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特開2023-13406機能性担持体を含有する繊維処理剤の製造方法と該製造方法により製造された繊維処理剤および機能性繊維製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023013406
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】機能性担持体を含有する繊維処理剤の製造方法と該製造方法により製造された繊維処理剤および機能性繊維製品
(51)【国際特許分類】
   D06M 11/155 20060101AFI20230119BHJP
   D06M 11/83 20060101ALI20230119BHJP
   D06M 101/06 20060101ALN20230119BHJP
【FI】
D06M11/155
D06M11/83
D06M101:06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021117558
(22)【出願日】2021-07-16
(71)【出願人】
【識別番号】309013336
【氏名又は名称】日清紡テキスタイル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000116622
【氏名又は名称】愛知県
(72)【発明者】
【氏名】石川 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】見矢野 恭平
(72)【発明者】
【氏名】安田 柚里
(72)【発明者】
【氏名】勝野 晴孝
(72)【発明者】
【氏名】森川 豊
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅子
【テーマコード(参考)】
4L031
【Fターム(参考)】
4L031AA02
4L031AB01
4L031BA04
4L031BA07
(57)【要約】
【課題】
機能性材料の担持性能に優れ、安定した機能を繊維製品に付与することができる溶媒分散系の繊維処理剤の製造方法と繊維処理剤および安定した機能を有する機能性繊維製品を提供することを課題とする。
【解決手段】
機能性材料を担持させたセルロース加工原料から成る機能性担持体を溶媒に分散させた繊維処理剤の製造方法において、溶媒に分散させたセルロースを解繊し、レーザー回折散乱法により測定した平均粒子径が1μm以上50μm以下、かつ、メディアン径(=50%粒子径)が3μm以上40μm以下であるセルロース加工原料を得る解繊工程と、前記解繊工程で得られたセルロース加工原料に機能性材料を添加し、線流速が80m/sec~120m/secの条件で混合する混合工程を設ける。
【選択図】 図1
図面番号:000003

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能性材料を担持させたセルロース加工原料から成る機能性担持体を溶媒に分散させた繊維処理剤の製造方法であって、前記製造方法は、溶媒に分散させたセルロースを解繊し、レーザー回折散乱法により測定した平均粒子径が1μm以上50μm以下、かつ、メディアン径(=50%粒子径)が3μm以上40μm以下であるセルロース加工原料を得る解繊工程と、前記解繊工程で得られたセルロース加工原料に機能性材料を添加し、線流速が80m/sec~120m/secの条件で混合する混合工程を含むことを特徴とする繊維処理剤の製造方法。
【請求項2】
前記解繊工程で得られたセルロース加工原料の最大繊維径が1nm以上5μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の繊維処理剤の製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の製造方法により製造された繊維処理剤。
【請求項4】
繊維処理剤に塩化マグネシウムを繊維処理剤全量に対し5重量%添加し、1時間放置した後の繊維処理剤全体の液面高さに対する凝集沈殿物の液面高さが80%以上100%以下であることを特徴とする請求項3に記載の繊維処理剤。
【請求項5】
