(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134033
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】骨導イヤホンユニット及び骨導検査装置
(51)【国際特許分類】
H04R 1/10 20060101AFI20230920BHJP
H04R 1/00 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
H04R1/10 103
H04R1/10 101Z
H04R1/00 317
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022039355
(22)【出願日】2022-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000115636
【氏名又は名称】リオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120592
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 崇裕
(72)【発明者】
【氏名】石川 愼一
(72)【発明者】
【氏名】菊池 洋祐
【テーマコード(参考)】
5D005
5D017
【Fターム(参考)】
5D005BA11
5D005BD01
5D017AB13
(57)【要約】
【課題】適正な骨導検査に資する技術を提供する。
【解決手段】骨導イヤホンユニット100は、被検者の頭部に当接して使用される骨導検査用イヤホン102と、骨導検査用イヤホン102を支持した状態で、弾性変形時の復元力により骨導検査用イヤホン102を頭部に押し付ける圧定力を発生可能な弾性部104と、弾性部104の変位とは独立した配置に基づいて、弾性部104が無負荷時の位置から所定の圧定力を発生させる位置に変位したことを認識可能とする位置ガイド部106と、被検者の頭部に装着されるヘッドバンド112に弾性部104及び位置ガイド部106が支持された状態で、弾性変形時の弾性部104と位置ガイド部106との相対的な位置関係を保持可能なストッパ108とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装用者の頭部に当接して使用される骨導イヤホン部と、
前記骨導イヤホン部を支持した状態で、弾性変形時の復元力により前記骨導イヤホン部を前記頭部に押し付ける力である圧定力を発生可能な弾性部と、
前記弾性部の変位とは独立した配置に基づいて、前記弾性部が無負荷時の位置から所定の前記圧定力を発生させる位置に変位したことを認識可能とする位置ガイド部と、
装用者の頭部に装着される装具に前記弾性部及び前記位置ガイド部が支持された状態で、弾性変形時の前記弾性部と前記位置ガイド部との相対的な位置関係を保持可能なストッパと
を備えた骨導イヤホンユニット。
【請求項2】
装用者の頭部に当接して使用される骨導イヤホン部と、
前記骨導イヤホン部を支持した状態で、弾性変形時の復元力により前記骨導イヤホン部を前記頭部に押し付ける力である圧定力を発生可能な弾性部と、
前記弾性部との間に、無負荷時の位置から所定の前記圧定力を発生させる弾性変形時の圧定位置に変位したことを認識可能とする関係性を有し、前記弾性部の変位とは独立して前記弾性部とともに装用者の頭部に装着される装具に支持される位置ガイド部と、
前記骨導イヤホン部を装用者の頭部に当接させつつ、前記位置ガイド部による認識が可能な前記圧定位置に前記弾性部を変位させた状態で前記弾性部と前記位置ガイド部との相対的な位置関係を保持可能なストッパと
を備えた骨導イヤホンユニット。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の骨導イヤホンユニットにおいて、
前記位置ガイド部及び前記弾性部が支持される位置を、装用者の頭部に装着される装具に対して調整可能とする調整機構をさらに備えた骨導イヤホンユニット。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の骨導イヤホンユニットにおいて、
装用者の頭部に装着される装具と、
前記装具に取り付けられ、所定の聴力検査装置と接続された気導検査用受話器と、
前記骨導イヤホン部を取り付けた前記弾性部、及び前記位置ガイド部を前記ストッパとともに前記装具に対して固定することにより、前記聴力検査装置との接続により前記骨導イヤホン部を前記気導検査用受話器と一体的に使用可能とする固定機構と
をさらに備えた骨導イヤホンユニット。
【請求項5】
請求項4に記載の骨導イヤホンユニットにおいて、
前記固定機構は、
前記骨導イヤホン部を装用者の前額部に当接可能とする第1態様か、もしくは前記骨導イヤホン部を装用者の乳突部に当接可能とする第2態様の少なくとも一方により前記弾性部及び前記位置ガイド部を前記ストッパとともに前記装具に対して固定可能であることを特徴とする骨導イヤホンユニット。
【請求項6】
請求項5に記載の骨導イヤホンユニットにおいて、
前記固定機構は、
前記第2態様により2組の前記弾性部及び前記位置ガイド部を前記ストッパとともに前記装具に対して固定することで、装用者の左右それぞれの乳突部に前記骨導イヤホン部を当接させて使用可能とすることを特徴とする骨導イヤホンユニット。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の骨導イヤホンユニットにおいて、
前記弾性部の弾性変形に伴って発生する前記圧定力を計測可能とする圧力計測部と、
前記圧力計測部で計測される前記圧定力が所定の値であるか、もしくは所定の範囲内にあることを開示可能な開示部と
をさらに備えた骨導イヤホンユニット。
【請求項8】
