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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134168
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】半導体回路
(51)【国際特許分類】
   H03K 19/0175 20060101AFI20230920BHJP
   H03K 19/0185 20060101ALN20230920BHJP
【FI】
H03K19/0175 210
H03K19/0185 210
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022039537
(22)【出願日】2022-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000106276
【氏名又は名称】サンケン電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】井上 隆
【テーマコード(参考)】
5J056
【Fターム(参考)】
5J056AA37
5J056BB02
5J056BB52
5J056CC06
5J056CC11
5J056CC14
5J056CC15
5J056CC21
5J056DD13
5J056DD28
5J056FF08
5J056GG09
5J056KK01
(57)【要約】
【課題】低電位側から高電位側への信号伝達を、シングルレベルシフト回路を用いて応答性の遅延なく実施できる半導体回路を提供する。
【解決手段】低電位側で生成された入力信号HINの立ち上がりエッジを検出してダブルパルス以上をセット信号SEとして生成すると共に、立ち下がりエッジを検出してセット信号SEのパルス幅の2倍幅を超えるパルス幅のリセット信号REを生成し、セット信号SEとリセット信号REとを重畳したシフト用信号SHを出力するパルス発生回路20と、シフト用信号SHを高電位側にレベルシフトしたシフト済信号SH’を出力するレベルシフト回路と、シフト済信号SH’に重畳されたセット信号SE及びリセット信号REを判別するパルス判別回路30と、パルス判別回路の検出結果に基づいて、入力信号を高電位側にレベルシフトした出力信号HOUTを生成する出力固定回路40と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低電位側から高電位側に信号を伝達する半導体回路であって、
前記低電位側で生成された入力信号のエッジを検出してダブルパルス以上をセット信号として生成すると共に、次のエッジを検出して前記セット信号のパルス幅の2倍を超えるパルス幅のリセット信号を生成し、前記セット信号と前記リセット信号とを重畳したシフト用信号を出力するパルス発生回路と、
前記シフト用信号を前記高電位側にレベルシフトしたシフト済信号を出力するレベルシフト回路と、
前記シフト済信号に重畳された前記セット信号及び前記リセット信号を判別するパルス判別回路と、
前記パルス判別回路の判別結果に基づいて、前記入力信号を前記高電位側にレベルシフトした出力信号を生成する出力固定回路と、を備えることを特徴とする半導体回路。
【請求項2】
前記パルス判別回路は、1発目のパルスが検出された後、閾時間以内に前記1発目に引き続くパルスが検出された場合に、前記セット信号として判別することを特徴とする請求項1に記載の半導体回路。
【請求項3】
前記閾時間は、前記セット信号のパルス幅の2倍を超え、前記リセット信号のパルス幅未満に設定されていることを特徴とする請求項2に記載の半導体回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号をレベルシフトして電位が異なる回路に伝達する半導体回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高耐圧スイッチング素子、例えば、LDMOS(Laterally Diffused Metal Oxide Semiconductor)を備えたレベルシフト回路を用いて、低電位側回路から高電位側回路に信号を伝達する信号伝達回路が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
