(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134116
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】光ファイバ担持樹脂管
(51)【国際特許分類】
G01B 11/16 20060101AFI20230920BHJP
G01D 5/26 20060101ALI20230920BHJP
G01D 5/353 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
G01B11/16 Z
G01D5/26 D
G01D5/353 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022039473
(22)【出願日】2022-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】山口 拓朗
(72)【発明者】
【氏名】東 総介
(72)【発明者】
【氏名】太田 悠介
(72)【発明者】
【氏名】井上 将男
【テーマコード(参考)】
2F065
2F103
【Fターム(参考)】
2F065AA65
2F065BB12
2F065CC23
2F065DD16
2F065FF41
2F065LL03
2F065PP01
2F065UU04
2F103BA17
2F103CA06
2F103EC09
2F103GA14
2F103GA15
(57)【要約】
【課題】光ファイバと樹脂管との接着力をより高める。
【解決手段】円筒状の樹脂管11と、前記樹脂管11の筒壁11A内に位置し、前記樹脂管11の管軸O1方向に延びる1本又は2本以上の光ファイバ12と、前記光ファイバ12の外面と前記樹脂管11との間の少なくとも一部に位置する接着部16と、を有し、前記接着部16は、接着性ポリオレフィン樹脂組成物の硬化物であることよりなる。接着部は、酸変性ポリオレフィン樹脂を含むことが好ましい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の樹脂管と、前記樹脂管の筒壁内に位置し、前記樹脂管の管軸方向に延びる1本又は2本以上の光ファイバと、前記光ファイバの外面と前記樹脂管との間の少なくとも一部に位置する接着部と、を有し、
前記接着部は、接着性ポリオレフィン樹脂組成物の硬化物である、光ファイバ担持樹脂管。
【請求項2】
前記接着部は、酸変性ポリオレフィン樹脂を含む、請求項1に記載の光ファイバ担持樹脂管。
【請求項3】
前記接着部は、フーリエ変換赤外分光光度計で測定されるに対する720cm-1における吸光度のピーク面積αに対する1780cm-1における吸光度のピーク面積βの比(β/α)が、0.05~0.25である、請求項1又は2に記載の光ファイバ担持樹脂管。
【請求項4】
前記接着部のMFRは、0.5~4.0である、請求項1~3のいずれか一項に記載の光ファイバ担持樹脂管。
【請求項5】
前記接着部の軟化点は、30~115℃である、請求項1~4のいずれか一項に記載の光ファイバ担持樹脂管。
【請求項6】
前記接着部の寸法収縮率は、5.5%以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の光ファイバ担持樹脂管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ担持樹脂管に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂管に光ファイバが軸方向に延びるように直線状又は螺旋状に埋め込まれた光ファイバ担持樹脂管は、光ファイバのレイリー散乱の周波数変化又は位相変化から、樹脂管に生じた曲げ、伸び、ねじりの各ひずみ変化、圧力変化、温度変化を常時監視できる。
光ファイバ樹脂担持管において、樹脂管内に光ファイバを固定する必要がある。
例えば、特許文献1には、樹脂管の外表面に形成された溝に光ファイバを嵌め込み、この溝の開口を溶接部材で塞いだ光ファイバ担持樹脂管が提案されている。
また、特許文献2には、表面にポリオレフィン系樹脂の外皮(被覆樹脂層)を有する光ファイバを、樹脂管の表面の溝に嵌め込み、外皮と樹脂管とを融着した光ファイバ担持樹脂管が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-132824号公報
