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  • 特開-電子部品とその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134061
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】電子部品とその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 5/00 20060101AFI20230920BHJP
   H05K 5/02 20060101ALI20230920BHJP
   H05K 5/03 20060101ALI20230920BHJP
   B29C 65/16 20060101ALI20230920BHJP
   H01H 9/02 20060101ALN20230920BHJP
【FI】
H05K5/00 C
H05K5/02 J
H05K5/03 A
B29C65/16
H01H9/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022039396
(22)【出願日】2022-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000105659
【氏名又は名称】ニデックコンポーネンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小室 正
【テーマコード(参考)】
4E360
4F211
5G052
【Fターム(参考)】
4E360AB33
4E360BA02
4E360BA03
4E360BD03
4E360BD05
4E360EA25
4E360EA27
4E360EA29
4E360ED07
4E360EE03
4E360GA11
4E360GA22
4E360GA29
4E360GA53
4E360GA60
4E360GB99
4E360GC08
4F211AA29
4F211AA34
4F211AG07
4F211AG28
4F211AH33
4F211AK03
4F211TA01
4F211TC16
4F211TH21
4F211TN27
5G052AA35
5G052BB02
(57)【要約】

【課題】 専用の炉を必要とせずに、部品を着色することが可能な電子部品とその製造方法を提供する。
【解決手段】 ケース11は、樹脂材によって形成されている。カバー12は、表面に酸化層12bを有する前記樹脂材によって形成され、ケースに取付けられ、開口12aを有する。ロータ14は、ケース内に配置され、カバーの開口から露出された操作部14aを有する。カバーとロータは異なる色を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂材によって形成されたケースと、
表面に酸化層を有する前記樹脂材によって形成され、前記ケースに取付けられ、開口を有するカバーと、
前記ケース内に配置され、前記カバーの前記開口から露出された操作部を有するロータと、
を具備し、
前記カバーと前記ロータは異なる色を有する
ことを特徴とする電子部品。
【請求項2】
前記樹脂材は、直鎖型ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記樹脂材は、PA(ポリアミド)6T、PA9T、及びPA46のうちの1つであることを特徴とする請求項1に記載の電子部品。
【請求項4】
樹脂材によって形成されたケースと、前記樹脂材によって形成され、開口を有するカバーと、前記樹脂材によって形成され、操作部を有するロータと、を準備し、
前記カバーを大気中で熱処理することにより、前記カバーの表面に酸化層を形成し、
前記ロータを前記ケース内に配置し、前記操作部を前記カバーの開口から露出させて前記カバーを前記ケース上に配置し、
前記カバーの周囲にレーザ光を照射して、前記カバーを前記ケースに溶着させ、
前記カバーと前記ロータは異なる色を有する
ことを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項5】
前記樹脂材は、直鎖型ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂であることを特徴とする請求項4に記載の電子部品の製造方法。
【請求項6】
前記樹脂材は、PA(ポリアミド)6T、PA9T、及びPA46のうちの1つであることを特徴とする請求項4に記載の電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、例えば印刷基板の表面に実装される電子部品とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばデュアル・インライン・パッケージ(DIP)ロータリスイッチなどの表面実装形の電子部品は、例えばケースと、ケースに取付けられるカバーと、ケース内に配置されたスイッチ機構を駆動するロータと、を具備している。ケース及びカバーは、樹脂材で形成され、カバーは、例えばレーザ光を用いてケースに溶着される(例えば特許文献1、特許文献2を参照)。
【0003】
