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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134029
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/24 20180101AFI20230920BHJP
   F21S 41/25 20180101ALI20230920BHJP
   F21S 41/29 20180101ALI20230920BHJP
   F21S 41/19 20180101ALI20230920BHJP
   F21S 41/147 20180101ALI20230920BHJP
   F21S 41/47 20180101ALI20230920BHJP
   F21W 102/135 20180101ALN20230920BHJP
【FI】
F21S41/24
F21S41/25
F21S41/29
F21S41/19
F21S41/147
F21S41/47
F21W102:135
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022039348
(22)【出願日】2022-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】小暮 真也
(72)【発明者】
【氏名】堀井 洸
(57)【要約】
【課題】ロービーム用配光パターンに配光ムラが発生するのを抑制することができ、かつ、ハイビーム用の部分配光パターンが水平方向に拡がらない車両用灯具を提供する。
【解決手段】投影レンズ60と、前記投影レンズの後方かつ前記投影レンズの光軸AX60より上に配置される上セパレータ51と、前記投影レンズの後方かつ前記投影レンズの光軸より下に配置される下セパレータ52と、ロービーム用光源31Aと、ハイビーム用光源31Bと、を備え、前記上セパレータは、ロービーム用入光部及びロービーム用出光面を含み、前記下セパレータは、ハイビーム用入光部及びハイビーム用出光面を含み、前記投影レンズの焦点は、前記ロービーム用出光面と前記ハイビーム用出光面との間に位置しており、前記上セパレータの光学長は、前記下セパレータの光学長より長い。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
投影レンズと、
前記投影レンズの後方かつ前記投影レンズの光軸より上に配置される上セパレータと、
前記投影レンズの後方かつ前記投影レンズの光軸より下に配置される下セパレータと、
ロービーム用光源と、
ハイビーム用光源と、を備え、
前記上セパレータは、車両後方側に配置されるロービーム用入光部及び車両前方側に配置されるロービーム用出光面を含み、
前記下セパレータは、車両後方側に配置されるハイビーム用入光部及び車両前方側に配置されるハイビーム用出光面を含み、
前記ロービーム用光源は、前記ロービーム用入光部から入光し前記ロービーム用出光面から出光し前記投影レンズにより投影されることによりロービーム用配光パターンを形成する光を発光し、
前記ハイビーム用光源は、前記ハイビーム用入光部から入光し前記ハイビーム用出光面から出光し前記投影レンズにより投影されることによりハイビーム用配光パターンを形成する光を発光し、
前記投影レンズの焦点は、前記ロービーム用出光面と前記ハイビーム用出光面との間に位置しており、
前記上セパレータの光学長は、前記下セパレータの光学長より長い車両用灯具。
【請求項2】
前記ロービーム用光源及び前記ハイビーム用光源が実装された基板をさらに備え、
前記ロービーム用入光部は、前記ハイビーム用入光部より車両後方側に配置され、
前記基板は、前記ロービーム用光源と前記ロービーム用入光部とが対向し、かつ、前記ハイビーム用光源と前記ハイビーム用入光部とが対向するように傾斜した状態で配置されている請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記ロービーム用入光部は、ロービーム用入光面と、前記ロービーム用入光面の上方に配置されたロービーム用全反射面と、を含み、
前記ハイビーム用入光部は、ハイビーム用入光面と、前記ハイビーム用入光面の上方に配置されたハイビーム用全反射面と、一対の側面と、を含み、
前記ロービーム用出光面と前記ハイビーム用出光面との間に前記ロービーム用配光パターンのカットオフラインに対応するカットオフ形状が設けられている請求項1又は2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記ロービーム用全反射面は、前記投影レンズの焦点近傍に集光するように、前記ロービーム用入光部から入光し当該ロービーム用全反射面に入射した前記ロービーム用光源からの光を全反射する全反射面であり、
前記ハイビーム用全反射面は、前記投影レンズの焦点近傍に集光するように、前記ハイビーム用入光部から入光し当該ハイビーム用全反射面に入射した前記ハイビーム用光源からの光を全反射する全反射面である請求項3に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記ロービーム用全反射面は、第1焦点が前記ロービーム用光源近傍に位置し、第2焦点が前記投影レンズの焦点近傍に位置する楕円基調の全反射面であり、
前記ハイビーム用全反射面は、曲面形状の全反射面である請求項4に記載の車両用灯具。
【請求項6】
水平断面において、
前記ロービーム用出光面の中央部及び前記ハイビーム用出光面の中央部は前記投影レンズの焦点面に沿っており、かつ、前記ロービーム用出光面の中央部の両側の部分及び前記ハイビーム用出光面の中央部の両側の部分は前記投影レンズの焦点面から車両後方側に離れている請求項1から5のいずれか1項に記載の車両用灯具。
【請求項7】
鉛直断面において、
