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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134035
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/595 20210101AFI20230920BHJP
   H01M 50/586 20210101ALI20230920BHJP
   H01M 50/531 20210101ALI20230920BHJP
   H01M 10/0587 20100101ALI20230920BHJP
   H01M 10/052 20100101ALN20230920BHJP
【FI】
H01M50/595
H01M50/586
H01M50/531
H01M10/0587
H01M10/052
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022039360
(22)【出願日】2022-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】322003798
【氏名又は名称】パナソニックエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 祥智
【テーマコード(参考)】
5H029
5H043
【Fターム(参考)】
5H029AJ12
5H029AK03
5H029AL03
5H029AL07
5H029AM02
5H029AM07
5H029BJ02
5H029BJ14
5H029DJ02
5H029DJ04
5H029DJ05
5H029EJ01
5H029EJ12
5H029HJ12
5H043AA04
5H043BA19
5H043CA03
5H043CA12
5H043EA06
5H043GA21
5H043GA27
5H043HA11E
5H043JA15E
5H043KA22E
5H043KA24E
5H043KA26E
5H043KA28E
5H043KA35E
5H043KA45E
(57)【要約】
【課題】非水電解質二次電池において、外部から衝撃が加わった場合における衝撃吸収性能の向上と内部短絡の抑制とを図る。
【解決手段】非水電解質二次電池は、正極板と負極板とがセパレータを介して巻回された巻回型の電極体と、電極体を収容する外装缶とを含む。正極板は、正極芯体の極板長手方向の少なくとも一部に形成された正極芯体の露出面に接合され、正極芯体の極板短手方向一端から延出される正極タブと、正極タブのうち露出面に重ねられた部分と、露出面とを覆うように正極板に貼付された保護テープ30と、保護テープの外側に重なるように正極板に貼付された外側テープ33とを有する。外側テープは、極板長手方向の両端部に、極板長手方向に延びる少なくとも1つの切れ目34を有し、切れ目の中間が保護テープの極板長手方向両端Eに重なっている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の正極板と、帯状の負極板とが、セパレータを介して巻回された巻回型の電極体と、
前記電極体を収容する外装缶と、を備え、
前記正極板は、
正極芯体と、
前記正極芯体の表面に形成された正極合剤層と、
前記正極芯体の極板長手方向の少なくとも一部に形成された前記正極芯体の露出面に接合され、前記正極芯体の極板短手方向一端から延出される正極タブと、
前記正極タブのうち前記露出面に重ねられた部分と、前記露出面とを覆うように前記正極板に貼付された保護テープと、
前記保護テープの外側に重なるように前記正極板に貼付された外側テープと、を含み、
前記外側テープは、前記極板長手方向の両端部に、前記極板長手方向に延びる少なくとも1つの切れ目を有し、
前記切れ目の中間が、前記保護テープの前記極板長手方向の両端に重なっている、
非水電解質二次電池。
【請求項2】
請求項1に記載の非水電解質二次電池において、
前記外側テープは、前記保護テープの外側において、少なくとも前記正極板の前記極板短手方向の中央を含む部分に配置される、
非水電解質二次電池。
【請求項3】
請求項2に記載の非水電解質二次電池において、
前記外側テープは、前記保護テープの外側において、少なくとも前記正極板の前記極板短手方向の中央を中心として、前記極板短手方向の長さが10mmである範囲を含む部分に配置される、
