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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134070
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】基板処理装置及びスケール補正方法
(51)【国際特許分類】
   B05C 5/00 20060101AFI20230920BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20230920BHJP
   H05K 13/02 20060101ALN20230920BHJP
【FI】
B05C5/00 101
B05C11/10
H05K13/02 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022039408
(22)【出願日】2022-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】塩田 智広
(72)【発明者】
【氏名】岡本 貫志
【テーマコード(参考)】
4F041
4F042
5E353
【Fターム(参考)】
4F041AA02
4F041AA05
4F041AB01
4F041BA01
4F041BA10
4F041BA23
4F041BA34
4F042AA02
4F042AA06
4F042AB00
4F042BA08
4F042BA12
4F042CB07
4F042DF10
4F042DF24
4F042DH09
5E353GG22
5E353MM02
5E353MM08
(57)【要約】
【課題】スケールが熱延びした場合であっても基板の実際の移動量を把握でき、基板上の位置精度の低下を抑えることができる基板処理装置及びスケール補正方法を提供する。
【解決手段】少なくとも2つの基準点が設定された基板を載置するステージと、ステージに載置された基板に所定処理を行う基板処理ユニットと、ステージ上の基板と、基板処理ユニットとをスケールの読み取り情報に基づいて相対的に移動させる移動ユニットと、これらを制御する制御装置と、を備える基板処理装置であって、制御装置により、基板に設定された基準点間の設定距離と、ステージに搬入された基板に設定された基準点間の実距離とのずれ量から、スケールの補正が行われるように構成する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの基準点が設定された基板を載置するステージと、
前記ステージに載置された基板に所定処理を行う基板処理ユニットと、
前記ステージ上の基板と、前記基板処理ユニットとをスケールの読み取り情報に基づいて相対的に移動させる移動ユニットと、
これらを制御する制御装置と、
を備える基板処理装置であって、
前記制御装置により、基板に設定された基準点間の設定距離と、前記ステージに搬入された基板に設定された基準点間の実距離とのずれ量から、前記スケールの補正が行われることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記スケールの補正を行う補正パターンを複数有しており、前記スケールの補正は、前記ずれ量に応じて補正パターンが選択されて行われることを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記ずれ量には、閾値が設けられており、前記ずれ量が閾値を超えた場合に前記補正パターンが切り替えられることを特徴とする請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
少なくとも2つの基準点が設定された基板を載置するステージと、
前記ステージに載置された基板に所定処理を行う基板処理ユニットと、
前記ステージ上の基板と、前記基板処理ユニットとをスケールに基づいて相対的に移動させる移動ユニットと、
を有する基板処理装置のスケール補正方法であって、
基板に設定された基準点間の設定距離と、前記ステージに搬入された基板の基準点間の実距離とのずれ量から、前記スケールの補正が行われることを特徴とするスケール補正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板が載置されたステージと基板処理ユニットをスケールに基づいて相対的に移動させて所定処理を行う基板処理装置及びスケール補正方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
実装装置や塗布装置等、基板に対して所定の処理が行われる基板処理装置では、基板処理ユニットが基板の任意の位置に移動できるように構成されている。例えば、基板上に所定の膜パターンを形成するインクジェット塗布装置は、基板を載置するステージと、基板にインクを吐出するヘッドユニットを備えており、ステージがインクジェットヘッドに対して移動することにより、基板上の任意の点に液滴を吐出できるように構成されている。
