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特開2023-134026認証システム、認証方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134026
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】認証システム、認証方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20230920BHJP
   G06V 40/16 20220101ALI20230920BHJP
   B42D 25/309 20140101ALI20230920BHJP
【FI】
G06T7/00 510F
G06V40/16 A
G06T7/00 510D
G06T7/00 660A
G06T7/00 300F
B42D25/309
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022039344
(22)【出願日】2022-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】星野 文哉
【テーマコード(参考)】
2C005
5B043
5L096
【Fターム(参考)】
2C005HA03
2C005HA04
2C005HB01
2C005JB02
2C005JB22
2C005JB31
2C005JB40
2C005LB60
5B043AA09
5B043AA10
5B043BA04
5B043BA08
5B043DA05
5B043EA07
5B043EA08
5B043FA07
5B043GA02
5B043GA18
5L096CA02
5L096FA33
5L096FA62
5L096FA67
5L096FA69
5L096GA51
5L096HA07
5L096JA03
5L096KA13
(57)【要約】
【課題】 特殊なエンコード機器や読み取り装置も必要とせず、カードの意匠性を悪くすることもなく、信頼性の高い認証を可能とすること。
【解決手段】 認証システムは、登録装置と認証装置とを備える。登録装置は、第1のカードにおける第1の認識領域を撮像する第1カメラと、第1の認識領域の像から、第1のカードの特徴量を抽出する第1特徴量取得回路と、第1のカードの特徴量をデータベースに登録する登録回路とを備える。認証装置は、第2のカードにおける認識領域を撮像する第2カメラと、第2の認識領域の像から、第2のカードの特徴量を抽出する第2特徴量取得回路と、第2のカードの特徴量を、データベースに登録されている特徴量と照合する照合回路と、データベースに、第2のカードの特徴量と所定のしきい値以上の類似度を有する特徴量が登録されている場合、第2のカードが真正であると認証する認証回路とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
登録装置と認証装置とを備えた認証システムであって、
前記登録装置は、
第1のカードにおける第1の認識領域を撮像する第1のカメラと、
前記第1のカメラによって撮像された前記第1の認識領域の像から、前記第1のカードの特徴量を抽出する第1の特徴量取得回路と、
前記第1のカードの特徴量をデータベースに登録する登録回路とを備え、
前記認証装置は、
認証対象である第2のカードにおける第2の認識領域を撮像する第2のカメラと、
前記第2のカメラによって撮像された前記第2の認識領域の像から、前記第2のカードの特徴量を抽出する第2の特徴量取得回路と、
前記第2のカードの特徴量を、前記データベースに登録されている特徴量と照合する照合回路と、
前記照合の結果、前記データベースに、前記第2のカードの特徴量と所定のしきい値以上の類似度を有する特徴量が登録されている場合、前記第2のカードが真正であると認証する認証回路とを備える、認証システム。
【請求項2】
前記第1の認識領域および前記第2の認識領域は、顔料インクによって印刷され、
前記第1のカードおよび前記第2のカードの前記特徴量は、前記顔料インクに関連する、請求項1に記載の認証システム。
【請求項3】
前記第1のカードおよび前記第2のカードの前記特徴量は、前記顔料インクによる前記認識領域の印刷のばらつきに関連する、請求項2に記載の認証システム。
【請求項4】
前記第1のカードおよび前記第2のカードは、所定値よりも大きな前記ばらつきを有する、請求項3に記載の認証システム。
【請求項5】
前記第1の認識領域および前記第2の認識領域は、顔写真を含む領域であり、
前記第1の特徴量取得回路は、前記第1のカードにおける前記顔写真における顔の中心を基準として、この基準から規定量離れた特徴点に存在する瞳、鼻、および唇のうちの少なくとも何れかから、前記第1のカードの前記特徴量を抽出し、
前記第2の特徴量取得回路は、前記第2のカードにおける前記顔写真における顔の中心を基準として、この基準から規定量離れた特徴点に存在する瞳、鼻、および唇のうちの少なくとも何れかから、前記第2のカードの前記特徴量を抽出する、請求項2乃至4のうちいずれか1項に記載の認証システム。
【請求項6】
前記第1のカードの特徴量および前記第2のカードの特徴量は、前記特徴点における、前記顔料インクによって形成された顔料ドットの位置、サイズ、色、重心点からのベクトル、および前記ベクトルのベクトル角度のうちの少なくとも何れかを含む、請求項5に記載の認証システム。
【請求項7】
前記第1のカードに、前記第1のカードに固有の第1の識別子が表示され、
前記登録装置はさらに第1の読取回路を備え、