カバーを形成する樹脂材に例えば顔料を添加して着色した場合、顔料がレーザ光を吸収し、カバーをケースに溶着することができない。このため、一般に、カバーは、樹脂材そのもので形成され、ケースは、樹脂材に顔料等を添加して着色される。しかし、カバーとロータとの視認性を向上させるため、カバーを着色することが望まれている。具体的には、カバーに対するロータの回転位置を明確化するため、カバーを着色することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-18921号公報
【特許文献2】特開2021-18922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
顔料以外の着色剤として、レーザ光を透過することが可能な染料が市販されている。しかし、この染料は、樹脂メーカが推薦する標準材料ではないため、UL規格等に対するメーカの保証対象外である。
【0006】
また、カバーやケースに適用される樹脂として、直鎖型ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂がある。このPPS樹脂は、小型の電子部品等において、機械的強度を増加させるため、熱処理が必要となる場合がある。PPS樹脂に上記染料を混合して熱処理した場合、この染料は、昇華により退色する問題を有している。さらに熱処理において、染料から昇華したガスにより、炉内が汚染される。このため、汚染された炉により、他の部品を熱処理した場合、他の部品も汚染される。したがって、熱処理を行うために、専用の炉を必要とする。
【0007】
本発明の実施形態は、熱処理により機械的強度を向上させることができ、部品を着色することが可能な電子部品とその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態の電子部品は、樹脂材によって形成されたケースと、表面に酸化層を有する前記樹脂材によって形成され、前記ケースに取付けられ、開口を有するカバーと、前記樹脂材によって形成され、前記ケース内に配置され、前記カバーの前記開口から露出された操作部を有するロータと、を具備し、前記カバーと前記ロータは異なる色を有する。
【0009】
本実施形態の電子部品の製造方法は、樹脂材によって形成されたケースと、前記樹脂材によって形成され、開口を有するカバーと、前記樹脂材によって形成され、操作部を有するロータと、を準備し、前記カバーを大気中で熱処理することにより、前記カバーの表面に酸化層を形成し、前記ロータを前記ケース内に配置し、前記操作部を前記カバーの開口から露出させて前記カバーを前記ケース上に配置し、前記カバーの周囲にレーザ光を照射して、前記カバーを前記ケースに溶着させ、前記カバーと前記ロータは異なる色を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る電子部品の一例を示す平面図。
図2図1の一部を分解して示す斜視図。
図3図1のIII-III線に沿った断面図。
図4】本実施形態に係る電子部品の製造方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。図面において、同一部分には、同一符号を付している。
【0012】
図1図2は、本実施形態に係る電子部品10の一例を示している。電子部品10は、表面実装部品であり、例えばDIPロータリスイッチの場合を示している。しかし、本実施形態は、スイッチに限定されるものではなく、その他の電子部品に適用することが可能である。
【0013】
電子部品10は、例えばハウジングとしてのケース11と、カバー12と、スイッチ機構13と、ロータ14と、複数の端子15と、Oリング16と、を具備している。
【0014】
ケース11は、樹脂により形成され、凹部11aを有している。スイッチ機構13及びロータ14は、凹部11a内に配置される。複数の端子15は、スイッチ機構13に接続されている。複数の端子15は、スイッチ機構13と共にケース11にインサート成形により配置されてもよい。或いは、ケース11は、ベースと、ベースの周囲に設けられた側壁とを含み、ベースにスイッチ機構13と複数の端子15を配置した後、ベースに側壁を取付ける構造であってもよい。
【0015】
凹部11aの周囲に位置するケース11上には、レーザ光を吸収して溶融される突起11bが連続的に設けられている。突起11bは、溶融された状態において、カバー12をケース11に固定する。しかし、突起11bは、省略することも可能である。すなわち、凹部11aの周囲のケース11を溶融し、カバー12をケース11に十分に接合でき、凹部11a内の気密性を保持することが可能であれば、突起11bは省略することができる。
【0016】
カバー12は、例えばケース11と同一の樹脂により形成され、カバー12の中央部には、開口12aが設けられている。開口12a内には、ロータ14の操作部14aが回転可能に挿入される。ロータ14は、スイッチ機構13に連結され、スイッチ機構13を切り替えるために操作される。
【0017】
スイッチ機構13の構成は、本実施形態の本質ではないため、具体的な構成は示していない。しかし、スイッチ機構13は、複数の端子15に接続された図示せぬ複数の固定接点と、コモン接点と、ロータ14に設けられ、固定接点とコモン接点を電気的に接続する可動接点などを含むことが可能である。
【0018】
ロータ14とカバー12との間は気密構造とされ、ケース11の内部への水分や塵埃の侵入が防止される。具体的には、操作部14aの周囲とカバー12との間には、例えばゴム製のOリング16が設けられ、開口12aと操作部14aとの間の隙間から水分や塵埃が侵入することが防止される。
