(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023133932
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】基礎一体型スクリュー杭、および、その製造方法
(51)【国際特許分類】
E02D 27/42 20060101AFI20230920BHJP
【FI】
E02D27/42
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022039194
(22)【出願日】2022-03-14
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】510013677
【氏名又は名称】株式会社茂山組
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100172041
【弁理士】
【氏名又は名称】小畑 統照
(72)【発明者】
【氏名】川田 雄二
【テーマコード(参考)】
2D046
【Fターム(参考)】
2D046DA31
(57)【要約】
【課題】作業工数が少なく見栄えが良い基礎を作成できる建築資材を提案する。
【解決手段】基礎一体型スクリュー杭は、杭部と、基礎部と、を備える。杭部は、螺旋状に設けられたスクリュー羽根を有し、長手方向に伸びる。基礎部は、前記杭部と一体に構成されて前記長手方向に対して垂直な板面を画定する矩形の上面部と、前記上面部の各辺から前記杭部の先端に向かって前記長手方向に伸びる側面部と、を有する。前記上面部には、前記杭部の軸心に対して対称な位置に複数の貫通孔が形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
螺旋状に設けられたスクリュー羽根を有し、長手方向に伸びる杭部と、
前記杭部と一体に構成されて前記長手方向に対して垂直な板面を画定する矩形の上面部と、前記上面部の各辺から前記杭部の先端に向かって前記長手方向に伸びる側面部と、を有する基礎部と、
を備え、
前記上面部には、複数の第1の貫通孔が前記杭部の軸心に対して対称な位置に形成されている、
基礎一体型スクリュー杭。
【請求項2】
前記基礎部の前記側面部は、前記第1の貫通孔よりも寸法が大きい第2の貫通孔が形成されている、請求項1に記載の基礎一体型スクリュー杭。
【請求項3】
前記第2の貫通孔は、前記上面部の短辺に連続する前記側面部に形成されている、請求項2に記載の基礎一体型スクリュー杭。
【請求項4】
前記杭部と前記基礎部とは、中空体である、請求項1から3の何れか1項に記載の基礎一体型スクリュー杭。
【請求項5】
前記長手方向において、前記側面部の寸法は前記杭部の寸法の20%以上50%以下である、請求項1から4の何れか1項に記載の基礎一体型スクリュー杭。
【請求項6】
請求項1から5の何れか1項に記載の基礎一体型スクリュー杭を製造する方法であって、
前記杭部と前記基礎部とを用意する工程と、
前記杭部と前記基礎部とを一体に溶融金属に浸漬させて表面に金属皮膜を形成させる工程と、
を含む基礎一体型スクリュー杭を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基礎一体型スクリュー杭、および、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅、仮設住宅、工事の際の仮設物、物置、カーポート、外構フェンス、設備機器、倉庫、屋外看板等のさまざまな設置物を屋外に設置するために、種々の基礎構造が知られており、例えばコンクリート基礎、杭基礎などが知られている。コンクリート基礎は、設置物を強固に支持することができるが、多くの作業工数および作業時間が必要とされる。また、設置物を撤去する場合にも、その作業は煩雑なものとなる。一方、杭基礎は、地盤に杭を打ち込んで固定するものであり、コンクリート基礎に比して構築作業および撤去作業が簡易な点で有利である。また、地盤が硬質な場合には、回転しながら打ち込むことができるスクリュー杭が使用されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したように、コンクリート基礎は、作業工数および撤去等に難があり、こうした問題を少なくするために小規模に構成すると、十分な強度を得られなくなるおそれがある。また、スクリュー杭を用いた杭基礎は、コンクリート基礎に比して作業工数は少ないものの、従来のスクリュー杭は、そのまま杭上に設置物を構築すると設置物としての見栄えが優れないという課題があった。このため、従来、スクリュー杭を用いた杭基礎では、地盤に打ち込まれたスクリュー杭に対して別途架台が取り付けられて使用されることが多く、作業工数の増加の原因となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、作業工数が少なく見栄えが良い基礎を作成できる建築資材を提案することを目的の1つとする。