前記第1のカメラは、前記第1の識別子を撮像し、
前記第1の読取回路は、前記第1のカメラによる前記第1の識別子の撮像結果から、前記第1の識別子を認識し、
前記登録回路は、前記第1のカードの特徴量を、前記データベースに登録する際に、前記第1の識別子を、前記第1のカードの特徴量に関連付けて前記データベースに登録し、
前記第2のカードに、前記第2のカードに固有の第2の識別子が表示され、
前記認証装置はさらに第2の読取回路を備え、
前記第2のカメラは、前記第2の識別子を撮像し、
前記第2の読取回路は、前記第2のカメラによる前記第2の識別子の撮像結果から、前記第2の識別子を認識し、
前記照合回路は、前記第2の識別子に一致する識別子を、前記データベースから検索し、前記第2のカードの特徴量を、前記データベースから検索された識別子に関連付けられた特徴量と照合する、請求項1乃至6のうち何れか1項に記載の認証システム。
【請求項8】
前記第1の認識領域および前記第2の認識領域は、顔写真を含む領域であり、
前記第1の特徴量取得回路は、前記第1のカメラによって撮像された前記顔写真を含む領域の像における目の虹彩から、前記第1のカードの特徴量を抽出し、
前記第2の特徴量取得回路は、前記第2のカメラによって撮像された前記顔写真を含む領域の像における目の虹彩から、前記第2のカードの特徴量を抽出する、請求項1乃至7のうち何れか1項に記載の認証システム。
【請求項9】
認証システムによって実施される認証方法であって、
前記認証システムが、
第1のカードにおける第1の認識領域を撮像し、
前記撮像された前記第1の認識領域の像から、前記第1のカードの特徴量を抽出し、
前記第1のカードの特徴量を、データベースに登録し、
認証対象である第2のカードにおける第2の認識領域を撮像し、
前記撮像された前記第2の認識領域の像から、前記第2のカードの特徴量を抽出し、
前記第2のカードの特徴量を、前記データベースに登録されている特徴量と照合し、
前記照合の結果、前記データベースに、前記第2のカードの特徴量と所定のしきい値以上の類似度を有する特徴量が登録されている場合、前記第2のカードが真正であると認証する、認証方法。
【請求項10】
前記第1の認識領域および前記第2の認識領域は、顔料インクによって印刷され、
前記第1のカードおよび前記第2のカードの前記特徴量は、前記顔料インクに関連する、請求項9に記載の認証方法。
【請求項11】
前記第1のカードの前記特徴量および前記第2のカードの前記特徴量は、前記顔料インクによる前記認識領域の印刷のばらつきに関連する、請求項10に記載の認証方法。
【請求項12】
前記第1のカードおよび前記第2のカードは、所定値よりも大きな前記ばらつきを有する、請求項11に記載の認証方法。
【請求項13】
前記第1の認識領域および前記第2の認識領域は、顔写真を含む領域であり、
前記認証システムがさらに、
前記第1のカードの前記特徴量および前記第2のカードの前記特徴量を、それぞれの顔写真における顔の中心を基準として、前記基準から規定量離れた特徴点に存在する瞳、鼻、および唇のうちの少なくとも何れかから抽出し、
前記第1のカードにおける前記顔写真における顔の中心を基準として、この基準から規定量離れた特徴点に存在する瞳、鼻、および唇のうちの少なくとも何れかから、前記第1のカードの前記特徴量を抽出し、
前記第2のカードにおける前記顔写真における顔の中心を基準として、この基準から規定量離れた特徴点に存在する瞳、鼻、および唇のうちの少なくとも何れかから、前記第2のカードの前記特徴量を抽出する、請求項10乃至12のうちいずれか1項に記載の認証方法。
【請求項14】
前記第1のカードの前記特徴量および前記第2のカードの前記特徴量は、前記特徴点における、前記顔料インクによって形成された顔料ドットの位置、サイズ、色、重心点からのベクトル、および前記ベクトルのベクトル角度のうちの少なくとも何れかを含む、請求項13に記載の認証方法。
【請求項15】
前記第1のカードに、前記第1のカードに固有の第1の識別子が表示され、
前記第2のカードに、前記第2のカードに固有の第2の識別子が表示され、
前記認証システムがさらに、
前記第1のカードの特徴量を、前記データベースに登録する際に、前記第1の識別子を、前記第1のカードの特徴量に関連付けて前記データベースに登録し、
前記照合では、前記第2の識別子に一致する識別子を、前記データベースから検索し、前記第2のカードの特徴量を、前記データベースから検索された識別子に関連付けられた特徴量と照合する、請求項9乃至14のうち何れか1項に記載の認証方法。
【請求項16】
前記第1の認識領域および前記第2の認識領域は、顔写真を含む領域であり、
前記認証システムがさらに、
前記第1のカードにおける前記顔写真を含む領域の像における目の虹彩から、前記第1のカードの特徴量を抽出し、
前記第2のカードにおける前記顔写真を含む領域の像における目の虹彩から、前記第2のカードの特徴量を抽出する、請求項9乃至15のうち何れか1項に記載の認証方法。
【請求項17】
顔写真付きの第1のカードにおける第1の認識領域を撮像する機能、
前記撮像された前記第1の認識領域の像から、前記第1のカードの特徴量を抽出する機能
前記第1のカードの特徴量を、データベースに登録する機能、
認証対象である第2のカードにおける第2の認識領域を撮像する機能、
前記撮像された前記第2の認識領域の像から、前記第2のカードの特徴量を抽出する機能、
前記第2のカードの特徴量を、前記データベースに登録されている特徴量と照合する機能、