【特許文献2】特開2006-242743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、光ファイバと樹脂管との間に空隙を生じる場合がある。光ファイバと樹脂管との間に空隙を生じていると、光ファイバ担持樹脂管に対して管軸方向の力が加わった際に、光ファイバが座屈して断線しやすいという問題があった。このため、光ファイバ担持樹脂管には、光ファイバと樹脂管との接着力をより高めたいという要求があった。
そこで、本発明は、光ファイバと樹脂管との接着力をより高めた光ファイバ担持樹脂管を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の態様を有する。
<1>
円筒状の樹脂管と、前記樹脂管の筒壁内に位置し、前記樹脂管の管軸方向に延びる1本又は2本以上の光ファイバと、前記光ファイバの外面と前記樹脂管との間の少なくとも一部に位置する接着部と、を有し、
前記接着部は、接着性ポリオレフィン樹脂組成物の硬化物である、光ファイバ担持樹脂管。
<2>
前記接着部は、酸変性ポリオレフィン樹脂を含む、<1>に記載の光ファイバ担持樹脂管。
<3>
前記接着部は、フーリエ変換赤外分光光度計で測定されるに対する720cm-1における吸光度のピーク面積αに対する1780cm-1における吸光度のピーク面積βの比(β/α)が、0.05~0.25である、<1>又は<2>に記載の光ファイバ担持樹脂管。
<4>
前記接着部のMFRは、0.5~4.0である、<1>~<3>のいずれかに記載の光ファイバ担持樹脂管。
<5>
前記接着部の軟化点は、30~115℃である、<1>~<4>のいずれかに記載の光ファイバ担持樹脂管。
<6>
前記接着部の寸法収縮率は、5.5%以下である、<1>~<5>のいずれかに記載の光ファイバ担持樹脂管。
【発明の効果】
【0006】
本発明の光ファイバ担持樹脂管によれば、光ファイバと樹脂管との接着力をより高められる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態に係る光ファイバ担持樹脂管を示す斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る光ファイバ担持樹脂管を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(光ファイバ担持樹脂管)
本発明の光ファイバ担持樹脂管は、樹脂管と、樹脂管の筒壁内に位置し、樹脂管の管軸方向に延びる1本又は2本以上の光ファイバとを有する。
以下に、本発明の光ファイバ担持樹脂管の一実施形態を挙げて説明する。
図1の光ファイバ担持樹脂管10は、円筒状の長尺の樹脂製の管である。光ファイバ担持樹脂管10は、円筒状の樹脂管11と、樹脂管11の筒壁11A内に樹脂管11の軸線(管軸)O1方向に延びる光ファイバ12と、を有する。即ち、光ファイバ担持樹脂管10において、光ファイバ12は、筒壁11A内に埋め込まれている。
図2~3に示すように、樹脂管11と光ファイバ12との間には、接着部16が位置している。即ち、光ファイバ12と接着部16とは、樹脂管11内で、軸線O1方向に延びる坑道19内に位置している。
【0009】
筒壁11A内の光ファイバ12は、1本以上であればよい。筒壁11A内の光ファイバ12は、2本以上が好ましく、4本以上がより好ましい。光ファイバ12が2本以上であれば、曲げ変位をより良好に検知できる。光ファイバ12が4本以上であれば、ねじりや扁平変位をより良好に検知できる。筒壁11A内の光ファイバ12は、20本以下が好ましい。光ファイバ12が上記上限値以下であれば、樹脂管11の機械的強度をより高められる。
光ファイバ12は、筒壁11Aの厚さ方向の中心(即ち、厚さを二分する位置)から表面に向かう25%以内にあることが好ましい。これにより、光ファイバ担持樹脂管10の設置施工時において樹脂管11の表面を削った際に、光ファイバ12が樹脂管11の外部に露出せず、光ファイバ12が損傷しにくい。
【0010】
4本の光ファイバ12は、樹脂管11の筒壁11Aにおける管軸O1方向と垂直な断面において、互いに回転対称の位置に配置されていることが好ましい。本実施形態において、光ファイバ12は、樹脂管11の管軸O1方向と垂直な断面において90°間隔に配置されている。即ち、筒壁11A内には、4本の光ファイバ12が管軸O1回りに、等間隔で位置している。
光ファイバ12が5本以上である場合には、5本以上の光ファイバ12は、管軸O1回りに等間隔で位置することが好ましい。
【0011】
<樹脂管>
