IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社タムロンの特許一覧

<>
  • 特開-光学系及び撮像装置 図1
  • 特開-光学系及び撮像装置 図2
  • 特開-光学系及び撮像装置 図3
  • 特開-光学系及び撮像装置 図4
  • 特開-光学系及び撮像装置 図5
  • 特開-光学系及び撮像装置 図6
  • 特開-光学系及び撮像装置 図7
  • 特開-光学系及び撮像装置 図8
  • 特開-光学系及び撮像装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134075
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】光学系及び撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 13/00 20060101AFI20230920BHJP
   G02B 13/18 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
G02B13/00
G02B13/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022039418
(22)【出願日】2022-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000133227
【氏名又は名称】株式会社タムロン
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】小林 知広
【テーマコード(参考)】
2H087
【Fターム(参考)】
2H087KA01
2H087KA02
2H087LA01
2H087MA07
2H087MA08
2H087MA09
2H087PA09
2H087PA10
2H087PA12
2H087PA16
2H087PA19
2H087PA20
2H087PB11
2H087PB13
2H087PB17
2H087QA02
2H087QA07
2H087QA12
2H087QA14
2H087QA21
2H087QA22
2H087QA25
2H087QA26
2H087QA34
2H087QA38
2H087QA41
2H087QA42
2H087QA45
2H087RA12
2H087RA13
2H087RA22
2H087RA23
2H087RA32
2H087RA44
(57)【要約】
【課題】小型軽量であり迅速なオートフォーカスを実現可能な光学系及び撮像装置を提供する。
【解決手段】当該光学系は、最も物体側に配置される正の屈折力を有する第一正レンズ群G1と、合焦時に光軸に沿って移動する、負の屈折力を有する第一負レンズ群LF1及び負の屈折力を有する第二負レンズ群LF2とを備え、合焦に際して隣り合うレンズ群の間隔が変化し、下記式を満足することを特徴とする。また、撮像装置は、当該光学系と撮像素子とを備える。
0.7 < fn1/fn2 <2.0 ・・・(1)
但し、
fn1:第一負レンズ群の焦点距離
fn2:第二負レンズ群の焦点距離
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
最も物体側に配置され正の屈折力を有する第一正レンズ群と、合焦時に光軸に沿って移動し、負の屈折力を有する第一負レンズ群及び負の屈折力を有する第二負レンズ群とを備え、合焦に際して隣り合うレンズ群の間隔が変化し、下記式を満足することを特徴とする光学系。
0.7 < fn1/fn2 < 2.0 ・・・(1)
但し、
fn1:前記第一負レンズ群の焦点距離
fn2:前記第二負レンズ群の焦点距離
【請求項2】
以下の式を満足することを特徴とする請求項1に記載の光学系。
|β|≧ 0.5 ・・・(2)
但し、
β:当該光学系の近軸結像倍率
【請求項3】
前記第二負レンズ群が実質的に最も像側に配置されるレンズ群である請求項1又は請求項2に記載の光学系。
【請求項4】
前記第一正レンズ群は合焦に際して光軸方向に固定される請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項5】
前記第一負レンズ群と前記第二負レンズ群との間に正の屈折力を有する第二正レンズ群を有する請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項6】
前記第二正レンズ群は合焦に際して光軸方向に固定される請求項5に記載の光学系。
【請求項7】
