(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023133936
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】放射線源設置治具及び測定システム
(51)【国際特許分類】
G01T 7/00 20060101AFI20230920BHJP
【FI】
G01T7/00 C
G01T7/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022039203
(22)【出願日】2022-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】710002462
【氏名又は名称】セイコー・イージーアンドジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】板津 英輔
【テーマコード(参考)】
2G188
【Fターム(参考)】
2G188CC28
2G188DD30
2G188DD45
2G188FF30
(57)【要約】
【課題】遮蔽体内にて治具を検出器に適正に装着することが可能な放射線源設置治具及び測定システムを提供する。
【解決手段】放射線源設置治具10は、第1端部31と、第2端部32と、支持部33とを備える。第1端部31は、放射線検出器11のエンドキャップハウジング22の先端部22aに装着される。第2端部32は、放射線源10aを保持する。支持部33は、第1端部31及び第2端部32を中心軸線Pに平行な第1軸方向Qに所定距離をあけて支持する。第2端部32は、一体に形成される接触部32a及び周縁部32bを備える。接触部32aは、放射線源10aに接する。周縁部32bは、接触部32aの周縁に設けられるとともに、第1軸方向Qにて接触部32aの先端面32Aよりも外方に突出しない先端面32Bを有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮蔽体の内部にて放射線検出器のエンドキャップに対して放射線源を位置決め固定する放射線源設置治具であって、
前記エンドキャップの先端部に装着される第1端部と、
前記放射線源を保持する第2端部と、
前記第1端部及び前記第2端部を中心軸線に平行な軸方向に所定距離をあけて支持する支持部と
を備え、
前記第2端部は、
前記放射線源に接する接触部と、
前記接触部の周縁に設けられるとともに、前記軸方向にて前記接触部の先端面よりも外方に突出しない先端面を有する周縁部と
を備える
ことを特徴とする放射線源設置治具。
【請求項2】
前記周縁部の前記先端面は、
前記軸方向である第1軸方向を前記エンドキャップの中心軸線に平行な第2軸方向に対して所定角度以下で傾斜させる場合に、前記第2軸方向にて前記放射線源及び前記接触部の先端よりも外方に突出しない
ことを特徴とする請求項1に記載の放射線源設置治具。
【請求項3】
前記第1端部は、前記エンドキャップに対して第1状態、第2状態及び第3状態に姿勢を変化させるために必要な大きさに形成され、
前記第1状態は、前記第1軸方向を前記第2軸方向に対して前記所定角度以下で傾斜させることによって、前記エンドキャップの前記先端部の一部のみが前記第1端部の内部に挿入された状態であり、
前記第2状態は、前記第1状態から徐々に前記第2軸方向に対する前記第1軸方向の傾斜を低減させることによって前記第1端部の内部に挿入される前記エンドキャップの前記先端部の部位を増大させる又は前記第3状態から徐々に前記第2軸方向に対する前記第1軸方向の傾斜を増大させることによって前記第1端部の内部に挿入される前記エンドキャップの前記先端部の部位を低減させる状態であり、
前記第3状態は、前記第1軸方向及び前記第2軸方向を平行として前記エンドキャップの前記先端部の全てが前記第1端部の内部に挿入された状態である
ことを特徴とする請求項2に記載の放射線源設置治具。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の放射線源設置治具と、
前記遮蔽体と、
前記遮蔽体の内部にて前記放射線源設置治具が装着される前記放射線検出器と