繊維処理剤は溶媒として水と機能性材料として銀を含有し、前記繊維処理剤はセルロース加工原料を繊維処理剤全量に対し0.01%~5%、銀を繊維処理剤全量に対し0.1×10-4%~5.0×10-3%含有することを特徴とする請求項4に記載の繊維処理剤。
【請求項6】
請求項3に記載の繊維処理剤により処理された機能性繊維製品であって、2.5μm×10μm以下のセルロース加工原料の塊が、50nm以下の厚さを有するセルロース加工原料の膜に覆われていることを特徴とする機能性繊維製品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性材料を担持させたセルロース加工原料から成る機能性担持体を溶媒に分散させた繊維処理剤の製造方法と該製造方法により製造された繊維処理剤および該繊維処理剤により処理された機能性繊維製品に関する。
【背景技術】
【0002】
織編物などの繊維製品は、衣類やフィルタなど製品として利用される際に、抗菌性、消臭性、抗ウイルス性、防汚性、防透性、紫外線遮蔽性、遮熱性、接触冷感性、撥水性、撥油性などの機能が付与されることがある。
【0003】
繊維製品に機能性材料を担持させる方法として、特許文献1(特開平8-246334号公報)や特許文献2(特開平10-292268号公報)のようなバインダー樹脂を用いる方法が知られている。
【0004】
特許文献1には、抗菌・消臭性多孔質セラミックス系粉末加工剤を繊維用樹脂バインダーと共に布帛に付与した、抗菌消臭性布帛が開示されており、特許文献2には、主としてポリエステルから構成される繊維構造物であって、該繊維構造物には、活性炭、無機酸化物及び有機窒素系化合物が樹脂バインダーを介して固着されている消臭ポリエステル繊維構造物が開示されている。
【0005】
しかし、このような方法により製造された機能性を有する繊維製品(機能性繊維製品)は、バインダー樹脂により機能性材料が繊維素材表面に強固に保持されるものの、機能性材料の多くがバインダー樹脂に被覆されてしまうため、機能性材料が本来有する抗菌性や消臭性等の機能が十分に発揮され難いという問題がある。
【0006】
バインダー樹脂の使用量を低減したり、バインダー樹脂を使用せずに機能性材料を繊維製品の表面に付着させることも考えられるが、繊維製品の表面に機能性材料を強固に保持させることができず、洗濯によって機能性材料が繊維製品の表面から脱落してしまうため、繊維製品に付与された抗菌性や消臭性等の機能が、洗濯を繰り返すことにより低下するという問題が生じる。
【0007】
一方で特許文献3(特開2017-193793号公報)には、機能性材料を、繊維径が100nm以下であって、かつアスペクト比(繊維長/繊維径)が100~10000の範囲であるセルロースナノファイバーを介して繊維製品の表面に担持させた機能性繊維製品とその製造方法が開示されている。
【0008】
特許文献3によれば、機能性材料が有する機能性が発揮され、かつ耐洗濯性の高い機能性繊維製品を提供できるが、非常に細いセルロース加工原料が分子内及び分子間の水素結合や繊維の絡みによるゲル状の自己凝集体を生成しやすく、機能性や耐洗濯性が安定して発現されないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平8-246334号公報
【特許文献2】特開平10-292268号公報
【特許文献3】特開2017-193793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、機能性材料の担持性能に優れ、安定した機能を繊維製品に付与することができる溶媒分散系の繊維処理剤の製造方法と繊維処理剤および安定した機能を有する機能性繊維製品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、機能性材料を担持させたセルロース加工原料から成る機能性担持体を溶媒に分散させた繊維処理剤の製造方法において、溶媒に分散させたセルロースを解繊し、レーザー回折散乱法により測定した特定の範囲の平均粒子径と特定の範囲のメディアン径(=50%粒子径)を有するセルロース加工原料を得る解繊工程と、前記解繊工程で得られたセルロース加工原料に機能性材料を添加し、特定の条件で混合する混合工程を設けることにより、安定した機能を繊維製品に付与できる繊維処理剤を製造できることを知見し、本発明を完成した。
