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特開2023-13415真贋判定アプリケーションおよび真贋判定システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023013415
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】真贋判定アプリケーションおよび真贋判定システム
(51)【国際特許分類】
   G06F 21/44 20130101AFI20230119BHJP
   G06Q 30/01 20230101ALI20230119BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20230119BHJP
   G06K 19/063 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
G06F21/44
G06Q30/00 300
G06T7/00 300E
G06K19/063
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021117571
(22)【出願日】2021-07-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】509143594
【氏名又は名称】株式会社ユーロックテクノパーツ
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹中 福康
【テーマコード(参考)】
5L049
5L096
【Fターム(参考)】
5L049BB23
5L049CC22
5L096BA03
5L096CA02
5L096FA14
5L096FA69
5L096HA07
(57)【要約】
【課題】容易に真贋判定を行うことが可能な真贋判定アプリケーションおよび真贋判定システムを提供する。
【解決手段】本発明による真贋判定アプリケーションは、ユーザ端末に取り込まれた標示部材の撮影画像から陰影情報を抽出し、予めアプリケーションに組み込まれた陰影判定情報と対比して整合性を評価し、整合する場合に標示部材が正当であると判断するようにユーザ端末を制御するように構成され、標示部材には予め所定の隠しマークを含む対象物に関連する情報がレーザ刻印され、レーザ刻印の大きさ、深さ、及び隠しマークの位置の少なくとも一つはユーザ毎に基本の設定が異なり、陰影判定情報はレーザ刻印の大きさ、深さとレーザ刻印の撮影画像の明るさとの関係データに基づき、レーザ刻印の加工情報に対応して求められる基準陰影情報と隠しマークの位置情報とを含み、アプリケーションはユーザ毎に異なる陰影判定情報を組み込むことでユーザ毎に異なる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの取り扱う対象物に取り付けられた標示部材に基づき、前記対象物の真贋を判定するアプリケーションであって、
ユーザ端末の画像取得部に取り込まれた前記標示部材の撮影画像から陰影情報を抽出し、予め前記アプリケーションに組み込まれた陰影判定情報と前記陰影情報とを対比して整合性を評価し、評価の結果、整合すると判断した場合に前記標示部材が正当なものであると判断するようにユーザ端末の真贋判定部を制御するように構成され、
前記標示部材には予め所定の隠しマークを含む前記対象物に関連する情報がレーザ刻印され、前記レーザ刻印の大きさ、深さ、及び前記隠しマークの位置の少なくとも一つは前記ユーザ毎に基本の設定が異なり、
前記陰影判定情報は前記レーザ刻印の大きさ、深さと前記レーザ刻印の撮影画像の明るさとの関係データに基づき、前記レーザ刻印の加工情報に対応して求められる基準陰影情報と前記隠しマークの位置情報とを含み、
前記アプリケーションは前記ユーザ毎に異なる前記陰影判定情報を組み込むことで前記ユーザ毎に異なることを特徴とする真贋判定アプリケーション。
【請求項2】
ユーザの取り扱う対象物に取り付けられた標示部材に基づき、前記対象物の真贋を判定するアプリケーションを提供する情報提供サーバを備える真贋判定システムであって、
前記情報提供サーバは、前記標示部材に所定の隠しマークを含む前記対象物に関連する情報をレーザ刻印するためのユーザ毎に異なる加工情報を保存する加工情報保存部と、予め保存されたレーザ刻印の大きさ、深さと前記レーザ刻印の撮影画像の明るさとの関係データに基づき、前記レーザ刻印の加工情報に対応して基準陰影情報を生成し、前記基準陰影情報と前記隠しマークの位置情報とを陰影判定情報として記憶部に保存して管理する陰影判定情報生成部と、ユーザ端末の画像取得部に取り込まれた前記標示部材の撮影画像から陰影情報を抽出し、予め前記アプリケーションに組み込まれた前記陰影判定情報と前記陰影情報とを対比して整合性を評価し、評価の結果、整合すると判断した場合に前記標示部材が正当なものであると判断するようにユーザ端末の真贋判定部を制御するように構成されたユーザ毎に異なるアプリケーションを保存し、ユーザの要求に応じて前記ユーザ端末に提供するアプリケーション管理部とを備えることを特徴とする真贋判定システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真贋判定アプリケーションおよび真贋判定システムに関し、特に所定の隠しマークを含む対象物に関連する情報がレーザ刻印され、対象物に取り付けられた標示部材を撮影した画像と、レーザ刻印の加工情報に対応して求められる基準陰影情報を含む陰影判定情報とを対比することで容易に真贋判定を行うことが可能な真贋判定アプリケーションおよび真贋判定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザの取り扱う対象物に、他の同種の対象物と区別するために標示部材が使用されることが有る。例えば、工業製品としてのドローン等の無人飛行体は、他のドローンとの区別を行うために自動車のナンバープレートと同様な標示部材を取り付けることが義務化される予定である。