を備える
ことを特徴とする測定システム。
【請求項5】
遮蔽体と、
電磁波又は音波の検出器と、
前記遮蔽体の内部にて前記検出器のヘッドに対して電磁波又は音波の発生源を位置決め固定する治具と
を備え、
前記治具は、
前記ヘッドの先端部に装着される第1端部と、
前記発生源を保持する第2端部と、
前記第1端部及び前記第2端部を中心軸線に平行な軸方向に所定距離をあけて支持する支持部と
を備え、
前記第2端部は、
前記発生源に接する接触部と、
前記接触部の周縁に設けられるとともに、前記軸方向にて前記接触部の先端面よりも外方に突出しない先端面を有する周縁部と
を備える
ことを特徴とする測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、放射線源設置治具及び測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、放射線検出器の相対効率等の測定を行う場合に放射線検出器に対する所定位置に標準線源等の放射線源を位置決め固定する線源ホルダが知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】「放射能測定法シリーズ 7 ゲルマニウム半導体検出器によるガンマ線スペクトロメトリー」、原子力規制委員会、令和2年、p.178
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術に係る線源ホルダを遮蔽体内で放射線検出器に装着する場合には、例えば放射線検出器の交換等に起因するヘッド(エンドキャップの先端等)の位置の変化に対応して、線源ホルダを適宜の放射線検出器のヘッドに装着するために必要な空間を遮蔽体内に確保する必要が生じる。しかしながら、所望の遮蔽性能を確保しながら遮蔽体内の空間を増大させる場合、遮蔽体の質量の増大に伴って、遮蔽体を設置する場所が限定されてしまうとともに、遮蔽体の構成に要する費用が嵩むという問題が生じる。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、遮蔽体内にて治具を検出器に適正に装着することが可能な放射線源設置治具及び測定システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明は以下の態様を採用した。
(1)本発明の一態様に係る放射線源設置治具は、遮蔽体の内部にて放射線検出器のエンドキャップに対して放射線源を位置決め固定する放射線源設置治具であって、前記エンドキャップの先端部に装着される第1端部と、前記放射線源を保持する第2端部と、前記第1端部及び前記第2端部を中心軸線に平行な軸方向に所定距離をあけて支持する支持部とを備え、前記第2端部は、前記放射線源に接する接触部と、前記接触部の周縁に設けられるとともに、前記軸方向にて前記接触部の先端面よりも外方に突出しない先端面を有する周縁部とを備える。
【0007】
(2)上記(1)に係る放射線源設置治具では、前記周縁部の前記先端面は、前記軸方向である第1軸方向を前記エンドキャップの中心軸線に平行な第2軸方向に対して所定角度以下で傾斜させる場合に、前記第2軸方向にて前記放射線源及び前記接触部の先端よりも外方に突出しなくてもよい。
【0008】
(3)上記(2)に係る放射線源設置治具では、前記第1端部は、前記エンドキャップに対して第1状態、第2状態及び第3状態に姿勢を変化させるために必要な大きさに形成され、前記第1状態は、前記第1軸方向を前記第2軸方向に対して前記所定角度以下で傾斜させることによって、前記エンドキャップの前記先端部の一部のみが前記第1端部の内部に挿入された状態であり、前記第2状態は、前記第1状態から徐々に前記第2軸方向に対する前記第1軸方向の傾斜を低減させることによって前記第1端部の内部に挿入される前記エンドキャップの前記先端部の部位を増大させる又は前記第3状態から徐々に前記第2軸方向に対する前記第1軸方向の傾斜を増大させることによって前記第1端部の内部に挿入される前記エンドキャップの前記先端部の部位を低減させる状態であり、前記第3状態は、前記第1軸方向及び前記第2軸方向を平行として前記エンドキャップの前記先端部の全てが前記第1端部の内部に挿入された状態であってもよい。