【0019】
図3は、図1の断面を示している。ケース11、カバー12、及びロータ14は、いずれも例えば直鎖型ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂により形成される。PPS樹脂は、本来無着色であり、例えば白色である。
【0020】
本実施形態において、カバー12は、その表面に酸化層12bを有しており、酸化層12bにより変色されている。このため、樹脂本来の色を有するロータ14の操作部14aと、酸化層12bにより変色されたカバー12との間に色の差が生じ、視認性が向上される。
【0021】
尚、カバー12は、レーザ光を透過させる必要があるため、顔料により着色することができない。しかし、ケース11は、レーザ光を透過する必要がないため、熱処理において昇華しない、顔料により着色されていてもよい。
【0022】
(製造方法)
図4は、本実施形態の製造方法を示している。本実施形態は、PPS樹脂の熱処理方法を変えることにより、各部品に適切な特性を付与している。具体的には、ケース11及びロータ14は、熱処理により機械的強度が増加され、カバー12は、熱処理によりその表面に酸化層が形成され、レーザ光を透過することが可能であるとともに、着色される。
【0023】
図4に示すように、先ず、同じPPS樹脂により形成されたケース11、カバー12、ロータ14が準備される(S1)。ケース11は、前述したように、レーザ光を透過する必要がないため、顔料により着色されていてもよい。また、後述する熱処理が可能であれば、ケース11にスイッチ機構13と複数の端子15が取り付けられてもよい。
【0024】
次いで、ロータ14は、図示せぬ炉内に収容され、炉内が真空とされる。この状態において、例えば温度260℃で、1時間、熱処理される(S2)。この熱処理により、ロータ14の機械的強度が増加される。また、ロータ14は、真空状態で熱処理されるため、ロータ14の表面に酸化層は形成されない。
【0025】
一方、ケース11とカバー12は、大気中で、例えば温度260℃で、1時間、熱処理される(S3)。この熱処理により、ケース11とカバー12の機械的強度が増加され、且つカバー12の表面に酸化層12bが形成される。酸化層12bにより、カバー12が変色される。したがって、カバー12は、ロータ14と異なる色を有している。
【0026】
酸化層12bの厚みは、カバー12の厚み比べると僅かである。このため、カバー12に対するレーザ光の透過性は、大きく低下することがない。
【0027】
カバー12の表面と同様に、ケース11の表面にも酸化層が形成され、変色が生じる。しかし、予め顔料によりケース11が着色されている場合、酸化層によるケース11の変色は僅かである。
【0028】
ロータ14の熱処理、及びケース11とカバー12の熱処理は、この順序で行う必要はなく、逆の順序であってもよい。さらに、これらの熱処理が同時に行われてもよい。
【0029】
また、ロータとケースは機械的強度を増加させる必要がない場合、熱処理を省略することも可能である。
【0030】
次いで、ロータ14がケース11の凹部11a内に配置され、カバー12がケース11の突起11b上に配置される(S4)。この状態において、ロータ14の操作部14aは、カバー12の開口12aから露出される。
【0031】
この後、カバー12の周囲にレーザ光が照射され、ケース11の突起11bが溶融される。すなわち、レーザ光は、酸化層12bが形成されたカバー12を透過してケース11の突起11bに照射される。突起11bは、レーザ光を吸収して溶融され、カバー12がケース11に固定される(S5)。
【0032】
(実施形態の効果)
本実施形態によれば、PPS樹脂からなるカバー12は、表面に酸化層12bを有し、酸化層12bにより変色されている。このため、カバー12は、PPS樹脂本来の色を有するロータ14と異なる色を有している。したがって、カバー12とロータ14との視認性を向上させることが可能である。
【0033】
しかも、カバー12は、大気中で熱処理することにより、カバー12の表面に酸化層12bが形成され、この酸化層12bにより元の色から変色されている。したがって、染料や顔料を用いることなく、カバー12を着色することができるため、カバー12の製造が容易であり、製造コストの増加を抑制することが可能である。
【0034】
また、ケース11、カバー12、及びロータ14は、熱処理されているため、機械的強度を増加させることが可能である。
【0035】
さらに、カバー12を着色するために昇華性の染料が不要である。このため、炉内の汚染を防止することができる。したがって、専用の炉を必要としないため、製造が容易であり、製造コストの増加を抑制することが可能である。
【0036】
尚、ケース11、カバー12、ロータ14の材料は、PPS樹脂に限定されるものではなく、熱処理により酸化層を形成することが可能な材料、例えばPA(ポリアミド)6T、PA9T、及びPA46のうちの1つにより形成されてもよい。
【0037】
その他、本発明は上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0038】
11…ケース、12…カバー、12a…開口、12b…酸化層、14…ロータ、14a…操作部。
図1
図2
図3
図4