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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134014
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】積層体、及び間仕切りシート
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/02 20060101AFI20230920BHJP
   D03D 19/00 20060101ALI20230920BHJP
   D03D 1/00 20060101ALI20230920BHJP
   D06M 15/333 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
B32B5/02 C
D03D19/00
D03D1/00 Z
D06M15/333
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022039329
(22)【出願日】2022-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】508179545
【氏名又は名称】東洋紡STC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸山 大
(72)【発明者】
【氏名】石黒 和宏
【テーマコード(参考)】
4F100
4L033
4L048
【Fターム(参考)】
4F100AK15A
4F100AK15C
4F100AK41B
4F100AK68B
4F100AK68H
4F100AT00A
4F100AT00C
4F100BA03
4F100BA06
4F100DG12B
4F100EJ172
4F100EJ422
4F100GB08
4F100GB81
4F100YY00B
4L033AA07
4L033AB05
4L033AC11
4L033CA28
4L048AA20
4L048AA34
4L048AB07
4L048AB11
4L048AB12
4L048AB13
4L048BA08
4L048CA00
4L048CA01
4L048CA15
4L048DA24
4L048DA30
4L048EB00
(57)【要約】
【課題】ロール状に保管したときに形状が変形し難い積層体を提供する。
【解決手段】第1のフィルムと、絡み織りされた織物と、第2のフィルムと、を順に有する積層体であって、下記式(1)を満たすことを特徴とする積層体。
A/B≦3.00 ・・・(1)
[式中、Aは、前記積層体の織目区画のうちの最大厚み(mm)を示し、Bは前記織目区画の中心における厚み(mm)を示す。]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のフィルムと、
絡み織りされた織物と、
第2のフィルムと、を順に有する積層体であって、下記式(1)を満たすことを特徴とする積層体。
A/B≦3.00 ・・・(1)
[式中、Aは、前記積層体の織目区画のうちの最大厚み(mm)を示し、Bは前記織目区画の中心における厚み(mm)を示す。]
【請求項2】
更に下記式(2)を満たす請求項1に記載の積層体。
A/B×√C≦48 ・・・(2)
[式中、Aは前記と同じ意味であり、Bは前記と同じ意味であり、Cは前記積層体の目付(g/m)を示す。]
【請求項3】
前記織目区画の前記織物の経糸方向における最大長さは1mm以上、16mm以下であり、且つ前記織目区画の前記織物の緯糸方向における最大長さは1mm以上、16mm以下である請求項1または2に記載の積層体。
【請求項4】
前記織物は、目止め剤を含有し、前記目止め剤の含量は、前記織物と前記目止め剤の合計100質量部に対して、10質量部以上、25質量部以下である請求項1~3のいずれかに記載の積層体。
【請求項5】
前記織物は複数の経糸を有し、前記複数の経糸は、それぞれ2本以上絡み合っており、撚り数が15T/m以下であり、且つ繊度が100dtex以上、1300dtex以下である請求項1~4のいずれかに記載の積層体。
【請求項6】
