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特開2023-134126情報処理装置及び情報処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134126
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】情報処理装置及び情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20230920BHJP
【FI】
G05B23/02 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022039485
(22)【出願日】2022-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小谷 雄治
【テーマコード(参考)】
3C223
【Fターム(参考)】
3C223AA01
3C223FF05
3C223FF33
3C223FF47
3C223FF52
3C223GG01
3C223HH01
(57)【要約】
【課題】プラントの点検回数を適正化して点検を効率化する情報処理装置及び情報処理プログラムを提供する。
【解決手段】データ収集部11は、プラント1に配置された保全機器の設置場所の情報、保全機器の周囲環境情報及び保全機器のシステム状態情報を取得する。交換周期算出部13は、設置場所の情報、周囲環境情報及びシステム状態情報を基に、保全機器の機器状態を推定し、機器状態、保全機器に搭載された交換部品の推奨交換周期、及び、過去に提案した交換部品の提案交換周期を基に、交換部品の暫定交換周期を算出する。点検周期演算部16は、暫定交換周期、推奨交換周期及び保全機器の点検記録を基に交換部品の提案交換周期を算出して保全機器の点検周期を算出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントに配置された保全機器の設置場所の情報、前記保全機器の周囲環境情報及び前記保全機器のシステム状態情報を取得するデータ収集部と、
前記データ収集部により取得された前記設置場所の情報、前記周囲環境情報及び前記システム状態情報を基に、前記保全機器の機器状態を推定し、推定した前記機器状態、前記保全機器に搭載された交換部品の推奨交換周期、及び、過去に提案した前記交換部品の提案交換周期を基に、前記交換部品の暫定交換周期を算出する交換周期算出部と、
前記交換周期算出部により算出された前記暫定交換周期、前記推奨交換周期及び前記保全機器の点検記録を基に前記交換部品の前記提案交換周期を算出して前記保全機器の点検周期を算出する点検周期演算部と
を備えたことを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記交換周期算出部は、
前記機器状態を推定して、推定した前記機器状態を基に前記推奨交換周期を修正して第1交換周期を算出する機器状態推定演算部と、
前記機器状態推定演算部により算出された前記第1交換周期に対して、前記交換部品の過去に提案した前記提案交換周期を基に補正を加えた第2交換周期を算出して前記暫定交換周期とする補正部と
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記点検周期演算部は、前記点検周期を表形式にした機器交換計画表を作成して出力することを特徴とする請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記点検周期演算部は、前記提案交換周期を基に決定された、前記提案交換周期の算出に用いる演算に含まれるパラメータの調整の情報の入力を受けて、前記パラメータを調整した前記演算を行なって新たな提案交換周期を算出することを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記周囲環境情報は、温湿度、塵埃の浮遊量及び腐食性ガスの濃度を含むことを特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載の情報処理装置。
【請求項6】
プラントに配置された保全機器の設置場所の情報、前記設置場所の周囲環境情報及び前記保全機器のシステム状態情報を取得し、
前記設置場所の情報、前記周囲環境情報及び前記システム状態情報を基に、前記保全機器の機器状態を推定し、
推定した前記機器状態、前記保全機器に搭載された交換部品の推奨交換周期、及び、前記交換部品の過去に提案した提案交換周期を基に、前記交換部品の暫定交換周期を算出しと、
