(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023133982
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】積層コンデンサ
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20230920BHJP
【FI】
H01G4/30 201F
H01G4/30 513
H01G4/30 512
H01G4/30 201M
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022039271
(22)【出願日】2022-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】岩間 正裕
(72)【発明者】
【氏名】尾上 通
(72)【発明者】
【氏名】住谷 航平
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AE02
5E001AE03
5E001AH05
5E001AH07
5E001AH09
5E001AJ03
5E082AB03
5E082AB06
5E082BC38
5E082EE26
5E082FG54
5E082GG10
5E082GG26
5E082LL02
5E082MM24
(57)【要約】
【課題】実装の安定性及びピックアップ性の向上が図られる積層コンデンサを提供する。
【解決手段】積層コンデンサ1は、一対の側面2B,2Bの対向方向D2から見て、第1の外部電極3の頂点位置K1における第1の外部電極3の表面と湾曲面P1との距離をHtとし、頂点位置K1と主面2Cの頂点位置K2との間の一対の主面2C,2Cの対向方向D3の距離をYとした場合に、一対の第1の外部電極3,3のそれぞれについて少なくとも湾曲面P1側で0<Y<Htを満たし、一対の主面2C,2Cの対向方向D3から見て、第2の外部電極4の頂点位置K3における第2の外部電極4の表面と主面2Cとの距離をHsとした場合に、一対の第2の外部電極4,4のそれぞれについて一対の主面2C,2Cの双方側でHt>Hsを満たす。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する一対の端面と、前記一対の端面間において前記一対の端面の対向方向に延在する一対の側面及び一対の主面と、を有する素体と、
前記素体内において前記一対の主面の対向方向に配列され、前記一対の端面の対向方向に延びる複数の第1の内部電極と、
前記素体内において前記一対の主面の対向方向に配列され、前記一対の側面の対向方向に延びる複数の第2の内部電極と、
前記一対の端面において前記一対の側面及び前記一対の端面に回り込むように配置された一対の第1の外部電極と、
前記一対の側面において前記一対の主面に回り込み、且つ前記第1の外部電極と離間して配置された一対の第2の外部電極と、を備え、
前記一対の主面の少なくとも一方は、凸状に湾曲する湾曲面となっており、
前記一対の側面の対向方向から見て、前記第1の外部電極の頂点位置における前記第1の外部電極の表面と前記主面との距離をHtとし、前記頂点位置と前記主面の頂点位置との間の前記一対の主面の対向方向の距離をYとした場合に、前記一対の第1の外部電極のそれぞれについて少なくとも前記湾曲面側で0<Y<Htを満たし、
前記一対の端面の対向方向から見て、前記第2の外部電極の頂点位置における前記第2の外部電極の表面と前記主面との距離をHsとした場合に、前記一対の第2の外部電極のそれぞれについて前記一対の主面の双方側でHt>Hsを満たす、積層コンデンサ。
【請求項2】