前記織物の緯糸は、繊度が200dtex以上、2600dtex以下である請求項1~5のいずれかに記載の積層体。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の積層体を有する間仕切りシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体、及び間仕切りシートに関する。
【背景技術】
【0002】
これまでに繊維ネットに防水層等の層を積層して形成したシートが知られている。例えば特許文献1には、複数の防水層を積層した積層体中に補強布層が積層された防水シートであって、補強布層は、地経糸と絡経糸とからなる経糸を互いに縄編み状に絡み合わせたものに、緯糸を織り込んでなる織布からなる防水シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-168089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されているよう従来のシートは、ロール状に巻いて保管するとロール形状が崩れて保管し難かった。本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ロール状に保管したときに形状が変形し難い積層体を提供することにある。他の目的は、ロール状に保管したときに形状が変形し難い間仕切りシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施の形態に係る積層体は下記[1]の通りである。
[1]第1のフィルムと、
絡み織りされた織物と、
第2のフィルムと、を順に有する積層体であって、下記式(1)を満たすことを特徴とする積層体。
A/B≦3.00 ・・・(1)
[式中、Aは、積層体の織目区画のうちの最大厚み(mm)を示し、Bは織目区画の中心における厚み(mm)を示す。]
【0006】
上記の通り、織目区画の最大厚みAの織目区画の中心の厚みBに対する割合を式(1)を満たすように制御することにより、積層体は、ロール状に保管したときに形状が変形し難くなる。実施の形態に係る積層体は、以下の[2]~[6]のいずれかであることが好ましい。また実施の形態に係る間仕切りシートは下記[7]の通りである。
[2]更に下記式(2)を満たす[1]に記載の積層体。
A/B×√C≦48 ・・・(2)
[式中、Aは上記と同じ意味であり、Bは上記と同じ意味であり、Cは積層体の目付(g/m)を示す。]
[3]織目区画の織物の経糸方向における最大長さは1mm以上、16mm以下であり、且つ織目区画の織物の緯糸方向における最大長さは1mm以上、16mm以下である[1]または[2]に記載の積層体。
[4]織物は、目止め剤を含有し、目止め剤の含量は、織物と目止め剤の合計100質量部に対して、10質量部以上、25質量部以下である[1]~[3]のいずれかに記載の積層体。
[5]織物は複数の経糸を有し、複数の経糸は、それぞれ2本以上絡み合っており、撚り数が15T/m以下であり、且つ繊度が100dtex以上、1300dtex以下である[1]~[4]のいずれかに記載の積層体。
[6]織物の緯糸は、繊度が200dtex以上、2600dtex以下である[1]~[5]のいずれかに記載の積層体。
[7][1]~[6]のいずれかに記載の積層体を有する間仕切りシート。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、上記構成により、ロール状に保管したときに形状が変形し難い積層体を提供することができる。また上記構成により、ロール状に保管したときに形状が変形し難い間仕切りシートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1のフィルムと、絡み織りされた織物と、第2のフィルムとの積層体の一例を示す平面図である。
図2図2は、第1のフィルムと、絡み織りされた織物と、第2のフィルムとの積層体の他の一例を示す平面図である。
図3図3は、積層体をロール状に巻いて、床面に置いたときのロール状の積層体の側面図である。
図4図4は、図3のロール状の積層体を床面上に静置した後に、ロール状の積層体をひっくり返したときの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態に係る積層体は、第1のフィルムと、絡み織りされた織物と、第2のフィルムと、を順に有する積層体であって、下記式(1)を満たす。
