(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134053
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
F21S 41/265 20180101AFI20230920BHJP
F21S 41/153 20180101ALI20230920BHJP
F21S 41/143 20180101ALI20230920BHJP
F21V 5/04 20060101ALI20230920BHJP
B60Q 1/14 20060101ALI20230920BHJP
F21S 41/663 20180101ALI20230920BHJP
F21W 102/14 20180101ALN20230920BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20230920BHJP
【FI】
F21S41/265
F21S41/153
F21S41/143
F21V5/04 350
B60Q1/14 A
F21V5/04 550
F21S41/663
F21W102:14
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022039387
(22)【出願日】2022-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081433
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 章夫
(72)【発明者】
【氏名】金森 昭貴
(72)【発明者】
【氏名】松本 昭則
【テーマコード(参考)】
3K339
【Fターム(参考)】
3K339AA02
3K339AA25
3K339AA32
3K339BA01
3K339BA03
3K339BA22
3K339BA25
3K339CA01
3K339CA12
3K339CA22
3K339CA24
3K339DA01
3K339EA05
3K339GB01
3K339HA01
3K339JA21
3K339KA07
3K339MA01
3K339MC14
3K339MC36
3K339MC90
(57)【要約】
【課題】標準分割数の多分割LEDアレイを用いた倍においても、所要の領域を照明する配光パターンを得るとともに、前方の視認性が低下することなく好適なADB配光制御を行うことが可能な車両用灯具を提供する。
【解決手段】多数の発光素子が配列され、発光素子を選択して発光することにより所望のパターンの光を出射する光源(多分割LEDアレイ31)3と、光源3から出射した光を投影して配光パターンを形成する光学系(第1レンズ21,第2レンズ22)2を備える。光学系2は、中央領域222は微小な寸法の単位照明領域の配光パターンを形成し、中央領域222の周囲の周辺領域223は寸法が拡大された単位照明領域で構成され配光パターンを形成する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の発光素子が配列され、発光素子を選択して発光することにより所望のパターンの光を出射する光源と、前記光源から出射した光を投影して配光パターンを形成する光学系を備えており、前記光学系は、中央領域において微小な寸法の単位照明領域の配光パターンを形成し、前記中央領域の周囲の周辺領域において寸法が拡大された単位照明領域の配光パターンを形成することを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記中央領域は、前記光学系のレンズ収差の影響がない状態で配光パターンを形成し、前記周辺領域は前記光学系のレンズ収差により変形された配光パターンを形成する請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記光学系は、前記多数の発光素子の各光をそれぞれ収束するレンズステップを備えた第1レンズと、収束された各光のうち前記中央領域の光を前記周辺領域の光よりも小さい寸法の配光パターンに形成するレンズステップを備えた第2レンズを備えている請求項2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記第1レンズは入射面が前記多数の発光素子に対応して区画され、各区画にそれぞれ収束レンズステップが形成されている請求項3に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記第2レンズは出射面がレンズ光軸を含む中央領域と、その周囲の周辺領域に区画され、各区画にそれぞれ発散レンズステップが形成されている請求項4に記載の車両用灯具。
