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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134151
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】報知システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20230920BHJP
   G08G 1/04 20060101ALI20230920BHJP
   G08G 1/08 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
G08G1/16 A
G08G1/04 D
G08G1/08 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022039515
(22)【出願日】2022-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001184
【氏名又は名称】弁理士法人むつきパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】古藤 澄久
(72)【発明者】
【氏名】上野 一彦
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 謙一
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 和則
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181AA21
5H181BB04
5H181CC04
5H181LL08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】道路状況に応じた適切なタイミングで走行車両等への路面標示を行う報知システムを提供する。
【解決手段】直接的に相互に通信可能に接続されており、道路沿いに設置された複数の道路灯を含んで構成される報知システムであって、各道路灯は、道路を撮影して得られた画像データに基づいて、道路を横切って進行する横断者の有無と道路を走行する車両の有無を検出する映像処理部と、横断者が存在する場合に横断者感知信号を生成し、他の道路灯に対して横断者感知信号を送信する第1信号処理部と、車両が存在する場合に車両検知信号を生成し、車両の進行方向に存在する他の道路灯に対して車両感知信号を送信する第2信号処理部と、他の道路灯から送信される横断者感知信号及び車両検知信号の両方を受信した場合に、注意喚起のための報知を行う報知実行部と、を含む。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直接的に相互に通信可能に接続されており、道路沿いに設置された複数の道路灯を含んで構成される報知システムであって、
前記複数の道路灯の各々は、
前記道路を撮影して得られた画像データに基づいて、前記道路を横切って進行する横断者の有無と前記道路を走行する車両の有無を検出する映像処理部と、
前記横断者が存在する場合に横断者感知信号を生成し、他の前記道路灯に対して当該横断者感知信号を送信する第1信号処理部と、
前記車両が存在する場合に車両検知信号を生成し、当該車両の進行方向に存在する他の前記道路灯に対して当該車両感知信号を送信する第2信号処理部と、
他の前記道路灯から送信される前記横断者感知信号及び前記車両検知信号の両方を受信した場合に、注意喚起のための報知を行う報知実行部と、
を含む、報知システム。
【請求項2】
前記報知実行部による前記報知は、前記道路への道路標示画像の形成、側面警告灯及び前記車両への狭域通信による注意喚起のうちから選択される少なくとも1つである、
請求項1に記載の報知システム。
【請求項3】
前記第1信号処理部は、前記横断者の移動速度と前記道路の幅に基づいて前記横断者の横断に要すると推定される横断時間を求め、当該横断時間に応じて、他の前記道路灯のうちから前記横断者感知信号を送信する対象とする前記道路灯を決める、
請求項1又は2に記載の報知システム
【請求項4】
前記第2信号処理部は、前記車両の移動速度に対応する想定停止距離に応じて、他の前記道路灯のうちから前記車両感知信号を送信する対象とする前記道路灯を決める、
請求項1~3の何れか1項に記載の報知システム
【請求項5】