前記ロービーム用出光面は、当該ロービーム用出光面の下端部から車両前方に向かって傾斜した傾斜部を介して上方に延び、
前記ハイビーム用出光面は、当該ハイビーム用出光面の上端部から車両前方に向かって傾斜した傾斜部を介して下方に延びている請求項1から6のいずれか1項に記載の車両用灯具。
【請求項8】
前記上セパレータと前記下セパレータとの間に配置された遮光部材をさらに備える請求項1から7のいずれか1項に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に関し、特に、ロービーム用光源の数を削減しても、ハイビーム用の部分配光パターン(複数)が水平方向に拡がらず、ハイビーム用の部分配光パターンに求められる光度を満たすことができる車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
投影レンズ、投影レンズの後方に配置されるセパレータ、セパレータの後方に配置されるロービーム用光源(複数)及びハイビーム用光源(複数)が実装された基板を備えた車両用灯具が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の車両用灯具においては、セパレータは、車両後方側に配置されるロービーム用入光部及び車両前方側に配置されるロービーム用出光面、並びに、車両後方側に配置されるハイビーム用入光部及び車両前方側に配置されるハイビーム用出光面を含む。ロービーム用光源が発光する光は、ロービーム用入光部から入光しロービーム用出光面から出光し投影レンズ(投影レンズの焦点はロービーム用出光面とハイビーム用出光面との間に位置している)により投影されることによりロービーム用配光パターンを形成する。一方、ハイビーム用光源が発光する光は、ハイビーム用入光部から入光しハイビーム用出光面から出光し投影レンズにより投影されることによりハイビーム用配光パターンを形成する。
【0004】
これに対して、本発明者らは、コスト削減の観点から、上記特許文献1に記載の車両用灯具のロービーム用光源の数を削減することを検討した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-220404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者らが検討したところ、特許文献1に記載の車両用灯具においては、ロービーム用光源の数を削減すると、ロービーム用光源(複数)からの光により形成されるロービーム用の部分配光パターン(複数)が互いに重なる領域が少なくなり、その結果、ロービーム用の部分配光パターンにより形成されるロービーム用配光パターンに配光ムラが発生することが判明した。
【0007】
これに対して、本発明者らは、セパレータの光学長を長くすることにより、ロービーム用の部分配光パターンを水平方向に拡げ、これにより、ロービーム用の部分配光パターンが互いに重なる領域を多くし、ロービーム用配光パターンに配光ムラが発生するのを抑制することを検討した。
【0008】
しかしながら、セパレータの光学長を長くすると、ハイビーム用光源(複数)からの光により形成されるハイビーム用の部分配光パターンも水平方向に拡がってしまい、その結果、ハイビーム用の部分配光パターンに求められる光度が不足し当該ハイビーム用の部分配光パターンを用いてADB機能を実現することができないという課題がある。
【0009】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、ロービーム用光源の数を削減しても、ロービーム用配光パターンに配光ムラが発生するのを抑制することができ、かつ、ハイビーム用の部分配光パターンが水平方向に拡がらない(その結果、ハイビーム用の部分配光パターンに求められる光度を満足できADB機能を実現することができる)車両用灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明にかかる車両用灯具は、投影レンズと、前記投影レンズの後方かつ前記投影レンズの光軸より上に配置される上セパレータと、前記投影レンズの後方かつ前記投影レンズの光軸より下に配置される下セパレータと、ロービーム用光源と、ハイビーム用光源と、を備え、前記上セパレータは、車両後方側に配置されるロービーム用入光部及び車両前方側に配置されるロービーム用出光面を含み、前記下セパレータは、車両後方側に配置されるハイビーム用入光部及び車両前方側に配置されるハイビーム用出光面を含み、前記ロービーム用光源は、前記ロービーム用入光部から入光し前記ロービーム用出光面から出光し前記投影レンズにより投影されることによりロービーム用配光パターンを形成する光を発光し、前記ハイビーム用光源は、前記ハイビーム用入光部から入光し前記ハイビーム用出光面から出光し前記投影レンズにより投影されることによりハイビーム用配光パターンを形成する光を発光し、前記投影レンズの焦点は、前記ロービーム用出光面と前記ハイビーム用出光面との間に位置しており、前記上セパレータの光学長は、前記下セパレータの光学長より長い。
【0011】
このような構成により、ロービーム用光源の数を削減しても、ロービーム用配光パターンに配光ムラが発生するのを抑制することができ、かつ、ハイビーム用の部分配光パターンが水平方向に拡がらない(その結果、ハイビーム用の部分配光パターンに求められる光度を満足できADB機能を実現することができる)車両用灯具を提供することができる。
【0012】
これは、上セパレータの光学長が下セパレータの光学長より長いことによるものである。すなわち、上セパレータの光学長を下セパレータの光学長より長くすることにより、ロービーム用の部分配光パターンを水平方向に拡げ互いに重なる領域を多くすることができるため、ロービーム用光源の数を削減しても、ロービーム用配光パターンに配光ムラが発生するのを抑制することができる。また、下セパレータの光学長を長くすることなく、上セパレータの光学長を長くすることができるため、上記のように上セパレータの光学長を下セパレータの光学長より長くしても、ハイビーム用の部分配光パターンが水平方向に拡がらない。その結果、ロービーム用光源の数を削減しても、ハイビーム用の部分配光パターンに求められる光度を満足できADB機能を実現することができる。
