(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134146
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】光量調節装置および光学機器
(51)【国際特許分類】
G03B 9/02 20210101AFI20230920BHJP
G03B 9/06 20210101ALI20230920BHJP
【FI】
G03B9/02 A
G03B9/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022039508
(22)【出願日】2022-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000104652
【氏名又は名称】キヤノン電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 健太
(72)【発明者】
【氏名】中脇 慎也
【テーマコード(参考)】
2H080
【Fターム(参考)】
2H080AA21
2H080AA26
2H080AA38
2H080AA69
(57)【要約】
【課題】複数の光量調節羽根を絞り込んだ状態での光量調節羽根の反りを低減することができる光量調節装置を提供する。
【解決手段】 本発明に係わる光量調節装置は、複数の光量調節羽根のそれぞれが他の光量調節羽根と重なり合って光通過開口を形成し、該複数の光量調節羽根が回動することにより前記光通過開口の大きさが変更される光量調節装置であって、前記複数の光量調節羽根のそれぞれは、厚さが一定の第1の部分と、前記光通過開口の縁を形成する端縁部に向かって前記第1の部分から厚さが減少するように形成されている第2の部分とを有し、前記光量調節装置の最小絞り状態で前記複数の光量調節羽根が光通過方向に重なった状態において、隣り合う羽根の前記第2の部分同士の重なりの面積が、前記第1の部分同士の重なりの面積よりも大きい。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光量調節羽根のそれぞれが他の光量調節羽根と重なり合って光通過開口を形成し、該複数の光量調節羽根が回動することにより前記光通過開口の大きさが変更される光量調節装置であって、
前記複数の光量調節羽根のそれぞれは、厚さが一定の第1の部分と、前記光通過開口の縁を形成する端縁部に向かって前記第1の部分から厚さが減少するように形成されている第2の部分とを有し、
前記光量調節装置の最小絞り状態で前記複数の光量調節羽根が光通過方向に重なった状態において、隣り合う羽根の前記第2の部分同士の重なりの面積が、前記第1の部分同士の重なりの面積よりも大きいことを特徴とする光量調節装置。
【請求項2】
前記第1の部分同士の重なりの面積である第1の面積ECと、前記第1の部分と前記第2の部分の重なりの面積である第2の面積EBと、前記第2の部分同士の重なりの面積である第3の面積EAとが、
EC<EA<EB
の関係を満たすことを特徴とする請求項1に記載の光量調節装置。
【請求項3】
前記第2の部分における厚さ方向両面がなす角度または該両面の接線同士がなす角度が1度以上、4度以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の光量調節装置。
【請求項4】
前記第2の部分の前記羽根の回動方向での幅が、前記第2の部分の最大厚さの10倍以上、30倍以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の光量調節装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の光量調節装置と、
前記光量調節装置を通過した光を撮像する撮像素子と、を有することを特徴とする光学機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置や交換レンズ等の光学機器に搭載される光量調節装置に関する。
【背景技術】
【0002】
撮像装置や交換レンズ等の光学機器に搭載される光量調節装置(絞り装置)において形成される光通過開口としての絞り開口の形状は、できるだけ円形に近い方が好ましく、円形に近い絞り開口を形成するために、3枚以上の多数枚の絞り羽根(光量調節羽根)が用いられる場合が多い。
【0003】
特許文献1には、ベース部材に形成した固定開口の周囲で回動可能な駆動リングによって多数枚の絞り羽根を回動させることで、円形に近い多角形の絞り開口を形成する虹彩絞り装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の虹彩絞り装置には、以下のような問題がある。
図7には、従来の虹彩絞り装置を搭載した撮像装置の構成が示されている。
