(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023133946
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】捨石均し用重錘及び捨石均し方法
(51)【国際特許分類】
E02D 15/10 20060101AFI20230920BHJP
【FI】
E02D15/10
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022039218
(22)【出願日】2022-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000222668
【氏名又は名称】東洋建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】506378647
【氏名又は名称】株式会社青山海事
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻北 智志
(72)【発明者】
【氏名】酒井 大樹
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 晃司
(72)【発明者】
【氏名】青山 武美智
【テーマコード(参考)】
2D045
【Fターム(参考)】
2D045BA02
2D045CA32
(57)【要約】
【課題】水中の捨石に落下させて均す際、その均し作業の遅延を抑制できる捨石均し用重錘を提供する。
【解決手段】捨石均し用重錘1は、水中の捨石基礎マウンドの天端を均すためのものであり、捨石均し用重錘1には、複数の第1貫通孔21が上下方向に沿って貫通して設けられる。これにより、捨石均し用重錘1を水中の捨石に落下させて均す際、その均し作業の遅延を抑制することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中の捨石に落下させて均すための捨石均し用重錘であって、
当該捨石均し用重錘は、水中の捨石基礎マウンドの天端を均すためのものであり、複数の第1貫通孔が上下方向に沿って貫通して設けられることを特徴とする捨石均し用重錘。
【請求項2】
前記捨石均し用重錘は、捨石に接触される均し板状部材を備え、
前記各第1貫通孔は、前記均し板状部材に設けられることを特徴とする請求項1に記載の捨石均し用重錘。
【請求項3】
前記全ての第1貫通孔の、前記均し板状部材の底面の全面積に対する開口率は、5%~15%の範囲内で設定されることを特徴とする請求項2記載の捨石均し用重錘。
【請求項4】
前記捨石均し用重錘は、前記均し板状部材から上方に延びる筒状部材を備え、
該筒状部材には、複数の第2貫通孔が設けられることを特徴とする請求項2または3に記載の捨石均し用重錘。
【請求項5】
前記捨石均し用重錘による均し対象箇所は、30~50kg/個の捨石が多数配置される箇所であることを特徴とする請求項1~4いずれかに記載の捨石均し用重錘。
【請求項6】
捨石均し用重錘を水中の捨石基礎マウンドの天端に落下させて、当該天端を均すための捨石均し方法であって、
前記捨石均し用重錘には、複数の第1貫通孔が上下方向に沿って貫通して設けられ、
前記捨石均し用重錘を、高さ約0.5m以下の位置から落下させて前記天端を均すことを特徴とする捨石均し方法。
【請求項7】
前記捨石均し用重錘により、30~50kg/個の捨石が多数配置されている箇所を均すことを特徴とする請求項6に記載の捨石均し方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海洋、港湾工事の基礎工、被覆工の天端を均すための捨石均し用重錘及び捨石均し方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、防波堤(例えば、傾斜堤、直立堤や混成堤等)を構築する際、その基礎として捨石を積層してなる捨石基礎マウンドを水底に構築している。捨石基礎マウンドを施工する過程において、天端の高さを所定の設計高さに仕上げるため、天端の捨石を捨石均し用重錘にて均す捨石均し工事が行われている。
【0003】
