(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134012
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】地盤改良効果確認のための試験装置及び試験方法
(51)【国際特許分類】
E02D 1/08 20060101AFI20230920BHJP
E02D 3/12 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
E02D1/08
E02D3/12 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022039326
(22)【出願日】2022-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】519232068
【氏名又は名称】NPO法人地盤防災ネットワーク
(71)【出願人】
【識別番号】596164652
【氏名又は名称】太洋基礎工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】利根 誠
(72)【発明者】
【氏名】下坂 賢二
(72)【発明者】
【氏名】村田 芳信
(72)【発明者】
【氏名】大野 康年
(72)【発明者】
【氏名】加藤 敏彦
【テーマコード(参考)】
2D040
2D043
【Fターム(参考)】
2D040AA01
2D040AB01
2D040CA01
2D040CA02
2D040CB03
2D040GA02
2D043AA01
2D043AB02
2D043AB06
2D043AC03
2D043BA01
2D043BA10
(57)【要約】
【課題】測定効率を改善するとともに、測定精度を向上する。
【解決手段】地盤改良効果を確認するための試験装置1である。前記試験装置1は、貫入ロッド2の先端に地中に貫入する測定プローブ3を備える。前記測定プローブ3は、先端に動的コーン貫入試験に用いる先端コーン4が設けられるとともに、前記先端コーン4の上部に電気検層に用いる電極6を備えた電極部5が設けられており、前記電極6が配置された周方向位置と反対側の周方向位置に、前記電極部5の外径より径方向外側に突出し、前記先端コーン4の外径からは突出しない偏心鍔部16が設けられている。動的コーン貫入試験後、測定プローブ3を引き抜きながら電気検層を行う際、偏心鍔部16が貫入孔の孔壁に接触し、偏心鍔部16の上部に土砂が堆積することにより、電極6が孔壁に押し付けられる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤改良効果を確認するための試験装置であって、
前記試験装置は、貫入ロッドの先端に地中に貫入する測定プローブを備え、
前記測定プローブは、先端に動的コーン貫入試験に用いる先端コーンが設けられるとともに、前記先端コーンの上部に電気検層に用いる電極を備えた電極部が設けられており、
前記電極が配置された周方向位置と反対側の周方向位置に、前記電極部の外径より径方向外側に突出し、前記先端コーンの外径からは突出しない偏心鍔部が設けられていることを特徴とする地盤改良効果確認のための試験装置。
【請求項2】
前記先端コーンは、前記測定プローブを引き抜く際、該測定プローブから抜けるように構成されている請求項1記載の地盤改良効果確認のための試験装置。
【請求項3】
前記先端コーンは、前記貫入ロッドから延びる測定プローブ本体に外嵌され、基端部に前記偏心鍔部が設けられた鍔付き偏心スペーサーに外嵌されている請求項1、2いずれかに記載の地盤改良効果確認のための試験装置。
【請求項4】
前記鍔付き偏心スペーサーの内周面には、前記測定プローブ本体の外周面に設けられたノッチに嵌合する位置決め用の凸部が設けられている請求項3記載の地盤改良効果確認のための試験装置。
【請求項5】
前記電極部は、前記貫入ロッドから延びる測定プローブ本体に、電極を備えた外装スリーブが外嵌されている請求項1~4いずれかに記載の地盤改良効果確認のための試験装置。
【請求項6】
前記外装スリーブは、嵌合部が前記測定プローブ本体の周面に設けられた周方向固定用凸部に嵌合することにより、周方向への回転が固定されている請求項5記載の地盤改良効果確認のための試験装置。