前記照合の結果、前記データベースに、前記第2のカードの特徴量と所定のしきい値以上の類似度を有する特徴量が登録されている場合、前記第2のカードが真正であると認証する機能をプロセッサに実現させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像の印刷に使用されたインクの特徴情報から取得する特徴量を、認証用の特徴量として利用する認証システム、認証方法、およびプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、間接熱転写方式を採用するプリンタは、主にパスポートやIDカードなどの個人認証媒体等の記録媒体に対して、多色画像を形成する手段として用いられている。その際、中間転写フィルムには記録媒体の記録面のサイズに合わせた記録エリアが設定され、熱転写インクリボンにはシアン、マゼンタ、イエロー、墨などの各色インクパネルが該記録エリアのサイズに合わせて面順次に形成されている。そして各色の熱転写インクを記録エリアに重ねて熱転写することで、フルカラー画像や文字画像などを中間転写フィルム上に形成し、次いで記録面に熱圧転写して記録を完成している。
【0003】
このような間接転写方式にて作成したカードはIDカードやイベントなどで認証用途に使われる。例えば目視で確認を行うことで、本人認証することもあれば、よりセキュアな用途を担保するために、内部にICチップを埋め込み、データがセキュアにエンコードされている場合もある。また、ICチップが搭載されていない安価なカードの場合はQRコード(登録商標)を印字し、カメラで読み取ることで認証を行う場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-328519号公報
【特許文献2】特開2004-246662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ICチップのあるカードは通常のカードに比べて比較的高価である上、特殊なエンコード機器、読み取り装置が必要となる。また、QRコードを利用した認証では印字のみであるため安価ではあるものの、QRコードそれ自体はセキュアな形態ではないため、コピーが容易である上、QRコード自体ある程度の印字面積が必要となるなど、カードの意匠性が悪くなるといった課題が存在する。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、特殊なエンコード機器や読み取り装置も必要とせず、カードの意匠性を悪くすることもなく、カードの信頼性の高い認証を可能とする認証システム、認証方法、およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明では、以下のような手段を講じる。
【0008】
本発明の第1の態様は、登録装置と認証装置とを備えた認証システム、認証システムによって実行される認証方法、および認証方法を実現するプログラムであって、登録装置は、第1のカードにおける第1の認識領域を撮像する第1のカメラと、第1のカメラによって撮像された第1の認識領域の像から、第1のカードの特徴量を抽出する第1の特徴量取得回路と、第1のカードの特徴量をデータベースに登録する登録回路とを備える。認証装置は、認証対象である第2のカードにおける第2の認識領域を撮像する第2のカメラと、第2のカメラによって撮像された第2の認識領域の像から、第2のカードの特徴量を抽出する第2の特徴量取得回路と、第2のカードの特徴量を、データベースに登録されている特徴量と照合する照合回路と、照合の結果、データベースに、第2のカードの特徴量と所定のしきい値以上の類似度を有する特徴量が登録されている場合、第2のカードが真正であると認証する認証回路とを備える。
【0009】
従って、本発明の第1の態様によれば、カードに印刷された顔写真の像の特徴情報から取得する特徴量を、認証用の特徴量として利用することによって、特殊なエンコード機器や読み取り装置も必要とせず、QRコードも利用せずにカードを認証することが可能となる。
【0010】
本発明の第2の態様は、第1の態様においてさらに、第1の認識領域および第2の認識領域は、顔料インクによって印刷され、第1のカードおよび第2のカードの特徴量は、顔料インクに関連する。
【0011】
本発明の第3の態様は、第2の態様においてさらに、第1のカードおよび第2のカードの特徴量は、顔料インクによる認識領域の印刷のばらつきに関連する。
【0012】
従って、本発明の第2および第3の態様によれば、特に、画像の印刷に使用されたインクの特徴情報から取得する特徴量を、認証用の特徴量として利用することによって、偽造が困難な特徴量とすることができる。
【0013】
本発明の第4の態様は、第3の態様においてさらに、第1のカードおよび第2のカードは、所定値よりも大きなばらつきを有する。
【0014】
本発明の第4の態様によれば、認証時の偽認証あるいは認証エラーの確率を下げるために、マクロの視点で見たときに意匠性が悪くならない程度に、顔写真の印刷のばらつきを、ある程度故意に大きく発生させることで、認証率を上げることを可能とする。
【0015】
本発明の第5の態様は、第2乃至第4のいずれかの態様においてさらに、第1の認識領域および第2の認識領域は、顔写真を含む領域であり、第1の特徴量取得回路は、第1のカードにおける顔写真における顔の中心を基準として、この基準から規定量離れた特徴点に存在する瞳、鼻、および唇のうちの少なくとも何れかから、第1のカードの特徴量を抽出する。また、第2の特徴量取得回路は、第2のカードにおける顔写真における顔の中心を基準として、この基準から規定量離れた特徴点に存在する瞳、鼻、および唇のうちの少なくとも何れかから、第2のカードの特徴量を抽出する。
【0016】