前記第一負レンズ群及び前記第二負レンズ群のうち、少なくともいずれか一方は単一レンズエレメントにより構成される、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項8】
合焦時に前記第一負レンズ群及び前記第二負レンズ群のみを光軸に沿って移動させる、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の光学系と、当該光学系によって形成された光学像を電気的信号に変換する撮像素子と、を備えたことを特徴とする撮像装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件発明は、光学系及び撮像装置に関し、特に、デジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラ等の固体撮像素子(CCDやCMOS等)を用いた撮像装置に好適な光学系及び撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、一眼レフレックスカメラ、ミラーレス一眼カメラ等の種々の固体撮像素子を用いた撮像装置が普及している。これらの撮像装置の高性能化及び小型化の進展に伴い、その撮像レンズ(光学系)についても一層の高性能化及び小型化が求められており、マクロレンズもその例外ではない。マクロレンズとは、一般に、最大撮像倍率が0.5倍~1倍の撮像レンズをいう。マクロレンズではフォーカシングの際の収差変動、例えば球面収差や像面湾曲の変動を抑えてフォーカス全域にわたり高い光学性能を実現することが特に求められている。
【0003】
このようなマクロレンズとして、例えば、特許文献1に開示の光学系が知られている。
【0004】
特許文献1には、物体側から順に正負正負正の屈折力配置を採用し、負の屈折力を有する第2レンズ群及び第4レンズ群を光軸方向に移動させることで合焦するようにした光学系が提案されている。当該光学系では第2レンズ群の負の屈折力が強すぎ、倍率色収差補正等のため最終レンズ群である第5レンズ群に正の屈折力を配置する必要がある。そのため、光学系全体を小径化することが困難であり、小型軽量化を図ることが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6344965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の課題は、小型軽量であり迅速なオートフォーカスを実現可能な光学系及び撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本件発明に係る光学系は、最も物体側に配置され正の屈折力を有する第一正レンズ群と、合焦時に光軸に沿って移動し、負の屈折力を有する第一負レンズ群及び負の屈折力を有する第二負レンズ群とを備え、合焦に際して隣り合うレンズ群の間隔が変化し、下記式を満足することを特徴とする。
0.7 < fn1/fn2 <2.0 ・・・(1)
但し、
fn1:前記第一負レンズ群の焦点距離
fn2:前記第二負レンズ群の焦点距離
【0008】
また、上記課題を解決するために本件発明に係る撮像装置は、上記光学系と、当該光学系によって形成された光学像を電気的信号に変換する撮像素子とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本件発明によれば、小型軽量であり迅速なオートフォーカスを実現可能な光学系及び撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施例1の光学系のレンズ断面図であり、上段は無限遠合焦状態、下段は第二の近距離物体合焦状態(撮像倍率β)を示す(以下、レンズ断面図において同じである)。
図2】実施例1の光学系の無限遠物体合焦状態における球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
図3】実施例1の光学系の近距離物体合焦状態における球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
図4】本発明の実施例2の光学系のレンズ断面図である。
図5】実施例2の光学系の無限遠物体合焦状態における球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
図6】実施例2の光学系の近距離物体合焦状態における球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
図7】本発明の実施例3の光学系のレンズ断面図である。