【0013】
上記車両用灯具において、前記ロービーム用光源及び前記ハイビーム用光源が実装された基板をさらに備え、前記ロービーム用入光部は、前記ハイビーム用入光部より車両後方側に配置され、前記基板は、前記ロービーム用光源と前記ロービーム用入光部とが対向し、かつ、前記ハイビーム用光源と前記ハイビーム用入光部とが対向するように傾斜した状態で配置されていてもよい。
【0014】
また、上記車両用灯具において、前記ロービーム用入光部は、ロービーム用入光面と、前記ロービーム用入光面の上方に配置されたロービーム用全反射面と、を含み、前記ハイビーム用入光部は、ハイビーム用入光面と、前記ハイビーム用入光面の上方に配置されたハイビーム用全反射面と、一対の側面と、を含み、前記ロービーム用出光面と前記ハイビーム用出光面との間に前記ロービーム用配光パターンのカットオフラインに対応するカットオフ形状が設けられていてもよい。
【0015】
また、上記車両用灯具において、前記ロービーム用全反射面は、前記投影レンズの焦点近傍に集光するように、前記ロービーム用入光部から入光し当該ロービーム用全反射面に入射した前記ロービーム用光源からの光を全反射する全反射面であり、前記ハイビーム用全反射面は、前記投影レンズの焦点近傍に集光するように、前記ハイビーム用入光部から入光し当該ハイビーム用全反射面に入射した前記ハイビーム用光源からの光を全反射する全反射面であってもよい。
【0016】
また、上記車両用灯具において、前記ロービーム用全反射面は、第1焦点が前記ロービーム用光源近傍に位置し、第2焦点が前記投影レンズの焦点近傍に位置する楕円基調の全反射面であり、前記ハイビーム用全反射面は、曲面形状の全反射面であってもよい。
【0017】
また、上記車両用灯具において、水平断面において、前記ロービーム用出光面の中央部及び前記ハイビーム用出光面の中央部は前記投影レンズの焦点面に沿っており、かつ、前記ロービーム用出光面の中央部の両側の部分及び前記ハイビーム用出光面の中央部の両側の部分は前記投影レンズの焦点面から車両後方側に離れていてもよい。
【0018】
また、上記車両用灯具において、鉛直断面において、前記ロービーム用出光面は、当該ロービーム用出光面の下端部から車両前方に向かって傾斜した傾斜部を介して上方に延び、前記ハイビーム用出光面は、当該ハイビーム用出光面の上端部から車両前方に向かって傾斜した傾斜部を介して下方に延びていてもよい。
【0019】
また、上記車両用灯具において、前記上セパレータと前記下セパレータとの間に配置された遮光部材をさらに備えていてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、ロービーム用光源の数を削減しても、ロービーム用配光パターンに配光ムラが発生するのを抑制することができ、かつ、ハイビーム用の部分配光パターンが水平方向に拡がらない(その結果、ハイビーム用の部分配光パターンに求められる光度を満足できADB機能を実現することができる)車両用灯具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】車両用灯具10を投影レンズ60の光軸AX60(基準軸)を含む鉛直面で切断した縦断面図である。
図2】基板30の斜視図である。
図3】基板30及びセパレータ50の側面図である。
図4】セパレータ50の上面図である。
図5】セパレータ50の正面図である。
図6】セパレータ50の斜視図である。
図7】(a)ロービーム用光源31Aが発光した光RayA及びロービーム用光源31Aが発光した光RayAの光路を表す図(上面図)、(b)ロービーム用光源31Aが発光した光RayAの光路を表す図(側面図)である。
図8】(a)ロービーム用光源31Aが発光する光RayAにより形成されるロービーム用の部分配光パターンPLo4の一例、(b)ロービーム用光源31A~31Aが発光する光により形成されるロービーム用の部分配光パターンPLo1~PLo6の一例、(c)部分配光パターンPLo1~PLo6が互いに重畳されることにより形成されるロービーム用配光パターンPLOの一例である。
図9】セパレータ50の下面図である。
図10】ハイビーム用入光部52a近傍の拡大図である。
図11】(a)ハイビーム用光源31Bが発光した光RayB及びハイビーム用光源31Bが発光した光RayBの光路を表す図(下面図)、(b)ハイビーム用光源31Bが発光した光RayBの光路を表す図(側面図)である。
図12】(a)ハイビーム用光源31Bが発光する光RayBにより形成される部分配光パターンPHi7の一例、(b)ハイビーム用光源31B~31B12が発光する光により形成される部分配光パターンPHi1~PHi12の一例、(c)部分配光パターンPHi1~PHi12が互いに重畳されることにより形成されるハイビーム用配光パターンPHiの一例である。
図13】ハイビーム用入光部52a近傍の拡大図(変形例)である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態である車両用灯具10について添付図面を参照しながら説明する。各図において対応する構成要素には同一の符号が付され、重複する説明は省略される。
【0023】
図1は、車両用灯具10を投影レンズ60の光軸AX60(基準軸)を含む鉛直面で切断した縦断面図である。
【0024】
本実施形態の車両用灯具10は、ロービーム用又はハイビーム用のヘッドランプとして機能する車両用前照灯で、自動車等の車両(図示せず)の前端部の左右両側にそれぞれ搭載される。左右両側に搭載される車両用灯具10は左右対称の構成であるため、以下、代表して、車両の前端部の右側(車両前方に向かって右側)に搭載される車両用灯具10について説明する。
