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特開2023-13416プロセスチーズ様食品、プロセスチーズ様食品の製造方法、及び食品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023013416
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】プロセスチーズ様食品、プロセスチーズ様食品の製造方法、及び食品
(51)【国際特許分類】
   A23C 19/082 20060101AFI20230119BHJP
【FI】
A23C19/082
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021117574
(22)【出願日】2021-07-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006127
【氏名又は名称】森永乳業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】佐川 淳
(72)【発明者】
【氏名】田口 規子
(72)【発明者】
【氏名】千葉 啓
【テーマコード(参考)】
4B001
【Fターム(参考)】
4B001AC03
4B001AC09
4B001AC20
4B001AC46
4B001BC02
4B001BC07
4B001BC08
4B001EC04
(57)【要約】
【課題】耐熱性に優れたプロセスチーズ様食品の提供。
【解決手段】ナチュラルチーズ、溶融塩、卵白及び加工デンプンを含むプロセスチーズ様食品であって、プロセスチーズ様食品の総質量に対する、チーズ分が51質量%未満であり、プロセスチーズ様食品の総質量に対する、前記卵白の乾燥質量基準の含有量をX質量%、加工デンプンの乾燥質量基準の含有量をY質量%とするとき、0.1≦X≦1.0(式1)及び0.8≦Y≦7.0(式2)を満たす、プロセスチーズ様食品。
【選択図】図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナチュラルチーズ、溶融塩、卵白及び加工デンプンを含むプロセスチーズ様食品であって、
前記プロセスチーズ様食品の総質量に対する、チーズ分が51質量%未満であり、
前記プロセスチーズ様食品の総質量に対する、前記卵白の乾燥質量基準の含有量をX質量%、前記加工デンプンの乾燥質量基準の含有量をY質量%とするとき、下記式1及び式2を満たす、プロセスチーズ様食品。
0.1≦X≦1.0 …式1
0.8≦Y≦7.0 …式2
【請求項2】
ナチュラルチーズ、溶融塩、卵白及び加工デンプンを含むプロセスチーズ様食品であって、
前記プロセスチーズ様食品の総質量に対する、チーズ分が51質量%未満であり、
下記の耐熱試験方法で測定される加熱後の直径が53.5mm以下である、プロセスチーズ様食品。
(耐熱試験方法)
直径40mm、高さ10mmの円柱状に成形した、温度5℃のサンプルを、230℃に予熱したオーブンに入れ、設定温度230℃で5分間加熱し、オーブンから取り出した直後にサンプルの直径を測定し、加熱後の直径とする。
【請求項3】
ナチュラルチーズ、溶融塩、卵白及び加工デンプンを含む原料組成物を、加熱溶融し、得られた加熱乳化物を冷却してプロセスチーズ様食品を得る工程を有し、
前記原料組成物の総質量に対する、チーズ分が51質量%未満であり、
前記原料組成物の総質量に対する、前記卵白の乾燥質量基準の含有量をX質量%、前記加工デンプンの乾燥質量基準の含有量をY質量%とするとき、下記式1及び式2を満たす、プロセスチーズ様食品の製造方法。
0.1≦X≦1.0 …式1
0.8≦Y≦7.0 …式2
【請求項4】
請求項1又は2に記載のプロセスチーズ様食品を含む、食品。
【請求項5】
加熱用食品である、請求項4に記載の食品。
【請求項6】
加熱済み食品である、請求項4に記載の食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロセスチーズ様食品、プロセスチーズ様食品の製造方法、及び前記プロセスチーズ様食品を含む食品に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば焼成食品や油ちょう食品に用いられるチーズ類には、加熱によって融解しにくい耐熱性が求められる。