前記第2信号処理部は、他の前記道路灯のうち前記車両の走行方向に存在する当該道路灯のうちから前記車両感知信号を送信する対象とする前記道路灯を決める、
請求項4に記載の報知システム。
【請求項6】
前記複数の道路灯の各々と通信可能に接続されており、当該複数の道路灯の各々を管理する管理サーバを含み、
前記複数の道路灯の各々は、前記管理サーバを介することなく相互に直接的に前記横断者感知信号及び前記車両感知信号を送受信する、
請求項1~5の何れか1項に記載の報知システム。
【請求項7】
前記複数の道路灯の各々は、前記画像データを生成するカメラを備える、
請求項1~6の何れか1項に記載の報知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、報知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2020-87884号公報(特許文献1)には、車両が走行する道路に沿って設置され、少なくとも1つの警戒色を含む複数の灯色で点灯可能であり、それぞれが、周囲から収音して収音データを生成する音センサを有する複数の街路灯と、収音データを受け、収音データに基づいて緊急車両を示す目的音およびその発生位置を検出し、緊急車両の現在位置および進行方向を示す緊急車両進路データを生成する音響信号処理部と、緊急車両進路データに基づいて、緊急車両の進路上に設置された少なくとも1つの街路灯について警戒色での点灯を指示する警戒色点灯信号を生成する灯色制御部と、を備える街路灯システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-87884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示に係る具体的態様は、道路状況に応じた適切なタイミングで走行車両等への路面標示等の報知を行うことが可能な報知システムを提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に係る一態様の報知システムは、(a)直接的に相互に通信可能に接続されており、道路沿いに設置された複数の道路灯を含んで構成される報知システムであって、(b)前記複数の道路灯の各々は、(b1)前記道路を撮影して得られた画像データに基づいて、前記道路を横切って進行する横断者の有無と前記道路を走行する車両の有無を検出する映像処理部と、(b2)前記横断者が存在する場合に横断者感知信号を生成し、他の前記道路灯に対して当該横断者感知信号を送信する第1信号処理部と、(b3)前記車両が存在する場合に車両検知信号を生成し、当該車両の進行方向に存在する他の前記道路灯に対して当該車両感知信号を送信する第2信号処理部と、(b4)他の前記道路灯から送信される前記横断者感知信号及び前記車両検知信号の両方を受信した場合に、注意喚起のための報知を行う報知実行部と、を含む、報知システムである。
【0006】
上記構成によれば、道路状況に応じた適切なタイミングで走行車両等への路面標示等の報知を行うことが可能な報知システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、一実施形態の報知システムの概略構成を説明するための図である。
図2図2(A)は、報知システムの全体構成を示すブロック図である。図2(B)は、各道路灯の設置状態を模式的に示す図である。
図3図3は、各道路灯の構成を示すブロック図である。
図4図4は、コンピュータシステムの構成例を示す図である。
図5図5は、道路灯のカメラによる撮影範囲と検出する情報を説明するための図である。
図6図6は、道路灯の動作手順を示すフローチャートである。
図7図7は、一例の道路状況を模式的に示す図である。
図8図8は、図7に示す道路状況における道路描画システムの各道路灯の動作を説明するための図である。
図9図9は、他の例の道路状況を模式的に示す図である。
図10図10は、図9に示す道路状況における道路描画システムの各道路灯の動作を説明するための図である。
図11図11は、道路データの一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、一実施形態の報知システムの概略構成を説明するための図である。図1では、道路を俯瞰した様子が模式的に示されている。本実施形態の報知システム100は、道路脇に配置された複数の道路灯を含んで構成されており、道路を横断する歩行者(横断者)102が存在する場合であって、道路上に走行車両103や走行車両104が存在する場合に、各走行車両103、104の搭乗者(例えば運転者)から視認可能な路面上に路面標示画像105、106を描画するものである。このような路面標示画像105、106が描画されることにより、各走行車両103、104の搭乗者に対して歩行者102の存在について注意喚起することができるとともに歩行者102にも車両103、104の存在について注意喚起することができる。