【0009】
(4)本発明の一態様に係る測定システムは、上記(1)から(3)の何れか1つに記載の放射線源設置治具と、前記遮蔽体と、前記遮蔽体の内部にて前記放射線源設置治具が装着される前記放射線検出器とを備える。
【0010】
(5)本発明の一態様に係る測定システムは、遮蔽体と、電磁波又は音波の検出器と、前記遮蔽体の内部にて前記検出器のヘッドに対して電磁波又は音波の発生源を位置決め固定する治具とを備え、前記治具は、前記ヘッドの先端部に装着される第1端部と、前記発生源を保持する第2端部と、前記第1端部及び前記第2端部を中心軸線に平行な軸方向に所定距離をあけて支持する支持部とを備え、前記第2端部は、前記発生源に接する接触部と、前記接触部の周縁に設けられるとともに、前記軸方向にて前記接触部の先端面よりも外方に突出しない先端面を有する周縁部とを備える。
【発明の効果】
【0011】
上記(1)に記載の態様に係る放射線源設置治具によれば、例えば放射線源が接触部の先端面よりも外方に突出する場合等にて、放射線源設置治具の軸方向をエンドキャップの軸方向に対して傾けた状態で周縁部の先端面が放射線源及び接触部の先端よりも外方に突出することを抑制することができる。放射線源設置治具のエンドキャップに対する取り付け初期又は取り外し終了時にて、放射線源設置治具の軸方向をエンドキャップの軸方向に対して傾けることにより、エンドキャップの一部が第1端部の内部に挿入される。例えば放射線源設置治具の軸方向とエンドキャップの軸方向とが平行である場合のように、エンドキャップの一部が第1端部の内部に挿入されていない場合に比べて、エンドキャップの軸方向での放射線源及び接触部の先端とエンドキャップの先端面との間の距離を小さくすることができる。これにより、遮蔽体内の空間を増大させる必要が生じることを抑制して、遮蔽体の内部にて、放射線検出器のエンドキャップに対する放射線源設置治具の適正な取り付け及び取り外しを行うことができる。
【0012】
上記(2)の場合、第1軸方向を第2軸方向に対して所定角度以下で傾斜させる状態で周縁部の先端面が放射線源及び接触部の先端よりも外方に突出することを防ぐことができる。放射線源設置治具のエンドキャップに対する取り付け初期又は取り外し終了時にて、第1軸方向を第2軸方向に対して所定角度以下で傾斜させることにより、第2軸方向での放射線源及び接触部の先端とエンドキャップの先端面との間の距離を小さくすることができる。これにより、遮蔽体の内部にて放射線検出器のエンドキャップに対して放射線源設置治具の取り付け及び取り外しを行う場合に、遮蔽体内の空間を増大させる必要が生じることを抑制することができる。
【0013】
上記(3)の場合、第1軸方向を第2軸方向に対して所定角度以下で傾斜させる状態であっても、放射線検出器のエンドキャップに対する放射線源設置治具の取り付け及び取り外しを適正に行うことができる。
【0014】
上記(4)に記載の態様に係る測定システムによれば、遮蔽体の内部にて放射線検出器のエンドキャップに対して放射線源設置治具の取り付け及び取り外しを行う場合に、遮蔽体内の空間を増大させる必要が生じることを抑制することができる。これにより、遮蔽体の質量の増大及び遮蔽体を設置する場所が限定されてしまうことを抑制し、遮蔽体の構成に要する費用が嵩むことを抑制することができる。
【0015】
上記(5)に記載の態様に係る測定システムによれば、遮蔽体の内部にて検出器のヘッドに対して治具の取り付け及び取り外しを行う場合に、遮蔽体内の空間を増大させる必要が生じることを抑制することができる。これにより、遮蔽体の質量の増大及び遮蔽体を設置する場所が限定されてしまうことを抑制し、遮蔽体の構成に要する費用が嵩むことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係る放射線源設置治具を備える測定システムの一例を示す構成図であり、放射線遮蔽体を破断して示す図。
【
図2】本発明の実施形態に係る放射線源設置治具の断面図。
【
図3】本発明の実施形態に係る放射線源設置治具を放射線遮蔽体の内部にて放射線検出器に装着する状態の一例を示す断面図。