従って、本発明の第5の態様によれば、瞳、鼻、および唇など、個人差が少ない特徴点を使って、特徴量の抽出のために必要な位置検出を容易に行うことが可能となる。
【0017】
本発明の第6の態様は、第5の態様においてさらに、第1のカードの特徴量および第2のカードの特徴量は、特徴点における、顔料インクによって形成された顔料ドットの位置、サイズ、色、重心点からのベクトル、およびベクトルのベクトル角度のうちの少なくとも何れかを含む。
【0018】
従って、本発明の第6の態様によれば、特徴量として使用する特徴点から、顔料ドットの配置、サイズ、色、重心点からのベクトル、ベクトル角度など、複数のデータを得ることができる。これらは、認証の精度向上に寄与することができる。具体的には、色は、CMYKの混色とできる。
【0019】
本発明の第7の態様は、第1乃至第6のいずれかの態様においてさらに、第1のカードに、第1のカードに固有の第1の識別子が表示され、登録装置はさらに第1の読取回路を備え、第1のカメラは、第1の識別子を撮像し、第1の読取回路は、第1のカメラによる第1の識別子の撮像結果から、第1の識別子を認識し、登録回路は、第1のカードの特徴量を、データベースに登録する際に、第1の識別子を、第1のカードの特徴量に関連付けてデータベースに登録する。また、第2のカードに、第2のカードに固有の第2の識別子が表示され、認証装置はさらに第2の読取回路を備え、第2のカメラは、第2の識別子を撮像し、第2の読取回路は、第2のカメラによる第2の識別子の撮像結果から、第2の識別子を認識し、照合回路は、第2の識別子に一致する識別子を、データベースから検索し、第2のカードの特徴量を、データベースから検索された識別子に関連付けられた特徴量と照合する。
【0020】
従って、本発明の第7の態様によれば、特徴量の照合を行う際、抽出した特徴量を、データベースに登録されている膨大なデータを対象に行うのではなく、カード券面に表示されたID番号等の識別子が一致する特徴量同士の照合に限定することで、認証処理のスループットを向上させることが可能となる。
【0021】
本発明の第8の態様は、第1乃至第7のいずれかの態様においてさらに、第1の認識領域および第2の認識領域は、顔写真を含む領域であり、第1の特徴量取得回路は、第1のカメラによって撮像された顔写真を含む領域の像における目の虹彩から、第1のカードの特徴量を抽出する。また、第2の特徴量取得回路は、第2のカメラによって撮像された顔写真を含む領域の像における目の虹彩から、第2のカードの特徴量を抽出する。
【0022】
従って、本発明の第8の態様によれば、特徴量として目の虹彩の特徴情報から得らえる特徴量を使用できる。これにより、より個人差が大きい特徴量とすることができる。さらに、印刷のために複数の色、例えばCMYKの各色が使われている場合、より高度なインクの重なりが生まれる。そのため、個体毎の特徴量は、より大きくできるので、データの偽造、貼り替えなどによる複製をより困難にすることができ、偽造防止の効果を高められる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の認証システム、認証方法、およびプログラムによれば、画像の印刷に使用されたインクの特徴から取得する特徴量を、認証用の特徴量として利用することによって、特殊なエンコード機器や読み取り装置も必要とせず、また、カードにQRコードを表示しなくても、セキュアなカード認証が可能となる。
【0024】
したがって、ICカードに比べて安価で、かつ、QRコードも表示されないないシンプルな構造のカードであっても、信頼性の高い認証のために利用することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、本発明の実施形態に係る認証方法が適用された認証システム10の構成例を示すブロック図である。
図2図2は、顔写真付きのカードのカード券面の一例を示す模式図である。
図3図3は、カメラ21の配置例を示す概念図である。
図4図4は、データベース25のデータ構造例を示す概念図である。
図5図5は、登録装置20の動作例を示すフローチャートである。
図6図6は、認証装置30の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明の実施形態に係る認証方法が適用された認証システムを、図面を参照して説明する。
【0027】
なお、以下の実施形態の説明において、同一部分については、同一符号を用いて示し、重複説明を避ける。
【0028】
図1は、本発明の実施形態に係る認証方法が適用された認証システム10の構成例を示すブロック図である。
【0029】
図2は、顔写真付きのカードのカード券面の一例を示す模式図である。
【0030】
図1に例示するように、認証システム10は、登録装置20と認証装置30とを備えている。
【0031】
登録装置20は、図2に例示するような顔写真付きのカードC1の特徴量を、カード発行時にデータベース25に登録するための装置であって、カメラ21と、特徴量取得回路22と、読取回路23と、登録回路24と、データベース25とを備えている。
【0032】
図3は、カメラ21の配置例を示す概念図である。
【0033】
カメラ21は、カメラによって実現できる。つまり、カメラ21は、カメラとできる。カメラは、レンズと個体撮像素子との構成とできる。レンズは、ズーム可能としてもよい。カメラ21は、図3に例示するように、カードC1を発行するカード転写装置50の排出側に設置される。
【0034】
カードC1における顔写真a1は、カード転写装置50によって、例えば顔料インクのようなインクによって印刷される。また、カードC1には、例えば社員番号や個人番号のように、カードC1の所有者に固有の識別子i1が印刷等によって記録されている。
