IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セイコー・イージーアンドジー株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-光検出器ユニット及び放射線検出器 図1
  • 特開-光検出器ユニット及び放射線検出器 図2
  • 特開-光検出器ユニット及び放射線検出器 図3
  • 特開-光検出器ユニット及び放射線検出器 図4
  • 特開-光検出器ユニット及び放射線検出器 図5
  • 特開-光検出器ユニット及び放射線検出器 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023133934
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】光検出器ユニット及び放射線検出器
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/20 20060101AFI20230920BHJP
   H01J 43/04 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
G01T1/20 L
G01T1/20 E
H01J43/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022039198
(22)【出願日】2022-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】710002462
【氏名又は名称】セイコー・イージーアンドジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】板津 英輔
【テーマコード(参考)】
2G188
【Fターム(参考)】
2G188CC21
2G188DD35
2G188FF13
(57)【要約】
【課題】接地用の導電部材が光電子増倍管に干渉することを抑制することが可能な光検出ユニット及び放射線検出器を提供する。
【解決手段】光検出ユニット10は、光電子増倍管11と、回路部12と、ハウジング13と、弾性導電部材14とを備える。ハウジング13は、光電子増倍管11及び回路部12を収容する。回路部12は、外部から基準電位が供給される接地端子12aを備える。弾性導電部材14は、ハウジング13の内部の接地部位13aと接地端子12aとを接続する。光電子増倍管11及び回路部12がハウジング13の内部に収容された状態は、弾性導電部材14の両端部間の長さが少なくとも自然長以上であり、弾性導電部材14の両端部間に少なくともゼロ以上の復元力が作用する状態である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電子増倍管と、
前記光電子増倍管を収容する導電性部材と、
前記光電子増倍管に設けられるとともに外部から基準電位が供給される接地端子と、
前記導電性部材の内部の接地部位と前記接地端子とを接続する弾性導電部材と
を備える
ことを特徴とする光検出ユニット。
【請求項2】
前記光電子増倍管が前記導電性部材の内部に収容された状態は、前記弾性導電部材の両端部間の長さが少なくとも自然長以上であり、前記弾性導電部材の両端部間に少なくともゼロ以上の復元力が作用する状態である
ことを特徴とする請求項1に記載の光検出ユニット。
【請求項3】
前記光電子増倍管が前記導電性部材の内部に収容された状態にて、前記弾性導電部材の両端部間の長さは、自然長であるとともに前記接地端子と前記接地部位との間の距離と同一である
ことを特徴とする請求項2に記載の光検出ユニット。
【請求項4】
前記弾性導電部材は、
弾性を有する第1部材と、導電性を有する第2部材と
を備える
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の光検出ユニット。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の光検出ユニットと、
前記光電子増倍管に光学的に接続されるシンチレータと
を備える
ことを特徴とする放射線検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光検出器ユニット及び放射線検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光電子増倍管が収容される接地された導電性部材を備えることによって、光電子増倍管を電磁ノイズから遮蔽する検出器が知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-271076号公報