樹脂管11は、樹脂(A)を含む樹脂組成物(A)を筒状に成形し、硬化したものである。樹脂管11は、円筒状の筒壁11Aで構成されている。
【0012】
樹脂管11の外径Rは、20mm以上50mm以下が好ましく、30mm以上40mm以下がより好ましい。外径Rが上記下限値以上であれば、光ファイバ12同士の信号干渉をより良好に抑制できる。外径Rが上記上限値以下であれば、樹脂管11が構造物の変位に追従しやすくなって、光ファイバ担持樹脂管10による測定の精度をより高められる。
【0013】
筒壁11Aの厚さは、2.5mm以上10mm以下が好ましく、3mm以上5mm以下がより好ましい。筒壁11Aの厚さが前記下限値以上であれば、設置施工時に筒壁11Aが傷ついた場合でも、光ファイバ12が筒壁11Aから露出せず、光ファイバ12の伝送損失をより低減できる。筒壁11Aの厚さが上記上限値以下であれば、樹脂管11が構造物の変位に追従しやすくなって、光ファイバ担持樹脂管10による測定の精度をより高められる。
【0014】
樹脂(A)としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-α-オレフィン共重合体等のポリオレフィン樹脂が挙げられる。ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン(LDPE、密度:910kg/m3以上930kg/m3未満)、中密度ポリエチレン(MDPE、密度:930kg/m3以上942kg/m3未満)、高密度ポリエチレン(HDPE,密度:942kg/m3以上)が挙げられる。樹脂(A)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
樹脂(A)としては、ポリエチレンが好ましく、MDPE、HDPEがより好ましく、MDPEとHDPEとの混合物がより好ましい。これらの樹脂(A)を用いることで、樹脂管11と接着部16との接着力をより高められる。
樹脂(A)がMDPEとHDPEとの混合物である場合、HDPEに対するMDPE(MDPE/HDPE)の質量比(M/H比)は、40/60~90/10が好ましく、60/40~90/10がより好ましい。M/Hが上記下限値以上であれば、成形時の収縮が少なくなり、測定の精度をより高められる。M/H比が上記上限値以下であれば、樹脂管11の寸法をより安定にできる。
【0016】
樹脂(A)がポリオレフィン以外の樹脂を含む場合、樹脂(A)の総質量(100質量%)に対するポリオレフィン以外の樹脂の含有量は、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、0質量%でもよい。
【0017】
樹脂組成物(A)の総質量(100質量%)に対して、樹脂(A)の含有量は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%でもよい。
【0018】
樹脂組成物(A)の密度(即ち、筒壁11Aの密度)は、0.920g/cm3以上0.960g/cm3以下が好ましく、0.93g/cm3以上0.95g/cm3以下がより好ましい。筒壁11Aの密度が上記下限値以上であれば、剛性をより高められる。筒壁11Aの密度が上記上限値以下であれば、成形収縮を抑えることができる。
密度は、ISO 1183-1:2019「プラスチック-非発泡プラスチックの密度の測定方法-第1部:液浸法,液体ピクノメータ法及び滴定法」に準じて測定される値である。
【0019】
筒壁11Aのメルトフローレート(MFR)は、例えば、0.1g/10min.以上1.3g/10min.以下が好ましく、0.2g/10min.以上0.8g/10min.以下がより好ましい。筒壁11AのMFRが上記下限値以上であれば、樹脂管11をより容易に成形できる。筒壁11AのMFRが上記上限値以下であれば、樹脂管11の機械強度をより高められる。
MFRは、ISO 1133「プラスチックスの質量フローレートと体積フローレート」のA法に準じ、190℃、荷重2.16kgで測定された値である。
【0020】
樹脂組成物(A)は、樹脂(A)以外の成分(任意成分(A))を含んでもよい。即ち、樹脂管11は、任意成分(A)を含んでもよい。任意成分(A)としては、可塑剤、着色料(顔料、染料)、滑沢剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等、ポリオレフィン樹脂に用いられる公知の添加剤が挙げられる。
【0021】
<接着部>