【0012】
本発明は、機能性材料の担持性能に優れ、安定した機能を繊維製品に付与することができる溶媒分散系の繊維処理剤の製造方法と繊維処理剤および機能性繊維製品であって、以下の技術を基礎とするものである。
【0013】
(1)機能性材料を担持させたセルロース加工原料から成る機能性担持体を溶媒に分散させた繊維処理剤の製造方法であって、前記製造方法は、溶媒に分散させたセルロースを解繊し、レーザー回折散乱法により測定した平均粒子径が1μm以上50μm以下、かつ、メディアン径(=50%粒子径)が3μm以上40μm以下であるセルロース加工原料を得る解繊工程と、前記解繊工程で得られたセルロース加工原料に機能性材料を添加し、線流速が80m/sec~120m/secの条件で混合する混合工程を含む繊維処理剤の製造方法。
【0014】
(2)前記解繊工程で得られたセルロース加工原料の最大繊維径が1nm以上5μm以下である(1)の繊維処理剤の製造方法。
【0015】
(3)(1)または(2)の製造方法により製造された繊維処理剤。
【0016】
(4)繊維処理剤に塩化マグネシウムを繊維処理剤全量に対し5重量%添加し、1時間放置した後の繊維処理剤全体の液面高さに対する凝集沈殿物の液面高さが80%以上100%以下である(3)の繊維処理剤。
【0017】
(5)繊維処理剤は溶媒として水と機能性材料として銀を含有し、前記繊維処理剤はセルロース繊維を繊維処理剤全量に対し0.01%~5%、銀を繊維処理剤全量に対し0.1×10-4%~5.0×10-3%含有する(4)の繊維処理剤。
【0018】
(6)(3)の繊維処理剤により処理された機能性繊維製品であって、2.5μm×10μm以下のセルロース加工原料の塊が50nm以下の厚さのセルロース加工原料の膜に覆われている機能性繊維製品。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、機能性材料の担持性能に優れ、安定した機能を繊維製品に付与することができる水分散系の繊維処理剤の製造方法と繊維処理剤および安定した機能を有する機能性繊維製品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、実施例1の繊維処理剤を適用した機能性繊維製品のSEM写真(1000倍)である。
図2図2は、実施例1の繊維処理剤を適用した機能性繊維製品のSEM写真(2000倍)である。
図3図3は、実施例2の繊維処理剤を適用した機能性繊維製品のSEM写真(1000倍)である。
図4図4は、実施例2の繊維処理剤を適用した機能性繊維製品のSEM写真(2000倍)である。
図5図5は、実施例3の繊維処理剤を適用した機能性繊維製品のSEM写真(1000倍)である。
図6図6は、実施例3の繊維処理剤を適用した機能性繊維製品のSEM写真(2000倍)である。
図7図7は、比較例1の繊維処理剤を適用した機能性繊維製品のSEM写真(1000倍)である。
図8図8は、比較例1の繊維処理剤を適用した機能性繊維製品のSEM写真(2000倍)である。
図9図9は、比較例2の繊維処理剤を適用した機能性繊維製品のSEM写真(1000倍)である。
図10図10は、比較例2の繊維処理剤を適用した機能性繊維製品のSEM写真(2000倍)である。
【0021】
セルロース加工原料の形状は、布上での乾燥時に布との接触面積が大きい方が洗濯耐久性は高くなるため望ましい。そのため、比表面積が大きい板状のもの、繊維状のものが好ましく、中でも繊維状のものが特に好ましい。
【0022】
一方で、セルロース加工原料は水分散媒体中で凝集性が高い自己凝集体のゲルを形成するため、布上での乾燥時に塊を生じ、接触面積が小さくなりやすい。繊維処理剤中に含まれるセルロース加工原料の比表面積を大きくし、自己凝集体の凝集力を抑えるには、平均粒子径、メディアン径およびセルロース繊維の最大繊維径を特定の範囲にすることが必要となる。
【0023】
そこで本発明では、溶媒に分散させたセルロースを解繊する解繊工程において、セルロース加工原料をレーザー回折散乱法により測定した平均粒子径が1μm以上50μm以下、かつ、メディアン径(=50%粒子径)が3μm以上40μm以下となるように解繊する。
【0024】
