(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134124
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/12 20060101AFI20230920BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20230920BHJP
B60C 5/00 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
B60C11/12 A
B60C11/03 B
B60C11/03 100A
B60C11/12 D
B60C5/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022039483
(22)【出願日】2022-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】岡林 志穂
(72)【発明者】
【氏名】阿部 頌太朗
(72)【発明者】
【氏名】早苗 隆平
(72)【発明者】
【氏名】中島 翔
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BC12
3D131BC34
3D131BC44
3D131CB06
3D131EB05U
3D131EB11V
3D131EB11W
3D131EB11X
3D131EB86X
3D131EB87V
3D131EB87W
3D131EB87X
3D131EB99V
3D131EB99W
3D131EB99X
3D131EC01V
3D131EC01W
3D131EC01X
3D131EC02V
(57)【要約】
【課題】ノイズ性能の悪化を抑制しつつ、ブレーキ性能を向上させたタイヤを提供する。
【解決手段】トレッド部2を有するタイヤである。トレッド部2は、第1ショルダー陸部11を含む。第1ショルダー陸部11には、複数の第1ショルダーサイプ18が設けられている。複数の第1ショルダーサイプ18は、それぞれ、第1縦エッジ16から第1トレッド端T1までの長さ方向の全範囲において、面取り部20が形成されている。面取り部20は、ショルダー中心位置11cと第1縦エッジ16との間の第1面取り部21と、ショルダー中心位置11cと第1トレッド端T1との間の第2面取り部22とを含む。第2面取り部22の面取り体積V2は、第1面取り部21の面取り体積V1よりも大きい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、第1トレッド端と、最も前記第1トレッド端側でタイヤ周方向に連続して延びる第1ショルダー周方向溝と、前記第1ショルダー周方向溝のタイヤ軸方向外側に区分された第1ショルダー陸部とを含み、
前記第1ショルダー陸部は、前記第1ショルダー周方向溝の側の第1縦エッジと、前記第1縦エッジと前記第1トレッド端との間のタイヤ軸方向の中心位置であるショルダー中心位置とを含み、
前記第1ショルダー陸部には、前記第1縦エッジから少なくとも前記第1トレッド端まで延びる複数の第1ショルダーサイプが設けられ、
前記複数の第1ショルダーサイプは、それぞれ、前記第1縦エッジから前記第1トレッド端までの長さ方向の全範囲において、面取り部が形成されており、
前記面取り部は、前記ショルダー中心位置と前記第1縦エッジとの間の第1面取り部と、前記ショルダー中心位置と前記第1トレッド端との間の第2面取り部とを含み、
前記第2面取り部の面取り体積V2は、前記第1面取り部の面取り体積V1よりも大きい、
タイヤ。
【請求項2】
前記面取り体積V2は、前記面取り体積V1の1.5~5.0倍である、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記複数の第1ショルダーサイプのタイヤ周方向に対する角度は、前記第1縦エッジから前記第1トレッド端に向かって連続して大きくなっている、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記第1縦エッジにおいて、前記複数の第1ショルダーサイプのタイヤ周方向に対する角度は、30~70°である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記第1トレッド端において、前記複数の第1ショルダーサイプのタイヤ周方向に対する角度は、80~90°である、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記第1縦エッジと前記第1トレッド端との間において、前記第1ショルダー陸部の踏面には、サイプのみが設けられている、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、ショルダー陸部に複数のショルダーサイプが設けられたタイヤが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のようなショルダーサイプが設けられたタイヤは、ブレーキ性能についてさらなる向上が求められていた。一方、近年では、車両の静粛化が顕著であり、タイヤのノイズ性能についても十分に配慮する必要がある。