接着部16は、接着性ポリオレフィン樹脂組成物の硬化物である。本実施形態において、光ファイバ担持樹脂管10が接着部16を有することで、光ファイバ12と樹脂管11との接着強度をより高められる。
【0022】
接着部16は、全てが筒壁11A内に埋まっていてもよいし、一部が筒壁11Aの外部(即ち、樹脂管11の外面)に露出していてもよい。
接着部16は、光ファイバ12の外面(周面)の全てを覆っていてもよく、一部を覆っていてもよく、全てを覆っていることが好ましい。接着部16が光ファイバ12の外面の全て覆うことで、光ファイバ12と樹脂管11との接着力をより高められる。
【0023】
接着部16の厚さt16(
図3)は、1μm以上5000μm以下が好ましく、5μm以上4000μm以下がより好ましく、10μm以上3000μm以下がさらに好ましい。厚さt16が上記下限値以上であれば、光ファイバ12と樹脂管11との接着力をより高められる。厚さt16が上記上限値以下であれば、樹脂管11の厚さを過度に高めるのを防止できる。
【0024】
接着部16を構成する接着性ポリオレフィン樹脂組成物(以下、「接着性組成物」ということがある)は、酸変性ポリオレフィン樹脂を主成分とする。即ち、接着部16は、酸変性ポリオレフィン樹脂を主成分として含む。
接着性組成物は、酸変性ポリオレフィン樹脂を含む樹脂(以下、「樹脂(C)」ということがある)と、必要に応じた任意成分(以下、「任意成分(C)」)と、を含む。
【0025】
樹脂(C)は、酸変性ポリオレフィン樹脂を含む。酸変性ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-α-オレフィン共重合体等のポリオレフィン樹脂の酸(無水物を含む)変性樹脂が挙げられる。中でも、酸変性樹脂としては、ポリエチレンの(無水)マレイン酸変性樹脂、アクリル酸変性樹脂及びフマル酸変性樹脂等が好ましい。樹脂(C)が酸変性ポリオレフィン樹脂を含むことで、光ファイバ12と樹脂管11との接着力をさらに高められる。
【0026】
接着性組成物中の樹脂(C)の含有量は、90質量%以上が好ましく、95質量%以上が好ましく、100質量%でもよい。
樹脂(C)中の酸変性ポリオレフィン樹脂の含有量は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%がさらに好ましい。
【0027】
任意成分(C)としては、例えば、可塑剤、着色料(顔料、染料)、滑沢剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等、ポリオレフィン樹脂に用いられる公知の添加剤が挙げられる。加えて、任成分(C)としては、粘着付与剤、充てん剤、増粘剤、老化防止剤、消泡剤等が挙げられる。
【0028】
接着部16についてフーリエ変換赤外分光光度計で測定した際に、CH2による吸収スペクトルは680cm-1から790cm-1の範囲に現れる。680cm-1から790cm-1の範囲の吸収スペクトルの積分値は、CH2の存在量を示す。680cm-1から790cm-1の範囲の吸収スペクトルの相加平均は720cm-1が中心となる。
本稿において、フーリエ変換赤外分光光度計で測定した際の680cm-1から790cm-1の範囲の吸収スペクトルの積分値を720cm-1における吸光度のピーク面積αとする。
接着部16についてフーリエ変換赤外分光光度計で測定した際に、C=Oよる吸収スペクトルは1680cm-1から1840cm-1の範囲に現れる。1680cm-1から1840cm-1の範囲の吸収スペクトルの積分値が、C=Oの存在量を示す。1680cm-1から1840cm-1の範囲の吸収スペクトルの相加平均は1780cm-1が中心となる。
本稿において、フーリエ変換赤外分光光度計で測定した際の1680cm-1から1840cm-1の範囲の吸収スペクトルの積分値を1780cm-1における吸光度のピーク面積βとする。
【0029】
接着部16において、ピーク面積αに対するピーク面積βの比(β/α比)は、0.05以上0.25であり、0.06以上0.24以下が好ましく、0.07~0.23がより好ましく、0.08~0.22がさらに好ましい。β/α比が上記範囲内であれば、光ファイバ12及び樹脂管11の双方との親和性がより高くなり、光ファイバ12と樹脂管11との接着力をさらに高められる。
【0030】
接着部16の密度は、0.880g/cm3以上0.940g/cm3以下が好ましく、0.880g/cm3以上0.930g/cm3以下がより好ましい。接着部16の密度が上記下限値以上であれば、剛性をより高められる。接着部16の密度が上記上限値以下であれば、接着力をより高められる。接着部16の密度は、筒壁11Aの密度と同じでもよいし、異なってもよい。