前記一対の主面の対向方向から見て、前記第1の外部電極の頂点位置における前記第1の外部電極の表面と前記側面との距離をHwとし、前記第2の外部電極の頂点位置における前記第2の外部電極の表面と前記側面との距離をTsとした場合に、前記一対の第2の外部電極のそれぞれについてTs>Hwを満たす、請求項1記載の積層コンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の積層コンデンサとして、例えば特許文献1に記載の貫通型コンデンサがある。この従来の貫通型コンデンサは、いわゆる三端子型の積層セラミックコンデンサである。この貫通型コンデンサでは、誘電体層を複数積層してなる積層体の内部に、互いに対向する一対の第1端面に導出される貫通導体層と、誘電体層を介して貫通導体層と対向し、且つ積層体の他の互いに対向する一対の第2端面に導出するグランド電極層とが交互に配置されている。一対の第1端面には、貫通導体層の両端部に接続される一対の入出力端子が形成されている。一対の第2端面には、グランド電極層の両端部に接続されるグランド端子が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような三端子型の積層コンデンサは、端子電極を回路基板等にハンダ付けすることによって電子機器等に実装される。一方、積層コンデンサの素体の端面は、例えば内部電極の積層方向に凸状に湾曲する場合がある。したがって、素体の形状を考慮した上で実装の安定性及びピックアップ性を向上させることが技術的課題となっている。
【0005】
本開示は、上記課題の解決のためになされたものであり、実装の安定性及びピックアップ性の向上が図られる積層コンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る積層コンデンサは、互いに対向する一対の端面と、一対の端面間において一対の端面の対向方向に延在する一対の側面及び一対の主面と、を有する素体と、素体内において一対の主面の対向方向に配列され、一対の端面の対向方向に延びる複数の第1の内部電極と、素体内において一対の主面の対向方向に配列され、一対の側面の対向方向に延びる複数の第2の内部電極と、一対の端面において一対の側面及び一対の端面に回り込むように配置された一対の第1の外部電極と、一対の側面において一対の主面に回り込み、且つ第1の外部電極と離間して配置された一対の第2の外部電極と、を備え、一対の主面の少なくとも一方は、凸状に湾曲する湾曲面となっており、一対の側面の対向方向から見て、第1の外部電極の頂点位置における第1の外部電極の表面と主面との距離をHtとし、頂点位置と湾曲面の頂点位置との間の一対の主面の対向方向の距離をYとした場合に、一対の第1の外部電極のそれぞれについて少なくとも湾曲面側で0<Y<Htを満たし、一対の端面の対向方向から見て、第2の外部電極の頂点位置における第2の外部電極の表面と主面との距離をHsとした場合に、一対の第2の外部電極のそれぞれについて一対の主面の双方側でHt>Hsを満たす。
【0007】
この積層コンデンサでは、少なくとも湾曲面側で0<Yを満たすことで、一対の主面の少なくとも一方が凸状の湾曲面となっている場合でも、一対の主面の対向方向において素体が第1の外部電極より張り出すことを防止できる。これにより、実装の際の積層コンデンサのセルフアライメントが容易となる。また、少なくとも湾曲面側でY<Htを満たすことで、一対の主面の対向方向への素体の張り出しが不足することを防止できる。これにより、実装の際の積層コンデンサのピックアップ性を向上できる。さらに、一対の主面の双方側でHt>Hsを満たすことで、いずれの主面を実装面とした場合でも、第1の外部電極の厚さが十分に確保され、実装の安定性を向上できる。
【0008】
一対の主面の対向方向から見て、第1の外部電極の頂点位置における第1の外部電極の表面と側面との距離をHwとし、第2の外部電極の頂点位置における第2の外部電極の表面と側面との距離をTsとした場合に、一対の第2の外部電極のそれぞれについてTs>Hwを満たしてもよい。この場合、第2の外部電極の実装面積を十分に確保でき、実装の際の積層コンデンサのセルフアライメントが一層容易となる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、実装の安定性及びピックアップ性の向上が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の一実施形態に係る積層コンデンサの概略的な斜視図である。
【