【0035】
カードC1の基材には、各色インク層に対して反対面側にバックコート層を必要に応じて設けることができるものを適用する。バックコート層としては、例えばカード転写装置50として、一次転写機構51と二次転写機構52とを備える間接転写プリンタが適用されている場合、一次転写機構51による一次転写時に使用されるサーマルヘッド51aの熱源に密着する層であり、主に耐熱性や滑り性が求められるが、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、ウレタンシリコーン樹脂、あるいはこれらにシリコーンオイルやワックス、油脂、微粒子などを添加した公知のものを適宜選択することができる。
【0036】
カメラ21は、カード転写装置50から、排出方向Lに排出されたカードC1における顔写真a1を含む領域b1の拡大像K1と、識別子i1とを撮像し、拡大像K1が撮像された撮像データd1を特徴量取得回路22へ、識別子i1が撮像された撮像データS1を、読取回路23へ出力する。
【0037】
特徴量取得回路22は、撮像データd1に含まれる拡大像K1から、1つまたは複数の特徴点を特定し、特定した特徴点からカードC1の特徴量e1を抽出し、抽出した特徴量e1を、登録回路24へ出力する。特徴量取得回路22は、検出回路と取得回路とからなってもよい。また分割回路を有してもよい。
【0038】
前述したように、カードは、顔料インクによって印刷されているので、カードC1の特徴量e1は、例えば、顔料インクによる顔写真a1の印刷のばらつきなど、顔料インクに関連するものとすることができる。印刷のばらつきが大きいほど、特徴量の差異が顕著となり、後述するように認証装置30においてなされる認証精度を高めることができる。したがって、カード転写装置50では、マクロの視点で見たときに意匠性が悪くならない程度に、意図的に、ばらつきが所定値よりも大きくなるように、顔写真a1を印刷することが好ましい。
【0039】
印刷のばらつきを特徴量として使用する場合、インクには、顔料インクが好適である。顔料インクでは、同じ画像データを使用した印刷にも関わらず、拡大して見ると顔料インクの重なりや見え方に微妙な違いが生じるからである。顔料インクとしては、例えば、カーボンブラック、フタロシアニン系、チオインジゴ系、アンスラキノン系、キナクリドン系、アゾ系、イソインドリノン系などを使用できるが、これらに限定されるものではなく、複数種類を組み合わせて使用しても良い。
【0040】
特徴量取得回路22は、撮像データd1に含まれる拡大像K1から、特徴点を特定する場合、具体的には、顔写真a1における顔の中心Dを基準として、基準から規定量移動した場所に存在する、例えば、瞳の中央部、虹彩、鼻の先端、および上唇の特定の領域のうちの少なくとも何れかを特徴点として特定することができる。この特徴点を特定する回路を検出回路とできる。すなわち検出回路は、特徴量を抽出する領域を検出できる。
【0041】
特徴量取得回路22はさらに、各特徴点における、顔料インクによって形成された顔料ドットの位置、サイズ、色(例えば、CMYK)、重心点からのベクトル、およびベクトルのベクトル角度のうちの少なくとも何れかなどの1つまたは複数のデータを、特徴量e1として抽出できる。この特徴量を抽出する回路を抽出回路とできる。
【0042】
特に、特徴量e1として虹彩を使用することで、より個人差が大きく、またデータにCMYK等の各色が使われていることにより複雑なインクの重なりが生まれることとなり、データの偽造、貼り替えなどによる複製をより困難にすることが可能となる。印刷結果はその時々に応じて機器に依存した固有のパターンとなるため、虹彩だけを考慮した場合でも偽造は非常に困難となる。
【0043】
ただし、虹彩を特徴量e1として使用する場合、カメラをカメラ21として使用する場合、このカメラは、最低でも600dpi以上の解像度と、読み取り能力として0.05mm以上の分解能を有することが望ましい。
【0044】
図2の吹出Fに示す右目の拡大図は、顔の中心Dを基にして右目の虹彩hから特徴量を抽出することを説明するための簡単なイメージを示している。この例では、虹彩hの中央部を拡大して取得する顔料ドットHの各CMYKの個数、サイズ、ベクトル値、ベクトル角度などを、特徴量e1として使用する例を示している。
【0045】
また、条件さえそろえば、カードC1に表示されている、顔写真a1以外の例えば会社のロゴなどの規定された場所を活用して特徴量e1を抽出しても良い。
【0046】
特徴量e1はその後、登録回路24によってデータベース25に登録されるが、特徴量取得回路22は、データベース25が許容する限り、上記にその一例を示したように、任意の特徴情報から特徴量e1を抽出することでき、さらに、低次元化したベクトルデータや、他の既知の特徴量算出技法を使用して、複数の特徴量を算出することもできる。
【0047】
読取回路23は、カメラ21から出力された撮像データS1から、例えばOCR機能によって、識別子i1を認識し、認識した識別子i1を、登録回路24へ出力する。
【0048】
登録回路24は、特徴量取得回路22から出力された特徴量e1をデータベース25に登録する。この際、読取回路23から出力された識別子i1も、特徴量e1に関連付けてデータベース25に登録する。
【0049】
図4は、データベース25のデータ構造例を示す概念図である。
【0050】
図4に例示するように、データベース25には、識別子i1と特徴量e1とが関連付けられて登録されている。
【0051】
