(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134127
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】トンネル施工機械
(51)【国際特許分類】
E21D 11/10 20060101AFI20230920BHJP
E21D 11/40 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
E21D11/10 D
E21D11/40 A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022039486
(22)【出願日】2022-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】522100590
【氏名又は名称】東友エンジニアリング株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】522102376
【氏名又は名称】株式会社エコスティック
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(74)【代理人】
【識別番号】100097696
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(72)【発明者】
【氏名】片山 正和
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155CA01
2D155DB02
2D155GB02
2D155KA00
(57)【要約】
【課題】機械が大きすぎず、かつ重量が大きすぎず、トンネルの施工を効率よく実施できるトンネル施工機械を提供する。
【解決手段】支保工を把持してこれを建て込むエレクター(11)と、作業員を乗せるバスケット(15)と、コンクリートを吹き付ける吹付ノズル(16)と、これらを搭載している自走車両(2)と、からなるトンネル施工機械(1)として構成する。そして本発明のトンネル施工機械(1)は、バスケット(15)と吹付ノズル(16)を共通のブームである共通ブーム(18)に設けるようにする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支保工を把持してこれを建て込むエレクターと、
作業員を乗せるバスケットと、
コンクリートを吹き付ける吹付ノズルと、
前記エレクターと前記バスケットと前記吹付ノズルとを搭載している自走車両と、から構成され、
前記バスケットと前記吹付ノズルは共通のブームである共通ブームに設けられている、トンネル施工機械。
【請求項2】
前記自走車両には前記吹付ノズルにコンクリートを圧送するコンクリート吹付機が搭載されている、請求項1に記載のトンネル施工機械。
【請求項3】
前記吹付ノズルが使用されるとき前記バスケットは回転してその長手方向が前記共通ブームと並行になるように倒されるようになっている、請求項1または2に記載のトンネル施工機械。
【請求項4】
前記共通ブームは互いに伸縮する複数本の単位ブームから構成され、前記吹付ノズルは最先端の前記単位ブームに設けられ、前記バスケットは他の前記単位ブームに設けられている、請求項1~3のいずれかの項に記載のトンネル施工機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル掘削時において使用するトンネル施工機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トンネル施工機械には色々なタイプがあり、例えば特許文献1に示されているタイプが周知である。このタイプのトンネル施工機械は、自走する車両と、この車両に搭載されているエレクターと、同様にこの車両に搭載されているコンクリートの吹付ノズルと、から構成されている。トンネルを掘削すると、岩盤の落下を防止するために最初に支保工を建て込む。支保工は円弧状に湾曲したH鋼からなりエレクターにより把持し、トンネルの天井の所望の位置に配置する。複数本の支保工を組み合わせ、これらをボルト等により固定すると支保工の建て込みが完了する。吹付ノズルによって支保工が建て込まれたトンネル壁面にコンクリートを吹き付ける。これによって岩盤の落下が防止される。
【0003】