【0005】
本開示は、以上のような実状に鑑み案出なされたもので、ノイズ性能の悪化を抑制しつつ、ブレーキ性能を向上させたタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、トレッド部を有するタイヤであって、前記トレッド部は、第1トレッド端と、最も前記第1トレッド端側でタイヤ周方向に連続して延びる第1ショルダー周方向溝と、前記第1ショルダー周方向溝のタイヤ軸方向外側に区分された第1ショルダー陸部とを含み、前記第1ショルダー陸部は、前記第1ショルダー周方向溝の側の第1縦エッジと、前記第1縦エッジと前記第1トレッド端との間のタイヤ軸方向の中心位置であるショルダー中心位置とを含み、前記第1ショルダー陸部には、前記第1縦エッジから少なくとも前記第1トレッド端まで延びる複数の第1ショルダーサイプが設けられ、前記複数の第1ショルダーサイプは、それぞれ、前記第1縦エッジから前記第1トレッド端までの長さ方向の全範囲において、面取り部が形成されており、前記面取り部は、前記ショルダー中心位置と前記第1縦エッジとの間の第1面取り部と、前記ショルダー中心位置と前記第1トレッド端との間の第2面取り部とを含み、前記第2面取り部の面取り体積V2は、前記第1面取り部の面取り体積V1よりも大きい、タイヤである。
【発明の効果】
【0007】
本開示のタイヤは、上記の構成を採用したことによって、ノイズ性能の悪化を抑制しつつ、ブレーキ性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施形態のタイヤのトレッド部の展開図である。
【
図3】
図2の第1ショルダーサイプの拡大図である。
【
図6】従来のサイプが接地したときの状態を示す拡大断面図である。
【
図9】
図1の第1ミドル陸部、第2ミドル陸部及びクラウン陸部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態のタイヤ1のトレッド部2の展開図である。
図1に示されるように、本実施形態のタイヤ1は、例えば、乗用車用の空気入りタイヤとして好適に使用される。但し、本開示は、このような態様に限定されるものではなく、重荷重用の空気入りタイヤや、タイヤの内部に加圧された空気が充填されない非空気式タイヤに適用されても良い。
【0010】
図1に示されるように、本開示のタイヤ1は、車両への装着の向きが指定されたトレッド部2を有する。トレッド部2は、タイヤ1の車両装着時に車両外側となる第1トレッド端T1と、車両装着時に車両内側となる第2トレッド端T2とを含む。車両への装着の向きは、例えば、サイドウォール部(図示省略)に、文字又は記号で表示される。但し、本開示のタイヤ1は、このような態様に限定されるものではない。
【0011】
第1トレッド端T1及び第2トレッド端T2は、正規状態のタイヤ1に正規荷重の60%が負荷されキャンバー角0°で平面に接地したときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置である。
【0012】
「正規状態」とは、各種の規格が定められた空気入りタイヤの場合、タイヤが正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも、無負荷の状態である。各種の規格が定められていないタイヤや、非空気式タイヤの場合、前記正規状態は、タイヤの使用目的に応じた標準的な使用状態であって無負荷の状態を意味する。本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法等は、正規状態で測定された値である。また、本明細書において、特に断りの無い限り、前記寸法や材料の組成の測定方法には、公知の方法を適宜適用することができる。
【0013】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" である。
【0014】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0015】
「正規荷重」は、各種の規格が定められた空気入りタイヤの場合、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。各種の規格が定められていないタイヤの場合、「正規荷重」は、上述の規格に準じ、タイヤを使用する上で適用可能な最大の荷重を指す。