【0009】
図2(A)は、報知システムの全体構成を示すブロック図である。図示の報知システム100は、複数の道路灯A1、A2、A3・・・A9と、これら道路灯A1~A9の各々と通信可能に接続された管理サーバ10を含んで構成されている。
【0010】
各道路灯A1~A9は、管理サーバ10を介すことなく相互に直接的に通信可能に接続されている。具体的には、各道路灯A1~A9は、1つのグループとして相互に関連付けられており、このグループ内で相互に通信可能に接続されている。そして、ある道路灯から送信されたデータは他の全ての道路灯に送信可能であり、グループ内で共有され得る。各道路灯A1~A9には各々を識別するための固体識別番号が設定されているとともに、設置位置(緯度経度)が設定されている。
【0011】
各道路灯A1~A9は、例えば図2(B)に示すように道路12の一方の外側においてこの道路12に沿って互いに間隔を空けて配置されている。図示の例では、各道路灯A1~A9の相互間隔Dは一定であるがこれに限定されない。各道路灯A1~A9は、支柱によって道路の上方に配置されており、道路12の路面上へ向けて光照射を行うとともに、路面標示画像105、106(図1参照)を形成可能に構成されている。
【0012】
管理サーバ10は、各道路灯A1~A9とそれぞれ一対一に通信可能に接続されている。管理サーバ10と各道路灯A1~A9との間の通信は、通信データ量を少なくするために、必要時のみに通信するように構成されている。具体的には、各道路灯A1~A9において、各々の有する自己診断機能により自律制御ができない等の不具合が発生したと判断された際に、当該不具合を有する道路灯が管理サーバ10に対して不具合情報を含むデータを送信する。この場合には、不具合を有する道路灯の制御を管理サーバ10が代替して行う。
【0013】
また、管理サーバ10は、システムアップデートなどの必要が生じた際に各道路灯A1~A9との間で通信を行う。また、必要に応じて管理サーバ10は、各道路灯A1~A9に対して、動作状況を示すデータ、各道路灯A1~A9が備えるカメラによって生成された画像データ、その他、各道路灯A1~A9の相互間で通信されるデータの送信を要求し、当該データを取得することもできる。
【0014】
図3は、各道路灯の構成を示すブロック図である。なお、ここでは道路灯A1の構成を示すが他の道路灯A2~A9についても道路灯A1と同様の構成を備えている。図示の道路灯A1は、カメラ21、自律制御部22、道路灯照明部23、報知制御部24、報知部25、通信部26を含んで構成されている。
【0015】
カメラ21は、自律制御部22と接続されており、道路灯A1の設置された位置に対応した所定範囲の道路を撮影してその画像データを自律制御部22へ出力する。
【0016】
自律制御部22は、カメラ21から出力される画像データ(映像データ)に対して所定の画像処理を行うことにより歩行者や車両などの対象体の有無や各々の進行方向並びに速度などを検出する映像処理部31と、映像処理部31による対象体の検出結果に応じてこれら対象体が検出されたことを示す信号を生成し、そのデータを通信部26の信号送信部33へ出力する信号生成部32を有する。この自律制御部22は、例えば後述の図4に示すようなコンピュータシステムにおいて所定の動作プログラムを実行させることにより実現可能である。
【0017】
道路灯照射部23は、自律制御部22と接続されており、自律制御部22の制御により夜間などの所定時間帯に点灯して道路へ光を照射する。
【0018】
報知制御部24は、自律制御部22と接続されており、自律制御部22の信号生成部32により生成される信号に基づいて報知部25の動作を制御し、道路上に所定の路面標示画像を描画させる。また、報知制御部24は、通信部26の信号受信部34と接続されており、他の道路灯A2~A9から送信されて信号受信部34により受信される対象体の検出状態を示す信号のデータに基づいて報知部25の動作を制御し、道路上に所定の路面標示画像を描画させる。
【0019】