【0003】
このように標示部材を取り付けて区別する必要のある対象物は、一般的に重要性が高いか価値が高いものが多く、偽造の対象となりやすい。対象物を区別するための標示部材であるが、標示部材自体が容易に偽造できてしまうと、偽造された標示部材を取り付けた偽造の対象物の真贋を確認するのは容易ではない。
そこで、標示部材に様々な形で一見して判別不可能な隠しマークを埋め込み、偽造を防止する様々な技術が検討されている。
【0004】
特許文献1には、電子透かしパターンを文字、図形、記号、模様、またはこれらを組み合わせたロゴのいずれか一つを形成すると共に上記電子透かしパターンを画像の模様のごとく表示した画像として生成し、上記画像を固体に描画または付加する電子透かしパターンの表示方法が開示されている。
特許文献1に記載の発明によれば、製品の固有ナンバーなどを電子透かしパターンによって作成することで第3者には読み取りにくく、文字や背景画像の内部に形成された電子透かしパターンを読み取ることにより、製品の固有ナンバーなどを読み取ることが可能となる。しかし電子透かしパターンが拡大鏡などによって簡単に読み取られるため、偽造を防止することが難しい問題がある。
【0005】
特許文献2には、レーザ照射の刻印により形成される背景パターンとなる標示部と表示部にレーザ照射の上書きにより背景パターンより深く刻印される識別マークと、識別マークとは異なる部位に背景パターンより深く刻印される形成される隠しマークとを備える標示部材が開示されている。
特許文献2に記載の発明によれば、隠しマークは一見して無意味なマークであり、第3者には情報として認識されないものであることから偽造が難しく、正規のユーザは、隠しマークを確認することで標示部材が正規なものかどうかを判断することが可能となる。また、隠しマークの位置に加えレーザ刻印の深さも変えることができるため、拡大鏡で拡大しても深さ方向の情報までは読み取れないので、特許文献2に記載の標示部材は、容易に偽造はできない
【0006】
しかし、特許文献2には、電子機器のカメラによって隠しマークの画像を読取り、読取画像が、電子機器が備えるパターンと一致するか否かで標示部材の正誤判定を行うことが記載されているが、具体的にどのような情報により判断し、どのように偽造を防止するかまでは明記されていない。
そこで、このように容易には偽造しにくい標示部材を利用して容易に真贋判定が行え、偽造を防止することが可能な仕組みの提供が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009-118293号公報
【特許文献2】特許第6755564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来の真贋判定システムにおける問題点に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は所定の隠しマークを含む対象物に関連する情報がレーザ刻印され、対象物に取り付けられた標示部材を撮影した画像と、レーザ刻印の加工情報に対応して求められる基準陰影情報を含む陰影判定情報とを対比することで容易に真贋判定を行うことが可能な真贋判定アプリケーションおよび真贋判定システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するためになされた本発明による真贋判定アプリケーションは、ユーザの取り扱う対象物に取り付けられた標示部材に基づき、前記対象物の真贋を判定するアプリケーションであって、ユーザ端末の画像取得部に取り込まれた前記標示部材の撮影画像から陰影情報を抽出し、予め前記アプリケーションに組み込まれた陰影判定情報と前記陰影情報とを対比して整合性を評価し、評価の結果、整合すると判断した場合に前記標示部材が正当なものであると判断するようにユーザ端末の真贋判定部を制御するように構成され、前記標示部材には予め所定の隠しマークを含む前記対象物に関連する情報がレーザ刻印され、前記レーザ刻印の大きさ、深さ、及び前記隠しマークの位置の少なくとも一つは前記ユーザ毎に基本の設定が異なり、前記陰影判定情報は前記レーザ刻印の大きさ、深さと前記レーザ刻印の撮影画像の明るさとの関係データに基づき、前記レーザ刻印の加工情報に対応して求められる基準陰影情報と前記隠しマークの位置情報とを含み、前記アプリケーションは前記ユーザ毎に異なる前記陰影判定情報を組み込むことで前記ユーザ毎に異なることを特徴とする。
【0010】
