11において、前述の第1実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、以下ではその説明を省略する。本発明の第5実施形態に係る光位相変調器600において、第1引出電極130および第2引出電極140は、半導体電極122よりも薄い厚さを有する。第1引出電極130が薄く形成されていることにより、第1引出電極130の内部の光電界が小さくなり、スロット導波路120のスリット123への光の閉じ込めをより強くすることができる。また、本発明の第5実施形態に係る光位相変調器700において、半導体電極122および第1引出電極130は同じ厚さを有し、第2引出電極140は、それらよりも薄い厚さを有する。第2引出電極140が第1引出電極130よりも薄いことで、光電界の横方向(ギャップ142側)への広がりがさらに抑制される。これにより、
図10の光位相変調器600と同様に、スロット導波路120のスリット123への光の閉じ込めをより強くすることができる。
【0038】
いくつかの実施形態において、半導体電極122、第1引出電極130、第2引出電極140、および接続電極135は、種々の半導体材料で構成されてよい。例えば、半導体電極122および第1引出電極130はInP(インジウムリン)で構成され、第2引出電極140はSi(シリコン)で構成されてよい。InPに代えて、他のIII-V族半導体が用いられてもよい。光電界が比較的大きい部分(すなわち半導体電極122および第1引出電極130)の材料をInPとすることで、光損失を低く抑えることができる。また、光電界がほぼ存在しない部分(すなわち第2引出電極140)の材料を電気伝導度の高いSiとすることで、半導体電極122と金属電極150間の全体としての電気抵抗を低減することができる。なお、各電極122、130、140、135は同一の半導体材料で構成されるのであってもよい。
【0039】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されず、その要旨を逸脱しない範囲内において様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0040】
100 光位相変調器
110 基板
120 スロット導波路
122 半導体電極
123 スリット
124 電気光学ポリマー
130 第1引出電極
135 接続電極
140 第2引出電極
142 ギャップ
150 金属電極