報知部25は、報知制御部24と接続されており、報知制御部24により動作を制御されて所定の路面標示画像を道路上に描画する。報知部25による路面標示画像は、文字、シンボル、アイコンなど種々に設定することができる。また、報知部25による報知は、路面標示画像に限られず、側面警告灯であってもよいし、専用狭域通信などの通信により道路灯A1の近隣の車両に対して直接的に報知する態様でもよい。以下では、主に路面標示画像を例にして説明する。
【0020】
通信部26は、自律制御部22と接続されており、道路灯A1が他の道路灯A2~A9との間でデータ通信を行うためのものであり、信号生成部32により生成される信号のデータを他の道路灯A2~A9の各通信部26へ送信する信号送信部33と、他の道路灯A2~A9の各通信部26から送信される信号のデータを受信する信号受信部34を有する。通信部26は、報知制御部24とも接続されており、信号受信部34によって受信された信号のデータは報知制御部24にも渡される。
【0021】
なお、本実施形態では、自律制御部22の信号生成部32と通信部26の信号送信部33によって「第1信号処理部」及び「第2信号処理部」が構成され、報知制御部24、報知部25及び通信部26の信号受信部34によって「報知実行部」が構成されている。
【0022】
図4は、コンピュータシステムの構成例を示す図である。上記した各道路灯A1等の自律制御部22、報知制御部24、通信部26、例えば図示のようなコンピュータシステムを用いて構成することが可能である。具体的には、図4に示すコンピュータシステムは、CPU(中央演算ユニット)201、ROM(読み出し専用メモリ)202、RAM(一時記憶メモリ)203、記憶デバイス204、通信デバイス205、入出力部206を含んで構成されている。これらCPU201等の相互間はバスにより相互に通信可能に接続されている。
【0023】
CPU201は、記憶デバイス204に格納されたプログラム207を読み出してこれを実行することにより情報処理を行う。ROM202は、CPU201の動作に必要な基本制御プログラムなどを格納する。RAM203は、CPU201の情報処理に必要なデータを一時記憶する。記憶デバイス204は、データを記憶するための大容量記憶装置であり、ハードディスクドライブやソリッドステートドライブなどで構成される。通信デバイス205は、外部の他装置との間でのデータ通信に係る処理を行う。入出力部206は、外部装置との接続を図るインターフェイスであり、本実施形態ではカメラ21や道路灯照明部23等との間の接続に用いられる。
【0024】
図5は、道路灯のカメラによる撮影範囲と検出する情報を説明するための図である。図5では、一例として道路灯A1の設置位置に対応する所定範囲の道路を上方から見た様子が模式的に示されているが、他の道路灯A2~A9においても同様である。カメラ21による撮影範囲は、道路灯A1の設置位置を挟んで図中左右両側の基準線140、141と、道路灯A1の設置位置を基準に手前側の車線130及び奥側の車線131に囲まれた範囲を少なくとも含むように画角などが設定される。他の道路灯A2~A9についても同様である。そして、各道路灯A1~A9のそれぞれにおける撮影範囲は隣り合うもの同士の撮影範囲間に隙間がないように設定されていることが好ましい。
【0025】
図示のように、例えば道路灯A1の設置位置を基準に中央線132よりも奥側の車線には図中右方向へ進行する車両103が存在し、中央線132よりも手前側には図中左方向へ進行する車両104が存在し、かつ中央線132よりも手前側から奥側へ向かう方向に横断しようとする歩行者102が存在する場合を想定する。このとき、自律制御部22の映像処理部31は、車両103、104のそれぞれについて進行方向と移動速度を画像処理によって検出する。
【0026】
また、映像処理部31は、横断者である歩行者102の進行方向と移動速度を画像処理によって検出する。そして、映像処理部31は、歩行者102の進行方向が道路を横断する方向である場合には、この歩行者102を横断者として検出する。なお、歩行者102の進行方向によらず、撮影範囲に歩行者102が存在する場合は一律にこの歩行者102を横断者として検出してもよい。
【0027】
自律制御部22の信号生成部32は、映像処理部31による検出結果に基づいて、車両103や車両104が存在する場合にはその旨を示す車両感知信号を生成し、横断者である歩行者102が存在する場合にはその旨を示す横断者感知信号を生成する。これらの車両感知信号、横断者感知信号の各データは、それぞれ他の道路灯A2~A9のうち、必要な道路灯へ送信される。必要な道路灯の決定方法について以下に説明する。