上記目的を達成するためになされた本発明による真贋判定システムは、ユーザの取り扱う対象物に取り付けられた標示部材に基づき、前記対象物の真贋を判定するアプリケーションを提供する情報提供サーバを備える真贋判定システムであって、前記情報提供サーバは、前記標示部材に所定の隠しマークを含む前記対象物に関連する情報をレーザ刻印するためのユーザ毎に異なる加工情報を保存する加工情報保存部と、予め保存されたレーザ刻印の大きさ、深さと前記レーザ刻印の撮影画像の明るさとの関係データに基づき、前記レーザ刻印の加工情報に対応して基準陰影情報を生成し、前記基準陰影情報と前記隠しマークの位置情報とを陰影判定情報として記憶部に保存して管理する陰影判定情報生成部と、ユーザ端末の画像取得部に取り込まれた前記標示部材の撮影画像から陰影情報を抽出し、予め前記アプリケーションに組み込まれた前記陰影判定情報と前記陰影情報とを対比して整合性を評価し、評価の結果、整合すると判断した場合に前記標示部材が正当なものであると判断するようにユーザ端末の真贋判定部を制御するように構成されたユーザ毎に異なるアプリケーションを保存し、ユーザの要求に応じて前記ユーザ端末に提供するアプリケーション管理部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る真贋判定アプリケーションおよび真贋判定システムによれば、ユーザの取り扱う商品などの対象物に取り付けられる標示部材にレーザ刻印する隠しマークを含む対象物に関連する情報は、ユーザ毎に異なる加工条件で加工され、このレーザ刻印を撮影した画像に含まれる陰影情報もユーザ毎に異なるものを含み、レーザ刻印の加工情報に基づいて生成される陰影判定情報を組み込んだ真贋判定アプリケーションもユーザ毎に異なるものとなることから、第3者はユーザ向けのアプリケーションを入手しない限り、ユーザの対象物に取り付けられる標示部材に刻印された情報を正しく読み取れず、偽造が困難となる。一方ユーザは、ユーザ向けのアプリケーションを起動して標示部材の撮影画像を取り込むことにより、容易に標示部材の真贋を判定することが可能となる。
【0012】
本発明に係る真贋判定アプリケーションおよび真贋判定システムによれば、微細なレーザ加工が可能なレーザ加工機を有する標示部材メーカが、ユーザからの注文を受けユーザ毎に異なる加工条件でレーザ刻印し、その時の加工条件に基づくレーザ刻印の陰影判定情報を組み込んだ真贋判定アプリケーションとともに提供することで、微細レーザ加工という基盤技術を共通にしつつも、それぞれのユーザにしか読み取れない標示部材及びそれを用いた真贋判定技術を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態による真贋判定システムの基本構成を概略的に示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態による標示部材を撮影画像としてユーザ端末に取り込む方法を概略的に示す図である。
図3】本発明の実施形態によるレーザ刻印の加工情報と陰影情報との対応を概略的に示す図である。
図4】本発明の実施形態によるユーザ毎に異なる標示部材へのレーザ刻印を例示的に示す図である。
図5】本発明の実施形態によるユーザ毎に異なる標示部材へのレーザ刻印を例示的に示す図である。
図6】本発明の実施形態による真贋判定を行う方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明に係る真贋判定アプリケーションおよび真贋判定システムを実施するための形態の具体例を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態による真贋判定システムの基本構成を概略的に示すブロック図である。
【0015】
図1を参照すると、本発明の実施形態による真贋判定システム1は、ネットワーク5を介して相互に接続される情報提供サーバ10と複数のユーザ端末20とを備える。
本発明の実施形態による真贋判定システム1は、対象物に取り付けられ、レーザ刻印により標示に必要な情報を刻印された標示部材の撮影画像から、陰影情報を抽出し、刻印された情報の陰影がレーザ加工の条件により異なることを利用して、予めレーザ加工の条件に基づいて生成した陰影判定情報と対比することで対象物に取り付けられた標示部材が正当なものか不正なものかを判定するシステムである。
ここで、本発明の実施形態による真贋判定システム1で使用する標示部材について図2、3を使用して概要を説明する。
【0016】
図2は、本発明の実施形態による標示部材を撮影画像としてユーザ端末に取り込む方法を概略的に示す図である。
図2を参照すると対象物30としてのドローンの本体に標示部材31が取り付けられている。対象物30は、今後規制が設けられる予定のドローンに限らず真贋判定が必要となるようなもの全般であり、例えば信頼性が求められる機械や車両などを含む。これらの対象物は模造品に置き換えられることにより重大な事故を引き起こすことが多く、一度事故に至ると製造メーカーの責任が問われやすいことから、製造メーカーにとっては対象物30が自社の正規品か模造品かを簡単に判定する仕組みが重要となる。
【0017】
真贋判定システム1で使用する標示部材31には、レーザ刻印によって標示に必要な情報が刻印される。標示に必要な情報は、対象物30に関連する情報であり、特に対象物30を特定するための情報である。以下ではこの情報を代表的に標示情報と称する。標示情報は、例えば公共機関に登録した場合の登録番号や、対象物30の製造番号、製造ロット番号などである。標示に必要な情報には、製造メーカー名や製造メーカーのロゴマークなどを含んでもよい。
【0018】