レベルシフト回路を用いた信号伝達回路は、高圧が印加される高耐圧スイッチング素子の発熱を抑える必要がある。そこで、信号伝達回路は、信号を元の波形のまま伝送することなく、エッジを時間長(パルス幅)が短いセット信号及びリセット信号として伝達するのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-339151号公報
【特許文献2】特許第5880225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、セット信号のパルス幅よりもリセット信号のパルス幅の方を長く設定することで、入力パルス幅が短くなった場合の誤動作を防止している。しかしながら、特許文献1は、レベルシフト回路としてセット信号用とリセット信号用のそれぞれに高耐圧スイッチング素子を備える必要があるため、コスト高になってしまう。
【0006】
特許文献2は、セット信号及びリセット信号を論理信号とすることで、1個の高耐圧スイッチング素子(シングルレベルシフト回路)で信号伝達を可能にして、コストダウンを図っている。しかしながら、特許文献2は、論理信号(データ)を電位が異なる回路間で送信/受信する方式であり、応答性について問題がある。
【0007】
本発明は斯かる問題点を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、低電位側から高電位側への信号伝達を、シングルレベルシフト回路を用いて応答性の遅延なく実施できる半導体回路を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る半導体回路は、上記の目的を達成するため、次のように構成される。
本発明に係る半導体回路は、低電位側から高電位側に信号を伝達する半導体回路であって、前記低電位側で生成された入力信号のエッジを検出してダブルパルス以上をセット信号として生成すると共に、次のエッジを検出して前記セット信号のパルス幅の2倍を超えるパルス幅のリセット信号を生成し、前記セット信号と前記リセット信号とを重畳したシフト用信号を出力するパルス発生回路と、前記シフト用信号を前記高電位側にレベルシフトしたシフト済信号を出力するレベルシフト回路と、前記シフト済信号に重畳された前記セット信号及び前記リセット信号を判別するパルス判別回路と、前記パルス判別回路の判別結果に基づいて、前記入力信号を前記高電位側にレベルシフトした出力信号を生成する出力固定回路と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の半導体回路は、エッジを検出して生成したセット信号SE及びリセット信号REを1系統のシフト用信号SHとしてレベルシフトすることができ、低電位側から高電位側への信号伝達を、シングルレベルシフト回路を用いて応答性の遅延なく実施できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る半導体回路の実施の形態の構成を示す回路図である。
図2図1に示すパルス発生回路の動作を示す波形図である。
図3図1に示すパルス発生回路の回路図である。
図4図1に示すパルス判別回路の構成を示す回路図である。
図5図1に示すパルス判別回路の動作を示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0012】
本実施の形態の半導体回路は、図1を参照すると、低電位側から高電位側に信号を伝達する信号伝達回路10であり、パワーMOSFET等の高電位側スイッチング素子の駆動信号HOを出力するハイサイド駆動回路1Hに備えられている。なお、低電位側スイッチング素子の駆動信号LOを出力するローサイド駆動回路1Lは、従来の構成を採用することができるため、説明を省略する。
【0013】
ハイサイド駆動回路1Hは、シュミットトリガバッファ2と、抵抗R1と、ドライバ回路3と、スイッチング素子Q1、Q2とを備えている。
【0014】
シュミットトリガバッファ2は、電源入力端が低電位側の電源電圧Vccに接続され、グランド入力端が共通グランド電位端COMに接地されている。また、シュミットトリガバッファ2は、入力端が抵抗R1を介して共通グランド電位端COMに接地され、出力端が信号伝達回路10の入力端に接続されている。
【0015】
ドライバ回路3は、電源入力端が高電位側の電源電圧VBに接続され、グランド入力端が高電位側のグランド電位端VSに接地されている。また、ドライバ回路3は、入力端が信号伝達回路10の出力端に接続され、出力端がスイッチング素子Q1、Q2の制御端子(ゲート)に接続されている。
【0016】