なお、前述したように、特徴量取得回路22によって複数の特徴量e1を算出することもできる。この場合、登録回路24には、特徴量取得回路22から複数の特徴量e1が出力され、登録回路24は、これら複数の特徴量e1も、識別子i1に関連付けてデータベース25に登録する。図4はそのような例を示しており、図4に示す特徴量1、特徴量2、・・・・、特徴量n(ただし、nは、3以上の整数を示す)は、これら複数の特徴量e1に相当する。
【0052】
認証装置30は、例えばセキュリティを要するエリアへの入退ゲート(図示せず)に設けられ、ゲートにかざされた顔写真付きのカードC2を認証するための装置であって、カメラ31と、特徴量取得回路32と、読取回路33と、照合回路34と、認証回路35とを備えている。
【0053】
カメラ31もまた、カメラ21と同様に、例えば、最低でも600dpi以上の解像度と、読み取り能力として0.05mm以上の分解能を有する比較的高解像度を有するカメラによって実現されることが好ましい。このようなカメラ31が備えられた入退ゲートに、認証対象である顔写真付きのカードC2がかざされると、カメラ31が、このカードC2における顔写真a2を含む領域b2の拡大像K2と、カードC2の識別子i2とを撮像し、拡大像K2が撮像された撮像データd2を特徴量取得回路32へ、識別子i2が撮像された撮像データS2を読取回路33へ出力する。
【0054】
特徴量取得回路32は、特徴量取得回路22と同様の構成をしており、撮像データd2に含まれる拡大像K2から、1つまたは複数の特徴点を特定し、特定した特徴点から、カードC2の特徴量e2を抽出し、抽出した特徴量e2を、照合回路34へ出力する。
【0055】
前述したように、カードは、顔料インクによって印刷されているので、カードC2の特徴量e2もまた、カードC1の特徴量e1と同様に、例えば、顔料インクによる顔写真a2の印刷のばらつきなど、顔料インクに関連するものとする。
【0056】
したがって、特徴量取得回路32も、特徴量取得回路22と同様に、撮像データd2に含まれる拡大像K2から、カードC2の特徴量e2を抽出する場合、具体的には、顔写真a2における顔の中心Dを基準として、基準から規定量離れた特徴点に存在する、例えば、瞳、虹彩、鼻、および唇のうちの少なくとも何れかから、特徴点における、顔料インクによって形成された顔料ドットの位置、サイズ、色(例えば、CMYK)、重心点からのベクトル、およびベクトルのベクトル角度のうちの少なくとも何れかなど、複数のデータを特徴量e2として抽出する。特に、虹彩は、その位置や色味などに個人差が少ないことから、位置決めのために好適に使用できる。
【0057】
特徴量e2にはまた、特徴量e1と同様に、任意の特徴情報から得らえた特徴量を使用することでき、特徴量取得回路32は、特徴量取得回路22と同様に、低次元化したベクトルデータや、他の既知の特徴量算出技法を使用することもできる。
【0058】
読取回路33は、読取回路23と同様の構成をしており、カメラ31から出力された撮像データS2から、例えばOCR機能によって、カードC2の識別子i2を読み取りし、読み取った識別子i2を、照合回路34へ出力する。
【0059】
照合回路34は、読取回路33から出力された識別子i2に一致する識別子i1を、データベース25から検索する。そして、識別子i2に一致する識別子i1がデータベース25において発見されたならば、この識別子i1が関連付けられている特徴量e1と、特徴量取得回路32から出力された特徴量e2とを照合し、照合結果を、認証回路35へ出力する。
【0060】
特徴量e1、e2は、識別子i1、i2よりも多くの情報を含んでいる。したがって、上述したように、照合回路34が、先ず、読取回路33から出力された識別子i2に一致する識別子i1を、データベース25から検索し、識別子i1と識別子i2とが一致した場合に、識別子i1に関連付けられた特徴量e1と、識別子i2に関連付けられた特徴量e2との照合を行うことによって、特徴量e2と所定のしきい値以上の類似度を有する特徴量e1を、いきなりデータベース25から検索する場合に比べて、短い時間で、照合結果を得ることが可能となる。このときの類似度は、コサイン類似度とできる。
【0061】
しかしながら、本実施形態に係る認証システム10は、照合回路34が、識別子i2に一致する識別子iiをデータベース25から検索することなく、特徴量e2と所定のしきい値以上の類似度を有する特徴量e1を、いきなりデータベース25から検索する場合も排除しない。このような場合であっても、照合回路34は、照合結果を得ることができる。
【0062】
照合回路34は、特徴量e1と、所定のしきい値以上の類似度を有する特徴量e2がない場合、照合結果として「照合NG」を認証回路35へ出力し、特徴量e1と、所定のしきい値以上の類似度を有する特徴量e2が1つあった場合、照合結果として「照合OK」を出力する。
【0063】
特徴量としては特徴を捉え、認証出来る物であれば何を使っても良いが、一般的には画像認証系に広く使われるOpenCVに用いられるようなKAZE(またはAKAZE)、SIFT、SURF、ORB、BRISKなどを用いることを想定する。 KAZE、AKAZEは、対象に回転や変形がある場合や照明の変化の影響を受けづらく、好ましい。
【0064】
なお、しきい値に応じて特徴点の数は異なるが、このAKAZEでの特徴量記述子の次元は61次元である。しかし、この61次元には色の情報の次元は含まれていないため、適宜明暗に依存しない色相(hue値)などの角度の情報を付加して次元数を増やしてもよい。
【0065】
(比較する際に使用する類似度)