【0028】
上記したように隣り合う道路灯同士の相互間隔をDとし(図2参照)、横断者である歩行者102の移動速度をV1、道路に定められている法定速度をV2、道路幅をLとする。このとき、横断者感知信号を送信する対象となる道路灯の個数は、例えば以下の計算式により求めることができる。
【0029】
道路灯の個数={((L/V1)×(V2+α))/D}+1
【0030】
ここで、αは、法定速度V2を実際の道路状況に応じて補正するための値であり、例えば対象の道路を一定期間内に観測して得られた実際の車両の平均的な走行速度と法定速度V2との差分に相当する値に定めることができる。
【0031】
上記計算式において、(L/V1)の項は横断者である歩行者102が道路を横断するのに要する時間の推定値(横断時間)を求める項である。この横断時間に(V2+α)の項を乗算することで、横断時間内における各車両の移動距離の推定値を得られる。この移動距離の推定値を道路灯同士の相互間隔Dで除算することで、各車両の移動距離が何個の道路灯に相当するか、その推定値を得ることができる。さらに「+1」を加算しているのは道路灯の数に余裕を持たせるためであり、状況によりこれを2ないしそれ以上の数に設定してもよい。この計算式により求められる道路灯の個数に基づいて、近隣両側の道路灯に対して横断者感知信号のデータが送信される。例えば、道路灯A5において求められた道路灯の個数が2であれば、道路灯A5の両側2個分の道路灯A3、A4、A6、A7に対して横断者感知信号のデータが送信される。
【0032】
以下に、具体的な数値例とそれに基づく道路灯の個数の計算例を示す。
道路幅Lが7(m)、横断者である歩行者102の移動速度V1が1.3(m/s)、法定速度V2が50(km/h)、すなわち14(m/s)、補正値αが0(m/s)、道路灯の相互間隔Dが30(m)であるとすると、上記計算式に基づいて求められる道路灯の個数は3.5となるので、これを切り上げて4とすることができる。この場合、ある道路灯を基準としてその両側それぞれ4個ずつの道路灯に対して横断者感知信号のデータが送信される。
【0033】
また、歩行者102の有無によらず、車両103、104が存在する場合にはこれらの車速(走行速度)により予測される想定停車距離Fに基づいて、車両感知信号を送信する対象となる道路灯の個数を以下のように求めることができる。なお、想定停車距離Fは、車両が停車するまでに要すると想定される距離をいい、法定速度V2に基づいて定められてもよい。また、想定停車距離Fは、雨天時など天候に応じて可変に設定されてもよい。
【0034】
道路灯の個数=(F/D)+1
【0035】
一例として、走行速度が50(km/h)のときの乾燥路面における想定停車距離Fが24.5(m)であり、道路灯の相互間隔Dが30(m)であるとすると、上記計算式による道路灯の個数は1.81となるので、これを切り上げて2個とすることができる。この場合、ある道路灯を基準として、車両の走行方向に存在する2個の道路灯に対して車両感知信号のデータが送信される。例えば、道路灯A5において車両103のみが検出されており、その走行方向が道路灯A6へ向かう方向である場合にはこの道路灯A6およびその次の道路灯A7に車両感知信号のデータが送信される。
【0036】
図6は、道路灯の動作手順を示すフローチャートである。ここでは道路灯A1を例にしてその動作をフローチャートに沿って説明するが、他の道路灯A2~A9も並行して同様の動作を行っているものとする。また、各処理の順番については制御結果に不整合を生じない限りにおいて入れ替えることも可能であり、また説明しない他の処理が追加されてもよく、それらの態様も排除されない。
【0037】
道路灯A1の自律制御部22は、自律制御可能であるか自己診断を行い、自律制御不能である場合には(ステップS11;NO)、フェールセーフ制御のモードに移行する(ステップS12)。フェールセーフ制御のモードとは、管理サーバ10による代替制御が実行されるモードである。
【0038】
自律制御可能である場合には(ステップS11;YES)、自律制御部22の映像処理部31は、カメラ21から得られる画像データに基づいて画像処理を行い、車線が判別可能である場合には(ステップS13;YES)、横断者ならびに走行車両の検出処理に移行する。ここでいう「車線が判別可能」とは、例えば積雪などの影響により車線が隠されて画像処理による検出が行えないような状況ではなく、車線を検出できる状況をいう。車線が判別可能ではない場合の処理(ステップS25、S26)については後述する。