【0031】
接着部16のMFRは、例えば、0.5g/10min.以上4g/10min.以下が好ましく、0.6g/10min.以上3.9g/10min.以下がより好ましく、0.7g/10min.以上3.8g/10min.以下がさらに好ましい。接着部16のMFRが上記下限値以上であれば、流動性が良好なため、光ファイバ12と樹脂管11との接着力をより高められる。接着部16のMFRが上記上限値以下であれば、成形性が良好なため、安定して製造できる。接着部16のMFRは、筒壁11AのMFRと同じでもよいし、異なっていてもよい。
接着部16のMFRは、樹脂(B)の組成、任意成分(B)の種類及び配合量の組み合わせにより調節できる。
【0032】
接着部16の軟化点は、例えば、30℃以上115℃以下が好ましく、35℃以上110℃以下がより好ましく、40℃以上105℃以下がさらに好ましい。接着部16の軟化点が上記下限値以上であれば、ハンドリング性に優れるため、光ファイバ12と樹脂管11との接着力をより高められる。接着部16の軟化点が上記上限値以下であれば、成形性が良好なため、光ファイバ12と樹脂管11との接着力をより高められる。接着部16の軟化点は、ISO 306により測定されるビカット軟化点である。
接着部16の軟化点は、樹脂(B)の組成、任意成分(B)の種類及び配合量の組み合わせにより調節できる。
【0033】
接着部16の寸法収縮率は、5.5%以下が好ましく、5.4%以下がより好ましく、5.3%以下がさらに好ましい。接着部16の寸法収縮率が上記値以下であれば、接着時の応力が低く抑えられるため、光ファイバ12と樹脂管11との接着力をより高められる。接着部16の寸法収縮率は、PVT測定の定圧温度変化モードにより測定される体積収縮率の三乗根により計算される値であり、圧力10MPaで、180℃から30℃での体積収縮の測定結果を用いて算出される。このようなPVT測定装置としては、東洋精機製作所製「P-V-Tテストシステム」が挙げられる。
接着部16の寸法収縮率は、樹脂(B)の組成、任意成分(B)の種類及び配合量の組み合わせにより調節できる。
【0034】
<光ファイバ>
図4に示すように、光ファイバ12は、光ファイバ素線13と、光ファイバ素線13の周面を覆う被覆樹脂層14とを有する。
図4の光ファイバ12は、いわゆる被覆ファイバである。
【0035】
光ファイバ担持樹脂管10をひずみ測定用光ファイバ又は温度測定用光ファイバとして用いる場合、光ファイバ12の種類は、特に限定されず、ひずみの測定方法、温度の測定方法、測定の際に用いる散乱光の種類等に応じて選択することができる。例えば、ひずみ測定用光ファイバ又は温度測定用光ファイバとしては、シングルモード光ファイバ、マルチモード光ファイバ及び偏波保持光ファイバからなる群から選択される少なくとも1種類の光ファイバを用いることが好ましい。
ひずみ測定用光ファイバと温度測定用光ファイバとは、同じ種類の光ファイバでもよく、異なる種類の光ファイバでもよい。
【0036】
本実施形態の光ファイバ担持樹脂管10は、ひずみ測定用光ファイバ又は温度測定用光ファイバとして、測定方式等に応じて、1本又は2本以上の光ファイバを有することができる。そのため、例えば、ひずみ測定用光ファイバとして、異なる種類の光ファイバ又は同じ種類の光ファイバを2本以上用いることができる。温度測定用光ファイバについては、ひずみ測定用光ファイバと同様である。
【0037】
ひずみ測定用光ファイバとしては、シングルモード光ファイバが好ましい。シングルモード光ファイバは、計測を行う際に、散乱光としてブリルアン散乱光、レイリー散乱光等を好ましく用いることができ、シャープなピークが得られることから、ひずみ測定用光ファイバとして好ましい。
温度測定用光ファイバとしては、マルチモード光ファイバが好ましい。マルチモード光ファイバは、散乱光としてラマン散乱光等を好ましく用いることができ、高いピーク強度が得られることから、温度測定用光ファイバとして好ましい。
このように、計測(測定)に用いる散乱光に適した光ファイバ12を選択することにより、精度よくひずみや温度を測定することができる。
【0038】
光ファイバ12の外径は、125μm以上2000μm以下が好ましく、150μm以上1000μm以下がより好ましい。光ファイバ12の外径が上記下限値以上であれば、荷重がかかった際に断線しにくくなり、生産性をより高め、耐久性をより高められる。光ファイバ12の外径が上記上限値以下であれば、光ファイバ担持樹脂管10同士を接続する際、光ファイバ12を計測器に接続する際に、被覆樹脂の剥離作業をより容易に行える。