図8】実施例3の光学系の無限遠物体合焦状態における球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
図9】実施例3の光学系の近距離物体合焦状態における球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本件発明に係る光学系及び撮像装置の実施の形態を説明する。但し、以下に説明する光学系及び撮像装置は本件発明に係る光学系及び撮像装置の一態様であって、本件発明に係る光学系及び撮像装置は以下の態様に限定されるものではない。
【0012】
1.光学系
当該光学系は、最も物体側に配置される第一正レンズ群と、合焦時に光軸に沿って移動する第一負レンズ群LF1と、第二負レンズ群LF2とを備え、合焦に際して隣り合うレンズ群の間隔が変化するものとする。ここで、「レンズ群」は1枚又は複数枚の互いに隣接配置されるレンズから構成される群をいうものとし、互いに隣接するレンズ群の空気間隔は、合焦の際に変化するものとする。さらに、「1つのレンズ群」と称した場合、その「1つのレンズ群」に含まれる各レンズの空気間隔は合焦の際に変化しないものとする。以下、合焦の際に光軸方向に移動するレンズ群をフォーカス群と称する。当該光学系では第一負レンズ群LF1及び第二負レンズ群LF2をフォーカス群とし、無限遠から近距離物体に対して合焦する。
【0013】
1-1.光学構成
(1)第一正レンズ群
第一正レンズ群は、当該光学系において最も物体側に配置されるレンズ群である。第一正レンズ群は正の屈折力を有する限りその具体的なレンズ構成は特に限定されるものではない。
【0014】
(2)第一負レンズ群LF1及び第二負レンズ群LF2
第一負レンズ群LF1及び第二負レンズ群LF2は、上記第一正レンズ群よりも像側に配置されるレンズ群である。第一負レンズ群LF1及び第二負レンズ群LF2は、負の屈折力を有する。但し、第一負レンズ群LF1は第二負レンズ群LF2よりも物体側に配置されるものとする。当該光学系では、第一正レンズ群を最も物体側に配置し、その像側に第一負レンズ群LF1及び第二負レンズ群LF2が配置されていればよく、これらの3つのレンズ群から実質的に構成されていてもよいし、他のレンズ群を含んでいてもよい。
【0015】
当該光学系では、後述する式(1)を満足させることにより、当該光学系を3つのレンズ群により実質的に構成したときも良好な光学性能を得ることができる。これと同時に合焦時におけるフォーカス群の光軸上の移動量を抑制することができ、当該光学系の小型軽量化を図りつつ、迅速なオートフォーカスを実現することができる。なお、「3つのレンズ群から実質的に構成」されるとは、当該光学系を構成するレンズ群のうち、実質的な屈折力を有するレンズ群が3つであることを意味し、例えば、第一正レンズ群の物体側、各レンズ群の間、第二負レンズ群LF2の像側には実質的な屈折力を有するレンズエレメント等の光学要素が存在しないことを意味する。
【0016】
第一負レンズ群LF1及び第二負レンズ群LF2のうち、少なくともいずれか一方は単一レンズエレメントにより構成されることが好ましい。ここで、「レンズエレメント」とは、1枚のレンズのみ、又は、複数枚のレンズを接合した一つの接合レンズのみから構成される要素をいう。「単一のレンズエレメント」とは、一つの「レンズエレメント」をいう。フォーカス群である第一負レンズ群LF1及び第二負レンズ群LF2のうち、少なくともいずれか一方を単一レンズエレメントにより構成することで、少なくともいずれか一方のフォーカス群については小型化及び軽量化を図ることができ、高速オートフォーカスを実現することがより容易になる。また、少なくともいずれか一方のフォーカス群の小型化及び軽量化を図ることでフォーカス群を駆動するための駆動機構の小型化及び軽量化を図ることができる。これらの効果を得る上で、第一負レンズ群LF1及び第二負レンズ群LF2の双方が単一レンズエレメントから構成されることがより好ましい。
【0017】
(3)その他のレンズ群(第二正レンズ群)
ここで、当該光学系において、第一正レンズ群、第一負レンズ群LF1及び第二負レンズ群LF2に加えて他のレンズ群を備える場合も、第二負レンズ群LF2が実質的な最終レンズ群であることが好ましい。すなわち、第二負レンズ群LF2の像側には実質的な屈折力を有するレンズエレメント等が存在しないことが好ましい。第二負レンズ群LF2を実質的な最終レンズ群とすることにより、当該光学系の光学全長を短くすることが容易であり、当該光学系の小型軽量化を図ることができる。
【0018】
