(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134078
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】塗布膜形成方法及びインクジェット塗布装置
(51)【国際特許分類】
B05D 1/26 20060101AFI20230920BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20230920BHJP
B05D 1/36 20060101ALI20230920BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20230920BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20230920BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
B05D1/26 Z
B05D3/00 D
B05D1/36 Z
B05C5/00 101
B05C11/10
B41J2/01 205
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022039423
(22)【出願日】2022-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】塩田 智広
(72)【発明者】
【氏名】浅井 一夫
【テーマコード(参考)】
2C056
4D075
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
2C056EA08
2C056EB27
2C056EB40
2C056EC79
2C056FA13
4D075AC06
4D075AC09
4D075AC88
4D075AC91
4D075AE02
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA04
4D075DA06
4D075DB13
4D075DB31
4D075DC19
4D075DC21
4D075DC22
4D075EA05
4F041AA02
4F041AA05
4F041AB01
4F041BA01
4F041BA10
4F041BA13
4F041BA23
4F042AA02
4F042AA06
4F042AB00
4F042BA08
4F042BA12
4F042CB07
4F042DH09
(57)【要約】
【課題】不良ノズルが発生した場合でも塗布ムラが形成されるのを抑えることができる塗布膜形成方法及びインクジェット塗布装置を提供する。
【解決手段】基材上の膜形成領域にインクジェット法により液滴を吐出して塗布膜を形成する塗布膜形成方法であって、液滴を吐出する複数のノズルのうち、不良ノズルを検出する不良ノズル検出工程と、不良ノズル検出工程により検出された不良ノズルにより形成されるべき膜形成領域である欠膜形成領域に、予め正常ノズルで液滴を吐出することにより膜形成を行うプレ膜形成工程と、不良ノズルが吐出すべき着弾位置以外の領域に膜形成を行う本塗布工程と、をこの順に行うように構成する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上の膜形成領域にインクジェット法により液滴を吐出して塗布膜を形成する塗布膜形成方法であって、
液滴を吐出する複数のノズルのうち、不良ノズルを検出する不良ノズル検出工程と、
前記不良ノズル検出工程により検出された不良ノズルにより形成されるべき膜形成領域である欠膜形成領域に、予め正常ノズルで液滴を吐出することにより膜形成を行うプレ膜形成工程と、
前記不良ノズルが吐出すべき着弾位置以外の領域に膜形成を行う本塗布工程と、
をこの順に行うことを特徴とする塗布膜形成方法。
【請求項2】
前記欠膜形成領域は、前記不良ノズルが吐出すべき着弾位置で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の塗布膜形成方法。
【請求項3】