請求項7に記載の骨導イヤホンユニットにおいて、
前記圧力計測部は、
前記位置ガイド部に対する前記弾性部の変位量に基づいて前記圧定力を機構的に計測可能とするか、もしくは、フォースセンサからの検出信号に基づいて前記圧定力を電気的に計測可能とすることを特徴とする骨導イヤホンユニット。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の骨導イヤホンユニットにおいて、
前記弾性部を通じた前記骨導イヤホン部からの振動の伝搬を防止するクッション材をさらに備えた骨導イヤホンユニット。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の骨導イヤホンユニットを用いて装用者の骨導検査を行う骨導検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、聴力検査における骨導検査に用いられる骨導イヤホンユニット及びこれを用いて検査を行う骨導検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、聴力検査における骨導検査では、骨導検査用イヤホン(受話器)からの振動を被検者の頭蓋骨へ十分に印加するため、一定の静圧力(以下、「圧定力」と呼称する)でイヤホンを押し付けた状態で加振させる必要がある。
【0003】
このため従来、湾曲したバネ状のヘッドバンド等で被検者の頭部を挟み込み、バネの力で骨導検査用イヤホンを押し付けるようにして装着する方法が採用されている。また、ヘッドバンド(ヘッドアーム)を用いた骨伝導受話装置の先行技術として、装着時の骨導検査用イヤホンの圧定力を調整する機構を備えたものも知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ヘッドバンドのように頭部を挟み込むバネ状の装具によって得られる圧定力は、ヘッドバンドを無負荷の状態からどれだけ開いたか(開く距離)で決まってくる。このため、被検者の頭部形状や大きさ、ヘッドバンドの装用状態(頭部に対する位置や向き)によってヘッドバンドの開く距離が変動してしまい、検査の度に圧定力が一定しないという問題がある。
【0006】
一方、聴力検査装置(オージオメータ)の規格(JIST1201-1)によれば、骨導受話器用ヘッドバンドは、ISO389シリーズの公称圧定力又はメーカーの公称圧定力で、骨導受話器を乳突部又は前額部上に保持できる性能を備えなければならないと規定されている。ところが、仮にヘッドバンドが規格要件を満たしていても、上記の問題から公称圧定力が必ず得られているかは確かでない。
【0007】
そして、実際の聴力検査時に骨導受話器の圧定力が公称値から外れている場合、正しく骨導検査ができていない可能性があることになるが、その時の圧定力が果たして正しいものであるかを検査現場の使用者が一々確認することは難しく、使用者の心理的な負担を与えている。
【0008】
そこで本発明は、適正な骨導検査に資する技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の解決手段を採用する。なお、以下の解決手段及び括弧書中の文言はあくまで例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。また、本発明は、以下の解決手段に示す各発明特定事項を少なくとも1つ含む発明とすることができる。さらに、以下の解決手段に示す各発明特定事項には、発明特定事項を限定する要素を追加して下位概念化することができ、発明特定事項を限定する要素を削除して上位概念化することもできる。
【0010】
本発明は、解決手段として骨導イヤホンユニット、及びこれを用いて骨導検査を行う骨導検査装置を提供する。骨導イヤホンユニットは、骨導イヤホン部、弾性部、位置ガイド部及びストッパ部を備える。骨導イヤホン部は、被検者の頭部に当接して使用されるものであり、骨導検査用受話器やスピーカ等とも称される。弾性部は、骨導イヤホン部を支持した状態で、弾性変形時の復元力により骨導イヤホン部を頭部に押し付ける力、つまり圧定力を発生可能なものである。なお、弾性部はヘッドバンドのような頭部を挟み込む形態である必要はない。したがって、板バネ状やスパイラルバネ状のものでもよいし、ゴム状のものでもよい。
【0011】
位置ガイド部は、弾性部が無負荷時の位置から所定の圧定力を発生させる位置に変位したことを認識可能とするものであり、この機能は、弾性部の変位とは独立した配置に基づいて達成される。例えば、弾性部が負荷を受けて弾性変形しても、位置ガイド部はその動きとは独立の位置を保つことができ、弾性部の変位に自身の配置は影響されない。その上で位置ガイド部は独立した配置に基づき、弾性部が無負荷時からどの程度に変位しているかを客観的(例えば視覚的、聴覚的)に認識させたり、指し示したりするスケールとして機能することができる。この機能により位置ガイド部は、弾性部が所定の圧定力を発生させる位置に変位したことを使用者等に認識可能とする。
【0012】
その他の観点では、位置ガイド部は、予め弾性部との間に所定の関係性を有していて、その関係性は、弾性部が無負荷時の位置から所定の圧定力を発生させる弾性変形時の位置(以下、「圧定位置」とする)に変位したことを使用者等に認識可能とするというものである。そして同様に、弾性部が負荷を受けて弾性変形しても、位置ガイド部の位置は独立しており、弾性部の変位には影響されない。
【0013】
ストッパは、弾性変形時の弾性部と位置ガイド部との相対的な位置関係を保持可能である。ストッパによる位置関係の保持は、弾性部及び位置ガイド部が装用者(被検者)の頭部に装着される装具に支持された状態で行うことができる。なお、骨導イヤホンユニットはクッション材を備えてもよく、クッション材は、弾性部を通じた骨導イヤホン部からの振動の伝搬を防止する。