図2】積層コンデンサの一対の端面間の断面図である。
【
図3】積層コンデンサの一対の側面間の断面図である。
【
図4】第1の内部電極の面内の積層コンデンサの断面図である。
【
図5】第2の内部電極の面内の積層コンデンサの断面図である。
【
図6】一対の側面の対向方向から見た積層コンデンサの要部拡大図である。
【
図7】一対の端面の対向方向から見た積層コンデンサの要部拡大図である。
【
図8】一対の主面の対向方向から見た積層コンデンサの要部拡大図である。
【
図9】(a)は、Ht、Y、Hsの実測結果を示す図であり、(b)は、Hw、Tsの実測結果を示す図である。
【
図10】本開示の効果確認試験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本開示の一側面に係る積層コンデンサの好適な実施形態について詳細に説明する。
【0012】
図1は、本開示の一実施形態に係る積層コンデンサの概略的な斜視図である。同図に示すように、本実施形態に係る積層コンデンサ1は、いわゆる三端子型の貫通コンデンサとして構成されている。積層コンデンサ1は、例えば電子機器の回路基板に実装され得る。積層コンデンサ1のチップサイズは、例えば3216サイズ(長さ3.2mm×幅1.6mm×高さ1.6mm)となっている。積層コンデンサ1のチップサイズに特に制限はなく、3216サイズ以外のサイズであってもよい。
【0013】
図1に示すように、積層コンデンサ1は、素体2と、一対の第1の外部電極3,3と、一対の第2の外部電極4,4とを備えている。一対の第1の外部電極3,3は、信号用外部電極として機能する電極である。一対の第2の外部電極4,4は、接地用外部電極として機能する電極である。
【0014】
素体2は、複数の誘電体層を積層することによって構成されている。各誘電体層は、例えば誘電体材料(BaTiO3系、Ba(Ti,Zr)O3系、又は(Ba,Ca)TiO3系などの誘電体セラミック)を含むセラミックグリーンシートの焼結体によって構成されている。実際の素体2では、各誘電体層は、互いの境界が視認できない程度に一体化されている。素体2の形状は、略直方体形状となっている。直方体形状には、角部及び稜線部が面取りされた形状が含まれ得る。直方体形状には、角部及び稜線部が丸められた形状が含まれ得る。
【0015】
素体2は、互いに対向する一対の端面2A,2Aと、互いに対向する一対の側面2B,2Bと、互いに対向する一対の主面2C,2Cとを有している。一対の側面2B,2B及び一対の主面2C,2Cは、一対の端面2A,2A間において、一対の端面2A,2Aの対向方向に延在している。一対の端面2A,2A、一対の側面2B,2B、一対の主面2C,2Cは、互いに直交した状態となっている。
【0016】
一対の主面2C,2Cの一方は、積層コンデンサ1を電子機器の回路基板等に実装する際の実装面(回路基板等を向く面)となる。一対の主面2C,2Cの少なくとも一方は、凸状に湾曲する湾曲面P1となっている。本実施形態では、一対の主面2C,2Cの一方(
図1における紙面上側の主面2C)が緩やかに凸状に湾曲する湾曲面P1となっている。また、一対の主面2C,2Cの他方(
図1における紙面下側の主面2C)が湾曲面P1と比較して平坦な平坦面P2となっている。
【0017】
ここでは、一対の端面2A,2Aの対向方向をD1、一対の側面2B,2Bの対向方向をD2、一対の主面2C,2Cの対向方向をD3と称する。一対の端面2A,2Aの対向方向D1は、素体2の長さ方向に相当し、一対の側面2B,2Bの対向方向D2は、素体2の幅方向に相当する。一対の主面2C,2Cの対向方向D3は、素体2の高さ方向に相当する。一対の主面2C,2Cの対向方向D3は、素体2を構成する複数の誘電体層の積層方向と一致する。
【0018】
一対の第1の外部電極3,3のそれぞれは、一対の端面2A,2Aのそれぞれに設けられている。第1の外部電極3は、端面2Aの全体を覆う本体部3aと、本体部3aから一対の側面2B,2Bのそれぞれの縁部に回り込む回込部3b,3bと、本体部3aから一対の主面2C,2Cのそれぞれの縁部に回り込む回込部3c,3cとを有している。
【0019】