一般に、捨石均し工事に使用される捨石均し用重錘は、特許文献1にて開示されているものである。当該特許文献1に記載の均し用重錘は、極厚鋼板製の底板の上面に鋼管が設立固定され、それにコンクリートまたは砂鉄等の重量物が充填されて、また、同じく底板の上面には鋼管を所要の間隔をおいて囲繞する鋼板製覆体が設立固定され、それに同じくコンクリートまたは砂鉄等の重量物を充填することにより重錘本体が構成されている。そして、この特許文献1に記載の均し用重錘を所定高さから落下させて、捨石基礎マウンドの天端(基礎工及び被覆工を含む)を均していた。
【0004】
しかしながら、従来の捨石均し用重錘を所定高さから天端に落下させると、捨石均し用重錘の底面端部から外側に向かう水の流れが発生し、その水の流速が大きくなる。そして、捨石基礎マウンドには、周囲長約25cm程度/個、且つ30~50kg/個程度の小さい捨石も多数存在するために、従来の捨石均し用重錘では、ある箇所を均した後、その均した箇所の隣りの箇所に落下させて均すと、上述した30~50kg/個程度の小さい捨石が回転、移動して、均し済みの箇所に飛散する現象が発生している。
【0005】
すなわち、捨石基礎マウンドの天端は、本均し工程(仕上げ均し工程及び計測均し工程)の出来形の管理値が±5cmであるため、比較的大きい50kg/個以上の捨石を均す場合であれば、荒均し工程、中均し工程、仕上げ均し工程、計測均し工程の4回の均し工程で済むが、50kg/個以下の比較的小さい捨石の場合、上述したように、従来の捨石均し用重錘を落下させると、多数の捨石が容易に回転、移動することにより出来形の管理値を満足することができず、計測均し工程が少なくとも2回増加して、全6工程以上の均し工程が必要となる。その結果、均し工程が遅延することや、それを補うために作業時間/日を増加させる必要があり、問題を生じていた。
【0006】
また、特許文献2には捨石基礎マウンドの法面を均す法面均し機として、石材を積み重ねた捨石基礎の天端に載置する台座と、該台座に回動自在に連結される板状の均し部材と、を備え、該均し部材には、複数の孔が形成されるものが開示されている。そして、特許文献2に記載の均し部材では、当該均し部材に設けた多数の孔が水抜き孔として機能するので、海中における均し部材の落下速度の低下が抑えられる。その結果、落下させた均し部材によって法面に十分な大きさの力が加えられる。これにより、法面を十分に突き固めて均すことができる、との作用効果を期待するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平5-13777号公報
【特許文献2】特開2002-294719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2に記載の法面均し機は、周囲長1~2m/個、且つ数十~数千kg/個の大型の捨石が多数配置されている箇所が均し対象箇所であって、また、特許文献2に記載の法面均し機は、捨石基礎マウンドの天端を均す際に使用されるものではなく、あくまでも捨石基礎マウンドの法面を均す際に使用されるものである。しかも、特許文献2の記載事項では、捨石基礎マウンドの天端を均す際には、鋼製のアングルでトラス状に組まれ、数m四方の底面を有する櫓の下端に鋼塊を取り付けた重錘の上端を起重機船の起重機によって支持し、起重機でこの重錘を天端から数m上方に吊り上げ、吊り上げた重錘を天端に落下させる。この作業を、捨石基礎の天端全体にわたって行い、該天端を突き固めて均すようにしている。
【0009】
要するに、特許文献2に記載の法面均し機では、周囲長2m/個、且つ数十~数千kg/個の大型の捨石が多数配置された、捨石基礎マウンドの法面が均し対象箇所であるので、重錘を落下させた際に捨石が回転、移動する現象は起きず、通常の、荒均し工程、中均し工程、仕上げ均し工程及び計測均し工程の4回の均し工程で済み、上述したような問題が発生することはない。すなわち、特許文献2に記載の法面均し機では、上述した問題を解決することは不可能である。
【0010】
そして、本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、水中の捨石に落下させて均す際、その均し作業の遅延を抑制できる捨石均し用重錘及び捨石均し方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための手段として、請求項1の捨石均し用重錘に係る発明は、水中の捨石に落下させて均すための捨石均し用重錘であって、当該捨石均し用重錘は、水中の捨石基礎マウンドの天端を均すためのものであり、複数の第1貫通孔が上下方向に沿って貫通して設けられることを特徴とするものである。