【請求項7】
上記請求項1~6いずれかに記載の試験装置を用いて地盤改良効果の確認を行う試験方法であって、
前記先端コーンをハンマーの打撃によって地盤に打ち込む動的コーン貫入試験を行った後、貫入した前記測定プローブを引き抜きながら電気検層を行うことを特徴とする地盤改良効果確認のための試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状化対策を主目的として薬液系やセメント系の注入材を地盤に注入する薬液注入工法による地盤改良効果を確認するための試験装置及び試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、先の出願(特許文献1)において、薬液注入工法による地盤改良効果の確認方法について新たな提案を行った。具体的には、地盤改良後において、小型動的コーン貫入試験により深度とNd値との関係を示したNd値の深度分布図を得て、地盤改良前後における前記Nd値の増分量から地盤改良効果を確認する1次的効果確認を行い、
前記1次的効果確認によって地盤改良効果が認められない場合に、前記小型動的コーン貫入試験の貫入孔に電極を備えた測定プローブを挿入して比抵抗を測定する電気検層を行い、深度と比抵抗との関係を示した比抵抗深度分布図を得て、地盤改良前後における前記比抵抗の減分量から地盤改良効果を確認する2次的効果確認を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1記載の測定方法は、ロッド先端に取り付けたコーンをハンマ打撃によって貫入する動的コーン貫入試験を行った後、それを全て引き抜いてから、同じ貫入孔に、今度は圧入装置によって電気検層用の測定プローブを圧入するという手順で行われるため、動的コーン貫入試験における先端コーン貫入用の機器を設置した後、次いで電気検層のための測定プローブ圧入用の圧入装置を設置するというように、機器の設置が2回必要となり、機器の設置替えに多大な時間を要し、測定効率が悪かった。
【0005】
また、電気検層用の測定プローブを圧入する圧入装置は、反力架台やアンカーの設置に多大な時間を要するとともに、対象地盤の地質によっては、別途反力用のウェイトを準備する必要がある等、この点でも測定効率に課題があった。
【0006】
更に、電気検層では、測定プローブの周面に設けられた電極を孔壁に確実に接触させることが要求されるが、電極が孔壁にうまく接触せず、接触不良による測定精度の低下が生じやすかった。上記特許文献1には、貫入孔に挿入した際、外側電極を孔壁に接触させるため、電極の反対側に、外方に突出した接触促進用凸部が設けられているが、前記圧入装置によって測定プローブを圧入するとき、この接触促進用凸部が孔壁と接触して摩耗損傷することが多く、転用性に課題があった。
【0007】
そこで本発明の主たる課題は、測定効率を改善するとともに、測定精度を向上した地盤改良効果を確認するための試験装置及び試験方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、地盤改良効果を確認するための試験装置であって、
前記試験装置は、貫入ロッドの先端に地中に貫入する測定プローブを備え、
前記測定プローブは、先端に動的コーン貫入試験に用いる先端コーンが設けられるとともに、前記先端コーンの上部に電気検層に用いる電極を備えた電極部が設けられており、
前記電極が配置された周方向位置と反対側の周方向位置に、前記電極部の外径より径方向外側に突出し、前記先端コーンの外径からは突出しない偏心鍔部が設けられていることを特徴とする地盤改良効果確認のための試験装置が提供される。
【0009】
上記請求項1記載の発明では、試験装置に備えられた測定プローブとして、先端に動的コーン貫入試験に用いる先端コーンが設けられるとともに、前記先端コーンの上部に電気検層に用いる電極を備えた電極部が設けられたものを用いている。これによって、動的コーン貫入試験を実施した後、地中に貫入された測定プローブを引き抜きながら電気検層が行えるようになる。したがって、従来のように動的コーン貫入試験後にロッドを引き抜き、電気検層の測定プローブを圧入するという2回の圧入手間が無くなり、測定プローブを1回貫入して引き抜く過程で動的コーン貫入試験と電気検層が両方とも行えるので、測定効率が大幅に向上できる。