第1の外部電極3は、端面2Aにおいて、第1の内部電極6の引出部分(後述の接続部6b)を覆うように形成されている。第1の外部電極3は、引出部分を覆う焼結層、焼結層を覆うめっき層を含んで構成されていてもよい。焼付層は、金属やガラスを含んでいてもよい。金属は、Cu、Ni、Agなどであってもよい。めっき層は、単層及び多層のいずれであってもよい。多層の場合には、Niめっき層、Niめっき層を覆うSn層などを含んでいてもよい。本実施形態では、第1の外部電極3は、Cu焼結層3A、Niめっき層3B、Snめっき層3Cによる三層構造をなしている(
図2等参照)。
【0020】
一対の第2の外部電極4,4のそれぞれは、一対の側面2B,2Bのそれぞれにおいて、素体2の長さ方向の中央部分に設けられている。第2の外部電極4は、側面2Bにおいて素体2の高さ方向に所定の幅で延在する本体部4aと、本体部4aから一対の主面2C,2Cのそれぞれの縁部に回り込む回込部4b,4bとを有している。
【0021】
第2の外部電極4は、側面2Bにおいて、第2の内部電極7の引出部分(後述の接続部7b)を覆うように形成されている。第2の外部電極4は、第1の外部電極3と同様に、引出部分を覆う焼結層、焼結層を覆うめっき層を含んで構成されていてもよい。焼付層は、金属やガラスを含んでいてもよい。金属は、Cu、Ni、Agなどであってもよい。めっき層は、単層及び多層のいずれであってもよい。多層の場合には、Niめっき層、Niめっき層を覆うSn層などを含んでいてもよい。本実施形態では、第2の外部電極4は、Cu焼結層4A、Niめっき層4B、Snめっき層4Cによる三層構造をなしている(
図3等参照)。
【0022】
素体2内には、
図2~
図5に示すように、複数の第1の内部電極6及び複数の第2の内部電極7が配置されている。第1の内部電極6及び第2の内部電極7の構成材料としては、積層型の電気素子の内部電極として一般に用いられる導電性材料(例えばNi又はCuなど)が挙げられる。第1の内部電極6及び第2の内部電極7は、上記導電性材料を含む導電性ペーストの焼結体によって構成されている。複数の第1の内部電極6及び複数の第2の内部電極7は、
図2及び
図3に示すように、一対の主面2C,2Cの対向方向D3において、誘電体層を介して交互に積層されている。
【0023】
第1の内部電極6は、
図4に示すように、主電極部6aと、接続部6bとを有している。主電極部6aは、平面視において長方形状をなしている。主電極部6aの長辺は、一対の端面2A,2Aの対向方向D1に沿って延びており、主電極部6aの短辺は、一対の側面2B,2Bの対向方向D2に延びている。接続部6bは、主電極部6aの短辺の中央部分から帯状に突出し、一対の端面2A,2Aまで延びている。これにより、第1の内部電極6は、一対の端面2A,2Aにおいて第1の外部電極3,3に電気的に接続されている。接続部6bの幅は、例えば主電極部6aの短辺よりも小さくなっている。
【0024】
第2の内部電極7は、
図5に示すように、主電極部7aと、接続部7bとを有している。主電極部7aは、平面視において長方形状をなしている。主電極部7aの長辺は、一対の端面2A,2Aの対向方向D1に沿って延びており、主電極部7aの短辺は、一対の側面2B,2Bの対向方向D2に延びている。主電極部7aは、一対の主面2C,2Cの対向方向D3から見た場合に、第1の内部電極6の主電極部6aと重なるように位置している。接続部7bは、主電極部6aの長辺の中央部分から帯状に突出し、一対の側面2B,2Bまで延びている。これにより、第2の内部電極7は、一対の側面2B,2Bにおいて第2の外部電極4,4に電気的に接続されている。接続部7bの幅は、例えば第1の内部電極6の接続部6bの幅よりも小さくなっている。
【0025】
次に、上述した積層コンデンサ1における素体2、第1の外部電極3、及び第2の外部電極4の寸法関係について、
図6~
図8を参照しながら説明する。なお、第1の外部電極3及び第2の外部電極4は、上述したように焼結層及びめっき層による三層構造をなしているが、
図6~
図8では、図示の複雑化を避けるため、三層を一体とした状態で第1の外部電極3及び第2の外部電極4を示している。
