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  • 特開-電力量算出装置 図1
  • 特開-電力量算出装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023133941
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】電力量算出装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20230920BHJP
   B60L 1/00 20060101ALI20230920BHJP
   B60L 58/14 20190101ALI20230920BHJP
【FI】
H02J7/00 302B
H02J7/00 P
H02J7/00 B
B60L1/00 L
B60L58/14
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022039212
(22)【出願日】2022-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坪谷 直樹
【テーマコード(参考)】
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA08
5G503DA02
5G503DA17
5G503EA05
5G503FA06
5G503GD03
5G503GD06
5H125AA20
5H125AC12
5H125BC15
5H125BC25
5H125EE27
(57)【要約】
【課題】架装車両における効率的な電力供給を実現できる電力量算出装置を提供すること。
【解決手段】電力量算出装置は、バッテリから架装装置へ供給可能な架装供給可能電力を算出する算出部と、その架装供給可能電力を架装装置へ通知する通知部と、を有する。算出部は、バッテリの残容量の低下またはバッテリの出力制限が発生した場合、架装装置において所定時間の間に最低限必要となる架装電力量を算出し、その架装電力量に基づいて上記架装供給可能電力を算出する。算出部は、バッテリの残容量と、高優先装置において所定時間の間に必要となる高優先電力量とに基づいて、所定時間の間に架装装置へ供給可能な上限電力量を算出する。算出部は、上限電力量と、架装電力量とに基づいて、所定時間の間に低優先装置へ供給可能な低優先電力量を算出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリから供給される電力を用いて動作し、前記電力の供給の優先順位が設定された架装装置およびその他装置を搭載した架装車両で用いられる電力量算出装置であって、
前記バッテリから前記架装装置へ供給可能な架装供給可能電力を算出する算出部と、
前記架装供給可能電力を前記架装装置へ通知する通知部と、を有し、
前記その他装置が、前記優先順位が前記架装装置よりも高く設定されている高優先装置と、前記優先順位が前記架装装置よりも低く設定されている低優先装置とを含んでおり、
かつ、前記バッテリの残容量の低下または前記バッテリの出力制限が発生した場合、
前記算出部は、
前記架装装置において所定時間の間に最低限必要となる架装電力量を算出するとともに、前記架装電力量に基づいて前記架装供給可能電力を算出し、
前記バッテリの残容量から前記高優先装置において所定時間の間に必要となる高優先電力量を差し引くことで、前記所定時間の間に前記架装装置へ供給可能な上限電力量を算出し、
前記上限電力量から前記架装電力量を差し引くことで、前記所定時間の間に前記低優先装置へ供給可能な低優先電力量を算出する、
電力量算出装置。
【請求項2】
前記所定時間は、
前記架装車両が現在地から目的地まで走行するのに要する時間である、
請求項1に記載の電力量算出装置。
【請求項3】
前記所定時間は、
前記架装車両が走行不能状態となってから前記架装車両の救助が開始されるまでに要する時間である、
請求項1に記載の電力量算出装置。
【請求項4】
前記優先順位を、前記架装車両の状況に応じて変更する変更部をさらに有する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の電力量算出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、架装車両で用いられる電力量算出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動の架装装置を搭載した架装車両において、車載バッテリの残容量の増減を監視し、その結果に基づいて架装装置への供給電力を制御する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。なお、架装装置は作業機器と言ってもよく、架装車両は作業車両と言ってもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-189409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
架装車両には、架装装置のほかにも様々な電動装置が搭載されているため、架装装置とその他の電動装置に対する効率的な電力供給の実現が望まれている。
【0005】