標示部材31は、レーザ刻印ができるものであれば特に材料の制限はない。金属プレートでもよいし、樹脂のプレートやレーザ刻印シールでもよい。また標示部材31は、単一な物質に限らず、ベースとなる基材の上にワニスなどを積層した多層構造体であってもよい。ただ、レーザ刻印した部分とレーザ刻印をしない部分とで色調や明度の違いが明確になるように、標示部材31の表面に有色の表面処理を施すか又は塗膜を形成するのが好ましい。また、標示部材31は、対象物30に容易に取り外して付け替えられないように固定されるものであることが好ましく、対象物30から取り外そうとすると容易に破壊されるように構成された材料で構成してもよい。
【0019】
レーザ刻印は加工条件により、深さや大きさなどを自由に変えることが可能であることから、レーザ刻印を撮影した撮影画像41に様々な形で陰影が現れるように加工することが可能である。更にレーザ加工では微細な加工が可能であることから真贋判定システム1で使用する標示部材31のレーザ刻印には目視では確認できない隠しマークを含む。
【0020】
図2では、ユーザ端末20としてスマートフォンを使用し、標示部材31を撮影する状態を示す。スマートフォンの表示部24に正面から見た標示部材31を表示させ、撮影ボタン27をタッチすることで標示部材31は撮影画像41としてユーザ端末20に取り込まれる。一実施形態では、ユーザ端末20で本発明の実施形態による真贋判定アプリケーションを起動して、ユーザ端末20のカメラを標示部材31に向けると、自動でピント調整を行い、ピントが合うと自動的にシャッターが切れる自動シャッターにより撮影画像41がユーザ端末20に取り込まれる。
撮影画像41には標示情報の画像である情報画像42が含まれ、さらに情報画像42の中には隠しマークの画像43が含まれる。隠しマークの画像43はユーザ端末20により情報画像42を拡大表示することにより、目視でも確認できるようになる。
【0021】
図3は、本発明の実施形態によるレーザ刻印の加工情報と陰影情報との対応を概略的に示す図である。図3(a)はレーザ刻印部を拡大して示す模式図であり、図3(b)は図3(a)の正面側、即ち図3(a)では上方側から撮影したレーザ刻印部の画像を示す模式図である。
【0022】
図3(a)を参照すると、標示部材31の一部にレーザ刻印により標示情報32が刻印され、更に標示情報32の中に隠しマーク33が、刻印されている。図3(a)では標示情報32は矩形の外形を有するように示すが、実際は図2で「123-ABC」で示した標示情報32の一部となる形状である。標示情報32は目視で確認可能に刻印される。そのため標示情報32の刻印面は、レーザ光線を、少しずつ場所を変えながら照射して標示部材31の表面を焼き飛ばして形成する。複数のレーザ照射の組み合わせ又は重ね合わせの結果として標示情報32の刻印面が形成されることから、レーザ照射のピッチや大きさは所定のルールに従ってレーザ刻印を行うことが望ましい。
隠しマーク33は標示情報32のレーザ刻印と同じ過程で形成してもよいが、実施形態で使用する標示部材31は標示情報32のレーザ刻印後にレーザ刻印でさらに上書きする形で加工したものを使用する。
【0023】
図3(a)ではレーザの加工条件を変えて深さの異なる3種類の隠しマーク33(33-1、33-2、33-3)を示す。ここでは隠しマーク33は上面形状が円であり、レーザ加工により円筒状の窪みとして示すが、形状は円に限らず文字やロゴマークなどのマークを含めてもよく、自由に設定することができる。
図3(a)のように形成した隠しマーク33を含む標示情報32をユーザ端末20により撮影すると図3(b)の様な撮影画像41が得られる。
【0024】
図3(b)を参照すると、標示部材31の撮影画像41の中に、標示情報32の情報画像42が含まれ、情報画像42の中に隠しマーク33の画像43が含まれる。このときレーザ刻印の深さが最も浅い隠しマーク33-1の画像43-1は隠しマーク33の画像43の中で最も明るい画像となり、レーザ刻印の深さが最も深い隠しマーク33-3の画像43-3は隠しマーク33の画像43の中で最も暗い画像となり、中間の深さの隠しマーク33-2の画像43-2は中間の明るさの画像となる。
【0025】
図3には示さないが、同じ刻印の深さで外径サイズの異なる隠しマーク33の場合は、あるレベル以下の外径サイズではサイズが小さいほど暗くなる。そこで予め外径サイズや深さが異なるレーザ刻印と陰影の関係を求めて基準陰影情報として保存しておけば、レーザ加工条件に応じて期待される陰影が想定できる。特定のレーザ加工条件に対応して想定される陰影情報を判定基準とすることで、これに基づき標示部材31が正規の特定のレーザ加工条件で加工されたものか否か、即ち真贋判定を行うことができる。判定基準に隠しマーク33の位置や、使用する文字のフォントなどを盛り込み、これらを含めて様々な変形例を形成することにより容易に模造できない標示部材31を実現することが可能となる。
【0026】
本発明の実施形態による真贋判定システム1で使用する標示部材31は、ユーザ毎に異なるレーザ加工条件や隠しマーク33の位置などのユーザ毎に異なる判定基準に基づく標示情報32を含み、これに対する真贋判定を行うユーザ端末20用の真贋判定アプリケーション(以下単にアプリケーションと称す)もユーザ毎に異なるものとして提供されるため、ユーザが自身の対象物30の真贋判定を容易に行うことができる一方で、他のユーザには真贋判定の判定基準が伝わらないため、容易には標示部材31を模倣することができない。