非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、正極板と負極板とをセパレータを介して巻回した電極体と、電極体及び電解液を収容した外装缶とを備える非水電解質二次電池が知られている。近年、電気自動車等に使用する二次電池の高容量化が進んでおり、二次電池の高容量化に伴って、電池が内部短絡した際に発生する熱量が大きくなっている。このため、内部短絡発生のリスクの低減が求められている。電池の正極板では、正極芯体の表面が露出した露出面が形成され、その露出面に集電用の正極タブが接合されている。
【0003】
特許文献1には、絶縁性の保護テープが正極タブと正極芯体の露出面とを覆って正極板に貼付されると共に、その保護テープが所定値以上の引張強度と所定値以上の突き刺し強度とを有することが記載されている。これにより、電池を立設した状態で測定ヘッドを電池の長手方向に押し付ける縦圧壊試験での電池の安全性が向上できるとされている。
【0004】
特許文献2には、絶縁性の保護テープが正極タブと正極芯体の露出面とを覆って正極板に貼付されると共に、その保護テープの端部の段差に起因するセパレータの破断を防止するために、保護テープの端部に切り込みを入れることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-245650号公報
【特許文献2】国際公開第2020/241410号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1,2に開示された構成では、電池に外部から衝撃が加わった場合における衝撃吸収性能の向上と内部短絡の抑制の面から改良の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る非水電解質二次電池は、帯状の正極板と、帯状の負極板とが、セパレータを介して巻回された巻回型の電極体と、電極体を収容する外装缶と、を備え、正極板は、正極芯体と、正極芯体の表面に形成された正極合剤層と、正極芯体の極板長手方向の少なくとも一部に形成された正極芯体の露出面に接合され、正極芯体の極板短手方向一端から延出される正極タブと、正極タブのうち露出面に重ねられた部分と、露出面とを覆うように正極板に貼付された保護テープと、前記保護テープの外側に重なるように正極板に貼付された外側テープと、を含み、外側テープは、極板長手方向の両端部に、極板長手方向に延びる少なくとも1つの切れ目を有し、切れ目の中間が保護テープの極板長手方向両端に重なっている、非水電解質二次電池である。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る非水電解質二次電池によれば、保護テープと外側テープとの重ね貼りによって、電池外部から衝撃が加わる場合における、正極板側からセパレータに加わる衝撃についての衝撃吸収性能を向上できる。また、外側テープに形成される切れ目の中間が保護テープの両端に重なっているので、両端部が電極体の変形に追従するように外側テープに柔軟性を持たせることができる。これにより、電池外部から衝撃が加わる場合に、セパレータに外側テープの角張った段差部分が押し付けられることを抑制できる。このため、セパレータの破断を抑制できるので、電池の内部短絡を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態の一例の非水電解質二次電池の軸方向に沿った断面図である。
図2】実施形態の一例の非水電解質二次電池を構成する正極板の模式展開図である。
図3図2のA部拡大図である。
図4】一部を省略して示す図2のB-B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。以下の説明において、具体的な形状、材料、数値、方向等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、非水電解質二次電池の仕様に合わせて適宜変更することができる。また、以下において「略」なる用語は、例えば、完全に同じである場合に加えて、実質的に同じとみなせる場合を含む意味で用いられる。さらに、以下において複数の実施形態、変形例が含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて用いることは当初から想定されている。
【0011】