【請求項6】
前記光源と前記第1レンズとの間に、光源から出射された光を集光して前記第2レンズに入射させる第3レンズを備える請求項3ないし5のいずれかに記載の車両用灯具。
【請求項7】
前記光源は多数の微小LED(発光ダイオード)が枡目状に配列された多分割LEDアレイを備え、車両に設けられた制御系によって当該微小LEDを選択的に発光・消光制御する請求項1ないし6のいずれかに記載の車両用灯具。
【請求項8】
前記制御系は、自動車の周辺に存在する他車両等の対象物を検出し、検出した対象物に対応する微小LEDを消光するADB制御を行う請求項7に記載の車両用灯具。
【請求項9】
前記多分割LEDアレイは横24×縦20=480個の微小LEDで構成され、前記光学系は横50×縦29=1450個の微小LEDで構成される多分割LEDアレイと同じ領域を照明するための配光パターンを形成する請求項7又は8に記載の車両用灯具。
【請求項10】
自動車のヘッドランプに適用される請求項1ないし9のいずれかに記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用灯具に関し、特に自動車の前照灯に用いて好適な車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の前照灯(ヘッドランプ)では、配光を制御する技術として、ADB(Adaptive Driving Beam)配光制御が提案されている。このADB配光制御は、カメラで撮像した画像等から検出した対向車や先行車等の他車両や歩行者を眩惑することがないように配光を制御する技術である。このADB配光制御を行うヘッドランプの一つとして、光源にμmオーダの微小LEDをマトリクス状に配列した多分割発光素子(多分割LEDアレイ)を用いたヘッドランプが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、光源として多分割LEDアレイを備え、この多分割LEDアレイで発光された光を光学系により投影して配光パターンを形成する技術が提案されている。この技術では、多分割LEDアレイの微小LEDを選択的に発光制御することにより、所望の配光パターンを形成するADB配光制御が可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように光源に多分割LEDアレイを用いたヘッドランプにおいて、高精度、すなわち高分解能でのADB配光制御を行う場合には、多分割LEDアレイを構成する微小LEDの数、すなわち分割数の大きい多分割LEDアレイ、例えば、横50×縦29=1450個、程度の分割数の多分割LEDアレイを用いることが好ましい。しかし、このような高分割数の多分割LEDアレイは、これまで提供されている標準分割数、例えば、横24×縦20=480程度の多分割LEDアレイに比較して高価になる。
【0006】
コストの面からみれば、標準分割数の多分割LEDアレイを用いることが好ましいが、所要の領域をADB配光制御するためには光学系による投影倍率を大きくする必要がある。そのために、詳細については後述するが、ADB配光制御に際して微小LEDを発光・消光の制御をしたときに、1つの微小LEDを消光したときに生じる暗部の領域が拡大され、前方の視認性が低下するという問題が生じる。
【0007】
本発明の目的は、光源として標準分割数の多分割LEDアレイを用いた場合においても、所要の領域を照明する配光パターンを得るとともに、前方の視認性が低下することなく好適なADB配光制御を行うことが可能な車両用灯具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、多数の発光素子が配列され、発光素子を選択して発光することにより所望のパターンの光を出射する光源と、光源から出射した光を投影して配光パターンを形成する光学系を備えており、光学系は、中央領域において微小な寸法の単位照明領域の配光パターンを形成し、中央領域の周囲の周辺領域は寸法が拡大された単位照明領域の配光パターンを形成する。例えば、中央領域はレンズ収差の影響がない状態で配光パターンを形成し、周辺領域はレンズ収差により変形された配光パターンを形成する。
【0009】