前記欠膜形成領域は、前記不良ノズルが吐出すべき着弾位置を中心とした所定領域で形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の塗布膜形成方法。
【請求項4】
基材を載置するステージと、
前記ステージに載置された基材に対し相対的に移動しつつ、基材上の膜形成領域に液滴を吐出して塗布膜を形成する液滴ユニットと、
前記ステージと前記液滴ユニットとを制御する制御装置と、
を有するインクジェット塗布装置であって、
前記制御装置は、液滴を吐出する複数のノズルのうち、不良ノズルを検出する不良ノズル検出モードと、
前記不良ノズル検出処理により検出された不良ノズルにより形成されるべき膜形成領域である欠膜形成領域に、予め正常ノズルで液滴を吐出することにより膜形成を行うプレ膜形成モードと、
前記不良ノズルが吐出すべき着弾位置以外の領域に膜形成を行う本塗布モードと、
を行うことを特徴とするインクジェット塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材上に液滴を吐出して塗布膜を形成する塗布膜形成方法及びインクジェット塗布装置であって、特に塗布ムラを抑えることができる塗布膜形成方法及びインクジェット塗布装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガラスやフィルム等の基材上にインクジェット法により液滴を吐出し、線分、矩形状等、様々な形状の塗布膜(膜パターンともいう)を形成することが望まれている。例えば、プリント基板やパッケージ基板のような配線基板(基材)における配線パターン、パワー半導体の絶縁膜パターンは、インクジェット装置を用いることにより、薄い膜パターン(薄膜)を形成することが検討されている。
【0003】
このインクジェット塗布は、
図9(a)に示すようなインクジェット塗布装置により行われる。すなわち、インクジェット塗布装置は、基材Wを載置するステージ100と、塗布材料である液滴を吐出する複数のノズル104(
図10参照)を有する塗布ユニット101とが備えられており、この塗布ユニット101がステージ100上の基材Wに対して移動しつつ液滴を吐出することにより塗布膜Cが形成されるようになっている(
図9(b))。
【0004】
具体的には、塗布ユニット101は、基材Wに対して相対的に主走査方向(図においてX軸方向)に移動するガントリ部101aを有しており、このガントリ部101aに複数のノズル104を有するヘッドユニット102が設けられている。このヘッドユニット102は、
図10(a)に示すように、複数のノズル104を有するヘッドモジュール103が配列されて形成されている。このヘッドモジュール103は、主走査方向(X軸方向)と直交する副走査方向(Y軸方向)に配列ピッチtでノズル104が配列されている。すなわち、X軸方向から見て、ノズル104がY軸方向に等間隔で配列されるようになっている(
図10(b))。
【0005】
そして、すべてのノズル104には、インクを吐出すべき着弾位置が予め設定されており、それぞれのノズル104が、設定された着弾位置に位置した時に液滴が吐出されるようになっている。具体的には、例えば平面状の膜パターンを形成する場合には、着弾位置は、基材W上に格子状に設定されており、それぞれのノズル104が、着弾位置のX軸位置に位置したときに液滴が吐出されることにより、そのX軸位置において、Y軸方向に延びる直線状の膜が形成される。そして、基材Wに対してガントリ部101aを相対的にX軸方向に1回移動させて所定の着弾位置に液滴を吐出させることにより、直線状の膜がX軸方向に連続的に形成されて、基材W上に一様で平坦な塗布膜Cが形成される(
図11(a))。
【0006】
ここで、ヘッドユニット102に不良ノズル104b(
図12参照。不吐出、吐出不良含む)が存在すると、
図11(b)に示すように、不良ノズル104bが存在した位置での塗布材料が不足することから、塗布膜Cを形成する膜C’の間に主走査方向に材料が不足する領域(未塗布領域f)が形成されてしまう。この未塗布領域fが形成されると、筋状のムラの要因となり、部分的に塗布膜の厚さ寸法基準をクリアできないという塗布ムラの問題が生じる。そのため、不良ノズル104bが発生した場合には、不良ノズル104bにより形成された未塗布領域fに対して、再度、ヘッドユニット102を走査して、ヘッドユニット102内の正常ノズル104aから液滴の補充を行って未塗布領域fを埋めるリカバリー塗布が行われ、全体として一様な塗布膜Cが形成されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、未塗布領域fに正常ノズル104aによりリカバリー塗布する従来の方法では、未塗布領域fを完全にはなくすことができないという問題があった。すなわち、