A/B≦3.00 ・・・(1)
[式中、Aは、積層体の織目区画のうちの最大厚み(mm)を示し、Bは織目区画の中心における厚み(mm)を示す。]
【0010】
上記の通り、織目区画の最大厚みAの織目区画の中心の厚みBに対する割合を、式(1)を満たすように制御することにより、積層体は、ロール状に保管したときに形状が変形し難いものになる。以下では実施の形態に係る積層体の各構成について詳述する。
【0011】
絡み織りされた織物(以下、「絡み織物」と記載する場合がある)とは、複数の経糸が互いに絡みながら緯糸と組み合った織物である。絡み織物としては、例えば、図1に示すように、互いに絡み合った第1経糸5aと第2経糸5bが上下方向(即ち、図1の手前奥方向)に直接接触する点を接触点としたとき、経方向に隣り合う接触点と接触点の間の隙間に緯糸4が織り込まれているものが挙げられる。図1に示す通り、絡み織物3は、第1経糸5aと第2経糸5bの上下方向の接触点において、常に第2経糸5bが第1経糸5aより上側に位置するように織られていてもよい。一方、図2に示す通り、絡み織物3は、第1経糸5cと第2経糸5dの上下方向の接触点において、第1経糸5cと第2経糸5dとが交互に上側に位置するように織られていてもよい。絡み合っている経糸の数は、2~4本であることが好ましく、2~3本であることがより好ましく、2本であることが更により好ましい。複数の経糸の隙間一つ当たりに挿入される緯糸の数は、1~2本であることが好ましく、1本であることがより好ましい。
【0012】
積層体は、式(1)のA/B≦3.00の要件を満たすものである。A/Bの値が3.00以下であることにより、積層体をロール状にするときにロール内に発生する隙間を低減することができるため、経時的に隙間から空気が抜けることに伴う形状変化を防止し易くすることができる。A/Bの値は、より好ましくは2.90以下、更に好ましくは2.60以下、更により好ましくは2.50以下、特に好ましくは2.35以下である。一方、A/Bの値は、好ましくは1.20以上であることが好ましい。これにより積層体の表面に微小な凹凸ができ易くなるため、ロールの横ずれ等を防止し易くすることができる。A/Bの値は、より好ましくは1.30以上、更に好ましくは1.40以上、更により好ましくは1.50以上、特に好ましくは1.60以上である。
【0013】
織目区画とは、一つの織目のすきまを囲む仮想領域である。具体的には、図1中、積層体6の織目区画10は、緯糸4と、緯糸4の上側(手前側)に位置する経糸との接触点を結ぶ仮想線により囲まれた区画である。なお図1の当該接触点では、第1経糸5aが上側(手前側)に位置している。図2中、積層体6の織目区画10は、緯糸4と、緯糸4の上側(手前側)に位置する経糸との接触点を結ぶ仮想線により囲まれた区画である。なお図2の当該接触点では、第1経糸5cと第2経糸5dが交互に上側(手前側)に位置している。式(1)中の織目区画の最大厚みは、通常、経糸と緯糸との接触点における積層体の厚みに相当する。なお図1図2中、絡み織物3の上側(手前側)に第2のフィルム2が積層されており、絡み織物3の下側(奥側)に第1のフィルムが積層されている。
【0014】
積層体の織目区画のうちの最大厚みAは、0.1mm以上、6mm以下であることが好ましく、0.2mm以上、1.8mm以下であることがより好ましく、0.3mm以上、1.2mm以下であることが更に好ましく、0.3mm以上、0.8mm以下であることが更により好ましく、0.3mm以上、0.6mm以下であることが特に好ましく、0.3mm以上、0.5mm以下であることが最も好ましい。これにより、積層体の強度の向上と軽量化を両立し易くすることができる。
【0015】
織目区画の中心における厚みBは、0.04mm以上、2mm以下であることが好ましく、0.06mm以上、0.6mm以下であることがより好ましく、0.12mm以上、0.4mm以下であることが更に好ましい。これにより、積層体の強度の向上と軽量化を両立し易くすることができる。
【0016】
更に積層体は、下記式(2)を満たすことが好ましい。
A/B×√C≦48 ・・・(2)
[式中、Aは上記と同じ意味であり、Bは上記と同じ意味であり、Cは積層体の目付(g/m)を示す。]
【0017】