本発明の好ましい形態は、光学系は、多数の発光素子の各光をそれぞれ収束するレンズステップを備えた第1レンズと、収束された各光のうち中央領域の光を周辺領域の光よりも小さい寸法の単位照明領域で形成するレンズステップを備えた第2レンズを備える。その上で、第1レンズは入射面が多数の発光素子に対応して区画され、各区画にそれぞれ収束レンズステップが形成される。また、第2レンズは出射面がレンズ光軸を含む中央領域と、その周囲の周辺領域に区画され、各区画にそれぞれ発散レンズステップが形成されている。さらに、光源と第1レンズとの間に、光源から出射された光を集光して第2レンズに入射させる第3レンズを備えてもよい。
【0010】
本発明において、光源は多数の微小LED(発光ダイオード)が枡目状に配列された多分割LEDアレイを備えており、車両に設けられた制御系によって当該微小LEDを選択的に発光・消光制御される。制御系は、自動車の周辺に存在する他車両等の対象物を検出し、検出した対象物に対応する微小LEDを消光するADB制御を行う。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、標準分割数の多分割LEDアレイを用いた場合でも、光学系によって周辺領域における単位照明領域を中央領域の単位照明領域よりも寸法を大きくすることにより、所要の領域を照明する配光パターンを得るとともに、前方の視認性が低下することなく好適なADB配光制御を行うことが可能な車両用灯具が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】実施形態1のADBランプユニットの概略構成の斜視図。
【
図4】ADBランプユニットのレンズ光軸に沿った水平断面図。
【
図5】ADBランプユニットの制御系のブロック構成図。
【
図8】ADB配光制御を説明するための配光パターン図。
【
図9】実施形態1の光学系の変形例1の水平断面図。
【
図10】実施形態1の光学系の変形例2の水平断面図。
【
図13】実施形態3の変形例の光学系の水平断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施形態1)
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明を自動車のヘッドランプに適用した実施形態1の斜視図であり、自動車CARの車体の左右前部にそれぞれ左右のヘッドランプR-HL,L-HLが取り付けられている。各ヘッドランプR-HL,L-HLは、ADB配光制御が可能なADBランプユニット(以下、ADBユニット)ALUと、クリアランスランプユニット(以下、クリアランスユニット)CLUとターンシグナルランプユニット(以下、ターンユニット)TSLUを備えており、これらはランプハウジング100内に一体的に配設されている。なお、以降において左右方向は自動車の左右方向に基づいている。
【0014】
左右のヘッドランプR-HL,L-HLは左右対称の構成であり、
図1には右ヘッドランプR-HLを透視的に示した拡大図が示されている。自動車の前方に向けて開口されたランプボディ101と、この開口に取り付けられた透光性カバー102とで前記ランプハウジング100が構成され、このランプハウジング100内に前記したようにADBユニットALU、クリアランスユニットCLU、ターンユニットTSLUが配設されている。ランプハウジング100内において、これらのランプユニットが配設されていない領域には、透光性カバー102を透して内部が露見されないようにエクステンションが配設されているが、図示及び説明は省略する。
【0015】
図2は前記ADBユニットALUの概略構成を示す斜視図であり、当該ADBユニットALUの前面に向かって右斜め方向から見た図である。このADBユニットALUは、詳細を後述するように、ユニットケース1内に光学系2と光源3が組み込まれ、前記ランプボディ101に固定支持されている。本発明はこのADBユニットALUにかかわるものであるので、
図1に示したクリアランスユニットCLU、ターンユニットTSLUについての詳細な説明は省略するが、いずれもLEDを光源とし、このLEDから出射される白色光やアンバー色光を透光樹脂製のインナーレンズを透して出射して外部に照射する構成とされている。
【0016】
図3はADBユニットALUの要部の分解斜視図であり、
図4は光学系2のレンズ光軸Lxを含む位置での水平断面図である。ユニットケース1は筒状をしたレンズホルダ11と、これと一体化された光源ボックス12を備えている。レンズホルダ11には複数のレンズからなる光学系2が内装されており、光源ボックス12に光源3を構成する多分割LEDアレイ31が配設されている。