【0014】
また、骨導イヤホンユニットは調整機構をさらに備えてもよく、調整機構は、位置ガイド部及び弾性部が支持される位置を装具に対して調整可能とするものである。
【0015】
本発明の骨導イヤホンユニットの使用方法は、例えば以下となる。
(1)弾性部を無負荷状態とし、ストッパによる弾性部と位置ガイド部との相対的な位置関係の保持を解除(非保持に)しておく。装用者(被検者)の頭部には、ヘッドバンドのような装具を別途装着しておくとよい。
(2)骨導イヤホン部を装用者(被検者)の頭部に当接させた状態で、弾性部に負荷をかけて弾性変形させていき、所定の圧定力を発生させる位置に変位したことを位置ガイド部により認識できたところで変形を止める。調整機構を備える場合は、頭部の形状に合わせて位置ガイド部及び弾性部が支持される位置を装具に対して調整することもできる。
(3)そのままストッパで、弾性部と位置ガイド部との相対的な位置関係を保持する。このとき、弾性部及び位置ガイド部が装具に支持されているので、あとはこれらの位置関係をストッパで保持すれば、装用者(被検者)の頭部に当接させた骨導イヤホン部において所定の圧定力が形成されることになる。
(4)聴力検査装置等を用いて骨導イヤホン部を加振させ、装用者(被検者)の聴力検査を行う。骨導イヤホン部から装具やその他の部位への振動は、弾性部等でも十分に減衰されるが、クッション材を備えていれば、弾性部や位置ガイド部が装具に支持されていても、弾性部を通じた骨導イヤホン部からの装具や他の部位への振動の伝搬はクッション材により好適に防止される。
【0016】
これにより、オージオメータ等の聴力測定において、装用者(被検者)の頭部形状や大きさ、装具の装着状態等による圧定力のばらつきを軽減し、安定的に正しい圧定力で高精度な骨導聴力検査を行うことに加え、使用者の心理的な負担解消に寄与することができる。
【0017】
また、本発明の骨導イヤホンユニットによれば、さらに以下の有用性も得られる。
例えば従来、装用者(被検者)に気導検査用イヤホンのヘッドバンドを装着させた状態で、さらに骨導検査用イヤホンのヘッドバンドを装着させると、2つのヘッドバンドが頭回りに錯綜して干渉してしまうことも圧定力を変動させる要因となっていた。これは特に、前額骨導検査において発生しやすい。
【0018】
この点、本発明の骨導イヤホンユニットは、骨導イヤホン部を専用のヘッドバンドで装着させるのではなく、弾性部を介して装用者(被検者)の頭部に当接させるため、ヘッドバンド同士の干渉が問題になることはない。
【0019】
また従来は、骨導検査用イヤホンのヘッドバンドの脱着時に作業者が手元を誤る(いわゆる手が滑る)と、圧定力を形成するバネが弾み、人体に打撃を加えてしまうことがあった。
【0020】
この点、本発明の骨導イヤホンユニットは、骨導イヤホン部を押し付ける際にヘッドバンドを開いて装用者(被検者)の頭部に被せるような状況が生じない。したがって、脱着時に人体に対して意図しない力が加わる可能性を軽減することができる。
【0021】
さらに、本発明が採用する構造を音楽鑑賞用の骨導イヤホンに展開することで、音楽鑑賞用の骨導イヤホンにおいても使用者個人に依らず、一定の圧定力で骨導音を提供することができる。
【0022】
本発明の骨導イヤホンユニットは、気導検査用受話器と一体化させた態様とすることができる。この態様は、装用者(被検者)の頭部に装着されるヘッドバンド型の装具、気導検査用受話器及び固定機構を備える。装具には、例えば左右一対の気導検査用受話器が取り付けられ、所定の聴力検査装置と通信可能に有線又は無線接続されている。固定機構は、骨導イヤホン部を取り付けた弾性部、及び位置ガイド部をストッパとともに装具に対して固定するものであり、これにより、聴力検査装置との接続により骨導イヤホン部を気導検査用受話器と一体的に使用可能とする。なお、骨導イヤホン部と聴力検査装置との接続も有線又は無線を問わずに通信可能なものとなる。
【0023】
これにより、聴力検査時に装用者(被検者)へ装着するヘッドバンドの数を最小限に抑え、脱着作業を含めて検査の効率を向上することができる。また、例えば気導検査用受話器が無線接続タイプのものであれば、気導・骨導検査用イヤホンの両方を備えた一体型のワイヤレス受話器を提供することが可能となる。
【0024】
固定機構は、第1態様及び第2態様の少なくとも一方により弾性部及び位置ガイド部を装具に対して固定可能である。第1態様は、骨導イヤホン部を装用者(被検者)の前額部に当接可能とするものであり、第2態様は、骨導イヤホン部を装用者(被検者)の乳突部に当接可能とするものである。この場合、前額部又は乳突部のどちらでも骨導による聴力検査を行うことができ、さらに利便性が向上する。
【0025】
上記において固定機構は、第2態様により2組の弾性部及び位置ガイド部をストッパとともに装具に対して固定することで、装用者(被検者)の左右それぞれの乳突部に骨導イヤホン部を当接させて使用可能とすることもできる。これにより、左右両方の乳突部での検査効率をさらに向上させることができる。
【0026】
本発明の骨導イヤホンユニットは、圧力計測部及び開示部をさらに備えることもできる。圧力計測部は、弾性部の弾性変形に伴って発生する圧定力を計測可能とするものであり、開示部は、圧力計測部で計測される圧定力が所定の値であるか、もしくは所定の範囲内にあることを開示可能である。
【0027】
この場合、位置ガイド部による弾性部の位置(所定の圧定力を発生させる位置への変位)の認識に加えて、圧力計測部による計測結果の開示を活用することで、検査の作業効率をさらに向上することができる。
【0028】
また、圧力計測部は、圧定力を機構的に計測可能とすることもできるし、電気的に計測可能とすることもできる。機構的な計測は、弾性部の変位量に基づいて可能とし、電気的な計測は、フォースセンサからの検出信号に基づいて可能とする。機構的な圧定力の計測とすれば、圧力計測部を簡素な構成とすることができる。また、電気的な圧定力の計測であれば、計測結果を用いた応用の範囲を広げることができる。