積層体の目付が大きければロール状にしたときにロール内の間隙の空気が抜けてロール形状が変化し易いため、上記式(2)を満たすように、積層体の目付が大きい程、織目区画の最大厚みAの織目区画の中心の厚みBに対する割合が低くなるように制御することが好ましい。そのため、A/B×√Cの値は、48以下であることが好ましく、42以下であることがより好ましく、39以下であることが更に好ましい。一方、A/B×√Cの値は、15以上であることが好ましい。これにより積層体自体が変形し難くなると共に、積層体の表面に微小な凹凸ができ易くなるため、ロールの横ずれ等を防止し易くすることができる。A/B×√Cの値は、20以上であることがより好ましく、25以上であることが更に好ましい。
【0018】
積層体の目付は、150g/m以上、600g/m以下であることが好ましい。目付が150g/m以上であることにより、積層体自体を変形し難くすることができる。目付は、より好ましくは200g/m以上、更に好ましくは250g/m以上、更により好ましくは300g/m以上である。一方、600g/m以下であることにより、積層体をロール状にし易くすることができる。目付は、より好ましくは500g/m以下、更に好ましくは450g/m以下、更により好ましくは420g/m以下である。
【0019】
第1のフィルムと第2のフィルムは、それぞれ樹脂を含むことが好ましく、樹脂からなることが好ましい。樹脂としては、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン(PU)、エチレンー酢酸ビニル共重合体(PVA)、またはこれらの混合物が好ましく、ポリ塩化ビニルがより好ましい。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。ポリ塩化ビニルは、高い耐候性と耐薬品性、難燃性を持ち、熱可塑性樹脂であり加工性に優れ、印刷性も高い。またポリ塩化ビニルと着色剤を混合することにより、透明だけでは無く多色を得られ易いため着色性も高い。
【0020】
第1のフィルムと第2のフィルムは、それぞれ樹脂と添加剤とを含んでいてもよい。添加剤として、顔料等の着色剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、抗菌剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、ワックス等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
第1のフィルムと第2のフィルムは、それぞれ厚みが0.02mm以上、1mm以下であることが好ましく、0.04mm以上、0.3mm以下であることがより好ましく、0.06mm以上、0.2mm以下であることが更に好ましい。これにより、積層体の強度の向上と軽量化を両立し易くすることができる。
【0022】
第1のフィルム、絡み織物、及び第2のフィルムは、それぞれ接合して積層されていることが好ましい。接合として接着、溶着等が挙げられる。接合方法としては、絡み織物を、第1のフィルムと第2のフィルムで挟み込んだ後、フィルム樹脂の軟化温度以上、融解温度以下の熱環境下で熱圧着することにより各層を接合する方法が好ましい。
【0023】
織目区画の織物の経糸方向における最大長さは1mm以上、16mm以下であり、且つ織目区画の織物の緯糸方向における最大長さは1mm以上、16mm以下であることが好ましい。当該最大長さが16mm以下であることにより、積層体の保形性を向上することができる。当該最大長さは、より好ましくは14mm以下、更に好ましくは12mm以下、更により好ましくは10mm以下である。一方、当該最大長さが1mm以上であることにより、積層体の柔軟性を向上することができる。当該最大長さは、より好ましくは2mm以上、更に好ましくは3mm以上、更により好ましくは4mm以上である。
【0024】
織物は、目止め剤を含有し、目止め剤の含量は、織物と目止め剤の合計100質量部に対して、10質量部以上、25質量部以下であることが好ましい。目止め剤の含量が10質量部以上であることにより、織物部分の強度を向上することができる。目止め剤の含量は、より好ましくは12質量部以上、更に好ましくは15質量部以上である。一方、目止め剤の含量が25質量部以下であることにより、織物部分の柔軟性を向上することができる。目止め剤の含量は、より好ましくは22質量部以下、更に好ましくは20質量部以下である。
【0025】