【0025】
図1に示すように、車両用灯具10は、ヒートシンク20、ロービーム用光源31A及びハイビーム用光源31Bが実装された基板30、ホルダ40、セパレータ50、投影レンズ60を備えている。なお、以下、説明の便宜のため、XYZ軸を定義する。X軸は車両前後方向に延びており、Y軸は車幅方向に延びており、Z軸は鉛直方向に延びている。
【0026】
ヒートシンク20は、基板30が固定される基板固定面20aを含む。基板固定面20aは、Z軸に対し角度θ1傾斜している。角度θ1は例えば50°である。ヒートシンク20の材料としては、熱伝導性が高いアルミや銅等の金属やそれらの合金や比重が小さいマグネシウム等の合金が用いられる。ヒートシンク20は、切削、押出、差込み、ロウ付け、ダイカスト等の製法で作製される。
【0027】
図2は、基板30の斜視図である。
【0028】
基板30は、アルミ等の金属製基板で、ロービーム用光源31A~31A及びハイビーム用光源31B~31B12が実装された光源実装面30a及びその反対側の裏面30bを含む。以下、ロービーム用光源31A~31A、ハイビーム用光源31B~31B12を特に区別しない場合、ロービーム用光源31A、ハイビーム用光源31Bと記載する。
【0029】
ロービーム用光源31A及びハイビーム用光源31Bは、LED等の半導体発光素子である。図2に示すように、本実施形態では、基板30(光源実装面30a)には、上段に6個のロービーム用光源31A~31Aが互いに間隔をあけてY軸方向に一列に配置された状態で実装され、下段に12個のハイビーム用光源31B~31B12が互いに間隔をあけてY軸方向に一列に配置された状態で実装されている。
【0030】
ロービーム用光源31A及びハイビーム用光源31Bは、発光面を備えている。発光面は、例えば、1mm角の矩形の発光面である。ロービーム用光源31A及びハイビーム用光源31Bは、発光面が光源実装面30aに対して平行の状態で基板30(光源実装面30a)に実装されている。ロービーム用光源31Aの光軸AX31A図1図3参照)は、発光面の中央をとおりかつ発光面に直交する方向に延びている。同様に、ハイビーム用光源31Bの光軸AX31B図1図3参照)は、発光面の中央をとおりかつ発光面に直交する方向に延びている。
【0031】
基板30は、Z軸に対し角度θ1(図1参照)傾斜した状態でヒートシンク20(基板固定面20a)に固定(例えばねじ固定)されている。具体的には、基板30は、光源実装面30aの反対側の裏面30bがヒートシンク20の基板固定面20aに当接することにより、Z軸に対し角度θ1傾斜した状態でヒートシンク20(基板固定面20a)に固定されている。ヒートシンク20(基板固定面20a)と基板30(裏面30b)との間には、両者の密着性を高め、接触熱抵抗を低減するため、サーマルグリス、熱伝導シート、熱伝導接着材等のTIM(Thermal Interface Materials:熱伝導部材)が設けられている。
【0032】
図3は、基板30及びセパレータ50の側面図である。図4は、セパレータ50の上面図である。
【0033】
セパレータ50は、シリコン樹脂製で、図3に示すように、上セパレータ51、下セパレータ52を含む。なお、セパレータ50は、耐熱性材料製であればよく、シリコン樹脂製に限られない。例えば、セパレータ50は、ガラス製であってもよい。
【0034】
上セパレータ51は、投影レンズ60の光軸AX60より上に配置されている。一方、下セパレータ52は、投影レンズ60の光軸AX60より下に配置されている。投影レンズ60の光軸AX60は、X軸方向に延びている。また、図4に示すように、セパレータ50は、上面視で、投影レンズ60の光軸AX60に対して対称に構成されている。
【0035】
上セパレータ51及び下セパレータ52は、上セパレータ51のロービーム用出光面51bの下端部と下セパレータ52のハイビーム用出光面52bの上端部とが接続された状態で一体成形されている(図3参照)。なお、上セパレータ51及び下セパレータ52は、別々に成形してもよい。
【0036】
セパレータ50は、当該セパレータ50を保持したホルダ40をヒートシンク20に固定することにより(図1参照)、ロービーム用入光部51a(ロービーム用入光面51c)及びハイビーム用入光部52a(ハイビーム用入光面52c)とロービーム用光源31A及びハイビーム用光源31Bとが対向した状態(位置決めされた状態)で基板30前方に配置されている(図3参照)。
【0037】
ホルダ40は、遮光部41を含む(図1参照)。遮光部41は、上セパレータ51に入光したロービーム用光源31Aからの光が漏れ出て下セパレータ52に入光せず、かつ、下セパレータ52に入光したハイビーム用光源31Bからの光が漏れ出て上セパレータ51に入光しないように、上セパレータ51と下セパレータ52との間に配置されている。
【0038】
投影レンズ60は非球面レンズである。投影レンズ60は、当該投影レンズ60をセパレータ50に対して位置決めした状態でヒートシンク20等に固定することにより、セパレータ50前方に配置されている。投影レンズ60の焦点F60図3図5参照)は、上セパレータ51のロービーム用出光面51bの下端部と下セパレータ52のハイビーム用出光面52bの上端部との間(カットオフ形状51g)に位置している。
【0039】
図5は、セパレータ50の正面図である。
【0040】
図5に示すように、上セパレータ51のロービーム用出光面51bの下端部と下セパレータ52のハイビーム用出光面52bの上端部との間には、ロービーム用配光パターンPLoのカットオフラインに対応するカットオフ形状51g(Z型段差部)が設けられている。上セパレータ51の光学長(ロービーム用光源31Aからの光が上セパレータ51内を通過する光学距離)は、下セパレータ52の光学長(ハイビーム用光源31Bからの光が下セパレータ52内を通過する光学距離)より長い(図3参照)。