【0016】
トレッド部2は、第1トレッド端T1と第2トレッド端T2との間でタイヤ周方向に連続して延びる複数の周方向溝3と、周方向溝3に区分された複数の陸部4とを含む。本実施形態のタイヤ1は、トレッド部2が4本の周方向溝3に区分された5つの陸部4を有する所謂5リブのタイヤとして構成されている。但し、本開示のタイヤ1は、このような態様に限定されるものではなく、例えば、トレッド部2が3本の周方向溝3に区分された4つの陸部4を有する所謂4リブのタイヤとして構成されても良い。
【0017】
周方向溝3は、第1ショルダー周方向溝5を含む。第1ショルダー周方向溝5は、複数の周方向溝3のうち、最も第1トレッド端T1側に設けられている。さらに、周方向溝3は、第2ショルダー周方向溝6、第1クラウン周方向溝7及び第2クラウン周方向溝8を含む。第2ショルダー周方向溝6は、複数の周方向溝3のうち、最も第2トレッド端T2側に設けられている。第1クラウン周方向溝7は、第1ショルダー周方向溝5とタイヤ赤道Cとの間に設けられている。第2クラウン周方向溝8は、第2ショルダー周方向溝6とタイヤ赤道Cとの間に設けられている。
【0018】
タイヤ赤道Cから第1ショルダー周方向溝5又は第2ショルダー周方向溝6の溝中心線までの距離L1は、トレッド幅TWの25%~35%であるのが望ましい。タイヤ赤道Cから第1クラウン周方向溝7又は第2クラウン周方向溝8の溝中心線までの距離L2は、トレッド幅TWの5%~15%であるのが望ましい。なお、トレッド幅TWは、前記正規状態における第1トレッド端T1から第2トレッド端T2までのタイヤ軸方向の距離である。
【0019】
本開示の陸部4は、第1ショルダー陸部11を含む。第1ショルダー陸部11は、第1ショルダー周方向溝5のタイヤ軸方向外側に区分されており、第1トレッド端T1を含んでいる。さらに、本実施形態の陸部4は、第2ショルダー陸部12、第1ミドル陸部13、第2ミドル陸部14及びクラウン陸部15を含む。第2ショルダー陸部12は、第2ショルダー周方向溝6のタイヤ軸方向外側に区分されており、第2トレッド端T2を含んでいる。第1ミドル陸部13は、第1ショルダー周方向溝5と第1クラウン周方向溝7との間に区分されている。第2ミドル陸部14は、第2ショルダー周方向溝6と第2クラウン周方向溝8との間に区分されている。クラウン陸部15は、第1クラウン周方向溝7と第2クラウン周方向溝8との間に区分されている。
【0020】
図2には、第1ショルダー陸部11の拡大図が示されている。
図2に示されるように、第1ショルダー陸部11は、第1ショルダー周方向溝5の側の第1縦エッジ16と、第1縦エッジ16と第1トレッド端T1との間のタイヤ軸方向の中心位置であるショルダー中心位置11cとを含む。また、第1ショルダー陸部11には、第1縦エッジ16から少なくとも第1トレッド端T1まで延びる複数の第1ショルダーサイプ18が設けられている。
【0021】
本明細書において、「サイプ」とは、小さな幅を有する溝状体(溝及びサイプを含む概念である)であって、後述される面取り部を除いた領域において、2つの内壁の間の幅が2.0mm以下であるものを意味する。また、前記面取り部を除いた領域とは、2つの内壁が互いに略平行にタイヤ半径方向に延びる領域を意味する。「略平行」とは、2つの内壁の間の角度が10°以下である態様を意味する。前記領域における2つの内壁の間の幅は、望ましくは1.5mm以下であり、より望ましい態様では0.4~1.0mmとされる。また、サイプの全深さは、例えば、3.0~5.5mmとされる。また、サイプは、底部において幅が拡大した所謂フラスコ底を備えるものでも良い。なお、本明細書では、ある溝状体において、前記幅が2.0mmを超える領域が、その溝状体の全深さの50%を超える場合、その溝状体は、溝として扱うものとする。
【0022】
図3には、第1ショルダーサイプ18の拡大図が示されている。
図4には、
図3のA-A線断面図が示されている。
図5には、
図3のB-B線断面図が示されている。
図3~5に示されるように、本開示の複数の第1ショルダーサイプ18は、それぞれ、第1縦エッジ16から第1トレッド端T1までの長さ方向の全範囲において、面取り部20が形成されている。本実施形態では、2つのサイプ壁の両方が傾斜面20aを含むことにより、面取り部20が形成されているが、本開示の面取り部20は、2つのサイプ壁のいずれか一方のみが傾斜面20aを含むものでも良い。
【0023】
面取り部20は、ショルダー中心位置11cと第1縦エッジ16との間の第1面取り部21と、ショルダー中心位置11cと第1トレッド端T1との間の第2面取り部22とを含む。本開示では、第2面取り部22の面取り体積V2は、第1面取り部21の面取り体積V1よりも大きい。本開示のタイヤ1は、上記の構成を採用したことによって、ノイズ性能の悪化を抑制しつつ、旋回性能を向上させることができる。そのメカニズムは、以下の通りである。
