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  • 特開-排ガス浄化用触媒 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134093
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】排ガス浄化用触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/62 20060101AFI20230920BHJP
   B01J 27/055 20060101ALI20230920BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20230920BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20230920BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
B01J23/62 A ZAB
B01J27/055 A
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
F01N3/10 A
F01N3/28 301P
F01N3/28 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022039443
(22)【出願日】2022-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000104607
【氏名又は名称】株式会社キャタラー
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅也
(72)【発明者】
【氏名】尾上 亮太
(72)【発明者】
【氏名】藤田 希未
(72)【発明者】
【氏名】高須 亮佑
(72)【発明者】
【氏名】白山 陽大
(72)【発明者】
【氏名】大野原 佑
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AA02
3G091AB02
3G091AB03
3G091AB04
3G091AB05
3G091AB13
3G091BA14
3G091GA01
3G091GA02
3G091GA04
3G091GA06
3G091GA17
3G091GA18
3G091GB01X
3G091GB05W
3G091GB06W
3G091GB07W
3G091GB17X
3G091HA10
3G091HA16
3G091HA20
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4G169EC28
4G169EE06
4G169EE09
4G169FA06
4G169FC08
(57)【要約】
【課題】NOx吸蔵特性が高い排ガス浄化用触媒を提供すること。
【解決手段】ここに開示される排ガス浄化用触媒は、基材11と、触媒層20とを備える。触媒層20は、少なくとも2層の積層構造を有している。第1層21は、排ガス浄化用触媒の排ガス流入側端部10aから排ガス流出側方向に向けて形成される上流側触媒層21aと、排ガス浄化用触媒の排ガス流出側端部10bから排ガス流入側方向に向けて形成される下流側触媒層21bと、から構成される。上流側触媒層21aと下流側触媒層21bは、それぞれ、少なくとも触媒金属としてPdおよび/またはRhと、Ceを含むOSCと、を含む。第2層22は、少なくとも触媒金属としてPtと、NOx吸蔵材と、を含む。ここで、第1層21において、上流側触媒層21a中に含まれるCeO量をC1、下流側触媒層21b中に含まれるCeO量をC2としたときに、C1<C2の関係を満たす。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気管に配置され、該内燃機関から排出される排ガスを浄化する排ガス浄化用触媒であって、
基材と、該基材の表面に形成された触媒層とを備え、
前記触媒層は、前記基材の表面に近い方を第2層とし相対的に遠い方を第1層とする少なくとも2層の積層構造を有しており、
前記第1層は、前記排ガス浄化用触媒の排ガス流入側端部から排ガス流出側方向に向けて形成される上流側触媒層と、前記排ガス浄化用触媒の排ガス流出側端部から排ガス流入側方向に向けて形成される下流側触媒層と、から成り、
前記上流側触媒層および、前記下流側触媒層は、各々少なくとも触媒金属としてPdおよび/またはRhと、Ceを含むOSC材と、を含み、
前記第2層は、少なくとも触媒金属としてPtと、NOx吸蔵材と、を含んでおり、
ここで、前記第1層において、前記上流側触媒層および、前記下流側触媒層に含まれる前記OSC材中に含まれるCe量を酸化物換算した値をCeO量としたときに、前記上流側触媒層中に含まれるCeO量をC1、前記下流側触媒層中に含まれるCeO量をC2としたときに、C1<C2の関係を満たす、排ガス浄化用触媒。
【請求項2】
前記C1に対する前記C2の比(C2/C1)が1.2~3である、請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項3】
前記NOx吸蔵材は、Ba、Cs、Sr、K、Ca、およびMgからなる群から選択される少なくとも一種を含む、請求項1または2に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項4】
前記第2層のコート量は、前記基材の体積1L当たり、100g/L以上155g/L以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項5】
前記第2層のNOx吸蔵材の含有量が10g/L以上40g/L以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項6】
前記第2層が前記排ガス流出側端部から前記排ガス流入側方向に向かって、前記基材の長さの75%~100%に当たる部分に形成されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項7】
前記触媒層は、前記第2層よりもさらに基材の表面に相対的に近い方に第3層を有しており、
前記第3層は、Pd、Pt、およびRhからなる群から選択される少なくとも一種を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化用触媒に関する。詳しくは、内燃機関の排気経路に配置され、該内燃機関から排出される排ガスを浄化する排ガス浄化用触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
車両などの内燃機関から排出される排ガスには、窒素酸化物(NOx)、炭化水素(HC:Hydro-Carbon)、一酸化炭素(CO)などの有害成分が含まれる。これら有害成分を排ガス中から効率よく反応・除去するために、従来から排ガス浄化用触媒が利用されている。排ガス浄化に関連する従来技術文献として、例えば特許文献1~3が挙げられる。
【0003】
例えば特許文献1には、1つまたは複数の白金族金属と、セリア含有材料と、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を含む第1層と、複数の貴金属と、セリア含有材料と、無機酸化物と、を含む第2層とを有し、第1層におけるセリア含有材料の含有量が第2層におけるセリア含有材料の含有量よりも多いNOx吸着触媒が開示されている。第1層と第2層とを有し、当該それぞれの層において、酸化機能とNOx吸蔵機能とを分離することにより、酸化活性とNOx吸蔵特性が向上することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2020-515393号公報