図12(b)に示すように、未塗布領域fに液滴を吐出して補充を行うと、補充のために吐出された液滴が未塗布領域fを形成する周囲の膜C’に表面張力により吸収されてしまう。そのため、未塗布領域fが形成された後、リカバリー塗布のために吐出した液滴105では、未塗布領域fの窪みを埋めることができず、未塗布領域fを平坦化することができないという問題があった。
【0009】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、不良ノズルが発生した場合でも塗布ムラが形成されるのを抑えることができる塗布膜形成方法及びインクジェット塗布装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明の塗布膜形成方法及びインクジェット塗布装置は、基材上の膜形成領域にインクジェット法により液滴を吐出して塗布膜を形成する塗布膜形成方法であって、液滴を吐出する複数のノズルのうち、不良ノズルを検出する不良ノズル検出工程と、前記不良ノズル検出工程により検出された不良ノズルにより形成されるべき膜形成領域である欠膜形成領域に、予め正常ノズルで液滴を吐出することにより膜形成を行うプレ膜形成工程と、前記不良ノズルが吐出すべき着弾位置以外の領域に膜形成を行う本塗布工程と、をこの順に行うことを特徴としている。
【0011】
上記塗布膜形成方法及びインクジェット塗布装置によれば、プレ膜形成工程により、本来、不良ノズルにより形成されるべき膜形成領域である欠膜形成領域に、予め膜(プレ膜)を形成し、その後、本塗布工程が行われることにより、欠膜形成領域に窪みが形成されるのを抑えることができる。すなわち、予めプレ膜が形成されることにより、欠膜形成領域にすでに膜が形成されていることに加え、そのプレ膜が、次の本塗布工程により欠膜形成領域の周囲に形成される膜同士を繋げる役割を果たすと考えられることにより、従来のように未塗布領域が形成された後、液滴を追加する方法に比べて、欠膜形成領域に窪みが形成されづらくなり、塗布ムラが形成されるのを抑えることができる。
【0012】
また、前記欠膜形成領域は、前記不良ノズルが吐出すべき着弾位置で形成されている構成にしてもよい。
【0013】
この構成によれば、欠膜形成領域が着弾位置とされるため、プレ膜形成工程において、予め不良ノズルにより形成される未塗布領域に確実にプレ膜を形成することができる。
【0014】
また、前記欠膜形成領域は、前記不良ノズルが吐出すべき着弾位置を中心とした所定領域で形成されている構成にしてもよい。
【0015】
この構成によれば、プレ膜が着弾位置からある一定の幅を持った領域に形成されるため、欠膜形成領域の周囲に形成される膜同士を確実に繋げることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の塗布膜形成方法及びインクジェット塗布装置によれば、不良ノズルが発生した場合でも塗布ムラが形成されるのを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明のインクジェット塗布装置を概略的に示す側面図である。
【
図2】上記インクジェット塗布装置の上面図である。
【
図3】インクジェットヘッド部を示す図であり、(a)はヘッドモジュールの配列を示す図であり、(b)はノズル配置を示す図である。
【
図4】欠膜形成領域を仮想的に示す図であり、(a)は欠膜形成領域が線状である場合を示す図であり、(b)は欠膜形成領域が円形である場合を示す図である。
【
図5】塗布膜が形成される状況を説明するための図であり、(a)はプレ膜形成工程が行われた状態を示す図、(b)はプレ膜形成後に本塗布工程が行われた状態を示す図である。
【
図6】上記インクジェット塗布装置の塗布動作を示すフローチャートである。