図1は、実施形態の非水電解質二次電池10の軸方向に沿った断面図である。図2は、非水電解質二次電池10を構成する正極板11の模式展開図である。図1に例示するように、非水電解質二次電池10は、巻回型の電極体14と、非水電解質(図示せず)と、外装缶15及び封口体16とを備える。巻回型の電極体14は、帯状の正極板11と、帯状の負極板12と、帯状のセパレータ13とを有し、正極板11と負極板12がセパレータ13を介して渦巻状に巻回されている。以下では、電極体14の軸方向一方側を「上」、軸方向他方側を「下」という場合がある。非水電解質は、非水溶媒と、非水溶媒に溶解した電解質塩とを含む。非水電解質は、液体電解質に限定されず、ゲル状ポリマー等を用いた固体電解質であってもよい。
【0012】
図2を参照して、正極板11は、帯状の正極芯体11aと、正極芯体11aに接合された正極タブ19とを有する。正極タブ19は、正極芯体11aと正極端子を電気的に接続するための導電部材であって、電極体14のうち、正極芯体11aの上端から軸方向αの一方側(上方)に延出している。正極タブ19は、例えば電極体14の径方向βの略中央部に設けられている。正極タブ19は、帯状の導電部材である。正極タブの構成材料は特に限定されない。正極タブ19はアルミニウムを主成分とする金属によって構成されることが好ましい。さらに、正極板11は、正極芯体11aの巻内面(径方向内側面)及び巻外面(径方向外側面)のそれぞれに正極合剤層11bが形成される。図2では、正極合剤層11bを薄い砂地部で示している。
【0013】
負極板12は、帯状の負極芯体と、負極芯体に接合された負極タブ20とを有する。負極タブ20は、負極芯体と後述の外装缶15とを電気的に接続するための導電部材であって、電極体14のうち、負極芯体の下端から軸方向αの他方側(下方)に延出している。外装缶15は、負極端子となる。負極タブ20は、例えば電極体14の巻内側部分(内周側部分)に設けられる。負極タブ20は、帯状の導電部材である。負極タブの構成材料は特に限定されない。負極タブはニッケル又は銅を主成分とする金属によって、またはニッケル及び銅の両方を含む金属によって構成されることが好ましい。さらに、負極板12は、負極芯体の巻内面(径方向内側面)及び巻外面(径方向外側面)のそれぞれに負極合剤層が形成される。
【0014】
さらに、電極体14の最外周面に負極芯体を露出させ、外装缶15の筒部15aの内側面に接触させて、外装缶15に電気的に接続している。この負極板12と外装缶15の筒部15aとの電気的な接続により、さらに良好な集電性を確保できる。
【0015】
電極体14は、上述の通り、正極板11と負極板12がセパレータ13を介して渦巻状に巻回されてなる巻回構造を有する。正極板11、負極板12、及びセパレータ13は、いずれも帯状に形成され、渦巻状に巻回されることで電極体14の径方向βに交互に積層された状態となる。電極体14において、各極板の極板長手方向が巻き方向となり、各極板の極板幅方向が軸方向αとなる。
【0016】
図1に示す例では、外装缶15と封口体16によって、電極体14及び非水電解質を収容する金属製の電池ケースが構成されている。電極体14の上下には、絶縁板17,18がそれぞれ設けられる。正極タブ19は上側の絶縁板17の貫通孔を通って封口体16側に延び、封口体16の底板であるフィルタ22の下面に溶接される。非水電解質二次電池10では、フィルタ22と電気的に接続された封口体16の天板であるキャップ26が正極端子となる。
【0017】
外装缶15は、開口部を有する有底筒状、例えば有底円筒形状の金属製容器である。外装缶15と封口体16の間にはガスケット27が設けられ、外装缶15内の密閉性が確保されている。外装缶15は、例えば側面部を外側から径方向内側にスピニング加工して形成された溝入れ部21を有する。溝入れ部21は、外装缶15の周方向に沿って環状に形成されることが好ましく、その上面で封口体16を支持する。封口体16は、外装缶15の開口部を封口する。
【0018】
封口体16は、電極体14側から順に積層された、フィルタ22、下弁体23、絶縁部材24、上弁体25、及びキャップ26を有する。封口体16を構成する各部材は、例えば円板形状又はリング形状を有し、絶縁部材24を除く各部材は互いに電気的に接続されている。下弁体23と上弁体25とは各々の中央部で互いに接続され、各々の周縁部の間には絶縁部材24が介在している。異常発熱で電池の内圧が上昇すると、例えば下弁体23が破断し、これにより上弁体25がキャップ26側に膨れて下弁体23から離れることにより両者の電気的接続が遮断される。さらに内圧が上昇すると、上弁体25が破断し、キャップ26の開口部26aからガスが排出される。