類似度は、特徴空間に特徴量を投影した特徴ベクトルの距離から算出できる。この場合、類似度は、1から特徴ベクトルの距離を引いたものとできる。特徴量をバイナリ値としてとらえる場合、この特徴ベクトルの距離はハミング距離とするのがよい。また、認証手法に応じて、特徴ベクトルの距離としてL2ノルムを使用しても良い。
【0066】
また、特徴ベクトルの距離は、マンハッタン距離、マハラノビス距離であたってもよい。このような類似度の定義では、0に近いほど類似しているとなり、0から離れた値であればあるほど、類似していないとなる。
【0067】
(しきい値)
一般的な画像認証のように、まったく別のオブジェクト同士の検出であればそれほど狭い類似度のしきい値を設定する必要は無い。しかしながら本特許における比較対象は、同じ人物の違う画像での印刷結果を比較するため、その設定は狭くてもよい。
【0068】
また、knn近傍法における(k=2)で2点の特徴点同士の特徴量記述子の距離を算出する場合、ある基準点と対応する対象画像の点の距離と、次に近い点との距離の差が検知できるようレシオテスト(スレッショルド)の値を小さくとるのが望ましい。
【0069】
また、それだけでなく、比較対象としてオリジナル画像の変形画像(回転や縮小した画像など)を生成し、それと比較した結果同等の距離スコア(例えばマッチングされた特徴点の個数の数が同等またはそれ以上)となる場合にのみ、「照合OK」の判定結果を返すなどとしてもよい。
【0070】
また、類似度のしきい値は、予めクラス分けされたセキュリティレベルに応じて選択してもよい。
【0071】
セキュリティレベルは、所有者の居住地域、テロ予告、選挙期間、記念日、イベントの開催等の事情を鑑みて定めることができる。そしてその、それにセキュリティレベル適したクラスを設定できる。
【0072】
類似度のしきい値は、類似度の値の範囲を0以上、1以下に規格化した場合、例えば、0以上、0.1を「照合OK」とすることができる。また、0以上、0.02以下を「照合OK」としてもよい。
【0073】
いずれにせよ、前述したように、カードは、所定値よりも大きなばらつきを有するように作成されているので、照合回路34は、高い精度で照合結果を得ることができる。
【0074】
ところで、特徴量e1と、所定のしきい値以上の類似度を有する特徴量e2が、データベース25から検索された場合であっても、それが複数あれば、照合回路34は、「照合NG」を、認証回路35へ出力する。なぜなら、この場合、1つの特徴量e2を有するカードC1のみが真正であり、残りの特徴量e2を有するカードC1は真正ではないと考えられるが、結局、照合回路34は、どちらのカードC1が真正であるかの判定ができないからである。
【0075】
認証回路35は、照合回路34の照合結果を受け取り、真正かどうかを判定する。認証回路35は、照合回路34から、照合結果として「照合OK」が出力された場合、カードC2が正しく認証された、すなわち、真正であると判定し、入退ゲートにゲート開信号を送信する。これに応じて入退ゲートが開く。一方、照合回路34から、照合結果として「照合NG」が出力された場合、認証回路35は、カードC2が正しく認証されなかったと判定し、入退ゲートにゲート開信号を送信しない。これによって、入退ゲートは閉じたままとなる。
【0076】
次に、以上のように構成した本発明の実施形態に係る認証方法が適用された認証システムの動作例について説明する。
【0077】
まず、カードC1の発行時に登録装置20によって行われる特徴量の登録処理について説明する。
【0078】
図5は、登録装置20の動作例を示すフローチャートである。
【0079】
カード転写装置50に、上位のコンピュータから、印刷指示がなされると(S1)、印字データが連携され、カードC1のカード券面への印刷が実行され(S2)、カード転写装置50からカードC1が排出される。
【0080】
カード転写装置50からカードC1が排出されると、例えば、比較的高解像度なカメラによって実現されるカメラ21によって、カードC1における顔写真a1を含む領域b1の拡大像K1が撮像され、拡大像K1が撮像された撮像データd1が、特徴量取得回路22へされる(S3)。
【0081】
特徴量取得回路22では、撮像データd1に含まれる拡大像K1から、1つまたは複数の特徴点が特定され、特定された特徴点から、カードC1の特徴量e1が抽出される。(S4)。
【0082】
抽出された特徴量e1は、特徴量取得回路22から登録回路24へ出力される(S5)。特徴量e1としては、例えば、虹彩hの中央部を拡大して取得する顔料ドットHの各CMYKの個数、サイズ、ベクトル値、ベクトル角度などが使用される。特徴量e1を、画像データとしてデータベース25にバイナリ値として保持すると非常に重く、認証処理時においてプロセッサへの負荷が大きくなるなど、運用に適さないため、データベース25へ登録される特徴量e1としては、上述したベクトル値のように、データを低次元化(圧縮)したものを使用することが好適である。
【0083】
特徴量取得回路22から出力された特徴量e1は、登録回路24によってデータベース25に登録される(S6)。
【0084】
次に、カードC2の認証時に認証装置30によって行われる認証処理について説明する。
【0085】
図6は、認証装置30の動作例を示すフローチャートである。
【0086】
例えば、入退ゲートに、認証対象である顔写真付きのカードC2がかざされると、入退ゲートに設けられたカメラ31によって、カードC2における顔写真a2を含む領域b2の拡大像K2が撮像され、撮像データd2が特徴量取得回路32へ出力される(S11)。なお、カメラ31にも、カメラ21と同様に、比較的高解像度なカメラが適用される。