【
図4】本発明の実施形態に係る放射線源設置治具の第1状態及び第1比較例の状態を示す断面図。
【
図5】本発明の実施形態に係る放射線源設置治具の第1状態及び第2比較例の放射線源設置治具を示す断面図。
【
図6】本発明の実施形態の第1変形例に係る放射線源設置治具の第1状態及び第2比較例の放射線源設置治具を示す断面図。
【
図7】本発明の実施形態の第1変形例に係る放射線源設置治具を第1軸方向から見た図。
【
図8】本発明の実施形態の第2変形例に係る放射線源設置治具の第1状態及び第3状態を示す断面図。
【
図9】本発明の実施形態の第3変形例に係る放射線源設置治具の第1状態及び第3状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態に係る放射線源設置治具及び測定システムについて添付図面を参照しながら説明する。
<測定システム>
図1は、実施形態に係る放射線源設置治具10を備える測定システム1の一例を示す構成図であり、放射線遮蔽体12を破断して示す図である。
図1に示すように、本実施形態の測定システム1は、放射線源設置治具10と、放射線検出器11と、放射線遮蔽体12とを備える。さらに、測定システム1は、例えば、架台14と、ベース15と、検出器台16と、位置調整機構17と、スライド機構18とを備える。
本実施形態の放射線源設置治具10は、放射線遮蔽体12の内部にて放射線検出器11に対して放射線源10aを位置決め及び固定するために用いられる。放射線検出器11は、放射線遮蔽体12の内部で位置決め固定された放射線源10aから放出される放射線を検出する。
以下において、3次元空間で互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸の各軸方向は、各軸に平行な方向である。例えば、Z軸方向は測定システム1の上下方向に平行であり、Y軸方向は測定システム1の左右方向に平行であり、X軸方向は測定システム1の前後方向に平行である。
【0018】
放射線検出器11は、例えばゲルマニウム半導体検出器又はシリコン半導体検出器等の半導体検出器である。
放射線検出器11は、垂直型のクライオスタット21において、放射線の入射窓(図示略)を有するエンドキャップハウジング22の内部の真空領域に、放射線に対して有感なゲルマニウム結晶又はシリコン結晶等の半導体結晶(図示略)を保持している。
【0019】
クライオスタット21の内部は、デュワー23の内部に貯溜された液体窒素に浸漬された銅からなる冷却棒(図示略)との熱的な接触により冷却されている。
半導体結晶に形成された結晶電極(図示略)はエンドキャップハウジング22の内部に収容された電荷型前置増幅器(図示略)に接続されている。
電荷型前置増幅器は、半導体結晶に入射した放射線のエネルギーに応じた波高値を有する出力信号パルスを外部に露出した出力端子(図示略)から出力する。
【0020】
放射線遮蔽体12は、放射線検出器11及び測定対象の放射線源10aを保持する放射線源設置治具10を内部に収容して、放射線検出器11をバックグラウンド放射線から遮蔽する。
放射線遮蔽体12の外形は、例えば、複数の部材の組み合わせによる箱型に形成されている。複数の部材は、例えば、第1部材12a、第2部材12b、第3部材12c、第4部材12d及び第5部材12eである。第1部材12aは、放射線遮蔽体12の上下方向(例えば、鉛直方向等)での上部を形成する。第2部材12bは、放射線遮蔽体12の上下方向に直交する前後方向及び左右方向(例えば、水平方向等)で一体化された側部及び後部を形成する。第3部材12c及び第4部材12dは、放射線遮蔽体12の上下方向での下部を形成する。第3部材12cには前後方向の前端から後方に向かって、放射線検出器11のエンドキャップハウジング22が挿入される空間(欠損部)が形成されている。第4部材12dは、第3部材12cの欠損部の前方に配置され、前後方向に変位することによって第3部材12cに着脱される。第5部材12eは、放射線遮蔽体12の前後方向での前部を形成する。第5部材12eは、第1部材12a、第2部材12b、第3部材12c及び第4部材12dによって形成される開口を開閉する開閉扉を形成する。