【0003】
このインクジェット塗布装置は、例えば、図4に示すように、基板Wを浮上させる浮上ステージ部100と、塗布ユニット101と、浮上した状態の基板Wを吸着して保持する基板保持ユニット102と、基板保持ユニット102を基板Wの搬送方向に移動させる搬送駆動部103とを有しており、搬送駆動部103を駆動させて基板保持ユニット102を移動させることにより、基板Wが浮上ステージ部100上を浮上した状態で搬送方向に搬送され、塗布ユニット101から液滴が吐出されることにより基板W上に塗布膜が形成されるようになっている。
【0004】
搬送駆動部103には、駆動パルス信号を生成するエンコーダ104が設けられている。そして、基板保持ユニット102の移動に伴って、エンコーダ104の読取ヘッド104aがスケール104bを読み取ることにより、エンコーダ104から駆動パルス信号が制御装置に送信される。すなわち、制御装置から液滴を吐出すべき位置情報が搬送駆動部103に入力されると、スケール104bを読み取ったエンコーダ104からの駆動パルス信号が制御装置に入力されることにより基板の移動量が把握され、基板W上の吐出すべき位置に精度よく液滴を吐出できるようになっている(例えば下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-058484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上述の基板処理装置では、精度よく基板上の位置を把握できないという問題があった。すなわち、基板処理装置には、多数のCPU、制御基板等が使用されていることから熱が放出される。その熱がスケール104bにも影響し、スケール104bに熱延びが発生する。スケール104bに熱延びが発生すると、スケール104bのピッチ間隔が延びてしまうため、エンコーダ104から発せられる駆動パルス信号が入力されても、実際の移動量を把握できず、移動距離に誤差が生じる。その結果、基板W上の位置精度が低下し、処理された基板Wの品質が低下してしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、スケールが熱延びした場合であっても基板の実際の移動量を把握でき、基板上の位置精度の低下を抑えることができる基板処理装置及びスケール補正方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明の基板処理装置及びスケール補正方法は、少なくとも2つの基準点が設定された基板を載置するステージと、前記ステージに載置された基板に所定処理を行う基板処理ユニットと、前記ステージ上の基板と、前記基板処理ユニットとをスケールの読み取り情報に基づいて相対的に移動させる移動ユニットと、これらを制御する制御装置と、を備える基板処理装置であって、前記制御装置により、基板に設定された基準点間の設定距離と、前記ステージに搬入された基板に設定された基準点間の実距離とのずれ量から、前記スケールの補正が行われることを特徴としている。
【0009】
上記基板処理装置及びスケール補正方法によれば、予め設定値として基板に設定された基準点の設定距離と、ステージに搬入された基板の基準点の実距離のずれ量からスケールに対する補正が行われるため、スケールに熱延びが発生した場合であっても位置精度の低下を抑えることができる。すなわち、制御装置には、予め基板に設定された基準点、例えばアライメントマーク間の距離(設定距離)が既知情報として記憶されている。そして、これから処理を行うためにステージに搬入された基板に付されたアライメントマーク間の距離(実距離)が計測されると、仮にスケールに熱延びが発生していた場合、計測した実距離と記憶された設定距離とにずれが生じる。このずれ量に対して補正が行われることにより熱延びしたスケールから得られた実距離と設定距離との差を抑えることができる。すなわち、スケールに対して補正が行われることにより、熱延びしたスケールであっても設定距離に近い正確な移動量を把握することができるため、位置精度の低下を抑え、基板の品質の低下を抑えることができる。
【0010】
また、前記制御装置は、前記読み取り補正を行う補正パターンを複数有しており、前記スケールの補正は、前記ずれ量に応じて補正パターンが選択されて行われる構成にしてもよい。
【0011】
この構成によれば、実距離のずれ量の大きさに応じて補正パターンが選択されるため、ずれ量の大きさにかかわらず、スケールに対して適切に補正することができる。
【0012】
また、前記ずれ量には、閾値が設けられており、前記ずれ量が閾値を超えた場合に前記補正パターンが切り替えられる構成にしてもよい。
【0013】