下記特許文献1には、チーズに卵白蛋白と乳清蛋白の蛋白混合物を脱気しながら混合する方法、又は得られた混合物をさらに加熱処理する方法で耐熱性を高めた例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-308492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の方法は、タンパク質の熱凝固性及びチーズ中のカゼインとの反応性を利用したものであり、堅いチーズに限られる。
本発明は、耐熱性に優れたプロセスチーズ様食品、その製造方法、及び前記プロセスチーズ様食品を含む食品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は以下の態様を有する。
[1] ナチュラルチーズ、溶融塩、卵白及び加工デンプンを含むプロセスチーズ様食品であって、前記プロセスチーズ様食品の総質量に対する、チーズ分が51質量%未満であり、前記プロセスチーズ様食品の総質量に対する、前記卵白の乾燥質量基準の含有量をX質量%、前記加工デンプンの乾燥質量基準の含有量をY質量%とするとき、下記式1及び式2を満たす、プロセスチーズ様食品。
0.1≦X≦1.0 …式1
0.8≦Y≦7.0 …式2
[2] ナチュラルチーズ、溶融塩、卵白及び加工デンプンを含むプロセスチーズ様食品であって、前記プロセスチーズ様食品の総質量に対する、チーズ分が51質量%未満であり、下記の耐熱試験方法で測定される加熱後の直径が53.5mm以下である、プロセスチーズ様食品。
(耐熱試験方法)
直径40mm、高さ10mmの円柱状に成形した、温度5℃のサンプルを、230℃に予熱したオーブンに入れ、設定温度230℃で5分間加熱し、オーブンから取り出した直後にサンプルの直径を測定し、加熱後の直径とする。
[3] ナチュラルチーズ、溶融塩、卵白及び加工デンプンを含む原料組成物を、加熱溶融し、得られた加熱乳化物を冷却してプロセスチーズ様食品を得る工程を有し、
前記原料組成物の総質量に対する、チーズ分が51質量%未満であり、
前記原料組成物の総質量に対する、前記卵白の乾燥質量基準の含有量をX質量%、前記加工デンプンの乾燥質量基準の含有量をY質量%とするとき、下記式1及び式2を満たす、プロセスチーズ様食品の製造方法。
0.1≦X≦1.0 …式1
0.8≦Y≦7.0 …式2
[4] 前記[1]又は[2]のプロセスチーズ様食品を含む、食品。
[5] 加熱用食品である、[4]の食品。
[6] 加熱済み食品である、[4]の食品。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、耐熱性に優れたプロセスチーズ様食品及び前記プロセスチーズ様食品を含む食品が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】試験例A1の耐熱試験結果を示す写真である。
図2】試験例A2の耐熱試験結果を示す写真である。
図3】試験例A3の耐熱試験結果を示す写真である。
図4】試験例A4の耐熱試験結果を示す写真である。
図5】試験例A5の耐熱試験結果を示す写真である。
図6】試験例A6の耐熱試験結果を示す写真である。
図7】試験例A7の耐熱試験結果を示す写真である。
図8】試験例A8の耐熱試験結果を示す写真である。
図9】試験例A9の耐熱試験結果を示す写真である。
図10】試験例A10の耐熱試験結果を示す写真である。
図11】試験例A11の耐熱試験結果を示す写真である。
図12】試験例A12の耐熱試験結果を示す写真である。
図13】試験例A13の耐熱試験結果を示す写真である。
図14】縦軸が加工デンプンの含有量Y(単位:質量%)、横軸が卵白の含有量X(単位:質量%)であるグラフに、試験例A1~A13をプロットした図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書において以下の定義が適用される。
卵白の「乾燥質量基準の含有量」とは、水分含有量が7.1質量%である乾燥卵白の質量に換算したときの含有量である。
加工デンプンの「乾燥質量基準の含有量」とは、水分含有量が13質量%である加工デンプンの質量に換算したときの含有量である。
水分含有量は、常圧加熱乾燥法により得られる値である。「固形分」は、固形分(質量%)=100-水分(質量%)で算出される値である。
【0009】
本明細書における「プロセスチーズ様食品」とは、ナチュラルチ-ズを含むチーズ類を粉砕し、混合し、加熱溶融し、乳化してつくられるもので、製品中のチーズ分が51質量%未満のものをいう。