【発明の効果】
【0029】
以上のように本発明によれば、適正な骨導検査に資する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】第1実施形態の骨導イヤホンユニット100の構成例を示す斜視図である。
【
図2】骨導イヤホンユニット100の垂直断面図(
図1中(A)のII-II断面図)である。
【
図3】第1実施形態の骨導イヤホンユニット100の使用形態例を示す図である。
【
図4】骨導イヤホンユニット100の使用形態における圧定力の設定手順例を示した図である。
【
図5】第2実施形態の骨導イヤホンユニット200の構成例を示す斜視図である。
【
図6】第2実施形態における弾性部204と位置ガイド部206の相対位置関係を示す図である。
【
図8】フォースセンサ304,306を用いて圧力計測及び開示を行う構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の複数の実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。なお、以下の各実施形態で示す骨導イヤホンユニットや骨導検査装置の構成は好ましい例示であり、本発明はこの例示に限定されるものではない。また、「骨導イヤホンユニット」の呼称には限られず、「イヤホン装具」や「骨導検査用器具」、「骨導検査用イヤホン」、「骨導検査用受話器」等の呼称を用いてもよい。
【0032】
〔第1実施形態〕
図1は、第1実施形態の骨導イヤホンユニット100の構成例を示す斜視図である。また、
図2は、骨導イヤホンユニット100の垂直断面図(
図1中(A)のII-II断面図)である。なお、
図1中(A)に示す骨導イヤホンユニット100を異なる方向(180°反対側)から示すと、
図1中(B)の斜視図となる。
【0033】
〔全体構成〕
第1実施形態の骨導イヤホンユニット100は、大きく分けて骨導検査用イヤホン102、弾性部104、位置ガイド部106、ストッパ108及びクッション材110の各部材を備えた構成である。なお、クッション材110は必須ではない。
【0034】
〔骨導イヤホン部〕
このうち、骨導検査用イヤホン102は、装用者(以下、「被検者」とする。)の頭部(前額部、乳突部等)に当接して使用される部位であり、ケーシング内部には図示しない振動子や駆動回路等を備える。骨導検査用イヤホン102は、例えば図示しない聴力検査装置(オージオメータ)に接続した状態で使用されるが、ここでは骨導検査用イヤホン102を駆動するための接続関係の構成を省略している。
【0035】
〔弾性部〕
第1実施形態の場合、弾性部104は、例えば厚み方向に「へ」字形状に湾曲成形された板ばねで構成されており、その長手方向の一端部にて骨導検査用イヤホン102を支持している。また、弾性部104の長手方向の他端部はクッション材110を介して位置ガイド部106に固定されており、この固定された他端部が固定端となって弾性部104が片持ち梁のように弾性変形する。弾性部104は、骨導検査用イヤホン102の圧定力を形成し、位置ガイド部106とは独立した配置により、無負荷状態では位置ガイド部106と被検者の頭部との間に位置する。なお、弾性部104は板ばねに限られない。
【0036】
〔位置ガイド部〕
第1実施形態の位置ガイド部106は、基端部位(
図2中のハッチングを施した部分)を有しており、この基端部位にて弾性部104の他端部(固定端)をクッション材110とともに厚み方向で挟み付けるようにして支持及び固定する。また、位置ガイド部106の基端部位では、弾性部104及びクッション材110を厚み方向に貫通することで、これらを抜け留めした(いわゆる目釘)構造となっている。また、位置ガイド部106は、弾性部104を挟んで幅方向の両側に配置された2本のフォーク状の部位を有しており、これら2本のフォーク状の部位は、互いに同形状をなして弾性部104の一端部に向かって延びている。これら2本のフォーク状の部位もまた、例えば厚み方向に「へ」字形状に湾曲成形されているが、その湾曲の度合い(角度)は自由状態(無負荷状態)の弾性部104より緩やかであり、また、弾性部104と比べると、その一端部よりも根元寄りまでの長さに短く設定されている。なお、位置ガイド部106は、弾性部104のような弾性体としての機能を有しておらず、本構造においては弾性部104とは独立した配置の非変形部材(剛体)として用いられる。
【0037】
〔ストッパ〕
ストッパ108は、例えば対向一対のネジ状部材で構成されており、これら一対のネジ状部材が位置ガイド部106を両側から挟み込むようにして配置されている。ストッパ108は、ネジ状部材と一体成形された円柱形状のつまみ部分を締付方向に回転させることで締付力を発生し、弾性部104と位置ガイド部106との相対的な位置関係を保持(固定)することが可能である。なお、ストッパ108の一対のネジ状部材は、一方がボルトで他方がナットとして構成されていてもよい。
【0038】
〔クッション材〕
クッション材110は、位置ガイド部106の基端部位との間で弾性部104の他端部(固定端)を挟み込むようにして配置されている。クッション材110は、骨導検査用イヤホン102から出力された振動が弾性部104を介してストッパ108や位置ガイド部106等へ伝播することを防止する。クッション材110には、ゴムやウレタン系樹脂等の材料を用いることができるが、これに限られない。ただし、骨導検査に支障が無い場合には、クッション材を備えない構成で実施されても良い。
【0039】
〔周辺構成〕