【0019】
さらに、本実施形態では、図2図4に示すように、電池外部から衝撃が加わる場合における衝撃吸収性能を向上すると共に、内部短絡を抑制するために、正極板11において、正極タブ19及び正極芯体11aの露出面11cの保護のための保護テープ30が設けられ、さらに保護テープ30の外側に外側テープ33が重なって正極板11に貼着される。さらにその外側テープ33の両端の切れ目34の中間が、保護テープ30の両端Eに重なっている。
【0020】
以下、図2図4を参照しながら、電極体14と、正極板11の保護テープ30及び外側テープ33の重なり構造を詳しく説明する。図3は、図2のA部拡大図である。図4は、一部を省略して示す図2のB-B断面図である。
【0021】
図2を参照して、正極板11は、帯状の正極芯体11aと、正極芯体11aの両面の表面に形成された正極合剤層11bとを有する。正極芯体11aには、例えばアルミニウムなどの金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等が用いられる。好適な正極芯体11aは、アルミニウム又はアルミニウム合金を主成分とする金属の箔である。正極芯体11aの厚みは、例えば10μm~30μmである。
【0022】
正極合剤層11bは、正極活物質、導電剤、及び結着剤を含むことが好ましい。正極板11は、正極活物質、導電剤、結着剤、及びN-メチル-2-ピロリドン(NMP)等の溶剤を含む正極合剤スラリーを正極芯体11aの両面に塗布した後、乾燥及び圧延することにより作製される。
【0023】
正極活物質としては、Co、Mn、Ni等の遷移金属元素を含有するリチウム含有遷移金属酸化物が例示できる。リチウム含有遷移金属酸化物は、特に限定されないが、一般式Li1+xMO(式中、-0.2<x≦0.2、MはNi、Co、Mn、Alの少なくとも1種を含む)で表される複合酸化物であることが好ましい。
【0024】
上記導電剤の例としては、アセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック等のカーボンブラック(CB)、黒鉛等の炭素材料などが挙げられる。上記結着剤の例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のフッ素系樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド(PI)、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。また、これらの樹脂と、カルボキシメチルセルロース(CMC)又はその塩、ポリエチレンオキシド(PEO)等が併用されてもよい。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
正極板11の極板長手方向(矢印γ方向)の一部、例えば略中央部には、極板短手方向(矢印δ方向)の全長にわたって、正極芯体11aを構成する金属の表面が露出した露出面11cが形成される。露出面11cは、正極タブ19が接合される部分であって、正極芯体11aの表面が正極合剤層11bに覆われていない部分である。
【0026】
なお、正極芯体11aの露出面11cは、極板長手方向γの中央部以外に形成されてもよく、例えば極板長手方向γの端部寄りに形成されてもよい。露出面11cは、例えば正極芯体11aの一部に正極合剤スラリーを塗布しない間欠塗布により設けられる。
【0027】
正極タブ19は、例えば、超音波溶接によって、露出面11cに接合され、正極芯体11aの極板短手方向δの一端(上端)から延出される。正極タブ19は、図4に示すように、断面略矩形の帯状に形成される。
【0028】
さらに、正極タブ19のうち露出面11cに重ねられた部分と、露出面11cとは、保護テープ30によって覆われる。保護テープ30は、正極板11、より具体的には、露出面11cを挟んで極板長手方向γの両側に配置される正極合剤層11bの表面に貼付される。保護テープ30は、絶縁性を有する絶縁テープである。この結果、正極板11と負極板12との短絡が防止される。保護テープ30は、図2に示すように正極芯体11aの露出面11cの全てを被覆することが好ましい。