請求項1の発明では、捨石均し用重錘には、上下方向に貫通する複数の第1貫通孔が形成されているので、捨石均し用重錘を捨石基礎マウンドの天端に落下させて均す際、捨石均し用重錘の底面端部から外側への略水平方向に沿う水の流速を小さく抑えることができる。その結果、捨石均し用重錘を捨石基礎マウンドの天端に落下させて均す際、例えば、30~50kg/個の小さい捨石が回転、移動することを抑制することができる。
【0012】
請求項2の捨石均し用重錘に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記捨石均し用重錘は、捨石に接触される均し板状部材を備え、前記各第1貫通孔は、前記均し板状部材に設けられることを特徴とするものである。
請求項2の発明では、捨石均し用重錘の均し板状部材に第1貫通孔を設けることで、均し板状部材の底面により天端を均す際、均し板状部材の第1貫通孔内への水の流れを促進することで、均し板状部材の底面端部から外側への略水平方向に沿う水の流速を小さく抑えることができる。
【0013】
請求項3の捨石均し用重錘に係る発明は、請求項2に記載の発明において、前記全ての第1貫通孔の、前記均し板状部材の底面の全面積に対する開口率は、5%~15%の範囲内で設定されることを特徴とするものである。
請求項3の発明では、均し板状部材による捨石の均し効果と、均し板状部材の第1貫通孔内への水の流れを促進する効果とをバランス良く作用させることができる。
【0014】
請求項4の捨石均し用重錘に係る発明は、請求項2または3に記載の発明において、前記捨石均し用重錘は、前記均し板状部材から上方に延びる筒状部材を備え、該筒状部材には、複数の第2貫通孔が設けられることを特徴とするものである。
請求項4の発明では、各第2貫通孔により、筒状部材の内外の水の流通を良好にすることができ、結果的に、均し板状部材の底面により天端を均す際、筒状部材の内に位置する均し板状部材の第1貫通孔から上方に向かう水の流れが妨げられることはない。これにより、均し板状部材の底面端部から外側への略水平方向に沿う水の流速の低下に寄与することができる。
【0015】
請求項5の捨石均し用重錘に係る発明は、請求項1~4いずれかに記載の発明において、前記捨石均し用重錘による均し対象箇所は、30~50kg/個の捨石が多数配置される箇所であることを特徴とするものである。
請求項5の発明では、捨石均し用重錘を捨石基礎マウンドの天端に落下させて均す際の、捨石均し用重錘の底面端部から外側への略水平方向に沿う水の流速を、30~50kg/個の捨石がほぼ移動不可となる流速まで小さくすることができる。
【0016】
請求項6の捨石均し方法に係る発明は、捨石均し用重錘を水中の捨石基礎マウンドの天端に落下させて、当該天端を均すための捨石均し方法であって、前記捨石均し用重錘には、複数の第1貫通孔が上下方向に沿って貫通して設けられ、前記捨石均し用重錘を、高さ約0.5m以下の位置から落下させて前記天端を均すことを特徴とするものである。
請求項6の発明では、捨石均し用重錘を捨石基礎マウンドの天端に落下させて均す際の、落下高さを約0.5m以下に設定することで、捨石均し用重錘の底面端部から外側への略水平方向に沿う水の流速を所望値まで小さくすることができる。
【0017】
請求項7の捨石均し方法に係る発明は、請求項6に記載の発明において、前記捨石均し用重錘により、30~50kg/個の捨石が多数配置されている箇所を均すことを特徴とするものである。