図7において、101は絞り装置のベース部材であり、103はベース部材101の固定開口の周囲で回動可能な駆動リングである。106は駆動リング103を回動させるアクチュエータであり、105は駆動リング103によってベース部材101に設けられた軸部(図示せず)を中心として回動される複数の絞り羽根である。さらに、114は絞り装置に隣接して配置されたレンズであり、113はレンズ114および絞り装置を含む撮影光学系により形成された被写体像を光電変換する撮像素子である。
【0006】
図8には、複数の絞り羽根105を絞り込んで小絞り開口を形成した状態(小絞り状態)が示されている。また、
図8には、この小絞り状態での複数の絞り羽根105が拡大して示されている。絞り開口を絞り込んでいくと、複数の絞り羽根105は、その先端同士が互いに重なり合うことで、符号H’で示すようにレンズ114側に反っていく。このため、この反った絞り羽根105とレンズ114との干渉を避けるために、絞り装置に対するレンズ114の退避スペースh’を予め確保しておく必要がある。この結果、撮像装置が大型化する。
【0007】
また、この羽根同士の重なり合いにより発生する負荷によって、絞り羽根に傷が生じ、傷での光の反射によって光学特性が劣化するおそれがある。
【0008】
さらに、絞り羽根はある程度の肉厚を有するため、絞り羽根の厚みが絞り開口の開口面に対して大きな段差となり、いわゆる小絞り回折が発生して光学性能が劣化し易い。
【0009】
本発明は上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数の光量調節羽根を絞り込んだ状態での光量調節羽根の反りを低減することができる光量調節装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係わる光量調節装置は、複数の光量調節羽根のそれぞれが他の光量調節羽根と重なり合って光通過開口を形成し、該複数の光量調節羽根が回動することにより前記光通過開口の大きさが変更される光量調節装置であって、前記複数の光量調節羽根のそれぞれは、厚さが一定の第1の部分と、前記光通過開口の縁を形成する端縁部に向かって前記第1の部分から厚さが減少するように形成されている第2の部分とを有し、前記光量調節装置の最小絞り状態で前記複数の光量調節羽根が光通過方向に重なった状態において、隣り合う羽根の前記第2の部分同士の重なりの面積が、前記第1の部分同士の重なりの面積よりも大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複数の光量調節羽根を絞り込んだ状態での光量調節羽根の反りを低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態1である絞り装置の分解斜視図。
【
図2】実施形態1の絞り装置に用いられる絞り羽根の平面図および断面図。
【
図3】実施形態1の絞り装置の小絞り状態での絞り羽根を光軸方向から見た図。
【
図4】実施形態1の絞り装置の小絞り状態での絞り羽根の反りを示す斜視図。
【
図5】実施形態1の絞り装置を搭載した撮像装置の断面図。
【
図6】実施形態1の絞り装置を搭載した撮像装置の概略図。
【
図7】従来の絞り装置を搭載した撮像装置の断面図。
【
図8】従来の絞り装置の小絞り状態での絞り羽根の反りを示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
<実施形態1>
図1は、本発明の光量調節装置の実施形態1である絞り装置100を分解して示した図である。また、
図2は、絞り装置に使用される光量調節羽根としての複数の絞り羽根のうちの1枚の絞り羽根について、正面から見た形状とA-A線での断面形状とを示す図である。
【0015】
図1において、1,2,3,4,5,6,7,8,9は絞り羽根である。本実施形態では、9枚の絞り羽根を用いる場合について説明するが、本発明は、3枚以上の複数の絞り羽根(光量調節羽根)を使用する絞り装置に適用することができる。以下の説明において、絞り羽根1,2,3,4,5,6,7,8,9を絞り羽根1~9と略記し、また絞り羽根1~9のそれぞれの部分についても1x~9xのように略記する。
【0016】
絞り羽根1~9は、合成樹脂により薄板状に形成された一体成型部品である。絞り羽根1~9はそれぞれ、
図2に示すように、回動中心軸となる第1軸部1c~9cおよび回動のための駆動力が入力される被駆動軸である第2軸部1d~9dが互いに反対側の面に形成された基部と、基部から先端に向かって先細り形状に形成された羽根部1b~9bとを有する。そして、羽根部1b~9bには、後で詳しく説明する傾斜部である開口側部分1a~9aが形成されている。
【0017】
また、