【0027】
再び図1を参照すると、情報提供サーバ10は、入出力部12、記憶部13、表示部14、ユーザ登録部15、加工情報保存部16、陰影判定情報生成部17、アプリケーション管理部18、及びこれらの構成要素を制御する制御部11を備える。
【0028】
ユーザ登録部15は、標示部材31を利用するユーザの登録を受け付けて、ユーザに関する情報を保存して管理する。ユーザは自社で製造した製品を対象物30として標示部材31を貼り付けて管理する製造メーカーや、輸入した製品を対象物30として管理する輸入元などである。ユーザ登録部15は、ユーザが新規に利用する際、ユーザの名称、所在地、メールアドレス等の情報を受け付け、これらのユーザに関する情報をユーザ毎に記憶部13に保存して管理する。
【0029】
ユーザ登録部15は、さらに初期の登録時又はユーザが標示部材31を必要とするときに、ユーザから標示部材31へのレーザ刻印に必要な標示情報32を受け付け、ユーザに関する情報と関連付けて記憶部13に保存する。このようにユーザは情報提供サーバ10に繰り返しアクセスする可能性が高いことから、ユーザ登録部15は、ユーザ登録時にユーザ固有のユーザIDを発行してユーザ端末20に送信するとともに、ユーザ端末20からユーザIDに対応するパスワードを受信し、ユーザに関する情報に含めて記憶部13に保存する。これによりユーザがユーザ端末20からユーザIDとパスワードを入力することにより、ユーザ登録部15は、ユーザ固有のWebページを提供してユーザ端末20に表示させる。実施形態では、ユーザ登録部15は、ユーザ固有のWebページを介してレーザ刻印に必要な標示情報32を受け付ける。
【0030】
加工情報保存部16は、標示部材31に所定の隠しマーク33を含む標示情報32をレーザ刻印するためのユーザ毎に異なる加工情報を保存する。加工情報はユーザが所望する標示情報32をどの位置にどのようにレーザ加工を行うかを示す情報であり、隠しマーク33をどのようなパターンでどのような深さで形成するかなどの情報を含む。このような加工情報は標示部材31にレーザ刻印を行う担当者がユーザ毎に個別に設定してもよいし、隠しマーク33の種類、レーザ刻印の大きさ、深さなどの加工項目を各列に、それぞれの種類や値を各行に割り振るテーブルとしておき、ユーザIDに含まれる番号に応じてそれぞれの列の何行目かが一意に選択されるようにして基本的な組合せが自動的に求まるような設定の仕方にしておいてもよい。
【0031】
陰影判定情報生成部17は、予め保存されたレーザ刻印の大きさ、深さとレーザ刻印の撮影画像の明るさとの関係データに基づき、レーザ刻印の加工情報に対応して基準陰影情報を生成し、基準陰影情報と隠しマーク33の位置情報とを組み合わせ、陰影判定情報として記憶部13に保存して管理する。
【0032】
レーザ刻印の大きさ、深さとレーザ刻印の撮影画像の明るさとの関係データは、例えば実際に使用する標示部材31の表面に、レーザ刻印により隠しマーク33を含まない標示情報32を形成後、標示情報32の中に様々な外形の大きさで様々な深さの隠しマーク33に相当する追加のレーザ刻印を行い、標示情報32を撮影して撮影画像の陰影状態を解析することにより求められる。このとき明るさは撮影時の照明の明るさにより変化するので、レーザ刻印の大きさ、深さといったレーザ加工条件とレーザ刻印の撮影画像の絶対的な明るさを関係付けるのは好ましくない。
【0033】
実施形態では、レーザ刻印により形成した標示情報32の明るさを基準値とする相対的な明るさとして追加のレーザ刻印の撮影画像の明るさを関係付ける。相対的な明るさは標示情報32の明るさとの差分データとしてもよいが、実施形態では標示情報32の明るさに対する追加のレーザ刻印の撮影画像の明るさの比の値を関係付ける。また他の実施形態では標示情報32の明るさと、最も暗く撮影されたレーザ刻印の撮影画像の明るさとの差分である最大差分を求め、追加のレーザ刻印の撮影画像の明るさは、標示情報32の明るさとそれぞれのレーザ刻印の撮影画像の明るさの差分が最大差分に対してどれだけの比率になるかにより決定する。
【0034】
ユーザの標示部材31のレーザ刻印の大きさとそれぞれのレーザ刻印の深さが決定されると、レーザ刻印の大きさ、深さとレーザ刻印の撮影画像の明るさとの関係データに基づき、標示部材31に使用した場合の期待されるレーザ刻印の明るさが想定されることから、陰影判定情報生成部17は、これを基準陰影情報として生成する。
【0035】
実施形態で刻印されるレーザ刻印に含まれる隠しマーク33は、自由な位置に配置が可能である。そこで陰影判定情報生成部17は、基準陰影情報と隠しマーク33の位置とを組み合わせた情報を陰影判定情報として記憶部13に保存して管理する。このように陰影判定情報を生成することにより、真贋判定を行いたい標示部材31を撮影して陰影情報を抽出し、抽出した陰影情報を陰影判定情報と対比することにより、当該標示部材31の真贋判定を行うことが可能となる。
【0036】
本発明の実施形態による真贋判定システム1では、ユーザ端末20において標示部材31を撮影して真贋判定を行うことが可能となるよう、情報提供サーバ10より陰影判定情報を含むアプリケーションをユーザ端末20に提供する。陰影判定情報はユーザ毎に異なることからこれを含むアプリケーションもユーザ毎に異なるものとなる。
【0037】