請求項7の発明では、捨石均し用重錘を捨石基礎マウンドの天端に落下させて均す際の、落下高さを約0.5m以下に設定することで、捨石均し用重錘の底面端部から外側への略水平方向に沿う水の流速を、30~50kg/個の捨石がほぼ移動不可となる流速まで小さくすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る捨石均し用重錘には、複数の第1貫通孔が上下方向に沿って貫通して設けられる。また、捨石均し方法では、上述した捨石均し用重錘を用い、当該捨石均し用重錘を、高さ約0.5m以下の位置から落下させて水中の捨石を均すようにする。その結果、捨石均し用重錘を水中の捨石に落下させて均す際、捨石均し用重錘の底面端部から外側への略水平方向に沿う水の流速を小さく抑えることができ、例えば、30~50kg/個の小さい捨石が回転、移動することを抑制することができる。これにより、捨石均し用重錘による均し作業の遅延を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る捨石均し用重錘により水中の捨石基礎マウンドの天端を均している様子を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る捨石均し用重錘の斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る捨石均し用重錘に支持鋼管が連結された状態を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態に係る捨石均し用重錘に採用された均し板状部材に設けた各第1貫通孔の配置図である。
【
図5】
図5(a)は、本発明の実施形態に係る捨石均し用重錘が落下して捨石基礎マウンドの天端に接触する直前の状態を示す側面図であり、(b)は接触直後の状態を示す側面図である。
【
図6】
図6は、本実施形態に係る捨石均し用重錘において、第1貫通孔を設けていない形態を含む第1貫通孔の大きさ、及び落下高さを変化させた際の、均し板状部材の底面端部から外側への略水平方向に沿う水の最大水平流速値を示すものである。
【
図7】
図7は、本実施形態に係る捨石均し用重錘において、第1貫通孔を設けていない形態を含む第1貫通孔の大きさ、及び落下高さを変化させた際の、均し板状部材の底面端部から外側への略水平方向に沿う水の最大水平流速値をグラフ化したものである。
【
図8】
図8は、本実施形態に係る捨石均し用重錘において、第1貫通孔の大きさ、及び落下高さを変化させた際の、均し板状部材の底面端部から外側への略水平方向に沿う水の流速の、第1貫通孔を設けていない形態における同方向への水の流速に対する流速抑制率を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態を
図1~
図8に基づいて詳細に説明する。
本発明の実施形態に係る捨石均し用重錘1は、
図1に示すように、水中の捨石、すなわち水中の捨石基礎マウンド4の天端5を均すものである。詳しくは、本実施形態に係る捨石均し用重錘1は、捨石基礎マウンド4の天端5自体を均す際(基礎工)、また捨石基礎マウンド4の天端5を被覆する被覆石を均す際(被覆工)に採用される。
【0021】
図1を参照して、本実施形態に係る捨石均し用重錘1は、複数の支持鋼管7、7を介して起重機船9のクレーン10に接続される。そして、本実施形態に係る捨石均し用重錘1は、起重機船9のクレーン10により吊り上げられ、当該捨石均し用重錘1を捨石基礎マウンド4の天端5より所定の高さから落下させ、その動作を天端5全域に亘って繰り返すことで、捨石基礎マウンド4の天端5を均している。この均し作業は、通常、荒均し工程、中均し工程、仕上げ均し工程、計測均し工程の4回の均し工程が必要となる。また、仕上げ均し工程及び計測均し工程後には、捨石基礎マウンド4の天端5の出来形において、その管理値が±5cmを満足する必要がある。本実施形態に係る捨石均し用重錘1は、均し対象箇所として30~50kg/個の捨石が多数配置される箇所に対して特に有効である。
【0022】
本実施形態に係る捨石均し用重錘1は、
図2及び
図3を参照して、管部材13の下端に接続され、捨石基礎マウンド4の天端5(捨石)に接触される均し板状部材14と、該均し板状部材14の上面から上方に延び、管部材13の外周を囲むように配置される角筒状部材15と、管部材13の外周面から放射状に延び、角筒状部材15の内壁面に接続される複数の板状補強リブ16と、を備えている。均し板状部材14、14は、複数枚重ねられて構成される。本実施形態では、均し板状部材14は、2枚重ねられて構成される。均し板状部材14は極厚鋼板製である。均し板状部材14は、平面視略矩形状に形成される。均し板状部材14には、上下方向に沿って貫通する第1貫通孔21が複数形成される。
【0023】