【0026】
図6は、一対の側面の対向方向から見た積層コンデンサの要部拡大図である。同図では、端面2A,2Aの一方側を示しているが、端面2A,2Aの他方側についても同様の構成となっている。
図6に示すように、積層コンデンサ1において、一対の側面2B,2Bの対向方向D2から見た場合の第1の外部電極3の頂点位置K1における第1の外部電極3の表面と主面2Cとの距離をHtとする。
【0027】
第1の外部電極3の頂点位置K1は、第1の外部電極3のうち、高さ方向(一対の主面2C,2Cの対向方向D3)に素体2から最も遠くなる位置である。ここでは、頂点位置K1は、第1の外部電極3のうち、主面2Cに回り込む回込部3cに位置している。Htは、第1の外部電極3の頂点位置K1から主面2Cに向かって一対の主面2C,2Cの対向方向D3に垂線を引き、当該垂線が主面2Cに接するまでの長さに相当する。
【0028】
また、
図6に示すように、積層コンデンサ1において、一対の側面2B,2Bの対向方向D2から見た場合の第1の外部電極3の頂点位置K1と主面2Cの頂点位置K2との間の一対の主面2C,2Cの対向方向D3の距離をYとする。主面2Cの頂点位置K2は、主面2Cのうち、高さ方向(一対の主面2C,2Cの対向方向D3)に最も高くなる位置である。Yは、第1の外部電極3の頂点位置K1を通る一対の端面2A,2Aの対向方向D1のラインから主面2Cに向かって一対の主面2C,2Cの対向方向D3に垂線を引き、当該垂線が主面2Cに接するまでの長さに相当する。
【0029】
上述のようにHt及びYを定義した場合、積層コンデンサ1では、一対の第1の外部電極3,3のそれぞれについて、少なくとも湾曲面P1側で0<Y<Htを満たしている。Y=0の場合には、頂点位置K2での主面2Cの高さが第1の外部電極3の高さと等しくなる。Y<0の場合には、頂点位置K2での主面2Cの高さが第1の外部電極3の高さを超えて大きくなる。この場合は、素体2の高さ方向について、主面2Cが第1の外部電極3よりも張り出すことを意味する。積層コンデンサ1では、0<Yを満たすため、素体2の高さ方向について、主面2Cが第1の外部電極3よりも張り出さないようになっている。
【0030】
Y=Htの場合には、主面2Cと第1の外部電極3との高さの差が頂点位置K1での第1の外部電極3の高さ方向の厚さと等しくなる。Y>Htの場合には、主面2Cと第1の外部電極3との高さの差が頂点位置K1での第1の外部電極3の高さ方向の厚さ以上に大きくなる。積層コンデンサ1では、Y<Htを満たすため、素体2の高さ方向について、主面2Cと第1の外部電極3との高さの差が頂点位置K1での第1の外部電極3の高さ方向の厚さ未満に抑えられている。
【0031】
図7は、一対の端面の対向方向から見た積層コンデンサの要部拡大図である。同図では、側面2B,2Bの一方側を示しているが、側面2B,2Bの他方側についても同様の構成となっている。
図7に示すように、積層コンデンサ1において、一対の端面2A,2Aの対向方向D1から見た場合の第2の外部電極4の頂点位置K3における第2の外部電極4の表面と主面2Cとの距離をHsとする。
【0032】
第2の外部電極4の頂点位置K3は、第2の外部電極4のうち、高さ方向(一対の主面2C,2Cの対向方向D3)に素体2から最も遠くなる位置である。頂点位置K3は、第2の外部電極4のうち、主面2Cに回り込む回込部4bに位置している。Hsは、第2の外部電極4の頂点位置K3から主面2Cに向かって一対の主面2C,2Cの対向方向D3に垂線を引き、当該垂線が主面2Cに接するまでの長さに相当する。
【0033】
上述のようにHsを定義した場合、積層コンデンサ1では、一対の第2の外部電極4,4のそれぞれについて、一対の主面2C,2Cの双方側でHt>Hsを満たしている。Ht=Hsの場合には、頂点位置K1における第1の外部電極3の高さ方向の厚さが頂点位置K3における第2の外部電極4の高さ方向の厚さと等しくなる。Ht<Hsの場合には、頂点位置K1における第1の外部電極3の高さ方向の厚さが頂点位置K3における第2の外部電極4の高さ方向の厚さよりも小さくなる。積層コンデンサ1では、Ht>Hsを満たすため、頂点位置K1における第1の外部電極3の高さ方向の厚さが頂点位置K3における第2の外部電極4の高さ方向の厚さよりも大きくなっている。