【
図7】基材上にプレ膜が形成された状態を示す図であり、(a)は上から見た図、(b)はX軸方向から見た図である。
【
図8】塗布膜が形成された状態を示す図であり、(a)は基材全体を上から見た図、(b)はプレ膜と、その両隣に形成された膜が馴染み合う状態を示す図、(c)は(b)の状態から一体となって塗布膜が形成された状態を示す図である。
【
図9】従来のインクジェット塗布装置を概略的に示す図であり、(a)は、側面図、(b)は上面図である。
【
図10】インクジェットヘッド部を示す図であり、(a)はヘッドモジュールの配列を示す図であり、(b)はノズル配置を示す図である。
【
図11】未塗布領域が形成された塗布膜を含む塗布膜が形成された状態を示す図であり、(a)は基材全体を上から見た図、(b)はX軸方向から見た図である。
【
図12】塗布膜が形成される状態を説明するための図であり、(a)は不良ノズルにより未塗布領域が形成される状態を示す図であり、(b)はリカバリー塗布が行われた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の塗布膜形成方法及びインクジェット塗布装置に係る実施の形態について図面を用いて説明する。
【0019】
図1は、インクジェット塗布装置の一実施形態を示す側面図であり、
図2は、インクジェット塗布装置の上面図である。
【0020】
インクジェット塗布装置は、
図1、
図2に示すように、基材Wを載置するステージ10と、基材Wに液滴D(塗布材料)を塗布する液滴ユニット2とを有しており、液滴ユニット2がステージ10に載置された基材W上を移動しつつ、液滴D(塗布液とも言う)を吐出することにより、基材W上に塗布膜Cが形成される。
【0021】
なお、以下の説明では、この液滴ユニット2が移動する方向をX軸方向(主走査方向)、これと水平面上で直交する方向をY軸方向(副走査方向、又は、幅方向)、X軸およびY軸方向の双方に直交する方向をZ軸方向として説明を進めることとする。
【0022】
インクジェット塗布装置は、基台1を有しており、この基台1上にステージ10、液滴ユニット2が設けられている。具体的には、基台1上にステージ10が設けられており、このステージ10をY軸方向に跨ぐように液滴ユニット2が設けられている。
【0023】
ステージ10は、基材Wを載置するものであり、載置された基材Wが水平な姿勢を維持した状態で載置できるようになっている。具体的には、ステージ10の表面は、平坦に形成されており、その表面には、吸引孔が複数形成されている。この吸引孔には真空ポンプが接続されており、ステージ10の表面に基材Wを載置した状態で真空ポンプを作動させることにより、吸引孔に吸引力が発生し、基材Wが水平な姿勢でステージ10の表面に吸着保持できるようになっている。
【0024】
また、液滴ユニット2は、基材W上に塗布材料である液滴Dを着弾させて塗布するものであり、塗布材料を吐出するインクジェットヘッド部21と、このインクジェットヘッド部21を支持するガントリ部22とを有している。
【0025】
このガントリ部22は、ステージ10のY軸方向両外側に配置される脚部22aと、これらの脚部22aを連結しY軸方向に延びるビーム部材22bとを有する略門型形状に形成されている。そして、このビーム部材22bにインクジェットヘッド部21が取付けられており、ガントリ部22は、ステージ10をY軸方向に跨いだ状態でX軸方向に移動可能に取り付けられている。本実施形態では、基台1のY軸方向両端部分にはそれぞれX軸方向に延びるレール(不図示)が設置されており、脚部22aがこのレールにスライド自在に取り付けられている。そして、脚部22aにはリニアモータが取り付けられており、このリニアモータを駆動制御することにより、ガントリ部22がX軸方向に移動し、任意の位置で停止できるようになっている。
【0026】
また、リニアモータには、エンコーダが設けられており、エンコーダからの周期的な駆動パルス信号により、インクジェットヘッド部21のX軸方向の位置を把握することができる。すなわち、エンコーダと後述の制御装置(コントローラ)とが接続されており、エンコーダからの駆動パルス信号を受信した制御装置により、インクジェットヘッド部21のX軸上の位置が検出されるようになっている。