【0039】
映像処理部31は、撮影範囲に横断者である歩行者が存在する場合には(ステップS14;YES)、横断者の横断方向を検出するとともに、道路幅Lと横断者の移動速度V1に基づいてこの横断者の横断時間を検出する(ステップS15)。また、信号生成部32は、横断者検知信号を送信する対象となる道路灯の個数を上記計算式に基づいて算出する(ステップS16)。
【0040】
信号生成部32は、横断者感知信号を生成し、ステップS16で算出された道路灯の個数に基づいて定まる他の道路灯に対してこの横断者検知信号のデータを送信する(ステップS17)。
【0041】
他方、横断者である歩行者が存在しない場合には(ステップS14;NO)、映像処理部31は、上記ステップS15~S17の各処理を行わず、次の処理に移行する。具体的には、映像処理部31は、撮影範囲に走行中の車両が存在する場合には(ステップS18;YES)、車両の進行方向を検出するとともに、車速を検出する(ステップS19)。車速については、例えばある時刻と次の時刻での車両の位置の変化量と経過した時間に基づいて求めることができる。
【0042】
次に信号生成部32は、求めた車速によって予測される想定停車距離に基づいて上記計算式により車両感知信号を送信する対象となる道路灯の個数を算出する(ステップS20)。
【0043】
信号生成部32は、車両感知信号を生成し、ステップS20で算出された道路灯の個数に基づいて定まる他の道路灯に対してこの車両感知信号のデータを送信する(ステップS21)。なお、車両が存在しない場合には(ステップS18;NO)、ステップS19~S21の処理が行われずにステップS22へ移行する。
【0044】
報知制御部24は、他の道路灯から送信される車両感知信号のデータが通信部26の信号受信部34により受信されており(ステップS22;YES)、かつ、他の道路灯から送信される横断者感知信号のデータが通信部26の信号受信部34により受信されている場合には(ステップS23;YES)、所定の路面標示画像を道路の路面に形成するように報知部25を制御する。それにより、路面に道路標示画像が形成される(ステップS24)。その後、ステップS11に戻り、以降の処理が繰り返される。
【0045】
なお、他の道路灯からの車両感知信号のデータが受信されていない場合(ステップS22;NO)、又は他の道路灯からの横断者感知信号のデータが受信されていない場合には(ステップS23;NO)、報知制御部24は、道路標示画像を形成させる制御を行わない。この場合にも、ステップS11に戻り、以降の処理が繰り返される。
【0046】
また、上記したステップS13において、車線が判別可能ではなかった場合には(ステップS13;NO)、映像処理部31は、予め用意されて図示しないメモリに格納されていた道路データを読み出し(ステップS25)、この道路データに基づいて、カメラ21によって得られた画像データに対して車線などのエリア情報を合成する(ステップS26)。ここでいう道路データは、例えば各道路灯A1~A9の初期設置時において各道路灯A1等のカメラ21による撮影範囲を撮影した画像データから抽出され、メモリに保存されているものとする。このような道路データを用いることで、積雪時などで車線を検出できない場合であっても上記したステップS14以降の各処理を実行することができる。図示のように、ステップS26の処理が行われた後にはステップS14へ移行する。
【0047】
図7は、一例の道路状況を模式的に示す図である。また、図8は、図7に示す道路状況における道路描画システムの各道路灯の動作を説明するための図である。ここでは、図7に示すように対向一車線の道路12において、図中奥側の車線Bに2つの走行中の車両103が存在し、図中手前側の車線Cに1つの走行中の車両104が存在し、かつ道路外(路側帯)に歩行者102が存在する場合を想定する。詳細には、車線Bにおける1つの車両103は道路灯A1の付近(道路灯A2とは反対側)に存在し、もう1つの車両103は道路灯A4の付近に存在し、それぞれ図中右方向へ走行している。また、車線Cにおける車両104は道路灯A9の付近に存在し、図中左方向へ走行している。また、歩行者102は、道路灯A5の付近に存在しているが道路12を横断していない。すなわち、本例では歩行者102は横断者ではない。
【0048】