目止め剤は、ポリ酢酸ビニルを含むポリ酢酸ビニル系接着剤、アクリル系ポリエステル樹脂、アクリル酸エステル共重合体、アクリルスチレン共重合体、アクリル酸共重合体等を含むアクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤、変性ポバールを含む変性ポバール系接着剤、でんぷん糊、またはこれらの混合物であることが好ましい。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また目止め剤は、水性接着剤であることが好ましい。
【0026】
織物は複数の経糸を有し、複数の経糸は、それぞれ2本以上絡み合っており、撚り数が15T/m以下であり、且つ繊度が100dtex以上、1300dtex以下であることが好ましい。
【0027】
経糸の撚り数が15T/m以下であることにより、積層体の表面の凹凸を低減し易くすることができる。撚り数は、15T/m以下であることが好ましく、10T/m以下であることがより好ましく、6T/m以下であることが更により好ましく、2T/m以下であることが特に好ましく、0T/mすなわち無撚であることが最も好ましい。一方、経糸の撚り数は2T/m以上であってもよく、4T/m以上であってもよい。これにより、織物部分の強度を向上することができる。なお当該経糸の撚り数とは、絡み合っている複数の経糸のうちの一本当たりの撚り数である。
【0028】
経糸の繊度が、1300dtex以下であることにより、積層体の表面の凹凸を低減し易くすることができる。繊度は、1300dtex以下であることが好ましく、1000dtex以下であることがより好ましく、800dtex以下であることが更に好ましく、700dtex以下であることが更により好ましく、600dtex以下であることが特に好ましい。一方、経糸の繊度は、100dtex以上であることが好ましい。これにより織物部分の強度を向上することができる。繊度は、100dtex以上であることが好ましく、150dtex以上であることがより好ましく、200dtex以上であることが更に好ましく、250dtex以上であることが更により好ましい。なお当該繊度は、絡み合っている複数の経糸のうちの一本当たりの繊度である。
【0029】
織物の緯糸は、繊度が200dtex以上、2600dtex以下であることが好ましい。緯糸の繊度が、2600dtex以下であることにより、積層体の表面の凹凸を低減し易くすることができる。繊度は、2600dtex以下であることが好ましく、2000dtex以下であることがより好ましく、1600dtex以下であることが更に好ましく、1400dtex以下であることが更により好ましく、1200dtex以下であることが特に好ましい。一方、緯糸の繊度は、200dtex以上であることが好ましい。これにより織物部分の強度を向上することができる。繊度は、200dtex以上であることが好ましく、300dtex以上であることがより好ましく、400dtex以上であることが更に好ましく、500dtex以上であることが更により好ましい。なお当該繊度は、緯糸一本当りの繊度である。
【0030】
絡み合っている経糸の合計の繊度は、緯糸一本当りの繊度の0.8倍以上、1.2倍以下であることが好ましく、0.9倍以上、1.1倍以下であることがより好ましい。これにより、経糸方向と緯糸方向の強度のバラツキを低減することができるため、積層体を加工し易くすることができる。なお絡み合っている経糸の合計の繊度とは、2本ずつ経糸が絡み合っている場合には2本の経糸の繊度を合計した値である。
【0031】
緯糸の撚り数は、10T/m以下であることが好ましく、7T/m以下であることがより好ましく、3T/m以下であることが更により好ましく、1T/m以下であることが特に好ましく、0T/mすなわち無撚であることが最も好ましい。これにより、積層体の表面の凹凸を低減し易くすることができる。一方、緯糸の撚り数は2T/m以上であってもよく、4T/m以上であってもよい。これにより、織物部分の強度を向上することができる。
【0032】
織物の経糸密度と緯糸密度は、それぞれ0.5~14本/インチであることが好ましく、1.0~12本/インチであることがより好ましく、2~6本/インチであることが更に好ましい。密度が14本/インチ以下であることにより、積層体をロール状にし易くすることができる。一方、密度が0.5本/インチ以上であることにより、積層体を変形し難くすることができる。なお当該経糸密度は、絡み合う複数の経糸を1本とみなしたときの密度である。