第1貫通孔21は、互いに間隔を開けて複数形成される。第1貫通孔21は、円形状に形成される。各第1貫通孔21は、均し板状部材14に対して、後述する管部材13の内側を除く部位に形成される。詳しくは、
図4も参照して、第1貫通孔21は、後述する角筒状部材15の外側であって、均し板状部材14の外周端部に近接して、均し板状部材14の四隅を含む外周端部に沿って間隔を置いて複数配置される。本実施形態では、第1貫通孔21は、この位置に12箇所それぞれ配置される。また、第1貫通孔21は、後述する管部材13の外側であって、且つ後述する角筒状部材15の内側の各区画室28内の位置にそれぞれ配置される。本実施形態では、第1貫通孔21は、この位置に8箇所それぞれ配置される。
【0024】
全ての第1貫通孔21の、均し板状部材14の底面の全面積に対する開口率は、5%~15%の範囲内で設定される。なお、本実施形態では、実施例として、均し板状部材14は、一辺が約3mの正方形状に形成される。均し板状部材14の厚みは、約20cmである。第1貫通孔21は、全20箇所形成される。第1貫通孔21の開口径は、約20cmである。均し板状部材14の底面の面積が9m2で、また全ての第1貫通孔21の開口面積が0.01πm2であり、全ての第1貫通孔21の、均し板状部材14の底面の全面積に対する開口率は約7.0%に設定される。
【0025】
図2~
図4を参照して、管部材13は、均し板状部材14の中央部に立設される。管部材13の上端には取付フランジ25が接続される。この取付フランジ25に支持鋼管7が接続される。なお、本実施形態では、実施例として、管部材13の外径は約1mであり、その厚みは、約25mmである。管部材13の高さは、約2mである。均し板状部材14上に、管部材13を囲むように角筒状部材15が配置される。角筒状部材15は、薄い鋼板にて構成される。角筒状部材15は、その外形が略矩形状に形成され、またその開口形状も略矩形状に形成される。角筒状部材15は、その外形の大きさが均し板状部材14の外形の大きさよりも小さく構成される。言い換えれば、均し板状部材14は、角筒状部材15の下端外周から外側に突出して構成される。角筒状部材15は、その高さが管部材13の高さよりも若干低い。
【0026】
角筒状部材15の周壁部には、複数の第2貫通孔22が形成される。第2貫通孔22は、互いに間隔を置いて複数形成される。第2貫通孔22は、円形状に形成される。第2貫通孔22は、水平方向に沿って貫通される。第2貫通孔22の開口径は、第1貫通孔21の開口径と同径でもよく、小径または大径にしてもよい。各第2貫通孔22により、角筒状部材15の内外の水の流通を促進することができる。なお、本実施形態では、実施例として、角筒状部材15は、その外形が、一辺が約2mの正方形状に形成され、その高さは、約1.6mである。角筒状部材15の厚みは、約25mmである。第2貫通孔22の開口径は、約10cm~約20cmである。第2貫通孔22は、角筒状部材15の一面に対して8箇所、全面(四面)に対して32箇所形成される。また、本実施形態では、角筒状部材15が採用されているが、円筒状部材を採用してもよい。
【0027】
管部材13の外周面から放射状に複数の板状補強リブ16が延びている。板状補強リブ16は、薄い鋼板にて構成される。各板状補強リブ16は、管部材13の外周面の上下方向全域に亘って接続され、且つ角筒状部材15の内壁面の上下方向全域に接続される。板状補強リブ16は、管部材13から角筒状部材15に向かってその高さが次第に低く形成される。各板状補強リブ16により、角筒状部材15内が複数の区画室28に区画される。板状補強リブ16にも複数の第3貫通孔23が形成される。第3貫通孔23は、水平方向に沿って貫通される。
【0028】
第3貫通孔23は、円形状に形成される。第3貫通孔23の開口径は、第2貫通孔22の開口径と略同径である。第3貫通孔23の開口径を、第1及び第2貫通孔21、22の開口径より小径または大径にしてもよい。各第3貫通孔23により、板状補強リブ16にて区画された各区画室28、28間の水の流通を促進することができる。なお、本実施形態では、板状補強リブ16は、周方向に沿って等間隔で8枚備えられる。角筒状部材15内には、区画室28が8箇所備えらえる。板状補強リブ16の厚みは、25mmである。第3貫通孔23の開口径は、約10cm~約20cmである。第3貫通孔23は、一枚の板状補強リブ16に対して2箇所形成される(