スイッチング素子Q1はPチャンネルのMOSFET、スイッチング素子Q2はNチャンネルのMOSFETでそれぞれ構成され、高電位側の電源電圧VB-グランド電位端VS間に直列に接続されている。高電位側の電源電圧VBにスイッチング素子Q1のドレインが、スイッチング素子Q1のソースにスイッチング素子Q2のドレインが、スイッチング素子Q2のソースに高電位側のグランド電位端VSがそれぞれ接続されている。そして、スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2との接続点の電位が駆動信号HOとして出力される。
【0017】
シュミットトリガバッファ2の入力端には、スイッチング素子Q1、Q2のオン・オフを制御する、低電位側で生成された入力信号Hinが入力される。信号伝達回路10は、シュミットトリガバッファ2によって波形成形された入力信号HINを、レベルシフトした高電位側の出力信号HOUTに変換する。出力信号HOUTは、スイッチング素子Q1、Q2の制御信号として、ドライバ回路3を経由してスイッチング素子Q1、Q2の制御端子(ゲート)に入力される。
【0018】
信号伝達回路10は、パルス発生回路20と、高耐圧スイッチング素子Q11と、抵抗R11と、パルス判別回路30と、出力固定回路40とを備える。
【0019】
図2を参照すると、パルス発生回路20は、シュミットトリガバッファ2によって波形成形された入力信号HINの正のエッジ(立ち上がりエッジ)を検出してダブル以上のパルスをセット信号SEとして生成すると共に、負のエッジ(立ち下がりエッジ)を検出してセット信号SEのパルス幅の2倍幅を超えるパルス幅のリセット信号REを生成する。そして、パルス発生回路20は、セット信号SEとリセット信号REとを重畳(オア)した信号を1系統のシフト用信号SHとして出力する。なお、本実施の形態において、パルス発生回路20は、ダブルパルスをセット信号SEとして生成するものとする。レベルシフトする信号を1系統のシフト用信号SHとすることで、高耐圧スイッチング素子Q11の個数を1個にでき、チップ面積を小さくでき、コストダウンが可能になる。
【0020】
パルス発生回路20は、図3を参照すると、アップエッジパルス生成回路21と、パルス幅調整回路22と、2発目パルス生成回路23と、ダウンエッジパルス生成回路24と、オア回路OR1、OR2とを備えている。
【0021】
アップエッジパルス生成回路21は、インバータINV1~INV3と、フィルタ回路FIL1と、ノア回路NOR1とを備える。インバータINV1及びインバータINV2の入力端は、パルス発生回路20の入力端であり、シュミットトリガバッファ2によって波形成形された入力信号HINが入力される。インバータINV1の出力端は、ノア回路NOR1の一方の入力端に接続され、インバータINV2の出力端は、フィルタ回路FIL1及びインバータINV3からなるディレイ回路を経由してノア回路NOR1の他方の入力端に接続されている。
【0022】
フィルタ回路FIL1は、例えば、RCフィルタである。インバータINV3は、インバータINV1から出力される信号に対し、フィルタ回路FIL1の時定数で決まる時間T1分遅延した反転信号を出力する。従って、アップエッジパルス生成回路21は、入力信号HINの立ち上がりエッジを検出し、出力端(ノア回路NOR1の出力端)から時間T1をハイレベルのパルス幅とする1ショットパルスを出力する。
【0023】
パルス幅調整回路22は、RS型のフリップフロップFF1と、パルス生成器PUL1と、インバータINV4~INV6と、フィルタ回路FIL2と、ノア回路NOR2とを備える。RS型のフリップフロップFF1は、セット端子がアップエッジパルス生成回路21(ノア回路NOR1)の出力端に、リセット端子がパルス生成器PUL1の出力端に、出力端子がインバータINV4及びインバータINV5の入力端にそれぞれ接続されている。インバータINV4の出力端は、ノア回路NOR2の一方の入力端に接続され、インバータINV5の出力端は、フィルタ回路FIL2及びインバータINV6からなるディレイ回路を経由してノア回路NOR2の他方の入力端に接続されている。
【0024】
フィルタ回路FIL2は、例えば、RCフィルタである。インバータINV6は、インバータINV4から出力される信号に対し、フィルタ回路FIL2の時定数で決まる時間T2分遅延した反転信号を出力する。従って、パルス幅調整回路22は、アップエッジパルス生成回路21から出力される1ショットパルスの立ち上がりエッジを検出し、出力端(ノア回路NOR2の出力端)から時間T2をハイレベルのパルス幅とする1ショットパルスを出力する。なお、パルス生成器PUL1は、アップエッジパルス生成回路21から出力される1ショットパルスの立ち上がりエッジから時間T2以上の経過したタイミングでRS型のフリップフロップFF1をリセットするために設けられている。