【0027】
また、ビーム部材22bは、両脚部22aを連結する柱状部材である。このビーム部材22bには、インクジェットヘッド部21が取付けられている。具体的には、ビーム部材22bのX軸方向一方側の側面に、インクジェットヘッド部21が取り付けられており、このインクジェットヘッド部21に設けられたノズル40(
図3参照)がステージ10の表面に向く姿勢で取付けられている。したがって、ガントリ部22がX軸方向に移動又は停止するにしたがって、インクジェットヘッド部21もそれに付随してX軸方向に移動又は停止を行うことができ、ガントリ部22の移動量を調節することにより、ステージ10の表面に載置された基材W上にインクジェットヘッド部21を位置させて基材W上に塗布材料ある液滴Dを吐出できるようになっている。
【0028】
また、インクジェットヘッド部21は、複数のノズル40を一体化させたものである。本実施形態では、インクジェットヘッド部21は、複数のノズル40を有しており、それぞれのノズル40から液滴Dを吐出できるようになっている。
【0029】
インクジェットヘッド部21は、
図3(a)に示すように、ノズル40を有する複数のヘッドモジュール31を備えている。本実施形態では、複数のヘッドモジュール31がY軸方向(副走査方向)に沿って配列されており、塗布方向に対して直交する方向に配置されている。また、ヘッドモジュール31は、複数のノズル40を有しており、ノズル40が一方向に所定の配列ピッチtで整列した状態で設けられている(
図3(b))。
【0030】
また、ヘッドモジュール31は、それぞれが互いに重複する部分を有するようにずらして配置されている。
図3(a)の例では、隣接するヘッドモジュール31がX軸方向に交互にずらして配置されている。すなわち、これらのヘッドモジュール31は、ノズル40の配置間隔とヘッドモジュール31の両端部分とでは寸法が異なっているため、この両端部分の寸法分を相殺できるようにX軸方向にずらしつつY軸方向に配列される。すなわち、インクジェットヘッド部21は、X軸方向に見て通常ノズル40がY軸方向に等間隔で配置されており、インクジェトヘッド部21全体としてX軸方向に見て、すべての通常ノズル40がY軸方向に沿って一定の配列ピッチで配列され、X軸方向から見てY軸方向に亘って等間隔で配置されている。これにより、
図2に示すように、ガントリ部22がX軸方向に移動することにより、1回の走査で基材W上の膜形成領域Sすべてに液滴Dを着弾させることができる。
【0031】
また、上記インクジェット塗布装置は、制御装置を有している。制御装置は、上述した各種ユニットの駆動を制御するものであり、予め記憶されたプログラムに従って一連の塗布動作を実行すべく、各ユニットの駆動装置を駆動制御するとともに、塗布動作に必要な各種演算を行うものである。本実施形態では、制御装置には、平坦状の一様な塗布膜Cを形成する塗布プログラムが記憶されている。そして、制御装置には、塗布膜Cを形成するために必要な処理モードが備えられており、本実施形態では、不良ノズル検出モード、プレ膜形成モード、本塗布モードが記憶されている。すなわち、これらのモードを実行することにより、不良ノズル40b(
図5(b)参照)が発生した場合であっても、不良ノズル40bに起因する塗布ムラを抑え、平坦な塗布膜Cを形成することができる。
【0032】
不良ノズル検出モードは、インクジェットヘッド部21の各ノズル40に対して不良ノズル40b(不吐出、吐出不良含む)の有無を確認するためのモードである。具体的には、塗布膜C形成前に吐出状態が検査され、例えば、テストパターンフィルム(不図示)上にすべてのノズル40から液滴Dを着弾させ、着弾された液滴Dの画像情報から形状、位置が確認され、不良ノズル40bの有無が判断される。
【0033】
ここで、不良ノズル検出モードにより不良ノズル40bが検出されると、本来、この不良ノズル40bが正常であった場合に吐出される着弾位置Pに液滴Dが吐出されないため、膜が欠けた領域(塗布液が不足する領域)、すなわち、未塗布領域が発生する。そのため、塗布膜Cを形成するための着弾位置データであるマッピングデータにおいて、不良ノズル40bが吐出すべき着弾位置Pに不良ノズル40bに代わって液滴Dを吐出する代用ノズル40cが正常ノズル40aから選定される。この代用ノズル40cは、不良ノズル40b、1本に対して、1本でも複数本でもよく、タクトタイムの観点から塗布膜Cを効率よく形成できるように代用ノズル40cが選定される。