解繊工程後のセルロース加工原料のレーザー回折散乱法により測定した平均粒子径は1μm~45μm、かつ、メディアン径(=50%粒子径)は3μm~10μmの範囲とすることが好ましく、レーザー回折散乱法により測定した平均粒子径は30μm~40μm、かつ、メディアン径(=50%粒子径)は4μm~7μmの範囲とすることがより好ましい。
【0025】
なお、本発明においてレーザー回折散乱法により測定したメディアン径(=50%粒子径)と平均粒子径は、粒度分布測定装置内の循環水に試料を投入する湿式法で測定した数値を用いる。
レーザー回折散乱法による平均粒子径およびメディアン径(=50%粒子径)は、球体積相当径、有効径を測定するため、主にセルロース加工品の長さに関する結果が得られる。
【0026】
溶媒に分散させたセルロースの解繊は機械的な解繊、触媒による解繊など種々の加工方法が使用できるが、特に、高い剪断力がセルロースに対して作用する、高圧水流で解繊する方法を用いるのが好ましい。
【0027】
高圧水流で解繊する方法を使用して行う場合、セルロースを溶媒に添加した状態で解繊する。セルロース加工原料の固形分濃度は、0.01~10重量%、好ましくは0.1~5重量%、より好ましくは1~3重量%の範囲である。
【0028】
高圧水流で解繊する装置としては、例えば、株式会社スギノマシンのスターバースト(登録商標)や、吉田機械興業株式会社のナノヴェイタ\Nanovater(登録商標)、パウレック株式会社のマイクロフルイダイザー(登録商標)、株式会社常光のNAGS等を使用することができる。
【0029】
解繊工程は溶媒に分散させたセルロースを高圧水流で解繊する装置にて線流速210m/sec~300m/secの条件で解繊するのが好ましい。
【0030】
なお線流速は、高圧水流で解繊する装置の場合、装置のポンプの突出量(m3/s)と流路の面積 (m2)により算出される。
【0031】
また、本発明の解繊工程後のセルロース加工原料の最大繊維径は1nm以上5μm以下であるとより効果的である。
【0032】
解繊工程後のセルロース加工原料の最大繊維径は1nm以上3.0μm以下が好ましく、1nm以上2.0μm以下がより好ましい。
【0033】
なお、本発明において最大繊維径の最小値は、原子間力顕微鏡(AFM パークシステムズ社製XE-100-ASN)で撮影した画像をプローブ顕微鏡用解析ソフトGwyddionで太さを測定した数値を用いるものであり、最大繊維径の最大値は、繊維処理剤とセルロース加工原料の溶媒をtert-ブチルアルコール置換した試料を走査型電子顕微鏡(SEM 日本電子(株)製 JCM-6000Plus)を用いて撮影し付属ソフトで太さを測定した数値を用いる。
【0034】
本発明は更に前述した解繊工程で得られたセルロース加工原料に機能性材料を添加し、線流速が80m/sec~120m/secの条件で混合する混合工程を設けることを特徴とする。
【0035】
この線流速での混合により、解繊工程で得られるセルロース加工原料の形態が維持され、また、セルロース加工原料の自己凝集体の凝集が解かれてセルロース加工原料の比表面積が大きくなることで、機能性材料をセルロース加工原料に担持しやすくなるとともに、セルロース加工原料と布との接触面積が大きくなる。
【0036】
なお、セルロース加工原料と機能性材料との混合方法に用いる装置は、ポンプを用いるインライン型流体混合装置、撹拌羽を用いる固定容器型混合装置等の公知の混合装置を使用することができる。
【0037】
<セルロース加工原料>
本発明の繊維処理剤に用いるセルロース加工原料は、特に限定されるものではなく、市販品を使用してもよく、公知の方法で製造することもできる。
【0038】
セルロース加工原料に用いるセルロースとしては、例えば、植物、動物、バクテリア産生ゲル等のセルロース生合成系で得られたセルロースが挙げられ、針葉樹系パルプ、広葉樹系パルプ、コットンリンター、コットンリント等の綿系パルプ、麦わらパルプ、バガスパルプ等の非木材系パルプ、バクテリアセルロース、ホヤから単離されるセルロース等を使用することができる。
中でも工業用素材として用いられているものが望ましく、特に結晶性セルロースが望ましい 。
【0039】
本発明の繊維処理剤に用いる機能性材料としては、抗菌性、消臭性、抗ウイルス性、防汚性、防透性、紫外線遮蔽性、遮熱性、接触冷感性、撥水性、撥油性からなる群から選ばれる機能性を有する公知の材料を、繊維製品にもたらすべき機能性に応じて選択して用いることができる。