【0021】
放射線遮蔽体12は、鉛を有する鉛遮蔽部13aと、鉛遮蔽部13aの表面を被覆するように設けられる鋼材を有する鋼材遮蔽部13bと、鋼材遮蔽部13bの表面を被覆する腐食防止用等の非導電性の塗膜(図示略)とを備える。放射線遮蔽体12は、例えば、無酸素銅を有する第1内張(図示略)と、アクリル等の樹脂を有する第2内張(図示略)とを、内面上に備える。
【0022】
測定システム1は、例えば、架台14と、ベース15と、検出器台16と、位置調整機構17と、スライド機構18とを備える。
架台14は、放射線遮蔽体12を支持する。架台14の外形は、例えば箱型である。架台14は、腐食防止用等の非導電性の塗膜14aによって被覆された表面を有する鋼材14b等の材料によって形成されている。架台14は、内部を開放及び閉塞する開閉扉14cを前後方向の前端に備える。架台14はデュワー23を内部に収容する。
ベース15は、架台14を支持する。ベース15の外形は、例えば板状である。ベース15は、腐食防止用等の非導電性の塗膜によって被覆された表面を有する鋼材等の材料によって形成されている。
【0023】
検出器台16は、架台14の内部にて、放射線検出器11のデュワー23を支持する。検出器台16の外形は、例えば板状である。検出器台16は、アルミニウム等の金属の材料によって形成されている。
位置調整機構17は、検出器台16の上下方向の位置を調整する。
スライド機構18は、検出器台16の前後方向のスライド移動によって、放射線検出器11のデュワー23を架台14の内部に搬入及び内部から搬出する。
【0024】
<放射線源設置治具>
実施形態の放射線源設置治具10は、いわゆる線源ホルダであって、放射線遮蔽体12の内部にて放射線検出器11のエンドキャップハウジング22に対して放射線源10aを位置決め固定する。
図2は、実施形態に係る放射線源設置治具10の断面図である。
図2に示すように、放射線源設置治具10は、例えば、第1端部31と、第2端部32と、支持部33とを備える。
第1端部31は、放射線検出器11のエンドキャップハウジング22の先端部22aに装着される。第1端部31の外形は、例えば中空円柱状のエンドキャップハウジング22に対応して、軸方向に貫通孔が形成された端部を有する円筒状(中空円柱状)のキャップ型である。第1端部31の本体(筒状部)の内径は、少なくともエンドキャップハウジング22の外径よりも大きく形成されている。
【0025】
第2端部32は、放射線源10aを保持する。第2端部32の外形は、例えば円板状の放射線源10aに対応して、軸方向に同軸に凹部及び貫通孔が形成された中空の円錐台状である。第2端部32は、例えば、一体に形成される接触部32a及び周縁部32bを備える。
接触部32aは、放射線源10aの周縁に接する。接触部32aの外形は、例えば軸方向に同軸に凹部及び貫通孔が形成された円環板状である。接触部32aは、例えば、放射線源設置治具10の中心軸線Pに平行な軸方向(第1軸方向)Qにて、放射線源10aを接触部32aの先端面32Aよりも外方に突出させた状態で固定する。第1軸方向Qの外方は、第1軸方向Qでの第2端部32を基準とする第1端部31側に対する反対側の方向である。接触部32aの先端面32Aは、例えば、第1軸方向Qに直交し、第1軸方向Qでの位置が一定である。
【0026】
周縁部32bは、接触部32aの周縁に設けられる。周縁部32bの外形は、例えば軸方向に貫通孔が形成された中空の円錐状であり、第1軸方向Qの外方に向かって徐々に外径が減少する先細り形状である。周縁部32bは、第1軸方向Qにて接触部32aの先端面32Aよりも外方に突出しない先端面32Bを有する。周縁部32bの先端面32Bは、例えば円錐台の側面のように、中心軸線Pから直交方向に離れることに伴い、漸次に第1軸方向Qでの第1端部31との間の距離を減少傾向に変化させるようにして、第1軸方向Qの直交方向に対して所定角度で傾斜している。周縁部32bの先端面32Bは、後述するように、第1軸方向Qをエンドキャップハウジング22の中心軸線Oに平行な第2軸方向(例えば、Z軸方向)Sに対して所定角度θ以下で傾斜させる場合に、第2軸方向Sにて放射線源10a及び接触部32aの先端よりも外方に突出しないように形成されている。