図2及び
図3では1箇所のみ図示されている)。そして、本実施形態に係る捨石均し用重錘1の重さは、約45トンとなる。
【0029】
そして、
図5を参照して、本実施形態に係る捨石均し用重錘1を所定の高さから落下させ、当該捨石均し用重錘1の均し板状部材14の底面により捨石基礎マウンド4の天端5を均す際には、捨石均し用重錘1の均し板状部材14が天端5の捨石に接触しつつ、水が均し板状部材14の各第1貫通孔21に沿って上方に流れることから、均し板状部材14の底面端部から外側への略水平方向に沿う水の流速が小さく抑えられる。なお、
図5において、細い線の矢印が水の流れる方向を示している。
【0030】
なお、
図6及び
図7(グラフ)は、本実施形態に係る捨石均し用重錘1において、30~50kg/個の捨石が多数配置される均し対象箇所に対し、第1貫通孔21を設けていない形態を含む第1貫通孔21の大きさ、及び落下高さを変化させた際の、均し板状部材14の底面端部から外側への略水平方向に沿う水の最大水平流速値(グラフ化)を表したものである。これら
図6及び
図7(グラフ)を参照すると、落下高さが低いほど、前記最大水平流速が小さくなる傾向であることが解る。また、落下高さに関係なく、第1貫通孔21の大きさが大きいほど、前記最大水平流速が小さくなる傾向であることが解る。さらに、落下高さが0.5mであると、他の落下高さ1.5m及び3.0mに比べて、第1貫通孔21を設けていない形態を含む第1貫通孔21の大きさの変化に伴う最大水平流速値の変化率(低下率)が大きいことが解る。さらにまた、落下高さ1.5mと、落下高さ3.0mとでは、第1貫通孔21を設けていない形態を含む第1貫通孔21の大きさに伴う最大水平流速値の変化率はほぼ同じであることが解る。
【0031】
また、
図8は、第1貫通孔21の大きさ、及び落下高さを変化させた際の、均し板状部材14の底面端部から外側への略水平方向に沿う水の流速の、第1貫通孔21を設けていない形態における同方向への水の流速に対する流速抑制率を示すものである。
図6及び
図8も参照すると、落下高さを0.5m、且つ第1貫通孔21の開口径を20cmに設定すると、最大水平流速が一番低く3.69m/sとなり、第1貫通孔21を設けていない形態に比べて、最大水平流速を33%抑制できることが解る。これにより、捨石均し用重錘1を落下させる高さは、約0.5m以下であることが好ましい。なお、落下高さが0.5mであり、第1貫通孔21の開口径を20cmに設定した場合に発生する最大水平流速値3.69m/sは、約42kg/個の捨石を移動させる速度に相当する。このことから、本実施形態に係る捨石均し用重錘1を、高さ0.5m以下の位置から落下させて均す際には、30~50kg/個の捨石はほとんど移動しないことが解る。
【0032】
以上説明したように、本実施形態に係る捨石均し用重錘1は、水中の捨石基礎マウンド4の天端5を均すためのものであり、複数の第1貫通孔21が上下方向に沿って貫通して設けられる。その結果、捨石均し用重錘1を捨石基礎マウンド4の天端5に落下させて均す際、水が捨石均し用重錘1(均し板状部材14)に設けた各第1貫通孔21に沿って上方に流れるために、捨石均し用重錘1(均し板状部材14)の底面端部から外側への略水平方向に沿う水の流速を小さく抑えることができる。そして、捨石均し用重錘1を捨石基礎マウンド4の天端5に落下させて均す際、30~50kg/個の小さい捨石が回転、移動することを抑制することができる。これにより、30~50kg/個の小さい捨石を均す際、従来必要としていた、計測均し工程の増加分(2回分)を作業する必要が無くなり、その均し作業の遅延を抑制することができる。
【0033】
また、本実施形態に係る捨石均し用重錘1では、捨石均し用重錘1の均し板状部材14に第1貫通孔21を設けている。これにより、均し板状部材14の底面により天端5を均す際、均し板状部材14の第1貫通孔21内への水の流れ、すなわち水の上方への流れを促進することで、均し板状部材14の底面端部から外側への略水平方向に沿う水の流速を小さく抑えることができる。
【0034】