【0029】
正極芯体11aの露出面11cは、例えば正極芯体11aの巻内側及び巻外側の両側において、極板長手方向γについて同じ位置に形成される。巻内側及び巻外側の両側に露出面11cが形成される場合に、正極タブが接合されない側の露出面11cも、正極板11に貼付した保護テープによって覆われる。露出面11cは、正極タブ接合用として、正極芯体11aの巻内側及び巻外側の一方のみに設けることもできる。
【0030】
さらに、正極タブ19を覆った保護テープ30の外側には外側テープ33が重なっている。外側テープ33も保護テープ30と同様に、絶縁性を有する絶縁テープである。例えば、外側テープ33は、保護テープ30と同一の材料により形成される。保護テープ30の極板長手方向γ両側には外側テープ33の両端部がはみ出しており、その両端部が正極板11、より具体的には、露出面11cを挟んで極板長手方向γの両側に配置される正極合剤層11bの表面に貼付される。
【0031】
図4に示すように、保護テープ30は、基材層30aと、当該基材層30aの一方の表面に形成される粘着層30bとを有する粘着テープである。基材層30aと粘着層30bとの間には、例えば、金属酸化物などの無機粒子を含む耐熱層を設けることができる。基材層30aは、絶縁性の樹脂であればよく、例えばPPS(ポリフェニレンサルファイド)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PI(ポリイミド)、PP(ポリプ口ピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等を用いることができる。
【0032】
粘着層30bは、保護テープ30を正極板11の表面に接着するために設けられる。粘着層30bは、ゴム系ポリマー、アクリル系ポリマーのうち少なくとも1つを含むことができる。粘着層30bは、例えばシリコーン系ポリマーをさらに添加してもよい。
【0033】
外側テープ33も、保護テープ30と同様に、基材層33aと、当該基材層33aの一方の表面に形成される粘着層33bとを有する粘着テープである。基材層33a及び粘着層33bに適用可能な材料の例は、保護テープ30と同様である。
【0034】
外側テープ33は、保護テープ30の外側において、少なくとも正極板11の極板短手方向δの中央を含む部分に配置されることが好ましい。さらに、外側テープ33は、保護テープ30の外側において、少なくとも正極板11の極板短手方向δの中央を中心として、極板短手方向δの長さが10mmである範囲を含む部分に配置されることがより好ましい。
【0035】
さらに、図2図3に示すように、外側テープ33は、極板長手方向γの両端部に、極板短手方向δに複数並んで、極板長手方向γに延びた複数の切れ目34を有する切れ目群35が形成される。切れ目群35の各切れ目34は、外側テープ33の極板長手方向γの外端に開口している。
【0036】
さらに、各切れ目群35の各切れ目34の中間が保護テープ30の極板長手方向γの両端Eに重なっている。これにより、後述のように、電池外部から衝撃が加わる場合における衝撃吸収性能を向上できると共に、内部短絡を抑制できる。なお、外側テープ33は、極板長手方向γの両端部に、極板長手方向γに延びる1つの切れ目34のみを有する構成としてもよい。一方、後述のように外側テープ33の両端部に柔軟性を持たせる面からはこの両端部のそれぞれに複数ずつの切れ目34が形成されることが好ましい。
【0037】
負極板12は、帯状の負極芯体と、負極芯体の両面に形成された負極合剤層とを有する。負極芯体には、例えば銅などの金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等が用いられる。負極芯体の厚みは、例えば5μm~30μmである。
【0038】
負極合剤層は、負極活物質及び結着剤を含むことが好ましい。負極板12は、例えば負極活物質、結着剤、及び水等を含む負極合剤スラリーを負極芯体の両面に塗布した後、乾燥および圧延することにより作製される。
【0039】