【0010】
また、前記測定プローブには、前記電極が配置された周方向位置と反対側の周方向位置に、前記電極部の外径より径方向外側に突出し、前記先端コーンの外径からは突出しない偏心鍔部が設けられている。このため、動的コーン貫入試験後、測定プローブを引き抜きながら電気検層を行う際、前記偏心鍔部が貫入孔の孔壁に接触し、孔壁の地山を削り取って、偏心鍔部の上部に土砂が堆積することにより、測定プローブを偏心鍔部が設けられた側と反対側に押し寄せるように作用する。これによって、前記電極が孔壁に接触しやすくなり、その結果、電気検層の測定精度が向上できる。
【0011】
請求項2に係る本発明として、前記先端コーンは、前記測定プローブを引き抜く際、該測定プローブから抜けるように構成されている請求項1記載の地盤改良効果確認のための試験装置が提供される。
【0012】
上記請求項2記載の発明では、前記測定プローブを引き抜きながら電気検層を行う際、動的コーン貫入試験時の接触抵抗の軽減のため電極部より大径に形成された先端コーンが、測定プローブから抜けることによって、電極部の電極が孔壁に接触しやすくなり、更に測定精度が向上するようになる。
【0013】
請求項3に係る本発明として、前記先端コーンは、前記貫入ロッドから延びる測定プローブ本体に外嵌され、基端部に前記偏心鍔部が設けられた鍔付き偏心スペーサーに外嵌されている請求項1、2いずれかに記載の地盤改良効果確認のための試験装置が提供される。
【0014】
上記請求項3記載の発明では、前記先端コーンを測定プローブの先端に設ける際、前記先端コーンが、前記貫入ロッドから延びる測定プローブ本体に外嵌され、基端部に前記偏心鍔部が備えられた鍔付き偏心スペーサーに外嵌されるようにしている。このように、前記偏心鍔部が鍔付き偏心スペーサーに設けられるため、偏心鍔部の摩耗損傷などが生じたときは、この鍔付き偏心スペーサーを交換すれば何度でも再使用できる。
【0015】
請求項4に係る本発明として、前記鍔付き偏心スペーサーの内周面には、前記測定プローブ本体の外周面に設けられたノッチに嵌合する位置決め用の凸部が設けられている請求項3記載の地盤改良効果確認のための試験装置が提供される。
【0016】
上記請求項4記載の発明では、前記鍔付き偏心スペーサーに設けられた偏心鍔部が、前記電極部の電極が配置された周方向位置と反対側の周方向位置に確実に配置されるようにするため、前記鍔付き偏心スペーサーの内周面及び測定プローブ本体の外周面にそれぞれ、位置決め用のノッチとこれに嵌合する凸部を設けている。
【0017】
請求項5に係る本発明として、前記電極部は、前記貫入ロッドから延びる測定プローブ本体に、電極を備えた外装スリーブが外嵌されている請求項1~4いずれかに記載の地盤改良効果確認のための試験装置が提供される。
【0018】
上記請求項5記載の発明では、前記測定プローブ本体を設けることにより、動的コーン貫入試験時に、貫入ロッドの打撃エネルギーが測定プローブ本体を通じて先端コーンに確実に伝達できる。また、この測定プローブ本体を外装スリーブで外装することによって、電気検層の際に測定プローブが引き抜きやすくなる。
【0019】
請求項6に係る本発明として、前記外装スリーブは、嵌合部が前記測定プローブ本体の周面に設けられた周方向固定用凸部に嵌合することにより、周方向への回転が固定されている請求項5記載の地盤改良効果確認のための試験装置が提供される。
【0020】
上記請求項6記載の発明では、前記測定プローブ本体に外装スリーブを取り付けたとき、電極部本体の電極と外装スリーブの電極との位置合わせのため、更には、測定プローブ本体と外装スリーブとの相対的な周方向の回転を防止するため、測定プローブ本体の周面に設けられた周方向固定用凸部が、外装スリーブに設けられた嵌合部に嵌合することにより、外装スリーブの周方向への回転が生じないようにしている。
【0021】
請求項7に係る本発明として、上記請求項1~6いずれかに記載の試験装置を用いて地盤改良効果の確認を行う試験方法であって、
前記先端コーンをハンマーの打撃によって地盤に打ち込む動的コーン貫入試験を行った後、貫入した前記測定プローブを引き抜きながら電気検層を行うことを特徴とする地盤改良効果確認のための試験方法が提供される。