図8に示すように、歩行者102は横断者ではないので、道路灯A1~A9の何れも横断者を感知していない。従って、車線B(B線)、車線C(C線)の何れに関しても、道路灯A1~A9の何れも横断者感知信号を生成及び送信していないし、他の道路灯からも横断者感知信号を受信していない。他方、道路灯A1は、車線Bの1つの車両103を検出しているので、その車速に応じて、車両103の進行方向に存在する道路灯A2に車両感知信号を送信し、この車両103が道路灯A1よりも手前側(図中左側)に存在するので自身の報知制御部24にも車両感知信号を供給する。車両感知信号を有する状態を図中に丸印で示す。
【0049】
また、道路灯A4は、車線Bの他の1つの車両103を検出しているので、その車速に応じて、車両103の進行方向に存在する道路灯A5~A7に車両感知信号を送信する。また、道路灯A9は、車線Cの車両104を検出しているので、その車速に応じて、車両104の進行方向に存在する道路灯A6~A8に車両感知信号を送信する。車両感知信号を有する状態を図中に丸印で示す。
【0050】
このため、道路灯A1、A2、A4~A8のそれぞれは、車線B及び/又は車線Cに関する車両感知信号を受信しているが横断者感知信号を受信していないので路面に道路標示画像を形成する動作を行わない。また、道路灯A3は、車両感知信号、横断者感知信号ともに受信していないので路面に道路標示画像を形成する動作を行わない。従って、この例では道路灯A1~A9の何れも道路標示画像を形成しない。
【0051】
図9は、他の例の道路状況を模式的に示す図である。また、図10は、図9に示す道路状況における道路描画システムの各道路灯の動作を説明するための図である。ここでは、図9に示すように対向一車線の道路12において、図中奥側の車線Bに2つの走行中の車両103が存在し、図中手前側の車線Cに1つの走行中の車両104が存在し、かつ道路灯A5付近において車線Bに横断者である歩行者102が存在する場合を想定する。詳細には、車線Bにおける1つの車両103は道路灯A1の付近に存在し、もう1つの車両103は道路灯A6の付近に存在し、それぞれ図中右方向へ走行している。また、車線Cにおける車両104は道路灯A7の付近に存在し、図中左方向へ走行している。また、横断者である歩行者102は、道路灯A5の付近に存在しており道路12を横断しようとしている。
【0052】
図10に示すように、歩行者102は、道路灯A5により横断者として感知される。従って、道路灯A5は、横断者感知信号を生成し、道路灯A5の図中左側3個の道路灯A2~A4に対して車線Bに関する横断者感知信号(B線横断者感知信号)を送信するとともに、道路灯A5の図中右側3個の道路灯A6~A8に対して車線Cに関する横断者感知信号(C線横断者感知信号)を送信する。また、歩行者102が車線Cへ向かっているので道路灯A5は自身の報知制御部24にも車線Bに関する横断者感知信号(B線横断者感知信号)及び車線Cに関する横断者感知信号(C線横断者感知信号)を供給する。
【0053】
また、道路灯A1は、車線Bの1つの車両103を検出しているので、その車速に応じて、車両103の進行方向に存在する道路灯A2~A5に対して車線Bに関する車両感知信号(B線車両感知信号)を送信する。
【0054】
また、道路灯A6は、車線Bの他の1つの車両103を検出しているので、その車速に応じて、車両103の進行方向に存在する道路灯A7~A9に対して車線Bに関する車両感知信号(B線車両感知信号)を送信する。
【0055】
また、道路灯A7は、車線Cの車両104を検出しているので、その車速に応じて、車両104の進行方向に存在する道路灯A4~A6に対して車線Cに関する車両感知信号(C線車両感知信号)を送信する。
【0056】
このとき、道路灯A1は、車線B及び/又は車線Cに関する車両感知信号、横断者感知信号ともに受信していないので路面に道路標示画像を形成する動作を行わない。道路灯A2~A5は、車線Bに関する横断者感知信号(B線横断者感知信号)と車両感知信号(B線車両感知信号)を受信しているので、図9に示すように車線Bの路面上に道路標示画像106を形成する。また、道路灯A5、A6は、車線Cに関する横断者感知信号(C線横断者感知信号)と車両感知信号(C線車両感知信号)を受信しているので、図9に示すように車線Cの路面上に道路標示画像105を形成する。これらの道路標示画像105、106により、各車両103、104の搭乗者に対して注意喚起がなされる。なお、上記したように道路標示画像105、106に加えて、側面警告灯による報知や、専用狭域通信などによる報知が行われてもよい。
【0057】