【特許文献2】特表2011-526203号公報
【特許文献3】特表2021-528247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年の車両には、内燃機関からのCO排出量の抑制を目的として、“Fuel Cut”(以下、「F/C」ともいう。)や、“Idling Stop”(車両の停車時に内燃機関の運転を停止すること。)等の燃料の消費自体を抑える内燃機関の駆動制御が行われている。例えばF/C後においては、排ガスの空燃比がリーン(すなわち、理論空燃比よりも酸素過剰の雰囲気)であるため触媒金属が酸化された状態にあり、NOxの浄化率が低下する。したがって、酸化機能とNOx吸蔵機能とを分離しただけでは、NOx吸蔵機能が好適に機能せず、酸化機能の低下も生じる虞があった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、NOx吸蔵特性が高い排ガス浄化用触媒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示される排ガス浄化用触媒は、内燃機関の排気管に配置され、該内燃機関から排出される排ガスを浄化する排ガス浄化用触媒である。基材と、該基材の表面に形成された触媒層とを備える。上記触媒層は、上記基材の表面に近い方を第2層とし相対的に遠い方を第1層とする少なくとも2層の積層構造を有している。上記第1層は、上記排ガス浄化用触媒の排ガス流入側端部から排ガス流出側方向に向けて形成される上流側触媒層と、上記排ガス浄化用触媒の排ガス流出側端部から排ガス流入側方向に向けて形成される下流側触媒層と、から成る。上流側触媒層とおよび、下流側触媒層は、各々少なくとも触媒金属としてPdおよび/またはRhと、Ceを含むOSC材と、を含む。上記第2層は、少なくとも触媒金属としてPtと、NOx吸蔵材と、を含む。ここで、上記第1層の上流側触媒層および下流側触媒層に含まれる上記OSC材中に含まれるCe量を酸化物換算した値をCeO量としたときに、上流側触媒層に含まれるCeO量をC1、下流側触媒層に含まれるCeO量をC2とする。このとき、C1とC2とは、C1<C2の関係を満たす。
【0008】
OSC材は、排ガスの空燃比がリーンであるときに排ガス中の酸素を吸蔵し、排ガスの空燃比がリッチ(すなわち、理論空燃比よりも燃料過剰の雰囲気)であるときに吸蔵されている酸素を放出するという、雰囲気変動を緩和する作用を有する成分である。上記排ガス浄化用触媒においては、Ceを含むOSC材に含まれるCeO量を調整することにより、排ガスに含まれる、HC、CO、およびNOxを効率よく浄化することができる。特に、排ガスの空燃比がリーンであるときにも、NOxのエミッションを好適に低減させることができる。
【0009】
好ましい一態様では、上記C1に対する上記C2の比(C2/C1)が1.2~3である。これにより、さらに排ガスに含まれる、HC、CO、およびNOxを効率よく浄化することができる。
【0010】
好ましい一態様では、上記NOx吸蔵材は、Ba、Cs、Sr、K、Ca、およびMgからなる群から選択される少なくとも一種を含む。また、上記第2層のコート量は、上記基材の体積1L当たり、100g/L以上155g/L以下であってもよい。また、上記第2層に含まれるNOx吸蔵材の含有量が10g/L以上40g/L以下であってもよい。さらに、上記第2層が上記排ガス流出側端部から上記排ガス流入側方向に向かって、上記基材の長さの75%~100%に当たる部分に形成されていてもよい。これにより、NOx浄化性能をさらに向上させることができる。
【0011】
好ましい一態様では、上記触媒層は、上記第2層よりもさらに基材の表面に相対的に近い方に第3層を有している。上記第3層は、Pd、Pt、およびRhからなる群から選択される少なくとも一種を含んでいてもよい。これにより、排ガスに含まれる、HC、CO、およびNOxを効率よく浄化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態に係る排ガス浄化システムの模式図である。
図2】一実施形態に係る排ガス浄化用触媒を模式的に示す斜視図である。
図3】一実施形態に係る排ガス浄化用触媒における触媒層の構成を模式的に示す部分断面図である。
図4】一実施形態に係る排ガス浄化用触媒における他の一例の触媒層の構成を模式的に示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略または簡略化することがある。各図における寸法関係(長さ、幅、厚みなど)は、実際の寸法関係を必ずしも反映するものではない。また、本明細書において範囲を示す「A~B」(A,Bは任意の数値)の表記は、A以上B以下の意と共に、「好ましくはAより大きい」および「好ましくはBより小さい」の意を包含する。
【0014】
<排ガス浄化システム>
図1は、排ガス浄化システム1の模式図である。排ガス浄化システム1は、内燃機関(エンジン)2と、排ガス浄化装置3と、を備えている。排ガス浄化システム1は、内燃機関2から排出される排ガスに含まれる有害成分、例えば、HC、CO、NOxを排ガス浄化装置3で浄化するものである。なお、図1の矢印は、排ガスの流動方向を示している。また、以下の説明では、排ガスの流れに沿って、内燃機関2に近い側を上流側(流入側、フロント側ともいう。)、内燃機関2から遠ざかる側を下流側(流出側、リア側ともいう。)という。
【0015】
排ガス浄化装置3は、排気経路4と、エンジンコントロールユニット(Engine Control Unit:ECU)7と、センサ8と、第1触媒9と、第2触媒10と、を備えている。排気経路4は、排ガスが流通する排ガス流路である。本実施形態の排気経路4は、エキゾーストマニホールド5と、排気管6と、を備えている。エキゾーストマニホールド5の一端(上流側の端部)は、内燃機関2の排気ポート(図示せず)に接続されている。エキゾーストマニホールド5の他端(下流側の端部)は、排気管6に接続されている。排気管6の途中には、上流側から順に第1触媒9と第2触媒10とが配置されている。
【0016】
第1触媒9については従来と同様でよく、特に限定されない。第1触媒9は、例えば、排ガスに含まれるPMを除去するディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF:Diesel Particulate Filter);排ガスに含まれるHCやCOを浄化するディーゼル酸化触媒(DOC:Diesel Oxidation Catalyst);排ガスに含まれるNOx、HC、COを同時に浄化する3元触媒;通常運転時に(リーン条件下の時に)NOxを吸蔵し、燃料を多めに噴射した時に(リッチ条件下の時に)HC、COを還元剤としてNOxを浄化するNOx吸着還元(NSR:NOx Storage-Reduction)触媒;などであってもよい。第1触媒9は、例えば、第2触媒10に流入する排ガスの温度を上昇させる機能を有していてもよい。なお、第1触媒9は必須の構成ではなく、省略することもできる。
【0017】