【0087】
特徴量取得回路32では、撮像データd2に含まれる拡大像K2から、1つまたは複数の特徴点が特定され(S12)、特徴点が存在する(S13:Yes)のであれば、特定した特徴点から、カードC2の特徴量e2が抽出され、照合回路34へ出力される(S14)。なお、特徴量e2にはまた、特徴量e1と同様に、任意の特徴情報から取得する特徴量を使用することができ、低次元化したベクトルデータや、他の既知の特徴量算出技法を使用することもできる(S15)。
【0088】
照合回路34では、特徴量取得回路32からの特徴量e2が、データベース25と照合され(S16)、データベース25から、特徴量e2と所定のしきい値以上の類似度を有する特徴量e1が検索される(S17)。
【0089】
照合回路34ではさらに、データベース25から、特徴量e2と所定のしきい値以上の類似度を有する特徴量e1が検索された場合(S17:Yes)、それが1つだけ(S18:Yes)であれば、照合結果として「照合OK」が、認証回路35へ出力される。
【0090】
認証回路35では、照合回路34から「照合OK」が出力された場合、カードC2が正しく認証された、すなわち、真正であると判定され、入退ゲートにゲート開信号が送信される。これに応じて入退ゲートが開く(S19)。
【0091】
一方、ステップS13において、特徴点が存在しない場合(S13:No)、カードC2の特徴量e2は抽出されず、照合回路34へ出力されることもないので、「照合OK」となることはなく、結果的に、認証回路35では、カードC2が正しく認証されなかったと判定される(S20)。
【0092】
また、ステップS17において、特徴量e2と所定のしきい値以上の類似度を有する特徴量e1が検索されなかった場合(S17:No)、照合回路34から照合結果として、「照合NG」が、認証回路35へ出力され、認証回路35では、カードC2が正しく認証されなかったと判定される(S20)。
【0093】
また、ステップS18において、特徴量e2と所定のしきい値以上の類似度を有する特徴量e1が複数検索された場合(S18:No)、照合回路34から照合結果として、「照合NG」が、認証回路35へ出力され、認証回路35では、カードC2が正しく認証されなかったと判定される(S20)。
【0094】
いずれの場合でも、ステップS20において、カードC2が正しく認証されなかったと判定されると、認証回路35から入退ゲートにゲート開信号は送信されない。これによって、入退ゲートは閉じたままとなり、ユーザは、入退ゲートを通過することはできない。
【0095】
上述したように、本実施形態では、同じ画像データを使用した印刷にも関わらず、拡大して見ると顔料インクの重なりや見え方に微妙な違い、すなわち、ばらつきが生じることに着目し、カードC1の発行時に、このばらつきに由来する特徴情報から取得する特徴量を、カードC1の特徴量e1としてデータベース25に登録しておき、後日、例えば、入退ゲートを通過時等になされる認証のために活用する。
【0096】
しかも、カードC1の発行時や、入退ゲート通過等の認証時の読み取りのために使用するカメラ21、31には、赤外線カメラなどの特殊なカメラを使用する必要は無く、通常のカメラを適用することができるので、登録装置20、認証装置30ともに、比較的安価で実現できる。
【0097】
さらに、万が一、カードの券面の画像データが、偽造団によって不正にハッキングされ、偽造カードが作成された場合であっても、製造工程に依存する顔料インキのばらつきまで再現することは容易ではないので、カードの偽造は極めて困難である。
【0098】
つまり、顔料インクの重なりや個々のドットのサイズ、位置などを特徴量として登録、認証に利用することで、例えば他社製プリンタで出力した顔写真によってカードを偽造しても、個々のカードは、発行時における特徴量の相違から、真偽を確実に区別できる。したがって、同一メーカのプリンタや、同じ顔画像データを使用しても、カードの偽造はほぼ不可能である。
【0099】
さらにまた、カードには、ICチップなどを使用する必要は無く、比較的安価に実現できる。また、QRコードなどを表示する必要もないので、カード券面の意匠性を損なうこともない。
【0100】
このように、本実施形態に係る認証方法が適用された認証システムによれば、画像の印刷に使用された顔料インクの特徴情報から取得する情報を、認証用の特徴量として利用することによって、特殊なエンコード機器や読み取り装置も必要とせず、また、カードにQRコードを表示しなくても、セキュアなカード認証が可能となる。
【0101】
したがって、ICカードに比べて安価で、かつ、QRコードも表示されないないシンプルな構造のカードであっても、信頼性の高い認証のために利用することも可能となる。
【0102】
以上、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明はかかる構成に限定されない。特許請求の範囲の発明された技術的思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0103】
10・・認証システム、
20・・登録装置、
21・・カメラ、
22・・特徴量取得回路、
23・・読取回路、
24・・登録回路、
25・・データベース、
30・・認証装置、
31・・カメラ、
32・・特徴量取得回路、
33・・読取回路、
34・・照合回路、
35・・認証回路、
50・・カード転写装置、
51・・一次転写機構、
51a・・サーマルヘッド、
52・・二次転写機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6