さらに、本実施形態に係る捨石均し用重錘1では、均し板状部材14に設けた全ての第1貫通孔21の、均し板状部材14の底面の全面積に対する開口率は、5%~15%の範囲内で設定される。その結果、均し板状部材14による捨石の均し効果と、均し板状部材14の第1貫通孔21内への水の流れを促進する効果とをバランス良く作用させることができる。このように、本実施形態に係る捨石均し用重錘1では、捨石均し用重錘1としての均し機能を従来と変わらず作用させることができると共に、均し板状部材14により天端5を均す際の均し板状部材14の底面端部から外側への略水平方向に沿う水の流速を小さく抑えることができ、例えば、30~50kg/個の小さい捨石が回転、移動することを抑制することができる。
【0035】
さらにまた、本実施形態に係る捨石均し用重錘1は、均し板状部材14から上方に延びる角筒状部材15を備え、該角筒状部材15には、複数の第2貫通孔22が設けられる。そして、各第2貫通孔22により、角筒状部材15の内外の水の流通を良好にすることができる。その結果、均し板状部材14の底面により天端5を均す際、角筒状部材15の内に位置する均し板状部材14の第1貫通孔21から上方に向かう水の流れを妨げることはない。これにより、均し板状部材14の底面端部から外側への略水平方向に沿う水の流速の低下に寄与することができる。
【0036】
なお、本実施形態に係る捨石均し用重錘1では、管部材13の外周面から放射状に延び、角筒状部材15の内壁面に接続される複数の板状補強リブ16を備えており、板状補強リブ16にも第3貫通孔23が形成される。そして、角筒状部材15内の各区画室28、28間の水の流通を良好にすることができる。その結果、均し板状部材14の底面により天端5を均す際、角筒状部材15内の各区画室28に位置する均し板状部材14の第1貫通孔21から上方に向かう水の流れを妨げることはない。これによっても、均し板状部材14の底面端部から外側への略水平方向に沿う水の流速の低下に寄与することができる。
【0037】
さらにまた、本実施形態に係る捨石均し用重錘1を使用した捨石均し方法では、本実施形態に係る捨石均し用重錘1を捨石基礎マウンド4の天端5に落下させて均す際の、落下高さを約0.5m以下に設定することで、捨石均し用重錘1(均し板状部材14)の底面端部から外側への略水平方向に沿う水の流速を、30~50kg/個の捨石がほぼ移動不可となる流速まで小さくすることができる。これにより、本実施形態に係る捨石均し方法による均し作業の遅延を抑制することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 捨石均し用重錘,4 捨石基礎マウンド,5 天端,14 均し板状部材,15 角筒状部材(筒状部材),21 第1貫通孔,22 第2貫通孔
【手続補正書】
【提出日】2023-07-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中の捨石に落下させて均すための捨石均し用重錘であって、
当該捨石均し用重錘は、水中の捨石基礎マウンドの天端を均すためのものであり、複数の第1貫通孔が上下方向に沿って貫通して設けられ、
前記捨石均し用重錘は、捨石に接触される均し板状部材を備え、
前記各第1貫通孔は、前記均し板状部材に設けられ、
前記全ての第1貫通孔の、前記均し板状部材の底面の全面積に対する開口率は、5%~15%の範囲内で設定されることを特徴とする捨石均し用重錘。
【請求項2】
前記捨石均し用重錘は、前記均し板状部材から上方に延びる筒状部材を備え、
該筒状部材には、複数の第2貫通孔が設けられることを特徴とする請求項1に記載の捨石均し用重錘。
【請求項3】
前記捨石均し用重錘による均し対象箇所は、30~50kg/個の捨石が多数配置される箇所であることを特徴とする請求項1または2に記載の捨石均し用重錘。
【請求項4】
捨石均し用重錘を水中の捨石基礎マウンドの天端に落下させて、当該天端を均すための捨石均し方法であって、
前記捨石均し用重錘には、複数の第1貫通孔が上下方向に沿って貫通して設けられ、
前記捨石均し用重錘を、高さ約0.5m以下の位置から落下させて前記天端を均すことを特徴とする捨石均し方法。
【請求項5】
前記捨石均し用重錘により、30~50kg/個の捨石が多数配置されている箇所を均すことを特徴とする請求項4に記載の捨石均し方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