第2触媒10は、SCR触媒である。第2触媒10は、ここに開示される排ガス浄化用触媒の一例である。第2触媒10の構成については、後述する。なお、第1触媒9と第2触媒10との配置は、任意に可変であってもよい。また、第1触媒9と第2触媒10との個数は特に限定されず、それぞれ複数個が設けられていてもよい。例えば第1触媒9として、上流側から順にDOCとDFPとを備えていてもよい。また、第2触媒10の下流側には、さらに図示しない第3触媒が配置されていてもよい。
【0018】
ECU7は、内燃機関2と排ガス浄化装置3とを制御する。ECU7は、内燃機関2や排ガス浄化装置3の各部位に設置されているセンサ(例えば、圧力センサ、酸素センサ、温度センサ等)8と、電気的に接続されている。センサ8で検知した情報は、入力ポート(図示せず)を介して電気信号としてECU7に受信される。ECU7は、例えば車両の運転状態や、内燃機関2から排出される排ガスの量、温度、圧力等の情報を受信する。ECU7は、例えば受信した情報に応じ、出力ポート(図示せず)を介して制御信号を送信する。ECU7は、内燃機関2の燃料噴射制御や点火制御、吸入空気量調節制御等の運転制御を実施する。また、ECU7は、内燃機関2の運転状態や内燃機関2から排出される排ガスの量などに応じて、排ガス浄化装置3の駆動と停止を制御する。なお、ECU7の構成については従来と同様でよく、特に限定されない。ECU7は、例えば、プロセッサや集積回路である。
【0019】
<排ガス浄化用触媒>
図2は、第2触媒10を模式的に示す斜視図である。図3は、排ガス浄化用触媒における触媒層20の構成を模式的に示す図であり、図4は、排ガス浄化用触媒における触媒層20の他の一例を模式的に示す図である。なお、図2図4の矢印は、排ガスの流れを示している。すなわち、図2では、左側が相対的に内燃機関2に近い排気経路4の上流側(フロント側)であり、右側が相対的に内燃機関2から遠い排気経路4の下流側(リア側)である。また、図2において、符号Xは、第2触媒10の筒軸方向を表している。第2触媒10は、筒軸方向Xが排ガスの流動方向に沿うように排気経路4に設置されている。以下では、筒軸方向Xにうち、一の方向X1を上流側(排ガス流入側、フロント側ともいう。)といい、他の方向X2を下流側(排ガス流出側、リア側ともいう。)という。
【0020】
第2触媒10は、排ガス中のNOxを浄化する機能を有する。第2触媒10は、ストレートフロー構造の基材11と、触媒層20(図3参照)と、を備えている。本実施形態においては、基材11は、ハニカム構造を有している。基材11は、筒軸方向Xに規則的に配列された複数のセル(空洞)12と、複数のセル12を仕切る隔壁(リブ)14と、を備えている。第2触媒10の一の方向X1の端部は、排ガスの流入側(上流側)の端部10aであり、他の方向X2の端部は、排ガスの流出側(下流側)の端部10bである。
【0021】
基材11は、第2触媒10の骨組みを構成するものである。基材11としては特に限定されず、従来この種の用途に用いられる種々の素材および形態のものが使用可能である。基材11は、例えば、コージェライト、チタン酸アルミニウム、炭化ケイ素等のセラミックスで構成されるセラミックス製であってもよいし、ステンレス鋼(SUS)、Fe-Cr-Al系合金、Ni-Cr-Al系合金等で構成される合金製であってもよい。本実施形態において、基材11の外形は、円筒形状である。ただし、基材11の外形は特に限定されず、例えば、楕円筒形状、多角筒形状、パイプ状、フォーム上、ペレット形状、繊維状等であってもよい。
【0022】
特に限定されるものではないが、基材11の筒軸方向Xに沿う長さ(全長)は、概ね10mm~500mm、例えば50mm~300mmであってもよい。また、基材11の体積は、概ね0.1L~10L、例えば1L~5Lであってもよい。なお、本明細書において、「基材の体積」とは、基材11自体の体積(純体積)に加えて、内部のセル12の容積を含んだ見かけの体積(嵩容積)をいう。
【0023】
セル12は、排ガスの流路となる。セル12は、筒軸方向Xに延びている。セル12は、基材11を筒軸方向Xに貫通する貫通孔である。セル12の形状、大きさ及び数等は、例えば第2触媒10に供給される排ガスの流量や成分などを考慮して設計することができる。セル12の筒軸方向Xに直交する断面の形状は特に限定されない。セル12の断面形状は、例えば正方形、平行四辺形、長方形、台形等の矩形や、その他の多角形(例えば三角形、六角形、八角形)、円形状等の種々の幾何学形状であってもよい。基材11には、セル12を区画する隔壁14が含まれる、隔壁14は、セル12に面し、隣り合うセル12の間を区切っている。特に限定されるものではないが、隔壁14の厚み(表面に直交する方向の寸法。以下同じ。)は、機械的強度を向上や、圧損を低減する観点から、概ね10μm~500μm、例えば20μm~100μmであってもよい。
【0024】
触媒層20は、基材11の表面、具体的には隔壁14の上に設けられている。ただし、触媒層20は、その一部またはその全部が、触媒層20の内部に浸透していてもよい。触媒層20は、典型的には連通した多数の空隙を有する多孔質体である。触媒層20は、排ガスを浄化する場である。第2触媒10に流入した排ガスは、第2触媒10の流路内(セル12)を流動している間に触媒層20と接触する。これにより、排ガス中の有害成分が浄化される。例えば排ガスに含まれるHCやCOは、触媒層20の触媒機能によって酸化され、水や二酸化炭素等に変換(浄化)される。また、例えばNOxは、触媒層20の触媒機能によって還元され、窒素に変換(浄化)される。
【0025】
ここに開示される触媒層20は、図3に示すように、基材11の表面に近い方を第2層22とし相対的に遠い方を第1層21とする少なくとも2つの層を有する積層構造に形成されている。また、第1層21は、排ガスの流動方向(図3の矢印参照)において、排ガス流入側の端部10aから排ガス流出側方向に向けて形成される上流側触媒層21aと、排ガス流出側の端部10bから排ガス流入側方向に向けて形成される下流側触媒層21bと、から構成される。ここに開示される技術では、第1層21の上流側触媒層21aおよび下流側触媒層21bは、それぞれ、少なくとも触媒金属としてパラジウム(Pd)および/またはロジウム(Rh)と、Ceを含むOSC材と、を含んでいる。第2層22は、少なくとも触媒金属として白金(Pt)と、NOx吸蔵材と、を含んでいる。そして、上流側触媒層21aおよび下流側触媒層21bに含まれるOSC材中に含まれるCe量を、酸化物換算した値をCeO量としたときに、該上流側触媒層21a中に含まれるCeO量をC1とし、下流側触媒層21b中に含まれるCeO量をC2とする。このとき、C1とC2は、C1<C2の関係を満たすように構成される。かかる構成によれば、排ガスに含まれる、HC、CO、およびNOxを効率よく浄化することができる。
【0026】
ここで開示される排ガス浄化用触媒の第1層21の上流側触媒層21aおよび下流側触媒層21bは、それぞれ、触媒金属としてPdおよび/またはRhを含んでいる。Pdは特に酸化触媒としての活性が高く、触媒層20においては、排ガス中の有害成分のうち、特にCOおよびHCに対して高い酸化作用を示す。また、酸化状態であっても活性が低下し難いという性質をもつ。一方、Rhは特に還元触媒としての活性が高く、触媒層20においては、排ガス中の有害成分のうち、特にNOxに対して高い還元作用を示す。Rhは、H生成能が高く、排ガス中の有害成分を効率よく浄化させることができる。したがって、第1層21において触媒金属としてPdおよび/またはRhを含むことにより、排ガスに含まれる、HC、CO、およびNOxを好適に浄化させることができる。
【0027】