本開示の一態様の目的は、架装車両における効率的な電力供給を実現することができる電力量算出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る電力量算出装置は、バッテリから供給される電力を用いて動作し、前記電力の供給の優先順位が設定された架装装置およびその他装置を搭載した架装車両で用いられる電力量算出装置であって、前記バッテリから前記架装装置へ供給可能な架装供給可能電力を算出する算出部と、前記架装供給可能電力を前記架装装置へ通知する通知部と、を有し、前記その他装置が、前記優先順位が前記架装装置よりも高く設定されている高優先装置と、前記優先順位が前記架装装置よりも低く設定されている低優先装置とを含んでおり、かつ、前記バッテリの残容量の低下または前記バッテリの出力制限が発生した場合、前記算出部は、前記架装装置において所定時間の間に最低限必要となる架装電力量を算出するとともに、前記架装電力量に基づいて前記架装供給可能電力を算出し、前記バッテリの残容量から前記高優先装置において所定時間の間に必要となる高優先電力量を差し引くことで、前記所定時間の間に前記架装装置へ供給可能な上限電力量を算出し、前記上限電力量から前記架装電力量を差し引くことで、前記所定時間の間に前記低優先装置へ供給可能な低優先電力量を算出する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、架装車両における効率的な電力供給を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一態様に係る架装車両および電力量算出装置の構成を模式的に示す図
図2】本開示の一態様に係る電力量算出装置の動作の流れを示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0010】
まず、図1を用いて、本実施の形態の架装車両1および電力量算出装置100の構成について説明する。図1は、架装車両1および電力量算出装置100の構成を模式的に示す図である。
【0011】
架装車両1は、バッテリ10、架装装置20、その他装置30、および電力量算出装置100を有する。
【0012】
バッテリ10は、充放電可能な二次電池である。バッテリ10は、架装装置20およびその他装置30のそれぞれと電気的に接続されている(図示略)。
【0013】
架装装置20は、バッテリ10から供給される電力を用いて動作する電動装置である。架装装置20としては、例えば、生コンクリートを攪拌するミキシングドラム、荷室内を冷却する冷却装置等が挙げられるが、これらに限定されない。なお、図示は省略するが、架装装置20には、その動作を制御する制御用コンピュータ(以下、制御部という)が含まれる。
【0014】
その他装置30は、架装装置20以外の装置であって、バッテリ10から供給される電力を用いて動作する電動装置である。図1では、その他装置30を1つのみ図示しているが、その他装置30は、複数存在するものとする。その他装置30としては、例えば、走行用モータ、走行制御用コンピュータ、DCDCコンバータ、バッテリヒータ、センサ類、灯火類、ワイパー、エアコン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0015】
架装装置20および他の装置30のそれぞれには、バッテリ10から電力供給を受けることができる順序を示す優先順位が設定されている。この優先順位は、可変である。また、架装装置20および他の装置30のそれぞれには、消費電力が定められている。
【0016】
本実施の形態では、その他装置30が、優先順位が架装装置20よりも高く設定されている高優先装置と、優先順位が架装装置20よりも低く設定されている低優先装置とを含む場合を例に挙げて説明する。高優先装置および低優先装置は、それぞれ、1つだけであってもよいし、複数あってもよい。
【0017】
電力量算出装置100は、架装車両1における効率的な電力供給を実現するために、後述する各種処理を行うコンピュータである。
【0018】
図示は省略するが、電力量算出装置100は、ハードウェアとして、例えば、CPU(Central Processing Unit)、コンピュータプログラムを格納したROM(Read Only Memory)、作業用メモリであるRAM(Random Access Memory)、入力ポート、出力ポート等を有する。
【0019】
以下に説明する電力量算出装置100の各機能は、CPUがROMから読み出したコンピュータプログラムをRAMにて実行することにより実現される。電力量算出装置100は、例えば、ECU(Electronic Control Unit)によって実現されてもよい。
【0020】
図1に示すように、電力量算出装置100は、算出部110および通知部120を有する。
【0021】
算出部110は、バッテリ10の残容量の低下(以下、残容量低下という)またはバッテリ10の出力制限(以下、バッテリ出力制限という)が発生した場合、以下に説明する各算出処理を行う。バッテリ出力制限とは、バッテリ10の出力可能電力が何らかの要因により低下している状態である。
【0022】
なお、算出部110は、例えば、バッテリ10の状態(例えば、電流、電圧、温度等)を検知するバッテリセンサ(図示略)からの検知結果情報に基づいて、残容量低下の発生やバッテリ出力制限の発生を検出してもよい。この検出方法については、公知の技術を適用できるため、ここでの説明は省略する。
【0023】
算出部110は、架装電力量、架装供給可能電力、高優先電力量、上限電力量、低優先電力量を算出する。
【0024】
架装電力量とは、架装装置20において所定時間(詳細は後述)の間に最低限必要となる電力量である。この架装電力量は、架装装置20の最低限の消費電力と、所定時間との積で求められる。
【0025】
ここで、本実施の形態でいう所定時間とは、例えば、残容量低下またはバッテリ出力制限の発生時を起点とした未来方向の時間幅(時間範囲)である。例えば、所定時間は、架装車両1が現在地から目的地まで走行するのに要する時間でもよいし、架装車両1が走行不能状態となってから架装車両1の救助が開始されるまでに要する時間でもよい。なお、所定時間は、公知の技術を用いて算出部110自身が算出(予測、推定と言ってもよい)した値でもよいし、ユーザ(架装車両1の乗員)によって指定された値でもよい。