アプリケーション管理部18は、ユーザ端末20に取り込まれた標示部材31の撮影画像41から陰影情報を抽出し、予めアプリケーションに組み込まれた陰影判定情報と抽出した陰影情報とを対比して整合性を評価し、評価の結果、整合すると判断した場合に標示部材31が正当なものであると判断するようにユーザ端末20を制御するように構成されたユーザ毎に異なるアプリケーションを保存し、ユーザの要求に応じてユーザ端末20に提供する。
アプリケーションはユーザ毎に異なるため、アプリケーション管理部18は、それぞれのアプリケーションをユーザ登録部15が管理するユーザに関する情報と関連付けられるようにして記憶部13に保存する。
【0038】
図1に示すように、ユーザAのユーザ端末20-1にはアプリケーションAが提供され、ユーザBのユーザ端末20-2にはアプリケーションBが提供される。このためユーザAはアプリケーションAを実行してユーザAの対象物30に取り付けられた標示部材31の真贋判定を行うことができるが、アプリケーションAには、ユーザBの使用する標示部材31用の陰影判定情報は含まれないため、ユーザBの対象物30に取り付けられた標示部材31の真贋判定を行うことはできない。逆にユーザBはアプリケーションBを実行してユーザBの対象物30に取り付けられた標示部材31の真贋判定を行うことができるが、ユーザAの対象物30に取り付けられた標示部材31の真贋判定を行うことはできない。
このように各ユーザは自身の使用する標示部材31のみ真贋判定を行うことができ、他のユーザの標示部材31に関しては何が正規であるかを把握できないため容易に他のユーザの標示部材31を模倣することができない。
【0039】
情報提供サーバ10の入出力部12は、ネットワーク5を介してユーザ端末20とのデータの入出力やアプリの提供などを行うための通信手段を含む。情報提供サーバ10に文字入力を行うキーボードなども入出力部12に含む。
記憶部13は、受信したユーザの名称、所在地、メールアドレス等のユーザに関する情報の他、発行したユーザIDなどのデータを保存する。また各ユーザ向けのアプリケーションや情報提供サーバ10自身を制御する制御プログラムなどのプログラムを保存する。記憶部13は、ハードディスクなどの記憶媒体により実現化され、記憶する情報が多い場合は外付けのメモリ装置として構成してもよい。
【0040】
表示部14は、ユーザに関する情報などの管理情報や、必要によりユーザ端末20に提供するアプリケーションや情報提供サーバ10を制御する制御プログラムなどのプログラムを表示する。表示部14は、液晶表示装置などで実用化される。
制御部11は、記憶部13に保存された制御プログラムに従い、情報提供サーバ10の各構成要素が、上記で説明した機能を果たすように制御する。制御部11はマイクロコンピュータなどの半導体装置を含む制御回路により実現化される。
【0041】
ユーザ端末20は、入出力部22、記憶部23、表示部24、画像取得部25、及び真贋判定部26を備える。
画像取得部25は、ユーザの取り扱う対象物30に取り付けられた標示部材31の撮影画像41を取り込んで記憶部23に保存する。標示部材31の標示情報32には目視では確認できない大きさの隠しマーク33が含まれる。そこで画像取得部25が取り込む撮影画像41中の情報画像42には隠しマーク33の画像43が含まれる。隠しマーク33の画像43は拡大して目視で確認できる必要があり、また隠しマーク33の画像43の陰影情報は抽出されて真贋判定に使用する必要があることから、画像取得部25の取り込む画像は目視の確認や陰影情報が抽出可能となるレベルの鮮明さ求められる。そこで画像取得部25は、目視の確認や陰影情報が抽出可能となる解像度を有する。
【0042】
真贋判定部26は、情報提供サーバ10から提供されたアプリケーションの制御に従い、画像取得部25に取り込まれた標示部材31の撮影画像41から陰影情報を抽出し、予めアプリケーションに組み込まれた陰影判定情報と抽出した陰影情報とを対比して整合性を評価し、評価の結果、整合すると判断した場合に標示部材31が正当なものであると判断する。
【0043】
陰影情報の抽出は標示部材31の撮影画像41全体に対して行ってもよいが、一実施形態では陰影判定情報に基づき、真贋判定に必要な部分の陰影情報を集中的に抽出することにより処理にかかる時間や負荷を低減する。陰影情報は、隠しマーク33の画像43が含まれない部分の情報画像42の明るさを基準の明度とし、それぞれの隠しマーク33の画像43の明るさに対応する明度を求め、基準の明度との差分又は比率として表し、それぞれの隠しマーク33の画像43の位置情報と対応付けた形で抽出する。
真贋判定部26は、上記で抽出した陰影情報と陰影判定情報とを対比し、隠しマーク33の明度や位置が整合するかどうかで正規の標示部材31かどうかを判定する。
【0044】
入出力部22は、ユーザがユーザの名称、メールアドレス等のユーザに関する情報などの情報を入力するための入力手段及び入力した情報を、ネットワーク5を介して情報提供サーバ10に送信したり、情報提供サーバ10からユーザIDやアプリケーションを受信したりするための通信手段を備える。入力手段は、文字を入力するためのキーボード又はタッチパネルを含む。この他、表示画面に表示されるデータを選択するためのマウスなどのポインティングデバイスなども含む。
記憶部23は、ユーザに関する情報などの入力情報を一時的に保存したり、ダウンロードしたアプリケーションやユーザ端末20自身の基本動作を制御するための制御プログラムなどのプログラムを保存したりする。記憶部23は、メモリ半導体や複数のメモリ半導体で構成されるメモリモジュールなどで実現化される。