【0024】
図6には、面取り部が設けられていない従来のサイプaが路面Gに接地したとき状態を示す拡大断面図が示されている。
図6は、ブレーキ時の状態を示すものであり、矢印Rがタイヤの回転方向、矢印Aがタイヤの進行方向を示している。
図6に示されるように、一般に、面取り部が設けられていないサイプaの周辺では、ブレーキ時や旋回時など、大きなせん断力(
図6では、制動力である。)が作用したときに、サイプaのエッジbが陸部の踏面下に引き込まれる現象が発生し、ひいてはその付近の陸部の面cが局所的に路面から浮き上がり、十分にグリップを発揮できない場合がある。これにより、従来では、ブレーキ性能や旋回性能が損なわれる傾向があった。
【0025】
図3に示されるように、本開示では、複数の第1ショルダーサイプ18が、それぞれ、第1縦エッジ16から第1トレッド端T1までの長さ方向の全範囲において、面取り部20が形成されている。このため、本開示のタイヤ1は、上述の不具合を抑制でき、ブレーキ性能や旋回性能を高めることができる。また、本開示では、第2面取り部22の面取り体積V2が相対的に大きいため、第1ショルダー陸部11の第1トレッド端T1側において、面取り部の大きさを十分に確保できる。これにより、第1ショルダーサイプ18の第2面取り部22の形成範囲において、接地性がより一層向上し、ブレーキ性能のさらなる向上が期待できる。
【0026】
また、一般に、サイプの面取り体積が大きくなると、サイプ容積の増大に起因する走行ノイズ(例えば、ポンピングノイズである。)が大きくなる傾向がある。本開示では、第1面取り部21の面取り体積V1が相対的に小さいことにより、面取り部20に起因したサイプ容積の増大に伴うノイズの増加を抑制でき、ノイズ性能の悪化を抑制することができる。
【0027】
図7には、面取り部20の拡大断面図が示されている。
図7に示されるように、面取り部20は、第1ショルダーサイプ18のサイプ壁25と第1ショルダー陸部11の踏面11sとで尖った角部分が構成されないよう、前記サイプ壁25の本体25aと前記踏面11sとを繋ぐように傾斜した傾斜面20aを含むものである。本実施形態の傾斜面20aは、平面状(すなわち、サイプの横断面において直線状)であるが、傾斜面20aは、タイヤ半径方向外側に凸に滑らかに湾曲するものでも良い。また、面取り部20の開口幅は、例えば、2.0mmを超えても良い。面取り部20の深さd2は、例えば、第1ショルダーサイプ18の全深さd1(
図4に示す)の5%~20%である。
【0028】
面取り体積は、以下の通り定義される。すなわち、面取り体積は、面取り部20の傾斜面20aと、第1ショルダー陸部11の踏面11sを第1ショルダーサイプ18の開口幅方向に延長した仮想踏面11vと、サイプ壁25の本体25aを仮想踏面11vまで延長した仮想サイプ壁25vとに囲まれた領域の体積を意味する。
図7に示されるように、2つのサイプ壁25の両方が傾斜面20aを備えている場合、ドットで着色された2つの領域の体積の合計が、面取り体積となる。
【0029】
面取り部20の傾斜面20aは、サイプ壁25の本体25aから第1ショルダー陸部11の踏面11sまでの面を意味する。なお、前記正規状態のタイヤ1に正規荷重の60%が負荷されキャンバー角0°で平面に接地したときに前記平面に接触する第1ショルダー陸部11の外面の端が、傾斜面20aと踏面11sとの境界27となる。仮想踏面11vは、前記境界27から前記踏面11sをサイプの開口幅方向に延長した仮想の面であり、踏面が湾曲している場合、前記仮想踏面11vは、第1ショルダーサイプ18の横断面において、前記境界27から前記踏面11sの曲率を維持したまま延びる曲線に相当する。
【0030】
仮想サイプ壁25vは、サイプ壁25の本体25aと傾斜面20aとの境界28から、前記本体25aを仮想踏面11vまで延長した仮想の面である。サイプ壁25の本体25aと傾斜面20aとの境界28は、サイプ壁25のタイヤ半径方向に対する角度が急変する位置である。なお、前記急変する位置が、実質的な幅を持った領域である場合、その最も溝中心線側の位置が、前記境界28に相当する。
【0031】
以下、本実施形態のさらに詳細な構成が説明される。なお、以下で説明される各構成は、本実施形態の具体的態様を示すものである。したがって、本開示は、以下で説明される構成を備えないものであっても、上述の効果を発揮し得るのは言うまでもない。また、上述の特徴を備えた本開示のタイヤに、以下で説明される各構成のいずれか1つが単独で適用されても、各構成に応じた性能の向上は期待できる。さらに、以下で説明される各構成のいくつかが複合して適用された場合、各構成に応じた複合的な性能の向上が期待できる。