【0039】
本実施形態の光ファイバ素線13は、コア13Aとクラッド13Bとを有する。本発明はこれに限定されず、光ファイバ素線13がクラッド13Bを有しなくてもよい。但し、光ファイバ素線13としては、コア13Aとクラッド13Bとを有するものが好ましい。光ファイバ素線13は、コア13Aとクラッド13Bとを有することで、コア13Aにレーザー光等の不連続ポンプ光を入射して、ブリルアン散乱やラマン散乱等のコアの歪や温度等に由来する散乱光を発生させ、計測精度をより高められる。
【0040】
コア13Aの材質としては、例えば、石英ガラスが挙げられる。
クラッド13Bの材質は、コア13Aの材質と同様である。
コア13Aの材質とクラッド13Bの材質とは、同じでもよいし、異なってもよい。
【0041】
被覆樹脂層14は、樹脂(B)を含む樹脂組成物(B)の硬化物である。樹脂(B)としては、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、フッ素樹脂等が挙げられる。これらの樹脂(B)は、ハードセグメントとソフトセグメントを含むエラストマーであってもよい。中でも、樹脂(B)としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミドが好ましい。これらの樹脂であれば、光ファイバ担持樹脂管10を製造した際に、被覆樹脂層14と接着性オレフィン樹脂との親和性がより良好となり、光ファイバ12と接着部16との密着性をより高められる。
また被覆樹脂層14は二層以上の多層であってもよい。多層である場合には、最外層がポリエステル、ポリアミド、ポリイミドであることが好ましい。
樹脂(B)は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
樹脂(B)は、樹脂(b1)以外の樹脂を含んでいてもよい。
【0042】
樹脂組成物(B)の総質量(100質量%)に対して、樹脂(B)の含有量は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%でもよい。
【0043】
樹脂(B)の総質量(100質量%)に対して、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、フッ素樹脂、ポリイミドから選択される少なくとも1種の樹脂(樹脂(b1))の含有量は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%がさらに好ましい。
【0044】
被覆樹脂層14の表面(外面)には、粗面処理が施されていてもよい。
粗面処理の方法は、特に限定されず、例えば、サンドブラスト処理等の機械的方法、コロナ処理等の物理的方法、プライマ処理、エッチング処理等の化学的方法、等が挙げられる。
【0045】
被覆樹脂層14の厚さt14は、例えば、5~950μmが好ましく、10~900μmがより好ましく、15~850μmがさらに好ましい。厚さt14が上記下限値以上であれば、光ファイバ12の機械強度をより高められる。厚さt14が上記上限値以下であれば、接続時の被覆樹脂の剥離作業をより容易に行える。
【0046】
(光ファイバ担持樹脂管の製造方法)
光ファイバ担持樹脂管の製造方法について、一例を挙げて説明する。
本実施形態の光ファイバ担持樹脂管の製造方法は、被覆樹脂層14が予め形成された光ファイバ12を筒壁11A内に設ける工程を有する。
【0047】
筒壁11A内に光ファイバ12を設ける方法としては、光ファイバ12を押出成形機に供給し、溶融した樹脂組成物(A)と共に円筒状に押し出し、円筒状の成形物を引き取りつつ冷却して樹脂組成物(A)を硬化して、光ファイバ担持樹脂管を得る方法(一体成形法)が挙げられる。光ファイバ12を押出成形機に供給する際、光ファイバ12の外面に接着性組成物が位置するように、接着性組成物を金型に供給することで、光ファイバ12と樹脂管11との間に接着部16を設ける。一体成形法において、接着部16は、樹脂管11の外面に露出しないことが好ましい。
【0048】
また、後被覆法により、筒壁11A内に光ファイバ12を設けてもよい。後被覆法について、以下に説明する。予め樹脂管11を用意する。この樹脂管11の外面から内面に向かう凹条を形成する。凹条の数は、筒壁11A内に設ける光ファイバ12の数である。なお、樹脂管11を製造する際に、凹条を有する樹脂管11を製造してもよい。