以上のような実施形態によれば、グループ化された複数の道路灯の各々が自律的に車両及び横断者を検出し、その検出結果に応じた車両感知信号及び横断者感知信号の各データをグループ内でサーバ10を介さずに直接的に送受信しており、車両感知信号と横断者感知信号の両者を取得した道路灯において各車線ごとに道路標示画像を形成している。それにより、不必要な注意喚起が抑制され、各車両の搭乗者並びに横断者に対して道路状況に応じた適切なタイミングで路面標示等による注意喚起(報知)を行うことができる。
【0058】
また、横断者の移動速度、各車両の移動速度に応じた個数並びに位置の道路灯だけが道路標示画像を形成するので、必要以上に多くの道路標示画像が形成されることがない。従って、各車両の搭乗者や道路周辺の歩行者などに対する必要性の低い注意喚起が抑制される。
【0059】
また、サーバ10などのホスト装置を介さず各道路灯の相互間で直接的にデータを送受信するので、通信遅延を低減し、車両感知信号及び横断者感知信号の各データをより速やかに送受信することができる。従って、より細かい時間分解能で制御可能となり、応答性に優れた報知システムを構築することが可能となる。
【0060】
なお、本開示は上記した実施形態の内容に限定されるものではなく、本開示の要旨の範囲内において種々に変形して実施をすることが可能である。例えば、上記した実施形態では横断者の一例として歩行者を示したが、自転車などの搭乗者を横断者として扱ってもよい。
【0061】
また、各道路灯において自身が横断者を検出し、かつ車両も検出した場合には、自身による道路標示画像の形成位置を道路灯の直下ではなく、車両の進行方向に向かって左右いずれかにずらした位置に道路標示画像を形成するようにしてもよい。それにより、横断者である歩行者等と道路標示画像が重なるのを回避し、道路標示画像をより視認しやすくできる。
【0062】
また、道路標示画像の色調や画像種類などを昼夜で変更してもよい。例えば、昼間は太陽光により見えにくくなりにくい色調(例えば、太陽光は白色に近いので赤色の強い色調など)で道路標示画像を形成し、夜間は他の照明により見えにくくなりにくい色調(例えば、他の照明と異なる色調であればよく、他の照明が黄色がかった色であれは白色の色調もしくはより赤色が強い色調など)で道路標示画像を形成することが考えられる。
【0063】
また、各道路灯において、道路標示画像を形成する際には照明状態を変更してもよい。例えば、道路標示画像の形成時に道路灯照明部23による照明光の明るさよりも道路標示画像の明るさをより明るくすることが考えられる。
【0064】
また、横断者である歩行者等が道路を斜めに横断している場合には、その進行方向から横断距離を予測し、その予測した横断距離に基づいて移動に要する時間を求め、横断者検知信号を送信する対象となる道路灯の個数を計算してもよい。
【0065】
また、検出対象とする車両は上記した実施形態における四輪車両に限られず、二輪車両など種々の車両を対象としてもよい。
【0066】
また、上記した実施形態では道路幅Lを既知の値として扱っていたが、カメラによって得られた画像データや測距センサにより取得してもよい。この場合において、道路幅や移動速度などの値については絶対値(実際の値)により扱ってもよいし、画像データにおける画素数やフレームレートなどに基づいた相対値により扱ってもよい。
【0067】
また、上記した実施形態でも触れたように、積雪などで車線を検出できない場合に備えて予め道路データを求め、これをメモリに格納しておいてもよい。具体的には、道路灯のカメラによる画像データの2次元情報に対して、車線情報、車両進行方向、車線数、道路幅(路側帯幅、車線幅、中央線・中央分離帯幅)などを座標値としてメモリに記憶させておくことができる。例えば、図11に例示するように、車線Cの情報として、撮影範囲を(x1,y1)、(x2,y2)、(x3,y3)、(x4,y4)の各座標値により定義することができる。また、車両進行方向は、(x2,y2)及び(x3,y3)から(x1,y1)及び(x4,y4)の方向と定義することができる。車線Bについても同様に定義することができる。
【符号の説明】
【0068】
A1~A9:道路灯、10:管理サーバ、12:道路、21:カメラ、22:自律制御部、23:道路灯照明部、24:報知制御部、25:報知部、26:通信部、31:映像処理部、32:信号生成部、33:信号送信部、34:信号受信部、100:報知システム、102:歩行者(横断者)、103,104:車両、105、106:道路標示画像
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11