【0040】
<抗菌性を持つ機能性材料>
抗菌性を持つ機能性材料として、公知の無機系、有機系、天然の機能性材料を使用することができる。
【0041】
抗菌性を持つ無機系の機能性材料としては、銀、銅、亜鉛、ニッケル等の抗菌性金属および、抗菌性金属を含有する酸化物、塩化物、硫化物、ヨウ化物、または抗菌性金属もしくは抗菌性金属イオンをゼオライト、粘土鉱物、ケイ酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、リン酸チタニウム、リン酸カルシウム、リン酸アルミニウム、シリカゲル、アルミナ、ガラス、活性炭等に担持したものが挙げられる。
【0042】
抗菌性を持つ有機系の機能性材料としては、第四級アンモニウム塩系、ビグアナイド系、フェノール系、ピリジン系、ニトリル系、イソチアゾリン系、イミダゾール系、有機銅系、有機ヨード系等の各種抗菌剤が挙げられる。
【0043】
また、抗菌性を持つ天然の機能性材料としては、カテキン等のポリフェノール、ペクチン酸やキトサン等の酸性・塩基性多糖、プロタミン、ポリリジン、およびナイシン等の塩基性ペプチド・タンパク質等が挙げられる。
【0044】
<消臭性を持つ機能性材料>
消臭性を持つ機能性材料として、公知の無機系、有機系、天然の機能性材料を使用することができる。
【0045】
消臭性を持つ無機系の機能性材料としては、ゼオライト、シリカゲル、アルミナ、リン酸ジルコニウム、活性炭等の多孔質材料や、それら多孔質材料に遷移金属を担持させた材料、または遷移金属の酸化物や含水酸化物等が挙げられる。
【0046】
消臭性を持つ有機系の機能性材料としては、脂肪族系カルボン酸、アルデヒド化合物、フタロシアニン誘導体、サイクロデキストリン等が挙げられる。
【0047】
また、消臭性を持つ天然の機能性材料としては、カテキン等のポリフェノール、ペクチン酸やキトサン等の酸性・塩基性多糖等が挙げられる。
【0048】
<抗ウイルス性を持つ機能性材料>
抗ウイルス性を持つ機能性材料としては公知の無機系、有機系の機能性材料を使用することができる。
【0049】
抗ウイルス性を持つ無機系の機能性材料としては銀、銅、白金などの金属や、ヨウ素、光触媒酸化チタンなどがあげられる。
【0050】
抗ウイルス性を持つ有機系の機能性材料としては、第4級アンモニウム塩系、ビグアナイド系、セチルピリジニウム塩化物などが挙げられる。
【0051】
<防汚性を持つ機能性材料>
撥水性を持つ機能性材料としては公知の有機フッ素系化合物、炭化水素系化合物、シリコン系化合物などの機能性材料を使用することができる。
【0052】
<防透性を持つ機能性材料>
防透性を持つ機能性材料としては公知の無機系微粒子、またそれら分散液を使用することができる。
【0053】
防透性を持つ機能性材料としては酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウムなどが挙げられる。
【0054】
<紫外線遮蔽性を持つ機能性材料>
紫外線遮蔽性を持つ機能性材料としては公知の無機系微粒子、またそれら分散液を使用することができる。
【0055】
紫外線遮蔽性を持つ機能性材料としては酸化チタン、酸化亜鉛などが挙げられる。
【0056】
<遮熱性を持つ機能性材料>
遮熱性を持つ機能性材料としては公知の金属微粒子、金属酸化物、またそれらの分散液を使用することができる。
【0057】
遮熱性を持つ機能性材料としては金、銀、アルミニウムなどの単体微粉末が挙げられる。
【0058】
遮熱性を持つ機能性材料としては酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウムなどの金属酸化物が挙げられる。
【0059】
<接触冷感性を持つ機能性材料>
接触冷感を持つ機能性材料としては公知の水和時に吸熱反応を有するものを使用することができる。
【0060】
接触冷感を持つ機能性材料としてはキシリトール、ソルビトール、グリセロール、エリスリトール、マンニトールなどの糖アルコールが挙げられる。
【0061】
<撥水性を持つ機能性材料>
撥水性を持つ機能性材料としては公知の有機フッ素系、シリコン系、炭化水素系、の機能性材料を使用することができる。
【0062】