【0032】
図2に示されるように、本実施形態では、第1縦エッジ16と第1トレッド端T1との間において、第1ショルダー陸部11の踏面11sには、サイプのみが設けられており、溝が設けられていない。これにより、旋回性能がより一層向上する。但し、本開示は、このような態様に限定されるものではなく、第1ショルダー陸部11の踏面11sに溝が設けられても良い。
【0033】
第1ショルダーサイプ18のタイヤ周方向に対する角度(鋭角側の角度である。)は、第1縦エッジ16から第1トレッド端T1に向かって連続して大きくなっているのが望ましい。これにより、旋回性能及びブレーキ性能がバランス良く向上する。
【0034】
第1縦エッジ16において、第1ショルダーサイプ18のタイヤ周方向に対する角度θ1は、望ましくは30°以上、より望ましくは50°以上、さらに望ましくは60°以上であり、望ましくは80°以下、より望ましくは70°以下である。
図2で示される実施形態では、前記角度θ1が70~80°程度とされるが、これに限定されるものではなく、他の実施形態では、前記角度θ1は30~70°でも良い。このような第1ショルダーサイプ18は、第1縦エッジ16側において、タイヤ軸方向に大きな摩擦力を提供し、旋回性能をさらに向上させることができる。一方、第1トレッド端T1において、複数の第1ショルダーサイプ18のタイヤ周方向に対する角度θ2は、例えば、60~90°であり、望ましくは80~90°である。
【0035】
図3に示されるように、面取り部20は、その断面積がタイヤ軸方向外側に向かって大きくなっている。本実施形態の面取り部20は、前記断面積が第1縦エッジ16から第1トレッド端T1まで連続して大きくなっている。これにより、第1ショルダーサイプ18周辺の偏摩耗が抑制される。
【0036】
ノイズ性能と旋回性能とをバランス良く向上させる観点から、第2面取り部22の面取り体積V2は、第1面取り部21の面取り体積V1の望ましくは1.5倍以上、より望ましくは2.0倍以上であり、望ましくは5.0倍以下、より望ましくは4.0倍以下である。
【0037】
図4及び
図5に示されるように、本実施形態では、2つのサイプ壁25のそれぞれに傾斜面20aが含まれることにより、面取り部20が2つの傾斜面20aを含み、これら2つの傾斜面20aがサイプ横断面におけるサイプ中心線に対して線対称の形状を備えている。但し、傾斜面20aは、このような態様に限定されるものではなく、例えば、2つの傾斜面20aが互いに異なる形状を備えるものでも良い。
【0038】
傾斜面20aのタイヤ半径方向に対する角度は、例えば、20~70°である。また、第2面取り部22における傾斜面20aのタイヤ半径方向に対する角度θ3は、第1面取り部21における傾斜面20aのタイヤ半径方向に対する角度θ4よりも大きい。これにより、旋回性能がより一層向上し得る。
【0039】
図2に示されるように、本実施形態の第1ショルダー陸部11には、複数のショルダー途切れサイプ30が設けられている。ショルダー途切れサイプ30は、少なくとも第1トレッド端T1から第1縦エッジ16側に延び、かつ、第1ショルダー陸部11の踏面11s内に途切れ端30aを有している。ショルダー途切れサイプ30は、第1縦エッジ16から第1トレッド端T1までの長さ方向の全範囲において、面取り部31が形成されている。また、ショルダー途切れサイプ30の面取り部31は、その断面積が前記途切れ端30aから第1トレッド端T1まで連続して大きくなっている。このようなショルダー途切れサイプ30は、上述の第1ショルダーサイプ18とともに、ノイズ性能の悪化を抑制しつつ、旋回性能を高めることができる。
【0040】
図8には、第2ショルダー陸部12の拡大図が示されている。本実施形態の第2ショルダー陸部12には、複数の第2ショルダーサイプ35が設けられている。第2ショルダーサイプ35は、第2トレッド端T2から第2ショルダー周方向溝6まで延びている。複数の第2ショルダーサイプ35は、それぞれ、第2ショルダー周方向溝6から第2トレッド端T2までの長さ方向の全範囲において、面取り部36が形成されている。
【0041】
第2ショルダーサイプ35の面取り部36には、上述の第1ショルダーサイプ18の面取り部20の構成を適用することができ、ここでの説明は省略される。本実施形態のタイヤ1は、このような第2ショルダーサイプ35を含むことにより、上述の効果をさらに高めることができる。
【0042】
図9には、第1ミドル陸部13、第2ミドル陸部14及びクラウン陸部15の拡大図が示されている。