【0045】
表示部24は、ユーザの名称、メールアドレス等の入力情報などの各種電子データの他、情報提供サーバ10より提供されるWebページの情報などを表示する。表示部24は液晶表示装置や有機EL表示装置などで実現される。
制御部21は、記憶部23に保存された制御プログラムに従い、ユーザ端末20の各構成要素が上記の機能を果たすように制御する。制御部21は、制御用マイクロコンピュータなどを含む各種電子部品を搭載した制御基板により実現される。
ユーザ端末20は、上記の構成要素を含むパーソナルコンピュータ、タブレット端末、スマートフォンなどの電子機器により実現化される。また画像取得部25はこれら電子機器が備えるカメラにより実現される。
ネットワーク5は、インターネットで代表される広域のネットワーク5である。
【0046】
情報提供サーバ10が提供するアプリケーションは、各ユーザ向けに異なる仕様で作製されるため、ユーザID及びパスワードで確定されたユーザに、ユーザ向けの専用アプリケーションとして提供される。提供されたアプリケーションはユーザ端末20の記憶部23に保存され、実行されるとユーザにユーザ端末20の画像取得部25を介して標示部材31の撮影を促し、撮影して保存された標示部材31の撮影画像41から陰影情報を抽出し、予めアプリケーションに組み込まれた陰影判定情報と抽出した陰影情報とを対比して整合性を評価し、評価の結果、整合すると判断した場合に標示部材31が正当なものであると判断するように真贋判定部26を制御する。
【0047】
ユーザの管理する対象物30が複数ある場合に、標示部材31の材質や大きさなどが共通で使用可能であり、レーザ刻印の大きさ、深さなどが共通に適用可能な場合は、共通の真贋判定のアプリケーションで判定が可能であるが、陰影判定情報が異なる場合は対象物30によってアプリケーションが共通化できない。一実施形態では情報提供サーバ10は同じユーザ向けであっても対象物30毎に異なるアプリケーションとして提供する。また他の実施形態では1つのアプリケーションの中に異なる対象物30に対応して複数の陰影判定情報を含み、アプリケーションを実行すると対象物30を選択するメニューを表示部24に表示させ、ユーザの選択に応じて対応する陰影判定情報を選択して真贋判定を行うように構成される。
【0048】
図4は、本発明の実施形態によるユーザ毎に異なる標示部材へのレーザ刻印を例示的に示す図である。図4(a)は、あるユーザ(A)の対象物30に取り付ける標示部材31の一部と円で囲んだA部の拡大図を示し、図4(b)は、他のユーザ(B)の対象物30に取り付ける標示部材31の一部と円で囲んだB部の拡大図を示す。
【0049】
図4を参照するとユーザ(A)の標示部材31、ユーザ(B)の標示部材31ともに標示情報32として「123-ABC」の文字がレーザ刻印されている。またそれぞれの標示情報32の中には拡大図に示すように隠しマーク33として「ABC」の文字がレーザ刻印で上書きされる形で標示情報32より深い凹部となるように形成されている。
【0050】
両者で相違しているのは標示情報32の中の隠しマーク33の位置である。ユーザ(A)の標示部材31では、ある基準点からx方向にxa、y方向にyaの位置に隠しマーク33の開始点が位置するように設定されている。一方ユーザ(B)の標示部材31では、基準点からx方向にxb、y方向にybの位置に隠しマーク33の開始点が位置するように設定されている。基準点は予め任意に設定した地点であり、例えば標示部材31の1つの角としてもよいし、標示情報32の下辺を繋ぐ線と先頭の標示情報32の左辺を繋ぐ線の交点でもよい。更には標示部材31の任意の地点に基準点となる微小なレーザ照射を行って、これを基準にして標示情報32をレーザ刻印するようにしてもよい。
【0051】
アプリケーションに含まれる陰影判定情報に(xa、ya)のように基準点からの位置情報を含めることにより、同じ「ABC」の文字が刻印されていてもユーザ(A)にとっては図4(a)の標示情報32が正規のものであり、図4(b)の標示情報32は正規のものではないとの判定を下すことが可能となる。
【0052】
図5は、本発明の実施形態によるユーザ毎に異なる標示部材へのレーザ刻印を例示的に示す図である。図5(a)は、あるユーザ(A)の対象物30に取り付ける標示部材31の一部と円で囲んだC部の拡大図を示し、図5(b)は、他のユーザ(B)の対象物30に取り付ける標示部材31の一部と円で囲んだD部の拡大図を示す。
【0053】
図5を参照すると、図4の事例と同様、ユーザ(A)の標示部材31、ユーザ(B)の標示部材31ともに標示情報32として「123-ABC」の文字がレーザ刻印されている。またそれぞれの標示情報32の中には拡大図に示すように隠しマーク33として「ABC」の文字がレーザ刻印で上書きされて形成されている。
【0054】
図5の事例では、両者で相違しているのは標示情報32の中の隠しマーク33の大きさである。ユーザ(A)の標示部材31は、隠しマーク33の大きさが高さhaの文字サイズでレーザ刻印されているのに対し、ユーザ(B)の標示部材31は、隠しマーク33の大きさが高さhbの文字サイズでレーザ刻印されている。
この場合はアプリケーションに含まれる陰影判定情報にhaのように隠しマーク33の大きさに関する情報を含めることにより、同じ「ABC」の文字が刻印されていても正規のものか否かを判断することが可能となる。