【0017】
光学系2は、光源3側に配置された第1レンズ21と、この第1レンズ21の前側に配置された第2レンズ22とで構成されており、これら2つのレンズ21,22はレンズ光軸Lxを一致させた状態でレンズホルダ11内に支持されている。この光学系2の詳細については後述する。
【0018】
光源3を構成している多分割LEDアレイ31は標準分割数の多分割LEDアレイが用いられており、略正方形の発光面を有する発光素子、すなわち微小LED32が横24×縦20=480個で配設されてアレイ発光面が構成されている。この多分割LEDアレイ31は、光源基板30に搭載されており、光学系2を構成している2つのレンズ21,22のレンズ光軸Lxに対してほぼ垂直に向けて配設されている。また、この実施形態では、当該レンズ光軸Lxは、多分割LEDアレイ31のアレイ発光面の略中央に配置されている。
【0019】
図5は、多分割LEDアレイ31とその制御系4のブロック構成図であり、多分割LEDアレイ31はランプECU(電子制御ユニット)401に接続され、このランプECU401により微小LED32が選択的に発光・消光制御されるようになっている。各微小LED32は発光制御されたときに白色光を発光する。また、ランプECU401には制御スイッチ403が接続されており、この制御スイッチ403が操作されることによりADBユニットALUが点灯・消灯され、点灯されたときにはADB配光制御が実行される。
【0020】
すなわち、ランプECU401は車両ECU402に接続されており、この車両ECU402からの信号に基づいてADB配光制御を行うことが可能とされている。車両ECU402は、車載カメラ404で撮像した自動車の周囲の画像、特に前方領域の画像に基づいてADB制御信号をランプECU401に出力する。車両ECU402の詳細については説明を省略するが、車両ECU402は車載カメラ404で撮像した画像を解析して自動車の前方ないし前側方に存在する他車両、歩行者、標識等の対象物を検出する。また、検出した対象物に基づいて制御する配光パターンの情報をADB制御信号としてランプECU401に出力する。ランプECU401は、このADB制御信号を受けて多分割LEDアレイ3の微小LED31を選択して発光する。これらランプECU401と車両ECU402はハード構成あるいはソフト構成のいずれであってもよい。
【0021】
前記光学系2について説明する。
図3及び
図4に示したように光学系2は第1レンズ21と第2レンズ22を備えている。第1レンズ21は、多分割LEDアレイ31から出射された光を平行光線束となるように収束するレンズである。
図6は第1レンズ21の後面の構成を説明する図であり、第1レンズ21の後面、すなわち多分割LEDアレイ31からの光が入射される入射面210は、多分割LEDアレイ31を構成している複数の微小LED32、ここでは前記した480個の微小LED32に対応する領域が枡目状に区画されている。そして、各区画はそれぞれ魚眼レンズのようなレンズステップ、ここでは凸球面レンズ211が形成されており、全体として平面配置されたフライアイレンズとも言える構成とされている。多分割LEDアレイ31の各微小LED32から発散状態に出射された光は対応する各凸球面レンズ211において収束状態に屈折され、ほぼ平行光線束として第1レンズ21の前面、すなわち出射面から出射されるようになっている。この第1レンズ21の出射面212は平坦面に構成されている。
【0022】
第2レンズ22は第1レンズ21の前側に配置されており、その入射面220は平坦面として構成されて第1レンズ21の出射面212に密接され、あるいは微小な間隙をおいて配置されている。第2レンズ22の出射面221は、レンズ光軸Lxを含む中央領域222と、この中央領域222の周囲を囲む周辺領域223とに区画され、それぞれが異なる面形状をした複合面として構成されている。中央領域222は、多分割LEDアレイ31のアレイ発光面の中心位置、換言すればレンズ光軸Lxを含み、当該アレイ発光面の縦横寸法の1/2の縦横寸法をした矩形の領域として構成されている。周辺領域223はこの中央領域222の周囲を囲む領域として構成されている。
【0023】
そして、