当該光学系が他のレンズ群を含む場合、他のレンズ群として正の屈折力を有する第二正レンズ群を備えていることが好ましい。当該光学系を二つの正レンズ群と二つの負レンズ群とにより構成することで、収差補正をより良好に行うことができる。さらに、当該第二正レンズ群は、第一負レンズ群LF1と第二負レンズ群LF2との間に配置されることが好ましい。第一負レンズ群LF1と第二負レンズ群LF2との間に第二正レンズ群を配置し、4つ以上のレンズ群により構成することで収差補正をより良好に行うことができ、より良好な結像性能を得ることが容易になる。
【0019】
当該光学系において第二正レンズ群は、第一負レンズ群LF1と第二負レンズ群LF2との間に配置されていることが好ましい。第一負レンズ群LF1と第二負レンズ群LF2との間に第二正レンズ群を配置することにより、第一負レンズ群LF1により発散した光線束を第二正レンズ群により収斂させて、第二負レンズ群LF2に入射させることができる。そのため、第二負レンズ群LF2の小径化を図ることができ、当該光学系の小型軽量化を図ることがより容易になる。
【0020】
1-2.合焦時の動作
上記のとおり当該光学系では、合焦に際して隣り合うレンズ群の間隔が変化する。その際、少なくとも第一負レンズ群LF1及び第二負レンズ群LF2がフォーカス群として光軸方向に移動し、無限遠から近距離物体に対して合焦する。
【0021】
(1)第一負レンズ群LF1及び第二負レンズ群LF2
無限遠から近距離物体への合焦に際して、第一負レンズ群LF1及び第二負レンズ群LF2は同じ軌跡で光軸方向に移動させてもよいし、異なる軌跡で移動させてもよい。しかしながら、合焦に際して、第一負レンズ群LF1及び第二負レンズ群LF2を異なる軌跡で移動させれば、すなわちフローティング方式による合焦方式を採用すれば、当該光学系を小型軽量に維持しつつ合焦時における収差変動を抑制し、合焦域全域において良好な結像性能を得ることが容易になるためより好ましい。
【0022】
一方、合焦に際して、第一負レンズ群LF1及び第二負レンズ群LF2を同じ軌跡で移動させる場合、第一負レンズ群LF1及び第二負レンズ群LF2を同じレンズ枠に固定して、当該レンズ枠を一つの駆動機構により駆動することで第一負レンズ群LF1及び第二負レンズ群LF2を同時に移動させることができるため、各レンズ群毎に駆動機構を設ける必要がなく、フォーカス駆動機構の簡素化を図ることができる。
【0023】
(2)第一正レンズ群
第一正レンズ群は合焦に際して光軸方向に固定されることが好ましい。当該光学系において最も物体側に配置される第一正レンズ群は、第一負レンズ群LF1及び第二負レンズ群LF2と比較すると外径が大きく、レンズの厚みも厚いため、大型化及び重量化しやすい。そのため、第一正レンズ群を固定群とすれば、合焦の際に第一正レンズ群を光軸方向に移動させるための駆動機構が不要になるため、当該光学系、駆動機構及び鏡筒等を含む撮像レンズ全体の小型軽量化を図ることができる。
【0024】
(3)第二正レンズ群
当該光学系が第二正レンズ群を含む場合、第二正レンズ群は合焦に際して光軸方向に固定されることが好ましい。当該光学系では第一負レンズ群LF1及び第二負レンズ群LF2をフォーカス群とする。フォーカス群の数が増加すると合焦時の収差変動を抑制するという観点からは好ましい。しかしながら、フォーカス群の数が増加すると、各フォーカス群を光軸方向に移動するための駆動機構を要するため、当該光学系、駆動機構及び鏡筒等を含む撮像レンズ全体の小型軽量化を図ることが困難になる。そのため、当該光学系が第二正レンズ群を含む場合、第二正レンズ群は固定群であることが好ましい。
【0025】
1-3.式
当該光学系は下記に示す式を1つ以上満足することが好ましい。
【0026】
1-3-1. 式(1)
0.7 < fn1/fn2 <2.0 ・・・(1)
但し、
fn1:第一負レンズ群LF1の焦点距離
fn2:第二負レンズ群LF2の焦点距離
【0027】
式(1)は第一負レンズ群LF1の焦点距離と第二負レンズ群LF2の焦点距離との比を規定する式である。式(1)を満足させることで、第一負レンズ群LF1と第二負レンズ群LF2とに分配する負の屈折力のバランスが良好になり、第二負レンズ群LF2の像側に他のレンズ群を配置せずとも、合焦時の収差変動が小さく光学性能の良好な光学系を得ることができる。さらに、合焦時における第一負レンズ群LF1及び第二負レンズ群LF2の光軸上の移動量を適正な範囲内にすることができる。これらのことから、当該光学系の光学全長を短くすることができ、当該光学系の小型軽量化を図ることができる。
【0028】