前記暫定交換周期、前記推奨交換周期及び前記保全機器の点検記録を基に前記交換部品の前記提案交換周期を算出して前記保全機器の点検周期を算出する
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置及び情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
石油、石油化学、化学、ガスなどを用いた各種プラントにおいて使用される制御システムは、定期的にメンテナンスが行われることで長期間の安定稼働が維持されている。プラントの制御システムに使用されている部品の多くは有寿命品であり、目安となる耐用年数などの基準が予め指定されている。その基準にしたがい、各部品の交換作業や清掃作業など長期的な保全計画が策定される。
【0003】
目安となる耐用年数は各部品の製造元などから指定されているが、部品の使用条件や使用環境により劣化や消耗の進行に大きな差が生じる。例えば、サーバルームのような理想的な環境であれば耐用年数の上限まで使用可能となる。これに対して、周囲が高温高湿な場所や腐食性ガス雰囲気の場所であれば耐用年数未満でも故障するリスクが高まる。
【0004】
プラント計装設備やコンピュータ設備などの各種設備を設置する環境条件としては、それら設備の安全操業を維持するために、設備機器内の温度、設備機器の周囲温度、設備機器の周囲湿度、設備機器周囲の浮遊塵埃量、設備機器周囲の腐食性ガス濃度などを考慮しなければならない。
【0005】
一般に、これら設置環境条件の温湿度、塵埃、腐食性ガスなどは、長期間にわたって各種設備にストレスを与え続ける。これらのストレスが徐々に蓄積される結果、各種設備の機能に劣化や低下が発生してついには操業停止に至り、ユーザーに重大な機会損失を与えてしまうことになる。
【0006】
このような設備の操業停止による機会損失の発生を防止するためには、設置環境条件を的確に測定把握し、その測定結果に基づいて設備の保守計画を立案実行して設備の信頼性を長期にわたって維持することがきわめて重要である。
【0007】
そこで従来、保全計画の策定は、サービスエンジニアが、設置環境診断データ、故障データ及び過去の点検履歴などを参照して総合的に判断して保全周期の提案や保全処置の提案を行う。設置環境データとは、各部品が内蔵された装置の設置環境の温湿度、塵埃及び腐食性ガスなどを測定したデータである。また、故障データは、過去の故障機器の履歴の情報である。
【0008】
なお、点検計画に関する技術として、以下のような技術が提案されている。例えば、プラントの各領域の点検箇所、各劣化事象及び点検周期を含んだ保全情報に基づき、定期検査に対して各劣化事象を振り分けた点検計画を生成し、点検計画から定期検査における点検物量を計算し、定期検査における点検物量を平準化する技術がある(例えば、特許文献1。)。また、過去の工事記録と保全対象機器の管理基準値を、データ項目と関連させて蓄積しておき、蓄積されたデータに基づき保全対象機器ごとに回帰分析を行い、回帰分析の結果に応じて次期点検周期を変更する技術がある(例えば、特許文献2。)。また、点検対象物の正常状態と各故障状態との間及び各故障状態間での各状態遷移確率、故障状態に応じた損害額及び修理費、並びに状態変化に基づく状態遷移モデルを用いて損害額及び修理費の期待値を求め、総費用が最小になる点検計画を決定する技術がある(例えば、特許文献3。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2016-014958号公報
【特許文献2】特開2002-297810号公報
【特許文献3】特開2004-334457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、サービスエンジニアが、各種のデータを参照したうえで総合的に判断して保全計画を策定する方法では、サービスエンジニアによる定性的な判断に依存するため、経験が浅いサービスエンジニアなどには適切な立案が困難である。そのため、適切な保全計画の提案がなされない状況も発生し、点検を効率的に行うことは困難である。また、従来の保全計画の策定では、点検対象が設置されている環境の情報が考慮されておらず、環境に応じた適切な点検周期を算出が難しく、点検を効率的に行うことは困難である。
【0011】