【0025】
2発目パルス生成回路23は、インバータINV7~INV8と、フィルタ回路FIL3と、アンド回路AND1とを備える。インバータINV7は、入力端がパルス幅調整回路22の出力端に接続され、出力端がフィルタ回路FIL3及びインバータINV8からなるディレイ回路を経由してアンド回路AND1の一方の入力端に接続されている。アンド回路AND1の他方の入力端は、パルス幅調整回路22の出力端に接続されている。
【0026】
フィルタ回路FIL3は、例えば、RCフィルタである。インバータINV8は、パルス幅調整回路22から出力される1ショットパルスの立ち上がりエッジからフィルタ回路FIL3の時定数で決まる時間T3分遅延したタイミングでハイレベルの信号を出力する。ここで、時間T3は、時間T1よりも長く、時間T2より短い時間に設定されている。従って、2発目パルス生成回路23は、アップエッジパルス生成回路21から出力される1ショットパルスの立ち下がりエッジから時間(T3-T1)が経過したタイミングで、出力端(アンド回路AND1の出力端)から時間(T2-T3)をハイレベルのパルス幅とする1ショットパルスを出力する。
【0027】
オア回路OR1は、一方の入力端がアップエッジパルス生成回路21の出力端に、他方の入力端が2発目パルス生成回路23の出力端にそれぞれ接続され、出力端がオア回路OR2は、一方の入力端に接続されている。これにより、オア回路OR1は、入力信号HINの立ち上がりエッジを検出して生成されたダブルパルスのセット信号SEをオア回路OR2の一方の入力端に出力する。
【0028】
ダウンエッジパルス生成回路24は、インバータINV9~INV15と、フィルタ回路FIL4~FIL5と、ノア回路NOR3~NOR7とを備える。ノア回路NOR3は、一方の入力端がオア回路OR1の出力端に、他方の入力端がノア回路NOR5の出力端に、出力端がノア回路NOR4及びノア回路NOR5の一方の入力端にそれぞれ接続されている。ノア回路NOR4の他方の入力端は、パルス発生回路20の入力端であり、シュミットトリガバッファ2によって波形成形された入力信号HINが入力される。ノア回路NOR4の出力端は、インバータINV9とフィルタ回路FIL4及びインバータINV10からなるディレイ回路とを経由してノア回路NOR5の他方の入力端に接続されていると共に、ノア回路NOR7の一方の入力端に接続されている。
【0029】
インバータINV11は、入力端がパルス発生回路20の入力端であり、出力端がインバータINV12及びインバータINV13の入力端に接続されている。これにより、インバータINV12及びインバータINV13の入力端には、シュミットトリガバッファ2によって波形成形された入力信号HINが反転入力される。インバータINV12の出力端は、ノア回路NOR6の一方の入力端に接続され、インバータINV13の出力端は、フィルタ回路FIL5及びインバータINV14からなるディレイ回路を経由してノア回路NOR6の他方の入力端に接続されている。ノア回路NOR6の出力端は、ノア回路NOR7の他方の入力端に接続され、ノア回路NOR7の出力端がオア回路OR2の他方の入力端に接続されている。
【0030】
フィルタ回路FIL5は、例えば、RCフィルタである。インバータINV14は、インバータINV12から出力される信号に対し、フィルタ回路FIL5の時定数で決まる時間T5分遅延した反転信号を出力する。従って、ダウンエッジパルス生成回路24は、入力信号HINの立ち下がりエッジを検出し、出力端(ノア回路NOR6の出力端)から時間T5をハイレベルのパルス幅とする1ショットパルスをノア回路NOR7の他方の入力端に出力する。
【0031】
ここで、時間T5は、時間(T2-T1)、すなわち、セット信号SEにおける1発目のパルスの立下りから2発目のパルスの立下りまでの時間を超える時間に設定されている。ここで、セット信号SEのパルス幅(間隔)が同じ場合、すなわちT1=(T3-T1)=(T2-T3)である場合、リセット信号REのパルス幅は、セット信号SEのパルス幅の2倍を超える時間に設定されている。従って、ノア回路NOR6は、入力信号HINの立ち下がりエッジを検出して生成された、セット信号SEのパルス幅の2倍幅を超えるパルスをリセット信号REとしてノア回路NOR7及びインバータINV15を経由してオア回路OR2の他方の入力端に出力する。