【0026】
架装供給可能電力とは、バッテリ10から架装装置20へ供給可能な電力(時間あたりの消費電力)である。この架装供給可能電力は、架装電力量に基づいて算出される。
【0027】
高優先電力量とは、高優先装置において所定時間の間に必要となる電力量である。高優先電力量は、この高優先装置の消費電力(高優先装置が複数ある場合には、合計の消費電力)と、所定時間との積で求められる。
【0028】
上限電力量とは、所定時間の間に架装装置20に供給することができる電力量の上限値である。この上限電力量は、バッテリ10の残容量から高優先電力量を差し引くことで求められる。
【0029】
低優先電力量とは、所定時間の間に低優先装置に供給することができる電力量である。この低優先電力量は、上限電力量から架装電力量を差し引くことで求められる。
【0030】
上述した高優先電力量および低優先電力量は、それぞれ、所定時間の間における高優先装置および低優先装置の動作に使用される。
【0031】
通知部120は、算出部110により算出された架装供給可能電力を架装装置20へ通知する。
これにより、架装装置20の制御部は、通知された架装供給可能電力に基づいて、架装装置20の動作を制御する(例えば、動作モードの変更等)。
【0032】
次に、図2を用いて、電力量算出装置100の動作について説明する。図2は、電力量算出装置100の動作の流れを示す図である。
【0033】
図2に示すフローは、残容量低下またはバッテリ出力制限が発生した場合に開始される。
【0034】
まず、算出部110は、架装装置20において所定時間の間に最低限必要となる架装電力量と、所定の時間の間にバッテリ10から架装装置20へ供給可能な架装供給可能電力とを算出する(ステップS1)。
【0035】
次に、算出部110は、高優先装置において所定時間の間に必要となる高優先電力量を算出する(ステップS2)。
【0036】
次に、算出部110は、バッテリ10の残容量から高優先電力量を差し引くことで、所定時間の間に架装装置20へ供給可能な上限電力量を算出する(ステップS3)。
【0037】
次に、算出部110は、上限電力量から架装電力量を差し引くことで、所定時間の間に低優先装置へ供給可能な低優先電力量を算出する(ステップS4)。
【0038】
次に、通知部120は、架装供給可能電力を架装装置20へ通知する(ステップS5)。
【0039】
なお、ステップS1~S4の順序は、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更してもよい。
【0040】
以上説明したように、本実施の形態の電力量算出装置100は、バッテリ10から供給される電力を用いて動作し、その電力の供給の優先順位が設定された架装装置20およびその他装置30を搭載した架装車両1で用いられる装置であって、バッテリ10から架装装置20へ供給可能な架装供給可能電力を算出する算出部110と、架装供給可能電力を架装装置20へ通知する通知部120と、を有し、その他装置30が、優先順位が架装装置20よりも高く設定されている高優先装置と、優先順位が架装装置20よりも低く設定されている低優先装置とを含んでおり、かつ、バッテリ10の残容量の低下またはバッテリの出力制限が発生した場合、算出部110は、架装装置20において所定時間の間に最低限必要となる架装電力量を算出するとともに、その架装電力量に基づいて架装供給可能電力を算出し、バッテリ10の残容量から高優先装置において所定時間の間に必要となる高優先電力量を差し引くことで、所定時間の間に架装装置20へ供給可能な上限電力量を算出し、上限電力量から架装電力量を差し引くことで、所定時間の間に低優先装置へ供給可能な低優先電力量を算出することを特徴とする。
【0041】
この特徴により、残容量低下やバッテリ出力制限が発生した場合において、架装装置20およびその他装置30(高優先装置および低優先装置)に対して効率的に電力を供給することができる。すなわち、本実施の形態の電力量算出装置100は、架装車両1における効率的な電力供給を実現することができる。
【0042】
なお、本開示は、上記実施の形態の説明に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の変形が可能である。以下、変形例について説明する。
【0043】
電力量算出装置100は、上述した優先順位を、架装車両1の状況(架装車両1に搭載された装置の状態を含む)に応じて変更することが可能な変更部をさらに有してもよい。
【0044】
例えば、変更部は、通常では架装装置20の優先順位よりも低く設定されているバッテリヒータの優先順位を、バッテリ10が低温状態となった場合に(バッテリ10の温度が閾値未満となったことが検出された場合に)、架装装置20の優先順位よりも高くなるように変更してもよい。これにより、バッテリ10の低温状態を原因する電力制限を一刻も早く脱することができる。
【0045】
また、例えば、変更部は、通常ではDCDCコンバータ(図示略)の優先順位よりも低く設定されている架装装置20(例えば、冷凍庫の冷却装置)の優先順位を、架装車両1が走行不能状態となった場合に、DCDCコンバータの優先順位よりも高くなるように変更してもよい。これにより、走行不能状態となった架装車両1の救助が駆けつけるまでの間、冷却装置を優先的に動作させることができ、庫内の品物を保護することができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本開示の電力量算出装置は、架装車両における電動量の算出に有用である。
【符号の説明】
【0047】
1 架装車両
10 バッテリ
20 架装装置
30 その他装置
100 電力量算出装置
110 算出部
120 通知部
図1
図2