【0022】
上記請求項7記載の発明は、上述の試験装置を用いて地盤改良効果の確認を行う試験方法であって、ハンマー打撃による動的コーン貫入試験を行った後、測定プローブを引き抜きながら電気検層を行うものである。このため、測定プローブの1回の貫入によって、貫入時に動的コーン貫入試験を行い、引き抜き時に電気検層を行うことができ、測定効率が大幅に改善する。
【発明の効果】
【0023】
以上詳説のとおり本発明によれば、測定効率が大幅に改善できるとともに、測定精度が向上できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明に係る試験装置1を用いて動的コーン貫入試験を実施している状態を示す断面図である。
【
図2】本発明に係る試験装置1を用いて電気検層を実施している状態を示す断面図である。
【
図3】測定プローブ3を示す、(A)は正面図、(B)は側面図である。
【
図5】測定プローブ本体8を示す、(A)は正面図、(B)は側面図である。
【
図6】測定プローブ3の先端部を拡大した斜視図である。
【
図7】測定プローブ3を貫入孔から引き抜いたときの先端部の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0026】
本発明は、埋立地等の軟弱地盤の地盤強化のため、水ガラス(珪酸ナトリウム)などの薬液系やセメント系などの地盤注入材を、地盤に注入する薬液注入工法による地盤改良の効果を確認するための試験装置1である。
【0027】
本発明に係る試験装置1は、
図1に示されるように、貫入ロッド2の先端に地中に貫入する測定プローブ3が備えられている。
【0028】
この試験装置1を用いた試験は、
図1に示されるように、動的コーン貫入試験を行うことによって前記測定プローブ3を地盤に貫入した後、
図2に示されるように、この貫入された測定プローブ3を引き抜く際に電気検層を行う。
【0029】
前記測定プローブ3は、
図3に示されるように、先端に動的コーン貫入試験に用いる先端コーン4が設けられるとともに、前記先端コーン4の上部に、電気検層に用いる電極6を備えた電極部5が設けられている。
【0030】
前記動的コーン貫入試験としては、標準貫入試験、スウェーデン貫入試験、ラムサウンディング、小型動的コーン貫入試験などの各種サウンディング手法を用いることができるが、好ましくは大型または中型のラムサウンディング(SRS、MRS)が用いられる。また、稼働方式も全自動、半自動、手動式など公知のものを用いることができる。したがって、本発明に係る試験装置1は、多様な地盤への対応が可能となる。
【0031】
本試験装置1を用いて動的コーン貫入試験を行うには、
図1に示されるように、貫入ロッド2に固定されたアンビル20をハンマー21によって軸方向に所定の強さの打撃力で打撃し、先端コーン4を地中に打ち込んでいき、貫入量と打撃回数を測定する。先端コーン4の貫入は、所定の長さに分割された貫入ロッド2を順次継ぎ足しながら、所要の深さまで行う。
【0032】
前記電気検層は、前記測定プローブ3に備えられた電極6によって、周囲の地盤の電気抵抗(比抵抗)を測定し、地盤改良の効果を確認するものである。薬液注入工法による改良体の出来高管理は一般に一軸圧縮強さquを用いて行われることが多いが、改良体の目標強度は、qu=50~100kPa程度と、さほど高いものではないため、サンプリングによる乱れ、地盤の不均一性等の理由により強度のばらつきが大きく、改良前後の特性変化を定量的に把握することが難しい。そこで、強度より敏感な特性値を定量的に把握するため、電気比抵抗の計測が効果的である。
【0033】
本試験装置1を用いて電気検層を行うには、動的コーン貫入試験の実施後、貫入ロッドを引き抜く際に用いられる引き抜き装置22を利用して、貫入ロッド2を引き抜く過程で比抵抗の測定を行う。前記引き抜き装置22としては、どのような形態のものでもよいが、例えば
図2に示されるように、貫入ロッド2の両側にそれぞれ上下方向に沿って伸縮自在とされたピストン23が配置され、これらピストン23の上端同士に跨設された架台24の中央部に、前記貫入ロッド2を挟持するチャック25が備えられ、前記チャック25によって貫入ロッド2を保持した状態で、両側のピストン23が同調して伸長し、前記架台24が上方向に移動することにより、測定プローブ3が引き抜かれる形態のものが挙げられる。