本明細書における「チーズ類」とは、乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(昭和26年12月27日厚生省令第52号)、及び「ナチュラルチーズ、プロセスチーズ及びチーズフードの表示に関する公正競争規約及び関係規則集(令和元年8月作成)」で定める、ナチュラルチーズ、プロセスチーズ、チーズフード、乳等を主要原料とする食品を包含する。
本明細書における「チーズ分」とは、ナチュラルチーズおよびプロセスチーズの合計の含有量を意味する。
なお、前記公正競争規約及び関係規則集において、「乳等省令にいう乳及び乳製品並びにこれらを主要原料とする食品であって、一種以上のナチュラルチーズ又はプロセスチーズを粉砕し、混合し、加熱溶融し、乳化してつくられるもので、製品中のチーズ分の重量が51%以上のもの」を「チーズフード」と規定している。
【0010】
<プロセスチーズ様食品>
本実施形態のプロセスチーズ様食品は、ナチュラルチーズ、溶融塩、卵白及び加工デンプンを含む。ナチュラルチーズ以外の他のチーズ類を含んでもよい。
【0011】
[ナチュラルチーズ]
本実施形態におけるナチュラルチーズは、乳等省令において定められる「ナチュラルチーズ」である。ただし、ナチュラルチーズの原料である乳は、乳等省令で定義される乳(生乳、牛乳、特別牛乳、生やぎ乳、生めん羊乳、殺菌やぎ乳、部分脱脂乳、脱脂乳、加工乳等)のほかに、水牛の乳、ラクダの乳など、チーズの原料として公知の動物一般の乳も含むことができる。
ナチュラルチーズは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
チーズ分に対するナチュラルチーズの割合は、例えば、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましく、80質量%以上が特に好ましく、90質量%以上が最も好ましい。100質量%でもよい。
【0012】
[溶融塩]
溶融塩は特に限定されない。例えば、ポリリン酸塩(ポリリン酸ナトリウム等)、ジリン酸塩(ピロリン酸ナトリウム等)、モノリン酸塩(オルトリン酸ナトリウム等)、クエン酸塩(クエン酸三ナトリウム等)、酒石酸塩(酒石酸ナトリウム等)が挙げられる。
溶融塩は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0013】
[卵白]
卵白としては、卵白粉末、凍結卵白等を用いることができる。
これらは1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
取り扱いやすい点では、卵白として卵白粉末を用いることが好ましい。
【0014】
[加工デンプン]
加工デンプンは、デンプンに酵素的加工、物理的加工、化学的加工等の加工を施したものである。
加工としては、リン酸架橋処理、エーテル化処理(ヒドロキシプロピル化、カルボキシメチル化等)、エステル化処理(アセチル化、リン酸化等)、酸化処理、アルファ化処理等が挙げられる。2種以上の加工が施されたものでもよい。
具体例としては、リン酸架橋処理のみが施された加工デンプン(リン酸架橋デンプン)、リン酸架橋処理およびエーテル化処理が施された加工デンプン(例えばヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン等)、リン酸架橋処理およびエステル化処理が施された加工デンプン(例えばアセチル化リン酸架橋デンプン、リン酸モノエステル化リン酸架橋デンプン等)等が挙げられる。
加工デンプンは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0015】
[他の任意成分]
本実施形態のプロセスチーズ様食品は、上記の成分以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、他の任意成分(脂肪原料、炭水化物原料、その他の成分)を含んでもよい。
脂肪原料としては、植物性油脂(パーム油、ヤシ油、なたね油など)、動物性油脂(バター、ラードなど)が例示できる。
炭水化物原料としては、前記加工デンプン以外のデンプン、水あめ、デキストリンなどが例示できる。
その他の成分としては、調味料、酸味料、溶融塩以外の乳化剤、増粘安定剤、pH調整剤、日持ち向上剤、香料等が例示できる。
調味料としては、食塩、グルタミン酸ナトリウム、糖質類、エキス類、果汁、香辛料等が挙げられる。