開示の技術は、プラントの点検回数を適正化して点検を効率化する情報処理装置及び情報処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願の開示する情報処理装置及び情報処理プログラムの一つの態様において、データ収集部は、プラントに配置された保全機器の設置場所の情報、前記保全機器の周囲環境情報及び前記保全機器のシステム状態情報を取得する。交換周期算出部は、前記データ収集部により取得された前記設置場所の情報、前記周囲環境情報及び前記システム状態情報を基に、前記保全機器の機器状態を推定し、推定した前記機器状態、前記保全機器に搭載された交換部品の推奨交換周期、及び、過去に提案した前記交換部品の提案交換周期を基に、前記交換部品の暫定交換周期を算出する。点検周期演算部は、前記交換周期算出部により算出された前記暫定交換周期、前記推奨交換周期及び前記保全機器の点検記録を基に前記交換部品の前記提案交換周期を算出して前記保全機器の点検周期を算出する。
【発明の効果】
【0013】
1つの側面では、本発明は、プラントの点検回数を適正化して点検を効率化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、実施の形態に係るシステムの全体構成例を説明する図である。
図2図2は、情報処理装置に格納される情報の一覧を示す図である。
図3図3は、点検周期演算部により作成される機器交換計画表の一例の図である。
図4図4は、ユーザーに応じた調整のためのパラメータの一例を示す図である。
図5図5は、設置環境に問題のない、良好な環境に保全機器が設置されている場合の保全レポートの一例を示す図である。
図6図6は、設置環境にやや問題のある環境に保全機器が設置されている場合の保全レポートの一例を示す図である。
図7図7は、実施の形態に係る情報処理装置による保全計画策定処理のフローチャートである。
図8図8は、情報処理装置のハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本願の開示する情報処理装置及び情報処理プログラムの実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略し、各実施形態は、矛盾のない範囲内で適宜組み合わせることができる。
【0016】
[実施の形態]
[全体構成]
図1は、実施の形態に係る情報処理装置の全体構成例を説明する図である。図1に示すように、情報処理装置10は、プラント1及び端末装置2とは、有線や無線を問わず、ネットワークを介して接続される。
【0017】
プラント1は、石油、石油化学、化学、ガスなどを用いた各種プラントの一例であり、生成物を得るためのさまざまな施設を備える工場等を含む。生成物の例は、LNG(液化天然ガス)、樹脂(プラスチック、ナイロン等)、化学製品等である。施設の例は、工場施設、機械施設、生産施設、発電施設、貯蔵施設、石油、天然ガス等を採掘する井戸元における施設等である。
【0018】
プラント1内は分散制御システム(Distributed Control Systems:DCS)などを用いて構築される。例えば、図示は省略したが、プラント1内の制御システムが、プラント1で利用されるプロセスデータを用いて、制御を行う対象の設備に設置されたフィールド機器などの制御機器や、制御を行う対象の設備に対応する操作機器などに対して各種制御を実行する。制御システムは、例えばサーバなどのコンピュータを含む。
【0019】
[情報処理装置]
情報処理装置10は、プラント1に配置された制御システムに搭載される保全の対象となる各種交換部品に対する保全計画を作成する装置である。以下の説明では、保全対象となる制御システムや工業用コンピュータなどを「保全機器」と呼ぶ。さらに、保全機器に内蔵された定期的に交換が行われる経年劣化部品や消耗品を「交換部品」と呼ぶ。
【0020】
交換部品には、例えば、工業用のコンピュータに設けられた、ハードディスクや、フィルターや、パッキンや、ガスケットなどである。プラント1では、作業支援装置などの制御に用いるために、各種コンピュータがコンピュータ室以外の作業現場に近い場所に配置されることがある。作業現場に近い場所は、塵埃の浮遊量が多い環境や、腐食性雰囲気の高い環境や、磁界の影響が強い環境といった、交換部品を劣化させる様々な環境が考えられる。そのため、コンピュータ室に置かれている機器とは異なり、プラント1に特有の環境に応じた保全を行うことが強く求められる。
【0021】
情報処理装置10は、図1に示すように、データ収集部11、機器データ格納部12、交換周期算出部13、学習データ格納部14、交換基礎データ格納部15及び点検周期演算部16を有する。
【0022】
機器データ格納部12、学習データ格納部14及び交換基礎データ格納部15は、記憶装置である。図2は、情報処理装置に格納される情報の一覧を示す図である。