【0034】
図8は、一対の主面の対向方向から見た積層コンデンサの要部拡大図である。同図では、端面2A,2Aの一方側を示しているが、端面2A,2Aの他方側についても同様の構成となっている。
図8に示すように、積層コンデンサ1において、一対の主面2C,2Cの対向方向D3から見た場合の第1の外部電極3の頂点位置K4における第1の外部電極3の表面と側面2Bとの距離をHwとする。
【0035】
第1の外部電極3の頂点位置K4は、第1の外部電極3のうち、幅方向(一対の側面2B,2Bの対向方向D2)に素体2から最も遠くなる位置である。ここでは、頂点位置K4は、第1の外部電極3のうち、側面2Bに回り込む回込部3bに位置している。Hwは、第1の外部電極3の頂点位置K4から側面2Bに向かって一対の側面2B,2Bの対向方向D2に垂線を引き、当該垂線が側面2Bに接するまでの長さに相当する。
【0036】
また、
図8に示すように、積層コンデンサ1において、一対の主面2C,2Cの対向方向D3から見た場合の第2の外部電極4の頂点位置K5における第2の外部電極4の表面と側面2Bとの距離をTsとする。第2の外部電極4の頂点位置K5は、第2の外部電極4のうち、幅方向(一対の側面2B,2Bの対向方向D2)に素体2から最も遠くなる位置である。ここでは、頂点位置K5は、第2の外部電極4の本体部4aに位置している。Tsは、第2の外部電極4の頂点位置K5から側面2Bに向かって一対の側面2B,2Bの対向方向D2に垂線を引き、当該垂線が側面2Bに接するまでの長さに相当する。
【0037】
上述のようにHw及びTsを定義した場合、積層コンデンサ1では、一対の第2の外部電極4,4のそれぞれについて、Ts>Hwを満たしている。Ts=Hwの場合には、頂点位置K5における第2の外部電極4の幅方向の厚さが頂点位置K4における第1の外部電極3の幅方向の厚さと等しくなる。Ts<Hwの場合には、頂点位置K5における第2の外部電極4の幅方向の厚さが頂点位置K4における第1の外部電極3の幅方向の厚さよりも小さくなる。
【0038】
積層コンデンサ1では、Ts>Hwを満たすため、頂点位置K5における第2の外部電極4の幅方向の厚さが頂点位置K4における第1の外部電極3の幅方向の厚さよりも大きくなっている。したがって、積層コンデンサ1では、一対の主面2C,2Cの対向方向D3から見た場合に、幅方向への第2の外部電極4の張出量が同方向への第1の外部電極3の張出量に比べて大きくなっている。
【0039】
以上説明したように、積層コンデンサ1では、少なくとも湾曲面P1側で0<Yを満たすことで、一対の主面2C,2Cの少なくとも一方が凸状の湾曲面P1となっている場合でも、一対の主面2C,2Cの対向方向D3において素体2が第1の外部電極3より張り出すことを防止できる。これにより、積層コンデンサ1の姿勢が長さ方向に安定し易くなり、実装の際の積層コンデンサ1のセルフアライメントが容易となる。
【0040】
また、積層コンデンサ1では、少なくとも湾曲面P1側でY<Htを満たすことで、一対の主面2C,2Cの対向方向D3への素体2の張り出しが不足することを防止できる。これにより、ピックアップ装置の吸着ヘッドなどを素体2の主面2Cに容易に接触させることが可能となり、実装の際の積層コンデンサ1のピックアップ性を向上できる。さらに、積層コンデンサ1では、一対の主面2C,2Cの双方側でHt>Hsを満たすことで、いずれの主面2Cを実装面とした場合でも、第1の外部電極3の厚さが十分に確保される。このため、積層コンデンサ1の長さ方向の姿勢が更に安定し易くなり、実装の安定性を向上できる。
【0041】
積層コンデンサ1では、一対の第2の外部電極4,4のそれぞれについてTs>Hwを満たすことで、幅方向への第2の外部電極4の張出量が幅方向への第1の外部電極3の張出量よりも大きくなり、第2の外部電極4の実装面積を十分に確保できる。これにより、積層コンデンサ1の姿勢が幅方向に安定し易くなり、実装の際の積層コンデンサ1のセルフアライメントが一層容易となる。