【0034】
以下、前記測定プローブ3について更に詳細に説明すると、
前記測定プローブ3は、断面略円形の棒状の外観を成し、上端部には、貫入ロッド2との連結のためのねじ部(図示せず)が形成され、貫入ロッド2の下端部に設けられたねじ部と螺合できるようになっている。また、前記ねじ部の下側には、複数の前記電極6が周方向の所定位置に軸方向に沿って所定の間隔を空けて1列に配列された電極部5が設けられるとともに、この電極部5の下側に前記先端コーン4が配置されている。
【0035】
前記測定プローブ3は、
図4に示されるように、貫入ロッド2に連結される測定プローブ本体8と、この測定プローブ本体8の前記電極部5に外装される外装スリーブ9と、前記測定プローブ本体8の下端部に外嵌される鍔付き偏心スペーサー10と、前記鍔付き偏心スペーサー10に外嵌される先端コーン4とから構成されている。
【0036】
前記測定プローブ本体8は、
図5に示されるように、動的コーン貫入試験の際に貫入ロッド2に入力された軸方向の打撃力を下端の先端コーン4に伝達可能な強度を有する金属からなる断面略円形の棒状部材であり、上端から少なくとも前記電極6が配置された部分までの軸方向区間に中空部が形成されている。上端部の内周面には、貫入ロッド2に螺合されるねじ部が形成されている。各電極6には、測定プローブ本体8の上端から前記中空部を通って配線された電気ケーブル7が延びている。前記電気ケーブル7の上端は、全長に亘って断面中空状の円筒形に形成された貫入ロッド2の中空部を通って地上まで延びており、更にその先端は、測定装置や記録装置に接続されている。
【0037】
また、前記測定プローブ本体8の電極6が配置された軸方向区間の上部及び下部の外周面にはそれぞれ、外装スリーブ9との間の間隙に地下水などが浸入するのを防止するため、1又は複数のリング状の止水部材11が設けられている(
図4)。
【0038】
更に、前記測定プローブ本体8の前記電極6が配置される軸方向区間には、軸方向に沿うとともに前記中空部と連通する溝部が設けられ、この溝部に樹脂などの電気絶縁性を有する素材からなる絶縁部材12が嵌合しており、前記電極6は、この絶縁部材12に固定されるようになっている。
【0039】
前記電極6の配置は、2極法や3極法でもよいが、4極法とするのが好ましい。4極法の電極配置は、
図3~
図5に示されるように、上下方向(軸方向)に沿って所定の間隔を空けて4つの電極6が1列に配列されるとともに、上下方向の両端がそれぞれ電流電極6Aとされ、中間の2つが電位電極6Vとされる。隣り合う電極間の中心間距離は、それぞれ2.5cmとするのが好ましい。4極法を用いることにより、地表電極の設置が不要となり、測定値が安定するなどの利点がある。
【0040】
前記電極6としては、導電性の金属材が用いられ、測定プローブ本体8の中空内部から、測定プローブ3の外周面まで電気的に連通するように設けられている。そして、測定プローブ本体8の中空内部でそれぞれ電気ケーブル7の下端が接続されている。
【0041】
前記電極部5には、前記貫入ロッド2から延びる測定プローブ本体8に、周面に露出する複数の電極6を備えた外装スリーブ9が外嵌されている。この外装スリーブ9に備えられた電極6は、測定プローブ本体8に備えられた電極6と同様に、軸方向に沿って所定の間隔を空けて1列に配列されている。前記外装スリーブ9を測定プローブ本体8に装着した状態で、前記外装スリーブ9に備えられた各電極6は、対応する測定プローブ本体8に備えられた電極6と電気的に接続するようになっている。
【0042】
前記外装スリーブ9は、樹脂などの電気絶縁性を有する素材からなるとともに、軸方向の両端が開放した略円筒状の部材である。この外装スリーブ9は、
図3に示されるように、測定プローブ本体8に挿嵌した状態で、その外径が、電極部5より上側の測定プローブ3(測定プローブ本体8)の外径より大きく形成されている。外装スリーブ9の外径を電極部5より上側の測定プローブ3の外径より大きく形成することにより、測定プローブ3を引き抜く際、外装スリーブ9の周面に露出する電極6が孔壁に接触しやすくなり、測定精度が向上するとともに、測定プローブ3の損傷が抑制できる。