【0023】
機器データ格納部12は、図2に示すように、システム状態データ、保全機器リスト及び設置環境データを格納する。システム状態データは、各保全機器の内部電圧及びバッテリ電圧などデータや動作回数などといった各保全機器から取得できる情報である。制御システム保全機器リストは、定期的に交換が行われる経年劣化部品や消耗品といった交換部品を含む保全対象となる保全機器の一覧である。保全機器リストは、機器仕様書に基づいて作成されて、機器データ格納部12に予め格納される。保全機器リストには、各保全機器が設置された設置場所及び各保全機器に搭載された交換部品の情報も登録される。設置場所には、例えば、中央制御室、現場制御盤及び電気室といったものがある。設置環境データは、保全機器の周囲の環境を示す周囲環境情報を含む。周囲環境情報には、温湿度、腐食度、磁界の強さ及び塵埃の浮遊量などの情報が含まれる。腐食度は、例えば腐食性ガスの濃度で表される。設置環境データは、プラント1内における保全機器が配置された空間に配備された設置環境測定ユニットから取得可能である。
【0024】
学習データ格納部14は、交換周期の補正時に用いられる学習データを格納する。学習データは、保全機器毎のシステム状態や設置環境に基づき情報処理装置10により決定された過去の提案交換周期の情報を含む。学習データは、以降に説明する保全計画策定処理により作成された保全計画から得られた提案交換周期の情報が学習データ格納部14に格納される。
【0025】
交換基礎データ格納部15は、点検記録データ及び推奨交換周期の情報を格納する。点検記録データは、定期点検で測定された各保全機器における交換部品の校正情報、故障情報及び交換履歴を含む保全機器の点検記録の情報である。点検記録データは、定期点検レポートに基づき作成されて、交換基礎データ格納部15に予め格納される。推奨交換周期は、制御システムを構成する有寿命部品及び経年劣化部品である交換部品の製造元などから提供される推奨交換周期の情報である。推奨交換周期の情報は、交換部品の製造元などから提供される仕様書に記載されており、その仕様書に記載された情報が交換基礎データ格納部15に予め格納される。
【0026】
図1に戻って説明を続ける。データ収集部11は、各保全機器の内部電圧及びバッテリ電圧などデータや動作回数などの保全対象機器の動作情報などを含むシステム状態情報を、プラント1に配置された各保全機器から取得する。また、データ収集部11は、温湿度、腐食度、磁界の強度及び塵埃の浮遊量などの情報を含む保全機器が配置されたプラント1の特有の周囲環境情報を、プラント1に配置された各保全機器から取得する。そして、データ収集部11は、収集した情報に基づいてシステム状態データ及び設置環境データを生成して機器データ格納部12に格納する。情報処理装置10における保全計画策定処理は、保全機器リストに記載された全ての保全機器に対して順次行われる。
【0027】
交換周期算出部13は、各保全機器が配置されたプラント1に特有の環境情報、推奨交換周期及び交換部品の過去の提案交換周期を基に、各保全機器における実際の運用に適用する前の交換部品毎の暫定的な交換周期である暫定交換周期を算出する。以下に、交換周期算出部13の詳細について説明する。交換周期算出部13は、例えば、機器状態推定部131及び補正部132を有する。
【0028】
機器状態推定部131は、システム状態データ、保全機器リスト及び設置環境データを機器データ格納部12から取得する。そして、機器状態推定部131は、保全機器リストから点検周期を求める対象とする保全機器を抽出する。
【0029】
次に、機器状態推定部131は、抽出した保全機器について、システム状態データ及び設置環境データを用いて重回帰分析を行い、機器状態を判定する。例えば、機器状態推定部131は、各保全機器の機器状態を良好から劣悪までの4段階に分類する。
【0030】
より具体的には、機器状態推定部131は、設置環境データを基に、例えば、プラント1に特有の浮遊塵埃量、亜硫酸ガス濃度、硫化水素濃度、塩素ガス濃度について、問題なし、経過観察、再検査、要精密検査のような4段階で判定することで環境状態を把握する。
【0031】