【0033】
経糸と緯糸は、それぞれ複数のフィラメントを含むマルチフィラメント糸であることが好ましい。これにより積層体の強度を向上することができる。マルチフィラメント糸の単糸繊度は、2dtex以上、20dtex以下であることが好ましく、3dtex以上、15dtex以下であることがより好ましく、4dtex以上、12dtex以下であることが更に好ましい。当該単糸繊度のフィラメントは形状の均一性に優れるため、絡み織物の厚みを低減し易くすることができる。経糸と緯糸は、それぞれ当該単糸繊度を有するフィラメントを10本以上、400本以下含むことが好ましく、20本以上、300本以下含むことがより好ましい。
【0034】
マルチフィラメント糸は、有機繊維、無機繊維、樹脂コーティングされた無機繊維、またはこれらの混合繊維を含んでいることが好ましく、有機繊維を含んでいることがより好ましい。有機繊維として、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリアミド繊維、またはこれらの混合繊維が好ましく、ポリエステル繊維がより好ましく、ポリエチレンテレフタレート繊維が更に好ましい。これによりコストを低減することができる。無機繊維として、炭素繊維、ガラス繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維、ボロン繊維、またはこれらの混合繊維が好ましい。これにより、絡み織物とフィルムの積層時の加熱の際に繊維が変形し難くなる。樹脂コーティングされた無機繊維としては、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等がコーティングされた無機繊維が挙げられる。
【0035】
積層体はロール状の形態で保管されることが好ましい。ロール状の形態で保管することにより折り目等が付かないため、積層体を更に加工し易くすることができる。積層体をロール状にする場合には、例えば、絡み織物とフィルムを熱圧着して軟化温度以下になった後に、芯材と巻取機を用いて巻き取ればよい。芯材として紙管、塩化ビニル管、金属管等が挙げられる。巻き取りの際には、絡み織物が弛まないように張力をかけながら巻き取ることが好ましい。
【0036】
積層体の巻き取りの際には、積層体の経糸方向が積層体の流れ方向(MD方向)となるように巻き取ることが好ましい。その際、流れ方向と垂直な左右方向(TD方向)に積層体を振りながら巻き取ることがより好ましい。これによりロール状の積層体の経糸部分が互いに重なり難くなるため、ロール内に発生する隙間を低減することができる。左右方向の振り幅はロール1周当たり1cm以上、10cm以下であることが好ましく、2cm以上、5cm以下であることがより好ましい。
【0037】
本発明には、上記のいずれかに記載の積層体を有する間仕切りシートも含まれる。間仕切りシートは、例えば複数の壁を有する構造体の内部空間を仕切るシート、またはその構造体の内部空間と外部空間とを仕切るシート等が挙げられる。構造体としては、部屋、建築物、車両、屋台、保管箱、家具等が挙げられる。
【実施例0038】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限されず、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0039】
<厚みの測定>
株式会社尾崎製作所製の厚み測定器であるダイヤルシックネスゲージ(型式H)を用いて、測定力終圧:2.4Nの条件で、積層体の織目区画一つのうちの最大厚みAと、その織目区画の中心における厚みBを測定した。当該測定は、互いに隣接していない4つの織目区画に対して行って、4つの織目区画の最大厚みAの平均値と、中心における厚みBの平均値とを求めた。なお各織目区画において、最大厚みAを有する部分は経糸と緯糸の交点部分であった。また各織目区画の中心には糸が存在しておらずフィルムのみ存在していた。
【0040】
<目付の測定>
積層体の目付は、JIS L1096:2010 8.3.2に記載の方法に基づいて測定した。
【0041】
<繊度の測定>