この構成によれば、経時的にずれ量が変化する場合であっても、補正パターンが切り替えられることにより、スケールに対して適切な補正をリアルタイムに行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、スケールが熱延びした場合であっても基板の実際の移動量を把握でき、基板上の位置精度の低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の基板処理装置であるインクジェット塗布装置を概略的に示す斜視図である。
図2】上記インクジェット塗布装置の上面図である。
図3】上記インクジェット塗布装置のスケール補正処理動作を示すフローチャートである。
図4】従来のインクジェット塗布装置を概略的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の基板処理装置及びスケール補正方法に係る実施の形態について図面を用いて説明する。なお、本実施形態では、基板処理装置としてインクジェット塗布装置を例として説明するが、例えば実装装置等、他の基板処理装置でもよく、インクジェット塗布装置に限定されるものではない。
【0017】
図1は、本発明の基板処理装置であるインクジェット塗布装置1を概略的に示す斜視図であり、図2は、図1におけるインクジェット塗布装置2の正面図である。
【0018】
図1図2において、基板Wを搬送させるインクジェット塗布装置1は、搬送される基板Wに塗布膜を形成する塗布ユニット2(本発明の基板処理ユニット)と組み合わされており、一連の基板処理装置を形成している。このインクジェット塗布装置1は、一方向に延びる浮上ステージ部10(本発明のステージ)を有しており、この浮上ステージ部10の延びる方向に沿って基板Wが搬送される。図1の例では、浮上ステージ部10は、X軸方向に延びて形成されており、基板WがX軸方向に上流側(前工程側)から下流側(後工程側)に搬送されるようになっている。そして、塗布ユニット2から塗布液を吐出することにより、基板W上に塗布膜が形成される。
【0019】
具体的には、基板Wが浮上ステージ部10に浮上された状態でX軸方向に搬送されつつ、塗布ユニット2から塗布液が吐出されることにより、基板W上に均一厚さの塗布膜が形成されるようになっている。
【0020】
以下の説明では、基板Wが搬送される方向をX軸方向とし、X軸方向が搬送方向に相当する。また、X軸方向と水平面上で直交する方向をY軸方向とし、特にY軸方向を川幅方向ともいう。そして、X軸方向及びY軸方向の双方に直交する方向をZ軸方向として説明を進めることとする。
【0021】
また、塗布ユニット2は、基板W上に塗布材料であるインクを着弾させて塗布するものであり、塗布材料を吐出するインクジェットヘッド部21と、このインクジェットヘッド部21を支持するガントリ部22とを有している。
【0022】
このガントリ部22は、略門型形状に形成されており、搬送レール部31aのY軸方向両側に配置される脚部22aと、これらの脚部22aを連結しY軸方向に延びるビーム部材22bとを有している。そして、このビーム部材22bにインクジェットヘッド部21が取付けられており、ガントリ部22は、浮上ステージ部10をY軸方向に跨いだ状態で取り付けられている。
【0023】
また、ビーム部材22bは、両脚部22aを連結する柱状部材である。このビーム部材22bには、インクジェットヘッド部21が取付けられている。具体的には、ビーム部材22bのX軸方向中央位置に、インクジェットヘッド部21が取り付けられており、このインクジェットヘッド部21に設けられたノズル(不図示)が浮上ステージ部10に向く姿勢で取付けられている。そして、ガントリ部22が塗布位置に位置する状態で基板Wがインクジェットヘッド部21直下に位置したときに塗布材料であるインクが吐出されることにより基板W上に塗布膜が形成される。
【0024】
また、ビーム部材22b上にはY軸方向に延びるレール(不図示)が設けられており、このレールにインクジェットヘッド部21がスライド自在に取り付けられている。そして、サーボモータを駆動制御することにより任意の位置に移動、及び、停止できるようになっている。すなわち、インクジェットヘッド部21は、Y軸方向に微少移動できようになっており、基板Wに対してY軸方向の所定位置に塗布材料であるインクを精度よく着弾させることができる。これにより、基板WがX軸方向に移動しつつ、インクジェットヘッド部21がY軸方向に移動することにより、インクジェットヘッド部21と基板Wとが相対的に移動し、インクジェットヘッド部21のノズルからインクを吐出することによりステージユニット1上の基板Wの所定位置に精度よくインクを着弾させることができるようになっている。
【0025】
また、インクジェット塗布装置1は、基板Wを浮上させつつ、一方向(本実施形態ではX軸方向)に搬送させるものである。インクジェット塗布装置1は、基板Wを浮上させる浮上ステージ部10と、浮上ステージ部10に浮上させた基板Wを保持し搬送させる移動ユニット3とを有している。
【0026】