撥水性を持つ機能性材料としてはフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系、パーフルオロアルキル基を有するアクリレート系化合物、などが挙げられる。
【0063】
撥水性を持つ機能性材料としてはメチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルシロキサン、ジメチルポリシロキサンなどが挙げられる。
【0064】
撥水性を持つ機能性材料としてはアクリル酸エステル、メタクリル酸エステルを単量体の基本単位として含むポリマーなどが挙げられる。
【0065】
<撥油性を持つ機能性材料>
撥油性を持つ機能性材料としては公知の有機フッ素系化合物などの機能性材料を使用することができる。
【0066】
撥油性を持つ機能性材料としてはフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系、パーフルオロアルキル基を有するアクリレート系化合物、などが挙げられる。
【0067】
<溶媒>
本発明の繊維処理剤に用いる溶媒としては、水および有機溶媒からなる群から選ばれる溶媒が挙げられ、これら一種以上を用いることができる。
【0068】
有機溶媒としては、機能性材料が溶解しない溶媒であれば特に制限はなく、例えば、アルコール類(例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、イソブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、エチレングリコール、グリセリン等)、エーテル類(例えばエチレングリコールジメチルエーテル、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン等)、ケトン類(例えばアセトン、メチルエチルケトン等)、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキサイド等が挙げることができる。
【0069】
溶媒としては、水のみを用いてもよく、有機溶媒の一種以上を用いてもよく、水と有機溶媒の一種以上との混合溶媒を用いてもよい。
【0070】
本発明の製造方法により提供される繊維処理剤は、機能性材料を担持させたセルロース加工原料から成る機能性担持体が溶媒中に良好に分散されたものである。
【0071】
機能性担持体の分散性は、繊維処理剤に塩化マグネシウムを繊維処理剤全量に対し5.0重量%添加し、1時間放置した後の繊維処理剤全体の液面高さに対する凝集沈殿物の液面高さを測定することにより判定することができる。
【0072】
繊維処理剤に塩化マグネシウムを繊維処理剤全量に対し5重量%添加し、1時間放置した後の繊維処理剤全体の液面高さに対する凝集沈殿物の液面高さが80%以上100%以下であると分散性が良好と判定することができ、この範囲内とすることにより安定した機能を繊維製品に付与することができる。
【0073】
本発明の繊維処理剤は、溶媒が水であり、機能性材料が銀とするのが好ましい形態である。
【0074】
溶媒を水とし、機能性材料が銀とする場合、セルロース加工原料の含有量を繊維処理剤全量に対し0.01%~5.0%、銀の含有量を繊維処理剤全量に対し0.1×10-4%~5.0×10-3%とする。
【0075】
セルロース加工原料の含有量は繊維処理剤全量に対し0.05%~2%、銀の含有量を繊維処理剤全量に対し0.1×10-4%~1.0×10-3%とするのが好ましく、セルロース加工原料の含有量を繊維処理剤全量に対し0.05%~0.1%、銀の含有量を繊維処理剤全量に対し0.1×10-4%~3.0×10-4%とするのがより好ましい。
【0076】
本発明の繊維処理剤は、木綿、亜麻、黄麻等の植物繊維、羊毛、モヘア、アンゴラ、カシミア、絹等の動物繊維等の天然繊維や、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリフルオロエチレン、ポリフェノール等の合成繊維を素材とする織物、編物、不織布から成る、家庭用品、医療用品等の各種分野で使用される繊維製品に適用される。
【0077】
繊維処理剤を繊維製品に接触させる方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を用いることができる。