【特許文献2】特開2016-46146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術に係る検出器の導電性部材は、光電子増倍管の回路部に設けられる接地端子と接続されることによって接地される場合がある。導電性部材と接地端子とは、例えばケーブル若しくは導線等によって又はケーブル若しくは導線等を用いずに直接的に結合及び分離される一対のコネクタによって接続される。
しかしながら、一対のコネクタを備える場合、光電子増倍管の回路部及び導電性部材が大型になるという問題が生じる。また、ケーブル又は導線等を用いる場合、予め光電子増倍管が導電性部材に収容されていない状態でケーブル又は導線等による接続を完了する必要が生じる場合がある。この場合、ケーブル又は導線等の長さは、光電子増倍管が導電性部材に収容された状態で最低限に必要な長さに比べて長く設定される。光電子増倍管が導電性部材に収容された状態では、ケーブル又は導線等の余長分は導電性部材の内部に収容される。例えば導電性部材の内部にてケーブル又は導線等の余長分が光電子増倍管の受光部の一部を遮るように干渉する場合、光電子増倍管の集光が妨げられるという問題が生じる。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、接地用の導電部材が光電子増倍管に干渉することを抑制することが可能な光検出ユニット及び放射線検出器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明は以下の態様を採用した。
(1)本発明の一態様に係る光検出ユニットは、光電子増倍管と、前記光電子増倍管を収容する導電性部材と、前記光電子増倍管に設けられるとともに外部から基準電位が供給される接地端子と、前記導電性部材の内部の接地部位と前記接地端子とを接続する弾性導電部材とを備える。
【0007】
(2)上記(1)に係る光検出ユニットでは、前記光電子増倍管が前記導電性部材の内部に収容された状態は、前記弾性導電部材の両端部間の長さが少なくとも自然長以上であり、前記弾性導電部材の両端部間に少なくともゼロ以上の復元力が作用する状態であってもよい。
【0008】
(3)上記(2)に係る光検出ユニットでは、前記光電子増倍管が前記導電性部材の内部に収容された状態にて、前記弾性導電部材の両端部間の長さは、自然長であるとともに前記接地端子と前記接地部位との間の距離と同一であってもよい。
【0009】
(4)上記(2)に係る光検出ユニットでは、前記弾性導電部材は、弾性を有する第1部材と、導電性を有する第2部材とを備えてもよい。
【0010】
(5)本発明の一態様に係る放射線検出器は、上記(1)から(4)のいずれか1つに記載の光検出ユニットと、前記光電子増倍管に光学的に接続されるシンチレータとを備える。
【発明の効果】
【0011】
上記(1)に記載の態様に係る光検出ユニットによれば、接地部位と接地端子とを接続する弾性導電部材を備えることによって、弾性導電部材が光電子増倍管の受光部を遮るように干渉することを抑制し、光電子増倍管の集光が妨げられることを抑制することができる。
【0012】
上記(2)の場合、導電性部材の内部で弾性導電部材の余長が生じることを抑制し、弾性導電部材が光電子増倍管の受光部に干渉することを抑制することができる。
【0013】
上記(3)の場合、導電性部材の内部で弾性導電部材に過剰な復元力が作用することを抑制し、弾性導電部材の劣化を抑制することができる。
【0014】
上記(4)の場合、複数の部材の組み合わせによって弾性及び導電性を付与することによって、弾性導電部材の多様性を向上させ、弾性導電部材を容易に形成することができる。
【0015】
上記(5)に記載の態様に係る放射線検出器によれば、弾性導電部材が光電子増倍管の受光部に干渉することを抑制することにより、検出効率の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る光検出ユニットを備える放射線検出器の構成を示す断面図。
図2】本発明の実施形態に係る光検出ユニットを備える放射線検出器の構成を示す断面図であって、光電子増倍管と導電性部材とを分離した状態を示す図。
図3】本発明の実施形態に係る光検出ユニットの弾性導電部材を示す斜視図。
図4】本発明の実施形態の第1変形例に係る弾性導電部材を示す斜視図。
図5】本発明の実施形態の第2変形例に係る弾性導電部材を示す斜視図。
図6】本発明の実施形態の第3変形例に係る弾性導電部材を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態に係る光検出ユニット及び放射線検出器について添付図面を参照しながら説明する。