図4から分かるように、中央領域222の出射面224はほぼ平面に近い所要の曲率半径をしたレンズステップ、ここでは凹曲面に形成され、第1レンズ21から入射された平行な光線束を僅かに発散させながら出射させる構成されている。また、周辺領域223の出射面225は中央領域222よりも曲率半径が小さいレンズステップ、ここでは凹曲面に形成され、第1レンズ21から入射された平行な光線束を中央領域222での場合よりもレンズ光軸Lxに対して大きな角度で発散させながら出射させる構成とされている。
【0024】
この実施形態1のADBユニットALUは、制御スイッチ403がオンされるとランプECU401により多分割LEDアレイ31の微小LED32が発光される。
図4に一部の光線束を拡大して示すように、多分割LEDアレイ31の各微小LED32から出射された発散光は、それぞれ第1レンズ21の入射面210に入射され、各区画の凸球面レンズ211によって収束方向に屈折されて平行光線束とされ、出射面212から出射される。
【0025】
第1レンズ21の出射面212から出射された各光線束は第2レンズ22の入射面220に入射され、出射面221から出射される。第2レンズ22は中央領域222の曲率半径が大きい凹曲面であるので、中央領域222から出射される光は、平行状態よりも幾分発散されて出射される。一方、周辺領域223は中央領域222よりも曲率半径が小さい凹曲面であるので、周辺領域223から出射される光は、中央領域222よりも幾分大きめの角度で発散されて出射される。
【0026】
したがって、多分割LEDアレイ31の略全ての微小LED32が発光されたときには、第2レンズ22から出射されて自動車の前方に投影される光の配光パターンは、
図7(a)に模式的に示すように、各微小LED32で照明される単位照明領域Cが配列かつ合成された配光パターンP1が形成される。同図において、Vは光学系2の光軸Lxを通る鉛直線であり、Hは同じく水平線である。すなわち、多分割LEDアレイ31を構成している微小LED32に対応した単位照明領域(単位照明セル)Cがマトリクス状に配列された配光パターンP1となる。
【0027】
そして、この配光パターンP1において、第2レンズ22の中央領域222に対応する中央パターン領域P11は、中央領域222のレンズステップによってレンズ収差の影響を殆ど受けることがなく、多分割LEDアレイ31の微小LED32の形状をほぼ保った状態で投影される。一方、第2レンズ22の周辺領域223に対応する周辺パターン領域P12は、周辺領域223の曲率半径が小さいためにレンズ収差の影響を受け、多分割LEDアレイ31の微小LED32が変形された放射状に投影される。
【0028】
したがって、投影された配光パターンP1の中央パターン領域P11は微小LED32に対応して微小な寸法の単位照明領域Cが枡目状に配列されたパターン構成となる。また、配光パターンP1の周辺パターン領域P12は微小LED32が放射状に拡大変形された単位照明領域Cが放射配列された枡目状となる。その一方で、周辺パターン領域P12がこのように変形されることにより、光源3として標準分割数の多分割LEDアレイ31を用いているのにもかかわらず、形成される配光パターンP1の全体の縦横寸法が拡大される。
【0029】
因みに、実施形態1と同じ寸法の配光パターンで、かつ中央領域における単位照明領域のサイズを同じ配光パターンを得るためには、
図7(b)のように、高分割数の多分割LEDアレイを用いて配光パターンP2を形成する必要があり、高価になる。一方、標準分割数の多分割LEDアレイを用いて中央領域における単位照明領域Cが同じ寸法の配光パターンを得ようとすると、
図7(c)のように、実施形態よりも小さい配光パターンP3しか得られない。なお、標準分割数の多分割LEDアレイで同じ寸法の配光パターンを得ようとすると、後述するように、単位照明領域Cのサイズが大きくなり、ADB配光制御における分解能が低下する。
【0030】
この配光パターンP1での照明時に、車両ECU402において自車両の前方領域に存在する他車両等を検出すると、検出した他車両に対する幻惑を防止するためのADB制御信号をランプECU401に出力する。ランプECU401はこのADB制御信号に基づいて、多分割LEDアレイ31の一部の微小LED32を消光してADB配光制御を実行する。
【0031】
例えば、
図8(a)に模式的に示すように、検出した先行車や対向車等の対象物Obが存在する単位照明領域Cに対応する微小LED32を消光し、当該対象物Obに対する幻惑を防止する。このようにADB配光制御に際して対象物Obに対する消光を行う際には、微小LED32単位、すなわち単位照明領域Cごとに行うが、殆どの場合において対象物Ocは配光パターンの中央パターン領域P11に存在するので、対象物Obに対する幻惑を防止するために消光される暗部は、最小寸法に制御されている単位照明領域Cの寸法となり、必要かつ十分な最小寸法の領域となる。