負極活物質としては、リチウムイオンを可逆的に吸蔵、放出できるものであれば特に限定されず、例えば天然黒鉛、人造黒鉛等の炭素材料、Si、Sn等のリチウムと合金化する金属、又はこれらを含む合金、複合酸化物などを用いることができる。負極合剤層に含まれる結着剤には、例えば正極板11の場合と同様の樹脂が用いられる。水系溶媒で負極合剤スラリーを調製する場合は、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、CMC又はその塩、ポリアクリル酸又はその塩、ポリビニルアルコール等を用いることができる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
セパレータ13には、イオン透過性及び絶縁性を有する多孔性シートが用いられる。多孔性シートの具体例としては、微多孔薄膜、織布、不織布などが挙げられる。セパレータ13の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン樹脂が好ましい。セパレータ13の厚みは、例えば10μm~50μmである。セパレータ13は、電池の高容量化・高出力化に伴い薄膜化の傾向にある。セパレータ13は、例えば130℃~180℃程度の融点を有する。
【0041】
そして、電極体14の最外周面である負極板12の最外周面に、負極板12の巻き終わり端を固定するように、負極板12の最外周面にテープ(図示せず)が貼着される。
【0042】
上記の非水電解質二次電池10によれば、保護テープ30と外側テープ33との重ね貼りによって、電池外部から衝撃が加わる場合における、正極板11側からセパレータ13に加わる衝撃についての衝撃吸収性能を向上できる。具体的には、図4に示すように、保護テープ30の外側に外側テープ33を重ねて貼ることで、正極板11の側から保護テープ30の粘着層30b、その基材層30a、外側テープ33の粘着層33b、その基材層33aが順に並ぶため、粘着層30b、33bの合計の厚みを大きくできる。これにより、上記の衝撃吸収性能を向上できる。一方、衝撃吸収性能をよくするために、保護テープ自体の厚みを大きくすることも考えられるが、その場合には、基材層の厚みが大きくなるだけで粘着層の厚みを、基材層の厚みと同程度に大きくすることは難しい。このため、保護テープ自体の厚みを大きくする構成では、衝撃吸収性能を改善する面から改良の余地がある。
【0043】
また、外側テープ33に形成される切れ目34の中間が保護テープ30の両端Eに重なることにより、外側テープ33の両端部が電極体14の変形に追従するように柔軟性を持たせることができる。これにより、電池外部から衝撃が加わる場合に、セパレータ13に外側テープ33の角張った段差部分が押し付けられることを抑制できる。このため、セパレータ13の破断を抑制できるので、電池の内部短絡を抑制できる。
【0044】
これについて、図4を用いてより詳しく説明する。外側テープ33の両端部は、正極合剤層11bの上にあるため、図4のP位置で段差が形成される。また、外側テープ33の両端部で保護テープ30の極板長手方向γ両端Eに重なる部分には図4のQ位置で折れ曲がり部分が形成される可能性がある。このため、この部分の柔軟性がないと、電池の外部から衝撃が加わることにより電極体14が変形した場合に、その変形に十分に追従できずに、柔軟性のない角張った折れ曲がり部分または段差部分がセパレータ13に押し付けられる。実施形態では、図4にL1の範囲で示す、外側テープ33の両端部に切れ目が形成され、その切れ目の中間が、保護テープ30の両端Eに重なっている。これにより、折れ曲がり部分及びP位置での段差部分に柔軟性が付与されるので、それらの部分に対向するセパレータ13での破断を抑制できる。このため、電池の内部短絡を抑制できる。
【0045】
また、外側テープ33は、保護テープ30の外側において、少なくとも正極板11の極板短手方向δの中央を含む部分に配置されることが好ましい。電池に外部から衝撃が加わる場合に、電極体14は、軸方向中央付近で変形しやすくセパレータ13が正極板11の極板短手方向の中央付近から力を受けやすい。上記の好ましい構成によれば、セパレータ13が正極板11から力を受けやすい部分の付近に外側テープ33が配置されやすくなるので、セパレータ13での破断を抑制できる効果が顕著になる。
【0046】
また、この好ましい構成において、外側テープ33は、保護テープ30の外側において、少なくとも正極板11の極板短手方向δの中央を中心として、極板短手方向δの長さが10mmである範囲を含む部分に配置されることが、より好ましい。この構成の場合には、セパレータ13が正極板11から力を受けやすい部分の付近に、外側テープ33がさらに配置されやすくなるので、セパレータで13の破断を抑制できる効果がより顕著になる。