【0027】
支持部33は、第1端部31及び第2端部32を第1軸方向Qに所定距離をあけて支持する。支持部33の外形は、例えば円筒状である。例えば、支持部33の外径は、第1端部31の外径よりも小さく、第2端部32の外径と同一である。
【0028】
図3は、実施形態に係る放射線源設置治具10を放射線遮蔽体12の内部にて放射線検出器11に装着する状態の一例を示す断面図である。
図4は、実施形態に係る放射線源設置治具10の第1状態及び第1比較例の状態を示す断面図である。
図3に示すように、放射線源設置治具10は、放射線遮蔽体12の内部にて放射線検出器11のエンドキャップハウジング22の先端部22aに装着される場合に、中心軸線Pの第1軸方向Qをエンドキャップハウジング22の中心軸線Oに平行な第2軸方向Sに対して所定角度θ以下で傾斜させた状態で放射線遮蔽体12の内部に挿入される。放射線源設置治具10は、第1軸方向Qを第2軸方向Sに対して所定角度θ以下で傾斜させることによって、例えば第1軸方向Qを第2軸方向Sに対して傾斜させない場合に比べて、第2軸方向Sでの放射線遮蔽体12の第1部材12aの内面(天面)12Aとの間の距離を低減させる。第2軸方向Sに対する第1軸方向Qの傾斜方向は、例えば、エンドキャップハウジング22の中心軸線Oの直交方向でのエンドキャップハウジング22に対する移動方向の反対方向である。
【0029】
図4に示すように、エンドキャップハウジング22に対して放射線源設置治具10を取り付ける際の初期又は放射線源設置治具10を取り外す際の終了時にて、放射線源設置治具10は、第1軸方向Qを第2軸方向Sに対して所定角度θ以下で傾斜させた状態でエンドキャップハウジング22の中心軸線Oの直交方向に移動させられる。
放射線源設置治具10は、エンドキャップハウジング22に対する取り付け時及び取り外し時にて、例えば、第1状態、第2状態及び第3状態に姿勢が変化させられる。
【0030】
第1状態は、中心軸線Pの第1軸方向Qを中心軸線Oの第2軸方向Sに対して所定角度θ以下で傾斜させることによって、エンドキャップハウジング22の先端部22aの一部のみが第1端部31の内部に挿入された状態である。
第2状態は、第1状態から徐々に第2軸方向Sに対する第1軸方向Qの傾斜を低減させることによって第1端部31の内部に挿入されるエンドキャップハウジング22の先端部22aの部位を増大させる又は第3状態から徐々に第2軸方向Sに対する第1軸方向Qの傾斜を増大させることによって第1端部31の内部に挿入されるエンドキャップハウジング22の先端部22aの部位を低減させる状態である。
第3状態は、第1軸方向Q及び第2軸方向Sを平行としてエンドキャップハウジング22の先端部22aの全てが第1端部31の内部に挿入された状態である。
なお、放射線源設置治具10の第1端部31は、エンドキャップハウジング22に対して第1状態、第2状態及び第3状態に姿勢を変化させるために必要な大きさに形成されている。
【0031】
第2軸方向Sでの放射線源設置治具10の放射線源10a及び接触部32aの先端とエンドキャップハウジング22の先端部22aの表面(先端面)との間の距離について、第1状態の距離hは第1比較例の状態での距離h1よりも小さい。第1比較例の状態は、放射線源設置治具10の取り付け初期又は取り外し終了時にて、第1軸方向Qと第2軸方向Sとを平行として放射線源設置治具10をエンドキャップハウジング22の中心軸線Oの直交方向に移動させる状態である。
第2軸方向Sに対する第1軸方向Qの傾斜に応じてエンドキャップハウジング22の先端部22aの一部が第1端部31の内部に挿入されることにより、先端部22aが第1端部31の内部に挿入されていない場合に比べて、第1状態の距離hは第1比較例の状態での距離h1よりも小さい。
【0032】
図5は、実施形態に係る放射線源設置治具10の第1状態及び第2比較例の放射線源設置治具40を示す断面図である。