【0034】
ここで、欠膜形成領域Rは、未塗布領域の発生を抑えるために、予め膜(プレ膜E)を形成するための設定領域である。この欠膜形成領域Rは、不良ノズル40bが正常ノズル40aであった場合の着弾位置Pに設定されてもよいが、本実施形態では、不良ノズル40bの着弾位置Pを中心とした所定の幅を持つ領域として設定されている。ここで、
図4は、欠膜形成領域Rを仮想的に示す図であり、斜線部分は、プレ膜E形成後に正常ノズル40aで形成される膜C’を示しており、これらの膜C’の間に欠膜形成領域Rが形成されている。また、
図4(a)の円形は着弾位置Pを示している。本実施形態では、欠膜形成領域Rは、
図4(a)に示すように、本来の不良ノズル40bの着弾位置P(実線の円形)を中心として、その両隣に1ノズル分の着弾位置P’(破線の円形)が含まれる領域として設定されている。これにより、正常ノズル40aで形成される両隣の膜C’同士と馴染みやすくなり、膜同士を確実に繋げることができる。なお、本実施形態では、
図4(a)において、実線で示された着弾位置Pには、不良ノズル40bの代用ノズル40cで液滴Dを吐出するが、破線で示された着弾位置Pには、その代用ノズル40cを用いてもよいが、タクトタイムの関係で代用ノズル40c以外の正常ノズル40a(選定ノズル40dという)、例えば代用ノズル40cの両隣に位置する正常ノズル40aが別途、選定ノズル40dとして選択される。
【0035】
プレ膜形成モードは、塗布膜Cを形成する前に、予め、欠膜形成領域Rに膜(プレ膜E)を形成するためのモードである。すなわち、選定された代用ノズル40cにより、不良ノズル40bが吐出すべき着弾位置Pに液滴Dを吐出してプレ膜Eが形成される。本実施形態では、欠膜形成領域Rが所定領域に設定されているため、代用ノズル40c及び選定ノズル40dにより欠膜形成領域Rに液滴Dが吐出され、プレ膜Eが形成される(
図5(a))。
【0036】
本塗布モードは、不良ノズル40bが吐出すべき着弾位置P以外の領域に膜を形成するモードである。具体的には、不良ノズル40b以外の正常ノズル40aから、マッピングデータに従って、それぞれの着弾位置Pに液滴Dが吐出される。すなわち、
図4(a)の斜線領域における着弾位置P(不図示)にノズル40から液滴Dを吐出して膜を形成する。そして、本来、不良ノズル40bの着弾位置Pの隣の着弾位置P’にも液滴Dが吐出されることにより、液滴D同士が馴染み、形成される膜C’(
図4(a)斜線領域の膜)同士がプレ膜Eを介して連結される(
図5(b))。これにより、基材W上には平坦な塗布膜Cが形成される。
【0037】
次に、本実施形態のインクジェット塗布装置の塗布膜形成方法について
図6のフローチャートに基づいて説明する。
【0038】
まず、ステップS1において、不良ノズル検出工程が行われる。具体的には、インクジェットヘッド部21の全ノズル40からテストパターンフィルム(不図示)上に液滴Dを吐出し、吐出された液滴Dの画像情報から不良ノズル40bの有無が判断される。そして、不良ノズル40bが検出された場合、この不良ノズル40bの着弾位置Pに液滴Dを吐出する代用ノズル40cが選定される。
【0039】
次に、ステップS2において、基材搬入工程が行われる。具体的には、基材Wがステージ10上に供給されると、基材Wが所定位置に位置決めされてステージ10上に吸着固定される。そして、搬入された基材Wデータに基づいて、当該基材Wのマッピングデータが演算される。欠膜形成領域Rに形成されるプレ膜Eのマッピングデータと、欠膜形成領域R以外の領域に形成される膜のマッピングデータとが演算され、プレ膜形成モード、及び、本塗布モードの着弾位置Pと、その着弾位置Pに吐出させるノズル40の選定が行われる。
【0040】
次に、ステップS3において、塗布工程が行われる。すなわち、ステップS31、ステップS32が順次実行されることにより、基材W上に塗布膜Cが形成される。
【0041】