これに対して、式(1)の数値が下限値以下になると、第一負レンズ群LF1の屈折力が第二負レンズ群LF2に対して強くなりすぎ、ガタ倍率(レンズ群の単位移動量に対する像面移動量の比)が大きくなる点では良好である一方、合焦時の収差変動や偏芯収差等の影響が大きくなるため好ましくない。一方、式(1)の数値が上限値以上になると、第一負レンズ群LF1の屈折力が第二負レンズ群LF2に対して弱くなりすぎるため、ガタ倍率が低くなる。そのため、合焦時における第一負レンズ群LF1の移動量が大きくなり、当該光学系の光学全長が長くなるおそれがあるため好ましくない。
【0029】
上記効果を得る上で、式(1)の下限値は0.8であることがより好ましく、0.9であることがさらに好ましい。また、式(1)の上限値は1.8であることが好ましく、1.7であることがより好ましい。但し、式(1)において不等号(<)を等号付不等号(≦)に置換してもよい。
【0030】
1-3-2.式(2)
|β|≧ 0.5 ・・・(2)
但し、
β:当該光学系の近軸結像倍率
【0031】
上記式(2)は当該光学系の近軸結像倍率を規定する式である。式(2)を満足する場合、当該光学系はいわゆるマクロレンズであり、主要被写体像を実寸の0.5倍以上の近軸結像倍率で得ることができる。
【0032】
式(2)の下限値は0.8であることがより好ましく、0.9であることがさらに好ましく、1.0であることがより好ましい。なお、式(2)の上限値は特に限定されるものではない。但し、本発明に係る光学系では、式(2)の上限値が2.0であるときに、特に良好な光学性能を得ることができる。
【0033】
2.撮像装置
次に、本件発明に係る撮像装置について説明する。本件発明に係る撮像装置は、上記本件発明に係る撮像レンズと、当該撮像レンズによって形成された光学像を電気的信号に変換する撮像素子とを備えたことを特徴とする。なお、撮像素子は光学系の像側に設けられることが好ましい。
【0034】
ここで、撮像素子等に特に限定はなく、CCD(Charge Coupled Device)センサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサなどの固体撮像素子等も用いることができる。本件発明に係る撮像装置は、デジタルカメラやビデオカメラ等のこれらの固体撮像素子を用いた撮像装置に好適である。また、当該撮像装置は、一眼レフカメラ、ミラーレス一眼カメラ、デジタルスチルカメラ、監視カメラ、車載用カメラ、ドローン搭載用カメラ等の種々の撮像装置に適用することができる。また、これらの撮像装置はレンズ交換式の撮像装置であってもよいし、レンズが筐体に固定されたレンズ固定式の撮像装置であってもよい。特に、当該撮像レンズは最大撮像倍率が0.5倍以上であり、被写体に近接して撮像が可能ないわゆるマクロレンズに好適であるため、一眼レフカメラやミラーレス一眼カメラ等の撮像装置や、産業用撮像装置等の被写体を大きく撮像することが求められる用途に好適である。
【0035】
次に、実施例を示して本件発明を具体的に説明する。但し、本件発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例0036】
(1)光学構成
図1は、本件発明に係る実施例1の光学系のレンズ断面図であり、上段は無限遠物体合焦状態、下段は近距離物体合焦状態(撮像倍率β=-1)を示す。以下、各実施例で示すレンズ断面図において同じであるため、以下では説明を省略する。
【0037】
図1に示すように、当該光学系は、物体側から順に正の屈折力を有する第1レンズ群G1(第一正レンズ群)と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2(第一負レンズ群LF1)と、正の屈折力を有する第3レンズ群G3(第二正レンズ群)と、負の屈折力を有する第4レンズ群G4(第二負レンズ群LF2)とを備えている。開口絞りSは第3レンズ群G3の物体側に配置されている。なお、各レンズ群の構成は図に示すとおりである。
【0038】
当該光学系では合焦に際して隣合うレンズ群の間隔が変化する。無限遠物体から近距離物体への合焦に際して、第1レンズ群G1は光軸方向に固定され、第2レンズ群G2は像面側に移動し、第3レンズ群G3は光軸方向に固定され、第4レンズ群G4は像面側に移動する。
なお、図1において、「IP」は像面であり、具体的には、CCDセンサやCMOSセンサなどの固体撮像素子の撮像面、或いは、銀塩フィルムのフィルム面等を示す。また、IPの物体側にはカバーガラスCG等を備える。この点は、他の実施例で示す各レンズ断面図においても同様であるため、以後説明を省略する。
【0039】
(2)数値実施例
次に、当該光学系の数値実施例について説明する。以下に当該光学系のレンズデータ、各種データ、合焦時の可変間隔、各レンズ群の焦点距離を示す。