図5に示す第2比較例の放射線源設置治具40は、例えば、実施形態の放射線源設置治具10にて第2端部32の代わりに第3端部41を備える。第3端部41は、放射線源10aを保持する。第3端部41の外形は、例えば円板状の放射線源10aに対応して、軸方向に同軸に凹部及び貫通孔が形成された円環板状である。第3端部41は、例えば、第2比較例の放射線源設置治具40の中心軸線P1に平行な軸方向(第3軸方向)Q1にて、放射線源10aを先端面41Aよりも外方に突出させた状態で固定する。第3軸方向Q1の外方は、第3軸方向Q1での第3端部41を基準とする第1端部31側に対する反対側の方向である。第3端部41の先端面41Aは、第3軸方向Q1の直交方向に平行であり、第3軸方向Q1での位置が一定である。
【0033】
第2比較例の放射線源設置治具40の第3端部41は、実施形態の放射線源設置治具10の接触部32aを含み、第3端部41の先端面41Aは、接触部32aの先端面32Aを含む。例えば第1軸方向Q及び第3軸方向Q1を平行とした場合、各軸方向Q,Q1にて、第2比較例での第3端部41の先端面41Aは、実施形態での接触部32aの先端面32Aと同一位置であるとともに、接触部32aの先端面32Bよりも外方に突出している。第2軸方向Sでの第2比較例の放射線源設置治具40の放射線源10a及び第3端部41の先端とエンドキャップハウジング22の先端部22aの表面(先端面)との間の距離h2は、実施形態での第1状態の距離hよりも大きい。
【0034】
上述したように、本実施形態による放射線源設置治具10によれば、エンドキャップハウジング22に対する取り付け初期又は取り外し終了時にて、第1軸方向Qを第2軸方向Sに対して傾斜させることにより、第2軸方向Sでの放射線源10a及び接触部32aの先端とエンドキャップハウジング22の表面(先端面)との間の距離の増大を抑制することができる。放射線遮蔽体12の内部にて放射線検出器11のエンドキャップハウジング22に対して放射線源設置治具10の取り付け及び取り外しを行う場合に、放射線遮蔽体12内の空間を増大させる必要が生じることを抑制することができる。
放射線源設置治具10の第1端部31は、エンドキャップハウジング22に対して第1状態、第2状態及び第3状態に姿勢を変化させるために必要な大きさに形成されているので、エンドキャップハウジング22に対する放射線源設置治具10の取り付け及び取り外しを適正に行うことができる。
【0035】
本実施形態による測定システム1によれば、放射線遮蔽体12の内部の空間を増大させる必要が生じることを抑制することができ、放射線遮蔽体12の質量の増大及び放射線遮蔽体12を設置する場所が限定されてしまうことを抑制し、放射線遮蔽体12の構成に要する費用が嵩むことを抑制することができる。
【0036】
以下に、上述した実施形態の変形例について説明する。
上述した実施形態では、第2端部32の周縁部32bは第1軸方向Qに先細り形状であるとしたが、これに限定されない。例えば、周縁部32bの先端面32Bの少なくとも一部が、第1軸方向Qにて接触部32aの先端面32Aよりも外方に突出しないように形成されてもよい。
図6は、実施形態の第1変形例に係る放射線源設置治具10Aの第1状態及び第2比較例の放射線源設置治具40を示す断面図である。
図7は、実施形態の第1変形例に係る放射線源設置治具10Aを第1軸方向Qから見た図である。
図6及び
図7に示すように、第1変形例に係る放射線源設置治具10Aは、実施形態での第2端部32の代わりに、第1変形例の第2端部51を備える。第1変形例の第2端部51は、例えば、一体に形成される実施形態での接触部32a及び第1変形例の周縁部51aを備える。
【0037】
第1変形例の周縁部51aは、接触部32aの周縁に設けられる。周縁部51aの外形は、例えば軸方向に貫通孔が形成された中空の円柱状である。周縁部51aは、第1先端面51A及び第2先端面51Bを備える。第1先端面51Aは、第1軸方向Qに直交し、第1軸方向Qにて接触部32aの先端面32Aと同一位置である。第2先端面51Bは、実施形態の先端面32Bと同様に、第1軸方向Qにて接触部32aの先端面32Aよりも外方に突出しない。第2先端面51Bは、例えば、中心軸線Pから直交方向に離れることに伴い、漸次に第1軸方向Qでの第1端部31との間の距離を減少傾向に変化させるようにして、第1軸方向Qの直交方向に対して所定角度で傾斜している。第2先端面51Bは、第1軸方向Qを第2軸方向Sに対して所定角度θ以下で傾斜させる場合に、実施形態の先端面32Bと同様に、第2軸方向Sにて放射線源10a及び接触部32aの先端よりも外方に突出しないように形成されている。