まず、ステップS31により、プレ膜形成工程が行われる。具体的には、マッピングデータに基づいて、インクジェットヘッド部21を走行させつつ、代用ノズル40c及び選定ノズル40dから液滴Dを吐出させることにより、基材Wの欠膜形成領域Rにプレ膜Eが形成される(
図5(a))。なお、本実施形態では、塗布膜C形成領域において、
図7(a)に示すように、X軸方向に延びる形状のプレ膜Eが形成される。
【0042】
次に、ステップS32により、本塗布工程が行われる。具体的には、マッピングデータに基づいて、不良ノズル40bが吐出すべき着弾位置P以外の領域に、正常ノズル40aを用いて液滴Dを吐出し、膜を形成する。すなわち、予め形成されたプレ膜Eと隣接するように、不良ノズル40bが吐出すべき着弾位置P以外の着弾位置Pに正常ノズル40aで液滴Dが吐出されることにより膜が形成される(
図8(a))。そして、本実施形態では、不良ノズル40bが吐出すべき着弾位置Pの隣に位置する両隣の着弾位置Pにも液滴Dが吐出されるため、プレ膜Eと液滴Dが馴染みやすくなり、欠膜形成領域Rの両隣に形成される膜C’同士が連結されやすくなる(
図8(b))。これにより、欠膜形成領域Rの両隣に形成される膜C’同士が互いに引き合って一体化することにより、不良ノズル40bが吐出すべき着弾位置Pに窪みが形成されることが抑制され、平坦な塗布膜Cが形成される。
【0043】
次に、ステップS4により、基材搬出工程が行われる。すなわち、基材W上の膜形成領域Sに膜パターンCが形成されると、ロボットハンド等により、基材Wがステージ10から搬出される。
【0044】
このように、上記実施形態における塗布膜形成方法及びインクジェット塗布装置によれば、プレ膜形成工程により、本来、不良ノズル40bにより形成されるべき膜形成領域Sである欠膜形成領域Rに、予め膜(プレ膜E)を形成し、その後、本塗布工程が行われることにより、欠膜形成領域Rに窪みが形成されるのを抑えることができる。すなわち、予めプレ膜Eが形成されることにより、欠膜形成領域Rにすでに膜が形成されていることに加え、そのプレ膜Eが、次の本塗布工程により欠膜形成領域Rの周囲に形成される膜C’同士を繋げる役割を果たすと考えられることにより、従来のように未塗布領域が形成された後、液滴Dを追加する方法に比べて、欠膜形成領域Rに窪みが形成されづらくなり、塗布ムラが形成されるのを抑えることができる。
【0045】
また、上記実施形態では、液滴ユニット2が1スキャンで塗布膜Cが形成され、欠膜形成領域RがX軸方向に延びる直線形状である場合について説明したが、インクジェットヘッド部21がX軸方向及びY軸方向に複数回スキャン移動して塗布膜Cが形成されるような場合、すなわち、欠膜形成領域Rが点状に形成される場合にも適用することができる。この場合、欠膜形成領域Rは、例えば、
図4(b)に示すように、本来の不良ノズル40bの着弾位置P(実線の円形)を中心として、その周囲に1ノズル分の着弾位置P’(破線の円形)が含まれる領域として設定する。これにより、中心に位置する液滴D(プレ膜E)と、その周囲の膜が馴染むことにより、欠膜形成領域Rに窪みが形成されるのを抑えることができる。
【0046】
また、上記実施形態では、欠膜形成領域Rについて、不良ノズル40bが吐出すべき着弾位置Pを中心とした所定領域で形成される例について説明したが、所定領域を設けず、欠膜形成領域Rが不良ノズル40bが吐出すべき着弾位置Pそのものであってもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、欠膜形成領域Rの所定領域が、不良ノズル40bが吐出すべき着弾位置Pの両隣に1ノズル分の着弾位置Pに設定される例について説明したが、2ノズル、3ノズル分の着弾位置Pに設定されてもよく、着弾位置Pに設定されない領域を設定してもよい。ただ、欠膜形成領域Rの設定領域を広げすぎると、窪みを抑えきれない虞があるため、窪みが形成されないように、適宜調整して設定する必要がある。
【符号の説明】
【0048】
2 液滴ユニット
10 ステージ
21 インクジェットヘッド部
22 ガントリ部
40 ノズル
40a 正常ノズル
40b 不良ノズル
40c 代用ノズル
40d 選定ノズル
C 塗布膜
E プレ膜
P、P’ 着弾位置
R 欠膜形成領域
S 膜形成領域
W 基材