骨導検査用イヤホン102には、上記の他にも周辺構成が用いられる。周辺構成としては、例えばヘッドバンド112及びベース部114があり、このうちヘッドバンド112は、被検者の頭部に装着される装具とすることができる。なお、
図1では一部のみ示されているが、ヘッドバンド112は、例えば頭部を挟み込んだ状態で安定した装着状態を保持することが可能なものとする。
【0040】
〔固定機構,調整機構〕
ベース部114は、骨導検査用イヤホン102や弾性部104、位置ガイド部106をヘッドバンド112に対して固定させるためのアダプタ機構部品であり、この例では、ヘッドバンド112の一部を挟み込むようにして組み合わされた2つのパーツから構成されている。また、一方(装着状態で上側)のパーツには、位置ガイド部106の両側に壁板状のブラケット部114bが一対をなして形成されており、これらブラケット部114aが互いに平行な直線状(装着状態で前後になる方向)に延びている。そして、各ブラケット部114aには、ストッパ108のネジ状部材を挿通可能な長孔114bが形成されている。
【0041】
〔相対位置関係(関係性)〕
図2に示されているように、弾性部104は、無負荷状態で位置ガイド部106との相対位置が距離Δxだけ離れた場所となる位置関係に調整されている。対する位置ガイド部106は、弾性部104の弾性変形による変位(動き)とは独立して配置されているため、弾性部104を弾性変形させたとしても、位置ガイド部106の配置は弾性部104の変位に影響されない。
【0042】
このとき、弾性部104のバネ定数をk、無負荷状態(x=0の点)からのx方向変位をΔx、弾性部104が発生させる復元力をFとすると、フックの法則より次式(1)の関係が成り立つ。
Δx=F/k …(1)
【0043】
したがって、
図2中に二点鎖線で示すように、x方向でみて位置ガイド部106と弾性部104の位置が揃っている位置関係にある場合、弾性部104はバネ定数kによる一定の復元力Fを発生し、これが骨導検査用イヤホン102を頭部に押し付ける際の一定の圧定力になる。
【0044】
なお、第1実施形態の場合、位置ガイド部106に対して弾性部104が傾斜した配置であることから、距離Δxの大きさは弾性部104の長手方向位置で異なることになるが、どの位置で距離Δxを定義したとしても、結果的に骨導検査用イヤホン102の取付位置で所望の圧定力Fが得られるようにバネ定数kと変位量Δxの関係((1)式)が成り立つ弾性部104の特性や位置ガイド部106の配置を適宜設定しておけばよい。
【0045】
このような構造により、被検者の頭部の形状や大きさ、ヘッドバンド112の装着状態といった各種の変動要因に関わらず、骨導検査用イヤホン102を一定の圧定力で押し当てて検査を実施することが可能となる。以下、使用形態例と合わせて詳細に説明する。
【0046】
〔使用形態例〕
図3は、第1実施形態の骨導イヤホンユニット100の使用形態例を示す図である。
図3中(A)が被検者に装着された状態の正面図であり、
図3中(B)が右側面図である(見えているのは頭部左側面)。
【0047】
〔気導受話器一体型〕
図3に示されているように、骨導イヤホンユニット100は、例えば気導受話器116と一体型となったオージオメータ用受話器として使用することができる。気導受話器116は、例えば上記のヘッドバンド112に左右一対のイヤーカップが取り付けられた構造である。この場合、気導受話器116を従前と同じように装用することで、必然的に前額正中の位置に骨導イヤホンユニット100が位置するので、容易に検査用の配置を得ることができる。これにより、同じ被検者に対して気導受話器116による検査と骨導検査用イヤホン102による検査を容易に行うことができる。
【0048】
なお、
図3ではヘッドバンド112とイヤーカップ部分との連結構造の詳細は図示を省略している。また、
図3の例では、気導受話器116を耳覆い型としているが、特に耳覆い型に限られない。
【0049】
また、一体型受話器では、気導受話器116と骨導検査用イヤホン102のそれぞれが図示しない聴力検査装置と接続するケーブルを有する(各1組)ことになるが、被検者の利便性を考慮し、ケーブルの本数は少なくまとめられること(束ねられている形態)が好ましい。この場合、骨導検査用イヤホン102及び気導受話器116の近傍と聴力検査装置の近傍で、それぞれ接続先別にケーブルが分岐した配線の取り回しとすることが好ましい。あるいは、受話器側と聴力検査装置側との間の接続を1本の多芯型ケーブルだけで行い、それぞれにコネクタを設けて受話器側と聴力検査装置側でローカルに配線系統が分配される態様としてもよい。
【0050】
その他、聴力検査装置と骨導イヤホンユニット100及び気導受話器116との接続は、無線通信による接続であってもよい。この場合、
図3に示すように、検査では被検者が気導受話器116と骨導イヤホンユニット100とが一体となった器具を装着することになるが、聴力検査装置とは無線で接続されるため、検査時の身体の自由度を高めることができる。
【0051】
〔圧定力の設定〕
図4は、骨導イヤホンユニット100の使用形態における圧定力の設定手順例を示した図である。検査者(使用者)は、例えば以下のような手順で骨導検査用イヤホン102の圧定力を一定(所望)に設定することができる。
【0052】
図4中(A):ストッパ108を緩めた状態で、ヘッドバンド112を被検者の頭部に正しく装着する。このとき、弾性部104は無負荷状態である。また、骨導検査用イヤホン102は、被検者の頭部から浮かせておくとよい。
【0053】