【0032】
オア回路OR2の出力端は、パルス発生回路20の出力端であり、パルス発生回路20は、セット信号SEとリセット信号REとを重畳(オア)した信号を1系統のシフト用信号SHとして出力する。
【0033】
高耐圧スイッチング素子Q11は、NチャンネルのLDMOS(Laterally Diffused Metal Oxide Semiconductor)で構成されている。パルス発生回路20の出力端は、高耐圧スイッチング素子Q11のゲートに接続され、高耐圧スイッチング素子Q11のオン・オフは、シフト用信号SHによって制御される。高耐圧スイッチング素子Q11は、ソースが共通グランド電位端COMに接続され、ドレインが抵抗R11を介して高電位側の電源電圧VBに接続されている。そして、高耐圧スイッチング素子Q11のドレインと抵抗R11との接続点は、パルス判別回路30の入力端に接続されている。
【0034】
高耐圧スイッチング素子Q11及び抵抗R11は、低電位側で生成されたシフト用信号SHを高電位側にレベルシフトするレベルシフト回路として機能する。高耐圧スイッチング素子Q11がシフト用信号SHによってオン・オフ制御されることで、高耐圧スイッチング素子Q11のドレインと抵抗R11との接続点の電位は、シフト用信号SHを論理反転して高電位側にレベルシフトしたシフト済信号SH’となってパルス判別回路30の入力端に入力される。
【0035】
パルス判別回路30は、電源入力端が高電位側の電源電圧VBに接続され、グランド入力端が高電位側のグランド電位端VSに接地されている。また、パルス判別回路30は、入力端が高耐圧スイッチング素子Q11のドレインと抵抗R11との接続点に接続され、2つの出力端がRS型のフリップフロップで構成された出力固定回路40のセット端子及びリセット端子にそれぞれ接続されている。
【0036】
パルス判別回路30は、セット信号SEを検出して出力信号HOUTを立ち上げると共に、リセット信号REを検出して出力信号HOUTを立ち下げる。セット信号SEはダブルパルスで、
リセット信号REは、パルス幅がセット信号SEの2倍幅を超える時間に設定されている。従って、パルス判別回路30は、ノイズのよるセット信号SEの誤検出を防止できると共に、セット信号SEとリセット信号REとを容易に判別できる。
【0037】
パルス判別回路30は、例えば、図4を参照すると、D型のフリップフロップFF2~FF3と、インバータINV16~INV24と、RS型のフリップフロップFF4~FF6と、ナンド回路NAND1と、ノア回路NOR8と、アンド回路AND2と、オア回路OR3と、フィルタ回路FIL6~FIL7と、パルス生成器PUL2とを備えて構成される。
【0038】
D型のフリップフロップFF2は、クロック端子がパルス判別回路30の入力端であり、反転出力端子がデータ端子及びRS型のフリップフロップFF4のセット端子に、非反転出力端子がD型のフリップフロップFF3のクロック端子にそれぞれ接続されている。
【0039】
D型のフリップフロップFF3は、反転出力端子がデータ端子に接続され、非反転出力端子がインバータINV16を介してナンド回路NAND1の一方の入力端に接続されている。また、D型のフリップフロップFF3は、非反転出力端子がRS型のフリップフロップFF5のリセット端子に接続されている。
【0040】
RS型のフリップフロップFF4は、リセット端子がパルス生成器PUL2の出力端に、出力端子がインバータINV17及びインバータINV18の入力端にそれぞれ接続されている。インバータINV17の出力端は、ノア回路NOR8の一方の入力端に接続され、インバータINV18の出力端は、フィルタ回路FIL6及びインバータINV19からなるディレイ回路を経由してノア回路NOR8の他方の入力端に接続されている。そして、ノア回路NOR8の出力端は、ナンド回路NAND1の他方の入力端に接続されている。
【0041】
フィルタ回路FIL6は、例えば、RCフィルタである。インバータINV19は、インバータINV17から出力される信号に対し、フィルタ回路FIL6の時定数で決まる時間T6分遅延した反転信号を出力する。従って、RS型のフリップフロップFF4がセットされると、ノア回路NOR8は、時間T6をハイレベルのパルス幅とする1ショットパルスを出力する。なお、パルス生成器PUL2は、アップエッジパルス生成回路21から出力される1ショットパルスの立ち下がりエッジから時間T5以上が経過したタイミングでRS型のフリップフロップFF1をリセットするために設けられている。