さらに、各環境状態に対して交換部品の種類毎に、例えば以下のような関係が考えらえる。例えば、周囲温度が高い場合、バッテリや電源ユニット(電解コンデンサ)の劣化が進むことが考えられる。また、塵埃が多い場合、フィルターやDVDなどの可動部品(回転体など)にホコリがたまり劣化が進むことが考えられる。また、腐食性ガスの濃度が高い場合、電子基盤を腐蝕させて劣化を進行させることが考えられる。ガス成分により影響する金属は若干異なるが、腐食性ガスは、電子部品全般に影響があると考えられる。具体的には、亜硫酸ガスは、銅、鉄、亜鉛及びアルミニウムなどを劣化させ、硫化水素は銅及び銀を劣化させ、塩素ガスは銅、すず、銀及び鉄を劣化させると考えられる。すなわち、腐食性雰囲気の高い環境であれば、コンピュータや制御システムなどの保全機器の交換周期を短くする方針となる。そこで、機器状態推定部131は、上述した方法で把握した環境状態によるそれぞれの交換部品の劣化への影響を考慮して、各保全機器の機器状態を判定する。
【0032】
次に、機器状態推定部131は、抽出した保全機器に搭載された交換部品の種類毎の推奨交換周期の情報を交換基礎データ格納部15から取得する。そして、機器状態推定部131は、保全機器の機器状態の判定結果に応じて、それぞれの交換部品の推奨交換周期を修正して第1交換周期を設定する。その後、機器状態推定部131は、保全機器に搭載された各交換部品に関する第1交換周期の情報を補正部132へ出力する。
【0033】
例えば、機器状態推定部131は、以下の方法で第1交換周期を算出する。機器状態推定部131は、機器状態に応じて推奨交換周期を修正して第1交換周期を設定する学習を行う。具体的には、機器状態推定部131は、機器状態が良好であれば搭載された交換部品の第1交換周期を推奨交換周期から長く設定し、機器状態が劣悪であれば搭載された交換部品の第1交換周期を推奨交換周期から短く設定するように学習する。そして、機器状態推定部131は、交換部品が搭載された保全機器の機器状態及びその交換部品の推奨交換周期を用いて学習結果から推奨交換周期を修正した第1交換周期を求める。
【0034】
補正部132は、対象の保全機器に搭載された交換部品毎の第1交換周期の入力を機器状態推定部131から受ける。次に、補正部132は、学習データを学習データ格納部14から取得する。そして、補正部132は、学習データの中から各保全機器の機器状態に応じた過去にサービスエンジニアP1からユーザーP2に提案された各交換部品についての提案交換周期を取得する。
【0035】
ここで、補正部132は、学習データと機器状態推定部131により設定された第1交換周期との差分に応じた補正割合を、サービスエンジニアP1からの入力により予め保持する。そして、補正部132は、学習データと機器状態推定部131により設定された交換周期とを比較して、差分に応じてサービスエンジニアP1から設定された割合で補正して第2交換周期を交換部品毎に作成する。その後、補正部132は、作成した第2交換周期を暫定交換周期として点検周期演算部16へ出力する。
【0036】
ここで、交換周期算出部13による暫定交換周期の演算の一例について説明する。例えば、交換周期算出部13は、次の数式(1)を保持する。
【0037】
【数1】
【0038】
ここで、Dnは保全機器の識別情報であり、Cnは客先名であり、Ynは提案年度であり、a1は設置環境であり、a2は推奨交換周期であり、a3は提案交換周期である。交換周期算出部13は、交換部品毎にa1~a3のデータセットに対して数式(1)を用いて重回帰分析を行い、提案交換周期を学習する。
【0039】
さらに、交換周期算出部13は、次の数式(2)を保持する。
【0040】
【数2】
【0041】
ここで、Pnは、提案毎の重みづけであり、サービスエンジニアP1が設定変更可能なパラメータである。また、fは、学習データである。
【0042】
交換周期算出部13は、数式(1)で求められるSに対して提案毎の回帰分析を行う。そして、交換周期算出部13は、数式(2)により算出された学習データを、同じ識別情報を有する保全機器の機器状態の推定結果に対して加算することで、特定の客先の各保全機器に関する交換部品毎の暫定交換周期を算出する。この場合、交換周期算出部13は、数式(1)及び(2)を用いた学習に基づく演算により、機器状態を用いた第1交換周期の算出及び学習データを用いた第2交換周期の算出をまとめて行い、暫定交換周期を算出する。
【0043】
点検周期演算部16は、対象とする保全機器に搭載された各交換部品に対する暫定交換周期の入力を補正部132から受ける。また、点検周期演算部16は、点検記録データ及び推奨交換周期を交換基礎データ格納部15から受ける。次に、点検周期演算部16は、取得した暫定交換周期を用いて、点検記録及び推奨交換周期に応じて、実際の運用に合わせた提案交換周期を決定して点検周期を算出する。
【0044】