図1は、実施形態に係る光検出ユニット10を備える放射線検出器1の構成を示す断面図である。 図2は、実施形態に係る光検出ユニット10を備える放射線検出器1の構成を示す断面図であって、光電子増倍管11とハウジング13とを分離した状態を示す図である。
図1及び図2に示すように、放射線検出器1は、例えばシンチレーション検出器であって、シンチレータ5と、光検出ユニット10とを備える。
シンチレータ5は、放射線により励起されることによって発光する。光検出ユニット10は、シンチレータ5から発する光に応じた電気信号を出力する。
光検出ユニット10は、例えば、光電子増倍管11と、回路部12と、ハウジング13と、弾性導電部材14とを備える。
【0018】
光電子増倍管11は、シンチレータ5から入射する光子によって光電子を発生させ、光電子によって発生する二次電子を増幅して、増幅した二次電子による電流を出力する。光電子増倍管11の外形は、例えば円柱状である。光電子増倍管11は、例えば、中心軸線Oに沿った両端部として、受光部である第1端部と信号出力部である第2端部とを備える。光電子増倍管11の光子入射部は、例えば必要に応じて配置されるライトガイド及び光入射窓等を介して、シンチレータ5と光学的に接続されている。光電子増倍管11の信号出力部は、例えば基板等を介して、回路部12に電気的に接続されている。
回路部12は、例えば、電源回路、電圧分割回路及び信号処理回路等を備える。回路部12は、例えば、中心軸線Oに沿った光電子増倍管11の第2端部に配置されている。回路部12は、例えば、中心軸線Oに沿った両端部のうち光電子増倍管11側の反対側の端部に、外部の機器に接続されるピン形状の複数の端子を備える。回路部12は、複数の端子のうちの少なくとも1つとして、接地用に基準電位が供給される接地端子12aを備える。
【0019】
ハウジング13は、光電子増倍管11及び回路部12を収容する。ハウジング13の外形は、例えば円筒状である。ハウジング13は、例えばアルミニウム等の金属のように導電性の材料によって形成されている。図2に示すように、光電子増倍管11及び回路部12は、例えば、中心軸線Oに沿った方向でハウジング13に対して相対的に挿入又は取り出される。ハウジング13は、弾性導電部材14に接続される接地部位13aを内部に備える。接地部位13aは、例えば、中心軸線に沿った両端部のうちシンチレータ5側の端部に設けられている。
【0020】
弾性導電部材14は、ハウジング13の内部にて接地端子12aとハウジング13の接地部位13aとに接続されることによって、ハウジング13を基準電位(例えば、接地電位)に接地する。
図3は、実施形態に係る光検出ユニット10の弾性導電部材14を示す斜視図である。
図3に示すように、弾性導電部材14は、例えば金属のばね等のように弾性を有する導電性の材料によって形成されている。弾性導電部材14は、例えば、金属の螺旋状のコイルばねである。
【0021】
図1及び図2に示すように、弾性導電部材14の両端部は、相対的に光電子増倍管11及び回路部12がハウジング13から取り出された状態(分離状態)にて、回路部12の接地端子12a及びハウジング13の接地部位13aに電気的に接続される。光電子増倍管11及び回路部12とハウジング13との分離状態は、弾性導電部材14の両端部間の長さが自然長よりも長くされ、弾性導電部材14の両端部間に復元力が作用する状態である。相対的に光電子増倍管11及び回路部12がハウジング13の内部に収容されて、光電子増倍管11とシンチレータ5とが光学的に接続されている状態(接続状態)は、弾性導電部材14の両端部間の長さが少なくとも自然長以上となり、弾性導電部材14の両端部間に少なくともゼロ以上の復元力が作用する状態である。例えば、光電子増倍管11の接続状態にて、弾性導電部材14の両端部間の長さは、自然長であるとともに回路部12の接地端子12aとハウジング13の接地部位13aとの間の距離と同一であり、弾性導電部材14の両端部間に作用する復元力はゼロである。
【0022】
上述したように、本実施形態による光検出ユニット10によれば、回路部12の接地端子12aとハウジング13の接地部位13aとを電気的に接続する弾性導電部材14を備えることによって、ハウジング13の内部で弾性導電部材14の余長が生じることを抑制することができる。弾性導電部材14が光電子増倍管11の受光部を遮るように干渉することを抑制し、光電子増倍管11の集光が妨げられることを抑制することができる。
光電子増倍管11の接続状態にて、ハウジング13の内部での弾性導電部材14の両端部間の長さは自然長であることにより、弾性導電部材14に過剰な復元力が作用することを抑制し、弾性導電部材14の劣化を抑制することができる。
【0023】