図1において、10はリング状に形成された回転部材であり、その中央には開口部10aが形成されている。以下の説明において、この開口部10aおよび後述する部材(11,12)に形成された開口部(11a,12a)の開口面に直交する方向を光軸方向という。回転部材10は、その周方向9箇所に形成された軸穴部10b~10jと、周方向に9つに分割された突条部10kと、周方向一部に形成されたギア部10lとを有する。
【0018】
11はリング状に形成されたカム部材であり、本実施形態の絞り装置のカバー部材を兼ねている。カム部材11の中央には、開口部11aが形成されている。また、カム部材11には、その周方向9箇所にカム溝部11b~11jが形成されている。さらに、カム部材11の周方向1箇所には、穴部11kが設けられている。なお、カム部材11の外周の円周方向6か所には、地板12の外周部の6箇所に形成された凹部12eに係合する爪部11lが形成されている。
【0019】
12はリング状に形成されたベース部材としての地板であり、その中央には開口部12aが形成されている。また、地板12の周方向1箇所には、穴部12bを有するモータ取り付け部12cが設けられている。
【0020】
13は回転部材10を駆動するステッピングモータである。ステッピングモータ13の出力軸には、ピニオンギア14が出力軸と一体回転するよう取り付けられている。ステッピングモータ13は、地板12のモータ取り付け部12cに固定され、ピニオンギア14は、地板12の穴部12bを貫通して回転部材10のギア部10lと噛み合う。なお、ステッピングモータ13を、カム部材11に固定してもよい。回転部材10、カム部材11、ステッピングモータ13およびピニオンギア14により、本実施形態の絞り装置の駆動機構が構成される。
【0021】
カム部材11は、地板12との間に絞り羽根1~9および回転部材10をこの順で配置する空間を形成して爪部11lにより地板12に固定されることで、地板12に対する回転部材10および絞り羽根1~9の脱落を防止する。回転部材10に形成された突条部10kは、地板12の開口部10a内に回転可能に挿入される。回転部材10は、突条部10kの外周面が地板12の開口部12aの内周に等間隔で形成された突起部12dに対して摺動することで、周方向(光軸回り方向)に回転可能に支持される。
【0022】
また、絞り羽根1~9の第1軸部1c~9cはそれぞれ、回転部材10に形成された軸穴部10b~10jに回動可能に挿入される。一方、第2軸部1d~9dはそれぞれ、カム部材11に形成されたカム溝部11b~11jに挿入される。
【0023】
地板12に固定されたステッピングモータ13が駆動されてピニオンギア14が回転すると、ピニオンギア14にギア部10lが噛み合っている回転部材10も回転する。これにより、絞り羽根1~9は、第2軸部1d~9dがカム部材11のカム溝部11b~11jに沿って移動し(すなわち、第2軸部1d~9dがカム溝部11b~11jから駆動力を受けて)、第1軸部1c~9cを中心に回動する。
【0024】
絞り羽根1~9は、周方向に均等間隔で配置されており、それぞれの羽根部1b~9bが他の絞り羽根の羽根部と重なり合うことで、それらの内側に光通過開口である絞り開口を形成する。そして、絞り羽根1~9が回動することで羽根部1b~9bの重なり量が変化するとともに、絞り開口径が連続的に変更される。絞り羽根1~9(羽根部1b~9b)の重なり量が大きいほど絞り開口径は小さくなる。以下の説明において、各絞り羽根が回動する方向を羽根回動方向という。ここでいう重なり合うとは、光通過方向に重なる、すなわち、光軸から同じ距離に配置されることを示し、羽根同士が接触する部分は、絞り開口の形状や羽根の反り等に合わせて変化する。
【0025】
図5には、上記のように構成された絞り装置を搭載した撮像装置の構成が示されている。16は絞り装置の像側に隣接して配置されたレンズであり、15はレンズ16および絞り装置を含む撮影光学系により形成された被写体像を光電変換する撮像素子である。
【0026】
図7および
図8を用いて説明したように、従来の絞り装置では、複数の絞り羽根105を絞り込んで小絞り開口を形成した小絞り状態では、複数の絞り羽根105は、それらの先端同士の重なり合いによって光軸方向(レンズ114側)に大きく反る。
【0027】
この小絞り状態での羽根反りの問題を解消するために、本実施形態では、各絞り羽根1~9の羽根部1b~9bを以下のように形成している。
図2および
図3に示すように、各絞り羽根の羽根部のうち他の絞り羽根の羽根部と重なり合う部分であって絞り開口の縁を形成する端縁部1e~9eを含む部分を、開口側部分1a~9aという。そして、本実施形態では、この開口側部分1a~9aを、羽根の重なり合いによる反りを低減するために羽根回動方向において端縁部1e~9eに向かって厚さが減少するように形成している。
図2では、羽根回動方向を、A-A線に沿った方向として示している。なお、