【0006】
(形態1)形態1によれば、基礎一体型スクリュー杭が提案され、かかる基礎一体型スクリュー杭は、螺旋状に設けられたスクリュー羽根を有し、長手方向に伸びる杭部と、前記杭部と一体に構成されて前記長手方向に対して垂直な板面を画定する矩形の上面部と、前記上面部の各辺から前記杭部の先端に向かって前記長手方向に伸びる側面部と、を有する基礎部と、を備え、前記上面部には、複数の第1の貫通孔が前記杭部の軸心に対して対称な位置に形成されている。形態1によれば、作業工数が少なく見栄えが良い基礎を作成することができる。
【0007】
(形態2)形態2によれば、形態1において、前記基礎部の前記側面部は、前記第1の貫通孔よりも寸法が大きい第2の貫通孔が形成されている。
【0008】
(形態3)形態3によれば、形態2において、前記第2の貫通孔は、前記上面部の短辺に連続する前記側面部に形成されている。
【0009】
(形態4)形態4によれば、形態1から3の何れかにおいて、前記杭部と前記基礎部とは、中空体である。
【0010】
(形態5)形態5によれば、形態1から4の何れかにおいて、前記長手方向において、前記側面部の寸法は前記杭部の寸法の20%以上50%以下である。
【0011】
(形態6)形態6によれば、形態1から5の何れかの基礎一体型スクリュー杭を製造する方法が提案され、かかる方法は、前記杭部と前記基礎部とを用意する工程と、前記杭部と前記基礎部とを一体に溶融金属に浸漬させて表面に金属皮膜を形成させる工程と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る基礎一体型スクリュー杭の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図1の基礎一体型スクリュー杭の正面図である。
【
図3】
図1の基礎一体型スクリュー杭の平面図である。
【
図4】
図1の基礎一体型スクリュー杭の側面図である。
【
図6】本実施形態の基礎一体型スクリュー杭を用いた基礎の施工一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下で説明する図面において、同一の又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。本実施形態の基礎一体型スクリュー杭は、一例として、住宅、仮設住宅、工事の際の仮設物、物置、カーポート、外構フェンス、設備機器、倉庫、屋外看板等の設置物の基礎として利用することができる。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係る基礎一体型スクリュー杭の一例を示す斜視図である。また、
図2~
図4のそれぞれは、
図1の基礎一体型スクリュー杭の正面図、平面図、および側面図であり、
図5は、
図4中のA-A方向から見たAA視図である。図示するように、本実施形態の基礎一体型スクリュー杭20は、杭部30と、基礎部40とを備えている。
【0015】
杭部30は、長手方向Ldに沿って長い長尺状であり、螺旋状のスクリュー羽根38を有している。本実施形態では、杭部30は、円筒状の杭本体32の外周部にスクリュー羽根38が設けられている。杭本体32の先端(
図1、
図2、
図5中、下端)は先細になっており、先端近傍には、中空内部に連通する貫通孔34が形成されている。一例として、貫通孔34は、直径数mm~数十mmである。また、本実施形態では、杭部30の杭本体32の基端(
図1、
図2、
図5中、上端)は、開口端となっている。なお、杭本体32は、中空円筒状であるものに限定されず、円柱状であってもよいし、直方体状などの外形であってもよい。また、本実施形態では、杭本体32には、先端近傍に1つの貫通孔34が形成されているが、こうした例に限定されず、複数の貫通孔34が形成されてもよいし、貫通孔34が形成されなくてもよい。さらに、杭部30は、杭本体32の外周部にスクリュー羽根38が設けられるものに限定されず、杭本体32自体が螺旋状のスクリュー羽根38で構成されるなどとしてもよい。
【0016】
基礎部40は、杭部30の基端に一体に構成されている。なお、