浮上ステージ部10は、基板Wを浮上させるものであり、本実施形態ではエア浮上機構を有している。浮上ステージ部10は、基台11(図2参照)上に平板部12が設けられて形成されており、複数枚の平板部12がX軸方向に沿って配列されて形成されている。すなわち、平板部12は、平滑な基板浮上面12aを有しており、それぞれの基板浮上面12aが均一高さになるように配列されている。そして、基板浮上面12aには、搬送させる基板Wとの間に空気層が形成されることにより基板Wを所定高さ位置に浮上させることができるようになっている。具体的には、平板部12には、基板浮上面12aに開口する微小な噴出口(不図示)と吸引口(不図示)とが形成されており、噴出口とコンプレッサとが配管で接続され、吸引口と真空ポンプとが配管で接続されている。そして、噴出口から噴出されるエアと吸引口に発生する吸引力とをバランスさせることにより、基板Wが基板浮上面12aから所定高さに水平の姿勢で浮上させることができるようになっている。これにより、基板Wの平面姿勢を高精度に維持した状態で搬送できるようになっている。
【0027】
また、図1図2に示すように、移動ユニット3は、浮上状態の基板Wを移動させるものであり、基板Wを保持する基板保持ユニット30と、この基板保持ユニット30を走行させる搬送駆動部31とを有している。
【0028】
搬送駆動部31は、基板保持ユニット30を搬送方向に移動させるように構成されており、浮上ステージ部10に沿って搬送方向に延びる搬送レール部31aと、この搬送レール部31a上を走行するベース部31bとで形成されている。具体的には、搬送方向(X軸方向)に延びるように設けられたベース台31c(図2参照)が浮上ステージ部10の川幅方向(搬送方向と直交する方向)両側に配置されており、それぞれのベース台31c上に搬送レール部31aが設けられている。すなわち、川幅方向両側において、搬送レール部31aが浮上ステージ部10に沿って途切れることなく連続して設けられている。
【0029】
また、ベース部31bは、凹形状に形成された板状部材であり、例えば図2に示すように、搬送レール部31aの上面を覆うように設けられている。具体的には、ベース部31bは、エアパッド(不図示)を介して搬送レール部31aに覆うように設けられており、リニアモータ(不図示)を駆動させることにより、ベース部31bが搬送レール部31a上を走行するようになっている。すなわち、リニアモータを駆動制御することにより、ベース部31bが搬送レール部31a上を接触することなく走行し、所定の位置で停止できるようになっている。
【0030】
また、基板保持ユニット30は、基板Wを保持するものであり、基板Wを吸着して保持することができる。すなわち、基板保持ユニット30は、複数の吸着部30aを有しており、これらの吸着部30aが昇降動作できるようになっている。すなわち、吸着部30aは、基板Wの裏面に対して接離できるようになっており、基板Wを保持する吸着位置と、基板Wから離間した待機位置とに昇降動作できるようになっている。そして、吸着部30aが吸着位置に位置する状態では、吸着部30aの上面(吸着面)が浮上させた基板Wの下面(裏面)の高さ位置と面一になるように設定されており、この状態で吸着部30aに吸引力を発生させることにより、吸着部30aの上面(吸着面)で基板Wを保持できるようになっている。
【0031】
また、搬送駆動部31には、基板Wの移動量を把握するためのリニアエンコーダ40が設けられている。リニアエンコーダ40は、目盛りが付されたスケール40bと、この目盛りを読み取る読取ヘッド40aとを有しており、読取ヘッド40aが目盛りを読み取ることにより基板Wの移動量が把握できるようになっている。本実施形態では、搬送レール部31aにスケール40bが設けられており、スケール40bの延びる方向が搬送方向(X軸方向)となるように取り付けられている。また、読取ヘッド40aは、ベース部31bに設けられており、スケール40bと対向するように取り付けられている。これにより、基板Wを搬送するためにベース部31bを移動させると、読取ヘッド40aとスケール40bとが相対的に移動し、読取ヘッド40aによりスケール40bの目盛りが読み取られる。リニアエンコーダ40は、この読み取り情報を駆動パルス信号として後述の制御装置に出力することにより、基板Wの移動量が把握できるようになっている。
【0032】
また、基板浮上搬送装置には、カメラユニット6が設けられている。このカメラユニット6は、基板Wに付されたアライメントマークMを撮像するためのものである。カメラユニット6は、ベース部31b上に設けられた門型フレーム部61と、カメラ部62を有しており、本実施形態では、川幅方向に2つのカメラ部62が門型フレーム部61に取り付けられている。本実施形態では、門型フレーム部61にY軸方向に延びるレール(不図示)が設けられており、このレールにカメラ部62がスライド自在に取り付けられている。そして、サーボモータを駆動制御することにより任意の位置で移動、停止できるようになっている。これにより、任意のアライメントマークMをカメラ部62の撮像範囲に収めることができ、アライメントマークMを適切に捉えることができるようになっている。また、カメラユニット6には、エンコーダ(不図示)が取り付けられており、カメラ部62の移動量がエンコーダの駆動パルス信号により把握できるようになっている。すなわち、基板WのアライメントマークMが撮像されると、撮像データと共にエンコーダの読み取り情報が制御装置に取り込まれ、制御装置において、アライメントマークMの画像と位置情報が把握できるようになっている。