また、ここに開示される技術では、必須の成分であるPdおよび/またはRhに加えて、種々の酸化触媒や還元触媒として機能し得る金属種を1種または2種以上含んでいてもよい。例えば、PdおよびRh以外の白金族、すなわち、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)等が挙げられる。また、触媒金属としては、銀(Ag)、金(Au)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)等の金属種を含んでいてもよい。
【0028】
触媒金属は、排ガスとの接触面積を高める観点から、十分に小さい粒子状であることが好ましい。触媒金属の平均粒子径は、概ね1nm~15nm、例えば10nm以下、さらには5nm以下であるとよい。なお、本明細書において、「平均粒子径」とは、透過電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)観察で求められる粒径の個数基準の平均値である。
【0029】
第1層21(すなわち、上流側触媒層21aおよび下流側触媒層21bの合計)の触媒金属の含有量(2種類以上の触媒金属を用いる場合には、使用した触媒金属の合計の含有量)は、酸化物換算で、基材11の体積1L当たり、0.5g/L以上であって、1g/L以上であることが好ましく、2g/L以上であることがより好ましい。触媒金属の含有量が多すぎる場合には、コストの面で不利である。このため、第1層21における触媒金属の含有量の上限値は、酸化物換算で、基材11の体積1L/L当たり、8g/L以下であって、7g/L以下であることが好ましく、6g/L以下であることがより好ましい。
【0030】
第1層21の上流側触媒層21aおよび下流側触媒層21bは、それぞれ、Ceを含むOSC(oxygen storage capacity)材を含んでいる。OSC材は、排ガスの空燃比がリーンであるときに排ガス中の酸素を吸蔵し、排ガスの空燃比がリッチであるときに吸蔵されている酸素を放出する機能(酸素吸蔵放出能)を有し、雰囲気変動を緩和する作用を有する成分である。OSC材としては、Ce(セリウム)を含む化合物であればよい。かかる化合物の具体例としては、酸素吸蔵能が高いセリア(CeO)を含む金属酸化物(Ce含有酸化物)が挙げられる。Ce含有酸化物は、セリアおよび、セリアとセリア以外の金属酸化物との複合酸化物(例えば、CeO-ZrO複合酸化物)のうち、少なくとも1種を含んでいてもよい。また、OSC材は、Ceを含む化合物であればよく、例えばジルコニウム、チタン、またはケイ素を主体として構成されていてもよい。OSC材にジルコニア(ZrO)が含有されている場合には、セリアの熱劣化を抑制できることからOSC材としては、CeO-ZrO複合酸化物が好ましい。
【0031】
CeO-ZrO複合酸化物の混合割合は、CeO/ZrO=0.1~0.9(好ましくは0.15~0.7、より好ましくは0.25~0.5)であるとよい。CeO-ZrO複合酸化物の混合割合が上記範囲内であることにより、好適な酸素吸蔵放出能を発揮させることができる。また、耐熱性を向上する観点から、CeO-ZrO系複合酸化物は、CeO以外の金属酸化物、例えば、希土類金属酸化物、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、遷移金属種等をさらに含む、単結晶体または多結晶体であってもよい。
【0032】
第1層21は、触媒金属を担持可能なCeを含むOSC材以外の金属酸化物を担持材料として含有していてもよい。かかる担持材料は、典型的には粉末状(粒子状)である。担持材料は、比表面積が大きい無機多孔質体であるとよい。担持材料としては、例えば、耐熱性に優れた金属酸化物や、その固溶体が好ましく用いられ得る。具体的には、酸化アルミニウム(アルミナ:Al)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化チタン(TiO)等の金属酸化物が挙げられる。担持材料の形状(外形)は特に限定されないが、より大きい比表面積を確保できるという観点から、粉末状のものが好ましく用いられ得る。例えば、担持材料として用いる粉末の平均粒子径は、例えば0.1μm~20μm(典型的には0.5μm~10μm、好ましくは1μm~7μm)程度であるとよい。なお、Ceを含むOSC材は、触媒金属の担持材料としても機能し得る。したがって、第1層21においては、上記した触媒金属は、OSC材に担持されていてもよい。
【0033】
第1層21における担持材料の含有量(2種類以上の担持材料を用いる場合には、使用した担持材料の合計の含有量)は、酸化物に換算して、基材11の体積1L当たり、60g/L~140g/Lであることが好ましく、80g/L~120g/Lであることがより好ましい。
【0034】
ここに開示される技術では、第1層21は、上記したように、排ガス流入側の端部10aから排ガス流出側方向に向けて形成される上流側触媒層21aと、排ガス流出側の端部10bから排ガス流入側方向に向けて形成される下流側触媒層21bと、から構成される。そして、上流側触媒層21aに含まれるOSC材中に含まれるCe量を、酸化物換算した値をCeO量としたときに、該上流側触媒層21a中に含まれるCeO量をC1とする。また、下流側触媒層21bに含まれるOSC材中に含まれるCe量を、酸化物換算した値をCeO量としたときに、下流側触媒層21b中に含まれるCeO量をC2とする。このとき、C1とC2は、C1<C2の関係を満たすように構成される。かかる構成によれば、排ガスに含まれる、HC、CO、およびNOxを効率よく浄化することができる。
【0035】
ここに開示される技術を限定する意図はないが、かかる効果が得られる理由は、以下のように推測される。排ガスの空燃比がリーン(すなわち、理論空燃比よりも酸素過剰の雰囲気)であるときには、上流側触媒層21aに含まれる触媒金属としてのPdおよび/またはRhが酸化された状態である。このため、上流側触媒層21aのCeO量を相対的に少なくすることにより、上流側触媒層21aにおける酸素の量を低下させ、触媒金属を活性化することができる。これにより、排ガスの空燃比がリーンであるときに、上流側触媒層21aおけるCO、HCの浄化効率を向上させることができる。上流側触媒層21aにおいて好適にCO、HCが浄化されることにより、後述する第2層22においてはHCやCOに阻害されることなく、NOを酸化し、NOx吸蔵材がNOxを吸蔵することができる。そして、エンジンが始動することにより排ガスの空燃比がリッチ(すなわち、理論空燃比よりも燃料過剰の雰囲気)となった際には、後述する第2層22に含まれるNOx吸蔵材に吸蔵されていたNOxが放出される。一般的に、排ガスの空燃比がリッチであるときにはNOxは効率よく浄化されるため、放出されたNOxは第1層21(特には下流側触媒層21b)において好適に浄化される。また、下流側触媒層21bにおいては、CeO量が相対的に多いことにより酸素が十分に供給されるため、COやHCを好適に浄化することができる。この結果、排ガスに含まれる、HC、CO、およびNOxを効率よく浄化することができ、NOx吸蔵特性を向上させることができる。
【0036】