図4中(B):骨導検査用イヤホン102を軽く被検者の頭部(前額正中)に当接させた状態で、位置ガイド部106を頭部に近付けていき(矢印A1)、弾性部104と位置ガイド部106との位置が側面視で合致するところで止める。この間に適宜、必要であればベース部114に対する位置ガイド部106及び弾性部104の前後方向の位置も調整することができる(矢印A2)。この位置調整は、例えば上記の長孔114bに沿ってストッパ108を前後に移動させながら行うことができるが、特に前後方向の位置調整は必須ではない。そして、ストッパ108を締め付けて位置ガイド部106と弾性部104との位置関係を固定する(矢印A3)。なお、位置ガイド部106の前後位置は、ヘッドバンド112の装着位置で調整してもよい。
【0054】
これにより、種々の頭部の大きさや頭部形状であっても初期位置から弾性部104を距離Δxだけ変位させた位置(圧定位置)で圧定力Fを発生させつつ、適正に骨導検査用イヤホン102を頭部に押し当てることができる。
【0055】
この点、例えば、ヘッドバンドの両端位置に気導受話器があり、その間の位置に骨導受話器を取り付けた従来技術が知られているが、この場合はやはり、被検者の頭部形状やヘッドバンドの装着状態で圧定力が変動し、安定して正しく検査を実施することができないという問題がある。これに対し、本実施形態によれば、上記のように一定の圧定力で骨導検査用イヤホン102を頭部に当接できる点で有意である。
【0056】
なお、位置ガイド部106のフォーク状の部位は、弾性部104を挟み込むように両側に配置されていて、これらの端部は開放されているが、この形態に限られない。すなわち、上記のように圧定力を調整可能な役割を果たすことができれば、弾性部104の片側だけにフォーク状の部位があってもよいし、あるいは、2本の端部同士が連結されていてもよい。したがって、位置ガイド部106のフォーク状の部位は、実際に装用する場合の安全性や使い易さを考慮して設計されることが好ましい。
【0057】
〔第2実施形態〕
図5は、第2実施形態の骨導イヤホンユニット200の構成例を示す斜視図である。なお、
図5中(A)に示す骨導イヤホンユニット200を異なる方向(180°反対側)から示すと、
図5中(B)の斜視図となる。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0058】
第2実施形態の骨導イヤホンユニット200は、スパイラル状の弾性部204を有している。弾性部204は、位置ガイド部206の基端部位ではなく先端部位で支持及び固定されており、位置ガイド部206は、先端部位に箱形状のバネ固定部206aを有している。バネ固定部206aは、内部に弾性部204を部分的に収容した状態で、その軸方向一端部を支持している。弾性部204は、無負荷状態ではバネ固定部206aから突出する長さを有している。
【0059】
弾性部204の突出端には、例えば長板状の支持プレート204aが連結されており、この支持プレート204aは、位置ガイド部206の2本のフォーク状の部位間に配置されている。そして、支持プレート204aは、長手方向の一端部が軸部材204bを介して位置ガイド部206に支持されることで、この軸部材204bを中心に変位(いわゆる回動、揺動)可能となっている。支持プレート204aは、弾性構造ではない部材で構成されており、軸部材204bを梃子の支点のようにして支持プレート204aが位置ガイド部206側に変位することで、スパイラル状の弾性部204が圧縮されて弾性変形する。なお、支持プレート204aは棒状の部材であってもよいし、湾曲していてもよい。
【0060】
骨導検査用イヤホン102は、支持プレート204aの他端部で支持されており、弾性部204は、弾性構造ではない支持プレート204aを介して骨導検査用イヤホン102の圧定力を発生させることができる。
【0061】
クッション材110は、第1実施形態と同様に位置ガイド部206の基端部位に設けられているが、位置ガイド部206(バネ固定部206a)と弾性部204との間にも別のクッション材210が配置されている。なお、このようなクッション材210は特に設けられていなくてもよい。
【0062】
〔相対位置関係〕
図6は、第2実施形態における弾性部204と位置ガイド部206の相対位置関係を示す図である。弾性部204の形状や支持プレート204aを用いている点で第1実施形態とは異なっているが、第2実施形態においても、位置ガイド部206はスパイラル状の弾性部204の弾性変形による変位(動き)とは独立して配置されている点は同じである。
【0063】
第2実施形態においても同様に、弾性部204は、無負荷状態で位置ガイド部206との相対位置が距離Δxだけ離れた場所に突出端が配置される位置関係に調整されている。したがって、第1実施形態と同様の調整を行うことで一定の圧定力を発生させることができる。また、その他の点(使用形態例、接続関係等)については、第1実施形態と同じである。
【0064】
〔第3実施形態〕
図7は、第3実施形態の構成例を示す図である。第3実施形態では、例えば第1実施形態の骨導イヤホンユニット100に圧力表示器302及びフォースセンサ304,306の構成を追加した点が異なっている。以下、具体的に説明する。
【0065】
圧力表示器302は、例えば扇形をなす樹脂製の透明板等で構成されており、扇形の中心角をなす2辺が位置ガイド部106を中心として対称に位置している。このような圧力表示器302は、例えば位置ガイド部106の一側面に取り付けられており、
図7に示す側面方向から全体を視認可能となっている。なお、圧力表示器302は不透明板でもよいし、材質は樹脂に限られない。
【0066】
圧力表示器302には、例えば指示線302a及び目盛り線帯302bが印刷等により付されており、このうち指示線302aは、扇形の中心角を二等分する中心線上を延びる矢印図形として描かれている。また、指示線302aの矢印先端の位置には、例えば「5.4N」等の数値表示が付されている。目盛り線帯302bは、指示線302aを中心として両側に円弧帯状に拡がるようにして描かれており、内側には一定角度で複数本の目盛り線が描かれている。このうち、指示線302aに対称な2本の目盛り線の先には、例えば「-0.5」及び「+0.5」といった数値表示が付されている。なお、指示線302aや数値表示は印刷に限られず、刻印や印字、貼付等されていてもよい。また、目盛り線帯302bの「-0.5」から「+0.5」の範囲が他と異なる色で着色されていてもよい。