【0041】
まず、上セパレータ51について説明する。
【0042】
図6は、セパレータ50の斜視図である。
【0043】
上セパレータ51は、車両後方側に配置されるロービーム用入光部51a(51a~51a図3図4図6参照)、車両前方側に配置されるロービーム用出光面51b(図3参照)を含む。以下、ロービーム用入光部51a~51aを特に区別しない場合、ロービーム用入光部51aと記載する。
【0044】
ロービーム用入光部51a~51aは、Y軸方向に一列に配置されている。本実施形態のように車両の前端部の右側(車両前方に向かって右側)に搭載される車両用灯具10においては、図4に示すように、ロービーム用光源31A~31Aは、ロービーム用入光部51a~51aが対向した状態で配置される。図4中の点線の矩形は、上セパレータ51(ロービーム用入光部51a~51a)を透して視認されるロービーム用光源31A~31Aを表す。
【0045】
一方、図示しないが、車両の前端部の左側(車両前方に向かって左側)に搭載される車両用灯具10においては、ロービーム用光源31A~31Aは、ロービーム用入光部51a~51aではなく、ロービーム用入光部51a~51aが対向した状態で配置される。
【0046】
このように、ロービーム用光源31A~31Aの数よりロービーム用入光部51a~51aの数を多くし、かつ、セパレータ50を上面視で投影レンズ60の光軸AX60に対して対称に構成する(図4参照)ことにより、セパレータ50(上セパレータ51)は、車両の前端部の右側(車両前方に向かって右側)に搭載される車両用灯具10及び車両の前端部の左側(車両前方に向かって左側)に搭載される車両用灯具10で兼用することができる。
【0047】
図3に示すように、ロービーム用入光部51aは、ロービーム用光源31A(発光面)が対向するロービーム用入光面51c、ロービーム用入光面51cの上方に配置されたロービーム用全反射面51dを含む。
【0048】
ロービーム用入光面51cは、例えば、ロービーム用光源31Aの発光面に対して平行な平面である。ロービーム用光源31A(発光面)とロービーム用入光面51cとの間の間隔は2mm程度であり、ロービーム用光源31Aは、ロービーム用入光面51cに対して近接配置されている。
【0049】
ロービーム用全反射面51dは、投影レンズ60の焦点F60近傍に集光するように、ロービーム用入光面51cから入光し当該ロービーム用全反射面51dに入射したロービーム用光源31Aからの光を全反射する全反射面である。本実施形態では、ロービーム用全反射面51dは、第1焦点F151d図3参照)がロービーム用光源31A近傍に位置し、第2焦点F251d図3参照)が投影レンズ60の焦点F60近傍に位置する楕円基調の全反射面である。
【0050】
図4に示すように、上面視(水平断面も同様)において、ロービーム用出光面51bの中央部51b1は投影レンズ60の焦点面FPに沿っている。一方、ロービーム用出光面51bの中央部51b1の両側の部分51b2、51b3は投影レンズ60の焦点面FPから車両後方側に離れている。これにより、図7(a)に示すように、ロービーム用出光面51bの中央部51b1の両側の部分51b2、51b3に入射する光(例えば、図7(a)中のRayA参照)の入射角が小さくなる。これにより、ロービーム用出光面51bの中央部51b1の両側の部分51b2、51b3においてフレネル反射(フレネル損失)又は全反射が発生するのが抑制されるため、ロービーム用出光面51bの中央部51b1の両側の部分51b2、51b3においても効率よく光を取り出すことができる。図7(a)はロービーム用光源31Aが発光した光RayA及びロービーム用光源31Aが発光した光RayAの光路を表す図(上面図)である。
【0051】
図3に示すように、側面視(鉛直断面も同様)において、ロービーム用出光面51bは、当該ロービーム用出光面51bの下端部から車両前方に向かって傾斜した傾斜部51gを介して上方に延びている。これにより、図7(b)に示すように、ロービーム用出光面51bのうち下端部近傍(傾斜部51g)に入射する光(例えば、図7(b)中のRayA参照)の入射角が小さくなる。これにより、ロービーム用出光面51bのうち下端部近傍(傾斜部51g)においてフレネル反射(フレネル損失)又は全反射が発生するのが抑制されるため、ロービーム用出光面51bのうち下端部近傍(傾斜部51g)においても効率よく光を取り出すことができる。図7(b)はロービーム用光源31Aが発光した光RayAの光路を表す図(側面図)である。なお、ロービーム用出光面51bは、投影レンズ60の焦点F60より若干車両後方側に配置するのが望ましい。このようにすれば、カットオフ形状51g近傍に付着した埃等がロービーム用配光パターンに投影されるのを防止することができる。
【0052】
図3に示すように、ロービーム用出光面51bの下端部とロービーム用入光面51cとの間には、下面51eが設けられている。また、ロービーム用出光面51bの上端部とロービーム用全反射面51dとの間には、上面51fが設けられている。
【0053】
図8(a)はロービーム用光源31Aが発光する光RayAにより形成されるロービーム用の部分配光パターンPLo4の一例である。なお、図8(a)中の部分配光パターンPLo4の外形は等光度線(625cdを表す)である。図8(b)はロービーム用光源31A~31Aが発光する光により形成されるロービーム用の部分配光パターンPLo1~PLo6の一例である。なお、実際には、部分配光パターンPLo1~PLo6の上端縁及び下端縁は概ね一致しているが、一致した状態で描くと分かりにくいため、図8(b)においては部分配光パターンPLo1~PLo6を上下にずらして描いてある。図8(c)は部分配光パターンPLo1~PLo6が互いに重畳されることにより形成されるロービーム用配光パターンPLOの一例を表す。なお、図8(a)~図8(c)に示す各配光パターンは、車両前面に正対した仮想鉛直スクリーン(車両前面から約25m前方に配置されている)上に形成される。