上流側触媒層21aと下流側触媒層21bには、それぞれ、Ceを含むOSC材が含まれている。OSC材中に含まれるCe量を、酸化物換算した値をCeO量としたときに、上流側触媒層21a中に含まれるCeO量C1は、下流側触媒層21b中に含まれるCeO量C2よりも少なくなるように設定されている。例えば上流側触媒層21a中に含まれるCeO量C1は、基材の体積1L当たり、概ね0.5g/L以上、好ましくは1g/L以上、より好ましくは2g/L以上であって、概ね7g/L以下、好ましくは6g/L以下、より好ましくは5g/L以下であるとよい。また、下流側触媒層21b中に含まれるCeO量C2は、上流側触媒層21a中に含まれるCeO量C1よりも多くなるように設定されている。例えば下流側触媒層21b中に含まれるCeO量C2は、基材の体積1L当たり、概ね2g/L以上、好ましくは3g/L以上、より好ましくは4g/L以上であって、概ね9/Lg以下、好ましくは8g/L以下、より好ましくは7g/L以下、例えば6g/L以下であってもよい。
【0037】
上流側触媒層21a中に含まれるCeO量C1に対する下流側触媒層21b中に含まれるCeO量C2の比(C2/C1)は、特に限定されないが、例えば1.2以上(典型的には1.5以上、例えば1.8以上、好ましくは2以上)であって、5以下(好ましくは4.5以下、より好ましくは4以下、さらに好ましくは3以下)とするとよい。本発明者らの知見によれば、C2/C1が1よりも小さい場合(すなわち、上流側触媒層21a中に含まれるCeO量C1が下流側触媒層21b中に含まれるCeO量C2よりも多い場合)には、NOx浄化率が低下する。C2/C1の比を、上記範囲内とすることにより、酸素が好適に供給され、排ガス浄化用触媒のNOx吸蔵特性を向上させることができる。
【0038】
第1層21の上流側触媒層21aのコート量(成形量)は、特に限定されないが、例えば、基材の体積1L当たり、80g/L~120g/L(典型的には90g/L~110g/L)程度であることが好ましい。また、下流側触媒層21bのコート量(成形量)は、特に限定されないが、例えば、基材の体積1L当たり、80g/L~120g/L(典型的には90g/L~110g/L)程度であることが好ましい。コート量が少なすぎる場合には、触媒層20の浄化作用が低下する虞がある。一方で、コート量が多すぎる場合には、基材11のセル内を排気ガスが通過する際の圧力損失の上昇を招く虞がある。
【0039】
上流側触媒層21aは、排ガス浄化用触媒(基材)の排ガス流入側(上流側)の端部10aから排ガス流出側(下流側)方向に向けて形成されている。上流側触媒層21aの筒軸方向の長さLaは、基材11の筒軸方向の全長Lの長さよりも短ければよく、特に限定されないが、基材11の筒軸方向の長さLの10%以上(典型的には15%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上、例えば40%以上)であって、90%以下(典型的には85%以下、好ましくは80%以下、より好ましくは75%以下、例えば70%以下)に形成されている。図3に示す態様では、上流側触媒層21aの筒軸方向の長さLaは、上記排ガス浄化用触媒(基材)の排ガス流動方向の長さLのおおよそ50%(すなわち全長Lの1/2)に当たる部分に形成されている。これにより、第1層21の上流側触媒層21aと下流側触媒層21bとを顕著に異ならせることができ、ここに開示される技術の効果を高いレベルで発揮することができるため好ましい。
【0040】
下流側触媒層21bは、排ガス浄化用触媒(基材)の排ガス流出側(下流側)の端部10bから排ガス流入側(上流側)方向に向けて形成されている。下流側触媒層21bの筒軸方向の長さLbは、基材11の筒軸方向の全長Lの長さよりも短ければよく、特に限定されないが、基材11の筒軸方向の長さLの10%以上(典型的には15%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上、例えば40%以上)であって、90%以下(典型的には85%以下、好ましくは80%以下、より好ましくは75%以下、例えば70%以下)に形成されている。図3に示す態様では、下流側触媒層21bの筒軸方向の長さLbは、上記排ガス浄化用触媒(基材)の筒軸方向の長さLのおおよそ50%(すなわち全長Lの1/2)に当たる部分に形成されている。これにより、第1層21の上流側触媒層21aと下流側触媒層21bとを顕著に異ならせることができ、ここに開示される技術の効果を高いレベルで発揮することができるため好ましい。
【0041】
上流側触媒層21aの筒軸方向の長さLaと下流側触媒層21bの筒軸方向の長さLbとの合計(La+Lb)は、典型的にはL≦La+Lb<2Lであることが好ましく、L≦La+Lb<1.5Lであることがより好ましい。図3に示す態様では、La+Lb≒Lである。La+Lb≧Lとすることで、触媒層20を通らずに隔壁14を通り向ける排ガスがなくなるため、排ガスに含まれる有害成分を好適に浄化することができる。
言い換えれば、ここに開示される排ガス浄化用触媒では、筒軸方向の中央部において上流側触媒層21aと下流側触媒層21bとが一部重なり合った多層構造とすることもできる。その場合、CeO量が相対的に多い下流側触媒層21bを排ガスに接する表面側(基材11から相対的に遠い側)に配置することが好ましい。
【0042】
ここで開示される触媒層20の第2層22は、触媒金属として少なくともPtを含んでいる。Ptは、パラフィンとの反応性が高く、NO酸化活性が高いという性質を有している。排ガス中に含まれるHCやCOは、かかるPtのNO酸化活性を阻害し得る。したがって、上記した第1層21(特には第1層21の上流側触媒層21a)においてHCやCOをなるべく多く浄化しておくことにより、第2層22においてPtのNO酸化活性を維持することができる。
【0043】
また、ここに開示される技術の第2層22では、必須の成分であるPtに加えて、種々の酸化触媒や還元触媒として機能し得る金属種を1種または2種以上含んでいてもよい。例えば、Pt以外の白金族、すなわち、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)等が挙げられる。また、触媒金属としては、銀(Ag)、金(Au)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)等の金属種を含んでいてもよい。また、当該触媒金属は、排ガスとの接触面積を高める観点から、十分に小さい粒子状であることが好ましく、概ね1nm~15nm、例えば10nm以下、さらには5nm以下であるとよい。
【0044】
第2層22における触媒金属の含有量(2種類以上の触媒金属を用いる場合には、使用した触媒金属の合計の含有量)は、酸化物換算で、基材11の体積1L当たり、0.5g/L以上であって、1g/L以上であることが好ましく、2g/L以上であることがより好ましい。触媒金属の含有量が多すぎる場合には、コストの面で不利である。このため、第1層21における触媒金属の含有量の上限値は、酸化物換算で、基材11の体積1L当たり、8g/L以下であって、7g/L以下であることが好ましく、6g/L以下であることがより好ましい。
【0045】
上記触媒金属は、担持材料に担持されている。担持材料は、典型的には粉末状(粒子状)である。担持材料は、比表面積が大きい無機多孔質体であるとよい。担持材料としては、例えば、耐熱性に優れた金属酸化物や、その固溶体が好ましく用いられ得る。例えば、担持材料としては、酸化アルミニウム(アルミナ:Al)、酸化マグネシウム(マグネシア:MgO)、酸化チタン(チタニア:TiO)等の金属酸化物等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。担持材料として用いる粉末の平均粒子径は、概ね0.1μm~20μm(例えば0.5μm~10μm、好ましくは1μm~7μm)程度であるとよい。
【0046】