【0078】
例えば、パディング(padding)法等のディッピング(dipping)法、スプレー法、コーティング法、プリント法等を利用することができる。
【0079】
例えば、繊維製品を繊維処理剤に浸漬し、次いで脱水する。脱水は、公知の脱水機を用いて行うことができる。その後、乾燥することにより、繊維製品表面にセルロース担持体、すなわちセルロース加工原料の繊維を介して機能性材料を担持させることができる。
【0080】
本発明の繊維処理剤により処理された機能性繊維製品は、2.5μm×10μm以下のセルロース加工原料の塊が50nm以下の厚さのセルロース加工原料の膜に覆われた処理面を有する。なお、膜の厚さは、セルロース加工原料が折り重なる際、セルロース加工原料の最大繊維径の3.0μm以上と成り得る。ただし、セルロース加工原料の最大繊維径が最も細い1nm以上と同じ厚さの膜がある場合、膜の比表面積が大きくなりやすくより好ましい。
【実施例0081】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明について具体的に説明するが、本考案は下記の実施例に制限されるものではない。
【0082】
<繊維処理剤の製造>
実施例1~4、比較例1~9の繊維処理剤を製造した。製造方法は以下のとおりである。
【0083】
<セルロース加工原料の解繊工程>
結晶性セルロース(旭化成ケミカルズ社製セオラス(登録商標)FD-101)を水に添加し、固形分濃度2重量%のスラリーを得た。スラリーを吉田機械興業株式会社のナノヴェイタを使用して解繊し、表1、表2に記載のセルロース加工原料を得た。
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
<メディアン径(=50%粒子径)、平均粒子径の測定>
実施例1~4、比較例1~9の繊維処理剤のセルロース加工原料について、レーザー回折散乱法(粒度分布測定装置:ベックマンコールター社製 LS13 320)にてメディアン径(=50%粒子径)および平均粒子径を測定した。測定結果を表1、表2に示す。
【0087】
<繊維径の測定>
得られた実施例1~4、比較例1~9の繊維処理剤とセルロース加工原料の溶媒をtert-ブチルアルコール置換した試料を走査型電子顕微鏡(SEM 日本電子(株)製 JCM-6000Plus)を用いて撮影し付属ソフトで繊維径を測定した。測定結果を表1、表2に示す。
【0088】
<セルロース加工原料と機能性材料の混合工程>
得られたセルロース加工原料を0.05%に希釈し、機能性材料として銀の添加を行った。再度吉田機械興業株式会社のナノヴェイタを使用し、表1、表2に記載の条件で混合を行い実施例1~4、比較例1~9の繊維処理剤を得た。
【0089】
<繊維処理剤の分散性の判定>
50mlのビーカーに実施例1~4、比較例1~9の繊維処理剤を40ml投入し、繊維処理剤に塩化マグネシウムを繊維処理剤全量に対し5.0重量%添加、1時間放置した後の繊維処理剤全体の液面高さに対する凝集沈殿物の液面高さを測定した。測定結果を表1、表2に示す。
【0090】
<繊維処理剤の繊維製品への適用>
金属製容器に実施例1~4、比較例1~9の繊維処理剤100mlを投入した浸漬浴に繊維製品(素材:綿100%、織組織:平織、サイズ:10cm×10cm)を常温で10分間浸漬した後、取り出した繊維製品をペーパータオルで挟んで脱水した。脱水した繊維製品を乾燥機に投入し、105℃で5分間乾燥し、機能性繊維製品を得た。
【0091】
実施例1、2、3と比較例1、2の機能性繊維製品の処理面を走査型電子顕微鏡(SEM 日本電子(株)製 JSM-6510)を用いて撮影した。
【0092】
図1は実施例1の繊維処理剤を適用した機能性繊維製品のSEM(Scanning Electron Microscope)写真(1000倍)であり、図2は実施例1の繊維処理剤を適用した機能性繊維製品のSEM写真(2000倍)である。
【0093】
図3は実施例2の繊維処理剤を適用した機能性繊維製品のSEM写真(1000倍)であり、図4は実施例2の繊維処理剤を適用した機能性繊維製品のSEM写真(2000倍)である。
【0094】
図5は実施例3の繊維処理剤を適用した機能性繊維製品のSEM写真(1000倍)であり、図6は実施例3の繊維処理剤を適用した機能性繊維製品のSEM写真(2000倍)である。