【0038】
上述した実施形態では、第2端部32の周縁部32bは第1軸方向Qに先細り形状であるとしたが、これに限定されない。例えば、周縁部32bの先端面32Bは、第1軸方向Qに直交しつつ、接触部32aの先端面32Aよりも第1端部31側に位置するように形成されてもよい。
図8は、実施形態の第2変形例に係る放射線源設置治具10Bの第1状態及び第3状態を示す断面図である。
図8に示すように、第2変形例に係る放射線源設置治具10Bは、実施形態での第2端部32の代わりに、第2変形例の第2端部52を備える。第2変形例の第2端部52は、例えば、一体に形成される実施形態での接触部32a及び第2変形例の周縁部52aを備える。
【0039】
第2変形例の周縁部52aは、接触部32aの周縁に設けられる。周縁部52aの外形は、例えば軸方向に貫通孔が形成された円環板状である。周縁部52aの先端面52Aは、第1軸方向Qに直交する。先端面52Aは、第1軸方向Qにて接触部32aの先端面32Aよりも第1端部31側に位置する。先端面52Aは、第1軸方向Qを第2軸方向Sに対して所定角度θ以下で傾斜させる場合に、実施形態の先端面32Bと同様に、第2軸方向Sにて放射線源10a及び接触部32aの先端よりも外方に突出しないように形成されている。
【0040】
上述した実施形態では、支持部33の外形は円筒状であるとしたが、これに限定されない。例えば、支持部33の外形は棒状等の他の形状に形成されてもよい。
図9は、実施形態の第3変形例に係る放射線源設置治具10Cの第1状態及び第3状態を示す断面図である。
図9に示すように、第3変形例に係る放射線源設置治具10Cは、実施形態の第2変形例での支持部33の代わりに、少なくとも1つの第3変形例の支持部53を備える。第3変形例の放射線源設置治具10Cは、例えば2つの支持部53を備える。第3変形例の支持部53の外形は、例えば棒状である。第3変形例の支持部53の第1軸方向Qの両端部は、第1端部31に形成された凹部31a及び第2端部52に形成された凹部52bに固定される。第1端部31の凹部31aは、例えば、第1軸方向Qでの第1端部31の第2端部52側の表面上に形成されている。第2端部52の凹部52bは、例えば、第1軸方向Qでの第2端部52の第1端部31側の表面上に形成されている。
【0041】
上述した実施形態では、測定システム1は、放射線源設置治具10と、放射線検出器11と、放射線遮蔽体12とを備えるとしたが、これに限定されない。例えば、実施形態の第4変形例に係る測定システムは、放射線以外の電磁波又は音波等を測定してもよい。
第4変形例に係る測定システムは、例えば、電磁波又は音波に対する遮蔽体及び検出器と、遮蔽体の内部にて検出器のヘッドに対して電磁波又は音波の発生源を位置決め固定する治具とを備える。
治具は、検出器のヘッドの先端部に装着される第1端部と、発生源を保持する第2端部と、第1端部及び第2端部を中心軸線に平行な軸方向に所定距離をあけて支持する支持部とを備える。
第2端部は、発生源に接する接触部と、接触部の周縁に設けられるとともに、軸方向にて接触部の先端面よりも外方に突出しない先端面を有する周縁部とを備える。
【0042】
本発明の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0043】
1…測定システム、10,10A,10B,10C…放射線源設置治具、10a…放射線源、11…放射線検出器、12…放射線遮蔽体、22…エンドキャップハウジング、22a…先端部、31…第1端部、32…第2端部、32a…接触部、32A…先端面、32b…周縁部、32B…先端面、33…支持部、51…第2端部、51a…周縁部、51A…第1先端面、51B…第2先端面、52…第2端部、52a…周縁部、52A…先端面、53…支持部、O…中心軸線、P…中心軸線、Q…第1軸方向、S…第2軸方向、θ…所定角度。