ここに開示される排ガス浄化用触媒の第2層22においては、NOx吸蔵材を含んでいる。NOx吸蔵材は、排ガスの空燃比がリーンであるときには排ガス中のNOxを一時的に吸蔵し、空燃比がストイキ~リッチに切り替えられると吸蔵したNOxを放出する機能を有する成分である。すなわち、第2層22においてNOx吸蔵材を含むことにより、触媒金属の酸化作用によって酸化されたNOxが、第2層22内において好適に吸蔵される。このようなNOx吸蔵材としては、NOxに電子を供与し得る金属を含む材料(典型的には塩基性材料)を好ましく用いることができる。例えば、カリウム(K)、セシウム(Cs)のようなアルカリ金属;マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)のようなアルカリ土類金属;等が挙げられる。なかでも、アルカリ土類金属(特にはバリウム)は高いNOx吸蔵能を有することから好ましく用いることができる。このような材料は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
第2層22におけるNOx吸蔵材の含有量(2種類以上のNOx吸蔵材を用いる場合には、使用したNOx吸蔵材の合計の含有量)は、少なすぎる場合には、NOx吸蔵限界量(飽和量)が小さくなり、例えばリーンバーンエンジンにおいて有害成分のエミッションが生じ得る。したがって、NOx吸蔵材の含有量は、酸化物換算で、基材11の体積1L当たり、5g/L以上であって、10g/L以上であることが好ましく、20g/L以上であってもよい。また、NOx吸蔵材が多すぎる場合には、担持材料や触媒金属の表面がNOx吸蔵材でおおわれてしまい、所望の触媒活性を安定的に得ることができない虞がある。このため、NOx吸蔵材の含有量の上限は、例えば酸化物換算で、40g/L以下であることが好ましく、35g/L以下であってもよく、30g/L以下であってもよい。NOx吸蔵材の含有量がかかる範囲内であることにより、ここに開示される技術の効果をより高いレベルで発揮することができる。
【0048】
第2層22は、副成分として他の材料(典型的には無機酸化物)が添加されていてもよい。第2層22に添加し得る材料としては、例えば、ランタン(La)、ネオジウム(Nd)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)等の希土類元素や、ジルコニウム(Zr)等の遷移金属元素、その他アルミニウム(Al)等の金属元素が挙げられる。かかる元素は、触媒機能を阻害せずに高温における比表面積を向上させることができるため、安定化剤として好適に用いられる。上記した元素は、典型的は酸化物の形態で第2層22に存在する。
【0049】
第2層22のコート量(成形量)は、特に限定されない。コート量が少なすぎる場合には、触媒層20の浄化作用が低下する虞がある。したがって、例えば、基材11の体積1L当たり、100g/L以上であって、例えば115g/L以上であってもよく、120g/L以上であってもよい。また、コート量が多すぎる場合には、基材11のセル内を排気ガスが通過する際の圧力損失の上昇を招く虞がある。かかる観点からは、コート上の上限は、155g/L以下であることが好ましく、例えば145g/L以下であってもよく、135g/L以下であってもよい。
【0050】
第2層22は、排ガス浄化用触媒(基材)の排ガス流出側(下流側)の端部10bから排ガス流入側(上流側)の端部10aに向けて形成されている。好適な一態様では、第2層22の筒軸方向の長さは、基材11の筒軸方向の長さLの50%以上であることが好ましく、65%以上であることがより好ましく、75%以上であることがさらに好ましく、100%であることが特に好ましい。これにより、ここに開示される技術の効果を高いレベルで発揮することができる。
【0051】
好適な一態様では、ここに開示される排ガス浄化用触媒は、第2層22よりもさらに基材11の表面に相対的に近い方に第3層23(図4参照)を有している。第3層23は、Pd、Pt、およびRhからなる群から選択される少なくとも一種の触媒金属を含んでいる。
【0052】
ここで開示される触媒層20の第3層23では、Pd、Pt、およびRhのいずれかに加えて、種々の酸化触媒や還元触媒として機能し得る金属種を1種または2種以上含んでいてもよい。例えばルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)等の白金族や、銀(Ag)、金(Au)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)等の金属種を含んでいてもよい。また、当該触媒金属は、排ガスとの接触面積を高める観点から、十分に小さい粒子状であることが好ましく、概ね1nm~15nm、例えば10nm以下、さらには5nm以下であるとよい。
【0053】
第3層23における触媒金属の含有量(2種類以上の触媒金属を用いる場合には、使用した触媒金属の合計の含有量)は、酸化物換算で、基材11の体積1L当たり、0.5g/L以上であって、1g/L以上であることが好ましく、2g/L以上であることがより好ましい。触媒金属の含有量が多すぎる場合には、コストの面で不利である。このため、第1層21における触媒金属の含有量の上限値は、酸化物換算で、基材11の体積1L当たり、8g/L以下であって、7g/L以下であることが好ましく、6g/L以下であることがより好ましい。
【0054】
上記触媒金属は、担持材料に担持されている。担持材料は、典型的には粉末状(粒子状)である。担持材料は、比表面積が大きい無機多孔質体であるとよい。担持材料としては、例えば、耐熱性に優れた金属酸化物や、その固溶体が好ましく用いられ得る。例えば、上記第2層22において用いられ得るとして例示した担持材料を適宜使用することができる。一例としては、アルミナ(Al)、シリカ(SiO)等の金属酸化物等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。担持材料として用いる粉末の平均粒子径は、概ね0.1μm~20μm(例えば0.5μm~10μm、好ましくは1μm~7μm)程度であるとよい。
【0055】
第3層23は、例えば上記触媒金属を担持する担体のほか、触媒金属を担持していない任意材料を含んでいてもよい。これら任意材料の一例として、触媒金属が担持されていないCeO-ZrO系複合酸化物や、アルミナ(Al)、シリカ(SiO)等が挙げられる。
【0056】
第3層23のコート量(成形量)は、特に限定されないが、例えば、基材11の体積1L当たり、100g/L~160g/L(例えば110g/L~150g/L)程度であるとよい。また、第3層23は、排ガス浄化用触媒(基材)の排ガス流出側(下流側)の端部10bから排ガス流入側(上流側)の端部10aに向けて形成されている。好適な一態様では、第2層22の筒軸方向の長さは、基材11の筒軸方向の長さLの50%以上であることが好ましく、65%以上であることがより好ましく、75%以上であることがさらに好ましく、100%であることが特に好ましい。
【0057】
3.排ガス浄化用触媒の製造方法
上記したような第1層21および第2層22を有する排ガス浄化用触媒は、例えば以下の手順によって作製することができる。特に限定されないが、上述した第1層21の上流側触媒層21aと下流側触媒層21b、および第2層22は、異なる触媒層形成用スラリーをもとに形成するとよい。例えば、第1層21の上流側触媒層21aを形成するための上流側触媒層形成用スラリー、第1層21の下流側触媒層21bを形成するための下流側触媒層形成用スラリー、および第2層22を形成するための第2層形成用スラリーを、それぞれ用意するとよい。