【0043】
前記外装スリーブ9は、前記測定プローブ本体8の周面に設けられた周方向固定用凸部14が、外装スリーブ9に設けられた嵌合部15に嵌合することにより、測定プローブ本体8との相対的な周方向への回転が生じないようになっている。前記周方向固定用凸部14は、測定プローブ本体8の電極部5の上端部に、軸方向に長い略長方形状又は略長円形状に形成されている。また、これに対応する形状で、前記嵌合部15が前記外装スリーブ9の上端部に形成されている。前記外装スリーブ9を測定プローブ本体8に挿嵌した状態で、前記嵌合部15が周方向固定用凸部14に嵌合することにより、測定プローブ本体8に備えられた電極6と外装スリーブ9に備えられた電極6との位置合わせができるとともに、測定プローブ本体8と外装スリーブ9との周方向の回転が防止でき、測定プローブ3の貫入時や引き抜き時に、測定プローブ本体8に備えられた電極6と外装スリーブ9に備えられた電極6との位置ずれが生じないようになっている。
【0044】
本発明に係る試験装置1では、
図3(B)及び
図6に示されるように、前記測定プローブ3の前記電極6が配置された周方向位置と反対側の周方向位置に、電極部5の外径より径方向外側に突出し、前記先端コーンの外径からは突出しない偏心鍔部16が設けられている。前記偏心鍔部16は、前記電極6が配置された周方向位置と反対側の周方向位置を中心とした周方向に所定範囲において、測定プローブ3の外径より径方向外側に突出する鍔状(フランジ状)の突出部であり、この測定プローブ3の外径より径方向外側に突出する所定の周方向範囲以外の範囲では、測定プローブ3の外径とほぼ同径に形成されることにより、測定プローブ3の中心軸に対して偏心している。
【0045】
前記偏心鍔部16が設けられることにより、動的コーン貫入試験後、測定プローブ3を引き抜きながら電気検層を行う際、
図7に示されるように、前記偏心鍔部16が貫入孔の孔壁に接触し、孔壁表面の地山を削り取って、偏心鍔部16の上部に土砂が堆積することにより、測定プローブ3を偏心鍔部16が設けられた側と反対側に押し寄せるように作用する。これによって、偏心鍔部16と反対側に設けられた電極6が孔壁に接触しやすくなり、その結果、電気検層の測定精度が向上できるようになる。
【0046】
前述の通り偏心鍔部16の上部に土砂が堆積することによって測定プローブ3を電極6が設けられた側に押し寄せるという効果を確実に発揮するため、前記偏心鍔部16は、前記電極6が配置された区間より下側に設けるのが好ましい。図示例では、前記偏心鍔部16は、前記電極6を備えた外装スリーブ9の直ぐ下側であって、先端コーン4との間に設けられている。
【0047】
前記偏心鍔部16は、
図3(B)及び
図6に示されるように、外装スリーブ9の外径から下側に向けて徐々に径方向外側に拡径する断面傾斜状に形成するのがよい。前記偏心鍔部16をこのような、なで肩の断面形状で形成することにより、測定プローブ3を引き抜く際、孔壁との接触抵抗が軽減できるとともに、偏心鍔部16の上部に堆積した土砂が、堆積し過ぎずに程良く孔壁側に排土され、スムーズな引き抜き作業が行えるようになる。
【0048】
前記偏心鍔部16が設けられる周方向範囲は、前記電極6が配置された周方向位置と反対側の周方向位置を中心として、周方向に1/3以上2/3以下、特に1/3以上1/2以下であるのが好ましい。1/3より小さいと、偏心鍔部16に土砂が堆積することによって測定プローブ3を電極6側に押し寄せる効果が小さく、2/3より大きいと測定プローブ3を引き抜く際の引抜き抵抗が大きくなるおそれがある。
【0049】
前記偏心鍔部16は、動的コーン貫入試験の際に抵抗とならないよう、先端コーン4の外径より径方向外側に突出しない範囲で、前記電極部5の外径より径方向外側に突出している。このように形成するため、鍔付き偏心スペーサー10の先端コーン4が外装される部分の外径の中心軸を内径の中心軸に対して偏心させることにより、先端コーン4の中心軸を測定プローブ本体8の中心軸と偏心した位置に設けてもよい。これによって、先端コーン4の中心軸が測定プローブ本体8の中心軸に対して、電極6が配置された周方向位置と反対側に若干ずれた位置に配置されるようになる。
【0050】
前記偏心鍔部16は、