図3(a)には、小絞り開口を形成している絞り羽根1~9をカム部材11側から見て示している。また、
図3(b)は、
図3(a)の中央断面図である。
【0028】
図2では、「端縁部に向かって厚さが減少する」形状の例として、開口側部分1a~9aにおける厚さ方向両面のうちカム部材11側の面(第1の面)が、回転部材10側の面(第2の面)に対して一定の傾き角度θで傾いた傾斜面である場合を示している。本実施形態においては、θは2度である。この例は、端縁部に向かって厚さが連続的に、かつ一定の割合で減少する例でもある。ただし、「端縁部に向かって厚さが減少する」形状はこれに限られず、第1の面と第2の面が共に羽根部1b~9bのうち開口側部分1a~9a以外の平行平板状の部分に対して傾斜する傾斜面であってもよい。また、端縁部に向かって厚さが段階的または連続的に減少すればよく、連続的に減少するようにすると成形性がよい。
【0029】
この場合の第1の面と第2の面とのなす角度(傾き角度)θは、1度以上4度以下であることが望ましい。θを4度以下とすることで、複数の光量調節羽根を絞り込む状態での羽根同士の重なり合いによる反りを緩やかに変化するように作用する。そのため、急激な反り上がりによる羽根の傷と羽根の変形を防止できる。また、端縁部の厚さを基準として、徐々に厚くして予め厚さの決まった羽根部に達するところまで開口側部分とした場合には、θを小さくするにつれ複数の羽根同士の重なり合いによる負荷変動も低減され作動不良を防止することができる。本実施形態においては、羽根部の厚さは、端縁部の厚さの2~4倍になるようにしており、端縁部の厚さは、50μm、羽根部の厚さは150μmとなっている。
【0030】
また、第1の面と第2の面のうち少なくとも一方が傾斜面のような平面形状ではなく曲面形状として形成されることにより、端縁部に向かって厚さが連続的に減少するものの、その減少率が一定でなくてもよい。この場合の第1の面と第2の面のなす接線同士がなす角度(上述した傾き角度に相当する角度の範囲)も、1度以上4度以下であることが望ましい。
【0031】
さらに、開口側部分1a~9aの羽根回動方向での幅Wは、羽根1~9の強度が保てる限りなるべく広くすることが望ましい。具体的には、開口側部分の最大厚さTの10倍以上、30倍以下であることが望ましい。ここでも、端縁部の厚さを基準として、徐々に厚くして予め厚さの決まった羽根部に達するところまで開口側部分とした場合には、角度θが小さいほど幅Wの最大厚さTに対する倍率は大きくなる。また、本実施形態(
図2)では、開口側部分1a~9aが、羽根部1b~9bにおける羽根回動方向の一部に形成されている場合について説明しているが、羽根部1b~9bにおける羽根回動方向の全体に形成されていてもよい。
【0032】
加えて、端縁部に一定の厚さの部分を有してもよく端縁部に向かって厚さが連続的に減少することを言い換えれば、端縁部の一定の厚さ部分から、開口側部分1a~9aとは逆側に向かって連続的に厚くなる。つまり、端縁部に向かって厚さが連続的に減少する場合と端縁部と羽根部1b~9bの厚さが同一である場合を端縁部が同じ厚さで比べると、端縁部に向かって厚さが連続的に減少する場合は、羽根強度が向上する。そのため、端縁部と羽根部1b~9bの厚さが同一である羽根と同じ強度とする場合、端縁部に向かって厚さが連続的に減少する構成とすることによって、端縁部の薄い絞り羽根とすることができる。
【0033】
次に、
図3を参照して、各羽根の開口側部分1a~9aの幅Wについてより詳しく説明する。
図3(a)は、互いに隣り合う羽根7,8の最小絞り状態での重なりを示している。本実施形態では、各羽根1~9の開口側部分1a~9aの幅Wを極力広くすることにより、最小絞り状態での羽根の反りを低減することができ、また、各羽根の開閉動作における摺動抵抗を低減することができる。しかし、その一方で、開口側部分1a~9aの幅Wを大きくし過ぎると、一定厚み部分1f~9fが減少し、羽根の強度が低下する。
【0034】
そのため、本実施形態では、各羽根の重なり面積を、
図3(a)に示すように設定する。
図3(a)では、隣り合う2つの羽根の例として羽根7と羽根8を示しているが、他の隣り合う羽根同士の関係も同様である。
【0035】
ここで、虹彩絞り装置100の最小絞りの状態において、羽根7と羽根8の重なり部分のうち、羽根の厚みが薄くなっている開口側部分7aと8a(開口側部分同士)が重なっている部分を領域Aとする。また、同様に、羽根7と羽根8の重なり部分のうち、一方の羽根の厚みが薄くなっている開口側部分7a(8a)と他方の羽根の一定厚み部分8f(7f)が重なる部分(一定厚み部分同士が重なる部分)を領域Bとする。さらに、羽根7と羽根8の重なり部分のうち、一定厚み部分7fと8fが重なっている部分を領域Cとする。このとき領域Cの面積よりも領域Aの面積が大きいと反りを低減し易い。