【0058】
上流側触媒層形成用スラリーおよび下流側触媒層形成用スラリーは、Pdおよび/またはRh成分と、Ceを含むOSC材(例えばCeO、CeO-ZrO複合酸化物等)と、他の第1層21形成成分(例えば上記した担持材料等)と、を溶媒中で混合し、スラリー状に調製することによって作製することができる。このとき、相対的にCeO量が少ないスラリー(上流側触媒層形成用スラリー)と、相対的にCeO量が多いスラリー(下流側触媒層形成用スラリー)の2種類のスラリーを調製する。
第2層形成用スラリーは、少なくともPtを担持した担持材料(例えばアルミナ等)と、NOx吸蔵材(典型的にはアルカリ土類金属元素の硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩等)と、他の第2層22形成成分とを溶媒中で混合し、スラリー状に調製することによって作製することができる。なお、上記スラリーはその他の任意成分として、例えばバインダ、各種添加剤等を含み得る。また、スラリーの性状、例えば粘度や固形分率等は、使用する基材のサイズやセルの形態等によって適宜調整するとよい。
【0059】
第1層21および第2層22の形成は、従来使用されている方法、例えば含侵法やウォッシュコート法等で行うことができる。一例では、上記調製した第2層形成用スラリーを、適当な基材(例えばハニカム基材)の端部からセル12に流入させ、筒軸方向Xに沿って所定の長さまで供給する。このとき、余分なスラリーをセル12から排出させてもよい。スラリーを供給した基材を、所定の温度で乾燥、焼成することにより、第2層22を基材11の隔壁14の表面に形成することができる。乾燥は、例えば、200℃~300℃程度の温度で、30分~2時間行うとよい。また、焼成は、酸素含有雰囲気下(例えば大気中)で、焼成温度が概ね450℃~1000℃程度、例えば500℃~700℃で行うとよい。
次いで、第2層22が形成した後、上流側触媒層形成用スラリーを基材の一方の端部(流入側の端部10a)からセル12に流入させ、筒軸方向Xに沿って流出側方向に向けて所定の長さまで供給する。そして、上記と同様の条件で乾燥および焼成処理をすることにより、上流側触媒層21aを形成することができる。同様にして、下流側触媒層形成用スラリーを基材の他方の端部(流出側の端部10b)からセル12に流入させ、筒軸方向Xに沿って流入側方向に向けて所定の長さまで供給する。そして、上記と同様の条件で乾燥および焼成処理をすることにより、下流側触媒層21bを形成することができる。
【0060】
上述した排ガス浄化用触媒は、自動車やトラック等の車両や、自動二輪車や原動機付き自転車をはじめとして、船舶、タンカー、水上バイク、パーソナルウォータークラフト、船外機などのマリン用製品、草刈機、チェーンソー、トリマーなどのガーデニング用製品、ゴルフカート、四輪バギーなどのレジャー用製品、コージェネレーションシステムなどの発電設備、ゴミ焼却炉などの内燃機関から排出される排ガスの浄化に好適に用いることができる。
【0061】
以下、本発明に関する試験例を説明するが、本発明を以下の試験例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0062】
<第1の試験>
ここでは、組成が異なる3種類のスラリーを用いて、基材上に第2層を形成した後、排ガスの流れ方向の上流側(フロント側)と下流側(リア側)とで構成が異なる第1層を形成して、上流側触媒層と下流側触媒層から構成される第1層および第2層を備える触媒層を形成した。
【0063】
1.各例の作製
(1)例1
まず、3種類のスラリー(上流側触媒層形成用スラリー、下流側触媒層形成用スラリー、および、第2層形成用スラリー)を調整した。具体的には、まず、硝酸Pd溶液(Pdとして0.1g)と、硝酸Rh溶液(Rhとして0.17g)と、OSC材としてCeO-ZrO系複合酸化物12g(CeOとして2.5g)と、Al粉末と、を水系溶媒と混合して上流側触媒層形成用スラリーを得た。次いで、硝酸Pd溶液(Pdとして0.1g)と、硝酸Rh溶液(Rhとして0.17g)と、OSC材としてCeO-ZrO系複合酸化物24g(CeOは5.0g)と、Al粉末と、を水系溶媒と混合して下流側触媒層形成用スラリーを得た。そして、1.4gのPtを担持したAl粉末80gと、NOx吸蔵材として酸化バリウム(BaO)20gと、を水系溶媒と混合して第2層形成用スラリーを得た。
【0064】
上記調製した第2層形成用スラリーを用いて、セラミックス製の基材(円筒形状のストレートフロー型のハニカム基材、直径:118.4mm、筒軸方向の長さL:114.3mm、容積:1.26L)の排ガスの流出側の端部から流入側方向に向けて筒軸方向の長さLの100%(すなわち基材全体)にウォッシュコートを施した。なお、このときのコート量は155g/Lとし、BaO量が30g/Lとなるようにした。そして、乾燥、焼成することによって、第2層を形成した。
【0065】
次いで、上記調製した上流側触媒層形成用スラリーを用いて、基材の排ガスの流入側の端部から流出側方向に向けて筒軸方向の長さLの50%にウォッシュコートを施した。なお、このときのコート量は110g/Lとし、CeO量が2.94g/Lとなるようにした。そして、乾燥、焼成することによって、上流側触媒層を形成した。
また、上記調製した下流側触媒層形成用スラリーを用いて、基材の排ガスの流出側の端部から流入側方向に向けて筒軸方向の長さLの50%にウォッシュコートを施した。なお、このときのコート量は110g/Lとし、CeO量が5.88g/Lとなるようにした。そして、乾燥、焼成することによって、下流側触媒層を形成した。このようにして、例1の排ガス浄化用触媒を得た。
【0066】
(2)例2~例5
上流側触媒層および下流側触媒層におけるCeO量が表1に示す量となるように変更したこと以外は、例1と同じ手順で、各例の排ガス浄化用触媒を得た。
【0067】
2.NOx吸蔵特性の評価
上記得られた例1~例5について、NOx吸蔵量の測定試験を行った。かかる試験では、各例の排ガス浄化用触媒を100℃以下に冷却後、エンジンの排気系にそれぞれ設置した。そして、熱交換器を用いて触媒の入りガス温度を300℃に調整し、排ガスを流入させた。排ガスは、還元ガス成分に対する酸化ガス成分の割合(λ)を1.08とした。触媒に流入するガスのNOx濃度P1と、触媒から流出するガスのNOx濃度P2とを測定し、P1とP2との差(P1-P2)からNOx吸蔵量(mg/L)を算出した。結果を表1に示す。
なお、還元ガス成分に対する酸化ガス成分の割合は、λ=1がストイキであり、酸化ガスが還元ガスに対して等量であることを示す。
【0068】
【表1】
【0069】
表1に示すように、第1層の上流側触媒層と下流側触媒層において、それぞれ触媒金属としてPdおよびRhと、OSC材としてCeO-ZrO系複合酸化物と、が含まれており、上流側触媒層のCeO量が下流側触媒層のCeO量よりも少ない場合に、NOx吸蔵量が高いことがわかる。したがって、第1層が上流側触媒層と下流側触媒層から構成され、当該上流側触媒層と下流側触媒層とが、それぞれ、触媒金属としてPdおよびRhと、Ceを含むOSC材と、を含み、上流側触媒層のCeO量C1が下流側触媒層のCeO量C2よりも少なく、第2層が触媒金属としてPtと、NOx吸蔵材とを含む排ガス浄化用触媒は、NOx吸蔵特性が向上する。
【0070】
<第2の試験>