上記課題を解決するための手段として、請求項1の捨石均し用重錘に係る発明は、水中の捨石に落下させて均すための捨石均し用重錘であって、当該捨石均し用重錘は、水中の捨石基礎マウンドの天端を均すためのものであり、複数の第1貫通孔が上下方向に沿って貫通して設けられ、前記捨石均し用重錘は、捨石に接触される均し板状部材を備え、前記各第1貫通孔は、前記均し板状部材に設けられ、前記全ての第1貫通孔の、前記均し板状部材の底面の全面積に対する開口率は、5%~15%の範囲内で設定されることを特徴とするものである。
請求項1の発明では、捨石均し用重錘には、上下方向に貫通する複数の第1貫通孔が形成されているので、捨石均し用重錘を捨石基礎マウンドの天端に落下させて均す際、捨石均し用重錘の底面端部から外側への略水平方向に沿う水の流速を小さく抑えることができる。その結果、捨石均し用重錘を捨石基礎マウンドの天端に落下させて均す際、例えば、30~50kg/個の小さい捨石が回転、移動することを抑制することができる。また、捨石均し用重錘の均し板状部材に第1貫通孔を設けることで、均し板状部材の底面により天端を均す際、均し板状部材の第1貫通孔内への水の流れを促進でき、均し板状部材の底面端部から外側への略水平方向に沿う水の流速を小さく抑えることができる。さらに、全ての第1貫通孔の、均し板状部材の底面の全面積に対する開口率は、5%~15%の範囲内で設定されるので、均し板状部材による捨石の均し効果と、均し板状部材の第1貫通孔内への水の流れを促進する効果とをバランス良く作用させることができる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
請求項2の捨石均し用重錘に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記捨石均し用重錘は、前記均し板状部材から上方に延びる筒状部材を備え、該筒状部材には、複数の第2貫通孔が設けられることを特徴とするものである。
請求項2の発明では、各第2貫通孔により、筒状部材の内外の水の流通を良好にすることができ、結果的に、均し板状部材の底面により天端を均す際、筒状部材の内に位置する均し板状部材の第1貫通孔から上方に向かう水の流れが妨げられることはない。これにより、均し板状部材の底面端部から外側への略水平方向に沿う水の流速の低下に寄与することができる。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
請求項3の捨石均し用重錘に係る発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記捨石均し用重錘による均し対象箇所は、30~50kg/個の捨石が多数配置される箇所であることを特徴とするものである。
請求項3の発明では、捨石均し用重錘を捨石基礎マウンドの天端に落下させて均す際の、捨石均し用重錘の底面端部から外側への略水平方向に沿う水の流速を、30~50kg/個の捨石がほぼ移動不可となる流速まで小さくすることができる。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
請求項4の捨石均し方法に係る発明は、捨石均し用重錘を水中の捨石基礎マウンドの天端に落下させて、当該天端を均すための捨石均し方法であって、前記捨石均し用重錘には、複数の第1貫通孔が上下方向に沿って貫通して設けられ、前記捨石均し用重錘を、高さ約0.5m以下の位置から落下させて前記天端を均すことを特徴とするものである。
請求項4の発明では、捨石均し用重錘を捨石基礎マウンドの天端に落下させて均す際の、落下高さを約0.5m以下に設定することで、捨石均し用重錘の底面端部から外側への略水平方向に沿う水の流速を所望値まで小さくすることができる。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
請求項5の捨石均し方法に係る発明は、請求項4に記載の発明において、前記捨石均し用重錘により、30~50kg/個の捨石が多数配置されている箇所を均すことを特徴とするものである。
請求項5の発明では、捨石均し用重錘を捨石基礎マウンドの天端に落下させて均す際の、落下高さを約0.5m以下に設定することで、捨石均し用重錘の底面端部から外側への略水平方向に沿う水の流速を、30~50kg/個の捨石がほぼ移動不可となる流速まで小さくすることができる。