例えば、点検周期演算部16は、プラント稼働中で交換が可能な交換部品であれば、暫定交換周期をそのまま提案交換周期として点検周期を決定する。また、点検周期演算部16は、定期修繕で交換する交換部品については、暫定交換周期を基に、点検記録データ及び定期修繕の周期を考慮して推奨交換周期を超えないように提案交換周期を決定する。そして、点検周期演算部16は、決定した交換部品のそれぞれの提案交換周期にしたがって、保全機器の点検周期を算出する。
【0045】
そして、点検周期演算部16は、交換部品毎の算出した提案交換周期を含む保全機器の点検周期を表形式にまとめて、機器交換計画表20を生成する。その後、点検周期演算部16は、機器交換計画表20をサービスエンジニアP1が操作する端末装置2へ送信する。
【0046】
図3は、点検周期演算部により作成される機器交換計画表の一例の図である。図3に示した保全機器#1は、交換部品A~Cという3つの交換部品を搭載する。機器交換計画表20には、推奨交換周期、機器設置状態の判定結果、提案交換周期、過去提案事例データが登録される。さらに、機器交換計画表20には、今後の保全計画として、交換部品A~C毎に、いつの定期修繕で交換を行うか、もしくは、定期修繕以外で交換をおこなう時期が登録される。機器交換計画表20は、保全機器毎に作成される。
【0047】
その後、点検周期演算部16が出力した機器交換計画表20に対してユーザーP2に合わせた調整の実行をサービスエンジニアP1が決めた場合、点検周期演算部16は、ユーザーP2に応じたパラメータの調整値の入力を端末装置2から受ける。そして、点検周期演算部16は、取得したパラメータの調整値に応じて点検周期の算出に用いる演算を調整し、調整した演算を用いて対象とする保全機器に搭載された各交換部品の点検周期を再度算出し、機器交換計画表20を新たに作成して端末装置2へ送信する。
【0048】
端末装置2は、機器交換計画表20の入力を点検周期演算部16から受信する。そして、端末装置2は、受信した機器交換計画表20をモニタに表示するなどしてサービスエンジニアP1に提供する。
【0049】
サービスエンジニアP1は、端末装置2を用いて情報処理装置10から提供された機器交換計画表20を確認する。そして、サービスエンジニアP1は、機器交換計画表20に対してユーザーP2に合わせた調整を加えるか否か、すなわち機器交換計画表20が未完成か完成したかを決定する。
【0050】
ユーザーP2に合わせた調整を加える場合、サービスエンジニアP1は、ユーザーP2の予算やリスク感度、修繕期間などの条件を考慮して、点検周期演算部16による点検周期を算出する演算におけるこれらの条件に関するパラメータを調整する。
【0051】
図4は、ユーザーに応じた調整のためのパラメータの一例を示す図である。例えば、パラメータには、故障時のリスク、保全予算及び修繕期間などが存在する。そして、各々のパラメータについて、4段階で表される調整値が設定されている。サービスエンジニアP1は、それぞれのパラメータのユーザーP2に対する調整値を決定する。例えば、サービスエンジニアP1は、ユーザーP2について、故障時のリスクが「高い」であり、保全予算は「やや多い」であり、修繕期間は「短い」であると決定する。そして、サービスエンジニアP1は、決定した各パラメータの調整値を点検周期演算部16に端末装置2を用いて入力する。
【0052】
これに対して、ユーザーP2に合わせた調整が不要で保全計画が完成している場合、サービスエンジニアP1は、端末装置2を用いて機器交換計画表20をレポート形式に変換して保全レポート25を生成して出力する。例えば、サービスエンジニアP1は、設置場所毎に保全機器をまとめ、さらに、機器交換計画表20に加えて表紙や概要などを記入できる形式に変換することで保全レポート25を生成する。その後、サービスエンジニアP1は、保全レポート25に必要事項を記入するなどしたのちに、保全レポート25をユーザーP2へ提供する。
【0053】
さらに、サービスエンジニアP1は、端末装置2を用いて、ユーザーP2に提案した各交換部品の交換周期及びそれぞれの機器状態の情報を含む学習データを生成して、学習データ格納部14に送信して格納させる。
【0054】
図5は、設置環境に問題のない、良好な環境に保全機器が設置されている場合の保全レポートの一例を示す図である。図5に示すように、保全レポート25には、例えば、ユーザーP2の名称、プラントの種類、納入年月日及び設置場所などを含むお客様情報が登録される。また、保全レポート25には、保全機器の設置場所の状態を表す設置環境診断結果が添付される。この場合、設置環境が良好である例であるので、設置環境診断結果は全て判定がOKとされている。さらに、保全レポート25には、設置環境保全機器として制御システム及び工業用PCが記載される。そして、保全機器に搭載された交換部品毎に推奨交換周期及び提案交換周期が記載される。この場合、機器状態が良好であるため、全ての交換部品の提案交換周期は推奨交換周期と一致する。