【0036】
そして、本実施形態では、最小絞り状態において、それぞれの領域A、B、Cの面積を、面積EA、面積EB、面積ECとすると
EC<EA<EB
となるように設定する。このようにすることで、最小絞り状態での羽根の反りを低減し、且つ各羽根の強度を保つことが可能となる。本実施形態では領域Bのうち第1軸部1cに近い側の領域Bの面積が領域Aの面積よりも大きくなっている。
【0037】
以上説明した本実施形態によれば、各絞り羽根1~9の羽根部1b~9bに、羽根回動方向において端縁部1e~9eに向かって厚さが減少する開口側部分1a~9aを形成することで、
図4および
図5に示すように羽根の反りを低減することができる。
図4には、小絞り状態での絞り羽根1~9を拡大して示している。
図5においてHは本実施形態での小絞り状態での羽根反り量を示しており、
図7に示した従来の絞り装置の羽根反り量H’に比べて少ない。そして、羽根反り量が少ないことで、絞り装置に対して羽根反りの方向に隣接したレンズその他の光学部材の絞り装置からの退避スペースhを、従来の退避スペースh’に比べて小さくすることが可能であり、その分、撮像装置を小型化することができる。
【0038】
なお、本実施形態では、小絞り状態での最小絞り開口径として、直径1mm以下という極めて小さな絞り開口径を想定しており、このような極めて小径の小絞り状態を少ない羽根反り量で実現できる点が、従来とは異なる本実施形態の特徴である。
【0039】
開口側部分1a~9aの羽根回動方向での幅Wは、最小絞り開口径の直径よりも広いことが好ましい。開口側部分1a~9aの羽根回動方向での幅Wが、最小絞り開口径の直径よりも広いことで最小絞り開口径へ絞る際の摺動性がより良好となる。
【0040】
さらに、本実施形態では、開口側部分1a~9aを形成することで、絞り羽根1~9が重なり合って回動するときに発生する負荷を低減することができる。このため、絞り装置の良好な動作特性を得ることができるとともに、各絞り羽根に傷が付くことを防止することができる。
【0041】
また、本実施形態では、開口側部分1a~9aの端縁部1e~9eが薄いため、絞り羽根1~9の厚みが絞り開口の開口面に対して大きな段差とならず、段差が大きいことによる光学性能の劣化を防止することができる。
【0042】
<実施形態2>
図6は、実施形態1で説明した絞り装置を搭載した撮像装置としての、一眼レフカメラ用の交換レンズ221、及びその交換レンズが装着されるカメラ本体の内部構成を示している。
【0043】
交換レンズ221の鏡筒内には、変倍レンズ232、光路を絞る実施形態1の絞り装置100、およびフォーカスレンズ229を含む撮影光学系が収容されている。
【0044】
CCDセンサやCMOSセンサ等の光電変換素子により構成される撮像素子225はカメラ本体内に配置され、交換レンズ221により形成された被写体像を光電変換して電気信号を出力する。絞り装置100の絞り開口を変化させたり不図示のNDフィルタを進退させたりすることにより、撮像素子225上に形成される被写体像の明るさ(つまりは撮像素子225に到達する光量)を適正に設定することができる。
【0045】
撮像素子225から出力された電気信号は、画像処理回路226においてデジタル信号に変換されるとともに、種々の画像処理を施される。これにより、画像信号が生成される。
【0046】
ユーザは、ズームリング231を回転操作することにより、変倍レンズ232を移動させて変倍(ズーミング)を行わせることが出来る。コントローラ222は、画像信号のコントラストを検出し、そのコントラストに応じてフォーカスモータ228を制御し、フォーカスレンズ229を移動させてオートフォーカスを行う。あるいは、コントローラ222は、不図示の位相差検出方式を用いた焦点検出手段の検出信号に基づいて、フォーカスモータ228を制御し、フォーカスレンズ229を移動させてオートフォーカスを行ってもよい。
【0047】
さらに、コントローラ222は、不図示の測光手段の測光値あるいは画像信号に基づいて、絞り装置100のステッピングモータ13を制御し、光量を調節する。これにより、撮影時のボケやゴーストを自然な形状にすることができ、高画質の画像を記録することができる。
【0048】
なお、本発明は、上述した一眼レフカメラに限定されず、レンズ一体型のデジタルカメラ、ビデオカメラ等の光学機器にも広く適用可能である。
【0049】
以上説明した各実施形態は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施形態に対して種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0050】
1~9 絞り羽根
10 回転部材
11 カム部材
12 地板
13 ステッピングモータ