【0042】
ナンド回路NAND1は、出力端がインバータINV20を介して出力固定回路40のセット端子に接続されている。すなわち、インバータINV20の出力端がパルス判別回路30の一方の出力端である。
【0043】
図5に示すように、シフト用信号SH(セット信号SE、リセット信号RE)の立ち下がりエッジは、シフト済信号SH’において立ち上がりエッジとなる。従って、D型のフリップフロップFF2は、セット信号SEおける1発目のパルスの立ち下がりエッジを検知すると、反転出力端子の出力をハイレベルに遷移させ、RS型のフリップフロップFF4をセットする。これにより、ノア回路NOR8は、時間T6をハイレベルのパルス幅とする1ショットパルスが出力する。
【0044】
D型のフリップフロップFF2は、セット信号SEおける2発目のパルスの立ち下がりエッジを検知すると、非反転出力端子の出力をハイレベルに遷移させる。これにより、D型のフリップフロップFF3は、非反転出力端子の出力をローレベルに遷移させ、ナンド回路NAND1の一方の入力端には、インバータINV16で反転されたハイレベルが入力される。この時、ナンド回路NAND1の他方の入力端に入力されるノア回路NOR8の出力がハイレベルである場合、ナンド回路NAND1の出力がローレベルになる。このナンド回路NAND1の出力は、パルス判別回路30によるセット信号SEの判別結果として、インバータINV20を介して出力固定回路40のセット端子に入力される。これにより、出力固定回路40は、出力信号HOUTをハイレベルに立ち上がる。
【0045】
時間T6は、セット信号SEにおいて1発目のパルスの立ち下りエッジから2発目のパルスの立ち下りエッジまでの期間である時間(T2-T1)よりも長い時間に設定されている。従って、セット信号SEが正常にレベルシフトされた場合、ノア回路NOR8がハイレベルの間にセット信号SEおける2発目のパルスの立ち下がりエッジを検知され、出力信号HOUTが応答性の遅延無くハイレベルに立ち上がる。
【0046】
時間T6は、リセット信号REのパルス幅である時間T5よりも短い時間に設定されている。従って、セット信号SEの2発目パルスにリセット信号REのパルスが重なってしまった場合でも、リセット信号REの立ち下りエッジよりも前に、1発目のパルスの立ち下りエッジから時間T6が経過してノア回路NOR8がローレベルになる。そのため、リセット信号REの立ち下りエッジによってナンド回路NAND1の出力がローレベルになって出力信号HOUTがハイレベルに立ち上がることが防止され、セット信号SEとリセット信号REとの重なりによる誤検出が防止される。
【0047】
インバータINV21は、入力端がパルス判別回路30の入力端であり、出力端がアンド回路AND2の一方の入力端に接続されている。アンド回路AND2の他方の入力端には、ナンド回路NAND1の出力端が接続され、アンド回路AND2の出力端は、RS型のフリップフロップFF5のセット端子に接続されている。
【0048】
RS型のフリップフロップFF5は、リセット端子がD型のフリップフロップFF3の非反転出力端子に接続され、出力端子がRS型のフリップフロップFF6のセット端子に接続されていると共に、インバータINV22及びインバータINV23の入力端にそれぞれ接続されている。インバータINV22の出力端は、オア回路OR3の一方の入力端に接続され、インバータINV23の出力端は、フィルタ回路FIL7及びインバータINV124からなるディレイ回路を経由してオア回路OR3の他方の入力端に接続されている。そして、オア回路OR3の出力端は、RS型のフリップフロップFF5のリセット端子に接続されて、RS型のフリップフロップFF5の出力端子は、パルス判別回路30の一方の出力端子として出力固定回路40のリセット端子に接続されている。
【0049】
出力信号HOUTがハイレベルに立ち上がった後、ノア回路NOR8がローレベルになると、ナンド回路NAND1の出力がハイレベルとなる。この状態で、リセット信号REが立ち上がると、アンド回路AND2の出力がハイレベルとなり、RS型のフリップフロップFF5がセットされる。
【0050】