ところで、支保工の建て込みは作業員が実施する必要がある。ブームと、このブームに取り付けられているバスケットとからなる作業車両が周知であり、作業員がこのようなバスケットに乗り、所望の高さ、位置に移動して支保工の建て込み作業をするようになっている。トンネル施工機械には、自走する車両にこれらが全て搭載されているものもある。すなわち自走車両に、支保工建て込み用のエレクターと、コンクリートを吹き付ける吹付ノズルと、作業員を乗せるバスケットと、が設けられている。このようなトンネル施工機械は1台でトンネル施工に必要な装置が揃っているので効率よく作業をすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
支保工建て込み用のエレクターと、コンクリートを吹き付ける吹付ノズルと、作業員を乗せるバスケットの全てが1台の自走車両に設けられているトンネル施工機械は、トンネル施工を効率よく実施でき優れている。しかしながら解決すべき課題も見受けられる。具体的には機械の大きさと重量が大きくなるという課題がある。エレクターも吹付ノズルも、そしてバスケットもそれぞれ独立して駆動できるよう独立したブームに取り付けられている。ブームの本数が多く必然的に機械の大きさが大きくなると共に重量が大きくなる。そうするとトンネル施工機械の搬送が困難になる。さらには、トンネル施工機械の製造コストが高くなる原因にもなっている。
【0006】
本発明は、このような問題を解決したトンネル施工機械を提供することを目的としている。具体的には、機械が大きすぎず、かつ重量が大きすぎず、トンネルの施工を効率よく実施できるトンネル施工機械を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、支保工を把持してこれを建て込むエレクターと、作業員を乗せるバスケットと、コンクリートを吹き付ける吹付ノズルと、これらを搭載している自走車両と、からなるトンネル施工機械として構成する。そして本発明のトンネル施工機械は、バスケットと吹付ノズルは共通のブームである共通ブームに設けるようにする。
【0008】
他の発明は、自走車両にコンクリート吹付機を搭載して吹付ノズルにコンクリートを圧送するように構成する。また他の発明は、吹付ノズルが使用されるときバスケットは回転してその長手方向が共通ブームと並行になるように倒されるように構成する。さらに他の発明は、共通ブームは互いに伸縮する複数本の単位ブームから構成し、吹付機は最先端の単位ブームである最先端ブームに設けるようにし、バスケットは最先端ブームと異なる他の単位ブームに設けるように構成する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、エレクターとバスケットと吹付ノズルが全て1台の自走車両に設けられているので、トンネル施工に必要な装置が全て搭載されており、トンネル施工を容易にかつ効率よく実施することができる。そしてバスケットと吹付ノズルが共通のブームである共通ブームに設けられているので、自走車両に搭載されているブームの本数が少なくなっている。ブームの本数が少なくなっている分だけトンネル施工機械の大きさが小さくなり、そして重量も小さくなっている。したがって、トンネル施工機械の搬送が容易であるし、製造コストも小さくなる。他の発明によると、吹付ノズルが使用されるときバスケットは回転してその長手方向が共通ブームと並行になるように倒される。したがって、コンクリートの吹付時にバスケットが作業の妨げにならないようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施の形態に係るトンネル施工機械の正面図である。
【
図2】本実施の形態に係るトンネル施工機械の一部である、共通ブームとバスケットと吹付ノズルとを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本実施の形態を説明する。本実施の形態に係るトンネル施工機械1は、
図1に示されているように、自走する車両2と、車両2に搭載されているトンネル施工用の装置群から構成されている。車両2はシャーシ3と、自走する車輪4、4と、運転席6と、図示されていないエンジンとを備えている。エンジンには、次に説明するトンネル施工用の装置群に圧油を供給する油圧ユニット9が設けられ、図示されていないPTOを介してエンジンによって駆動されるようになっている。
【0012】
トンネル施工用の装置群を説明する。本実施の形態において車両2には2セットのエレクター11、11が設けられている。エレクター11、11はそれぞれエレクター用ブーム13、13によって車両2に設けられている。本実施の形態においてエレクター用ブーム13、13は、その方向を制御できるようになっていると共にそれぞれ互いに伸縮する2本のブーム13a、13bから構成されている。したがって、エレクター11、11はトンネル内の所望の位置に駆動することができるようになっている。それぞれのエレクター11、11によって支保工を保持して搬送し、支保工をトンネルの天井の所望の位置に配置させることができる。なお、エレクター11、11は本実施の形態においては車両2の左側部と右側部の2セット設けられているが、1セットであっても、あるいは3セット以上であってもよい。