【実施例0047】
本開示の発明者は、以下の表1に示す条件で、実施例1―5及び比較例1-7の合計12種類の二次電池を作製し、所定の条件で衝撃試験を行って、発火の有無及びセパレータ13の破断の有無を評価した。
【0048】
[実施例1]
[正極板11の作製]
正極活物質として、LiNi0.88Co0.09Al0.03で表されるアルミニウム含有ニッケルコバルト酸リチウムを用いた。その後、100質量部のLiNi0.88Co0.09Al0.03と、1質量部のアセチレンブラックと、0.9質量部のポリフッ化ビニリデン(PVDF)(結着剤)とを混合し、さらにN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を適量加えて、正極合剤スラリーを調製した。次に、厚さが15μmのアルミニウム箔からなる長尺な正極芯体の両面に、極板長手方向の幅が7mmの芯体露出面が形成されるように、正極合剤スラリーを間欠塗布した。その後、加熱した乾燥機で100~150℃の温度で熱処理することにより、NMPを除去した後、ローラーを用いて圧延したものを所定サイズに裁断して、正極芯体11aの両面に正極合剤層11bが形成された正極板11を作製した。このとき、正極板11の厚さは0.144mmで、幅は62.6mmで、長さは860mmとした。その後、正極板11の芯体露出面にアルミニウム製の正極タブ19の一端部を溶接で固定した。
【0049】
[保護テープ30及び外側テープ33の貼付]
次に、正極タブ19を保護するための保護テープ30を、正極タブ19及び芯体露出面を覆うように、正極板11の正極合剤層11bに貼付した。次に、その保護テープ30の外側において、極板短手方向の中央部に外側テープ33を重ね貼りした。このとき、外側テープ33の図3で示す極板短手方向長さであるテープ高さH,極板長手方向長さであるテープ幅W、切れ目長さDは、それぞれ表1に示すように、H=20mm、W=15mm、D=2mmとした。また、保護テープ30の極板長手方向のテープ幅は12mmとした。そして、外側テープ33は、保護テープ30の外側において、正極板11の極板短手方向の中央にその中心を一致させるように配置した。これにより、図3に示した例と同様に、外側テープ33の両端の切れ目34の中間は、保護テープ30の両端Eに重なっている、すなわち、表1の切れ目中間と保護テープの両端との重なりは、「有り」である。また、切れ目間隔は1mmである。
【0050】
【表1】
【0051】
[負極板12の作製]
負極活物質として、黒鉛粉末を95質量部と、ケイ素酸化物を5質量部とを混合したものを用いた。そして、負極活物質を100質量部と、結着剤としてのスチレン-ブタジエンゴム(SBR)を1質量部と、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)を1質量部とを混合した。そして、この混合したものを水に分散させて、負極合剤スラリーを調製した。次に、厚さが8μmの銅箔からなる長尺な負極芯体の両面に、極板長手方向の幅が7mmの芯体露出面が形成されるように、負極合剤スラリーを間欠塗布した。その後、加熱した乾燥機で乾燥した後、負極厚みが0.160mmとなるように圧縮ローラーを用いて圧縮したものを所定サイズに裁断して、負極芯体の両面に負極合剤層が形成された負極板12を作製した。このとき、負極板12の幅は64.2mmで、長さは959mmとした。そして、負極板12の長手方向一端部であって、電極体14の巻き始め側に位置する端部に合剤層が存在せず、芯体表面が露出した露出部を設けて、その露出部にニッケル製で幅が3.5mmの負極タブ20を溶接固定で取り付けた。
【0052】
[電極体14の作製]
作製された正極板11及び負極板12を、ポリエチレン製微多孔膜からなるセパレータ13を介して渦巻状に巻回することにより、巻回型の電極体14を作製し、巻き終わり端をテープで固定した。このとき、電極体14の最外周を負極芯体露出部が覆うように構成した。
【0053】
[非水電解液の調製]
エチレンカーボネート(EC)と、ジメチルカーボネート(DMC)とを、体積比でEC:DMC=1:3となるように混合した混合溶媒の100質量部に、ビニレンカーボネート(VC)を5質量部添加し、LiPFが1.5モル/Lとなるように溶解して非水電解液を調製した。
【0054】
[二次電池の作製]