【0033】
また、インクジェット塗布装置には、制御装置が設けられており、制御装置によりインクジェット塗布装置が統括的に制御されている。すなわち、制御装置は、予め記憶されたプログラムに従って一連の搬送動作、塗布動作を実行すべく、各ユニットの駆動装置を駆動制御するとともに、搬送動作、塗布動作に必要な各種演算を行うものである。
【0034】
本実施形態では、スケール40bの補正機能が設けられており、スケール40bが熱延びした場合でも、基板Wの実際の移動量を把握し、基板Wの位置精度の低下を抑えることができるようになっている。
【0035】
スケール40bの補正機能は、エンコーダの読み取り情報に対して補正を行うものである。すなわち、読み取り補正機能は、基準点間の距離、本実施形態では、アライメントマークM間の距離のずれ量に応じて補正を行うように構成されている。具体的には、制御装置には、アライメントマークM間の設計上の距離情報、すなわち、本実施形態ではX軸方向におけるアライメントマークMの距離が設定距離として記憶されており、この設定距離と、実際にカメラユニット6により撮像されたアライメントマークM間の距離、すなわち実距離との差が演算されることにより、ずれ量が演算される。また、制御装置には、このずれ量を補正する補正パターンが複数記憶されている。本実施形態では、スケール40bで読み取り情報に対して0.5%補正(補正パターン1)、1.0%補正(補正パターン2)、1.5%補正(補正パターン3)・・・というように、0.5%毎に補正パターンが記憶されている。そして、この補正パターンによりスケール40bの読み取り情報が補正される。例えば、X軸方向に1000mm移動させるために1000パルス必要である場合、仮に補正パターン1が選択されている状態では、995パルス読み取るように補正される。すなわち、スケール40bの熱延びの影響により995パルス読み取ることにより実際の移動量は1000mmとなる。
【0036】
また、これらの補正パターンは、閾値により切り替えられるように設定されている。すなわち、本実施形態では、閾値が5μmと設定されており、アライメントマークMの設定距離と実距離との差が5μmを超えると、現在の補正パターンの補正量よりも1段階大きな補正量の補正パターンを採用するように設定されている。なお、この補正パターンの補正量、及び、閾値は、ユーザにより自由に設定できるようになっている。
【0037】
次に、本実施形態における基板位置補正方法について図3のフローチャートに基づいて説明する。
【0038】
まず、ステップS1により基板搬入工程が行われる。すなわち、ロボットハンド等により浮上ステージ部10上に基板Wが搬入されると、位置決め部材(不図示)により位置決めされた状態で仮固定される。そして、基板保持ユニット30の吸着部30aが待機位置から吸着位置に上昇することにより、基板Wが仮位置決めされた状態で浮上ステージ部10上に浮上した状態で吸着保持される。
【0039】
次に、ステップS2によりアライメント工程が行われる。すなわち、基板Wがカメラユニット6まで搬送されると、基板Wの4つのアライメントマークMがカメラユニット6により撮像され認識される。すなわち、カメラユニット6によるアライメントマークMの画像データと、エンコーダによるアライメントマークMの位置情報が制御装置により取得される。そして、吸着部30aによる吸着保持が解除された状態で、位置決め部材(不図示)により位置決めされた後、吸着部30aにより再度吸着保持され、基板Wのアライメントが完了する。
【0040】
次に、ステップS3によりずれ量演算工程が行われる。すなわち、アライメント工程において取得したアライメントマークMの位置情報からX軸方向の実距離が演算される。そして、予め記憶されたアライメントマークMの設定距離との差が演算され、演算されたずれ量と閾値とが比較される。
【0041】
そして、ステップS4により、ずれ量が閾値を超えたか否かが判断される。その結果、閾値を超えていない場合、すなわち、ずれ量が5μm未満であった場合には、現状のスケール40bの熱延びによる誤差が許容範囲内であるため、ステップS4においてNoの方向に進み、ステップS10により塗布工程が行われる。すなわち、塗布ユニット2により基板Wに液滴が吐出され、基板W上に塗布膜が形成される。
【0042】