【0013】
本実施の形態に係るトンネル施工機械1は、作業員を乗せるバスケット15と、コンクリートを吹き付けるための吹付ノズル16とが設けられている。そして本実施の形態は、バスケット15と吹付ノズル16が共通の1本のブーム、つまり共通ブーム18に設けられている点に特徴がある。共通ブーム18は車両2に対して方向が可変になるように設けられ、第1~4の単位ブーム18a、18b、…から構成されている。この1本の共通ブーム18に、バスケット15と吹付ノズル16とが設けられている。より具体的には、バスケット15は第3の単位ブーム18cに設けられ、吹付ノズル16は最先端の第4の単位ブーム18dに設けられている。バスケット15と、吹付ノズル16の使用方法については後で説明する。
【0014】
車両2には、その後方にコンクリート吹付機20が設けられている。コンクリート吹付機20は図に示されていない圧送管を介してコンクリートを圧送して吹付ノズル16に供給するようになっている。車両2にはケーブルリール21も設けられ、トンネル施工機械1において使用される電力ケーブルがコンパクトに巻き取られるようになっている。また車両2にはコンプレッサー7も設けられている。車両2にはアウトリガー24、が設けられトンネルの施工時に車両2を安定させるようになっている。
【0015】
前記したようにバスケット15と吹付ノズル16は1本の共通ブーム18に設けられている。本来別々のブームに設けられていたバスケット15と吹付ノズル16とを1本の共通ブーム18にまとめることができたのは、本発明者がこれらを同時に使用されることがない点に着眼したからである。以下、バスケット15と吹付ノズル16の使用方法を説明する。
【0016】
バスケット15を使用する場合、作業員は運転席6において操作して、
図2の(A)に示されているように、共通ブーム18において第4の単位ブーム18dを引っ込めた状態にする。そして、バスケット15を垂直に立てる。
図2の(A)に示されているように共通ブーム18を下方に倒す。必要に応じて第1~3の単位ブーム18a~18cを伸縮してバスケット15を地上の近傍に配置する。作業員がバスケット15に乗り込む。作業員はバスケット15内に設けられている操作盤を操作する。そうすると共通ブーム18の角度が上下し、第1~3の単位ブーム18a~18cが伸縮して、例えば
図2の(B)に示されているようにバスケット15を所望の位置に移動させることができる。作業員は支保工の建て込み作業等を実施する。作業員の作業が終了したら、作業員はバスケット15において操作して、バスケット15を地上に近づける。作業員はバスケット15から降りる。
【0017】
コンクリートの吹付作業を実施するとき、次のようにする。準備作業として運転席6から作業員が操作する。そうすると、
図2の(C)に示されているように、バスケット15は回転してその長手方向が共通ブーム18と並行になるように倒される。図には示されていないが、専用のカバーをバスケット15にかぶせる。これによって飛び散ったコンクリートがバスケット15を汚染しないようにすることができる。準備作業を完了する。本実施の形態に係るトンネル施工機械1は吹付ノズル16を操作するリモコンを備えている。作業員は運転席6から降りる。作業員はリモコンを操作して第4の単位ブーム18dが伸張させる。吹付ノズル16を回転させて所望の方向に向ける。コンクリート吹付機20を駆動してコンクリートを圧送する。吹付ノズル16からコンクリートが噴出される。コンクリートの吹付作業が終了したら、コンクリート吹付機20を停止させる。次いで吹付ノズル16を回転させて、第4の単位ブーム18dを縮める。必要に応じてバスケット15からカバーを取る。
【0018】
本実施の形態に係るトンネル施工機械1は色々な変形が可能である。例えばバスケット15と吹付ノズル16はそれぞれ2組以上設けることもできる。つまり共通ブーム18、18を2組以上設け、それぞれの共通ブーム18、18にバスケット15、15と吹付ノズル16、16とを設けるようにすればよい。バスケット15は使用しないときに共通ブーム18と並行に倒されるように説明したが、必ずしも倒される必要はない。
【符号の説明】
【0019】
1 トンネル施工機械 2 車両
6 運転席 11 エレクター
13 エレクター用ブーム 15 バスケット
16 吹付ノズル 18 共通ブーム
20 コンクリート吹付機