図4に示されるように、先端コーン4が外嵌される前記鍔付き偏心スペーサー10の基端部に設けられている。つまり、前記先端コーン4は、前記貫入ロッド2から延びる測定プローブ本体8に外嵌され、基端部に前記偏心鍔部14が設けられた鍔付き偏心スペーサー10に外嵌されている。
【0051】
前記鍔付き偏心スペーサー10は、軸方向の両端が開放した略円筒状に形成されるとともに、上端部(基端部)にフランジ状の前記偏心鍔部16が形成された樹脂や金属などからなるスリーブ状部材である。かかる鍔付き偏心スペーサー10は、測定プローブ本体8の下端部に外装される。該鍔付き偏心スペーサー10は、測定プローブ3の貫入時及び引き抜き時においても測定プローブ本体8から脱落しないように、測定プローブ本体8に対して脱落不能な固定手段によって固定されている。このような固定手段としては、測定プローブ本体8に対するねじ、ピン、リベットなどによる機械要素結合や溶接等が挙げられる。
【0052】
前記鍔付き偏心スペーサー10の内周面には、前記測定プローブ本体8の外周面に設けられたノッチ17(
図5)に嵌合する位置決め用の凸部(図示せず)が設けられており、この位置決め用の凸部を前記ノッチ17に嵌合させることにより、鍔付き偏心スペーサー10に設けられた偏心鍔部16が電極6の周方向位置と反対側に位置するように構成されている。
【0053】
前記鍔付き偏心スペーサー10には、先端側から前記先端コーン4が外装されるようになっている。前記先端コーン4は、鍔付き偏心スペーサー10とは固定されておらず、測定プローブ3を引き抜く際、該測定プローブ3から抜けるように構成されている。前記先端コーン4は前記外装スリーブ9や偏心鍔部14の外径より大きな外径で形成されるため、測定プローブ3を引き抜きつつ電気検層を行う際、先端コーン4が付いてると、かえって外装スリーブ9に備えられた電極6が孔壁に接触しにくくなるおそれがあるため、動的コーン貫入試験の終了後は、そのまま孔底に残置しておくようにするのがよい。
【0054】
前記先端コーン4は、各種動的コーン貫入試験の規定に適合した形状及び寸法のものが用いられる。前記先端コーン4は、これより上部の測定プローブ3の外径より大きな外径を有しており、動的コーン貫入試験の際に、先端コーン4によって形成された貫入孔の孔壁に、測定プローブ3の先端コーン4より上側部分が接触しないように構成されている。
【0055】
前記測定プローブ3の組立ては、
図4に示されるように、電極6及び電気ケーブル7を取り付けるとともに、止水部材11を取り付けた測定プローブ本体8に、下端側から、外装スリーブ9、鍔付き偏心スペーサー10の順に挿嵌し、前記鍔付き偏心スペーサー10を測定プローブ本体8に固定した後、最後に鍔付き偏心スペーサー10に先端コーン4を外嵌して完了する。
【0056】
以上の構成からなる試験装置1を用いて地盤改良効果を確認するための試験を行うには、
図1に示されるように、貫入ロッド2及び電気ケーブル7を順次継ぎ足しながら、先端コーン4をハンマー21の打撃によって地盤に打ち込む動的コーン貫入試験を行った後、
図2に示されるように、この動的コーン貫入試験によって打ち込まれた測定プローブ3を引き抜き装置22によって引き抜きながら電気検層を行う。このように、動的コーン貫入試験によって打ち込まれた測定プローブ3を引き抜く際に電気検層を行うことができるため、機器の設置替えの手間が大幅に軽減でき、測定効率が向上できる。また、電気検層のための測定プローブを圧入する圧入装置の設置が必要なくなるとともに、反力用のウェイトの準備なども不要となり、この点からも測定効率が向上できる。
【0057】
地盤改良効果の確認は、前記試験装置1を用いて地盤改良前後に動的コーン貫入試験及び電気検層を行い、動的コーン貫入試験によって得られた地盤改良前後におけるN値又はNd値の深度分布図、及び電気検層によって得られた地盤改良前後における比抵抗の減分量を比較することにより行う。
【符号の説明】
【0058】
1…試験装置、2…貫入ロッド、3…測定プローブ、4…先端コーン、5…電極部、6…電極、7…電気ケーブル、8…測定プローブ本体、9…外装スリーブ、10…鍔付き偏心スペーサー、11…止水部材、12…絶縁部材、14…周方向固定用凸部、15…嵌合部、16…偏心鍔部、17…ノッチ