一方、ずれ量が5μmを超えた場合には、ステップS4においてYesの方向に進み、ステップS5により補正パターン選択工程が行われる。すなわち、現在、補正パターンが使用されていない状態であるため、補正パターン1が採用される。これにより、スケール40bで読み取られる情報(パルス数)は、その0.5%が補正されており、補正後の距離が真の移動量として認識され、この補正後の移動量により基板Wの位置が制御される。
【0043】
次に、ステップS6によりアライメント工程が行われる。すなわち、ステップS2のアライメント工程と同様に、補正パターン1を加味して得られた移動量を基にして、アライメントマークMの画像データと、エンコーダによるアライメントマークMの位置情報が制御装置により取得される。そして、位置決め部材(不図示)により位置決めされた後、吸着部30aにより再度吸着保持され、基板Wのアライメントが完了する。
【0044】
次に、ステップS7によりずれ量演算工程が行われる。すなわち、ステップS6のアライメント工程において取得した補正パターン1による補正後のアライメントマークMの位置情報からX軸方向の実距離が演算される。そして、予め記憶されたアライメントマークMの設定距離との差が演算され、演算されたずれ量と閾値とが比較される。
【0045】
そして、ステップS8により、ずれ量が閾値を超えたか否かが判断される。その結果、閾値を超えていない場合、すなわち、ずれ量が5μm未満であった場合には、現状のスケール40bの熱延びによる誤差が許容範囲内であるため、ステップS8においてNoの方向に進み、ステップS10により塗布工程が行われる。すなわち、塗布ユニット2により基板Wに液滴が吐出され、基板W上に塗布膜が形成される。
【0046】
一方、ステップS8において、ずれ量が5μmを超えた場合には、補正を行ってもずれ量が改善されないことから、定常状態ではないと判断され、ステップS8においてYesと判断され、ステップS9により警告が出され、インクジェット塗布装置が停止するようになっている。
【0047】
このように、上述のインクジェット塗布装置及びスケール40b補正方法によれば、予め設定値として基板Wに設定されたアライメントマークMの設定距離と、浮上ステージ部10に搬入された基板WのアライメントマークMの実距離のずれ量からスケール40bの補正が行われるため、スケール40bに熱延びが発生した場合であっても位置精度の低下を抑えることができる。すなわち、制御装置には、予め基板Wに設定されたアライメントマークM間の距離(設定距離)が既知情報として記憶されている。そして、これから処理を行うために浮上ステージ部10に搬入された基板Wに付されたアライメントマークM間の距離(実距離)が計測されると、仮にスケール40bに熱延びが発生していた場合、計測した実距離と記憶された設定距離とにずれが生じる。このずれ量に対して補正が行われることにより熱延びしたスケール40bから得られた実距離と設定距離との差を抑えることができる。すなわち、スケール40bに対して補正が行われることにより、熱延びしたスケール40bであっても設定距離に近い正確な移動量を把握することができるため、位置精度の低下を抑え、基板の品質の低下を抑えることができる。
【0048】
また、上記実施形態では、基準点としてアライメントマークMを例として説明したが、アライメントマークM以外のものであってもよい。例えば、基板Wの角部を基準点としてもよく、補正を行うスケール40bの方向に離間した位置に少なくとも2カ所設けられていればよい。
【0049】
また、上記実施形態では、複数の補正パターンを有している場合について説明したが、ずれ量が一定の範囲に限られる場合には、その一定範囲を補正できる補正パターンが1つのみのものであってもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、X軸方向のスケール40bについて補正が行われる例について説明したが、X軸方向だけでなく、Y軸方向も合わせて補正が行われるものであってもよい。この場合、基準点はX軸方向だけでなく、Y軸方向にも少なくとも2カ所設けておき、X軸方向とは別にY軸方向のずれ量が補正されるように構成してもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、ステージが基板Wを浮上させる浮上ステージ部10を有するインクジェット塗布装置について説明したが、基板Wを浮上させず、単に載置するステージを有するインクジェット塗布装置であってもよい。また、塗布ユニット2は、インクジェットに関わらず、スリットノズルを有する塗布装置でもよく、塗布ユニット2の塗布形式は、特に限定されない。
【0052】
また、上記実施形態では、塗布ユニット2に対して基板Wが移動するものについて説明したが、基板Wが制止し、塗布ユニット2が移動するものであってもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 インクジェット塗布装置
2 塗布ユニット
3 移動ユニット
6 カメラユニット
10 浮上ステージ部
30 基板保持ユニット
40 リニアエンコーダ
40a 読取ヘッド
40b スケール
図1
図2
図3
図4