【0054】
図8(c)に示すロービーム用配光パターンPLOは、次のようにして形成される。
【0055】
まず、ロービーム用光源31A~31Aを点灯する。例えば、ロービーム用光源31Aが発光する光RayA図7(a)、図7(b)参照)は、当該ロービーム用光源31Aが対向するロービーム用入光面51cから入光し、ロービーム用全反射面51dで全反射され、ロービーム用出光面51bから出光する。これにより、図8(a)に示す部分配光パターンPLo4に対応する光度分布が投影レンズ60の焦点面FP近傍に形成される。
【0056】
この部分配光パターンPLo4に対応する光度分布が、投影レンズ60により前方に反転投影されることにより、図8(a)に示すように、部分配光パターンPLo4が形成される。
【0057】
同様に、ロービーム用光源31A以外のロービーム用光源31A~31A、31A、31Aが発光する光も、各々のロービーム用光源31A~31A、31A、31Aが対向するロービーム用入光面51cから入光し、ロービーム用全反射面51dで全反射され、ロービーム用出光面51bから出光する。これにより、図8(b)に示す部分配光パターンPLo1~PLo6に対応する光度分布が投影レンズ60の焦点面FP近傍に形成される。
【0058】
以上のように投影レンズ60の焦点面FP近傍に形成された部分配光パターンPLo1~PLo6図8(b)参照)に対応する光度分布が、投影レンズ60により前方に反転投影されることにより、図8(c)に示すように、ロービーム用配光パターンPLoが形成される。ロービーム用配光パターンPLoの上端縁は、上セパレータ51のロービーム用出光面51bの下端部と下セパレータ52のハイビーム用出光面52bの上端部との間に設けられたカットオフ形状51g(図5参照)に対応するカットオフラインを含む。
【0059】
ロービーム用の部分配光パターン(例えば、図8(a)に示すPLo4参照)は、後述のハイビーム用の部分配光パターン(例えば、図12(a)に示すPHi7参照)と比べ水平方向に広く、ロービーム用配光パターンに適したものとなる。これは、上セパレータ51の光学長(ロービーム用光源31Aからの光が上セパレータ51内を通過する光学距離)が、下セパレータ52の光学長(ハイビーム用光源31Bからの光が下セパレータ52内を通過する光学距離)より長い(図3参照)ことによるものである。
【0060】
また、ロービーム用の部分配光パターンPLo1~PLo6は水平方向に関し互いに重畳した状態で形成されるため(図8(b)参照)、より少ない数のロービーム用光源31Aによりムラ無く水平方向に拡がるロービーム用配光パターンPLoを形成することができる。
【0061】
次に、下セパレータ52について説明する。
【0062】
下セパレータ52は、車両後方側に配置されるハイビーム用入光部52a(52a~52a13図3図6参照)、車両前方側に配置されるハイビーム用出光面52bを含む。以下、ハイビーム用入光部52a~52a13を特に区別しない場合、ハイビーム用入光部52aと記載する。
【0063】
図6に示すように、下セパレータ52の車両後方側の部分は、Z軸方向に貫通する分割溝52j(複数)により分割されることにより、短冊状のハイビーム用入光部52a~52a13を構成している。
【0064】
図9は、セパレータ50の下面図である。
【0065】
ハイビーム用入光部52a~52a13は、Y軸方向に一列に配置されている。本実施形態のように車両の前端部の右側(車両前方に向かって右側)に搭載される車両用灯具10においては、図9に示すように、ハイビーム用光源31B~31B12は、ハイビーム用入光部52a~52a12が対向した状態で配置される。
【0066】
一方、図示しないが、車両の前端部の左側(車両前方に向かって左側)に搭載される車両用灯具10においては、ハイビーム用光源31B~31B12は、ハイビーム用入光部52a~52a12ではなく、ハイビーム用入光部52a~52a13が対向した状態で配置される。
【0067】
このように、ハイビーム用光源31B~31B12の数よりハイビーム用入光部52a~52a13の数を多くし、かつ、セパレータ50を上面視で投影レンズ60の光軸AX60に対して対称に構成する(図4参照)ことにより、セパレータ50(下セパレータ52)は、車両の前端部の右側(車両前方に向かって右側)に搭載される車両用灯具10及び車両の前端部の左側(車両前方に向かって左側)に搭載される車両用灯具10で兼用することができる。
【0068】
図3に示すように、ハイビーム用入光部52aは、ハイビーム用光源31B(発光面)が対向するハイビーム用入光面52c、ハイビーム用入光面52cの上方に配置されたハイビーム用全反射面52dを含む。また、図10に示すように、ハイビーム用入光部52aは、一対の側面52g、52hを含む。図10は、ハイビーム用入光部52a近傍の拡大図である。
【0069】
ハイビーム用入光面52cは、例えば、ハイビーム用光源31Bの発光面に対して平行な平面である。ハイビーム用光源31B(発光面)とハイビーム用入光面52cとの間の間隔は2mm程度であり、ハイビーム用光源31Bは、ハイビーム用入光面52cに対して近接配置されている。
【0070】
ハイビーム用全反射面52dは、投影レンズ60の焦点F60近傍に集光するように、ハイビーム用入光面52cから入光し当該ハイビーム用全反射面52dに入射したハイビーム用光源31Bからの光を全反射する全反射面である。本実施形態では、ハイビーム用全反射面52dは、曲面形状の反射面である。なお、ハイビーム用全反射面52dは、第1焦点がハイビーム用光源31B近傍に位置し、第2焦点が投影レンズ60の焦点F60近傍に位置する楕円基調の全反射面であってもよい。
【0071】