図9に示されるように、第1ミドル陸部13には、第1ミドル陸部13の踏面をタイヤ軸方向に完全に横断する第1ミドルサイプ40が設けられている。また、第1ミドルサイプ40は、その長さ方向の全範囲において、面取り部41が形成されている。より望ましい態様では、第1ミドルサイプ40の面取り部41は、その断面積がサイプのタイヤ軸方向の中心部からタイヤ軸方向の両側に向かって連続して大きくなっている。このような第1ミドルサイプ40は、上述の第1ショルダーサイプ18と相俟って、旋回性能及びブレーキ性能をバランス良く高めることができる。
【0043】
第2ミドル陸部14には、複数の外側第2ミドルサイプ43及び複数の内側第2ミドルサイプ44が設けられている。外側第2ミドルサイプ43は、第2クラウン周方向溝8からタイヤ軸方向外側に延び、第2ミドル陸部14の踏面内に途切れ端43aを有している。内側第2ミドルサイプ44は、第2ショルダー周方向溝6からタイヤ軸方向内側に延び、かつ、第2ミドル陸部14の踏面内に途切れ端を有している。
【0044】
外側第2ミドルサイプ43は、その長さ方向の全範囲において、面取り部46が形成されている。外側第2ミドルサイプ43の面取り部46は、その断面積が第2クラウン周方向溝8から前記途切れ端43aに向かって小さくなっている。一方、内側第2ミドルサイプ44は、面取り部が形成されていない。このような外側第2ミドルサイプ43及び内側第2ミドルサイプ44は、陸部の偏摩耗を抑制しつつ、ブレーキ性能を向上させることができる。
【0045】
クラウン陸部15には、複数のクラウンサイプ50が設けられている。クラウンサイプ50は、例えば、第2クラウン周方向溝8からタイヤ赤道C側に延び、かつ、クラウン陸部15の踏面15s内に途切れ端50aを有している。また、クラウンサイプ50は、その長さ方向の全範囲において、面取り部51が形成されている。クラウンサイプ50の面取り部51は、その断面積が第2クラウン周方向溝8から途切れ端50aに向かって小さくなっている。このようなクラウンサイプ50は、陸部の偏摩耗を抑制しつつ、ブレーキ性能を向上させることができる。
【0046】
図1に示されるように、本実施形態の各陸部には、サイプのみが設けられており、溝が設けられていない。これにより、旋回性能及びブレーキ性能がより一層向上する。
【0047】
以上、本開示の一実施形態のタイヤが詳細に説明されたが、本開示は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【0048】
[付記]
本開示は以下の態様を含む。
【0049】
[本開示1]
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、第1トレッド端と、最も前記第1トレッド端側でタイヤ周方向に連続して延びる第1ショルダー周方向溝と、前記第1ショルダー周方向溝のタイヤ軸方向外側に区分された第1ショルダー陸部とを含み、
前記第1ショルダー陸部は、前記第1ショルダー周方向溝の側の第1縦エッジと、前記第1縦エッジと前記第1トレッド端との間のタイヤ軸方向の中心位置であるショルダー中心位置とを含み、
前記第1ショルダー陸部には、前記第1縦エッジから少なくとも前記第1トレッド端まで延びる複数の第1ショルダーサイプが設けられ、
前記複数の第1ショルダーサイプは、それぞれ、前記第1縦エッジから前記第1トレッド端までの長さ方向の全範囲において、面取り部が形成されており、
前記面取り部は、前記ショルダー中心位置と前記第1縦エッジとの間の第1面取り部と、前記ショルダー中心位置と前記第1トレッド端との間の第2面取り部とを含み、
前記第2面取り部の面取り体積V2は、前記第1面取り部の面取り体積V1よりも大きい、
タイヤ。
[本開示2]
前記面取り体積V2は、前記面取り体積V1の1.5~5.0倍である、本開示1に記載のタイヤ。
[本開示3]
前記複数の第1ショルダーサイプのタイヤ周方向に対する角度は、前記第1縦エッジから前記第1トレッド端に向かって連続して大きくなっている、本開示1又は2に記載のタイヤ。
[本開示4]
前記第1縦エッジにおいて、前記複数の第1ショルダーサイプのタイヤ周方向に対する角度は、30~70°である、本開示1ないし3のいずれかに記載のタイヤ。
[本開示5]
前記第1トレッド端において、前記複数の第1ショルダーサイプのタイヤ周方向に対する角度は、80~90°である、本開示1ないし4のいずれかに記載のタイヤ。
[本開示6]
前記第1縦エッジと前記第1トレッド端との間において、前記第1ショルダー陸部の踏面には、サイプのみが設けられている、本開示1ないし5のいずれかに記載のタイヤ。
【符号の説明】
【0050】
2 トレッド部
5 第1ショルダー周方向溝
11 第1ショルダー陸部
11c ショルダー中心位置
16 第1縦エッジ
18 第1ショルダーサイプ
20 面取り部
21 第1面取り部
22 第2面取り部
T1 第1トレッド端
V1 第1面取り部の面取り体積
V2 第2面取り部の面取り体積