酸味料としては、クエン酸、乳酸等が挙げられる。
溶融塩以外の乳化剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、グリセライド類等が挙げられる。
増粘安定剤としては、ローカストビーンガム、キサンタンガム、グァーガム、カラギナン、CMC(カルボキシメチルセルロース)等が挙げられる。
pH調整剤としては、重曹、炭酸ナトリウム、クエン酸、乳酸等が挙げられる。
日持ち向上剤としては、グリシン、酢酸ナトリウム等が挙げられる。
【0016】
[組成]
本実施形態のプロセスチーズ様食品は、製品の総質量に対するチーズ分が51質量%未満である。
後述の実施例に示されるように、チーズ分が51質量%未満のものは、チーズ分が51質量%以上のもの(「チーズフード」)に比べて耐熱性が不十分になりやすく、また加工デンプンの添加だけでは耐熱性と充填適性の両立が難しい。
本実施形態において、卵白及び加工デンプンを添加することによる効果が大きい点で、プロセスチーズ様食品の総質量に対するチーズ分は45質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、35質量%以下がさらに好ましい。チーズ分の下限は特に限定されないが風味の点では5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましく、20質量%以上が特に好ましく、25質量%以上が最も好ましい。
【0017】
本実施形態において、プロセスチーズ様食品の総質量に対する、卵白の含有量X(乾燥質量基準、単位:質量%、以下同様。)、及び加工デンプンの含有量Y(乾燥質量基準、単位:質量%、以下同様。)は下記式1及び式2を満たす。
0.1≦X≦1.0 …式1
0.8≦Y≦7.0 …式2
卵白の含有量Xが0.1質量%以上であり、かつ加工デンプンの含有量Yが0.8質量%以上であると、耐熱性の向上効果に優れる。
例えば、後述の耐熱試験方法において、加熱後の直径が60mm以下(スコア1~4)の優れた耐熱性が得られる。
一方、加工デンプンの含有量Yが7.0質量%以下であると、プロセスチーズ様食品の製造過程において加熱溶融物が適度な流動性を有し、作業性が良い。例えば加熱溶融物を冷却工程で使用する容器に移す際の充填適性が良好である。
また、卵白の含有量Xが1.0質量%以下であると、同様に加熱溶融物が適度な流動性を有し、作業性が良い。
【0018】
卵白の含有量X及び加工デンプンの含有量Yが、前記式1、式2に加えて、さらに下記式3を満たすと、耐熱性の向上効果により優れる。
-10.7X+4.7≦Y …式3
例えば、後述の耐熱試験方法において、加熱後の直径が53.5mm以下(スコア1~3)の優れた耐熱性が得られる。好ましくは47mm以下(スコア1~2)のより優れた耐熱性が得られる。
【0019】
卵白の含有量X及び加工デンプンの含有量Yが下記式4~6を満たすと、より優れた耐熱性とより優れた充填適性を両立するのに好ましい。
0.18≦X≦0.68 …式4
1.8≦Y≦6.4 …式5
-57.2X+17.4≦Y≦-57.2X+39.7 …式6
【0020】
本実施形態のプロセスチーズ様食品の水分含有量は50~70質量%が好ましく、53~65質量%がより好ましく、56~62質量%がさらに好ましい。上記範囲の下限値以上であると、プロセスチーズ様食品の製造過程において加熱溶融物が適度な流動性を有し、作業性が良い。上限値以下であると、適度な流動性を保ちつつ、十分な保形性(耐熱性)が得られる。
本実施形態のプロセスチーズ様食品のタンパク質含有量は3~13質量%が好ましく、5~11質量%がより好ましく、6~10質量%がさらに好ましい。上記範囲の下限値以上であると十分な耐熱性が得られやすく、上限値以下であると適度な流動性を確保しやすい。
【0021】
本実施形態のプロセスチーズ様食品はペースト状であることが好ましい。
本明細書において、「ペースト状」とは10℃における粘度(B型粘度計)が4,000~150,000mPa・sであることを意味する。
ペースト状のプロセスチーズ様食品は、例えば、スプレッド用、フィリング(詰め物)用、積層用等に好適に使用できる。
【0022】
[プロセスチーズ様食品の製造方法]
本実施形態のプロセスチーズ様食品は、ナチュラルチーズ、溶融塩、卵白及び加工デンプンを含む原料組成物を、加熱溶融し、得られた加熱乳化物を冷却してプロセスチーズ様食品を得る方法で製造できる。加熱乳化物を冷却する前に保温する工程を設けてもよい。