【0095】
実施例1に対し、実施例2から3へと平均粒子径、メディアン径および最大繊維径が小さくなる。実施例1、実施例2、実施例3の全ての場合において、SEM写真では布上を覆う接触面積が大きいセルロース加工原料の膜形成が確認された。形成された膜の厚みはSEMの測定下限値50nmより小さい。
【0096】
なお、実施例1ではセルロース加工原料の塊は2.5μm×10μm、実施例2では2μm×6μm、実施例3では1μm×6μmが最大値として測定された。
【0097】
図7は比較例1の繊維処理剤を適用した機能性繊維製品のSEM写真(1000倍)であり、図8は比較例1の繊維処理剤を適用した機能性繊維製品のSEM写真(2000倍)である。
【0098】
比較例1は平均粒子径、最大繊維径が本発明より大きいセルロース加工原料を用いている。この場合、布上を覆う接触面積が大きい膜の形成は確認されなかった。
【0099】
また、SEM写真では布上で比表面積の小さい塊が確認され、塊の形態は11μm×25.5μmであった。
【0100】
図9は比較例2の繊維処理剤を適用した機能性繊維製品のSEM写真(1000倍)であり、図10は比較例2の繊維処理剤を適用した機能性繊維製品のSEM写真(2000倍)である。
【0101】
比較例2は平均粒子径が本発明より大きいセルロース加工原料を用いている。この場合、布上を覆う接触面積が大きい膜の形成は確認されなかった。
【0102】
また、SEM写真では布上で比表面積の小さい塊が確認され、塊の形態は11μm×30μmであった。繊維径が細いため塊の一部にのみ接触面積が大きい膜の形成があるが、接触面積としては小さい。
【0103】
<耐洗濯性の評価>
得られた機能性繊維製品の耐洗濯性を評価した。評価手順は以下のとおりである。
【0104】
<繊維製品の洗濯>
得られた機能性繊維製品を50ml容の密栓付きプラスチック容器に投入し、水約20mlを添加した。
容器を密栓後常温、180rpmで10分間振盪した後、水を排出した。
【0105】
この洗濯操作を10回行った後、機能性繊維製品を乾燥機に投入し、105℃で5分間乾燥し、機能性繊維製品の洗濯を完了した。
【0106】
<銀の定着率の算定>
正確に重量を測定した機能性繊維製品を磁性るつぼに投入し、バーナー加熱後に550℃のマフル炉に投入し黒色部分が無くなるまで灰化した。灰化後に塩酸+硝酸(1:1)液約1mlを添加し、砂浴で乾燥した。乾燥後約0.2%硝酸液約10mlで回収し試料液とした。
【0107】
回収した試料液中の銀濃度を「殺菌作用を持つ微量銀イオンの接触分析法(BUNSEKI KAGAKU Vol.49, No.6,pp.419-422(2000) 山田 悦ら)」に準じて定量した。具体的には、15ml容の密栓付き樹脂容器中に、リン酸(1+1)及び6×10-3mol/l(M)の硫酸第一マンガン溶液を各々0.5ml入れた後、銀として0~200ngに希釈した試料液4mlを投入した。
【0108】
さらに、ペルオキソ二硫酸カリウムを0.25g投入した後、よく混合し、沸騰水中で15分間加熱した。加熱後約10分間流水で冷却し、分光光度計で525nmの吸光度を測定した。
試料液の代わりに硝酸銀溶液を用いた標準試料で検量線を作成し、繊維製品に担持された銀の量を定量した。
【0109】
銀の残存率は以下の計算式により算定し、下記評価基準により評価した。評価結果を表1、表2に示す。
銀の残存率(%)=洗濯後の銀の量/洗濯前の銀の量×100
【0110】
<評価基準>
銀の残存率
◎ : 60%以上
○ : 50%以上60%未満
△ : 40%以上50%未満
× : 40%未満
【0111】
表1、表2より、本発明の条件を満足する製造方法で製造された実施例1~4の繊維処理剤が銀の定着率が高く、安定した機能を繊維製品に付与できることが見てとれる。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明の製造方法により製造された機能性担持体を含有する繊維処理剤は、担持性能に優れ、安定した機能を繊維製品に付与することができる溶媒分散系の繊維処理剤として好適に用いられ得る。


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10