【0055】
図4、5の事例では、標示部材31の撮影画像41を拡大して観察すれば、目視でも正規品と非正規品とをある程度は比較可能であるが、レーザ刻印の深さを変更するような変形例の場合は撮影画像41を拡大観察しても容易には確認できない。例えばユーザ(A)の標示部材31とユーザ(B)の標示部材31とで隠しマーク33の位置も大きさも同じにしたとしても両者のレーザ刻印の深さが異なっていれば、陰影情報を抽出して陰影判定情報と比較することで真贋判定を行うことができる。
【0056】
このようにレーザ刻印による標示情報32の作り込みは隠しマーク33の位置、大きさというような2次元的な変形に加え深さ方向に変化を持たせることも容易にできるため、様々な形で隠しマーク33を作り込むことができる。上記以外にも変形例として隠しマーク33の文字や図形の線の太さ、レーザ照射を行う間隔の相違による連続線、破線、点線等の線の連続性を変更することとしてもよい。これらの様々な変形例は標示情報32に上書きする隠しマーク33全体に共通に行ってもよいし、標示情報32の中の特定部分の隠しマーク33に限定して行ってもよい。例えば図4(a)の拡大図にある隠しマーク33のどれか1文字だけを他の文字より深く形成したり、字体を変化させたりしてするようにしてもよい。
【0057】
またこれら隠しマーク33の陰影情報の基準となる標示情報32のレーザ刻印面も、レーザ照射条件を変えることにより様々な表面状態を作り出すことができ、結果的に様々な明るさに形成することができる。そこでユーザ毎に標示情報32のレーザ照射条件を変更した標示部材31を作製し、そこに隠しマーク33をレーザ刻印で上書きした標示部材31に対応した陰影判定情報を作製してアプリケーションに組み込んでもよい。
このように本発明の実施形態による真贋判定システム1は、ユーザ毎に異なる仕様を盛り込むことにより陰影判定情報をユーザ毎に変化させ、当該ユーザにしか真贋判定ができないような形でアプリケーションを提供することにより、偽造を防止するとともに容易に偽造を検出することができる真贋判定技術を提供する。
【0058】
図6は、本発明の実施形態による真贋判定を行う方法を説明するためのフローチャートである。
図6を参照すると、段階S600にてユーザはユーザ端末20の画像取得部25により標示部材31の撮影を行い、標示部材31の撮影画像41を取得する。一実施形態では、情報提供サーバ10から真贋判定のアプリケーションを取得して保存するユーザ端末20で、アプリケーションを実行すると、ユーザ端末20の表示部24には標示部材31の撮影を促すコメントが表示され、カメラの撮影画面が立ち上がるので、ユーザはそれに従い正面から標示部材31をとらえ、撮影ボタン27をタッチすることにより標示部材31の撮影画像41が取り込まれる。
【0059】
撮影画像41が取り込まれると段階S610にて、ユーザ端末20の真贋判定部26はアプリケーションの指示に従い撮影画像41から陰影情報を抽出する。陰影情報は隠しマーク33の刻印されていない部分の標示情報32の明るさを基準の明度とし、隠しマーク33の刻印されている部分の明るさを基準に対する相対的な明度として表し、これらの明るさの情報と位置との関係を含む情報として抽出する。
【0060】
次に、真贋判定部26は、段階S620にて、抽出した陰影情報とアプリケーションの中に含まれる当該標示部材31用の陰影判定情報とを対比する。対比した結果、位置と明度の関係が両者で整合するか否かを判定する(段階S630)。
【0061】
真贋判定部26は、判定の結果、抽出した陰影情報と陰影判定情報とが整合する場合は、段階S640にて当該標示部材31は正当なものであると判断し、ユーザ端末20の表示部24に正当な標示部材31であることを表示させる。標示部材31が正当なものであることにより、ユーザは標示部材31を取り付けた対象物30は、当該ユーザが管理する真の対象物30であると判断することができる。
【0062】
逆に判定の結果、抽出した陰影情報と陰影判定情報とが整合しない場合は、段階S650にて当該標示部材31は不正なものであると判断し、ユーザ端末20の表示部24に不正な標示部材31であることを表示させる。これによりユーザは不正な標示部材31が取り付けられた対象物30は、当該ユーザが管理する真の対象物30ではなく贋の対象物30であると判断することができる。
【0063】
以上、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲から逸脱しない範囲内で多様に変更することが可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 真贋判定システム
5 ネットワーク
10 情報提供サーバ
11、21 制御部
12、22 入出力部
13、23 記憶部
14、24 表示部
15 ユーザ登録部
16 加工情報保存部
17 陰影判定情報生成部
18 アプリケーション管理部
20、20-1、20-2 ユーザ端末
27 撮影ボタン
30 対象物
31 標示部材
32 標示情報(対象構造物に関連する情報)
33、33-1、33-2、33-3 隠しマーク
41 撮影画像(標示部材)
42 情報画像(対象構造物に関連する情報の画像)
43、43-1、43-2、43-3 画像(隠しマーク)
図1
図2
図3
図4
図5
図6