プロセスチーズ様食品がナチュラルチーズ以外の他のチーズ類を含む場合、加熱乳化前の原料組成物に他のチーズ類を添加する。
プロセスチーズ様食品が他の任意成分を含有する場合、加熱乳化前または加熱乳化の途中で、原料組成物に他の任意成分を添加する。
【0023】
[加熱乳化工程]
原料組成物を加熱乳化する工程は、原料組成物を構成する各原料を乳化機に投入して加熱乳化する。加熱乳化は、原料組成物を撹拌しながら加熱処理を行う工程であり殺菌工程も兼ねる。加熱処理は、好ましくは直接または間接蒸気を用いて行われる。乳化機は、例えば、高速せん断型、ケトル型、2軸スクリューをもつクッカー型、サーモシリンダー型等の公知の乳化機を用いることができる。
加熱温度は70℃以上が好ましく、80~96℃がより好ましい。
【0024】
[冷却工程]
加熱乳化工程で得られた加熱乳化物を冷却してプロセスチーズ様食品を得る。
例えば、加熱乳化物をパウチ袋に充填して冷却する。冷却方法としては、例えば1~10℃の冷水に浸漬して急冷する方法、冷蔵庫内で保管し冷却する方法などが挙げられる。
プロセスチーズ様食品の最終製品の形状は特に限定されない。
【0025】
<食品>
本実施形態のプロセスチーズ様食品は、そのまま喫食することもでき、プロセスチーズ様食品を含む食品(以下、チーズ入り食品ともいう。)の製造に用いることもできる。
特に耐熱性に優れるため、プロセスチーズ様食品が加熱(以下、二次加熱ともいう。)される工程を経て喫食できる状態となるチーズ入り食品に好適である。
本実施形態のチーズ入り食品は、加熱用食品でもよく、加熱済み食品でもよい。
【0026】
加熱用食品は、プロセスチーズ様食品を含み、プロセスチーズ様食品を二次加熱することなく製造した半製品であり、二次加熱することによって喫食できる状態となる食品である。例えば、チーズ入りコロッケの具材に衣を付けた状態の加熱用食品、これを冷凍させた加熱用の冷凍食品等が挙げられる。
このほかに、加熱用のチーズ使用料理(グラタン、パスタ、ピザ、チーズ入りつくね、チーズ入りハンバーグ、チーズ入りオムレツなど)が挙げられる。
【0027】
加熱済み食品は、プロセスチーズ様食品を含み、プロセスチーズ様食品を二次加熱する工程を経て製造した食品である。例えば、チーズ入りコロッケの具材に衣を付けた後に油ちょう(二次加熱)したチーズ入りコロッケ、油ちょう後のチーズ入りコロッケを冷凍した加熱済み冷凍食品等が挙げられる。
加熱済み食品として、二次加熱済みのチーズ使用料理(グラタン、パスタ、ピザ、チーズ入りつくね、チーズ入りハンバーグ、チーズ入りオムレツなど)が挙げられる。
【実施例0028】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[タンパク質含有量]
製品中のタンパク質含有量はケルダール法により測定した。
[耐熱試験方法]
直径40mm、高さ10mmの円柱状に成形した、温度5℃のサンプルを、230℃に予熱したオーブンに入れ、設定温度230℃で5分間加熱し、オーブンから取り出した直後にサンプルの直径を測定し、加熱後の直径とする。
具体的には、まず、以下の方法で直径40mm、高さ10mmの円柱状のサンプル(5℃)を成形した。
透明又は半透明な耐熱皿の上に、内径40mm、高さ10mmの円筒形の成形型を置き、5℃に温度調整したプロセスチーズ様食品を充填し、成形型を外して円柱状に成形した。
次いで、得られたサンプルを、耐熱皿ごと230℃に予熱したオーブンに入れ、設定温度230℃で5分間加熱した。オーブンから取り出した直後にサンプルの直径を下記の方法で測定し、加熱後の直径とした。
直径の測定には、下記の11個の同心円(スコア1の円~スコア11の円)が描かれたシートを使用した。オーブンから取り出した耐熱皿をシート上に置き、耐熱皿上のサンプルの中心が、シートに描かれた同心円の中心と重なるように位置を調整した。
サンプルの周方向において等間隔である任意の4箇所について、サンプルの外縁がシート上のどの位置に存在するかを目視で観察し、スコアを判定した。例えば、スコア2の円とスコア3の円との間にサンプルの外縁が存在する場合はスコア2.5と判定する。前記4箇所のスコアの平均値を求め、小数点第1位を四捨五入して、加熱後の直径のスコアとした。サンプルの形状が加熱によって変化しなかった場合、サンプルの外縁はスコア1の円上に存在し、スコア1と判定する。
スコア1の円:直径40mm。
スコア2の円:直径47mm。
スコア3の円:直径53.5mm。
スコア4の円:直径60mm。