【0032】
なお、自動車の側方に存在する対象物に対してもADB配光制御が実行されるが、その際には周辺パターン領域P12で行われる。この周辺パターン領域P12においては単位照明領域が拡大されているため、ADB配光制御が行われると必要以上の領域が暗部されることがある。しかし、周辺パターン領域P12は自動車の走行方向から外れているので、自動車の運転者における安全走行時の視認性が低下されることはない。
【0033】
このように、標準分割数の多分割LEDアレイ31を用いたADBユニットALUでは、多分割LEDアレイ31の価格が要因になるコスト高が防止できる。また、標準型の多分割LEDアレイ31を用いても、ADB配光制御に必要な領域を照明することができ、かつADB配光制御を行ったときに必要以上に暗部が形成されることが防止でき、運転者の視認性が確保できる。
【0034】
因みに、標準分割数の多分割LEDアレイ31を用いてADB配光制御に必要とされる領域の配光パターンを形成すると、
図8(b)に示すように、配光パターンP4を形成する単位照明領域Cが拡大されて寸法が大きくなる。このような場合においてADB配光制御を行うと、対象部Obの周囲に形成される暗部が必要以上に大きくなり、対象物Obの周囲の視認性が低下してしまう。
【0035】
(実施形態1の変形例1)
本発明のADBユニットALUを構成する光学系2のうち、特に第2レンズ22については適宜な変更が可能である。例えば、
図9の変形例1のように、第2レンズ22の出射面221の中央領域222と周辺領域223が、第1レンズ21からの光線束を結像する投影レンズとして構成されてもよい。ここでは、中央領域222と周辺領域223はそれぞれ凸球面で構成されており、中央領域222の曲率半径を周辺領域223の曲率半径よりも小さくしている。
【0036】
(実施形態1の変形例2)
あるいは、
図10の変形例2のように、第2レンズ22の出射面221中央領域222と周辺領域223は、それぞれ多数の領域に区画され、区画ごとに所要のレンズステップ、ここでは凹球面が形成されている。各区画は第1レンズ21の入射面210における魚眼ステップの区画に対応している。また、この実施形態では、第1レンズと第2レンズが一体化された一つのレンズとして構成されている。
【0037】
(実施形態2)
図11は本発明の実施形態2の光学系の水平断面図である。ここでは、第2レンズの周辺領域223は凹球面で構成されている。また、光源3と第1レンズ21との間に第3レンズ23が配設されている。すなわち、
図11に一部を拡大して示すように、各微小LED32から出射される光の出射角θoが、鎖線のように大きい場合には、出射される光の一部、特に出射角が大きくなると、各微小LED32に対向配置されている第1レンズ21の凸球面レンズ211よりも広い領域、すなわち隣接する凸球面レンズ211に入射されてしまう。そのため、各凸球面レンズ211から平行な光線束が出射て第2レンズ22に入射されなくなる。
【0038】
第3レンズ23は、多分割LEDアレイ31の各微小LED32の発光面に近接ないし接触した状態で配置された集光レンズとして構成されている。すなわち多分割LEDアレイ31の各微小LED32の発光面にそれぞれ対応した多数個の微小レンズステップ、ここでは微小凸レンズ231が枡目状に背面配置されて一体化されている。そして、第3レンズ23は多分割LEDアレイ31の前面に一体的に貼り付けられ、各微小凸レンズ23が対応する微小LED3の発光面に接触した状態で対向配置されている。
【0039】
この第3レンズ23を配設することにより、
図11の拡大図に示すように、微小LED32の発光面から出射された光は第3レンズ23の微小凸レンズ231で集光される。第3レンズ23の微小凸レンズ231は微小LED32の発光面を覆っているので、微小LED32から出射された光の殆ど全てが微小凸レンズ231により集光される。この集光位置は第1レンズ21の凸球面レンズ211の焦点位置であり、集光された光は当該凸球面レンズ211に入射されるので、入射された光は、凸球面レンズ211により平行な光線束に収束される。
【0040】