図9に示すように、上面視(水平断面も同様)において、ハイビーム用出光面52bの中央部52b1は投影レンズ60の焦点面FPに沿っている。一方、ハイビーム用出光面52bの中央部52b1の両側の部分52b2、52b3は投影レンズ60の焦点面FPから車両後方側に離れている。これにより、ハイビーム用出光面52bの中央部52b1の両側の部分52b2、52b3に入射する光の入射角が小さくなる。これにより、ハイビーム用出光面52bの中央部の両側の部分51b2、51b3においてフレネル反射(フレネル損失)又は全反射が発生するのが抑制されるため、ハイビーム用出光面52bの中央部52b1の両側の部分51b2、51b3においても効率よく光を取り出すことができる。図11(a)はハイビーム用光源31Bが発光した光RayB及びハイビーム用光源31Bが発光した光RayBの光路を表す図(下面図)である。
【0072】
図3に示すように、側面視(鉛直断面も同様)において、ハイビーム用出光面52bは、当該ハイビーム用出光面52bの上端部から車両前方に向かって傾斜した傾斜部52kを介して下方に延びている。これにより、ハイビーム用出光面52bのうち上端部近傍(傾斜部52k)に入射する光(例えば、図11(b)中のRayB参照)の入射角が小さくなる。これにより、ハイビーム用出光面52bのうち上端部近傍(傾斜部52k)においてフレネル反射(フレネル損失)又は全反射が発生するのが抑制されるため、ハイビーム用出光面52bのうち上端部近傍(傾斜部52k)においても効率よく光を取り出すことができる。図11(b)はハイビーム用光源31Bが発光した光RayBの光路を表す図(側面図)である。なお、ハイビーム用出光面52bは、投影レンズ60の焦点F60より若干車両後方側に配置するのが望ましい。このようにすれば、カットオフ形状51g近傍に付着した埃等がハイビーム用配光パターンに投影されるのを防止することができる。
【0073】
図3に示すように、ハイビーム用出光面52bの下端部とハイビーム用入光面52cとの間には、下面52eが設けられている。また、ハイビーム用出光面52bの上端部とハイビーム用全反射面52dとの間には、上面52fが設けられている。
【0074】
図12(a)はハイビーム用光源31Bが発光する光RayBにより形成される部分配光パターンPHi7の一例である。なお、図12(a)中の部分配光パターンPHi7の外形は等光度線(625cdを表す)である。図12(b)はハイビーム用光源31B~31B12が発光する光により形成される部分配光パターンPHi1~PHi12の一例である。なお、実際には、部分配光パターンPHi1~PHi12の下端縁は概ね一致しているが、一致した状態で描くと分かりにくいため、図12(b)においては部分配光パターンPHi1~PHi12を上下にずらして描いてある。図12(c)は部分配光パターンPHi1~PHi12が互いに重畳されることにより形成されるハイビーム用配光パターンPHiの一例を表す。なお、図12(a)~図12(c)に示す各配光パターンは、車両前面に正対した仮想鉛直スクリーン(車両前面から約25m前方に配置されている)上に形成される。
【0075】
図12(c)に示すハイビーム用配光パターンPHiは、次のようにして形成される。
【0076】
まず、ハイビーム用光源31B~31B12を点灯する。例えば、ハイビーム用光源31Bが発光する光RayB図11(a)、図11(b)参照)は、当該ハイビーム用光源31Bが対向するハイビーム用入光面52cから入光し、一部の光はハイビーム用全反射面52dで全反射され、他の一部の光は一対の側面52g、52hで全反射され(図10参照)、ハイビーム用出光面52bから出光する。なお、ハイビーム用全反射面52d、一対の側面52g、52h等で全反射されることなく、直接ハイビーム用出光面52bから出光する光もある。これにより、図12(a)に示す部分配光パターンPHi7に対応する光度分布が投影レンズ60の焦点面FP近傍に形成される。
【0077】
この部分配光パターンPHi7に対応する光度分布が、投影レンズ60により前方に反転投影されることにより、図12(a)に示すように、部分配光パターンPHi7が形成される。
【0078】
同様に、ハイビーム用光源31B以外のハイビーム用光源31B~31B、31B~31B12が発光する光も、各々のハイビーム用光源31B~31B、31B~31B12が対向するハイビーム用入光面52cから入光し、一部の光はハイビーム用全反射面52dで全反射され、他の一部の光は一対の側面52g、52hで全反射され(図10参照)、ハイビーム用出光面52bから出光する。なお、ハイビーム用全反射面52d、一対の側面52g、52h等で全反射されることなく、直接ハイビーム用出光面52bから出光する光もある。これにより、図12(b)に示す部分配光パターンPHi1~PHi12に対応する光度分布が投影レンズ60の焦点面FP近傍に形成される。
【0079】
この部分配光パターンPHi1~PHi12図12(b)参照)に対応する光度分布が、投影レンズ60により前方に反転投影されることにより、図12(c)に示すように、ハイビーム用配光パターンPHiが形成される。ハイビーム用配光パターンPHiの下端縁は、上セパレータ51のロービーム用出光面51bの下端部と下セパレータ52のハイビーム用出光面52bの上端部との間に設けられたカットオフ形状51g(図5参照)に対応するカットオフラインを含む。
【0080】
ハイビーム用の部分配光パターン(例えば、図12(a)に示すPHi7参照)は、上記ロービーム用の部分配光パターン(例えば、図8(a)に示すPLo4参照)と比べ水平方向に狭く、ADB(adaptive driving beam system;可変配光型ヘッドランプ)用配光パターンに適したものとなる。これは、上セパレータ51の光学長(ロービーム用光源31Aからの光が上セパレータ51内を通過する光学距離)が、下セパレータ52の光学長(ハイビーム用光源31Bからの光が下セパレータ52内を通過する光学距離)より長い(図3参照)ことによるものである。