【0067】
また、例えば骨導検査用イヤホン102と弾性部104との間の取付部には1つ目のフォースセンサ304が設けられており、骨導検査用イヤホン102が被検者の頭部に当接する位置には、2つ目のフォースセンサ306が設けられている。これらフォースセンサ304,306は、各位置で発生している力(荷重)に応じた検出信号(例えば検出電圧)を出力するデバイスである。なお、フォースセンサ304,306は、どちらか1つだけとしてもよい。
【0068】
〔機構的圧力計測例〕
圧力表示器302は、弾性部104の変位量に基づいて機構的に圧定力Fを計測(認識)可能とし、その結果を開示するものである。例えば、無負荷状態では弾性部104が指示線302aからマイナス側(「-0.5」の表示がある方向)に大きく振れた初期位置にあり、目盛り線帯302bの範囲外に位置しているとする。この状態から、第1実施形態と同様の使用方法により位置ガイド部106を被検者の頭部に近付けていくと、弾性部104の位置が次第に指示線302aの方へ近付いていく。そして、
図7の側面視で弾性部104の位置が指示線302aと重なる位置に来たところで止め、ストッパ108で位置関係を固定すると、数値表示の圧定力(例えば所定値5.4N)が得られていることを機構的に計測しつつ、その結果を視覚的に開示することができる。なお、ここでいう「開示」は「表示」や「提示」としてもよい(以降も同様。)。
【0069】
目盛り線帯302bは、圧定力が所定の範囲内にあることを開示し、作業者に認識可能とする。すなわち、弾性部104の位置が指示線302aには重なっていないが、目盛り線帯302bの範囲内にある場合、圧定力が所定の範囲内にあることを機構的に計測し、かつ開示する。例えば、弾性部104の位置が数値表示で「-0.5」から「+0.5」の範囲内にあれば、圧定力が「5.4N±0.5N」の範囲内にあることを機構的に計測しつつ、開示することができる。
【0070】
なお、数値表示や目盛り線の数は図示のものに限られない。また、圧力表示器302は扇形に限らず、長方形でもよいし、指示線302aとは別の角度で2本以上の指示線を付することで、圧定力の範囲の上限と下限を示すこととしてもよい。あるいは、複数本の指示線で複数通りの圧定力を開示することとしてもよい。
【0071】
〔電気的圧力計測例〕
フォースセンサ304,306は、電気的に圧定力Fを計測(検出)し、その結果を開示して作業者または被検者に認識可能とするものである。例えば、上記のように位置ガイド部106を被検者の頭部に近付けて弾性部104を弾性変形させていくと、それによって発生した圧定力Fに応じた検出信号がフォースセンサ304,306からリアルタイムに出力される。このときの検出信号を例えば図示しない聴力検査装置等で処理することで、表示装置等でデジタル数値表示等により計測及び開示することができる。以下、この点についてさらに説明する。
【0072】
図8は、フォースセンサ304,306を用いて圧力計測及び開示を行う構成例を示す図である。このうち、
図8中(A)がブロック構成図であり、
図8中(B),(C)が組み込み対象となる機器の例である。
【0073】
図8中(A):構成要素としては、例えば処理部310、表示装置312、音出力装置314及び振動子316を備えることができる。処理部310は、例えばCPU等を有した電子回路やコンピュータ機器で構成することができる。処理部310には、入出力インターフェース等が備わっており、フォースセンサ304,306からの信号が処理部310に入力されて信号処理される。
【0074】
また、表示装置312は、例えばディスプレイやLED、アナログメータ等で構成することができる。音出力装置314は、スピーカ等で構成することができ、振動子316は圧電バイブレータ等で構成することができる。これらの出力デバイスは、処理部310からの制御信号により駆動を制御することができる。なお、出力デバイスは、これらの例示に限られない。
【0075】
表示装置312は、例えばLEDの形態で骨導検査用イヤホン102に組み込んでもよいし、位置ガイド部106に組み込んでもよい。音出力装置314もまた、小型スピーカ等の形態で骨導検査用イヤホン102や位置ガイド部106に組み込むことができ、振動子316についても、同じく骨導検査用イヤホン102や位置ガイド部106に組み込むことができる。
【0076】
〔計測及び開示例〕
そして、フォースセンサ304,306からの検出信号に基づき、圧定力Fが所定値もしくは所定の範囲内となったことを処理部310で検出すると、表示装置312のLEDを点灯(視覚情報)表示させたり、音出力装置314を駆動して開示音(聴覚情報)を発生させたり、振動子316を駆動して振動(触覚情報)を発生させたりする。これにより、作業者に圧定力Fが所定値であるか、もしくは所定の範囲内にあることを作業者等に認識可能とすることができる。あるいは、圧定力Fが所定の範囲外であることを検出するようにしても良い。
【0077】
また、表示装置312を例えば7セグメントLEDとして、圧定力Fを数値表示することもできるし、アナログメータとして指針表示することもできる。前者の場合、処理部310が表示装置312を用いて、その時の圧定力の大きさをリアルタイムでデジタル数値表示することができるし、後者の場合も圧定力の大きさを文字盤上の指針位置でアナログ表示することができ、作業者に現在の圧定力の大きさをリアルタイムで認識可能とすることができる。
【0078】