図5に示すように、基礎部40は、長手方向において、杭部30の基端(
図5中、上端)を覆うように、杭部30と一体に接続されることが好ましい。しかしながら、こうした例に限定されず、基礎部40は、例えば、杭部30の基端の外周面に対して一体に接続されるように構成されてもよい。基礎部40は、長手方向Ldに対して垂直な板面を画定する矩形の上面部42と、上面部42の各辺から長手方向Ldに伸びる側面部48と、を有する。
【0017】
基礎部40の上面部42は、杭部30の基端に接続されて杭部30と一体に構成されている。上面部42には、杭部30の軸中心Caに対して対称な位置に形成された複数の貫通孔(第1の貫通孔)44と、杭部30の開口端に連通する貫通孔46と、が形成されている(
図3および
図5参照)。ここで、本実施形態では、上面部42の長手方向に沿って、2つの貫通孔44が形成されている。しかしながら、こうした例に限定されず、貫通孔44は、一例として、杭部30の軸中心Caに対して回転対称な位置に3つ以上設けられてもよい。また、一例として、上面部42中央の貫通孔46の径Dtは、杭部30の開口径Doと同一である、または杭部30の開口径Doよりも小さいことが好ましい(
図5参照)。なお、上面部42に貫通孔46が形成されなくてもよい。複数の貫通孔44は、一例として、基礎一体型スクリュー杭20を回転させて打設するのに用いることができる。また、複数の貫通孔44は、基礎部40に設置物を取り付けるための締結具が挿入されるものとしてもよい。
【0018】
基礎部40の側面部48は、上面部42の各辺に連続し、側面部48と上面部42とは、概ね直方体の外形を形成する。一例として、長手方向Ldにおいて、側面部48の寸法は杭部30の寸法の20%以上50%以下であり、好ましくは30%以上40%である。本実施形態では、基礎部40の先端側(
図5中、下端側)は開口端とされているが、こうした例には限定されない。また、本実施形態では、側面部48のうち、上面部42の短辺に連続する短辺側面部48Aには、貫通孔(第2の貫通孔)49が形成されている。本実施形態では、2つの短辺側面部48Aのそれぞれに1つずつ貫通孔49が形成されている。一例として、貫通孔49は、上面部42の貫通孔(第1の貫通孔)44よりも寸法(開口面積)が大きい。しかしながら、こうした例に限定されず、貫通孔49は、一方の短辺側面部48Aにのみ形成されてもよい。また、貫通孔49は、上面部42の貫通孔44の寸法と同一または小さい寸法とされてもよい。
【0019】
こうした基礎一体型スクリュー杭20は、一例として、アルミニウムまたは鋼などの金属で形成される。基礎一体型スクリュー杭20は、杭部30と、基礎部40とを溶接することで製造されてもよい。一例として、杭部30と上面部42とを溶接し、その後に上面部42に側面部48を溶接して、基礎一体型スクリュー杭20が製造されてもよい。または、上面部42と側面部48とが一体に構成された基礎部40を用意し、こうした基礎部40を杭部30と溶接して、基礎一体型スクリュー杭20が製造されてもよい。また、基礎一体型スクリュー杭20は、杭部30と基礎部40とが一体にされた状態で、杭部30と基礎部40とを溶融金属(例えば溶融亜鉛)に浸漬させて表面に金属皮膜(例えば亜鉛皮膜)を形成させてもよい。こうすれば、杭部30と基礎部40との接続部を含めて金属皮膜を設けることができ、基礎一体型スクリュー杭20の耐久性を向上させることができる。また、この場合には、杭部30の中空内部にも金属皮膜が設けられてもよい。この場合には、杭部30先端の貫通孔34から余分な溶融金属を排出させる、または貫通孔34が空気の通り道となることで、杭部30内部に好適に金属皮膜を形成することができる。ただし、こうした例に限定されず、基礎一体型スクリュー杭20は、一例として鋳造などにより製造されてもよい。また、基礎一体型スクリュー杭20は、樹脂などで形成されてもよい。
【0020】
図6は、本実施形態の基礎一体型スクリュー杭20を用いた基礎の施工一例を説明するための図である。
図6に示す例では、上記で説明した基礎一体型スクリュー杭20と同一である3つの基礎一体型スクリュー杭20A~20Cが地面に打設されており、更に1つの基礎一体型スクリュー杭20Dの打設が行われる様子が示されている。なお、
図6に示す例では、4つの基礎一体型スクリュー杭20が使用されているが、こうした例に限定されず、1つ~3つ、または5つ以上の基礎一体型スクリュー杭20が使用されてもよい。また、
図6に示す例では、理解用の容易のため、1つの基礎一体型スクリュー杭20Cについて、地中に打ち込まれている部分を破線で示している。
【0021】