本実施形態による放射線検出器1によれば、弾性導電部材14が光電子増倍管11の受光部に干渉することを抑制することにより、検出効率の低下を抑制することができる。
【0024】
以下に、上述した実施形態の変形例について説明する。
上述した実施形態では、弾性導電部材14は弾性を有する金属によって形成されるとしたが、これに限定されず、例えば導電性を有するシリコンゴム等の導電性ゴムによって形成されてもよい。
例えば、導電性のシリコンゴムによって形成される弾性導電部材14の場合、天然の放射性同位元素(40K等)を含む天然ゴム等に比べて、バックグラウンド放射線の増大を抑制することができる。
また、弾性導電部材14は、光検出ユニット10の修理時等の特別な場合を除いて、ハウジング13の内部に取り付けられた状態で維持されるので、導電性ゴムによって形成されていても劣化を抑制することができる。さらに、シリコンゴムの場合、他のゴムに比べて劣化を抑制することができる。
【0025】
上述した実施形態では、弾性導電部材14は、単一の部材によって構成されるとしたが、これに限定されず、複数の部材によって構成されてもよい。
図4は、実施形態の第1変形例に係る弾性導電部材14Aを示す斜視図である。
図4に示すように、第1変形例の弾性導電部材14Aは、例えば、第1弾性部材21及び第2弾性部材22を備える。第1弾性部材21は、例えば金属のばね等のように弾性を有する導電性の材料によって形成されている。第1弾性部材21は、例えば、金属の螺旋状のコイルばねである。第2弾性部材22は、例えば弾性を有する材料によって形成されている。第2弾性部材22は、例えば、第1弾性部材21の外側に配置される螺旋状のコイルばねである。
第1弾性部材21及び第2弾性部材22は、例えば、弾性限界での両端部間の長さが相互に異なるように形成されてもよい。例えば、相対的に第1弾性部材21の弾性限界での両端部間の長さは第2弾性部材22の弾性限界での両端部間の長さよりも短くてもよい。
【0026】
図5は、実施形態の第2変形例に係る弾性導電部材14Bを示す斜視図である。
図5に示すように、第2変形例の弾性導電部材14Bは、例えば、第3弾性部材23及び第1導電部材24を備える。第3弾性部材23は、例えばゴム等のように弾性を有する材料によって形成されている。第3弾性部材23は、例えば、棒状のゴムである。第1導電部材24は、例えば導電性の金属等の材料によって形成されている。第1導電部材24は、例えば、第3弾性部材23の表面を被覆するように設けられる導電性及び伸縮性を有する筒状の金属の編組(金属線を網状に編んで形成される筒状部材)である。
【0027】
図6は、実施形態の第3変形例に係る弾性導電部材14Cを示す斜視図である。
図6に示すように、第3変形例の弾性導電部材14Cは、例えば、第4弾性部材25及び第2導電部材26を備える。第4弾性部材25は、例えばゴム等のように弾性を有する材料によって形成されている。第4弾性部材25は、例えば、線状のゴムである。第2導電部材26は、例えば導電性の金属等の材料によって形成されている。第2導電部材26は、例えば、線状の金属である。第3変形例の弾性導電部材14Cは、例えば、第4弾性部材25及び第2導電部材26を網状に編んで形成される筒状の編組である。
【0028】
第2変形例及び第3変形例によれば、複数の部材の組み合わせによって弾性及び導電性を付与することによって、弾性導電部材14B,14Cの多様性を向上させ、弾性導電部材14B,14Cを容易に形成することができる。
【0029】
上述した実施形態では、光電子増倍管11及び回路部12を収容するハウジング13を備えるとしたが、これに限定されず、シンチレータ5を収容するハウジングを備えてもよい。シンチレータ5を収容するハウジングの外形は、例えば、シンチレータ5の外面を覆う形状である。シンチレータ5を収容するハウジングは、例えば、金属等の導電性の材料によって形成されてもよい。シンチレータ5を収容する導電性のハウジングは、例えば、ハウジング13に電気的に接続されることによってハウジング13とともに接地されてもよい。
【0030】
本発明の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0031】
1…放射線検出器、5…シンチレータ、10…光検出ユニット、11…光電子増倍管、12…回路部、12a…接地端子、13…ハウジング(導電性部材)、13a…接地部位、14,14A,14B,14C…弾性導電部材、21…第1弾性部材、22…第2弾性部材、23…第3弾性部材(第1部材)、24…第1導電部材(第2部材)、25…第4弾性部材(第1部材)、26…第2導電部材(第2部材)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6