樹脂管11の外面の凹条に、光ファイバ12を嵌め込む。次いで、凹条の開口部から凹部内に接着性組成物を充填する。ついで、凹部に充填した接着性組成物を硬化して、筒壁11A内に光ファイバ12を設ける。後被覆法において、接着部16は、樹脂管11の外面に露出している。後被覆法において、凹部に接着性組成物を充填した後、凹部を樹脂組成物(例えば、樹脂組成物(A))で塞いでもよい。凹部を樹脂組成物で塞ぐことで、接着部16は、樹脂管11の外面に露出しない。
こうして、光ファイバ担持樹脂管10を得る。
【0049】
本実施形態の光ファイバ担持樹脂管によれば、光ファイバの外面の少なくとも一部に特定の接着部を有し、光ファイバと樹脂管とが接着部で接着されている。このため、光ファイバが樹脂管から剥離しにくくなり、光ファイバと樹脂管との間の空隙を低減できる。
【0050】
(他の実施形態)
本発明は、上記の実施形態に限定するものではない。
本発明の光ファイバ担持樹脂管10は、例えば、
図5の光ファイバ担持樹脂管20としてもよい。
光ファイバ担持樹脂管20は、円筒状の樹脂管21と、樹脂管21の筒壁21A内に樹脂管21の軸線O2方向から周方向に向けて0度超90度未満の傾斜角度で螺旋状に埋め込まれている光ファイバ22と、を有する。
光ファイバ担持樹脂管20は、光ファイバ22が樹脂管21の軸線O2回りに螺旋を形成している点でのみ、光ファイバ担持樹脂管10と異なる。
【0051】
光ファイバ22の螺旋ピッチPは、10mm以上600mm以下が好ましく、100mm以上500mm以下がより好ましく、300mm以上400mm以下がさらに好ましい。螺旋ピッチPが上記上限値以上であれば、光ファイバ22の長さを過度に長くすることなく、計測精度を高められる。螺旋ピッチPが上記上限値以下であれば、計測精度をより高められる。
【実施例0052】
以下、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0053】
(使用材料)
<光ファイバ>
・被覆ファイバ:外径r=155μm、被覆樹脂層=ポリイミド(素線仕様:材質=石英ガラス、外径=125μm)。
<樹脂(A)>
・ポリエチレン:密度=0.938g/cm3、MFR=0.2g/min.。
<接着性組成物>
・接着性組成物I:接着性ポリオレフィン樹脂組成物。モディック(商品名)1、三菱ケミカル株式会社製。
・接着性組成物II:接着性ポリオレフィン樹脂組成物。モディック(商品名)2、三菱ケミカル株式会社製。
・接着性組成物III:接着性ポリオレフィン樹脂組成物。モディック(商品名)3、三菱ケミカル株式会社製。
・接着性組成物IV:接着性ポリオレフィン樹脂組成物。アドマー(商品名)1、三井化学株式会社製。
・接着性組成物V(比較品):接着性ポリオレフィン樹脂組成物。モディック(商品名)4、三菱ケミカル株式会社製。
・ポリエチレンVI(比較品):ノバテックHD(商品名)、日本ポリエチレン株式会社製。
【0054】
(評価方法)
<剪断強度>
≪測定方法≫引張試験機を用いて、23℃、引張速度20mm/min.で光ファイバを引き抜く際の引張荷重から、光ファイバと樹脂Aとの界面剪断強度を測定した。
【0055】
(実施例1~4、比較例1~2)
樹脂(A)を押し出し、長さ1800mm、内径27mm、外径34mmの円筒状の樹脂管を得た。得られた樹脂管の外面を切削し、樹脂管の外面に、幅3mm、深さ2mmの凹条を形成した。この凹条は、樹脂管の間軸と平行である。凹条に光ファイバを嵌め込み、次いで、凹条に各例の接着性組成物を充填した。その後、充填した接着性組成物を硬化して、光ファイバ担持樹脂管を得た。
得られた光ファイバ担持樹脂管は、樹脂管の筒壁内に4本の光ファイバを有し、各光ファイバは、樹脂管の管軸に平行で、かつ樹脂管の管軸回りに等間隔で位置していた。
各例の光ファイバ担持樹脂管について、光ファイバと樹脂管との接着力を評価し、その結果を表1に示す。
【0056】
【0057】
表1に示すように、本発明を適用した実施例1~4は、剪断強度が1.9~2.4N/mm2であった。
加えて、寸法収縮率が4.1~4.7%である実施例1、2、4は、寸法収縮率が5.3%である実施例3よりも、剪断強度が高まっていた。
β/α比が0.03である比較例1、及びβ/α比が0.02である比較例2は、いずれも接着力の評価が0.9~1.0N/mm2であった。
これらの結果から、本発明を適用することで、光ファイバと樹脂管との接着力を高められることを確認できた。