上記した基礎一体型スクリュー杭20は、例えば公知の建設機械によって地面に回転させて打設することができる。ここで、建設機械は、一例として、基礎一体型スクリュー杭20の上面部42の縁部または側面部48を把持するものとしてもよいし、上面部42の貫通孔44を通じて基礎一体型スクリュー杭20を把持するものとしてもよい。基礎一体型スクリュー杭20を地面に打設する際には、基礎部40は必ずしも地中に埋められなくてもよいが、地面との隙間ができないように、基礎一体型スクリュー杭20Cの破線部で示すように基礎部40の一部が地面に埋められてもよい。この場合には、一例として、予め地面を少し掘っておき、基礎一体型スクリュー杭20を打設した後に基礎部40周辺を土または砂利などで覆わせることなどが行われてもよい。
【0022】
図6に示すように、複数の基礎一体型スクリュー杭20を使用する場合には、一例として基礎部40の向きが互いに平行または垂直となるように各基礎一体型スクリュー杭20の打設量が調節されるとよい。なお、この場合には、最大、スクリュー羽根38のピッチ(例えば10mm)の半分の寸法だけ、地面から基礎部40が突出する高さに誤差が生じ得る。一般的にコンクリート基礎等においても上端面には多少の高さバラつきが生じ得るものであり、基礎部40の高さバラつきについては、公知のスペーサまたは基礎一体型スクリュー杭20の上部に取り付けられる機構等によって調整されるとよい。
【0023】
本実施形態の基礎一体型スクリュー杭20では、杭部30と基礎部40とが一体に構成されているため、基礎一体型スクリュー杭20を打設した後に別途架台などを取り付けなくもて、見栄えが良い基礎を作成することができる。基礎一体型スクリュー杭20で作成された基礎に対しては、一例として、上面部42の貫通孔44を利用して締結具によって設置物が取り付けられる。この場合には、側面部48に形成された貫通孔49に治具または手を挿入して、締結具の締結が行われてもよい。ただし、設置物は、貫通孔44を利用して取り付けられることに限定されず、一例として、上面部42または側面部48に対して溶接またはビス止めなどで直接に取り付けられてもよい。こうした本実施形態の基礎一体型スクリュー杭20によれば、作業工数が少なく見栄えが良い基礎を作成することができる。また、基礎の撤去作業も容易であると共に、別の場所などで基礎一体型スクリュー杭20を再使用することもできる。
【0024】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその均等物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、実施形態および変形例の任意の組み合わせが可能であり、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。
【符号の説明】
【0025】
20…基礎一体型スクリュー杭
30…杭部
32…杭本体
34…貫通孔
38…スクリュー羽根
40…基礎部
42…上面部
44…貫通孔(第1の貫通孔)
46…貫通孔
48…側面部
48A…短辺側面部
49…貫通孔(第2の貫通孔)
【手続補正書】
【提出日】2022-07-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
螺旋状に設けられたスクリュー羽根を有し、長手方向に伸びる杭部と、
前記杭部と一体に構成されて前記長手方向に対して垂直な板面を画定する矩形の上面部と、前記上面部の各辺から前記杭部の先端に向かって前記長手方向に伸びる側面部と、を有する基礎部と、
を備え、
前記上面部には、複数の第1の貫通孔が前記杭部の軸心に対して対称な位置に形成されており、
前記基礎部の前記側面部は、前記第1の貫通孔よりも寸法が大きい第2の貫通孔が形成されている、
基礎一体型スクリュー杭。
【請求項2】
前記第2の貫通孔は、前記上面部の短辺に連続する前記側面部に形成されている、請求項1に記載の基礎一体型スクリュー杭。
【請求項3】
前記杭部と前記基礎部とは、中空体である、請求項1または2に記載の基礎一体型スクリュー杭。
【請求項4】
前記長手方向において、前記側面部の寸法は前記杭部の寸法の20%以上50%以下である、請求項1から3の何れか1項に記載の基礎一体型スクリュー杭。
【請求項5】
請求項1から4の何れか1項に記載の基礎一体型スクリュー杭を製造する方法であって、
前記杭部と前記基礎部とを用意する工程と、
前記杭部と前記基礎部とを一体に溶融金属に浸漬させて表面に金属皮膜を形成させる工程と、
を含む基礎一体型スクリュー杭を製造する方法。