【0042】
以下、本開示の実施例について説明する。本実施例では、まず、上記積層コンデンサ1と同等の構成を有する積層コンデンサのサンプルを複数作製し、Ht、Y、Hsのそれぞれを実測した。サンプル数は、10個とし、各サンプルのサイズは、3216サイズとした。
【0043】
図9(a)は、Ht、Y、Hsの実測結果を示す図である。また、
図9(b)は、Hw、Tsの実測結果を示す図である。実測にあたっては、サンプルを端面側、側面側、平面側からそれぞれセンタ研磨した断面にて、測定顕微鏡を用いて各寸法を測定した。各サンプルにおける各測定点での測定値の平均をHt、Hs、Y、Hw、Tsのそれぞれについて算出した。
【0044】
図9(a)に示すように、上記各サンプルにおいて、Htの平均値は27.16μm、Hsの平均値は18.93μm、Yの平均値は9.95μmであった。これらの結果から、Htの最適範囲は21μm~33μm、Hsの最適範囲は13μm~25μm、Yの最適範囲は6μm~14μmと見積もることができる。また、
図9(b)に示すように、上記各サンプルにおいて、Hwの平均値は26.44μm、Tsの平均値は49.78μmであった。これらの結果から、Hwの最適範囲は20μm~32μm、Tsの最適範囲は44μm~56μmと見積もることができる。
【0045】
また、
図10は、本開示の効果確認試験の結果を示す図である。この試験では、0<Y<Ht及びHt>Hsの双方を満たすサンプルを実施例とし、0<Y<Htのみを満たすサンプルを比較例1とした。また、Y>Htとなるサンプルを比較例2とし、Y<0となるサンプルを比較例3とした。実施例では、Htが27μm、Hsが20μm、Yが10μmであった。比較例1では、Htが15μm、Hsが30μm、Yが8μmであった。比較例2では、Htが27μm、Hsが20μm、Yが40μmであった。比較例3では、Htが27μm、Hsが20μm、Yが-10μmであった。
【0046】
評価項目は、実装の安定性及びピックアップ性の2項目とした。実装の安定性に関しては、実装後のサンプルにて一対の第1の外部電極の双方を観察し、第1の外部電極の双方が基板に対して浮いていないものを「良(OK)」とし、第1第1の外部電極の一方が基板に対して浮いているものを「不良(NG)」とした。ただし、安定性の不良は、必ずしも実装の不良とは限らない。ピックアップ性に関しては、マウンタ実装機を用いたピックアップ試験(評価数n=10000)を実施し、ピックアップ不良が生じなかった場合を「良(OK)」とし、ピックアップ不良が生じた場合を「不良(NG)」とした。
【0047】
図10に示すように、実施例では、実装の安定性及びピックアップ性の双方が得られたが、比較例1,3では、ピックアップ性は確保できたものの、実装の安定性は確保できなかった。また、比較例2では、実装の安定性は確保できたものの、ピックアップ性は確保できなかった。この結果から、本開示のように、0<Y<Htを満たし、且つHt>Hsを満たすことが、積層コンデンサの実装の安定性及びピックアップ性の向上に資することが確認できた。
【符号の説明】
【0048】
1…積層コンデンサ、2…素体、2A…端面、2B…側面、2C…主面、3…第1の外部電極、4…第2の外部電極、6…第1の内部電極、7…第2の内部電極、D1…一対の端面の対向方向、D2…一対の側面の対向方向、D3…一対の主面の対向方向、K1,K4…第1の外部電極の頂点位置、K2…主面の頂点位置、K3…第2の外部電極の頂点位置、P1…湾曲面。
【手続補正書】
【提出日】2022-08-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する一対の端面と、前記一対の端面間において前記一対の端面の対向方向に延在する一対の側面及び一対の主面と、を有する素体と、
前記素体内において前記一対の主面の対向方向に配列され、前記一対の端面の対向方向に延びる複数の第1の内部電極と、
前記素体内において前記一対の主面の対向方向に配列され、前記一対の側面の対向方向に延びる複数の第2の内部電極と、
前記一対の端面において前記一対の側面及び前記一対の主面に回り込むように配置された一対の第1の外部電極と、