経糸と緯糸のそれぞれの繊度は、JIS L1013:2010 8.3.1.A法(正量繊度)に基づいて測定した。経糸と緯糸のそれぞれの単糸繊度は、JIS L1013:2010 8.4に基づいて、フィラメント数を求めて、上記正量繊度をフィラメント数で除すことにより単糸繊度を求めた。
【0042】
<巻き形態保持性>
長さ1000m分の長尺状の積層体を作製し、外径3インチの紙管に積層体をロール状に巻き取った。次いで、図3に示すようにロール状の積層体20を水平方向の床面21に置いて24時間静置し、図4に示すように24時間後にロール状の積層体20をひっくり返して、ロール状の積層体20の平らな部分の長手方向の長さLを測定し、これを変位長とした。
【0043】
実施例1
経糸として、48フィラメント(単糸繊度:11.7dtex(デシテックス))を含み、撚り数:0T/m(無燃)、繊度:560dtexのポリエステル製マルチフィラメント糸を用いた。一方、緯糸として、96フィラメント(単糸繊度:11.5dtex)を含み、撚り数:0T/m、繊度:1100dtexのポリエステル製マルチフィラメント糸を用いた。絡み織機を用い、打ち込み間隔:タテ3本/インチ、ヨコ3本/インチの条件で、経糸を2本ずつ図2のように絡ませて絡み織りを行った。次いで、得られた絡み織物に対して、連続して目止め剤として主成分がエチレンビニルであるエチレン酢酸ビニル共重合体(水溶性ビニル樹脂)を、絡み織物と目止め剤の合計100質量部に対して、15質量部となるように絡み織物に付与し、熱付与装置を用いて絡み織物を乾燥させた。次いで乾燥した絡み織物の上下にそれぞれ厚み0.08mmのポリ塩化ビニル製フィルムを配置して絡み織物を挟み込み、加熱温度130℃、加熱時間1分の条件で熱処置を行って、圧力0.2MPaの条件で圧縮接着を行って積層体を得た。
【0044】
実施例2
経糸として撚り数:8T/mのものを用いたこと以外は実施例1と同様にして積層体を得た。
【0045】
実施例3
経糸として、192フィラメント(単糸繊度:5.7dtex)を含み、撚り数:8T/m、繊度:1100dtexのポリエステル製マルチフィラメント糸を用いた。一方、緯糸として、192フィラメント(単糸繊度:11.5dtex)を含み、撚り数:0T/m、繊度:2200dtexのポリエステル製マルチフィラメント糸を用いた。更に、打ち込み間隔:タテ2本/インチ、ヨコ2本/インチとし、目止め剤の付与量を25質量部となるように織物に付与したこと以外は実施例1と同様にして積層体を得た。
【0046】
実施例4
経糸として、48フィラメント(単糸繊度:5.8dtex)を含み、撚り数:0T/m、繊度:280dtexのポリエステル製マルチフィラメント糸を用いた。一方、緯糸として、48フィラメント(単糸繊度:11.7dtex)を含み、撚り数:0T/m、繊度:560dtexのポリエステル製マルチフィラメント糸を用いた。更に打ち込み間隔:タテ6本/インチ、ヨコ6本/インチとしたこと以外は実施例1と同様にして積層体を得た。
【0047】
実施例5
経糸として、96フィラメント(単糸繊度:9.1dtex)を含み、撚り数:4T/m、繊度:870dtexのポリエステル製マルチフィラメント糸を用いた。一方、緯糸として、192フィラメント(単糸繊度:8.7dtex)を含み、撚り数:0T/m、繊度:1670dtexのポリエステル製マルチフィラメント糸を用いた。更に、目止め剤の付与量を20質量部となるように織物に付与したこと以外は実施例1と同様にして積層体を得た。
【0048】
実施例6
経糸として、実施例1の経糸の撚り数を8T/mとして用いたこと、厚み0.12mmのポリ塩化ビニル製フィルムを用いたこと、以外は実施例5と同様にして積層体を得た。
【0049】
比較例1
実施例1で用いた経糸の撚り数を40T/mとしたこと以外は実施例1と同様にして、積層体を得た。
【0050】
比較例2
実施例3の経糸の撚り数を40T/mとしたこと以外は実施例3と同様にして積層体を得た。
【0051】
比較例3
実施例4の経糸の撚り数を40T/mとしたこと以外は実施例4と同様にして積層体を得た。
【0052】
表1にこれらの結果を示す。実施例1~6の積層体は式(1)の条件を満たすものであり、いずれも良好な巻き形状の保持性を示した。
【0053】
【表1】
【符号の説明】
【0054】
2 第2のフィルム
3 絡み織物
4 緯糸
5a、5c 第1経糸
5b、5d 第2経糸
6 積層体
10 織目区画
20 ロール状の積層体
21 床面
図1
図2
図3
図4