【0055】
図6は、設置環境にやや問題のある環境に保全機器が設置されている場合の保全レポートの一例を示す図である。この場合、周囲温度が高く、塩素ガスの雰囲気の場所に保全機器が設置されている場合の例である。図6に示すように、保全レポート25には、図5と同様に、お客様情報及び設置環境診断結果が添付される。この場合、周囲温度が高く、塩素ガスの雰囲気の場所の例であるので、設置環境診断結果の欄101及び欄102に示すように、周囲温度や塩素ガス濃度がNGになっている。他にも、浮遊塵埃量がNGとなっていることから、塵埃が多いことが分かる。そして、全体の検査結果はNGである。また、保全レポート25には、設置環境保全機器として制御システム及び工業用PCが記載される。この場合、設置環境にやや問題があるため、例えば、欄103に示す電源ユニットは、推奨交換周期が8年であるのに対して、提案交換周期は6年とされている。他にも、バッテリやDVDなどが設置環境の影響を受けやすく、交換周期を短くした方が良いことが分かる。このように、プラント1の特有の環境のために、通常の推奨交換周期とは異なる交換周期で交換部品の交換を行うことが好ましい場合に、本実施の形態に係る情報処理装置10は、プラント1の特有の環境に適した提案交換周期を提供できる。
【0056】
ここで、図5及び6では、各交換部品について推奨交換周期と提案交換周期とをユーザーP2に提供するフォーマットの保全レポート25を表示したが、提供内容はこれに限らない。例えば、図5の部品交換周期の個所に、図3に示した機器交換計画表20の情報を全て載せてもよい。
【0057】
[保全計画策定処理の流れ]
図7は、実施の形態に係る情報処理装置による保全計画策定処理のフローチャートである。次に、図7を参照して、実施の形態に係る情報処理装置10による保全計画策定処理の流れを説明する。ここでは、既に、機器データ格納部12に、システム状態データ、保全機器リスト及び設置環境データが格納されている場合で説明する。
【0058】
機器状態推定部131は、システム状態データ、保全機器リスト及び設置環境データを機器データ格納部12から読み込む(ステップS1)。
【0059】
次に、機器状態推定部131は、取得したシステム状態データ、保全機器リスト及び設置環境データを用いて演算を行ない、各保全対象機器の機器状態を推定する。さらに、機器状態推定部131は、機器状態の推定結果を用いて、交換基礎データ格納部15から取得した推奨交換周期に修正を加えて、各保全機器における交換部品毎の第1交換周期を算出する(ステップS2)。
【0060】
補正部132は、学習データを学習データ格納部14から取得する。そして、補正部132は、機器状態推定部131により算出された第1交換周期に対して学習データを用いて補正を加えて、各保全機器における交換部品毎の第2交換周期を算出して暫定交換周期とする(ステップS3)。
【0061】
点検周期演算部16は、暫定交換周期を基に、定期修繕の周期や推奨交換周期を考慮して演算を行ない、各保全機器における交換部品毎の提案交換周期を決定して点検周期を算出する(ステップS4)。
【0062】
その後、点検周期演算部16は、算出した点検周期を表形式にして機器交換計画表20を生成して、端末装置2に送信する(ステップS5)。
【0063】
サービスエンジニアP1は、端末装置2に送られた機器交換計画表20を確認して保全計画が完成したか否かを判定する(ステップS6)。
【0064】
保全計画が完成しておらずユーザーP2に合わせてパラメータの調整を行う場合(ステップS6:否定)、サービスエンジニアP1は、各パラメータの調整値を決定して端末装置2を用いて点検周期演算部16へ送信する。これにより、点検周期演算部16が行う点検周期の算出のための演算が調整され、ユーザーP2に応じたパラメータの調整が行われる(ステップS7)。その後、保全計画策定処理は、ステップS4へ戻る。
【0065】
これに対して、保全計画が完成した場合(ステップS6:肯定)、サービスエンジニアP1は、端末装置2を用いて機器交換計画表20をレポート形式に変換して保全レポート25を作成して出力させる。さらに、サービスエンジニアP1は、端末装置2を用いて各交換部品の提案交換周期及び機器状態を含む学習データを作成して学習データ格納部14に格納させる(ステップS8)。
【0066】
[効果]