これにより、実施形態2の光学系2では、多分割LEDアレイ31の各微小LED32から出射された光のほぼ全部が第3レンズ23から第1レンズ21に入射され、さらに第2レンズ22から出射されて配光パターンが形成されることになる。したがって、多分割LEDアレイ31から出射される光の利用効率が高められ、明るい配光が得られる。
【0041】
(実施形態3)
図12は実施形態3の光学系の水平断面図である。投影するパターンの明るさを高めるために、第1レンズ21と第2レンズ22は大口径のレンズとして設計されている。そのため、多分割LEDアレイ31の発光面の寸法(縦横寸法)に比較して第1レンズ21と第2レンズ22の寸法(口径寸法)が相対的に大きくなる。そこで、第1レンズ21の凸球面レンズ211は、実施形態1,2と同様に微小LED32に対向配置されているが、
図12拡大して示すように、凸球面レンズ211の曲率中心oを微小LED32の発光面の中心を通る光軸Lxと平行な方向に対して変位させている。すなわち、光軸Lxと平行な方向に対して第1レンズ21の外径方向に所要寸法だけずらしている。
【0042】
実施形態3によれば、微小LED32から出射された光は、第1レンズ21の凸球面レンズ211により平行な光線束とされるが、この凸球面レンズ211の曲率中心oが変位されているために、光線束は光軸Lxに対して所要の角度方向に向けられる。すなわち、第1レンズ21の周辺領域に向けられる。これにより、凸球面レンズ211に入射された光は、光軸Lxに対して全体として発散状態とされ、第1レンズ21のほぼ全面から出射されるようになる。また、第1レンズ21の出射面212から出射される光線束は光軸に平行に近い方向に偏向される。これにより、第2レンズ22に対しては、光軸Lxにほぼ平行な光線束として入射され、実施形態1と同様な配光パターンとして投影される。
【0043】
(実施形態3の変形例)
図13は実施形態3の変形例の光学系の水平断面図である。実施形態3と等価な部分には同一符号を付してある。この変形例では、第1レンズ21の出射面212は凸曲面に形成されている。また、第2レンズ22の入射面220は凹曲面に形成されている。これらの凸曲面形状と凹曲面形状は、それぞれ球面であってもよいが、非球面に形成されることが好ましい。また、第1レンズ21と第2レンズ22を構成している透光部材の屈折率や分散(アッベ数)が適宜に設計される。
【0044】
この変形例の動作は実施形態3とほぼ同じであるが、第1レンズ21の出射面212と第2レンズ22の入射面220が曲面に形成されているので、第1レンズ21の出射面212から出射される光線束は光軸Lxの方向、ないしはほぼ光軸Lxに沿った方向に偏向される。また、これらの面が非球面に形成されたときには、第1レンズ21と第2レンズ22を含む光学系2のレンズ収差、特に球面収差が緩和される。また、第1レンズ21と第2レンズ22の屈折率や分散が好適に設計されたときには、第1レンズ21と第2レンズ22を透過した光の色収差が低減でき、白色の好適な配光パターンが得られる。
【0045】
なお、実施形態3及びその変形例においては、図示は省略するが、第1レンズ21を光軸方向に沿って2分割、すなわち入射面側の部位と、出射面側の部位とに分割された構成としてもよい。すなわち、入射面側は凸球面レンズを備える第1-1レンズとして構成され、出射面側は円錐面又は曲面を有する第1-2レンズとして構成される。これらの第1-1レンズと第1-2レンズは密着しても、あるいは所要の間隙を持って対向配置されてもよい。このようにすることで、第1-1レンズと第1-2レンズの設計、製造が容易になり、第1レンズ21の全体の設計、製造も容易になる。
【0046】
本発明は実施形態に記載したヘッドランプ用のランプユニットに限られるものではなく、多分割LEDアレイを光源とし、任意の配光での照明を行う構成のランプに適用できる。また、光学系は第1と第2のレンズを備えた構成に限られるものではなく、
図10に示したような単一のレンズで構成されてもよく、あるいは3枚以上のレンズで構成されてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 ユニットケース
2 光学系
3 光源
4 制御系
21 第1レンズ
22 第2レンズ
23 第3レンズ
31 多分割LEDアレイ
32 微小LED
222 中央領域
223 周辺領域
100 ランプハウジング
401 ランプECU
402 車両ECU
ALU ADBランプユニット
P1 配光パターン
P11 中央配光パターン
P12 周辺配光パターン
C 単位照明領域
Lx レンズ光軸