フィルタ回路FIL7は、例えば、RCフィルタである。インバータINV24は、インバータINV22から出力される信号に対し、フィルタ回路FIL7の時定数で決まる時間T7分遅延した反転信号を出力する。従って、RS型のフリップフロップFF6がセットされると、オア回路OR3の出力は、時間T7が経過した後にハイレベルとなり、RS型のフリップフロップFF6がリセットされる。これにより、リセット信号REの立ち上がりが検出されると、RS型のフリップフロップFF6は、時間T7をハイレベルのパルス幅とする1ショットパルスを出力する。このRS型のフリップフロップFF6の出力は、パルス判別回路30によるリセット信号REの判別結果として、出力固定回路40のリセット端子に入力される。これにより、出力固定回路40は、出力信号HOUTをローレベルに立ち下げる。
【0051】
なお、本実施の形態において、パルス判別回路30は、リセット信号REの立ち上がりエッジの検出タイミングで出力信号HOUTを立ち下げるように構成した。これに対し、出力信号HOUTの立ち下がりタイミングは、図5に点線で示すように、セット信号SEのダブルパルスの遅れ動作分(時間T2)を補償して遅延させても良い。出力信号HOUTの立ち下がりタイミングの遅延は、例えば、RS型のフリップフロップFF5の後段に、出力を時間T2分遅延させるディレイ回路を設けることで実現できる。これにより、入力信号Hinと出力信号HOのデューティ再現性が向上する。
【0052】
以上説明したように、本実施の形態は、低電位側から高電位側に信号を伝達する信号伝達回路10(半導体回路)であって、低電位側で生成された入力信号HINの立ち上がりエッジ(エッジ)を検出してダブルパルス以上をセット信号SEとして生成すると共に、立ち下がりエッジ(次のエッジ)を検出してセット信号SEのパルス幅の2倍幅を超えるパルス幅のリセット信号REを生成し、セット信号SEとリセット信号REとを重畳したシフト用信号SHを出力するパルス発生回路20と、シフト用信号SHを高電位側にレベルシフトしたシフト済信号SH’を出力するレベルシフト回路である高耐圧スイッチング素子Q11及び抵抗R11と、シフト済信号SH’に重畳されたセット信号SE及びリセット信号REを判別するパルス判別回路30と、パルス判別回路の検出結果に基づいて、入力信号を高電位側にレベルシフトした出力信号HOUTを生成する出力固定回路40と、を備える。
この構成により、エッジを検出して生成したセット信号SE及びリセット信号REを1系統のシフト用信号SHとしてレベルシフトすることができ、低電位側から高電位側への信号伝達を、シングルレベルシフト回路を用いて応答性の遅延なく実施できる。また、シングルレベルシフト回路で良いため、チップ面積を小さくできてコストダウンが可能になる。
【0053】
さらに、本実施形態において、パルス判別回路30は、1発目のパルスが検出された後、閾時間(時間T6)以内に1発目に引き続くパルスが検出された場合に、セット信号SEとして判別する。
この構成により、パルス判別回路30は、セット信号SEを容易に判別でき、ノイズのよるセット信号SEの誤検出を防止できる。
【0054】
さらに、本実施形態において、閾時間(時間T6)は、セット信号SEのパルス幅の2倍幅を超え、リセット信号REのパルス幅未満に設定されている。
この構成により、パルス判別回路30は、セット信号SEとリセット信号REとを容易に精度よく判別できる。
【0055】
なお、本発明が上記各実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、各実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、上記構成部材の数、位置、形状等は上記実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。なお、同一構成要素には、各図において、同一符号を付している。
【符号の説明】
【0056】
1H ハイサイド駆動回路
1L ローサイド駆動回路
2 シュミットトリガバッファ
3 ドライバ回路
10 信号伝達回路
20 パルス発生回路
21 アップエッジパルス生成回路
22 パルス幅調整回路
23 2発目パルス生成回路
24 ダウンエッジパルス生成回路
30 パルス判別回路
40 出力固定回路
AND1~AND2 アンド回路
FF1~FF6 フリップフロップ
FIL1~FIL7 フィルタ回路
INV1~INV24 インバータ
NAND1 ナンド回路
NOR1~NOR8 ノア回路
OR1~OR3 オア回路
PUL1~PUL2 パルス生成器
Q1~Q2 スイッチング素子
Q11 高耐圧スイッチング素子
R1、R11 抵抗
図1
図2
図3
図4
図5