【0081】
また、ハイビーム用の部分配光パターンPHi1~PHi12図12(b)参照)は、ロービーム用の部分配光パターンPLo1~PLo6図8(b)参照)より明るいものとなる。これは、下セパレータ52が、水平方向に光が拡散しないように制御する短冊状のハイビーム用入光部52a(一対の側面52g、52h)を備えていることによるものである。
【0082】
以上説明したように、本実施形態によれば、ロービーム用光源の数を削減しても、ロービーム用配光パターンに配光ムラが発生するのを抑制することができ、かつ、ハイビーム用の部分配光パターンが水平方向に拡がらない(その結果、ハイビーム用の部分配光パターンに求められる光度を満足できADB機能を実現することができる)車両用灯具を提供することができる。
これは、上セパレータ51の光学長が下セパレータ52の光学長より長いことによるものである。すなわち、本実施形態によれば、上セパレータ51の光学長を下セパレータ52の光学長より長くすることにより、ロービーム用の部分配光パターンPLo1~PLo6を水平方向に拡げ互いに重なる領域を多くすることができるため、ロービーム用光源の数を削減しても、ロービーム用配光パターンに配光ムラが発生するのを抑制することができる。また、本実施形態によれば、下セパレータ52の光学長を長くすることなく、上セパレータ51の光学長を長くすることができるため、上記のように上セパレータ51の光学長を下セパレータ52の光学長より長くしても、ハイビーム用の部分配光パターンPHi1~PHi12が水平方向に拡がらない。その結果、ロービーム用光源の数を削減しても、ハイビーム用の部分配光パターンに求められる光度を満足できADB機能を実現することができる。
【0083】
また、本実施形態によれば、ハイビーム用全反射面52dにより全反射されるハイビーム用光源31Bからの光の反射角度よりロービーム用全反射面51dにより全反射されるロービーム用光源31Aからの光の反射角度の方が鋭角となる。また全反射する光量もロービーム用全反射面51dの方が多い。そのため、上セパレータ51の光学長(ロービーム用光源31Aからの光が上セパレータ51内を通過する光学距離)をさらに長くすることができる。
【0084】
また、本実施形態によれば、上セパレータ51の光学長(ロービーム用光源31Aからの光が上セパレータ51内を通過する光学距離)を、下セパレータ52の光学長(ハイビーム用光源31Bからの光が下セパレータ52内を通過する光学距離)より長くすることにより、ロービーム用光源31Aとハイビーム用光源31Bとを、上記特許文献1より離して配置することができるため、上記特許文献1と比べ、熱的に有利となる。
【0085】
次に、変形例について説明する。
【0086】
セパレータ50は、ロービーム用入光部51a及びハイビーム用入光部52aを耐熱性材料で成形しそれ以外の部分を非耐熱性材料(例えば、アクリル又はポリカーボネイト)で成形してもよい。
【0087】
上記実施形態では、基板30は、Z軸に対し角度θ1(=50°)傾斜した状態でヒートシンク20(基板固定面20a)に固定(例えばねじ固定)されているように説明したが、角度θ1は50°に限らない。例えば、角度θ1は50°より小さくてもよい。この場合、ロービーム用光源31A数を増やせばよい。例えば、角度θ1を40°にする場合、7個のロービーム用光源31Aを用いればよい。また、角度θ1は50°より大きくてもよい。このようにすれば、ロービーム用光源31A数をさらに減らすことができる。
【0088】
また、上記実施形態では、ロービーム用入光面51c及びハイビーム用入光面52cが平面(略平面)である例について説明したが、これに限らない。例えば、より指向性を持たせる場合、ロービーム用入光面51c(及びハイビーム用入光面52c)はロービーム用光源31A(ハイビーム用光源31B)に向かって凸の凸面(又は凹の凹面)であってもよい。
【0089】
図13は、ハイビーム用入光部52a近傍の拡大図(変形例)である。
【0090】
図13に示すように、一対の側面52g、52hで全反射されたハイビーム用光源31Bからの光が光軸AX60寄りに向かうように、中央に配置されたハイビーム用入光部52aの両側に配置されたハイビーム用入光部52a(例えば、ハイビーム用入光部52a、52a)を傾斜させた状態で配置してもよい。このようにすれば、ハイビーム用出光面52bにおいてフレネル反射(フレネル損失)又は全反射が発生するのを抑制することができる。
【0091】
上記実施形態で示した数値は全て例示であり、これと異なる適宜の数値を用いることができるのは無論である。
【0092】
上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎない。上記実施形態の記載によって本発明は限定的に解釈されるものではない。本発明はその精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0093】
10…車両用灯具、20…ヒートシンク、20a…基板固定面、30…基板、30a…光源実装面、30b…裏面、31A(31A~31A)…ロービーム用光源、31B(31B~31B12)…ハイビーム用光源、40…ホルダ、41…遮光部、50…セパレータ、51…上セパレータ、51a(51a~51a)…ロービーム用入光部、51c…ロービーム用入光面、51d…ロービーム用全反射面、51e…下面、51f…上面、51g…カットオフ形状、52…下セパレータ、52a(52a~52a13)…ハイビーム用入光部、52b…ハイビーム用出光面、52c…ハイビーム用入光面、52d…ハイビーム用全反射面、52e…下面、52f…上面、52g、52h…一対の側面、52j…分割溝、60…投影レンズ、FP…焦点面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13