上記の電極体14を、有底円筒形状の外装缶15に収容し、当該電極体14の上と下とに絶縁板28、29をそれぞれ配置し、外装缶15の内部に非水電解液を減圧方式により注入した。その後、ガスケット27を介して封口体16を外装缶15の開口端部にカシメ固定して、円筒形の非水電解質二次電池10を作製した。このとき、電池の容量は、4600mAhであった。
【0055】
[比較例1]
比較例1は、正極板の正極タブを覆う保護テープ30上に、重なって貼付される外側テープを省略した。比較例1において、それ以外の構成は、実施例1と同様である。
【0056】
[実施例2-5、比較例2-7]
実施例2-5、比較例2-7のそれぞれにおいて、保護テープ30の外側に重ね貼りした外側テープのテープ高さ、テープ幅、切れ目長さ、切れ目間隔、切れ目中間と保護テープ30の両端との重なりの有無を、表1に示したように構成した以外は、実施例1と同様である。具体的には、実施例2では、実施例1からテープ高さを10mmに変更した。実施例3では、実施例1から切れ目間隔を0.5mmに変更した。実施例4では、実施例1から切れ目間隔を2mmに変更した。実施例5では、実施例1からテープ幅を13mmに変更した。
【0057】
比較例2、3では、実施例1から切れ目長さをそれぞれ0.5mm、1mmに変更したので、切れ目中間と保護テープ30の両端との重なりは無い。比較例4では、実施例1の切れ目を省略したので、切れ目中間と保護テープ30の両端Eとの重なりは無い。比較例5では、実施例1からテープ幅を12mmに変更したので、切れ目先端と保護テープの両端との重なりは有るが、切れ目中間と保護テープの両端との重なりは無い。比較例6では、実施例1からテープ幅を16mmに変更したので、切れ目奥端と保護テープの両端との重なりは有るが、切れ目中間と保護テープの両端との重なりは無い。比較例7では、テープ幅を17mmに変更したので、切れ目と保護テープの両端との重なりは無い。
【0058】
[試験方法]
[衝撃試験1]
上記実施例1-5及び比較例1-7の非水電解質二次電池を用いて、25℃雰囲気において、0.3Cの定電流充電にて4.2Vまで充電した。その後、衝撃試験1として、UN輸送試験条件のT6衝突試験に沿って、電池中央に直径15.8mmの金属製の丸棒を置き、9.1kgの重りを61cmの高さから落下させる試験を行った。そして試験後の電池の発火の有無を確認した。
【0059】
[衝撃試験2]
さらに、上記実施例1-5及び比較例1-7の非水電解質二次電池を用いて、電池ケースの内部に電解液を注入しない状態で、衝撃試験1と同様に試験を行う衝撃試験2を行った。そして、試験後の電池を分解して、保護テープ30及び外側テープ33の両端部と対向するセパレータ13の破断の有無を確認した。
【0060】
[試験結果]
表1に衝撃試験1,2の試験結果を示している。表1に示すように、外側テープ自体がない比較例1,及び、切れ目中間と保護テープの両端との重なりが無い比較例2-5,7では、衝撃試験1で発火が見られ、衝撃試験2でセパレータの破断も見られた。切れ目奥端のみと保護テープの両端との重なりがある比較例6では、衝撃試験1で発火が見られなかったが、衝撃試験2でセパレータの破断が見られた。
【0061】
一方、切れ目中間と保護テープの両端との重なりが有る実施例1-5では、衝撃試験1で発火は見られず、衝撃試験2でセパレータ13の破断も見られなかった。この理由は、切れ目の中間が保護テープ30の両端Eに重なることにより、両端Eに起因する外側テープ33の角張った部分や段差部分に柔軟性が付与されたことによると考えられる。これにより、実施形態の効果を確認できた。
【0062】
なお、正極芯体11aの露出面11cは、正極板11の極板長手方向γの複数位置に形成されてもよく、それぞれの露出面11cに正極タブ19が接合されてもよい。また、正極板に、それぞれの正極タブ19及び露出面11cを覆うように、実施形態で説明した保護テープと、その外側の外側テープとが設けられてもよい。
【符号の説明】
【0063】
10 非水電解質二次電池、11 正極板、11a 正極芯体、11b 正極合剤層、11c 露出面、12 負極板、13 セパレータ、14 電極体、15 外装缶、15a 筒部、16 封口体、17,18 絶縁板、19 正極タブ、20 負極タブ、21 溝入れ部、22 フィルタ、23 下弁体、24 絶縁部材、25 上弁体、26 キャップ、27 ガスケット、30 保護テープ、33 外側テープ、34 切れ目、35 切れ目群。

図1
図2
図3
図4