以上に説明したように、実施の形態に係る情報処理装置は、保全機器の設置場所の環境情報を基に保全機器の機器状態を算出し、機器状態を基に保全機器に搭載された各交換部品の交換周期を修正する。さらに、情報処理装置は、過去に提案した提案交換周期を学習データとして交換周期を補正して暫定交換周期を決定する。その後、点検データなどを基に暫定交換周期を基に提案交換周期を決定して点検周期を算出し、さらに、ユーザー毎の調整を行う場合、パラメータを調整して点検周期を再度算出して、保全レポートを作成する。このように、点検データや設置環境などの定量的なデータを機械学習で学習させることで、適切な点検周期を算出することができる。これにより、プラントの点検回数を適正化して点検を効率化することができる。さらに、実施の形態に係る情報処理装置により、熟練エンジニア以外の若手エンジニアなどでも同様の提案を行うことができるため、経験に依存せずによりプラントの点検回数を適正化することが可能となる。
【0067】
[システム]
上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0068】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散や統合の具体的形態は図示のものに限られない。つまり、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。
【0069】
さらに、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPU(Central Processing Unit)および当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0070】
[ハードウェア]
次に、情報処理装置10のハードウェア構成例を説明する。図8は、情報処理装置のハードウェア構成図である。図8に示すように、情報処理装置10は、プロセッサ91、メモリ92、通信装置93及びHDD(Hard Disk Drive)94を有する。また、プロセッサ91は、バスを介してメモリ92、通信装置93及びHDD94と接続される。
【0071】
通信装置93は、ネットワークインタフェースカードなどであり、他の情報処理装置との通信に使用される。例えば、通信装置93は、プロセッサ91とプラント1に配置された制御システムなどの保全機器との間の通信を中継する。
【0072】
HDD94は、補助記憶装置である。HDD94は、機器データ格納部12、学習データ格納部14及び交換基礎データ格納部15の機能を実現する。また、HDD94は、データ収集部11、機器状態推定部131、補正部132及び点検周期演算部16の機能を実現するためのプログラムを含む各種プログラムを格納する。
【0073】
プロセッサ91は、HDD94に格納された各種プログラムを読み出してメモリ92に展開して実行する。これにより、プロセッサ91は、データ収集部11、機器状態推定部131、補正部132及び点検周期演算部16の機能を実現する。
【0074】
このように、情報処理装置10は、プログラムを読み出して実行することで各種処理方法を実行する情報処理装置として動作する。また、情報処理装置10は、媒体読取装置によって記録媒体から上記プログラムを読み出し、読み出された上記プログラムを実行することで上記した実施例と同様の機能を実現することもできる。なお、ここでいうプログラムは、情報処理装置10によって実行されることに限定されるものではない。例えば、他のコンピュータまたはサーバがプログラムを実行する場合や、これらが協働してプログラムを実行するような場合にも、本発明を同様に適用することができる。
【0075】
このプログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布することができる。また、このプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO(Magneto-Optical disk)、DVD(Digital Versatile Disc)などのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することができる。
【符号の説明】
【0076】
1 プラント
2 端末装置
10 情報処理装置
11 データ収集部
12 機器データ格納部
13 交換周期算出部
14 学習データ格納部
15 交換基礎データ格納部
16 点検周期演算部
20 機器交換計画表
25 保全レポート
131 機器状態推定部
132 補正部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8