スコア5の円:直径66.5mm。
スコア6の円:直径73mm。
スコア7の円:直径79.5mm。
スコア8の円:直径86mm。
スコア9の円:直径92.5mm。
スコア10の円:直径99mm。
スコア11の円:直径105.5mm。
【0029】
[充填適性の評価]
製造直後の加熱乳化物を直ちに、80℃に保温した容器(有底筒状のポリエチレン製手付ビーカー、胴径φ145mm×高さ184mm)に2kg採取した。品温80℃において容器を120度の角度に反転させて、開口部が斜め下を向くようにし、内容物が自重により排出されるかどうかを観察した。反転させてから10秒後まで観察し、下記の基準で充填適性を評価した。
(充填適性の評価基準)
〇:内容物の一部又は全部が自重により排出される。
×:内容物が自重により排出されない。
【0030】
<原料>
卵白:卵白粉末。
加工デンプン:松谷化学工業社製、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉。
溶融塩:ICL社製、ポリリン酸ナトリウム。
油脂:パーム油。
【0031】
<試験例A1~A13>
表1、2に示す組成となるように配合した原料組成物を、試験溶融乳化釜(ステファン社製、万能高速カッター・ミキサーUMM/SK5型、カッティングアタッチメント使用)に投入した。この乳化釜ではスチームを吹き込んで加熱する。表に示す水の含有量は、スチームによって添加される水分も含んでいる。
次いで、回転数1000rpmで撹拌しながら、90℃に達するように加熱溶融を行った。90℃に達したら、スチームの吹き込みを停止し、60秒間撹拌することにより加熱殺菌した後、撹拌を停止し、加熱乳化物を得た。
上記で得た加熱乳化物を、庫内温度5℃の冷蔵庫内に入れて品温が10℃に達するまで冷却して、ペースト状のプロセスチーズ様食品を得た。
上記の方法で、加熱乳化物の充填適性と、プロセスチーズ様食品の耐熱性を評価した。結果を表1、2に示す。図1~13は試験例A1~A13の耐熱性試験の結果を示す写真である。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
図14は、縦軸が加工デンプンの含有量Y(単位:質量%)、横軸が卵白の含有量X(単位:質量%)であるグラフに、試験例A1~A13をプロットした図である。
下記式1及び式2を満たす範囲で卵白及び加工デンプンを含む試験例A1、A3~A5、A11~A13は、卵白及び加工デンプンのいずれも含まない試験例A2に比べて耐熱性が向上し、充填適性も良好であった。
0.1≦X≦1.0 …式1
0.8≦Y≦7.0 …式2
【0035】
Yが7.0質量%を超える試験例A8は、耐熱性は良好であったが、充填適性が劣った。
【0036】
前記式1、式2及び下記式3を満たす範囲では、試験例A3、A5より耐熱性が向上した。
-10.7X+4.7≦Y …式3
【0037】
下記式4~6を満たす試験例A1、A4、A11~A13は、耐熱性と充填適性の両立の点で特に優れた。
0.18≦X≦0.68 …式4
1.8≦Y≦6.4 …式5
-57.2X+17.4≦Y≦-57.2X+39.7 …式6
【0038】
<試験例B1~B5>
本例は、チーズフードを製造した参考試験例である。
試験例A1において、原料組成物の組成を表3に示すとおりに変更した以外は、試験例A1と同様にして、ペースト状のチーズフードを得た。
加熱乳化物の充填適性と、チーズフードの耐熱性を評価した。結果を表3に示す。
【0039】
【表3】
【0040】
表3の結果に示されるように、プロセスチーズ様食品を対象とした前記試験例Aにおいて、卵白及び加工デンプンのいずれも含まない試験例A2の耐熱性スコアが11であったのに対して、チーズフードを対象とした試験例Bにおいて、卵白及び加工デンプンのいずれも含まない試験例B2の耐熱性スコアは3であった。このことから、プロセスチーズ様食品はチーズフードに比べて、耐熱性が不十分になりやすいことがわかる。
また、加工デンプンを添加せず、卵白の添加量Xを0.4質量%とした試験例B4の耐熱性スコアは2であり、チーズフードでは、所定量の卵白の添加だけで良好な耐熱性が得られた。
また、卵白を添加せず、加工デンプンの添加量Yを3.62質量%とした試験例B5の耐熱性スコアは1であり、チーズフードでは、所定量の加工デンプンの添加だけで良好な耐熱性が得られた。
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