ここでは、組成が異なる3種類のスラリーを用いて、基材上に第2層を形成した後、排ガスの流れ方向の上流側(フロント側)と下流側(リア側)とで構成が異なる第1層を形成して、上流側触媒層と下流側触媒層から構成される第1層および第2層を備える触媒層を形成した。そして、第2層のコート量、基材の筒軸方向の長さLに対するコート長、および第2層におけるNOx吸蔵材の含有量について検討した。
【0071】
1.各例の作製
(1)例11
まず、第1の試験と同様にして、3種類のスラリー(上流側触媒層形成用スラリー、下流側触媒層形成用スラリー、および、第2層形成用スラリー)を調製した。上記調製した第2層形成用スラリーを用いて、上記セラミックス製の基材の排ガスの流出側の端部から流入側方向に向けて筒軸方向の長さLの100%(すなわち基材全体)にウォッシュコートを施した。なお、このときのコート量は95g/Lとし、BaO量が30g/Lとなるようにした。そして、乾燥、焼成することによって、第2層を形成した。
次いで、上記調製した上流側触媒層形成用スラリーを用いて、第1の試験と同様に基材の排ガスの流入側の端部から流出側方向に向けて筒軸方向の長さLの50%にウォッシュコートを施した。そして、乾燥、焼成することによって、上流側触媒層を形成した。
また、上記調製した下流側触媒層形成用スラリーを用いて、第1の試験と同様に基材の排ガスの流出側の端部から流入側方向に向けて筒軸方向の長さLの50%にウォッシュコートを施した。そして、乾燥、焼成することによって、下流側触媒層を形成した。このようにして、例11の排ガス浄化用触媒を得た。
【0072】
(2)例12および例13
第2層のコート量(g/L)が表2に示す量となるように変更したこと以外は、例11と同じ手順で、各例の排ガス浄化用触媒を得た。
【0073】
(3)例14~例16
第2層における基材の筒軸方向の長さLに対するコート長(%)を表2に示す量となるように変更したこと以外は、例11と同じ手順で、各例の排ガス浄化用触媒を得た。
【0074】
(3)例17~例20
第2層におけるBaO量を表2に示す量となるように変更したこと以外は、例11と同じ手順で、各例の排ガス浄化用触媒を得た。
【0075】
2.NOx吸蔵特性の評価
上記得られた例11~例20について、NOx吸蔵量の測定試験を行った。かかる試験は、第1の試験と同様の条件で実施した。触媒に流入するガスのNOx濃度P1と、触媒から流出するガスのNOx濃度P2とを測定し、P1とP2との差(P1-P2)からNOx吸蔵量(mg/L)を算出した。結果を表2に示す。なお、表2には、比較のために上記作製した例1の結果も記載している。
【0076】
【表2】
【0077】
表2の例1および例11~例13に示すように、第2層のコート量が100g/L以上である場合には、第2層のコート量が100g/L未満である例11と比較して、NOx吸蔵量が高いことがわかる。また、表2の例1および例14~例16に示すように、第2層が、排ガス流出側の端部から排ガス流入側方向に向かって、基材の筒軸方向の長さの75%~100%に当たる部分に形成されている場合には、NOx吸蔵量が高いことがわかる。そして、表2の例1および例17~例20に示すように、第2層におけるBaO量が10g/L以上40g/L以下である場合に、NOx吸蔵量が顕著に向上することがわかる。
【0078】
<第3の試験>
ここでは、組成が異なる4種類のスラリーを用いて、基材上に第3層を形成した後、第2層を形成し、されに排ガスの流れ方向の上流側(フロント側)と下流側(リア側)とで構成が異なる第1層を形成して、上流側触媒層と下流側触媒層から構成される第1層、第2層、および第3層を備える触媒層を形成した。
【0079】
1.各例の作製
(1)例21
まず、4種類のスラリー(上流側触媒層形成用スラリー、下流側触媒層形成用スラリー、第2層形成用スラリーおよび、第3層形成用スラリー)を調製した。上流側触媒層形成用スラリー、下流側触媒層形成用スラリー、および、第2層形成用スラリーの3種類のスラリーについては、第1の試験と同様に調製した。第3層形成用スラリーは、1.9gのPdを担持したAl粉末110gと、硫酸Baと、を水系溶媒と混合して調整した。
【0080】
上記調製した第3層形成用スラリーを用いて、上記セラミックス製の基材の排ガスの流出側の端部から流入側方向に向けて筒軸方向の長さLの100%(すなわち基材全体)にウォッシュコートを施した。なお、このときのコート量は140g/Lとし、Pdの量が2.3g/Lとなるようにした。そして、乾燥、焼成することによって、第3層を形成した。
次いで、第1の試験と同様に上記調製した第2層形成用スラリーを用いて、上記セラミックス製の基材の排ガスの下流側の端部から上流側方向に向けて基材全体にウォッシュコートを施した。なお、このときのコート量は155g/Lとし、BaO量が30g/Lとなるようにした。そして、乾燥、焼成することによって、第2層を形成した。
また、上記調製した上流側触媒層形成用スラリーを用いて、第1の試験と同様に基材の排ガスの流入側の端部から流出側方向に向けて筒軸方向の長さLの50%にウォッシュコートを施した。そして、乾燥、焼成することによって、上流側触媒層を形成した。さらに上記調製した下流側触媒層形成用スラリーを用いて、第1の試験と同様に基材の排ガスの流出側の端部から流入側方向に向けて筒軸方向の長さLの50%にウォッシュコートを施した。そして、乾燥、焼成することによって、下流側触媒層を形成した。このようにして、例21の排ガス浄化用触媒を得た。
【0081】
2.NOx吸蔵特性の評価
上記得られた例21について、NOx吸蔵量の測定試験を行った。かかる試験は、第1の試験と同様の条件で実施した。触媒に流入するガスのNOx濃度P1と、触媒から流出するガスのNOx濃度P2とを測定し、P1とP2との差(P1-P2)からNOx吸蔵量(mg/L)を算出した。結果を表3に示す。なお、表3には、比較のために上記作製した例1および例4の結果も記載している。
【0082】
【表3】
【0083】
表3に示すように、第1層および第2層に加えて少なくともPd、Pt、およびRhのうちいずれか一種を含む第3層を備える場合であっても、例4と比較してNOx吸蔵量が高いことがわかる。したがって、排ガス浄化用触媒が、上流側触媒層と下流側触媒層から構成される第1層および第2層に加えて少なくともPd、Pt、およびRhのうちいずれか一種を含む第3層を備えることにより、優れたNOx吸蔵特性を有する触媒を提供することができる。
【0084】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、上記実施形態は一例に過ぎない。本発明は、他にも種々の形態にて実施することができる。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。請求の範囲に記載の技術には、上記に例示した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、上記した実施形態の一部を、他の変形態様に置き換えることも可能であり、上記した実施形態に他の変形態様を追加することも可能である。また、その技術的特徴が必須なものとして説明されていなければ、適宜削除することも可能である。
【符号の説明】
【0085】
1 排ガス浄化システム
2 内燃機関(エンジン)
3 排ガス浄化装置
4 排気経路
5 エキゾーストマニホールド
6 排気管
7 エンジンコントロールユニット
8 センサ
9 第1触媒
10 第2触媒
10a 端部
10b 端部
11 基材
12 セル(空洞)
14 隔壁
20 触媒層
21 第1層
21a 上流側触媒層
21b 下流側触媒層
22 第2層
23 第3層
図1
図2
図3
図4