前記一対の側面において前記一対の主面に回り込み、且つ前記第1の外部電極と離間して配置された一対の第2の外部電極と、を備え、
前記一対の主面の少なくとも一方は、凸状に湾曲する湾曲面となっており、
前記一対の側面の対向方向から見て、前記第1の外部電極の頂点位置における前記第1の外部電極の表面と前記主面との距離をHtとし、前記頂点位置と前記主面の頂点位置との間の前記一対の主面の対向方向の距離をYとした場合に、前記一対の第1の外部電極のそれぞれについて少なくとも前記湾曲面側で0<Y<Htを満たし、
前記一対の端面の対向方向から見て、前記第2の外部電極の頂点位置における前記第2の外部電極の表面と前記主面との距離をHsとした場合に、前記一対の第2の外部電極のそれぞれについて前記一対の主面の双方側でHt>Hsを満たす、積層コンデンサ。
【請求項2】
前記一対の主面の対向方向から見て、前記第1の外部電極の頂点位置における前記第1の外部電極の表面と前記側面との距離をHwとし、前記第2の外部電極の頂点位置における前記第2の外部電極の表面と前記側面との距離をTsとした場合に、前記一対の第2の外部電極のそれぞれについてTs>Hwを満たす、請求項1記載の積層コンデンサ。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本開示の一側面に係る積層コンデンサは、互いに対向する一対の端面と、一対の端面間において一対の端面の対向方向に延在する一対の側面及び一対の主面と、を有する素体と、素体内において一対の主面の対向方向に配列され、一対の端面の対向方向に延びる複数の第1の内部電極と、素体内において一対の主面の対向方向に配列され、一対の側面の対向方向に延びる複数の第2の内部電極と、一対の端面において一対の側面及び一対の主面に回り込むように配置された一対の第1の外部電極と、一対の側面において一対の主面に回り込み、且つ第1の外部電極と離間して配置された一対の第2の外部電極と、を備え、一対の主面の少なくとも一方は、凸状に湾曲する湾曲面となっており、一対の側面の対向方向から見て、第1の外部電極の頂点位置における第1の外部電極の表面と主面との距離をHtとし、頂点位置と湾曲面の頂点位置との間の一対の主面の対向方向の距離をYとした場合に、一対の第1の外部電極のそれぞれについて少なくとも湾曲面側で0<Y<Htを満たし、一対の端面の対向方向から見て、第2の外部電極の頂点位置における第2の外部電極の表面と主面との距離をHsとした場合に、一対の第2の外部電極のそれぞれについて一対の主面の双方側でHt>Hsを満たす。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0019】
第1の外部電極3は、端面2Aにおいて、第1の内部電極6の引出部分(後述の接続部6b)を覆うように形成されている。第1の外部電極3は、引出部分を覆う焼結層、焼結層を覆うめっき層を含んで構成されていてもよい。
焼結層は、金属やガラスを含んでいてもよい。金属は、Cu、Ni、Agなどであってもよい。めっき層は、単層及び多層のいずれであってもよい。多層の場合には、Niめっき層、Niめっき層を覆うSn層などを含んでいてもよい。本実施形態では、第1の外部電極3は、Cu焼結層3A、Niめっき層3B、Snめっき層3Cによる三層構造をなしている(
図2等参照)。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0021】
第2の外部電極4は、側面2Bにおいて、第2の内部電極7の引出部分(後述の接続部7b)を覆うように形成されている。第2の外部電極4は、第1の外部電極3と同様に、引出部分を覆う焼結層、焼結層を覆うめっき層を含んで構成されていてもよい。
焼結層は、金属やガラスを含んでいてもよい。金属は、Cu、Ni、Agなどであってもよい。めっき層は、単層及び多層のいずれであってもよい。多層の場合には、Niめっき層、Niめっき層を覆うSn層などを含んでいてもよい。本実施形態では、第2の外部電極4は、Cu焼結層4A、Niめっき層4B、Snめっき層4Cによる三層構造をなしている(
図3等参照)。