図8中(B):上記の構成要素は、例えば聴力検査装置320に組み込むこともできる。この場合、聴力検査装置320のディスプレイやスピーカ、応答ボタンなどを表示装置312、音出力装置314として使用することができる。この場合も、フォースセンサ304,306からの検出信号に基づき、ディスプレイに圧定力Fをリアルタイムでデジタル数値表示したり、アナログメータ形式でグラフィック表示したり、指定した圧定力の範囲内にあるか否かを表示したりすることができる。これにより、作業者に現在の圧定力の大きさをリアルタイムで認識可能とすることができる。
【0079】
〔骨導検査装置〕
また、
図8中(B)の聴力検査装置320は、骨導イヤホンユニット100,200等を用いて骨導検査を行う骨導検査装置の一例である。この場合、フォースセンサ304,306の構成は必須でない。
【0080】
図8中(C):あるいは、上記の構成要素の機能をスマートフォン330にアプリケーションとして実装させることもできる。この場合、フォースセンサ304,306をスマートフォン330と無線通信可能なものとし、インストールしたアプリケーションで処理部310の処理を実行することができる。そして、フォースセンサ304,306からの検出信号に基づき、画面に圧定力Fをリアルタイムでデジタル数値表示したり、アナログメータ形式でグラフィック表示したりする。これにより、作業者に現在の圧定力の大きさをリアルタイムで認識可能とすることができる。アプリケーションを実装する媒体はスマートフォン330に限らず、タブレットやパソコンなどでも良い。また、アプリケーションはスマートフォン330などに直接インストールして処理を実行するものだけでなく、Webブラウザ上で処理が実行されるものなどでも良い。
【0081】
以上のように第3実施形態によれば、位置ガイド部106を元に適切な圧定力を発生させることに加えて、さらに、実際に圧定力が適切かどうかを客観的にも認識可能とすることができる。
【0082】
〔第4実施形態〕
図9は、第4実施形態の構成例を示す図である。第4実施形態は、被検者の乳突部に骨導検査用イヤホン102を当接させることができるものである。
【0083】
ここでは、例えば気導受話器116のヘッドバンド112に対し、2本のブリッジ部材402が連結されている。これらブリッジ部材402は、例えば後頭部を迂回するようにしてヘッドバンド112の両端部間を延びている。そして、ブリッジ部材402にベース部114を取り付けることで、弾性部104及び位置ガイド部106を垂下方向に配置させ、骨導検査用イヤホン102を乳突部に当接させることが可能な配置としている。また、図示のようにベース部114を左右2つ取り付けることで、左右の乳突部にそれぞれ、骨導検査用イヤホン102を当接させることができる(
図9の骨導検査用イヤホン102は、被検者頭部の乳突部に当接して圧定力を発生させた使用状態を示している。)。なお、ブリッジ部材402は3本以上でもよいし、帯板状のものでもよい。
【0084】
このような第4実施形態によれば、気導受話器116と一体化させた骨導イヤホンユニット100により、乳突部での骨導検査を行うことが可能である。なお、
図9には示していないが、ヘッドバンド112の頭頂部位置にも骨導イヤホンユニット100が取り付けられていてよい。この場合、乳突部及び前額正中の両方で検査を実施することができる。
【0085】
また、ここでは左右それぞれの乳突部で検査を行うために骨導イヤホンユニット100を2セット設けているが、骨導イヤホンユニット100を1セットだけとしてもよい。この場合、ブリッジ部材402に対してベース部114を脱着可能な構造(半固定式)とすることで、検査する耳に合わせて左右に位置を変更しながら乳突部で検査を行うことができる。また、1セットの骨導イヤホンユニット100をヘッドバンド112に付け替え、前額部での検査に切り換えることもできる。
【0086】
さらに、気導受話器116との接続方法は、上述の様に骨導検査用イヤホン102を当接させる位置を簡易に変更可能とすることが好ましく、そのためにベース部114がヘッドバンド112やブリッジ部材402に対して簡易に着脱可能で、かつ、装着時には適切(確実)に骨導イヤホンユニット100全体を固定することができる着脱機構であると、より好ましい。
【0087】
なお、
図9では第1実施形態の骨導イヤホンユニット100を例に挙げているが、第2実施形態の骨導イヤホンユニット200(スパイラル状の弾性部204使用)を第4実施形態に使用してもよいし、第1実施形態と第2実施形態を組み合わせて使用してもよい。
【0088】
上述した各種実施形態によれば、以下の有用性が得られる。
(1)オージオメータ等の聴力測定において、被検者の頭部の大きさや形状による圧定力のばらつきを低減し、より精度の高い検査に寄与することができる。
(2)気導検査用受話器と一体化させることで、聴力検査時に被検者に装着するヘッドバンドの数を最小限に抑え、検査の効率を向上させることができる。例えば、気導検査用受話器が無線通信式のヘッドセット型であれば、気導用・骨導用イヤホンの両方を備えたワイヤレス受話器を提供することが可能となる。
(3)骨導検査用の部分に関して、弾性部104等が頭部を挟み込むヘッドバンドとは異なることから、骨導検査用イヤホン102を着脱する際に手元を誤るような状況とならず、人体に対して意図しない力が加わる可能性を極力排除することができる。
【0089】
本発明は、上述した実施形態に制約されることなく、種種に変形して実施することができる。各実施形態中で挙げた構造や形態、数値はあくまで例示であり、これらに限るものではない。
【0090】
また、本発明の圧定力を発生させる構造は、骨導検査用途に限らず、音楽鑑賞用の骨導イヤホンの用途にも展開可能である。
【符号の説明】
【0091】
100 骨導イヤホンユニット
102 骨導検査用イヤホン
104 弾性部
106 位置ガイド部
108 ストッパ
110 クッション材