「(レンズデータ)」において、「No.」は物体側から数えたレンズ面の順番(面番号)、「R」はレンズ面の曲率半径、「D」はレンズ面の光軸上の間隔、「Nd」はd線(波長λ=587.6nm)に対する屈折率、「ABV」はd線に対するアッベ数をそれぞれ示している。また、「No.」の欄において、面番号の次の欄に表示する「STOP」は開口絞りを表し、「*」は非球面を表している。また、「D」の欄において「D○○」(本実施例ではD9等)と表示するのは、合焦時の可変間隔であることを示す。なお、以下に示す数値実施例において長さの単位は全て「mm」であり、画角の単位は全て「°」である。
【0040】
「(各種データ)」において、「f」は当該光学系の焦点距離であり、「β」は撮像倍率であり、「Fno」はF値であり、「ω」は半画角であり、「Y」は像高であり、「BF」はバックフォーカスであり、「TL」は光学全長であり、それぞれ無限遠物体合焦状態、近距離物体合焦状態のときの値を示している。但し、表中の値は、厚さ2.5mmのカバーガラス(Nd=1.51633)を含む値であり、他の実施例に示すバックフォーカスも同様である。
【0041】
「(可変間隔(合焦時))」では、無限遠物体合焦状態、近距離物体合焦状態における可変間隔を、そのときの焦点距離(f)及び撮影距離と共に示している。
「(各レンズ群の焦点距離)」では、各レンズ群に含まれるレンズ面と、各レンズ群の焦点距離とを示している。
【0042】
「(非球面データ)」は、各非球面の非球面係数を示す。但し、非球面は、xを光軸方向の面頂点からの変位量として次式で定義されるものとする。
x=(h/r)/[1+{1-(1+k)×(h/r)1/2
+A4×h+A6×h+A8×h+A10×h10+A12×h12
上記式においてhは光軸からの高さ、rは近軸曲率半径、kは円錐係数、Anはn次の非球面係数を表す。また、「E±XX」は指数表記を表し「×10±XX」を意味する。
【0043】
さらに、式(1)及び式(2)の値を表1(後掲)に示す。これらの数値に関する事項は他の実施例においても同様であるため、以下では説明を省略する。
【0044】
図2及び図3に当該光学系の無限遠物体合焦状態、近距離物体合焦状態における縦収差図を示す。各縦収差図において、図面に向かって左から順に、球面収差、非点収差、歪曲収差を表している。球面収差を表す図では、縦軸は開放F値との割合、横軸にデフォーカスをとり、実線がd線(波長λ=587.56nm)、破線がC線(波長λ=656.28nm)、一点鎖線がF線(波長λ=486.13nm)における球面収差を示す。非点収差を表す図では、縦軸は半画角(ω)、横軸にデフォーカスをとり、実線がd線に対するサジタル像面、点線がd線に対するメリジオナル像面を示す。歪曲収差を表す図では、縦軸は半画角(ω)、横軸に%をとり、歪曲収差を表す。これらの各図に関する事項は他の実施例で示す縦収差図においても同様であるため、以下では説明を省略する。
【0045】
(レンズデータ)
No. R D Nd ABV
1 55.2144 3.7000 1.92286 20.88
2 2831.3180 1.0000 1.65412 39.68
3 29.7297 8.3906
4 63.8574 6.1945 1.59282 68.62
5 -44.5064 1.2885
6 -32.6739 0.8000 1.84666 23.78
7 -836.5892 0.2000
8* 45.5948 7.3667 1.77377 47.17
9* -40.1498 D9
10 -484.6300 0.8000 1.51680 64.20
11 24.8647 D11
12STOP 0.0000 0.8000
13 50.7082 0.8000 1.85478 24.80
14 23.3051 4.1934
15 -96.6402 2.7127 1.90525 35.04
16 -39.0617 5.3601
17 48.5018 6.8067 1.43700 95.10
18 -23.3600 D18
19 -47.6699 1.6000 1.84666 23.78
20 -30.1939 0.7000 1.49700 81.61
21 28.6956 D21
22 0.0000 2.5000 1.51633 64.14
23 0.0000 1.0000
【0046】
(各種データ)
f 92.7000 41.3760
β 0 -1
Fno 2.9100 5.8200
ω 12.6205 9.0852
Y 21.6330 21.6330
BF 55.4000 38.5640
TL 125.0000 125.0000
【0047】
(可変間隔(合焦時))
f 92.7000 41.3760
撮影距離 INF 197.4670
D9 1.5000 10.2791
D11 12.7669 3.9878
D18 2.6191 19.4561
D21 51.9008 35.0637
【0048】
(各レンズ群の焦点距離)
群 面番号 焦点距離
G1 1-9 35.791
G2 10-11 -45.740
G3 12-18 36.766
G4 19-21 -42.307
【0049】
(非球面データ)
No. K A4 A6 A8 A10 A12
8 0.00000E+00 -5.65839E-06 -3.87057E-09 -2.78239E-11 9.11917E-14 -6.92025E-17
9 -1.00159E+00 1.80536E-06 -1.06473E-08 6.11458E-12 8.58841E-15 3.82931E-18
【実施例0050】
(1)光学構成
図4は、本件発明に係る実施例2の光学系のレンズ断面図である。図4に示すように、当該光学系は、物体側から順に正の屈折力を有する第1レンズ群G1(第一正レンズ群)と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2(第一負レンズ群LF1)と、正の屈折力を有する第3レンズ群G3(第二正レンズ群)と、負の屈折力を有する第4レンズ群G4(第二負レンズ群LF2)と、正の屈折力を有する第5レンズ群G5とを備えている。開口絞りSは第3レンズ群G3の物体側に配置されている。なお、各レンズ群の構成は図に示すとおりである。
【0051】
当該光学系では合焦に際して隣合うレンズ群の間隔が変化する。無限遠物体から近距離物体への合焦に際して、第1レンズ群G1は光軸方向に固定され、第2レンズ群G2は像面側に移動し、第3レンズ群G3は光軸方向に固定され、第4レンズ群G4は像面側に移動し、第5レンズ群G5は光軸方向に固定される。
【0052】
(2)数値実施例
次に、当該光学系の数値実施例について説明する。以下に当該光学系のレンズデータ、各種データ、合焦時の可変間隔、各レンズ群の焦点距離を示す。
【0053】
また、図5及び図6に当該光学系の無限遠物体合焦状態、近距離物体合焦状態における縦収差図を示す。
【0054】
(レンズデータ)
No. R D Nd ABV
1 118.7112 2.4065 1.85883 30.00
2 305.3128 0.2000
3 43.0253 4.7819 1.92286 20.88
4 521.0830 1.3000 1.59282 68.62
5 22.4336 7.1876
6 -66.2336 1.2000 1.84666 23.78
7 30.2523 6.8376 1.49700 81.61
8 -55.5537 0.2000
9 158.3357 2.7158 1.95375 32.32
10 -239.1887 0.2000
11 32.5764 7.2512 1.49700 81.61
12 -63.8072 D12
13 -169.0552 1.0000 1.67790 55.35
14 43.3892 D14
15STOP 0.0000 1.6518
16 -192.0323 1.0000 2.00100 29.13
17 46.7496 8.8466 1.78590 43.93
18 -19.0973 2.2863 1.85883 30.00
19 -36.1169 0.2000
20 56.0312 3.2157 1.90043 37.37
21 -430.2329 D21
22 -131.2132 2.2000 1.92286 20.88
23 -37.4104 1.0000 1.70154 41.24
24 36.3465 D24
25 -329.6535 6.6164 1.84666 23.78
26 -67.0238 6.0504
27 -31.6155 1.0000 1.80610 40.73
28 92.9052 0.2000
29 40.6762 5.6439 1.48749 70.44
30 -129.1177 19.3285
31 0.0000 2.5000 1.51633 64.14
32 0.0000 1.0000
【0055】
(各種データ)
f 87.7998 38.9769
β 0 -1
Fno 2.9100 5.8200
ω 13.7621 8.2081
Y 21.6330 21.6330
BF 22.8285 22.8285
TL 145.2807 145.2807
【0056】
(可変間隔(合焦時))
f 87.7998 38.9769
撮影距離 INF 214.4784
D12 2.0000 17.0000
D14 18.6305 3.6305
D21 2.0000 17.0000
D24 20.3098 5.3098
【0057】
(各レンズ群の焦点距離)
群 面番号 焦点距離
G1 1-12 47.662
G2 13-14 -50.836
G3 15-21 32.444
G4 22-24 -48.689
G5 25-30 -143.070
【実施例0058】
(1)光学構成
図7は、本件発明に係る実施例3の光学系のレンズ断面図である。図7に示すように、当該光学系は、物体側から順に正の屈折力を有する第1レンズ群G1(第一正レンズ群)と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2(第一負レンズ群LF1)と、正の屈折力を有する第3レンズ群G3(第二正レンズ群)と、負の屈折力を有する第4レンズ群G4(第二負レンズ群LF2)とを備えている。開口絞りSは第3レンズ群G3の物体側に配置されている。なお、各レンズ群の構成は図に示すとおりである。
【0059】
当該光学系では合焦に際して隣合うレンズ群の間隔が変化する。無限遠物体から近距離物体への合焦に際して、第1レンズ群G1は光軸方向に固定され、第2レンズ群G2は像面側に移動し、第3レンズ群G3は光軸方向に固定され、第4レンズ群G4は像面側に移動する。
【0060】
(2)数値実施例
次に、当該光学系の数値実施例について説明する。以下に当該光学系のレンズデータ、各種データ、合焦時の可変間隔、各レンズ群の焦点距離を示す。
【0061】
また、図8及び図9に当該光学系の無限遠物体合焦状態、近距離物体合焦状態における縦収差図を示す。
【0062】
(レンズデータ)
No. R D Nd ABV
1 580.7274 3.0524 1.87347 37.87
2 -151.4729 0.2000
3 42.9496 4.7778 1.92286 20.88
4 181.6153 1.0000 1.71855 30.01
5 22.2693 1.3130
6 23.5142 9.6334 1.51355 77.11
7 -65.9430 0.8000 1.84359 23.87
8 100.4505 0.2000
9 43.1015 3.9275 1.77250 49.62
10 437.9983 D10
11 998.3313 0.8000 1.49700 81.61
12 26.8528 D12
13STOP 0.0000 0.8000
14 53.3621 0.8000 1.85478 24.80
15 31.0517 1.5736
16 87.3714 1.0000 1.90525 35.04
17 41.7569 2.7402
18 102.7346 2.7823 1.88535 29.80
19 -102.9791 0.2000
20 34.1015 5.4763 1.43700 95.10
21 -31.9622 D21
22 -2582.8411 3.3000 1.79504 25.44
23 -31.1711 0.7000 1.77191 49.65
24 28.1387 D24
25 0.0000 2.5000 1.51633 64.14
26 0.0000 1.0000
【0063】
(各種データ)
f 135.8005 47.1851
β 0 -1
Fno 3.5181 7.0000
ω 8.6054 5.6374
Y 21.6330 21.6330
BF 62.0716 43.4115
TL 124.0000 124.0000
【0064】
(可変間隔(合焦時))
f 87.7998 38.9769
撮影距離 INF 250.5545
D10 1.6449 12.4120
D12 14.6853 3.9183
D21 1.5185 20.1806
D24 58.5716 39.9115
【0065】
(各レンズ群の焦点距離)
群 面番号 焦点距離
G1 1-10 49.027
G2 11-12 -55.539
G3 13-21 41.051
G4 22-24 -37.026
【0066】
[表1]
実施例1 実施例2 実施例3
式(1) fn1/fn2 1.08 1.04 1.50
式(2) β2 -1 -1 -1
【産業上の利用可能性】
【0067】
本件発明によれば、小型軽量であり迅速なオートフォーカスを実現可能な光学系及び撮像装置を提供することができる。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9